説明

液化ガスタンクローリの液量表示装置

【課題】正確な液量を反映可能で、タンクから離れた位置での液面確認が可能となる液化ガスタンクローリの液量表示装置を提供する。
【解決手段】液化ガスタンクローリ1のタンク2内の上部圧力と下部圧力の圧力差を検知して差圧データを電気信号として出力する差圧データ出力手段5と、上記出力された差圧データに基づいてタンク2内の液量を演算する演算部12と、上記演算された液量を表示する表示部13とを有する携帯情報端末7を備えたことにより、タンク2内の差圧データを電気信号として出力してタンク2内の液量を演算することから、従来のアナログ式の液面計のような機械稼動部が少ないため、振動等が加わっても壊れ難く、動作が安定している。このため、メンテナンスが格段に容易になるうえ、コスト的にも大幅に安価となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として炭化水素系の燃料ガスである液化天然ガス等の超低温の液化ガスを貯蔵して所望の場所に搬送可能な液化ガスタンクローリの液量表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス等の液化ガスの液面計は、一般に、液化ガスが極低温であることから、低温環境でも使用可能な差圧式の液面計が用いられている。液化ガスを運搬するタンクローリでは、タンクに電源を備えていないことから、上記液面計として、タンクの後部扉内にバネ等の機械稼動部を持つアナログ式の液面計が配置されている(例えば、下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−321433号公報
【特許文献2】特開2004−123229号公報
【特許文献3】特開2002−302200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の液面計では、タンク内の液量を読み取ることが必要になった場合、タンクローリの運転手や液化ガスを移充填する作業者が、タンクの後部扉まで行って扉を開き、ゲージを目視で読み取らねばならず、読み取り作業が不便なうえ、リアルタイムで液量を知ることができないことから、万一液漏れ等が起こったときにはそれに気づくのが遅れる可能性があった。
【0004】
また、タンクローリのタンクは移動型の容器であるため、機械稼動部にて微小な圧力差を検知するアナログ式の液面計では、移動中のタンクの振動等により壊れやすく、供用期間中に数回も交換が必要なのが実情である。また、上記のようなアナログ式の液面計は、非常に高価であるうえ、近年の経済情勢のもと、液面計のメーカが業務撤退する事態も生じており、タンクローリによる液化ガスの搬送事業そのものに影響を与えかねない事態になっている。
【0005】
一方、タンク内の液面を伝送するシステムとして上記特許文献2のシステムが開示され、タンクローリの流量を演算するシステムとして上記特許文献3のシステムが開示されている。
【0006】
しかしながら、タンクローリで搬送する液化ガスが液化天然ガスである場合、天然ガスの産地によって液化天然ガスの組成が一定ではなく、液密度にもバラツキが存在していることに加え、超低温液化ガスの特性として、液温度や圧力によっても液密度が変動する。ところが、上記従来の液面計では、目盛りが固定されているため、液密度が異なる液化ガスを貯留しても同じ目盛りを読むしかなく、液面計の目盛りがタンク内の液面を正確に反映できていないという問題があった。この状態で正確な液量を知るためには、天然ガスの産地、液温度、圧力ごとに補正換算表を作成して目視で読んだ目盛りを補正する等の作業が必要なのであるが、あまりにも煩雑であるため、現実にはそのようなことは行われていない。
【0007】
また、実務上では、容積ではなく、重量計測による取り引きがなされている。高圧ガス保安法では、容器内容積の90%以上の積載を禁止しているが、重量計測による管理では、液密度変化に対応しにくく、必ずしもこの積載基準を担保できているとは言いがたく、保安上の問題も生じるおそれがある。