説明

液体現像装置および画像形成装置

【課題】得られる画像の画質の低下を防止しつつ、液体現像剤の使用効率を向上させることができ、かつ、環境に優しい液体現像装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像装置は、液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、液体現像剤貯留部より供給された液体現像剤を用いて像を形成する現像部と、現像部で形成された像を記録媒体上に転写し、転写像を形成する転写部と、現像部および/または転写部において残存した液体現像剤を回収する回収部と、回収部で回収された液体現像剤を貯留する回収液体現像剤貯留部と、液体現像剤貯留部に、未使用の液体現像剤を供給する液体現像剤供給部とを有し、絶縁性液体は、不飽和脂肪酸成分を含むものであり、回収液体現像剤貯留部内の液体現像剤を、液体現像剤供給部内の未使用の液体現像剤よりも優先的に、液体現像剤貯留部に供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録媒体上に画像を形成する方法として、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を用いる方法が知られている。
このような液体現像剤に適用される液体現像装置は、一般に、感光体ドラムの表面に対して画像情報に応じた光を照射することにより静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、液体現像剤貯溜部から供給された液体現像剤を現像ローラによって付着することにより、感光体ドラムにトナー像を形成し、記録媒体にトナー像を転写する構成となっている。
【0003】
また、液体現像装置では、一般に、トナー像を形成する過程で、現像ローラや感光体ドラム上に残存した液体現像剤を回収し、再利用することが行われている。
ところで、従来より、液体現像剤を構成する絶縁性液体として、石油系炭化水素やシリコーンオイル等が用いられてきたが、近年、環境への影響等の観点から、絶縁性液体として、植物油、動物油等の天然由来の油脂を用いる試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、天然由来の油脂は、一般に、酸化されやすいため、このような天然由来の油脂を絶縁性液体として用いた液体現像剤を長時間画像形成装置内で使用すると、絶縁性液体としての機能が低下し、得られる画像の画質が低下してしまうといった問題が生じる。特に、回収した液体現像剤中の天然由来の油脂は、酸化の進行が早く、長時間放置しておくと、絶縁性液体としての機能が著しく低下し、液体現像剤として使用できなくなるといった問題がある。その結果、液体現像剤の使用効率が低下して、液体現像剤コストが高くなってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2002−278306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、得られる画像の画質の低下を防止しつつ、液体現像剤の使用効率を向上させることができ、かつ、環境に優しい液体現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像装置は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を用いて、記録媒体上に画像を形成する液体現像装置であって、
前記液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部より供給された前記液体現像剤を用いて像を形成する現像部と、
前記現像部で形成された像を前記記録媒体上に転写し、転写像を形成する転写部と、
前記現像部および/または前記転写部において残存した前記液体現像剤を回収する回収部と、
前記回収部で回収された前記液体現像剤を貯留する回収液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部に、未使用の液体現像剤を供給する液体現像剤供給部とを有し、
前記絶縁性液体は、不飽和脂肪酸成分を含むものであり、
前記回収液体現像剤貯留部内の液体現像剤を、前記液体現像剤供給部内の未使用の液体現像剤よりも優先的に、前記液体現像剤貯留部に供給することを特徴とする。
これにより、得られる画像の画質の低下を防止しつつ、液体現像剤の使用効率を向上させることができ、かつ、環境に優しい液体現像装置を提供することができる。
【0008】
本発明の液体現像装置では、前記回収液体現像剤貯留部に貯留される前記液体現像剤の劣化の度合いを判定する劣化判定手段を有し、
前記劣化判定手段により、劣化の度合いが低いと判断した場合は前記回収液体現像剤貯留部に貯留し、劣化の度合いが高いと判断した場合は廃棄することが好ましい。
これにより、得られる画像の画質の低下をより確実に防止しつつ、液体現像剤の使用効率を効果的に向上させることができる。
【0009】
本発明の液体現像装置では、前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の色の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものであることが好ましい。
これにより、簡便に液体現像剤の劣化の度合いを判定することができる。
本発明の液体現像装置では、前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の粘度の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものであることが好ましい。
これにより、簡便に液体現像剤の劣化の度合いを判定することができる。
【0010】
本発明の液体現像装置では、前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の電気抵抗の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものであることが好ましい。
