説明

液体洗浄剤組成物

【課題】泡量が豊かで、脂肪酸金属塩を発生しにくい洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(A)炭素数10〜24の脂肪酸のアルギニン塩、(B)一般式(1):


(R1はC9〜21のアルキル基又はアルケニル基、R2及びR3はC1〜4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基等、Qは-CH2CH(OH)CH2SO3、又は-(CH2)dSO3(dは1〜3の数)、aは1〜4の数、bは0又は1)で表されるスルホベタイン型両性界面活性剤、(C)一般式(1)において、(R1はC9〜21のアルキル基又はアルケニル基、R2及びR3はC1〜4のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基等、Qは、-(CH2)hCOO(hは1〜3の数)、aは1〜4の数、bは0又は1)で表されるベタイン型両性界面活性剤、(D)成分(A)以外のアニオン界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡量が豊かで、しかも、すすぎ時の脂肪酸金属塩(いわゆるスカム)の生成が抑えられた洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の弱塩基塩を中心とする石鹸を洗浄主基剤とした洗浄剤としては、固形の剤型が汎用されている。近年、液状のハンドソープやボディシャンプーが開発され、ポンプタイプの容器に充填し、簡便化や高付加価値化を図る傾向にある。一般に、石鹸は泡性能、洗浄性能に優れるものの、肌にきしみ感やツッパリ感を感じる場合があるという欠点があった。これは、石鹸が他の合成洗浄剤と比べ、すすぎ時に希釈されたとき、水道水中のカルシウムイオンと容易に結合して、不溶性の脂肪酸金属塩(いわゆるスカム)を発生するからである。
【0003】
この課題に対し、様々な検討が行われている。特許文献1には、石鹸にショ糖脂肪酸エステル、特許文献2には、石鹸にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを組み合わせて用いた洗浄剤組成物が記載されている。しかしながら、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのような界面活性剤では、十分な泡量が得られない。
【0004】
また、特許文献3では、石鹸、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、シリコーンエマルションを組み合わせて用いているが、シリコーンエマルションを用いると泡性能が悪くなったり、洗浄後にシリコーンエマルションが肌に付着して、さっぱり感もなくなってしまうという問題があった。特許文献4では、石鹸を使わず、N−アシルメチルタウリン塩と両性界面活性剤を洗浄基剤として用いているが、十分な泡量は得られない。
【特許文献1】特開昭55−12120号公報
【特許文献2】特開2003−171700号公報
【特許文献3】特開平10−77206号公報
【特許文献4】特開平11−21583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、泡性能に優れるとともに、すすぎ時の脂肪酸金属塩の生成を抑えながらさっぱり感を得ることができる洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、脂肪酸アルギニン塩と、これ以外のアニオン界面活性剤、及び特定の2種の両性界面活性剤を組み合わせて用いれば、泡量が豊かで、良好な泡性能を有しながら、脂肪酸金属塩の生成が抑えられた液体洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭素数10〜24の脂肪酸のアルギニン塩、
(B)一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は炭素数9〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は-(CH2CH2O)cH(cは1〜3の数を示す)を示し、Qは-CH2CH(OH)CH2SO3、又は-(CH2)dSO3(dは1〜3の数を示す)を示し、aは1〜4の数を示し、bは0又は1を示す)
で表されるスルホベタイン型両性界面活性剤、
(C)一般式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R4は炭素数9〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R5及びR6は同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は-(CH2CH2O)gH(gは1〜3の数を示す)を示し、Tは、-(CH2)hCOO(hは1〜3の数を示す)を示し、eは1〜4の数を示し、fは0又は1を示す)
で表されるベタイン型両性界面活性剤、
(D)成分(A)以外のアニオン界面活性剤
を含有する液体洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液状洗浄剤組成物は、泡量が豊かで、良好な泡性能を有しながら、脂肪酸金属塩の生成を抑えられたものである。また、さっぱりとして使用感も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いる成分(A)の炭素数10〜24の脂肪酸のアルギニン塩は、予め塩を作成して配合しても良いし、原料として脂肪酸とアルギニンとを用いて組成物中で塩を形成させても良い。
炭素数10〜24の脂肪酸は、直鎖、分岐鎖又は不飽和結合基を有しても良く、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチル酸、ステアリル酸、オレイル酸等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数12〜16の脂肪酸が好ましい。
