説明

液体送受用ジョイント装置及びこれを備えた燃料電池システム

【課題】液体アクセプタと液体リザーバを接続した状態で所定以上の回転力が加えられ、両者が相対的に回転する際に、誤接続防止キーにかかる負荷を解放し、誤接続防止キーの破損を防止する液体送受用ジョイント装置及びこれを備えた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】雄型ジョイント部14を有する第1のジョイント装置10と、雄型ジョイント部14を受容する雌型ジョイント部54を有し、第1のジョイント装置10に接続される第2のジョイント装置50を備え、雌型ジョイント部54は、雄型ジョイント部14を受容した際に、雄型ジョイント部14の凸型係止部16A〜16D同士の隙間に挿入されるリブ68A〜68Dを有し、前記隙間の各々にリブ68A〜68Dが挿入された状態で所定以上の回転力が加えられ、第1のジョイント装置10が第2のジョイント装置50に対し相対的に回転する際に、リブ68A〜68Dが凸型係止部16A〜16Dを弾性変形させて当該回転方向に相対的に移動し、前記とは別の隙間に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池やインクジェットプリンタ等における液体供給手段において、液体リザーバと液体アクセプタとの間に配設され、当該液体リザーバ内に収容された液体を液体アクセプタに導く液体送受用ジョイント装置、及びこれを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタ、液体燃料を用いたライターや燃料電池、医療用薬液投与装置等、液体を使用する各種機器として、外部から供給される液体を受容する液体アクセプタ(液体受容手段)を備えたものが広く普及されている。また、この液体アクセプタに液体を供給する手段として、内部に収容した液体を外部に流出させる様々な形態の液体リザーバ(液体供給手段)が提案されている。
【0003】
前記液体リザーバは、内部に収容した液体が無くなった時に、液体リザーバ自体を直接新しいものと取り替えることができるカートリッジ式が主流となっており、液体によって手を汚すことが殆どなく、安全性が高く、液体アクセプタに液体を簡便に補給できるという利点がある。特に、前記液体として、人体に悪影響を与える虞があるものや、外気に触れると劣化が激しいもの等を用いる場合には、大変有効な液体供給手段である。
【0004】
また、最近、液体を燃料として発電する燃料電池、特にメタノールを燃料としたメタノール直接型燃料電池(DMFC)は、多くの電機メーカ等により開発が盛んに行われており、例えば、ノートパソコン、携帯可能な各種電子機器、携帯電話等に使用する次世代の新型電池として期待されている。しかし、一般に、メタノールは、人体に対する影響が大きく、吸入すると中枢神経を冒し、めまい、下痢を起こすことがある。また、大量に吸入したり、眼に入ったりした場合は、視神経に障害を起こすことがあり、失明する可能性も高く、危険性の高い有毒な液体である。そのため、DMFCにおいても、一般需要者等に安全にかつ簡便に燃料供給を行う際には、メタノールを直接取り扱うことがなく、液体リザーバをカートリッジとしてメタノールを供給する手段が最適であると考えられており、広く開発が行われている。(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0005】
前記液体アクセプタに、前記液体リザーバから液体を供給する際は、通常、液体アクセプタの液体受容口と、液体リザーバの液体供給口とを着脱可能に接続し、液体の送受を行う液体送受用ジョイント装置が用いられている。(例えば、特許文献4〜特許文献12参照)。
【0006】
そして、このような液体送受用ジョイント装置では、液体アクセプタと液体リザーバとの接続時に、両者の接続位置精度の向上、両者の確実な固定、幼児等の誤接触による液体の漏れ出しの防止、液体アクセプタに対し不適切な液体リザーバが接続される等の誤接続の防止、を同時に実現する機構として、チャイルドプルーフ機能や誤接続防止キー(誤挿入防止のためのメカニカルキー)を備えたスナップホック(「スナップフィット」ともいう)機構を用いたものも紹介されている。このスナップホック機構は、比較的容易に留めたり外したりすることができ尚かつ安価で軽量で部材が好ましく、一例を挙げれば、スナップやホックなどと呼ばれているような鉤(かぎ)状部分と受け部分とが一組になった部材から構成されているものがある。
【特許文献1】特開2003−308871号公報
【特許文献2】特開平8−12301号公報
【特許文献3】特開2003−317756号公報
【特許文献4】特開平10−789号公報
【特許文献5】特開平8−50042号公報
【特許文献6】特表2003−528699号公報
【特許文献7】特開2003−266739号公報
【特許文献8】特表2001−524896号公報
【特許文献9】特開2000−289225号公報
【特許文献10】特開平7−68780号公報
【特許文献11】特開平5−254138号公報
【特許文献12】特開2003−331879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、誤接続防止キーを備えたスナップホック機構を用いた従来の液体送受用ジョイント装置は、液体アクセプタと液体リザーバとを接続した際に、当該液体アクセプタに対し液体リザーバを相対的に回転させるよう負荷をかけると、負荷の大きさによっては、液体アクセプタ側に配設される液体送受用ジョイント部に形成された誤接続防止キーが、液体リザーバ側に配設される液体送受用ジョイント部に形成された誤接続防止キーよりも先に破損する虞がある。ここで、液体アクセプタ側に配設される液体送受用ジョイント部は、基本的に電子機器本体等と一体化されており、電子機器本体等の寿命と同様の耐久性(寿命)を有する必要がある。一方、液体リザーバ側に配設される液体送受用ジョイント部は、液体アクセプタに供給するための液体が無くなると交換されるため、液体アクセプタ側に配設される液体送受用ジョイント部ほどの耐久性は要求されないが、所定以上の耐久性は要求されるのが実状である。そのため、所定未満の回転力以上の回転力を加えて、液体アクセプタに対し液体リザーバを相対的に回転させた際に、誤接続防止キーにかかる負荷を解放し、誤接続防止キーが破損することを防止する機構が求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、液体アクセプタと液体リザーバとを接続した状態で所定未満の回転力以上の回転力が加えられ、液体アクセプタに対し液体リザーバが相対的に回転する際に、誤接続防止キーにかかる負荷を解放することができ、誤接続防止キーが破損することを防止する液体送受用ジョイント装置、及びこの液体送受用ジョイント装置を備えた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、液体を収容する液体リザーバと、当該液体リザーバに収容された液体を受容する液体アクセプタとを接続する液体送受用ジョイント装置であって、雄型ジョイント部を有し、前記液体リザーバ及び液体アクセプタの一方に配設される第1のジョイント装置と、前記雄型ジョイント部を受容する雌型ジョイント部を有し、前記液体リザーバ及び液体アクセプタの他方に配設され、当該雌型ジョイント部が前記雄型ジョイント部を受容した際に前記第1のジョイント装置に接続される第2のジョイント装置と、を備え、前記雄型ジョイント部は、互いに間隔をおいて配設された複数の凸型係止部を有し、前記雌型ジョイント部は、前記雄型ジョイント部を受容した際に、前記凸型係止部と、該凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間に挿入される挿入部を有し、前記挿入部は、前記隙間に挿入された状態で所定未満の回転力が加えられ、前記第1のジョイント装置が第2のジョイント装置に対し相対的に回転しようとした際に、前記凸型係止部に係止されて当該回転が阻止され、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、前記凸型係止部による係止を解除させて前記回転を行う液体送受用ジョイント装置を提供するものである。