これにより、簡便に液体現像剤の劣化の度合いを判定することができる。
本発明の液体現像装置では、前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の比誘電率の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものであることが好ましい。
これにより、簡便に液体現像剤の劣化の度合いを判定することができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の液体現像装置と、前記記録媒体上に形成された前記像を定着する定着装置とを備えたことを特徴とする。
これにより、得られる画像の画質の低下を防止しつつ、液体現像剤の使用効率を向上させることができ、かつ、環境に優しい画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の液体現像装置および画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を用いて記録媒体上にトナー画像を形成するものである。
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す模式図、図2は、本発明の画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
画像形成装置1000は、図1に示すように、液体現像装置P100と定着装置F40とを備えている。
【0012】
[液体現像装置]
まず、液体現像装置P100について、添付図面を参照しつつ説明する。
液体現像装置P100は、図1に示すように、液体現像剤1を貯留する液体現像剤貯留部P1と、液体現像剤貯留部P1内に貯留された液体現像剤1を用いて像(トナー画像)を形成する現像部P2と、現像部P2で形成された像を記録媒体2に転写する転写部P3と、現像部P2に残存する液体現像剤1を回収する現像部液回収部P4と、転写部P3に残存する液体現像剤1を回収する転写部液回収部P5と、現像部液回収部P4および転写部液回収部P5で回収された液体現像剤1を搬送する回収液体現像剤搬送部(搬送部)P6と、回収液体現像剤搬送部P6で搬送された液体現像剤1を貯留する回収液体現像剤貯留部P7と、液体現像剤貯留部P1に未使用の液体現像剤1を供給する液体現像剤供給部P8と、液体現像剤貯留部P1に絶縁性液体を供給する絶縁性液体供給部P9とを有している。
【0013】
液体現像剤貯留部P1は、不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤1を貯留する機能を有している。
現像部P2は、像を形成する感光体P21と、液体現像剤貯留部P1内の液体現像剤1にその一部が浸漬された液供給ローラP22と、供給された液体現像剤の量を規制する液厚規制ローラP23と、感光体P21に液体現像剤を供給する現像ローラP24とを有している。
【0014】
感光体P21は、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P211によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等で構成された露光ランプP212によって記録すべき情報に応じた露光が行なわれることにより、静電潜像が形成されるものである。なお、感光体P21から後述する中間転写ベルトP31へのトナー画像の転写の後には、感光体P21は、除電光P213によって除電される。
【0015】
液供給ローラP22は、液厚規制ローラP23に液体現像剤を供給する機能を有している。
液厚規制ローラP23は、液厚規制ブレードP231を有しており、この液厚規制ブレードP231によって、液厚規制ローラP23の表面の液体現像剤の厚さが一定に保持される。そして、液厚規制ローラP23から現像ローラP24に対して液体現像剤が転写される。
【0016】
現像ローラP24は、液体現像剤を感光体P21表面の静電潜像に転写する機能を有している。現像ローラP24は、感光体P21と等速で回転して、液体現像剤を感光体P21表面の静電潜像に転写する。
転写部P3は、中間転写ベルトP31と、二次転写ローラP32とを有している。
感光体P21上に形成されたトナー像は、中間転写ベルトP31に対して転写された後に、二次転写ローラP32に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の記録媒体2に画像が転写される。
【0017】
その後、記録媒体2上に転写されたトナー像(転写像)2aは、後述するような定着装置F40を使用して定着が行われる。
現像部液回収部P4は、現像ローラ上液回収部P41と、感光体上液回収部P42とで構成されている。
現像ローラ上液回収部P41は、クリーニングブレードP411を有し、感光体P21へ転写後に現像ローラP24上に残った液体現像剤1を、クリーニングブレードP411によって回収する機能を有している。
【0018】
また、感光体上液回収部P42は、クリーニングブレードP421を有し、中間転写ベルトP31へ転写後に感光体P21上に残った液体現像剤1を、クリーニングブレードP421によって回収する機能を有している。
転写部液回収部P5は、クリーニングブレードP51を有し、記録媒体2へ転写後に中間転写ベルトP31上に残った液体現像剤1を、クリーニングブレードP51によって回収する機能を有している。
【0019】
回収液体現像剤搬送部P6は、現像部液回収部P4(現像ローラ上液回収部P41、感光体上液回収部P42)および転写部液回収部P5で回収された液体現像剤1を後述する回収液体現像剤貯留部P7に搬送する機能を有している。
回収液体現像剤貯留部P7は、現像部液回収部P4(現像ローラ上液回収部P41、感光体上液回収部P42)および転写部液回収部P5で回収された液体現像剤1を貯留する機能を有している。
【0020】