成分(A)は、1種以上用いることができ、更には、2種又は3種以上を混合して用いることが好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸を混合して用いるのが、きめの細かいクリーミィー泡質になる点から好ましい。ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸を混合する場合、質量割合は、60〜20:10〜80:30〜0、更には60〜40:20〜40:20〜0であるのが、低温での脂肪酸塩の結晶析出抑制の点から好ましい。
【0014】
成分(A)は、全組成中に0.1〜40質量%、特に15〜28質量%含有するのが、十分な泡量が得られるので好ましい。
【0015】
本発明で用いる成分(B)のスルホベタイン型両性界面活性剤は、前記一般式(1)で表されるものである。
式中、R1は炭素数9〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、例えば、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数11〜16のアルキル基が好ましい。R2及びR3で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0016】
成分(B)としては、例えば、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン等が挙げられる。これらのうち、アルキルヒドロキシスルホベタインが好ましく、より具体的には、ヤシ油脂肪酸ヒドロキシスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ミリスチルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。特に、一般式(1)中、R1が炭素数11、R2及びR3がともにメチル基、Qが−CH2CH(OH)CH2SO3、bが0であるラウリルヒドロキシスルホベタインが好ましい。
【0017】
成分(B)は、1種以上用いることができ、全組成中に1〜4.2質量%、特に1.8〜4質量%含有するのが、十分な泡量が得られるとともに、スカムの生成がより抑制されるので好ましい。
【0018】
本発明で用いる成分(C)のベタイン型両性界面活性剤は、前記一般式(2)で表されるものである。
式中、R4は炭素数9〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、例えば、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等が挙げられる。これらのうち、特に炭素数11〜16のアルキル基が好ましい。R5及びR6で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0019】
成分(C)としては、アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型等の両性界面活性剤含まれ、アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤が好ましい。アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。特に、一般式(2)中、R4が炭素数11、R5及びR6がともにメチル基、eが3、fが1であるラウリン酸アミドプロピルベタインが好ましい。
【0020】
成分(C)は、1種以上用いることができ、全組成中に0.5〜4質量%、特に1〜3質量%含有するのが、十分な泡量が得られるので好ましい。
【0021】
本発明で用いる成分(D)は、成分(A)以外のアニオン界面活性剤である。かかるアニオン界面活性剤としては、通常の洗浄剤組成物に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルアミドスルホコハク酸塩、アルキルサクシンアミド塩、アルキルスルホ酢酸塩、アシルサルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩;N−アシルタウリン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアスパラギン酸塩等のアシル化アミノ酸塩などが挙げられる。
【0022】
また、塩を構成するための対イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アンモニア;低級アルカノールアミン(例えばモノ、ジ、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール);リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸などが挙げられ、特に、アルカリ金属塩が好ましい。
【0023】
これらのうち、特に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩が好ましい。
【0024】
成分(D)は、1種以上用いることができ、全組成中に0.01〜4.5質量%、特に1.3〜3.7質量%含有するのが、十分な泡量が得られるとともに、スカムの生成がより抑制されるので好ましい。
【0025】
本発明においては、成分(A)及び(B)が液晶構造を形成し、更に成分(C)を含むことにより、粘度の高い透明なゲルを構成する。この構造体は、低温から高温で透明構造体を維持し、水で希釈された際の液膜性に優れ、泡立てた際に非常にきめの細かいクリーミィーな泡質が得られるものである。特に、成分(A)、(B)及び(C)の質量割合は、(A):(B):(C)=70〜90:15〜6:15〜4、更に75〜90:14〜6:11〜4であるのが、十分な泡量が得られるとともに、スカムの生成がより抑制されるので好ましい。
【0026】
本発明においては、成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量が、10〜35質量%、特に22〜30質量%であるのが、十分な泡量が得られるとともに、スカムの生成がより抑制されるので好ましい。
【0027】