上記特許文献2および3記載のシステムは、これらの問題を解決しうるものではない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、正確な液量を反映可能で、タンクから離れた位置での液面確認が可能となる液化ガスタンクローリの液量表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の液化ガスタンクローリの液量表示装置は、液化ガスタンクローリのタンク内の上部圧力と下部圧力の圧力差を検知して差圧データを電気信号として出力する差圧データ出力手段と、上記出力された差圧データに基づいてタンク内の液量を演算する液量演算手段と、上記演算された液量を表示する表示手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、本発明は、液化ガスタンクローリのタンク内の上部圧力と下部圧力を検知して差圧データを電気信号として出力する差圧データ出力手段と、上記出力された差圧データに基づいてタンク内の液量を演算する液量演算手段と、上記演算された液量を表示する表示手段とを備えている。このように、タンク内の差圧データを電気信号として出力してタンク内の液量を演算することから、従来のアナログ式の液面計のような機械稼動部が少ないため、車両の運行による振動等が加わっても壊れ難く、動作が安定している。このため、メンテナンスが格段に容易になるうえ、コスト的にも大幅に安価となる。
【0011】
本発明において、上記液量演算手段は、タンク内に貯留した液化ガスの液密度に関する液密度情報の入力を受け付け、受け付けた液密度情報に対応する液密度と差圧データに基づいてタンク内の液量を演算する場合には、液密度と差圧に基づいてタンク内の液量を演算するため、液量演算手段で演算されて表示手段に表示される液量は、タンク内の液量が極めて正確に反映される。したがって、例えば、上記液化ガスが液化天然ガスである場合に、天然ガスの産地に応じた密度に基づいて液量を演算することから、産地が異なる天然ガスを貯留する場合や液化ガスの液温度、圧力が異なる場合でも、正確なタンク内の液量を反映することができる。このため、タンクローリで搬送する場合の物流コストの不都合が解消され、実際にガスになったときの誤差もほとんど解消されて、正確なガス量での取り引きが可能となる。また、保安上の安全も確保される。この場合、例えば、上記液密度情報としてタンク内に貯留する天然ガスの産地情報の入力を受け付け、受け付けた産地情報の産地に対応する液密度に基づいてタンク内の液量を演算したり、液分析により求めた液密度を使用して演算するようにすることもできる。
【0012】
本発明において、上記差圧データ出力手段がタンクに設けられるとともに、上記液量演算手段と表示手段がタンクおよび牽引車から離隔可能な携帯情報端末に備えられ、上記牽引車には、差圧データ出力手段から出力された差圧データを無線により上記携帯情報端末に対して無線送信する無線送信手段が設けられている場合には、液量演算手段で演算されて表示手段に表示されるタンク内の液量を、タンクおよび牽引車から離隔可能な携帯情報端末で知ることができる。このため、わざわざタンクの後部扉まで行かなくても、無線が届く範囲内であれば、運転席や事務所、休憩所等のタンクから離れた場所においてリアルタイムでタンク内の液量を確認することができる。したがって、移動中や停車中でも随時タンク内の液量の確認や監視ができるため、万一液漏れ等の液面異常が発生した場合でも、即座にそれを知ることができ、事故を未然に防ぐ対応が可能となる。
【0013】
本発明において、上記無線送信手段は、上記タンクに設けられた差圧データ出力手段から中継コネクタおよびデータ伝送ケーブルを介して差圧データを受信し、上記受信した差圧データを上記携帯情報端末に対して無線送信するように構成されている場合には、差圧データ出力手段から無線送信手段へ差圧データが確実に伝送され、かつ、データ伝送ケーブルは中継コネクタ部分で切り離しと連結が可能なため、タンクを牽引車から切り離したり連結したりする際にも問題なく対応できる。
【0014】
本発明において、上記タンクに設けられた差圧データ出力手段には、牽引車に設けられた電源部の電源が、中継コネクタを介して供給されるように構成されている場合には、タンクにはもともと電源を備えていないので、わざわざタンクに電源を設けることなく差圧データを電気信号として出力することができる。
【0015】
なお、本発明において、演算される「液量」とは、液容量(例えばリットル)、液重量(例えばton)、液レベル(例えばcm)、差圧(例えばkPa)等の値をいずれも含む趣旨である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明を適用した液化ガスタンクローリの液量表示装置の一実施形態を示す図である。
【0018】
この液量表示装置は、液化ガスを貯留するタンク2と、上記タンク2を牽引する牽引車3とを備えたタンクローリ1において、上記タンク2の液量を表示する装置である。