【0010】
この構成を備えた液体送受用ジョイント装置は、第1のジョイント装置の雄型ジョイント部を、第2のジョイント装置の雌型ジョイント部に受領させ、当該第1のジョイント装置と第2のジョイント装置とを接続する際に、前記凸型係止部と、この凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間に、前記挿入部が挿入されるため、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置との中心出し(位置決め)を行うことができると共に、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置とが正しい組合せである場合のみに、前記隙間に挿入部が挿入される誤接続防止キー(誤挿入防止のためのメカニカルキー)の機能を持たせることができる。このようにすることで、液体アクセプタに対し不適切な液体リザーバから不適切な液体が供給されることを防止することができる。さらに、構造が複雑化することがなく、部品点数が少なくなり、小型化が達成される。
【0011】
また、前記挿入部は、前記隙間に挿入された状態で所定未満の回転力が加えられた際には、前記凸型係止部に係止されて、前記第1のジョイント装置が第2のジョイント装置に対し相対的に回転することが阻止されるが、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際には、当該挿入部は、前記凸型係止部による係止を解除させて前記回転を行うため、この回転による負荷がかかったとしても、前記挿入部が破損することを防止することができる。
【0012】
そしてまた、本発明にかかる液体送受用ジョイント装置は、前記雄型ジョイント部が弾性部材から形成されてなり、前記挿入部は、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、前記凸型係止部を弾性変形させて当該回転方向に相対的に移動し、該回転方向に位置する前記とは別の隙間に挿入されるよう構成することもできる。このように構成することで、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられ、挿入部が前記回転方向に移動しようとした際に、凸型係止部が弾性変形し、挿入部が移動し易くするため、当該凸型係止部及び挿入部にかかる前記回転による負荷を逃がすことができる。したがって、凸型係止部及び挿入部に前記回転による負荷がかかったとしても、互いの押圧力により破損することを防止することができる。
【0013】
さらにまた、本発明にかかる液体送受用ジョイント装置は、前記複数の凸型係止部は、同一円上に配設されると共に、当該円に沿った内周面及び外周面を有し、前記挿入部は、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、前記凸型係止部を前記内周面側に傾斜するよう弾性変形させ、当該凸型係止部の外周面に沿って移動する構成することもできる。このようにすることで、前記回転により前記挿入部が回転方向に相対的に移動する際に、前記凸型係止部は、弾性変形して内側に倒れ、当該挿入部が前記回転方向に位置する別の隙間に挿入されると、弾性復元するため、前記回転によりかかる負荷を効率よく軽減することができると共に、繰り返して使用することができる。また、前記挿入部にかかる負担も軽減することができる。
【0014】
また、本発明にかかる液体送受用ジョイント装置は、前記第1のジョイント装置が前記液体リザーバに配設され、前記第2のジョイント装置が前記液体アクセプタに配設されてなり、前記挿入部の強度が、前記凸型係止部の強度よりも大きくなるよう設定することができる。このようにすることで、前記凸型係止部が弾性変形しない材料で形成されていた場合等、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、当該凸型係止部と挿入部のいずれか一方が破損する状況にある場合には、前記液体リザーバに配設される第1のジョイント装置に形成されている凸型係止部が、前記液体アクセプタに配設される第2のジョイント装置に形成されている挿入部よりも先に破損することになり、第2のジョイント装置の寿命(耐久性)をより向上させることができる。なお、この場合、前記凸型係止部が破損したとしても、該凸型係止部は、誤接続防止の目的で配設されているものであり、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置との接続時のシール性に影響を与えるものではないため、液体の送受に支承を来すことはない。
【0015】
そしてまた、前記雌型ジョイント部は、前記雄型ジョイント部を受容する中空の略円筒形を有する受容部を有し、前記挿入部は、当該受容部の内周面から該受容部の中心部に向けて突出したリブから構成することもできる。このように構成することで、前記挿入部(リブ)は、前述した誤接続防止キーの役割を果たすことに加え、雌型ジョイント部を補強する役割を果たすこともできる。
【0016】
さらにまた、前記凸型係止部と、該凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間は、前記内周面側の間隔が、外周面側の間隔よりも短くなるよう画定することができる。そしてまた、前記リブは、前記受容部の内周面側の周方向の長さが、当該受容部の中心部側の周方向の長さよりも長くなるよう構成することができる。このように構成することで、前記隙間に挿入部が挿入された状態で所定未満の回転力以上の回転力が加えられ、前記第1のジョイント装置が第2のジョイント装置に対し相対的に回転する際に、前記挿入部が当該回転方向にさらに相対移動しやすくなる。したがって、凸型係止部及び挿入部にかかる前記回転による負荷をより効率よく逃がすことができる。
【0017】
また、本発明にかかる液体送受用ジョイント装置は、前記第1のジョイント装置が前記液体リザーバに配設され、前記第2のジョイント装置が前記液体アクセプタに配設されてなり、前記雄型ジョイント部の先端側の略中央部には、液体供給口を有し、前記液体リザーバから供給される液体を、当該液体供給口を介して前記第2のジョイント装置に供給する液体供給部が配設されてなり、前記凸型係止部の先端には、当該液体供給口の外周近傍まで延出するフランジが形成されてなる構成を備えることもできる。このように構成することで、前記利点に加え、使用者が手にすることが多い液体リザーバ(例えば、液体カートリッジ等)に配設される第1のジョイント装置の液体供給部が、前記凸型係止部とフランジによってガードされることになる。したがって、仮に、この第1のジョイント装置に、子供等が触れたとしても、液体供給部を誤動作させることを防止することができる。(チャイルドプルーフ加工がなされている)。
【0018】
