説明

液冷システム

【課題】発熱源と熱的に接触し、該発熱源の熱を奪う受熱プレートと、ラジエータと、この受熱プレートとラジエータとの間で冷媒を循環させるポンプと、ラジエータに対して冷却風を与える冷却ファンとを有する液冷システムにおいて、発熱体が複数存在するとき、あるいは発熱体が単独で発熱量が大きいとき、効率的に放熱ができる、小型の液冷システムを得る。
【解決手段】ラジエータ31,32は発熱源11,12の数と同数以上設けることが好ましいのに対し、冷却ファン41は必ずしもラジエータ31,32に対応させて設ける必要はなく、ラジエータ31,32の数より少数にすれば、小型で効率的な液冷システムができるとの着眼に基づき、流路13a、14aが独立したラジエータ31,32を複数設け、これらラジエータ31,32に対して冷却風を与える冷却ファン41を、該ラジエータ31,32の数より少数設けた液冷システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発熱体(特にPCの発熱源)を冷却するための液冷システムに関する。
【0002】
最近のノート型パソコンは、CPUだけでなく、GPU、チップセット等の複数の発熱体を有しており、これら複数の発熱体を如何に効果的に冷却するかが技術課題となっている。部品の収納スペースが限られているノート型パソコンでは、全体として薄型でユニット性の高い液冷システムが求められている。
【特許文献1】特開2002-261223号公報
【特許文献2】特開2004-3816号公報
【特許文献3】特開2004-266247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし従来品は、発熱源毎に、ポンプ、吸熱部、放熱部(ラジエータ)、冷却ファンを設けており、特にラジエータと冷却ファンはセットで設けられていた。このため、発熱源の数が増える程、大型化するという問題があった。また、発熱源が単独であってもその発熱量が大きいときには、大型のラジエータと冷却ファンを必要とした。
【0004】
本発明は、発熱体が複数存在するとき、あるいは発熱体が単独で発熱量が大きいとき、効率的に放熱ができる、小型の液冷システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ラジエータは発熱源の数と同数以上設けることが好ましいのに対し、冷却ファンは必ずしもラジエータに対応させて設ける必要はなく、ラジエータの数より少数にすれば、小型で効率的な液冷システムができるとの着眼に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、発熱源と熱的に接触し、該発熱源の熱を奪う受熱プレートと、ラジエータと、この受熱プレートとラジエータとの間で冷媒を循環させるポンプと、ラジエータに対して冷却風を与える冷却ファンとを有する液冷システムにおいて、流路が独立したラジエータを複数設け、これらラジエータに対して冷却風を与える冷却ファンを、該ラジエータの数より少数設けたことを特徴としている。
【0007】
ラジエータは、一般的には、各発熱源及び受熱プレートに対応させて設けるのがよい。
【0008】
また、発熱源が単一でその発生熱量が大きいときには、該発熱源の受熱プレートに対して、複数のラジエータを接続することもできる。
【0009】
冷却ファンは、シロッコファンとすると、その周囲に複数のラジエータを容易に配置することができる。
【0010】
一方、ラジエータが複数であっても、ポンプは単一とすることができる。ポンプとしては、圧力損失による流量減少の小さい圧電ポンプを用いるのがよい。
【0011】
ラジエータには、単一の入口ポートと出口ポートと、この入口ポートと出口ポートに両端部が連通する複数の積層流路板とを設けることが好ましい。各積層流路板の間に形成される空気流通隙間に冷却ファンからの冷却風を通過させることで、冷媒を冷却することができる。積層流路板の数は、発熱源の発生熱量(各ラジエータの負担冷却熱量)に応じて増減することができる。
【0012】
また、このようなラジエータ構造とすると、複数のラジエータに用いる積層流路板を同一位置に積層し、この複数のラジエータに対して単一の冷却ファンを容易に配置することができる。
【0013】
各積層流路板には、少なくとも1回U字状に曲折された液流路を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液冷システムは、発熱源の熱を放出するラジエータの数よりも、該ラジエータに冷却風を与える冷却ファンの数を少なくしたので、小型の液冷システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1ないし図4はそれぞれ、本発明による液冷システムの実施形態を示す配置概念図である。図1の実施形態は、2つの発熱源(例えばノートPCのCPUとGPU)11と12を冷却する水冷システムである。単一のポンプ20を出た冷媒は、最初に発熱源11と熱的に接触している受熱シート13の液流路13aを通って該発熱源11の熱を奪った後、第1のラジエータ31に達する。該31の液流路31fを流れた冷媒は、発熱源12と熱的に接触している受熱シート14の液流路14aを通って該発熱源12の熱を奪った後、第2のラジエータ32に達する。該ラジエータ32の液流路32fを流れた冷媒は、ポンプ20に戻る。受熱シート13、14は、伝熱性に優れた金属材料(例えばアルミニウム合金)から構成されており、発熱源11、12で発生した熱を、液流路13a、14aを流れる冷媒に伝達する。このような受熱シートは周知である。
【0016】
2つのラジエータ31と32は並立されており、この2つのラジエータ31と32に対して共通の(単一の)冷却ファン41が設けられている。冷却ファン41とラジエータ31、32の距離は同一である。
