液化天然ガス車両の燃料系システム
【課題】液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備える液化天然ガス車両のエンジン燃料系システムにおいて、極低温のLNGを極めて効率よく短時間に補給できるようにする。
【解決手段】燃料補給系12の配管28として二重管28aを用いて液化天然ガスの補給ライン29およびボイルオフガスの回収ライン30を形成する。
【解決手段】燃料補給系12の配管28として二重管28aを用いて液化天然ガスの補給ライン29およびボイルオフガスの回収ライン30を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液化天然ガス車両の燃料系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)を燃料とするエンジンを搭載する車両(液化天然ガス車両)は、低公害型かつ圧縮天然ガス(CNG)を燃料とするエンジンを搭載する車両と較べると燃料とするガスを液体の状態で貯蔵するため、同容量の燃料容器の場合、遙かに長距離走行が可能という利点を持つ車両として注目される(特許文献1)。
【0003】
このような、液化天然ガス車両の燃料系システムは、液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備えて構成される。
【特許文献1】特開2006−264568号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料容器への燃料(LNG)の補給については、燃料の補給設備(例えば、LNGスタンド)において、燃料補給系の配管(端末のジョイント)に補給設備の配管(端末のジョイント)を接続し、補給設備側のタンクからLNGを車両側の燃料容器へ充填することが想定される。LNGはその沸点が極低温の液体であるために気化しやすく、補給時において、LNGを車両側の燃料容器へ注入すると、車両側の配管などが外気などの熱で温度が高くなっているため、可燃性のボイルオフガス(BOG)が発生し、配管などが冷却されるまで燃料容器へLNGが流れ込まない。また、LNGが流れて燃料容器に入っても、燃料容器の温度も高くなっているので、そこで大量のBOGが発生し、燃料容器にLNGが入りにくい状況を作ってしまう。そのため、LNGの補給に長時間を要する、という不具合が考えられる。
【0005】
この発明は、このような不具合を改善するための有効な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備える液化天然ガス車両の燃料系システムにおいて、燃料補給系統の配管として二重管を用いて液化天然ガスの補給ラインおよびボイルオフガスの回収ラインを形成したことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記二重管の内管の内側を液化天然ガスの補給ライン、内管と外管との間をボイルオフガスの回収ライン、としたことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記燃料補給系の配管は、液化天然ガスの補給ラインの一部を構成する単管部と、同じくボイルオフガスの回収ラインの一部を構成する単管部と、を備える一方、液化天然ガスの補給およびボイルオフガスの回収を制御する手段として、各単管部に介装される電磁弁と、燃料容器の圧力を所定の範囲に保つように各電磁弁を開閉する手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明においては、二重管により、液化天然ガスの充填(補給)とボイルオフガスの回収とが同時に行えるため、液化天然ガスの補給を効率よく処理することができる。
【0010】
第2の発明においては、液化天然ガスが内管を流れ、その回りを流れるボイルオフガスによって内管が冷却されるため、燃料補給系の配管などの熱で液化天然ガスが気化するのを効果的に防止することができる。
【0011】
第3の発明においては、各電磁弁の制御により、液化天然ガスの充填とボイルオフガスの回収とが同時に行える条件(圧力)を整えて維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、液化天然ガス(LNG)を燃料とするエンジンを搭載する車両(液化天然ガス車両)のエンジン燃料系システムを説明する概要図であり、図2は、LNG(液化天然ガス)の補給処理を説明する流れ図であり、図3は、同じく補給処理を説明する概略図である。
【0013】
図1において、車両のエンジン燃料系システムは、LNGを貯蔵する燃料容器10(タンク)と、燃料容器10から送り出されるLNGを気化させてエンジン(ENG)へ供給する燃料供給系11と、燃料容器10へLNGを補給する燃料補給系12と、を備える。燃料容器10は、2機が車体にバランスよく搭載される。
【0014】