また、回収液体現像剤貯留部P7は、回収液体現像剤供給パイプP12によって、前述した液体現像剤貯留部P1と接続されている。
回収液体現像剤供給パイプP12は、ポンプP121を有しており、このポンプP121により、回収液体現像剤貯留部P7内の液体現像剤1を液体現像剤貯留部P1に供給する機能を有している。
【0021】
また、回収液体現像剤供給パイプP12は、図1に示すように、液体現像剤貯留部P1近傍に、濾過フィルタ(不純物除去手段)P122を有している。
濾過フィルタP122は、回収された液体現像剤1中に含まれる不純物(例えば、粗大化したトナー粒子や、記録媒体の切れ端等)を除去する機能を有している。
液体現像剤供給部P8は、前述した液体現像剤貯留部P1に液体現像剤1を供給する機能を有している。
【0022】
液体現像剤供給部P8内には、撹拌手段P81が設けられている。この撹拌手段P81は、モータP82によって稼働し、液体現像剤供給部P8内の液体現像剤1を撹拌する。
絶縁性液体供給部P9は、前述した液体現像剤貯留部P1に絶縁性液体を供給し、液体現像剤貯留部P1の液体現像剤1の粘度等を調節する機能を有している。
絶縁性液体供給部P9内には、撹拌手段P91が設けられている。この撹拌手段P91は、モータP92によって稼働し、絶縁性液体供給部P9内の絶縁性液体を撹拌する。
【0023】
ところで、絶縁性液体に含まれる不飽和脂肪酸成分は、酸化されやすい成分で、このような不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体で構成された液体現像剤を長時間画像形成装置内で使用すると、不飽和脂肪酸成分が酸化されて、絶縁性液体の極性が高くなってしまうため、絶縁性液体の電気抵抗が低下し、絶縁性液体としての機能が十分に発揮されなくなるといった問題があった。その結果、時間の経過と共に、十分に良好な画質の画像が得られなくなるといった問題があった。特に、回収した液体現像剤中の不飽和脂肪酸成分は、酸化の進行が早く、長時間放置しておくと、絶縁性液体としての機能が著しく低下し、液体現像剤として使用できなくなるといった問題がある。その結果、液体現像剤の使用効率が低下して、液体現像剤コストが高くなってしまう。
【0024】
これに対して、本発明では、回収液体現像剤貯留部に回収した液体現像剤を、液体現像剤供給部内の未使用の液体現像剤よりも優先的に液体現像剤貯留部に供給することにより、酸化劣化が進行する前に、回収した液体現像剤を画像形成に使用することができる。その結果、得られる画像の画質の低下を防止しつつ、液体現像剤の使用効率を向上させることができる。また、本発明の液体現像装置に適用される不飽和脂肪酸成分は、環境に優しい成分であるので、環境に優しい液体現像装置を提供することができる。
【0025】
本実施形態において、回収液体現像剤搬送部P6には、図1に示すように、前述した回収液体現像剤貯留部P7内に収容される液体現像剤1の劣化の度合いを判定する劣化判定手段P61が設けられている。また、回収液体現像剤搬送部P6には、劣化判定手段の下流側に、三方弁P62が設けられており、搬送されてきた液体現像剤1の回収液体現像剤貯留部P7への投入と、液体現像装置P100外への廃棄とを切り換えることができる。
【0026】
液体現像装置P100は、劣化判定手段P61により、搬送されてきた液体現像剤1の劣化の度合いが低いと判定した場合、搬送されてきた液体現像剤1を回収液体現像剤貯留部P7に回収し、搬送されてきた液体現像剤1の劣化の度合いが高いと判断した場合、三方弁P62を切り換え、搬送されてきた液体現像剤1を液体現像装置P100外へ廃棄するよう構成されている。このような構成とすることにより、得られる画像の画質の低下をより確実に防止しつつ、液体現像剤1の使用効率を効果的に向上させることができる。
【0027】
劣化判定手段P61としては、例えば、液体現像剤1の色の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものを用いることができる。不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体は、経時劣化による色の変化が見られるため、色の変化を測定することにより、簡便に液体現像剤1の劣化の度合いを判定することができる。
このような色の変化を測定する手段としては、色差計を用いることができる。
【0028】
色差計を用いる場合、回収液体現像剤搬送部P6の一部にガラスもしくはアクリル、石英等の透明な部位を設ける。そして、該部位に色差計を設置して、色の変化を管理し、色の変化の度合いにより、劣化が進んだと判断した場合は、搬送されてきた液体現像剤1を廃棄する。
また、劣化判定手段P61としては、例えば、液体現像剤1の粘度の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものを用いることができる。不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体は、経時劣化による粘度変化が見られるため、粘度変化を測定することにより、簡便に液体現像剤1の劣化の度合いを判定することができる。
【0029】
液体現像剤1の粘度変化は、例えば、以下のようにして測定することができる。
搬送されてくる液体現像剤1の一部をプールし、該プールした液体現像剤1中に振動子を挿入して、振動子を一定の振動数で、振動させると、振動子と試料の間には粘性による摩擦が働き、この摩擦力の大きさで振動子の振幅が変化する。そして、この振幅が一定になるように振動子を振動させる駆動電流を調整するようにして、この駆動電流を読み取ることで粘度を測定する。粘性力と摩擦の関係は比例であるため、粘度が求められる。そして、所定の粘度以上となった場合、劣化が進んだと判断し、搬送されてきた液体現像剤1を廃棄する。
【0030】
また、劣化判定手段P61としては、例えば、液体現像剤1の電気抵抗の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものを用いることができる。不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体は、経時劣化による電気抵抗の低下が見られるため、電気抵抗の変化を測定することにより、簡便に液体現像剤1の劣化の度合いを判定することができる。