そしてまた、本発明にかかる液体送受用ジョイント装置では、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置を、スナップホックにより着脱可能に接続することもできる。このようにすることで、前記利点に加え、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置とを一層安定した状態で接続することができる。
【0019】
また、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置を、スナップホックにより着脱可能に接続する場合、前記雄型ジョイント部の外周面に第1の係合部を形成し、前記雌型ジョイント部の内周面に当該第1の係合部に着脱可能に係合する第2の係合部を形成し、当該第1の係合部に第2の係合部を係合させることで、前記第1のジョイント装置と第2のジョイント装置が接続され、前記係合を解除することで、前記第1のジョイント装置と第2のジョイント装置との接続を解除する構成とすることもできる。したがって、前記雄型ジョイント部に、スナップホック機構の役割、チャイルドプルーフの役割、及び誤接続防止キーの役割を持たせることができ、前記雌型ジョイント部に、スナップホック機構の役割、及び誤接続防止キーの役割を持たせることもできる。
【0020】
さらにまた、本発明は、燃料電池と、液体燃料を収容する液体リザーバと、前記液体リザーバから供給される液体燃料を受容して前記燃料電池に供給する液体アクセプタと、前述した本発明にかかる液体送受用ジョイント装置と、を備えてなる燃料電池システムを提供するものである。
【0021】
この構成を備えた燃料電池システムは、前述した利点を有する液体送受用ジョイント装置を備えているため、構造が複雑化することがなく、部品点数が少なくなり、小型化が達成されると共に、液体リザーバ及び液体アクセプタを接続した状態で所定未満の回転力以上の回転力が加えられ、液体アクセプタに対し液体リザーバが相対的に回転する際に、凸型係止部及び挿入部にかかる前記回転による負荷を解放することができ、凸型係止部及び挿入部が破損することを防止することができる。したがって、燃料電池システムの信頼性が向上される。なお、前記液体燃料は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノールを含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる液体送受用ジョイント装置は、第1のジョイント装置と第2のジョイント装置とを接続する際に、凸型係止部と、この凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間に、挿入部が挿入されることで、誤接続防止を行うことができる。また、前記挿入部は、前記隙間に挿入された状態で所定未満の回転力が加えられた際には、前記凸型係止部に係止されて、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際には、前記凸型係止部による係止を解除させて前記回転を行うため、この回転の負荷により、前記挿入部が破損することを防止することができる。この結果、構造が複雑化することがなく、部品点数が少なくなり、小型化が達成されると共に、寿命が向上し、信頼性の高い液体送受用ジョイント装置を提供することができる。
【0023】
また、本発明にかかる燃料電池システムは、液体送受用ジョイント装置を介して、液体リザーバから液体アクセプタに液体燃料を供給する際に、液体送受用ジョイント装置に形成された凸型係止部と、この凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間に挿入部が挿入されることで、誤接続が防止される。この結果、液体アクセプタに対し不適切な液体リザーバから不適切な液体が供給されることを防止することができ、信頼性を向上することができる。また、前記隙間に挿入部が挿入された状態で所定未満の回転力以上の回転力が加えられたとしても、この回転の負荷により破損することを防止することができる。この結果、液体送受用ジョイント装置の寿命が向上し、高性能で信頼性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置、及びこれを備えた燃料電池システムについて図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置の構成要素である第1のジョイント装置の斜視図、図2は、本発明の実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置の構成要素である第2のジョイント装置の斜視図、図3は、図1に示すIII−III線に沿った断面図、図4は、図2に示すIV−IV線に沿った断面図、図5は、図2に示す第1のジョイント装置と、図4に示す第2のジョイント装置が接続する直前を示す断面図、図6は、図2に示す第1のジョイント装置と、図4に示す第2のジョイント装置が接続した状態を示す断面図、図7は、第1のジョイント装置と、第2のジョイント装置とが接続された状態で、外部から回転力が付加された状態を示す断面図、図8は、図2に示す第1のジョイント装置を液体リザーバの筐体に配設し、図4に示す第2のジョイント装置を液体アクセプタの筐体に接続した状態を示す一部断面、図9は、本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムの概略図である。
【0026】
なお、本実施の形態では、第1のジョイント装置を液体リザーバの筐体に配設し、第2のジョイント装置を液体アクセプタの筐体に配設する場合について説明する。また、本実施の形態では、第1のジョイント装置については、液体リザーバの筐体に配設される側を「基端側」、第2のジョイント装置と接続される側を「先端側」とし、第2のジョイント装置については、液体アクセプタの筐体に配設される側を「基端側」、第1のジョイント装置と接続される側を「先端側」として説明する。
【0027】
図1〜図8に示すように、本実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置1は、液体が収容された液体リザーバの筐体100に配設される第1のジョイント装置10と、液体リザーバから供給される液体を受容する液体アクセプタの筐体200に配設される第2のジョイント装置50を備えている。この液体送受用ジョイント装置1は、筐体100に配設された第1のジョイント装置10と、筐体200に配設された第2のジョイント装置50を接続することで、液体リザーバと液体アクセプタとを接続し、液体リザーバ内に収容されている液体を、液体アクセプタに供給する。
【0028】
なお、液体リザーバは、特に限定されるものではないが、例えば、液体燃料が収容された液体燃料カートリッジ、液体インクが収容されたインクカートリッジ、薬液が収容された薬液カートリッジ等が挙げられる。また、液体アクセプタも同様に、特に限定されるものではないが、例えば、液体燃料カートリッジから供給される液体燃料を使用する燃料電池やライター等の機器類、インクカートリッジから供給されるインクを使用するプリンタ等の機器類、薬液カートリッジから供給される薬液を使用する各種医療機器や実験機器類等が挙げられる。
【0029】