13は燃料供給系11のライン(配管)であり、気化器14、バッファタンク15、LNGレギュレータ16、低圧遮断弁17、などが介装される。気化器14は、エンジン冷却水を熱源に極低温のLNGを気化させるものであり、気化したLNGは、バッファタンク15に貯蔵され、LNGレギュレータ16へ供給される。LNGレギュレータ16は、エンジン冷却水を熱源にLNGの気化を促進しつつエンジンENGへの燃料ガスを所定圧力に減圧する。
【0015】
エンジン運転中は、LNGのエンジンENGへの供給に伴って燃料容器10内の液面(LNGの液相面)が低下して燃料容器10内の圧力が低下するので、燃料容器10内の圧力およびバッファタンク15内の圧力を所定レベルに維持するため、加圧蒸発機18を含む加圧ライン19が備えられる。加圧蒸発機18は、燃料容器10に上流側ライン19aを介して接続され、燃料容器10からのLNG(液体)をエンジン冷却水を熱源に気化させるものであり、気化したLNGは燃料容器10内の圧力が所定レベル以下になると、下流側ライン19bの電磁弁20および導圧管21(後述の圧力計に燃料容器10内の圧力を導く管路を形成するものであり、燃料容器10の安全弁23が配置される)を介して燃料容器10へ供給される。25は燃料容器10内の圧力を検出する圧力計(センサ)であり、26はバッファタンク15内の圧力を検出する圧力計(センサ)であり、電磁弁20はこれらの検出信号に基づいて制御される。
【0016】
28は燃料補給系のラインであり、極低温のLNGを燃料容器へ補給するLNG補給ライン29と、燃料容器内のBOG(ボイルオフガス)などを回収するBOG回収ライン30と、から構成される。32はLNG補給ライン29を開閉する電磁弁であり、33はLNG補給ライン32を流れる極低温のLNGの逆流を防止する逆止弁であり、34はBOG回収ライン30を開閉する電磁弁である。
【0017】
各ライン29,30は、二重管28aを用いて構成される。二重管28aの内管の内側は、LNG補給ライン29、同じく外側がBOG回収ライン30、に設定される。各ライン29,30全体を、二重管28aによって形成するのが望まれるが、LNG補給ライン29の一部を構成する単管部29aと、BOG回収ライン30の一部を構成する単管部30aと、が配置される。つまり、各ライン29,30は、二重管28aを用いて形成される合体部(図1の濃い塗り部分)と、各単管部29a,30aからなる分岐部、とから構成される。LNG補給ライン29の単管部29aにストップ弁36、燃料容器10側の単管部29aに電磁弁32,逆止弁33,ストップ弁35が介装され、BOG回収ライン30の単管部30aにストップ弁37,電磁弁34、燃料容器10側の単管部30aにストップ弁38が介装される。
【0018】
各ライン29,30の端末にLNG充填口とBOG回収口を持つジョイント39が備えられ、LNGの補給時は、外部の補給設備(例えば、LNGスタンド)側のジョイント(ジョイントのLNG充填口およびBOG回収口と対応するLNG注入口およびBOG回収口を備える)と連結(接続)される。外部の補給設備(図示せず)は、大型のLNG貯蔵タンクが備えられ、ジョイント39を介して車両側のライン28からのBOGを回収しつつ、大型のLNG貯蔵タンクから極低温のLNGを車両側のライン28へ注入する。
【0019】
燃料容器10内の圧力は、エンジン運転中においては、既述のようにLNGのエンジンへの供給分に伴う圧力の低下を加圧蒸発機18から供給される気化したLNGの圧力によって補うようになるが、エンジン停止中においては、燃料容器10内の液面の低下がなく、BOGが発生するため、燃料容器10内の圧力が経時的に上昇する。燃料容器10内の過剰な圧力は、安全弁23から放散管40を介して放出され、バッファタンク15内の過剰な圧力は、安全弁41から放散管40を介して放出され、LNG補給ライン29の過剰な圧力は、安全弁43から放散管40を介して放出される。
【0020】
LNGの補給を行う直前においては、燃料容器10内は、LNGの液面が低く、BOGの発生による圧力上昇により、相当の高圧状態にあり、燃料容器10内の温度も、極低温のLNGの残量が少なく、外気の熱も受けるので、相対的(補給LNGの温度と較べる)には、高温状態にある。
【0021】
燃料容器10へ極低温のLNGを補給する処理について、図2,図3に基づいて説明する。図3において、10が燃料容器であり、V1がLNG補給ライン29の電磁弁32であり、V2がBOG回収ライン30の電磁弁34であり、各電磁弁V1、V2は、図示省略の制御装置(エンジン電子制御装置)により、図2のように制御される。なお、燃料容器10は、内部の液面(LNGの液相面)レベルを検出する液面センサ(図示省略)が備えられる。
【0022】
エンジンENGの停止状態において、燃料補給系のジョイント39が外部の補給設備側のジョイントと連結され、補給の準備が完了すると、エンジンキースイッチのオン(エンジンENGは停止状態に維持する)により、補給処理が開始される。