搬送されてくる液体現像剤1の電気抵抗は、例えば、搬送されてくる液体現像剤1に電圧をかけて、微少電流をとらえることで、電気抵抗を測定することができる。そして、電気抵抗が所定の値以下となった場合、劣化が進んだと判断し、搬送されてきた液体現像剤1を廃棄する。
【0031】
さらに、劣化判定手段P61としては、例えば、液体現像剤1の比誘電率の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものを用いることができる。不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体は、経時劣化による比誘電率の上昇が見られるため、比誘電率の変化を測定することにより、簡便に液体現像剤1の劣化の度合いを判定することができる。
搬送されてくる液体現像剤1の比誘電率は、例えば、搬送されてくる液体現像剤1に電圧・周波数を印加して電流値をとらえることで、電気容量を測定して、比誘電率を測定することができる。そして、比誘電率が所定の値以上となった場合、劣化が進んだと判断し、搬送されてきた液体現像剤1を廃棄する。
【0032】
[定着装置]
次に、定着装置について説明する。
定着装置F40は、液体現像装置によって形成されたトナー画像2aを有する記録媒体2上に、トナー画像2aを定着させるものである。
定着装置F40は、図2に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0033】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
熱定着ローラF1の弾性体F1cは、その表層に、離型層F11cを備えている。
離型層F11cは、定着の際に、トナー粒子が熱定着ローラF1の表面に付着するのを防止する機能を有している。
離型層F11cを構成宇する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0034】
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0035】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像が形成された記録媒体2に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0036】
前述した熱定着ローラF1の弾性体F1cと加圧ローラF2の弾性体F2cとは、略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップを形成する。また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体2の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
【0037】
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体2が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0038】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体2搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体2が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体2が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体2の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体2の進入がスムーズに行われる記録媒体2の導入口部が形成でき、安定した記録媒体2の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0039】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
【0040】
定着装置F40において、後述するような画像形成装置を用いて未定着のトナー画像2aが形成された記録媒体2は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体2上に形成された未定着のトナー画像2aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0041】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0042】
また、定着装置F40は、記録媒体2にトナー画像2aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この酸化重合促進剤除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
【0043】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0044】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
未定着トナー画像を定着する際の定着温度は、80〜200℃であるのが好ましく、80〜180℃であるのがより好ましい。このような定着温度であると、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応をより効果的に進行させることができ、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。
【0045】
<液体現像剤>