また、液体アクセプタとして、燃料電池を用いる場合は、図9に示すように、燃料電池FCの筐体200と、液体燃料が収容された液体アクセプタの筐体100とを、液体送受用ジョイント装置1によって接続すればよい。この場合、液体アクセプタとしての燃料電池としては、メタノール直接型の燃料電池(DMFC)が挙げられ、例えば、パーフルオロスルホン酸系ポリマーなどからなる電解質膜と、この電解質膜の一方の面に設けられるアノード電極と、他方の面に設けられるカソード電極と、両電極を挟むように配置される一対のセパレータを備えている。この燃料電池システムでは、液体リザーバとしての燃料カートリッジから液体アクセプタとしての燃料電池に供給された燃料(メタノール)は、例えば、ポンプによってアノード電極側に供給されるようになっている。一方、カソード電極には、大気中の空気を送り込むことによって酸素が供給されるようになっている。この場合、空気を送り込むための経路の途中には例えばファンなどからなる送風機構が設けられていることが好ましく、これによれば必要に応じて酸素の供給量を増加させることが可能となる。このようにして供給されるメタノールと酸素は、化学反応により発電し、当該反応後は水またはCO2として燃料電池システムの外部へと排出される。
【0030】
第1のジョイント装置10は、第1のハウジング15と、第1のハウジング15内の略中央部に収容され、液体リザーバから供給された液体を第2のジョイント装置50に供給する液体供給部20とを備えている。
【0031】
第1のハウジング15は、例えば、プラスチック、金属、ゴム、エラストマ等、ある程度の弾性変形可能な材料から形成され、液体リザーバの筐体100に取付けられるベース部13と、ベース部13に取付けられた雄型ジョイント部14とを有している。
【0032】
ベース部13の略中央部分には、後に詳述する液体供給部20のシール用ハウジング22の基端部を挿入するための挿入孔11が形成されており、この挿入孔11を画定する内周面には、シール用ハウジング22の基端部の外周面が固定されている。
【0033】
雄型ジョイント部14は、ベース部13から立設された略環状の凸部を互いに間隔をおいて4つに等分割することによって得られた凸型係止部16A、16B、16C及び16Dを備えている。すなわち、凸型係止部16A、16B、16C及び16Dは、同一の形状を有しており、同一円上に配設されると共に、当該円に沿った内周面及び外周面を有している。そして、凸型係止部16Aと凸型係止部16Bとの間、凸型係止部16Bと凸型係止部16Cとの間、凸型係止部16Cと凸型係止部16Dとの間、凸型係止部16Dと凸型係止部16Aとの間には、後に詳述する第2のジョイント装置50に形成されたリブ68A、68B、68C及び68Dが、各々最適に挿入される隙間が形成されている。
【0034】
なお、第1のジョイント装置10では、凸型係止部16Aと凸型係止部16Bとの間に形成された隙間、凸型係止部16Bと凸型係止部16Cとの間に形成された隙間、凸型係止部16Cと凸型係止部16Dとの間に形成された隙間、凸型係止部16Dと凸型係止部16Aとの間に形成された隙間のサイズや形状等は、後に詳述するリブ68A、68B、68C及び68Dが挿入された状態で、第1のジョイント装置10及び第2のジョイント装置50の少なくとも一方に所定以上の回転力が付与されない限り、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dによって、リブ68A、68B、68C及び68Dの回転方向の移動を阻止可能であり、第1のジョイント装置10及び第2のジョイント装置50の少なくとも一方に所定以上の回転力が付与された際に、リブ68A、68B、68C及び68Dが、凸型係止部16A、16B、16Dの外周面に沿って前記回転方向に移動可能であり、次の隙間に挿入可能であれば、特に限定されるものではなく、前記各々の隙間の内周面側の間隔と外周面側の間隔とがほぼ等しくなるように構成してもよく、内周面側の間隔の方が、外周面側の間隔よりも若干狭くなるように形成してもよい。
【0035】
また、この凸型係止部16A、16B、16C及び16Dの先端には、前記円の略中心部に向けて、後に詳述する液体供給部20の先端側に形成された液体供給口21の外周部近傍まで延出するフランジ17A、17B、17C及び17Dが各々連続的に形成されている。このフランジ17A、17B、17C及び17Dは、前記円の略中心部側が狭く、外周側が広い略扇状を有しており、フランジ17A、17B、17C及び17Dによって前記円の略中心部に画定される略円形の孔(空間)39は、例えば、直径1mm程度の小径となるよう設計されているため、仮に、子供等が第1のジョイント装置10に触れたとしても、後に詳述する液体供給部20に接触することを防止するカバー部として配置されるものであり、チャイルドプルーフの役割を果たしている。また、凸型係止部16A、16B、16C及び16Dの外周面には、後に詳述する第2のジョイント装置50に形成された係合爪55A、55B、55C及び55Dが着脱可能に係合する係合部18A、18B、18C及び18Dが形成されている。
【0036】
なお、ベース部13の内壁と、雄型ジョイント部14の内壁によって画定された空間に、液体供給部20が配設される。
【0037】
液体供給部20は、第1のハウジング15内に固定されたシール用ハウジング22と、シール用ハウジング22内に移動可能に配設された第1の弁体30と、一端がシール用ハウジング22の内壁に固定され、他端が第1の弁体30に固定されたコイルバネ31とを備えている。
【0038】
シール用ハウジング22は、例えば、ゴムやエラストマ等の弾性材料から形成され、基端側が第1のハウジング15に固定されており、先端側は略半球状の湾曲面24となっている。シール用ハウジング22の基端側の略中央部には、液体リザーバに収容された液体をシール用ハウジング22内に受容するための液体受容口23が形成されている。一方、湾曲面24の略中央部には、シール用ハウジング22内に浸入した液体を第2のジョイント装置50に供給するための液体供給口21が形成されている。このシール用ハウジング22の内部には、第1の弁体30がコイルバネ31の付勢力によって移動可能に配設される空間が形成されている。また、シール用ハウジング22は、後に詳述する第1の弁体30が密着した際に、第1の弁体30との間をシールすると共に、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50が接続された際に、第2のジョイント装置50の後に詳述する液体受容口71との間をシールする。
【0039】
第1の弁体30は、基端側に移動した際に液体受容口23に挿入される円筒部33と、円筒部33の先端側に連続的に形成されたフランジ34と、フランジ34の先端側の面の略中央部から突出すると共に、液体が流通する流路35が形成された液体流路形成部36と、を備えて構成されている。フランジ34の外周面には、略リング状の凸形状を有するラビリンスシール37が形成されており、第1の弁体30が、シール用ハウジング22の内壁と接触した際に、両者間を確実にシールする。また、フランジ34の基端側の面には、コイルバネ31の一端が固定されており、図3、図5及び図8に示すように、通常の状態では、第1の弁体30は、コイルバネ31の付勢力により常に先端側付勢されており、液体受容口23から液体供給口21に至る液体流路を閉じた状態となっている。このコイルバネ31としては、後に詳述する第2の弁体70を付勢するコイルバネ73の付勢力よりも大きい付勢力を有するものを使用した。
【0040】
第2のジョイント装置50は、第2のハウジング55と、第2のハウジング55内の略中央部に収容され、第1のジョイント装置10から供給される液体を受容し、液体アクセプタに供給する液体供給部60とを備えている。
【0041】
第2のハウジング55は、例えば、プラスチック、金属、エラストマ等の材料から形成され、液体アクセプタの筐体200に取付けられるベース部53と、ベース部53に取付けられた雌型ジョイント部54とを有している。