【0019】
上記液量表示装置は、差圧データ出力手段5と、無線送信手段6と、携帯情報端末7とを備えて構成されている。
【0020】
上記差圧データ出力手段5は、タンク2に設けられ、液化ガスタンクローリ1のタンク2内の上部圧力と下部圧力の圧力差を検知して差圧データを電気信号として出力する。また、上記タンク2の上部の内部圧力を検知して内圧データを電気信号として出力する。
【0021】
上記携帯情報端末7は、タンク2および牽引車3から離隔可能であり、上記差圧データ出力手段5から出力された差圧データに基づいてタンク2内の液量を演算する液量演算手段として機能する演算部12と、上記演算された液量を表示する表示手段として機能する表示部13を備えている。
【0022】
上記牽引車3には、差圧データ出力手段5から出力された差圧データを無線により上記携帯情報端末7に対して無線送信する無線送信手段6が設けられている。
【0023】
上記無線送信手段6は、上記タンク2に設けられた差圧データ出力手段5から中継コネクタ9およびデータ伝送ケーブル10を介して差圧データを受信し、上記受信した差圧データを上記携帯情報端末7に対して無線送信する。
【0024】
より詳しく説明すると、上記差圧データ出力手段5としては、例えば、差圧伝送器を用いることができ、例えばタンク2内部の上部側の圧力と下部側の圧力との圧力差を検知する差圧センサ23と、タンク2内部の上部側の圧力(内圧)を検知する内圧センサ24とを備えている。
【0025】
上記差圧データ出力手段5では、上記差圧センサ23により、タンク2内部の上部側および下部側の圧力を、例えばダイヤフラムシールやキャピラリチューブを介して検知してその差圧を検知し、差圧データを電気信号(例えばこの例では4〜20mAの電流)としてデータ伝送ケーブル10から出力する。上記差圧データは、差圧データ出力手段5に備えたディスプレイ25に、例えばkPa等の差圧値に換算して表示することも可能である。
【0026】
また、上記差圧データ出力手段5では、上記内圧センサ24により、タンク2内部の上部の圧力を、例えばダイヤフラムシールやキャピラリチューブを介して検知してその圧力値を検知し、その内圧データを電気信号(例えばこの例では4〜20mAの電流)としてデータ伝送ケーブル10から出力する。上記内圧データは、差圧データ出力手段5に備えたディスプレイ25に、例えばkPa等の内圧値に換算して表示することも可能である。
【0027】
上記無線送信手段6は、上記差圧データ出力手段5からデータ伝送ケーブル10を介して出力された差圧データおよび内圧データが入力されるネットワークボード18と、上記ネットワークボード18に接続され、上記入力された差圧データおよび内圧データを外部アンテナ20を経由して無線送信するための無線LANアクセスポイント19とを備えている。また、上記無線送信手段6は、牽引車3に設けられた自動車車両用の電源部11の電源が供給され、供給された電源(例えば24V)を、ネットワークボード18で利用できる電圧(例えば5V)に変圧する変圧器21を備えている。
【0028】
また、上記無線送信手段6では、上記供給された電源部11の電源を中継コネクタ9を介して上記差圧データ出力手段5の電源として供給するための電源ケーブル22を備えている。これにより、上記タンク2に設けられた差圧データ出力手段5には、牽引車3に設けられた電源部11の電源が、中継コネクタ9を介して供給されるように構成されている。
【0029】
上記中継コネクタ9は、電源ケーブル22およびデータ伝送ケーブル10の接続および切り離しが可能であり、牽引車3からタンク2を切り離すときは中継コネクタ9を切り離し、牽引車3にタンク2を連結するときには中継コネクタ9を接続することが行われる。
【0030】
上記携帯情報端末7は、上記無線送信手段6から無線送信された差圧データおよび内圧データを受信制御する送受信部14と、上記送受信部14で受信した差圧データに基づいてタンク2内の液量を演算する液量演算手段として機能する演算部12と、上記演算された液量をはじめとする必要な情報を表示する表示手段として機能する表示部13を備えている。
【0031】
また、上記携帯情報端末7は、タンク2内に貯留した液化ガスの液密度に関する液密度情報をはじめとする必要な情報の入力を行うための入力部17を備えている。上記入力部17で入力された液密度情報は、演算部12で受け付け、演算部12が受け付けた液密度情報に対応する液密度と差圧データに基づいてタンク2内の液量を演算する。
【0032】