【0023】
ステップ1およびステップ2においては、燃料容器10内の圧力P(圧力計センサ25の検出信号)が外部の補給設備のLNG送り出しの能力(圧力P1)以上のときは、BOG回収スイッチのオンにより電磁弁V1(図1の34)を開弁する。これにより、燃料容器10内のBOGがライン30を通して回収され、燃料容器10内の圧力が低下する。また、二重管28a(図1の濃い塗り部)をBOGが流れるので、その内管(LNG補給ライン29)が冷却される。
【0024】
ステップ3においては、燃料容器10内の圧力PがP3に達すと、電磁弁V2を閉弁する。ついで、ステップ4においては、燃料供給(燃料補給)スイッチのオンにより、電磁弁V2(図1の32)を開弁する。これにより、燃料容器10内の圧力Pが外部の補給設備のLNG送り出しの能力(圧力P1)を下回るため、LNG補給ラインへのLNGの注入が開始される。二重管28aの内管(LNG補給ライン29)がBOGによって冷やされているので、BOGの発生が少なくなり、極低温のLNGが燃料容器10へ流れることになる。
【0025】
LNGが燃料容器10内に入ると、燃料容器10が冷やされるまでは、BOGが多量に発生する可能性がある。ステップ5およびステップ6においては、燃料容器10の圧力をP1以下の所定範囲(P3〜P2)に維持するように電磁弁V1を開閉する。すなわち、燃料容器10内の圧力がP2に上昇したら、電磁弁V1を開弁する一方、燃料容器10内の圧力がP3に低下したら、電磁弁V1を閉弁する。これにより、BOGを回収しつつ、極低温のLNGを補給し続けられるのである。その後、ステップ78においては、燃料容器10内の液面が所定レベルに達したら、補給処理の完了が判定され、電磁弁V1.V2を閉弁する。
【0026】
図4は、LNG補給ライン29の全体およびBOG回収ライン30の全体がそれぞれ単管を用いて構成される場合について、燃料容器10への極低温のLNGを補給する処理を説明するものであり、ステップ11およびステップ12においては、燃料容器10内の圧力Pが外部の補給設備のLNG送り出しの能力(圧力P1)以上のときは、BOG回収スイッチのオンにより電磁弁V1(図3、参照)を開弁する。これにより、燃料容器10内のBOGがライン30(単管)を通して回収され、燃料容器10内の圧力が低下する。
【0027】
ステップ13においては、燃料容器10内の圧力PがP2に達すと、電磁弁V1を閉弁する。ついで、ステップ14およびステップ15においては、燃料供給(燃料補給)スイッチのオンにより、電磁弁V2(図3、参照)を開弁する。これにより、LNG補給ライン30へのLNGの注入が開始されるが、単管の熱でBOGが発生し、燃料が流れ込まない可能性が考えられる。そのため、単管(LNG補給ライン30)の燃料の流れが監視され、ステップ16において、燃料の流れが停止かどうかを判定する。ステップ16の判定がyesのときは、ステップ17において、LNG燃料供給の停止スイッチのオン後、ステップ11へリターンする。ステップ11〜ステップ17の繰り返しにより、単管が冷やされ、燃料容器10へ極低温のLNGが流入するようになるが、LNGが燃料容器10内に入ると、燃料容器10が冷やされるまでは、BOGが多量に発生する可能性があるため、さらにステップ11〜ステップ17が繰り返される。このような繰り返しにより、ステップ16の判定がnoになると、ステップ18およびステップ19においては、燃料容器10内の液面(LNGの液相面)が所定レベルに達したら、補給処理の完了が判定され、電磁弁V2を閉弁するのである。
【0028】
この実施形態においては、燃料補給系のライン28を二重管28aを用いて構成すると共に電磁弁32(V2)、34(V1)を図2のように制御することにより、図4の場合に較べて極低温のLNGを極めて効率よく短時間に補給することができる。
【0029】
図1において、ストップ弁35〜38,51〜53は、必要時に閉弁され、通常は開弁状態に保持される。ストップ弁54および56は、通常は閉弁状態に維持され、燃料供給ライン11のBOGおよび加圧ライン19のBOGを放散管へ逃がすときにのみ開弁する。エンジンENGにおいては、吸気系のスロットルバルブの上流または下流に燃料ガスを供給するノズルが配置され、低圧遮断弁17から燃料ガスのノズルへの供給量をエンジンの運転状態に応じて制御する装置が配置される。58は燃料フィルタであり、低圧安全弁59が備えられる。燃料供給系の電磁弁60は、エンジンキーのオンに開弁され、エンジンキースイッチがオフするまで開弁状態に保持される。気化器14および加圧蒸発機18へのエンジン冷却水は、エンジンENGで駆動されるポンプから供給される。図1の網掛け部分は、適宜手段により保冷される部分を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】エンジンの燃料系システムを説明する構成図である。