【0042】
ベース部53の略中央部分には、後に詳述する液体供給部60のシール用ハウジング62の基端部を挿入するための挿入孔61が形成されており、この挿入孔61を画定する内周面には、シール用ハウジング62の基端部の外周面が固定されている。
【0043】
雌型ジョイント部54は、その略中央部に、雄型ジョイント部14を収容可能な略円筒形の凹部64が形成されている。この凹部64を画定する側壁は、雄型ジョイント部14側が、互いに等間隔をおいて4つに分割されており、その各々の先端には、雄型ジョイント部14に形成された係合部18A、18B、18C及び18Dに係合する係合爪55A、55B、55C及び55Dが形成されている。そして、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50とを接続した際に、雄型ジョイント部14が雌型ジョイント部54に収容されて、係合爪55A、55B、55C及び55Dが、係合部18A、18B、18C及び18Dの各々に着脱可能に係合し、両者がスナップホック式に着脱される。すなわち、本実施の形態では、係合部18A、18B、18C及び18Dが、第1のジョイント装置10のスナップホック部を構成し、係合爪55A、55B、55C及び55Dが、第2のジョイント装置50のスナップホック部を構成している。なお、このベース部53の内壁と、雌型ジョイント部54の内壁によって画定された空間に、液体供給部60が配設されている。
【0044】
また、雌型ジョイント部54の基端側の内周面には、内側に突出したリブ68A、68B、68C及び68Dが形成されている。これらのリブ68A、68B、68C及び68Dは、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50とを接続する際に、雄型ジョイント部14の凸型係止部16Aと凸型係止部16Dとの間に形成される隙間、凸型係止部16Aと凸型係止部16Bとの間に形成される隙間、凸型係止部16Bと凸型係止部16Cとの間に形成される隙間、凸型係止部16Cと凸型係止部16Dとの間に形成される隙間に各々挿入される。これらのリブ68A、68B、68C及び68Dは、前記隙間の形状と相補した形状を有しており、第1のジョイント装置10と、第2のジョイント装置50が正しい組合せである場合に、前記各々の隙間に適切に挿入される。すなわち、誤接続防止キー(誤挿入防止のためのメカニカルキー)の役割を果たしており、リブ68A、68B、68C及び68Dは、液体アクセプタに対し、正しい液体リザーバが選択されていない場合、前記各々隙間に適切に挿入されることがなく、液体アクセプタに対し不適切な液体リザーバから不適切な液体が供給されることを防止することができる。なお、これらのリブ68A、68B、68C及び68Dは、雌型ジョイント部54の凹部64を画定するための側壁を補強する役割も果たしている。
【0045】
さらに、これらのリブ68A、68B、68C及び68Dは、第1のジョイント装置10及び第2のジョイント装置50の少なくとも一方に所定以上の回転力が付与されない限り、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dによって、この回転方向の移動が阻止されて、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50とが相対的に回転することを制限する。一方、後に詳述するが、第1のジョイント装置10及び第2のジョイント装置50の少なくとも一方に所定以上の回転力が付与された際は、リブ68A、68B、68C及び68Dは、その回転方向にある凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの外周面を内周面側に向けて押圧する。この押圧力により、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、その弾性によって内周面側に倒されて傾斜し、リブ68A、68B、68C及び68Dが、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの外周面に沿って回転方向に沿って移動し、次の隙間に各々挿入され、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dはその弾性復元力によって元の位置(形状)に戻る。
【0046】
液体供給部60は、シール用ハウジング62と、シール用ハウジング62内に移動可能に配設された第2の弁体70と、一端がシール用ハウジング62の内壁に固定され、他端が第2の弁体70に固定されたコイルバネ73とを備えている。
【0047】
シール用ハウジング62は、シール用ハウジング22と同様の弾性材料から形成され、基端側が第2のハウジング55に固定されており、先端側は中空の円筒部63となっている。シール用ハウジング62の基端側の略中央部には、液体アクセプタに液体を供給するための液体供給口65が形成されている。一方、円筒部63の先端面の略中央部には、第1のジョイント装置10から供給される液体を受容するための液体受容口71が形成されており、液体受容口71の外周部には、ラビリンスシール74が形成されている。このシール用ハウジング62の内部には、第2の弁体70がコイルバネ73の付勢力によって移動可能に配設される空間が形成されている。また、シール用ハウジング62は、第2の弁体70が密着した際に、第2の弁体70との間をシールすると共に、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50が接続された際に、第1のジョイント装置10の液体供給口21との間をシールする。
【0048】
第2の弁体70は、基端側に移動した際に液体供給口65に挿入される円筒部83と、円筒部83の先端側に連続的に形成されたフランジ84と、フランジ84の先端側の面の略中央部から突出すると共に、液体が流通する流路85が形成された液体流路形成部86と、を備えて構成されている。フランジ84の外周面には、略リング状の凸形状を有するラビリンスシール87が形成されており、第2の弁体70が、シール用ハウジング62の内壁と接触した際に、両者間を確実にシールする。また、フランジ84の基端側の面には、コイルバネ73の一端が固定されており、図4、図5及び図8に示すように、通常の状態では、第2の弁体70は、コイルバネ73の付勢力により常に先端側付勢されており、液体受容口71から液体供給口65に至る液体流路を閉じた状態となっている。このコイルバネ73としては、第1の弁体30を付勢するコイルバネ31の付勢力よりも小さい付勢力を有するものを使用した。
【0049】
なお、第1のハウジング15及び第2のハウジング55を形成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、TEFE、PFA、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、本実施の形態では、DMFCに用いられることを考慮し、耐メタノール性の高いポリプロピレンを用いた。
【0050】