また、上記携帯情報端末7は、記憶部15と格納部16を備え、格納部16に格納されたプログラムが上記記憶部15に展開され、当該プログラムの制御により、上述した送受信および演算が行われるとともに、後述する制御が実行される。
【0033】
例えば、上記入力部17で入力された液密度情報として液密度データの数値が入力された場合、入力された液密度データと受信した差圧データに基づいて演算部12がタンク2内の液量を演算する。
【0034】
また、タンク2に貯留する液化ガスが液化天然ガスである場合、液化天然ガスの液密度は、天然ガスの産地によって異なる。例えば、アラスカ(ケナイ)産は420.0kg/m、ブルネイ(ルムット)産は463.7kg/m、インドネシア東カリマンタン(ボンタン)産は455.0kg/m、インドネシア北スマトラ(アルン)産は454.3kg/m、オーストラリア(ウイズネルベイ)産は464.5kg/m、マレーシア(ビンツル)産は464.2kg/m、カタール(ラスラファン)産は457.4kg/mである(出典:LNG小規模基地 日本ガス協会編、社団法人日本ガス協会 2000年12月刊 P.1)。
【0035】
したがって、例えば、あらかじめ上記産地情報と液密度データを関連付けて格納部16に格納しておき、上記入力部17で入力された液密度情報として天然ガスの産地情報の入力を受け付け、受け付けた産地情報に基づいて当該産地に対応する液密度データを格納部16から読み出し、読み出された液密度データと受信した差圧データに基づいて演算部12がタンク2内の液量を演算するようにしてもよい。
【0036】
上述した演算の際に、演算される「液量」としては、液容量(例えばリットル)、液重量(例えばton)、液レベル(例えばcm)、差圧(例えばkPa)等の値に演算することができ、上述のようにして演算された液量は、表示部13に表示される。
【0037】
上記携帯情報端末7としては、例えば、PDA端末、小型ノートパソコン等を用いることができる。
【0038】
図3〜図5は、上記携帯情報端末7の表示部13の表示画面の一例を示す図である。以下、これら表示画面を参照しながら、本発明の液量表示装置の動作を説明する。
【0039】
まず、無線送信手段6の電源をONにすると、電源部11から無線送信手段6に電源が供給され、無線送信手段6を経由して、電源ケーブル22および中継コネクタ9を介して差圧データ出力手段5にも電源が供給される。これにより、差圧データ出力手段5から差圧データおよび内圧データの出力が開始され、データ伝送ケーブル10および中継コネクタ9を介して無線送信手段6で差圧データおよび内圧データが受信される。このとき、差圧データ出力手段5のディスプレイ25に差圧データおよび内圧データが表示される。
【0040】
つぎに、携帯情報端末7の電源をONにすると、図3に示す起動画面が表示部13に表示される。この起動画面には、液面モニター開始ボタン27と液密度変更ボタン28が表示されている。
【0041】
上記液密度変更ボタン28には、起動の際すなわち前回の終了直前に設定されていた液密度が表示される。この例では420.0(kg/m)が設定され表示された状態を示す。設定されている液密度を変更する場合には、この液密度変更ボタン28をタッチペンで触れる入力操作を行う。
【0042】
なお、この例では、上記携帯情報端末7としてPDA端末を使用した例を説明しており、表示部13は入力部17としてのタッチパネルを兼ねた画面になっており、画面に表示された所定のボタンの位置をタッチペンで触れることにより所望の入力操作を行ないうるようになっている。なお、表示部13の下にもOKボタン31をはじめとする入力部17としての選択ボタンや入力ボタンが配置されており、必要に応じてこれらの選択ボタンや入力ボタンを用いて入力操作を行うこともできる。
【0043】
液密度変更ボタン28をタッチペンで触れる入力操作を行うと、図4に示す液密度設定画面が表示部13に表示される。この液密度設定画面には、テンキー29と液密度表示部30とが表示され、テンキー29の各数字キーをタッチペンで触れることにより液密度データを入力すると、入力された液密度データが液密度表示部30に表示される。この例では463.7(kg/m)が入力され表示された状態を示す。液密度データを入力したのち、例えばOKボタン31を押すことにより、ここで入力した液密度データをその後の液量の演算に用いるように設定され、液量の演算が開始される。
【0044】