次に、本発明の液体現像装置に適用される液体現像剤について詳細に説明する。
本発明の液体現像装置および画像形成装置に適用される液体現像剤は、不飽和脂肪酸成分を含む絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
[絶縁性液体]
まず、絶縁性液体について説明する。
本発明の液体現像装置で用いる液体現像剤を構成する絶縁性液体は、不飽和結合を有する不飽和脂肪酸成分を含んでいる。
この不飽和脂肪酸成分は、環境に優しい成分である。したがって、液体現像装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像装置を提供することができる。
【0046】
また、不飽和脂肪酸成分は、定着時の加熱等により、酸化重合する成分である。すなわち、不飽和脂肪酸成分は、酸化重合することにより、それ自体が硬化し、トナー粒子の定着性を向上させる機能を有する成分である。また、不飽和脂肪酸成分が硬化することにより、定着したトナー画像に対して、水性ボールペンでの追記を容易かつ確実に行うことができる。
また、不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子(トナー粒子を構成する樹脂材料)との親和性が高いため、本発明のように、絶縁性液体として不飽和脂肪酸成分を含むものを用いることにより、トナー粒子の分散性を向上させることができる。その結果、保存時等において、トナー粒子の沈降や凝集等を効果的に防止することができる。
【0047】
不飽和脂肪酸成分を構成する不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リシノール酸等に代表される一価不飽和脂肪酸や、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される多価不飽和脂肪酸が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
上述した中でも、多価不飽和脂肪酸成分を用いるのが好ましく、多価不飽和脂肪酸成分の中でも、共役化した不飽和結合を有するもの(共役不飽和脂肪酸成分)を用いるのがより好ましい。これにより酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。
このような共役不飽和脂肪酸成分としては、共役不飽和結合を有するものであれば、いかなるものを用いてもよく、例えば、合成されたものを用いてもよいし、植物油等から直接抽出したものを用いてもよいし、不飽和脂肪酸成分を共役化することにより得られるものを用いてもよい。
【0049】
上述したような不飽和脂肪酸成分は、例えば、脱水ひまし油、桐油、紅花油、亜麻仁油、ひまわり油、コーン油、綿実油、大豆油、ごま油、トウモロコシ油、大麻油、月見草油、ブラックカラント油、ボリジ油(ボラージ油)、イワシ油、サバ油、ニシン油等の植物由来の油脂、各種動物由来の油脂等の天然由来の油脂から得ることができる。
上述した中でも脱水ひまし油は、共役リノール酸成分(共役不飽和脂肪酸成分)を多く含むことから、好適に用いることができ、酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。その結果、より強固にトナー画像を定着させることができる。
絶縁性液体中における全脂肪酸成分に対する不飽和脂肪酸成分の割合は、特に限定されないが、10mol%以上であるのが好ましく、20mol%以上であるのがより好ましく、20〜90mol%であるのがさらに好ましい。これにより、定着時において、酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。
【0050】
また、絶縁性液体中において、不飽和脂肪酸成分は、いかなる形態をとっていてもよい。例えば、絶縁性液体中において、不飽和脂肪酸成分は、不飽和脂肪酸(または、共不飽和脂肪酸塩)として存在するものであってもよいし、他の成分と結合して化合物を形成していてもよい。このような化合物としては、例えば、不飽和脂肪酸成分とアルコール成分(多価アルコール成分)とのエステル、不飽和脂肪酸成分とアミン成分(多価アミン成分)とのアミド等が挙げられるが、中でも、エステルが好ましく、グリセリンと、不飽和脂肪酸成分とのエステル(以下、「グリセリド」とも言う)がより好ましい。絶縁性液体中において、上記のようなエステルが形成されていることにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を優れたものとするとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を、より優れたものとすることができる。
【0051】
また、絶縁性液体中には、上述した成分の他に、例えば、以下に示すような飽和脂肪酸成分を含んでいてもよい。
飽和脂肪酸成分は、液体現像剤の化学的安定性を高く保つ機能を有する成分である。従って、絶縁性液体中に、飽和脂肪酸成分を含む場合、液体現像剤の化学変化を効果的に防止することができ、その結果、得られる液体現像剤の保存性、長期安定性をより高いものとすることができる。
【0052】
また、飽和脂肪酸成分は、電気絶縁性、粘度を高く保つ機能を有している。従って、絶縁性液体中に、飽和脂肪酸成分を含む場合、液体現像剤の電気抵抗をより高い状態に維持することができる。また、適度な粘度により液体現像剤の搬送性がより良好となる。
このような飽和脂肪酸成分を構成する飽和脂肪酸としては、例えば、酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミスチリン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような飽和脂肪酸の中でも、分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。このような飽和脂肪酸で構成された飽和脂肪酸成分を含むことにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして発揮される。