【0017】
図2の実施形態は、ラジエータ31と32の配置位置が異なっている。図では、ラジエータ31と32を、冷却ファン41の送風方向に対して前後に位置をずらせて描いているが、ラジエータ31と32は上下に位置をずらせ(図2の紙面に垂直な方向に位置を異ならせ)、冷却ファン41とラジエータ31、32の距離を同一にするのがよい。いずれの実施形態も、2つのラジエータ31、32に対して1つの冷却ファン41が用いられている点では共通である。
【0018】
図3の実施形態は、3つの発熱源(例えばノートPCのCPUとGPUとチップセット)発熱源11、12、15に対して、3つのラジエータ31、32、33を用い、ラジエータ31、32に対して共通に1つの冷却ファン41を用い、ラジエータ33に対して独立した冷却ファン42を用いている。発熱源15と熱的に接触する受熱シート16には他の受熱シートと同様に液流路16aが設けられて、ラジエータ33には他のラジエータと同様に液流路33fが設けられている。
【0019】
図4の実施形態は、1つの発熱源11に対して、3つのラジエータ31、32、33を接続する態様に本発明を適用したものである。発熱源11と熱的に接触する受熱シート17には、3つの独立した液流路17a、17b、17cが形成されている。ポンプ20からの冷媒は、受熱シート17の液流路17aを通ってラジエータ31の液流路31fに達し、液流路31fを出た冷媒は、液流路17bを通った後ラジエータ32の液流路32fに達する。さらに、液流路32fを出た冷媒は、受熱シート17の液流路17cを通ってラジエータ33の液流路33fに至り、ポンプ20に戻る。2つのラジエータ31、32に1つの冷却ファン41が用いられ。1つのラジエータ33に1つの冷却ファン42が用いられている点は、図3の実施形態と同一である。
【0020】
図5は、1つの冷却ファンに複数のラジエータを配置する好ましい配置例を示している。冷却ファン41は、軸部から吸収した空気を周囲360゜に渡って排出可能なシロッコファン41Sからなっており、このシロッコファン41Sの周囲に、ラジエータ31、32、33が配置されている。さらに多数のラジエータを配置することもできる。
【0021】
以上の実施形態のように、単一のポンプ20から出た冷媒を受熱シート(13、14、16、17)の液流路(13a、14a、16a、17aないし17c)と、ラジエータ(31ないし33)の液流路(31fないし33f)で循環させた後、再びポンプ20に戻せば、限られた流量で多くの熱量を運ぶことができ、効率的な冷却ができる。そして、本実施形態ではさらに、ラジエータ(31ないし33)の数よりも冷却ファン(41、42)の数が少ないので、小型化を図ることができる。
【0022】
ポンプ20は、どのタイプでも使用可能であるが、本実施形態の液冷システムは、1つのポンプ20によって、受熱シートの複数の液流路13a、14a、16a、17aないし17cに冷媒を流すため、圧力損失による流量低下の少ない圧電ポンプを用いることが好ましい。図6、図7は、圧電ポンプ20Pの一実施形態を示している。
【0023】
この圧電ポンプ20Pは、下方から順にロアハウジング21とアッパハウジング22を有している。ロアハウジング21には、該ハウジングの板厚平面に直交させて、吐出ポート21Aと吸入ポート21Bが互いに平行に穿設されている。ロアハウジング21とアッパハウジング22の間には、Oリング23を介して圧電振動子(ダイヤフラム)24が液密に挟着支持されていて、該圧電振動子24とロアハウジング21との間にポンプ室Pを構成している。圧電振動子24とアッパハウジング22との間には、大気室Aが形成される。
【0024】
圧電振動子24は、中心部のシム24aと、シム24aの表裏の一面(図7の上面)に積層形成した圧電体24bとを有するユニモルフタイプである。ポンプ室Pには、シム24aが臨んで液体と接触する。シム24aは、導電性の金属薄板材料、例えば厚さ50〜300μm程度のステンレス、42アロイ等により形成された金属製の薄板からなる。圧電体24bは、例えば厚さ300μm程度のPZT(Pb(Zr、Ti)O3)から構成されるもので、その表裏方向に分極処理が施されている。このような圧電振動子は周知である。
【0025】
ロアハウジング21の吐出ポート21Aと吸入ポート21Bにはそれぞれ、逆止弁(アンブレラ)25と26が設けられている。逆止弁25は、吸入ポート21Aからポンプ室Pへの流体流を許してその逆の流体流を許さない吸入側逆止弁であり、逆止弁26は、ポンプ室Pから吐出ポート21Bへの流体流を許してその逆の流体流を許さない吐出側逆止弁である。
【0026】
逆止弁25、26は、同一の形態であり、流路に接着固定される穴あき基板25a、26aに、弾性材料からなるアンブレラ25b、26bを装着してなっている。このような逆止弁(アンブレラ)自体は周知である。
【0027】
以上の圧電ポンプ20Pは、圧電振動子24が正逆に弾性変形(振動)すると、ポンプ室Pの容積が拡大する行程では、吸入側逆止弁25が開いて吐出側逆止弁26が閉じるため、吸入ポート21Aからポンプ室P内に液体が流入する。一方、ポンプ室Pの容積が縮小する行程では、吐出側逆止弁26が開いて吸入側逆止弁25が閉じるため、ポンプ室Pから吐出ポート21Bに液体が流出する。したがって、圧電振動子24を正逆に連続させて弾性変形させる(振動させる)ことで、ポンプ作用が得られる。
【0028】