ここで、図3に示す起動画面において、液密度を変更しない場合には、起動画面の液面モニター開始ボタン27をタッチペンで触れ、既に設定されている液密度を用いて液量の演算が開始される。すなわち、差圧データ出力手段5から出力された差圧データおよび内圧データが無線送信手段6で受信され、無線LANにより無線送信されて携帯情報端末7によって受信される。すると、受信された差圧データと上記設定された液密度データとに基づいて演算部12により液量の演算が行われる。
【0045】
このとき、液量として液重量(例えばton)を算出する場合は、差圧データと液密度データから演算され、液レベル(例えばcm)を算出する場合は、差圧データと液密度データに加え、タンク2の容量、傾斜角度、半径、構造等に関するデータを用いて演算される。この際に、環境温度を検知して環境温度による液密度の変動を考慮した補正を行うこともできる。
【0046】
図5は、液量と内圧の表示画面を示す。図3の起動画面で液面モニター開始ボタン27をタッチペンで触れるか、図4の液密度設定画面で液密度データを入力してOKボタン31を押すと、液量の演算が開始され、演算された液量および受信した内圧が表示部13に表示される。
【0047】
図5(A)は、液量を重量(ton)、液面レベル(m)に演算し、差圧データ出力手段5から受信した内圧データ(MPa)とともに表示している。この例では、液量が重量で13.4ton、液面レベルで1.76m、内圧が0.35MPaと数値で表示されるとともに、満タン量に対する液量のレベルを横棒グラフで表示している。図5(B)は、満タン量に対する液量のレベルを縦棒グラフで表示した例である。図5(C)は、液量が差圧で8.28kPa、内圧が0.35MPaと数値で表示されるとともに、満タン量に対する液量のレベルを指示計器のイメージで表示している。満タン量に対する液量のレベルについては、満タン時の液重量や、タンク2の容量、傾斜角度、半径、構造等に関するデータを用いて演算される。
【0048】
上記液量と内圧の表示画面は、タッチペン等による切り換え入力を受け付けて、図5(A)(B)(C)の表示を、必要に応じて切り替え表示することもできる。
【0049】
上述した差圧データ出力手段5からの差圧データおよび内圧データの出力、無線送信手段6による差圧データおよび内圧データの受信およびLANによる無線送信は、無線送信手段6の電源ONの間随時行われる。そして、携帯情報端末7による差圧データおよび内圧データの受信および演算、演算された液量および受信した内圧の表示は、無線送信手段6および携帯情報端末7の電源がONである間、所定時間ごと(例えば1分ごと)に定期的に行われる。これにより、液量の定期的な監視が可能となる。
【0050】
このとき、あらかじめ液量の上限閾値、下限閾値を設定しておき、演算された液量が上限閾値を超えるあるいは下限閾値を下回る状態になった場合に、グラフ等の表示を色を変える画面報知、音声を鳴らす音声報知等の報知により警報を行うように制御することも可能である。
【0051】
演算と表示を終了する場合は、携帯情報端末6の電源をOFFにし、無線送信手段6の電源をOFFにする。
【0052】
上述したタンクローリ1において、タンクローリ1が複数存在する場合に、無線送信手段6が無線送信した差圧データおよび内圧データは、各タンクローリ1に固有の携帯情報端末7で受信して液量を演算および表示してもよいし、1台の携帯情報端末7で複数台のタンクローリ1の差圧データおよび内圧データを受信してそれぞれのタンクローリ1の液量を演算および表示してもよい。
【0053】
図6は、上記タンクローリ1において、牽引車3からタンク2を切り離した状態である。このように、牽引車3からタンク2を切り離す場合には、中継コネクタ9を切り離してデータ伝送ケーブル10および電源ケーブル22を切り離す。そして、ポータブル電源8を中継コネクタ9に接続して電源ケーブル22にポータブル電源8の電源を供給することにより、牽引車3から切り離したタンク2において、差圧データ出力手段5を動作させ、付属のディスプレイ25で差圧等のデータを確認することができる。
【0054】
図7は、上記タンクローリ1において、無線送信手段6が無線送信した差圧データおよび内圧データを、各タンクローリ1に固有の携帯情報端末7で受信するのではなく、受信端末33が接続されたコンピュータ装置32で受信する。例えば駐車場等に待機している複数台のタンクローリ1の差圧データおよび内圧データを事務所等に設置したコンピュータ装置32で受信してそれぞれのタンクローリ1の液量を演算および表示してもよい。これにより、駐車場等に待機している複数台のタンクローリ1の液量を監視し、万一液面異常があったときに対応することができる。