【0053】
上記のような飽和脂肪酸成分は、例えば、パーム油(特に、パーム核油)、ココナッツ油、ヤシ油等の植物由来の油脂、各種動物由来の油脂(例えば、バター等)等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
【0054】
絶縁性液体中に飽和脂肪酸成分が含まれている場合、絶縁性液体中における全脂肪酸成分に対する飽和脂肪酸成分の割合は、特に限定されないが、0.5〜40mol%であるのが好ましく、1〜30mol%であるのがより好ましい。これにより、絶縁性液体の電気絶縁性を高いものとしつつ、定着時において、酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。
【0055】
このように絶縁性液体が、不飽和脂肪酸成分と飽和脂肪酸成分とを含むものである場合、絶縁性液体中において、不飽和脂肪酸成分と飽和脂肪酸成分とは、いかなる形態をとっていてもよい。例えば、絶縁性液体中において、不飽和脂肪酸成分、飽和脂肪酸成分は、それぞれ独立して、不飽和脂肪酸(または、不飽和脂肪酸塩)、飽和脂肪酸(また、飽和脂肪酸塩)として存在するものであってもよいし、他の成分と結合して化合物を形成していてもよい。このような化合物としては、例えば、不飽和脂肪酸成分、飽和脂肪酸成分とアルコール成分(多価アルコール成分)とのエステル、不飽和脂肪酸成分、飽和脂肪酸成分とアミン成分(多価アミン成分)とのアミド等が挙げられるが、中でも、エステルが好ましく、グリセリンと、不飽和脂肪酸成分および飽和脂肪酸成分とのエステル(以下、「グリセリド」とも言う)がより好ましい。
【0056】
絶縁性液体が、このようなエステル(グリセリド)を含むものである場合、絶縁性液体中における前記エステルの含有率は、90wt%以上であるのが好ましく、95wt%以上であるのがより好ましく、97wt%以上であるのがさらに好ましい。これにより、環境への負荷を特に低いものとしつつ、定着時において、酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、絶縁性液体の酸化を防止・抑制する機能を有する酸化防止剤が含まれていてもよい。これにより、不飽和脂肪酸成分の不本意な酸化を防止することができる。
【0057】
上述したような酸化防止剤としては、例えば、トコフェローラ、d−トコフェローラ、dl−α−トコフェローラ、酢酸−α−トコフェローラ、酢酸dl−α−トコフェローラ、酢酸トコフェローラ、α−トコフェローラ等のビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩類、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等のビタミンC、緑茶抽出物、生コーヒー抽出物、セサモール、セサミノール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
上述した中でも、ビタミンEを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、ビタミンEは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分である。特に、ビタミンEは、前述したような不飽和脂肪酸成分を含む液体(特に、グリセリド)への分散性が高いことから、酸化防止剤として好適に用いることができる。また、ビタミンEと前述したようなグリセリドとを併用することにより、絶縁性液体とトナー粒子との親和性をさらに向上させることができる。その結果、液体現像剤の保存性、記録媒体に対するトナー粒子の定着性等が特に優れたものとなる。
【0059】
また、上述した中でも、ビタミンCを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、前述したビタミンEと同様に、ビタミンCは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分である。また、ビタミンCは、熱分解温度が比較的低いため、液体現像剤の保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、酸化防止剤としての機能を十分に発揮させることができるとともに、定着時においては、酸化防止剤としての機能を低下させ、絶縁性液体の酸化重合反応をより確実に進行させることができる。
【0060】
酸化防止剤の熱分解温度は、定着時における定着温度以下であるのが好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等において、絶縁性液体の劣化を効果的に防止するとともに、定着時においては、トナー粒子の表面に付着した絶縁性液体中の酸化防止剤を熱分解させ、絶縁性液体を効果的に硬化(酸化重合反応)させることができ、記録媒体に対するトナー粒子の定着性を十分に優れたものとすることができる。
【0061】
酸化防止剤の熱分解温度は、具体的には、200℃以下であるのが好ましく、180℃以下であるのがより好ましい。これにより、酸化防止剤としての機能を十分に保持しつつ、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。
上述したような絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は、1×10Ωcm以上であるのが好ましく、1×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1×1013Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0062】
<トナー粒子>
次に、トナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料]
トナー粒子(トナー)は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)を含むものである。