また、シール用ハウジング22及び62を形成するゴムやエラストマ等としては、公知の様々な弾性材料を用いることができる。具体的には、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、イソプレンゴム、アクリニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、ブチルゴム、アクリルゴム、クロルスルフォン化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ化ビニリデン系ゴム、テトラフロロエチレン・プロピレン系ゴム、テトラフロロエチレン・パーフロロメチルビニルエーテル系ゴム、フロロシリコーン系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム等が挙げられ、これら1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
次に、本実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置1の具体的動作について説明する。
【0052】
第1のジョイント装置10が配設された液体リザーバに収容された液体を、第2のジョイント装置50が配設された液体アクセプタに供給するには、第1のジョイント装置10の雄型ジョイント部14を、第2のジョイント装置50の雌型ジョイント部54に挿入する。この時、先ず、雄型ジョイント部14の先端部が雌型ジョイント部54の凹部64に挿入されると共に、シール用ハウジング62の円筒部63の先端が、フランジ17A、17B、17C及び17Dによって画定される略円形の孔39から第1のハウジング15内に浸入し、シール用ハウジング22の湾曲面24に接触する。
【0053】
この状態からさらに雄型ジョイント部14を挿入すると、シール用ハウジング22とシール用ハウジング62が互いに押圧し合うが、この時、シール用ハウジング62に配設されたコイルバネ73の付勢力が、シール用ハウジング22に配設されたコイルバネ31の付勢力よりも弱いため、第2の弁体70がコイルバネ73の付勢力に抗して基端側に移動する。この第2の弁体70の移動に追従してシール用ハウジング62が弾性変形(図6参照)し、第2の弁体70とシール用ハウジング62との間に隙間が形成され、液体受容口71から液体供給口65へ至る液体流路が開放される。そしてこの動作により、第2のジョイント装置50が配設されている液体アクセプタ側の液体の受け入れ準備が完了することになる。
【0054】
この状態からさらに雄型ジョイント部14を挿入すると、第2の弁体70がシール用ハウジング62の基端側によって係止され、前記移動が阻止される。これにより、第1の弁体30がコイルバネ31の付勢力に抗して基端側に移動し、この移動に追従してシール用ハウジング22が弾性変形(図6参照)し、第1の弁体30とシール用ハウジング22との間に隙間が形成され、液体受容口23から液体供給口21へ至る液体流路が開放される。
【0055】
以上の動作により、液体受容口23から液体供給口21を経て液体受容口71から液体供給口65へ至る液体流路が開放され、液体リザーバ内の液体が、液体送受用ジョイント装置1を介して液体アクセプタに供給される。このように、先ず、液体アクセプタ側に配設された第2のジョイント装置50の液体流路が開放された後、液体リザーバ側に配設された第1のジョイント装置10の液体流路が開放されるため、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50を接続した際に、両者の間から液漏れが生じることを防止することができる。また、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50との間は、シール用ハウジング22とシール用ハウジング62との密着により確実なシールが行われる。
【0056】
さらにまた、前記一連の動作の際に、雄型ジョイント部14の凸型係止部16Aと凸型係止部16Dとの間に形成される隙間、凸型係止部16Aと凸型係止部16Bとの間に形成される隙間、凸型係止部16Bと凸型係止部16Cとの間に形成される隙間、凸型係止部16Cと凸型係止部16Dとの間に形成される隙間に、雌型ジョイント部54に形成されたリブ68A、68B、68C及び68Dが、各々挿入され、雄型ジョイント部14と雌型ジョイント部54との中心出し(位置決め)が行われる。また、雌型ジョイント部54の内周面に形成された係合爪55A、55B、55C及び55Dが、雄型ジョイント部14の外周面に形成された係合部18A、18B、18C及び18Dにそれぞれ係合し、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50とが安定した最適な状態で接続される。
【0057】
ここで、この第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50との接続に際し、第1のジョイント装置10と、第2のジョイント装置50が正しい組合せである場合に、各々のリブ68A、68B、68C及び68Dは、前記各々隙間に適切に挿入され、液体アクセプタに対し、正しい液体リザーバが選択されていない場合には、前記各々隙間に適切に挿入されることがない。したがって、液体アクセプタに対し不適切な液体リザーバから不適切な液体が供給されることを防止することができる。また、液体リザーバを取り扱う際に、仮に、使用者や子供等が誤って第1のジョイント装置10の液体供給部20に触れようとしても、液体供給部20は、フランジ17A、17B、17C及び17Dによってガードされた状態となっているため、液体供給部20が誤動作することを防止することができる。したがって、液漏れが生じることを抑制することができる。
【0058】
また、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50との接続時に、第1のジョイント装置10を第2のジョイント装置50に対し相対的に回転させようとする力(回転力)が加えられ、この回転力が所定以上となった際には、リブ68A、68B、68C及び68Dが、その回転方向に移動しようとして、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの外周面を内周面側に向けてそれぞれ押圧する。この押圧力により、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、図7に示すように、その弾性によって内周面側に倒されて傾斜し、リブ68A、68B、68C及び68Dが、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの外周面に沿って回転方向に沿って移動し、次の隙間に各々挿入される。この動作により、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、前記押圧力から解放され、その弾性復元力によって元の形状(図6参照)に戻る。
【0059】
このように、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50との接続時に、第1のジョイント装置10を第2のジョイント装置50に対し相対的に回転させようとする所定以上の回転力が、仮に加えられたとしても、リブ68A、68B、68C及び68Dが、前述したように次の隙間に移動することにより、前記回転力を逃がすことができ、リブ68A、68B、68C及び68Dと、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、前記回転力から解放されることになる。したがって、リブ68A、68B、68C及び68Dや、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが、前記回転によって破損することを防止することができる。
【0060】