更に、成分(B)及び(C)の質量割合は、(C)/(B)=0.01〜1、特に0.3〜0.9であるのが、十分な泡量が得られるとともに、スカムの生成がより抑制されるので好ましい。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は、更に(E)IOBが3以下のポリオールを含有することができる。成分(E)は、成分(A)、(B)、(C)及び水で構成される非常に粘度の高い構造体の性能を生かしながら、組成物を低粘度化することができる。そのため、液体洗浄剤としての使用性に優れ、スカムの生成をより抑えることができ、泡性能にも優れ、より多い泡量を得ることができるので好ましい。
ここで、IOB(=無機性値/有機性値)とは、有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域 Vol.11,No.10(1957)719−725)に基づき求められる無機性値及び有機性値の比(Inorganic Organic Balance)を表わすものである。
【0029】
IOBが3以下のポリオールとしては、例えば、イソプレングリコール(IOB=2)、1,3−ブチレングリコール(IOB=2.5)、エチルジグリコール(IOB=1.2)等の2価のグリコールが挙げられる。
【0030】
成分(E)は、1種以上用いることができ、全組成中に1〜10質量%、特に2〜7質量%含有するのが、本発明の組成物の粘度を調整する点で好ましい。
また、((A)+(B)+(C))/(E)=2〜8、特に4〜7.2であるのが、組成物を適度な粘度に調整できるので好ましい。
【0031】
本発明の液体洗浄剤組成物は、前記成分以外に、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、前記以外の界面活性剤、油性成分、ポリマー、紫外線吸収剤、粉体、防腐剤、酸化防止剤、薬効成分、着色剤、顔料、香料等を含有することができる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、通常の方法により製造することができ、液体洗浄剤組成物とされる。ここで、液体とは、30℃における粘度が5000mPa・s以下のものである。なお、粘度の測定は、東機産業社製の回転粘度計TVB−10(B型)を用い、回転速度は60rpmとし、30℃で粘度を測定した。なお、粘度が20〜500mPa・sのときにはローターNo.2を、500〜2000mPa・sのときにはローターNo.3を、2000mPa・s以上のときにはローターNo.4を使用した。
なお、本発明の洗浄剤組成物は、30℃における粘度が、100〜300mPa・sであるのが好ましい。
【0033】
本発明の液体洗浄剤組成物は、皮膚洗浄剤組成物、特に洗顔料として好適である。
【実施例】
【0034】
実施例1〜10及び比較例1〜4
表1及び表2に示す組成の液体洗浄剤組成物を製造し、泡性能及びスカム生成量を評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。なお、30℃における粘度はいずれも1000mPa・s以下で、透明性に優れたものであった。
【0035】
(製造方法)
アルギニン又は水酸化カリウムと、成分(B)、(C)、(D)、(E)及び水を混合し、75℃で加熱攪拌して均一に溶解した(水相)。一方、脂肪酸は、70℃に加熱し均一に融解した。融解した脂肪酸を水相に加え、75℃で均一溶解させた。溶解確認後、系内温度が約45℃になるまで冷却し、エタノールを加え、攪拌して均一にした後、室温まで冷却して、目的の洗浄剤組成物を得た。
【0036】
(評価方法)
(1)泡性能(泡量):
50mLの試験管(Fine社製、高さ17.3cm、直径2.3cm)に液体洗浄剤組成物を0.5g添加し、4°硬水{CaCl2・2H2Oの105(mg/L)水溶液}で10倍に希釈した。この試験管を30回手で振り、その直後の生成した泡の体積を泡量として評価した。
【0037】
(2)スカム生成量:
液体洗浄剤組成物1gを5°硬水{CaCl2・2H2Oの130(mg/L)水溶液}で10倍に希釈し、手で20回サンプル溶液を軽く振り、溶液を均一化した。これを30秒静置させた後、溶液の濁度を、エムケー・サイエンティフィック社製のTN-100を用いて(光源:赤外光850nm)測定した(セル長2.2cm)。この濁度の値をスカム生成量とした。なお、本発明の液体洗浄剤組成物は、いずれも50NTU以下である透明性の高いものである。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭素数10〜24の脂肪酸のアルギニン塩、
(B)一般式(1):
【化1】

(式中、R1は炭素数9〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は-(CH2CH2O)cH(cは1〜3の数を示す)を示し、Qは-CH2CH(OH)CH2SO3、又は-(CH2)dSO3(dは1〜3の数を示す)を示し、aは1〜4の数を示し、bは0又は1を示す)
で表されるスルホベタイン型両性界面活性剤、
(C)一般式(2):
【化2】

(式中、R4は炭素数9〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R5及びR6は同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は-(CH2CH2O)gH(gは1〜3の数を示す)を示し、Tは、-(CH2)hCOO(hは1〜3の数を示す)を示し、eは1〜4の数を示し、fは0又は1を示す)
で表されるベタイン型両性界面活性剤、
(D)成分(A)以外のアニオン界面活性剤
を含有する液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量が10〜35質量%であり、成分(D)の含有量が0.01〜4.5質量%である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、(E)IOBが3以下のポリオールを含有する請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−114155(P2009−114155A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292162(P2007−292162)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】