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
【0063】
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クローラアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、ポリエステル樹脂を用いた場合、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。これは、ポリエステル樹脂と、植物油との親和性が高いためであると考えられる。
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0064】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、混練物の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0067】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
【0068】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.94〜0.99であるのが好ましく、0.96〜0.99であるのがより好ましい。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
トナー粒子の平均円形度がこのような範囲のものであると、記録媒体上に転写した未定着のトナー画像中に絶縁性液体を適度に含ませることができ、トナー粒子の定着強度をより高いものとすることができる。
【0069】
液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、10〜60wt%であるのが好ましく、10〜30wt%であるのがより好ましい。
以上説明したような液体現像剤は、いかなる方法で得られたものであってもよく、例えば、トナー材料を粉砕法により粉砕して得られたトナー粒子を絶縁性液体中に分散させて製造したものであってもよいし、トナー材料が分散媒中に分散させて得られた分散液を用いて、液体現像剤を製造する方法(例えば、特願2004−370231号の明細書に記載されたような方法)により製造したものであってもよい。
【0070】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像装置および画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、液体現像装置が絶縁性液体供給部を有するものとして説明したが、絶縁性液体供給部はなくてもよい。
【0071】
また、本発明の画像形成装置に適用される定着装置は、前述した実施形態に限定されず、定着装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、定着の際に熱をかける場合について説明したが、これに限定されず、例えば、紫外線を照射してもよい。
また、前述した実施形態では、定着ローラ側から加熱するものとして説明したが、加圧ローラ側から加熱するものであってもよい。
【実施例】
【0072】
[1]液体現像剤の製造
まず、自己分散型樹脂としての、側鎖に多数の−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(ガラス転移点:55℃、軟化温度:123℃、):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0073】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0074】
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
この水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が1.2μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は30.5wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は0.8μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0075】
上記のようにして得られた懸濁液を噴霧乾燥により乾燥することで、吐出した水系懸濁液の液滴から分散媒が除去され、乾燥トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子:100重量部と、絶縁性液体としての大豆油(日清オイリオ社製):500重量部と、分散剤としてのポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):10重量部と、帯電制御剤としてのステアリン酸アルミニウム:1重量部とを用意した。
これらの成分を乳化分散機(エム・テクニック社製)を用いて回転数10000rpmで液温が樹脂のガラス転移温度以上にならないよう注意しながら分散させ、液体現像剤Aを得た。
得られた液体現像剤A中における、トナー粒子の平均粒径は1.2μmであった。
【0076】
[2]画像形成
(実施例1)
上記のようにして得られた液体現像剤を図1に示す液体現像装置の液体現像剤貯留部に投入し、室温条件下で、記録媒体(富士ゼロックスオフィスサプライ製、J紙)上に未定着の所定パターンのトナー像を形成し、その後、図2に示すような定着装置を用いて定着を行った。そして、この作業を、1日8時間、1ヶ月実施した。
なお、劣化判定手段としては、色差計(シリカンテクノロジー社製:製品名「知覚色彩センサーPCS−II」)を用いた。また、回収される液体現像剤の色の変化が色差において、ΔE>2以上となった時点を劣化と判断した。
【0077】
(実施例2)