【0055】
図8は、上記タンクローリ1において、牽引車3からタンク2を切り離した状態である。そして、ポータブル電源8が接続された無線送信手段6を中継コネクタ9に接続し、ポータブル電源8の電源を無線送信手段6を介して電源ケーブル22に供給する。そして、牽引車3から切り離したタンク2において、差圧データ出力手段5を動作させ、差圧データ出力手段5が出力した差圧データおよび内圧データをデータ伝送ケーブル10を介して無線送信手段6で受信する。さらに、無線送信手段6が無線送信した差圧データおよび内圧データを、各タンクローリ1に固有の携帯情報端末7で受信するのではなく、受信端末33が接続されたコンピュータ装置32で受信する。例えば駐車場等に待機している複数台のタンクローリ1の差圧データおよび内圧データを事務所等に設置したコンピュータ装置32で受信してそれぞれのタンクローリ1の液量を演算および表示してもよい。これにより、駐車場等に待機している複数のタンク2の液量を監視し、万一液面異常があったときに対応することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、液化ガスタンクローリ1のタンク2内の上部圧力と下部圧力を検知して差圧データを電気信号として出力する差圧データ出力手段5と、上記出力された差圧データに基づいてタンク2内の液量を演算する液量演算手段としての演算部12、上記演算された液量を表示する表示手段としての表示部13を備えている。このように、タンク2内の差圧データを電気信号として出力してタンク2内の液量を演算することから、従来のアナログ式の液面計のような機械稼動部が少ないため、車両の運行による振動等が加わっても壊れ難く、動作が安定している。このため、メンテナンスが格段に容易になるうえ、コスト的にも大幅に安価となる。
【0057】
上記演算部12は、タンク2内に貯留した液化ガスの液密度に関する液密度情報の入力を受け付け、受け付けた液密度情報に対応する液密度と差圧データに基づいてタンク2内の液量を演算する場合には、液密度と差圧に基づいてタンク2内の液量を演算するため、演算部12で演算されて表示部13に表示される液量は、タンク2内の液量が極めて正確に反映される。したがって、例えば、上記液化ガスが液化天然ガスである場合に、天然ガスの産地に応じた密度に基づいて液量を演算することから、産地が異なる天然ガスを貯留する場合や液化ガスの液温度、圧力が異なる場合でも、正確なタンク2内の液量を反映することができる。このため、タンクローリ1で搬送する場合の物流コストの不都合が解消されて、正確なガス量での取り引きが可能となる。また、保安上の安全も確保される。この場合、例えば、上記液密度情報としてタンク2内に貯留する天然ガスの産地情報の入力を受け付け、受け付けた産地情報の産地に対応する液密度に基づいてタンク2内の液量を演算したり、液分析により求めた液密度を使用して演算するようにすることもできる。
【0058】
上記差圧データ出力手段5がタンク2に設けられるとともに、上記演算部12と表示部13がタンク2および牽引車3から離隔可能な携帯情報端末7に備えられ、上記牽引車3には、差圧データ出力手段5から出力された差圧データを無線により上記携帯情報端末7に対して無線送信する無線送信手段6が設けられている場合には、演算部12で演算されて表示部13に表示されるタンク2内の液量を、タンク2および牽引車3から離隔可能な携帯情報端末7で知ることができる。このため、わざわざタンク2の後部扉まで行かなくても、無線が届く範囲内であれば、運転席や事務所、休憩所等のタンク2から離れた場所においてリアルタイムでタンク2内の液量を確認することができる。したがって、移動中や停車中でも随時タンク2内の液量の確認や監視ができるため、万一液漏れ等の液面異常が発生した場合でも、即座にそれを知ることができ、事故を未然に防ぐ対応が可能となる。
【0059】
上記無線送信手段6は、上記タンク2に設けられた差圧データ出力手段5から中継コネクタ9およびデータ伝送ケーブル10を介して差圧データを受信し、上記受信した差圧データを上記携帯情報端末7に対して無線送信するように構成されている場合には、差圧データ出力手段5から無線送信手段6へ差圧データが確実に伝送され、かつ、データ伝送ケーブル10は中継コネクタ9部分で切り離しと連結が可能なため、タンク2を牽引車3から切り離したり連結したりする際にも問題なく対応できる。
【0060】