一方、液体リザーバから液体アクセプタへの液体の供給を終了する際は、第1のジョイント装置10を第2のジョイント装置50から取外せばよい。この時、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50は、スナップホック式で接続されているため、第1のジョイント装置10は、第2のジョイント装置50から簡単に取り外される。第1のジョイント装置10を第2のジョイント装置50から取外すと、先ず、コイルバネ31の付勢力によって、第1の弁体30が先端側に向けて移動し、第1の弁体30がシール用ハウジング22の内壁に密着し、液体受容口23から液体供給口21へ至る液体流路を閉鎖すると共に、シール用ハウジング22がその弾性復元力によって元の形状(図3、図5及び図8参照)に戻る。
【0061】
次に、コイルバネ73の付勢力によって、第2の弁体70が先端側に向けて移動し、第2の弁体70がシール用ハウジング62の内壁に密着し、液体受容口71から液体供給口65へ至る液体流路を閉鎖すると共に、シール用ハウジング62がその弾性復元力によって元の形状(図4、図5及び図8参照)に戻る。このように、先ず、液体リザーバ側に配設された第1のジョイント装置10の液体流路が閉鎖された後、液体アクセプタ側に配設された第2のジョイント装置50の液体流路が閉鎖されるため、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50との接続を解除した際に、両者の間から液漏れが生じることを防止することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、雄型ジョイント部14の構成要素として、4つの凸型係止部16A、16B、16C及び16Dを形成した場合について説明したが、これに限らず、凸型係止部は、2つ以上であれば、その設置数は任意により決定することができる。同様に、リブ(挿入部)は、凸型係止部と、この凸型係止部との間に形成される隙間の数により決定することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dを弾性部材から形成し、第1のジョイント装置10及び第2のジョイント装置50の少なくとも一方に所定以上の回転力が付与された際に、リブ68A、68B、68C及び68Dが、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの外周面を内周面側に向けて押圧して当該内周面側に傾斜させる場合について説明したが、これに限らず、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、必ずしも弾性部材から形成しなくてもよい。凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが、弾性部材から形成されていない場合、あるいは殆ど弾性変形しない材料から形成されている場合、リブ68A、68B、68C及び68Dの強度を、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの強度よりも大きくなるよう設計することで、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが、リブ68A、68B、68C及び68Dよりも先に破損することになり、リブ68A、68B、68C及び68Dが破損しないようにすることができる。このため、液体アクセプタに配設される第2のジョイント装置50の寿命(耐久性)をより向上させることができる。
【0064】
ここで、前述したが、液体アクセプタに配設される第2のジョイント装置50は、基本的に電子機器本体等と一体化されており、電子機器本体等の寿命と同様の耐久性(寿命)を有する必要がある。一方、液体リザーバに配設される第1のジョイント装置10は、液体アクセプタに供給するための液体が無くなると交換されるため、第2のジョイント装置50ほどの耐久性は要求されない。したがって、第2のジョイント装置50の耐久性が、第1のジョイント装置10の耐久性よりも優れていることが望ましい。リブ68A、68B、68C及び68Dの強度を、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dの強度よりも大きくなるよう設計することで、この要望を満たすことができる。
【0065】
また、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが破損した場合であっても、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、誤接続防止の目的で配設されているものであり、液体受容時の第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50とのシール性は、シール用ハウジング22と、シール用ハウジング62との密着性によって決定されるため、液体の送受に支障を来すことはない。
【0066】
そしてまた、リブ68A、68B、68C及び68Dの強度は、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが、弾性部材から形成されている場合であっても、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dよりも大きくなるよう設計してもよい。ここで、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが、弾性部材から形成されている場合、第1のジョイント装置10と第2のジョイント装置50とが相対的に回転し、リブ68A、68B、68C及び68Dが回転方向にある次の隙間に移動した際に、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dは、その弾性復元力によって元の形状に戻るため、繰り返し使用することが可能となるが、仮に、凸型係止部16A、16B、16D及び16Dが破損する条件下に、液体送受用ジョイント装置1がおかれたとしても、リブ68A、68B、68C及び68Dが破損することを防止することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、挿入部としてリブ68A、68B、68C及び68Dを配設した場合について説明したが、これに限らず、挿入部は、雌型ジョイント部14が雄型ジョイント部54を受容した際に、凸型係止部と、凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間に挿入され、且つ、前記隙間に挿入された状態で所定未満の回転力が加えられ、第1のジョイント装置10が第2のジョイント装置50に対し相対的に回転しようとした際に、凸型係止部に係止されて当該回転が阻止され、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、凸型係止部による係止を解除させて前記回転を行うことが可能であれば、他の構成を備えていてもよい。
【0068】
そしてまた、本実施の形態では、第1のハウジング15をベース部13と雄型ジョイント部14により構成した場合について説明したが、これに限らず、第1のハウジング15は、第1の液体流路を有し、第1の弁体30を内蔵可能であれば、ベース部13と雄型ジョイント部14とが一体的に形成されていてもよい。
【0069】