劣化判定手段として、粘度計(山一電機社製:製品名「ビスコメイト」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして画像を形成し、定着を行った。なお、回収される液体現像剤の粘度が、初期粘度に対し10%変化した時点(110mPa・s以上(初期100mPa・s)となった時点)を劣化と判断した。
【0078】
(実施例3)
劣化判定手段として、電気抵抗測定器(川口電機製作所社製:製品名「ユニバーサルエレクトロメーター」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして画像を形成し、定着を行った。なお、回収される液体現像剤の電気抵抗が、5×1012Ωcm以下となった時点を劣化と判断した。
【0079】
(実施例4)
劣化判定手段として、比誘電率測定機(日本ルフト社製:製品名「M−870」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして画像を形成し、定着を行った。なお、回収される液体現像剤の比誘電率が、3.5以下となった時点を劣化と判断した。
(比較例)
回収した液体現像剤を、現像に用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして画像を形成し、定着を行った。
【0080】
[3]評価
本発明の液体現像装置および画像形成装置を用いた実施例では、連続して運転した場合であっても、画質の低下が起こらなかった。
また、作業開始から1ヶ月後の画像形成装置内の液体現像剤の量を測定し、液体現像剤の使用効率を調べたところ、実施例では、比較例のものと比較して使用効率に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…液体現像剤 1000…画像形成装置 2…記録媒体 2a…トナー画像 P100…液体現像装置 P1…液体現像剤貯留部 P2…現像部 P21…感光体 P211…帯電器 P212…露光ランプ P213…除電光 P22…液供給ローラ P23…液厚規制ローラ P231…液厚規制ブレード P24…現像ローラ P3…転写部 P31…中間転写ベルト P32…二次転写ローラ P4…現像部液回収部 P41…現像ローラ上液回収部 P411…クリーニングブレード P42…感光体上液回収部 P421…クリーニングブレード P5…転写部液回収部 P51…クリーニングブレード P6…回収液体現像剤搬送部 P61…劣化判定手段 P62…三方弁 P7…回収液体現像剤貯留部 P8…液体現像剤供給部 P81…撹拌手段 P82…モータ P9…絶縁性液体供給部 P91…撹拌手段 P92…モータ P12…回収液体現像剤パイプ P121…ポンプ P122…濾過フィルタ(不純物除去手段) F40…定着装置 F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F11c…離型層 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を用いて、記録媒体上に画像を形成する液体現像装置であって、
前記液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部より供給された前記液体現像剤を用いて像を形成する現像部と、
前記現像部で形成された像を前記記録媒体上に転写し、転写像を形成する転写部と、
前記現像部および/または前記転写部において残存した前記液体現像剤を回収する回収部と、
前記回収部で回収された前記液体現像剤を貯留する回収液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部に、未使用の液体現像剤を供給する液体現像剤供給部とを有し、
前記絶縁性液体は、不飽和脂肪酸成分を含むものであり、
前記回収液体現像剤貯留部内の液体現像剤を、前記液体現像剤供給部内の未使用の液体現像剤よりも優先的に、前記液体現像剤貯留部に供給することを特徴とする液体現像装置。
【請求項2】
前記回収液体現像剤貯留部に貯留される前記液体現像剤の劣化の度合いを判定する劣化判定手段を有し、
前記劣化判定手段により、劣化の度合いが低いと判断した場合は前記回収液体現像剤貯留部に貯留し、劣化の度合いが高いと判断した場合は廃棄する請求項1に記載の液体現像装置。
【請求項3】
前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の色の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものである請求項2に記載の液体現像装置。
【請求項4】
前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の粘度の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものである請求項2または3に記載の液体現像装置。
【請求項5】
前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の電気抵抗の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものである請求項2ないし4のいずれかに記載の液体現像装置。
【請求項6】
前記劣化判定手段は、前記液体現像剤の比誘電率の変化を測定することにより劣化の度合いを判定するものである請求項2ないし4のいずれかに記載の液体現像装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像装置と、前記記録媒体上に形成された前記像を定着する定着装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−199530(P2007−199530A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19676(P2006−19676)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】