【図2】液化天然ガスの補給処理を説明する流れ図である。
【図3】図は、同じく補給処理を説明する概略図である。
【図4】別の補給処理を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0031】
10 燃料容器
11 燃料供給系
12 燃料補給系
14 気化器
15 バッファタンク
16 LNGレギュレータ
18 加圧蒸発機
28 燃料補給系のライン
28a 二重管
29 LNG補給ライン
29a 単管部
30 BOG回収ライン
30a 単管部
32,34,60 電磁弁
【技術分野】
【0001】
この発明は、液化天然ガス車両の燃料系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)を燃料とするエンジンを搭載する車両(液化天然ガス車両)は、低公害型かつ圧縮天然ガス(CNG)を燃料とするエンジンを搭載する車両と較べると燃料とするガスを液体の状態で貯蔵するため、同容量の燃料容器の場合、遙かに長距離走行が可能という利点を持つ車両として注目される(特許文献1)。
【0003】
このような、液化天然ガス車両の燃料系システムは、液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備えて構成される。
【特許文献1】特開2006−264568号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料容器への燃料(LNG)の補給については、燃料の補給設備(例えば、LNGスタンド)において、燃料補給系の配管(端末のジョイント)に補給設備の配管(端末のジョイント)を接続し、補給設備側のタンクからLNGを車両側の燃料容器へ充填することが想定される。LNGはその沸点が極低温の液体であるために気化しやすく、補給時において、LNGを車両側の燃料容器へ注入すると、車両側の配管などが外気などの熱で温度が高くなっているため、可燃性のボイルオフガス(BOG)が発生し、配管などが冷却されるまで燃料容器へLNGが流れ込まない。また、LNGが流れて燃料容器に入っても、燃料容器の温度も高くなっているので、そこで大量のBOGが発生し、燃料容器にLNGが入りにくい状況を作ってしまう。そのため、LNGの補給に長時間を要する、という不具合が考えられる。
【0005】
この発明は、このような不具合を改善するための有効な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備える液化天然ガス車両の燃料系システムにおいて、燃料補給系統の配管として二重管を用いて液化天然ガスの補給ラインおよびボイルオフガスの回収ラインを形成したことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記二重管の内管の内側を液化天然ガスの補給ライン、内管と外管との間をボイルオフガスの回収ライン、としたことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記燃料補給系の配管は、液化天然ガスの補給ラインの一部を構成する単管部と、同じくボイルオフガスの回収ラインの一部を構成する単管部と、を備える一方、液化天然ガスの補給およびボイルオフガスの回収を制御する手段として、各単管部に介装される電磁弁と、燃料容器の圧力を所定の範囲に保つように各電磁弁を開閉する手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明においては、二重管により、液化天然ガスの充填(補給)とボイルオフガスの回収とが同時に行えるため、液化天然ガスの補給を効率よく処理することができる。
【0010】
第2の発明においては、液化天然ガスが内管を流れ、その回りを流れるボイルオフガスによって内管が冷却されるため、燃料補給系の配管などの熱で液化天然ガスが気化するのを効果的に防止することができる。
【0011】
第3の発明においては、各電磁弁の制御により、液化天然ガスの充填とボイルオフガスの回収とが同時に行える条件(圧力)を整えて維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、液化天然ガス(LNG)を燃料とするエンジンを搭載する車両(液化天然ガス車両)のエンジン燃料系システムを説明する概要図であり、図2は、LNG(液化天然ガス)の補給処理を説明する流れ図であり、図3は、同じく補給処理を説明する概略図である。
【0013】
図1において、車両のエンジン燃料系システムは、LNGを貯蔵する燃料容器10(タンク)と、燃料容器10から送り出されるLNGを気化させてエンジン(ENG)へ供給する燃料供給系11と、燃料容器10へLNGを補給する燃料補給系12と、を備える。燃料容器10は、2機が車体にバランスよく搭載される。
【0014】