さらにまた、本実施の形態では、第2のハウジング55をベース部53と雌型ジョイント部54により構成した場合について説明したが、これに限らず、第2のハウジング55は、第2の液体流路を有し、第2の弁体70を内蔵可能であれば、ベース部53と雌型ジョイント部54とが一体的に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置の構成要素である第1のジョイント装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる液体送受用ジョイント装置の構成要素である第2のジョイント装置の斜視図である。
【図3】図1に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2に示すIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2に示す第1のジョイント装置と、図4に示す第2のジョイント装置が接続する直前を示す断面図である。
【図6】図2に示す第1のジョイント装置と、図4に示す第2のジョイント装置が接続した状態を示す断面図である。
【図7】第1のジョイント装置と、第2のジョイント装置とが接続された状態で、外部から回転力が付加された状態を示す断面図である。
【図8】図2に示す第1のジョイント装置を液体リザーバの筐体に配設し、図4に示す第2のジョイント装置を液体アクセプタの筐体に接続した状態を示す一部断面である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる燃料電池システムの概略図である。
【符号の説明】
【0071】
1 液体送受用ジョイント装置
10 第1のジョイント装置
14 雄型ジョイント部
15 第1のハウジング
20、60 液体供給部
21、65 液体供給口
22、62 シール用ハウジング
23、71 液体受容口
24 湾曲面
30 第1の弁体
31、73 コイルバネ
50 第2のジョイント装置
54 雌型ジョイント部
55 第2のハウジング
68A、68B、68C、68D リブ
70 第2の弁体
100、200 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体リザーバと、当該液体リザーバに収容された液体を受容する液体アクセプタとを接続する液体送受用ジョイント装置であって、
雄型ジョイント部を有し、前記液体リザーバ及び液体アクセプタの一方に配設される第1のジョイント装置と、
前記雄型ジョイント部を受容する雌型ジョイント部を有し、前記液体リザーバ及び液体アクセプタの他方に配設され、当該雌型ジョイント部が前記雄型ジョイント部を受容した際に前記第1のジョイント装置に接続される第2のジョイント装置と、
を備え、
前記雄型ジョイント部は、互いに間隔をおいて配設された複数の凸型係止部を有し、
前記雌型ジョイント部は、前記雄型ジョイント部を受容した際に、前記凸型係止部と、該凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間に挿入される挿入部を有し、
前記挿入部は、前記隙間に挿入された状態で所定未満の回転力が加えられ、前記第1のジョイント装置が第2のジョイント装置に対し相対的に回転しようとした際に、前記凸型係止部に係止されて当該回転が阻止され、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、前記凸型係止部による係止を解除させて前記回転を行う液体送受用ジョイント装置。
【請求項2】
前記雄型ジョイント部は、弾性部材から形成されてなり、
前記挿入部は、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、前記凸型係止部を弾性変形させて当該回転方向に相対的に移動し、該回転方向に位置する前記とは別の隙間に挿入される請求項1記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項3】
前記複数の凸型係止部は、同一円上に配設されると共に、当該円に沿った内周面及び外周面を有し、
前記挿入部は、前記所定未満の回転力以上の回転力が加えられた際に、前記凸型係止部を前記内周面側に傾斜するよう弾性変形させ、当該凸型係止部の外周面に沿って移動する請求項2記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項4】
前記第1のジョイント装置が前記液体リザーバに配設され、前記第2のジョイント装置が前記液体アクセプタに配設されてなり、前記挿入部の強度は、前記凸型係止部の強度よりも大きい請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項5】
前記雌型ジョイント部は、前記雄型ジョイント部を受容する中空の略円筒形を有する受容部を有し、前記挿入部は、当該受容部の内周面から該受容部の中心部に向けて突出したリブである請求項1ないし請求項4記載のいずれか一項に記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項6】
前記凸型係止部と、該凸型係止部に隣接する凸型係止部との間に形成された隙間は、前記内周面側の間隔が、外周面側の間隔よりも短い請求項3ないし請求項5記載のいずれか一項に記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項7】
前記リブは、前記受容部の内周面側の周方向の長さが、当該受容部の中心部側の周方向の長さよりも長い請求項5または請求項6記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項8】
前記第1のジョイント装置が前記液体リザーバに配設され、前記第2のジョイント装置が前記液体アクセプタに配設されてなり、
前記雄型ジョイント部の先端側の略中央部には、液体供給口を有し、前記液体リザーバから供給される液体を、当該液体供給口を介して前記第2のジョイント装置に供給する液体供給部が配設されてなり、
前記凸型係止部の先端には、前記液体供給口の外周近傍まで延出するフランジが形成されてなる請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項9】
前記第1のジョイント装置と第2のジョイント装置は、スナップホックにより着脱可能に接続される請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項10】
前記雄型ジョイント部の外周面に第1の係合部を形成し、前記雌型ジョイント部の内周面に当該第1の係合部に着脱可能に係合する第2の係合部を形成し、当該第1の係合部に第2の係合部を係合させることで、前記第1のジョイント装置と第2のジョイント装置が接続され、前記係合を解除することで、前記第1のジョイント装置と第2のジョイント装置との接続を解除する請求項9記載の液体送受用ジョイント装置。
【請求項11】
燃料電池と、
液体燃料を収容する液体リザーバと、
前記液体リザーバから供給される液体燃料を受容して前記燃料電池に供給する液体アクセプタと、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の液体送受用ジョイント装置と、
を備えてなる燃料電池システム。
【請求項12】
前記液体燃料が、メタノールを含む請求項11記載の燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−128298(P2008−128298A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311643(P2006−311643)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】