上記タンク2に設けられた差圧データ出力手段5には、牽引車3に設けられた電源部11の電源が、中継コネクタ9を介して供給されるように構成されている場合には、タンク2にはもともと電源を備えていないので、わざわざタンク2に電源を設けることなく差圧データを電気信号として出力することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、無線送信の手段として無線LANを用いたが、これに限定するものではなく、各種の無線送信を適用することができる。また、適用する液化ガスは天然ガスに限定するものではなく、各種の液化ガスを適用することができる。
【0062】
また、本発明に適用できる液化ガスとしては、液化天然ガス等の炭化水素系燃料に限定するものではなく、それ以外の工業ガスである液化酸素、液化窒素、液化アルゴン、液化炭酸ガス等、各種の液化ガスを適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の液化ガスタンクローリの液量表示装置の一実施形態を示す図である。
【図2】上記液量表示装置を示すシステム構成図である。
【図3】携帯情報端末の表示画面の一例を示す図である。
【図4】携帯情報端末の表示画面の一例を示す図である。
【図5】携帯情報端末の表示画面の一例を示す図である。
【図6】上記液量表示装置の第2の使用例を示す図である。
【図7】上記液量表示装置の第3の使用例を示す図である。
【図8】上記液量表示装置の第4の使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1:タンクローリ
2:タンク
3:牽引車
5:差圧データ出力手段
6:無線送信手段
7:携帯情報端末
8:ポータブル電源
9:中継コネクタ
10:データ伝送ケーブル
11:電源部
12:演算部
13:表示部
14:送受信部
15:記憶部
16:格納部
17:入力部
18:ネットワークボード
19:無線LANアクセスポイント
20:外部アンテナ
21:変圧器
22:電源ケーブル
23:差圧センサ
24:内圧センサ
25:ディスプレイ
27:液面モニター開始ボタン
28:液密度変更ボタン
29:テンキー
30:液密度表示部
31:OKボタン
32:コンピュータ装置
33:受信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスタンクローリのタンク内の上部圧力と下部圧力の圧力差を検知して差圧データを電気信号として出力する差圧データ出力手段と、
上記出力された差圧データに基づいてタンク内の液量を演算する液量演算手段と、
上記演算された液量を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする液化ガスタンクローリの液量表示装置。
【請求項2】
上記液量演算手段は、タンク内に貯留した液化ガスの液密度に関する液密度情報の入力を受け付け、受け付けた液密度情報に対応する液密度と差圧データに基づいてタンク内の液量を演算する請求項1記載の液化ガスタンクローリの液量表示装置。
【請求項3】
上記差圧データ出力手段がタンクに設けられるとともに、上記液量演算手段と表示手段がタンクおよび牽引車から離隔可能な携帯情報端末に備えられ、
上記牽引車には、差圧データ出力手段から出力された差圧データを無線により上記携帯情報端末に対して無線送信する無線送信手段が設けられている請求項1または2記載の液化ガスタンクローリの液量表示装置。
【請求項4】
上記無線送信手段は、上記タンクに設けられた差圧データ出力手段から中継コネクタおよびデータ伝送ケーブルを介して差圧データを受信し、上記受信した差圧データを上記携帯情報端末に対して無線送信するように構成されている請求項3記載の液化ガスタンクローリの液量表示装置。
【請求項5】
上記タンクに設けられた差圧データ出力手段には、牽引車に設けられた電源部の電源が、中継コネクタを介して供給されるように構成されている請求項3または4記載の液化ガスタンクローリの液量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−151199(P2010−151199A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328906(P2008−328906)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(502450631)エア・ウォーター・プラントエンジニアリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】