図8ないし図10は、ラジエータ31ないし33として好ましい実施形態である。特に、流路が独立した複数のラジエータを単一ユニットして形成し、単一の冷却ファンで冷却するのによい。図示実施形態は、上下に2段のラジエータラジエータ31と32を有するタンデムラジエータ30である。このタンデムラジエータ30は、伝熱性のよい金属材料(例えばアルミニウム合金)からなるもので、上方にラジエータ31用の入口ポート31a、出口ポート31b及び複数(図示例では7枚)の積層流路板31cを有し、下方にラジエータ32用の入口ポート32a、出口ポート32b及び複数(図示例では7枚)の積層流路板32cを有している。ラジエータ31と32は、図8、図9に描いた区画線Dで分割したものを結合しても、最初から一体ものとして形成してもよい。
【0029】
図9、図10に示すように、入口ポート31a(32a)は、入口側共通縦通路31d(32d)に連通し、出口ポート31b(32b)は、出口側共通縦通路31e(32e)に連通している。各積層流路板31c(32c)内には、その両端部が、入口側共通縦通路31d(32d)と出口側共通縦通路31e(32e)に連通するU字状の液流路31f(32f)が形成されている。また、各積層流路板31c(32c)の間には、空気流通隙間31g(32g)が形成されている。冷却ファン41は、このタンデムラジエータ30に対して1つが配置され、冷却ファン41からの冷却風は、空気流通隙間31g(32g)を流れる。
【0030】
従って、入口ポート31a(32a)から入った冷媒は、入口側共通縦通路31d(32d)に入って各積層流路板31c(32c)の液流路31f(32f)を流れる。各積層流路板31c(32c)の間には、冷却ファン41による冷却風が流れる空気流通隙間31g(32g)が形成されているので、液流路31f(32f)を流れる間に冷媒は冷却される。そして、出口側共通縦通路31e(32e)に戻った冷媒は、出口ポート31b(32b)から排出されて、次の受熱プレートの液流路またはポンプ20に至る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による液冷システムの一実施形態を示す系統接続図である。
【図2】同別の実施形態を示す系統接続図である。
【図3】同さらに別の実施形態を示す系統接続図である。
【図4】同別の実施形態を示す系統接続図である。
【図5】シロッコファンとラジエータの配置形態の例を示す平面図である。
【図6】圧電ポンプ単体の平面図である。
【図7】図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【図8】タンデムラジエータ単体の斜視図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】図9のX-X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0032】
11 12 15 発熱源
13 14 16 17 受熱シート
13a 14a 16a 17a 17b 17c 液流路
20 圧電ポンプ(ポンプ)
21 ロアハウジング
22 アッパハウジング
24 圧電振動子(ダイヤフラム)
24a シム
24b 圧電体
31 32 33 ラジエータ
31f 32f 33f 液流路
41 42 43 冷却ファン
41S シロッコファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源と熱的に接触し、該発熱源の熱を奪う受熱プレートと、ラジエータと、この受熱プレートとラジエータとの間で冷媒を循環させるポンプと、上記ラジエータに対して冷却風を与える冷却ファンとを有する液冷システムにおいて、
流路が独立した上記ラジエータを複数設け、これらラジエータに対して冷却風を与える冷却ファンを、該ラジエータの数より少数設けたことを特徴とする液冷システム。
【請求項2】
請求項1記載の液冷システムにおいて、上記ラジエータは、各発熱源及び受熱プレートに対応させて設けられている液冷システム。
【請求項3】
請求項1記載の液冷システムにおいて、上記発熱源は単一であり、該発熱源の受熱プレートに対して、複数の上記ラジエータが接続されている液冷システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の液冷システムにおいて、上記冷却ファンはシロッコファンであり、複数の上記ラジエータが一つのシロッコファンの周囲に配置されている液冷システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の液冷システムにおいて、上記ポンプは、単一である液冷システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の液冷システムにおいて、上記ポンプは圧電ポンプである液冷システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の液冷システムにおいて、上記ラジエータは、入口ポートと出口ポート、及び両端部がこの入口ポートと出口ポートに連通する流路を有し、互いの間に空気流通隙間を与えて積層された複数の積層流路板とを有している液冷システム。
【請求項8】
請求項7記載の液冷システムにおいて、複数の上記ラジエータに用いる上記積層流路板は同一位置に積層されていて、この複数のラジエータに対して単一の冷却ファンが配置されている液冷システム。
【請求項9】
請求項7または8記載の液冷システムにおいて、各積層流路板は、少なくとも1回U字状に曲折された液流路を備えている液冷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−156467(P2010−156467A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112196(P2007−112196)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】