13は燃料供給系11のライン(配管)であり、気化器14、バッファタンク15、LNGレギュレータ16、低圧遮断弁17、などが介装される。気化器14は、エンジン冷却水を熱源に極低温のLNGを気化させるものであり、気化したLNGは、バッファタンク15に貯蔵され、LNGレギュレータ16へ供給される。LNGレギュレータ16は、エンジン冷却水を熱源にLNGの気化を促進しつつエンジンENGへの燃料ガスを所定圧力に減圧する。
【0015】
エンジン運転中は、LNGのエンジンENGへの供給に伴って燃料容器10内の液面(LNGの液相面)が低下して燃料容器10内の圧力が低下するので、燃料容器10内の圧力およびバッファタンク15内の圧力を所定レベルに維持するため、加圧蒸発機18を含む加圧ライン19が備えられる。加圧蒸発機18は、燃料容器10に上流側ライン19aを介して接続され、燃料容器10からのLNG(液体)をエンジン冷却水を熱源に気化させるものであり、気化したLNGは燃料容器10内の圧力が所定レベル以下になると、下流側ライン19bの電磁弁20および導圧管21(後述の圧力計に燃料容器10内の圧力を導く管路を形成するものであり、燃料容器10の安全弁23が配置される)を介して燃料容器10へ供給される。25は燃料容器10内の圧力を検出する圧力計(センサ)であり、26はバッファタンク15内の圧力を検出する圧力計(センサ)であり、電磁弁20はこれらの検出信号に基づいて制御される。
【0016】
28は燃料補給系のラインであり、極低温のLNGを燃料容器へ補給するLNG補給ライン29と、燃料容器内のBOG(ボイルオフガス)などを回収するBOG回収ライン30と、から構成される。32はLNG補給ライン29を開閉する電磁弁であり、33はLNG補給ライン32を流れる極低温のLNGの逆流を防止する逆止弁であり、34はBOG回収ライン30を開閉する電磁弁である。
【0017】
各ライン29,30は、二重管28aを用いて構成される。二重管28aの内管の内側は、LNG補給ライン29、同じく外側がBOG回収ライン30、に設定される。各ライン29,30全体を、二重管28aによって形成するのが望まれるが、LNG補給ライン29の一部を構成する単管部29aと、BOG回収ライン30の一部を構成する単管部30aと、が配置される。つまり、各ライン29,30は、二重管28aを用いて形成される合体部(図1の濃い塗り部分)と、各単管部29a,30aからなる分岐部、とから構成される。LNG補給ライン29の単管部29aにストップ弁36、燃料容器10側の単管部29aに電磁弁32,逆止弁33,ストップ弁35が介装され、BOG回収ライン30の単管部30aにストップ弁37,電磁弁34、燃料容器10側の単管部30aにストップ弁38が介装される。
【0018】
各ライン29,30の端末にLNG充填口とBOG回収口を持つジョイント39が備えられ、LNGの補給時は、外部の補給設備(例えば、LNGスタンド)側のジョイント(ジョイントのLNG充填口およびBOG回収口と対応するLNG注入口およびBOG回収口を備える)と連結(接続)される。外部の補給設備(図示せず)は、大型のLNG貯蔵タンクが備えられ、ジョイント39を介して車両側のライン28からのBOGを回収しつつ、大型のLNG貯蔵タンクから極低温のLNGを車両側のライン28へ注入する。
【0019】
燃料容器10内の圧力は、エンジン運転中においては、既述のようにLNGのエンジンへの供給分に伴う圧力の低下を加圧蒸発機18から供給される気化したLNGの圧力によって補うようになるが、エンジン停止中においては、燃料容器10内の液面の低下がなく、BOGが発生するため、燃料容器10内の圧力が経時的に上昇する。燃料容器10内の過剰な圧力は、安全弁23から放散管40を介して放出され、バッファタンク15内の過剰な圧力は、安全弁41から放散管40を介して放出され、LNG補給ライン29の過剰な圧力は、安全弁43から放散管40を介して放出される。
【0020】
LNGの補給を行う直前においては、燃料容器10内は、LNGの液面が低く、BOGの発生による圧力上昇により、相当の高圧状態にあり、燃料容器10内の温度も、極低温のLNGの残量が少なく、外気の熱も受けるので、相対的(補給LNGの温度と較べる)には、高温状態にある。
【0021】
燃料容器10へ極低温のLNGを補給する処理について、図2,図3に基づいて説明する。図3において、10が燃料容器であり、V1がLNG補給ライン29の電磁弁32であり、V2がBOG回収ライン30の電磁弁34であり、各電磁弁V1、V2は、図示省略の制御装置(エンジン電子制御装置)により、図2のように制御される。なお、燃料容器10は、内部の液面(LNGの液相面)レベルを検出する液面センサ(図示省略)が備えられる。
【0022】
エンジンENGの停止状態において、燃料補給系のジョイント39が外部の補給設備側のジョイントと連結され、補給の準備が完了すると、エンジンキースイッチのオン(エンジンENGは停止状態に維持する)により、補給処理が開始される。
【0023】
ステップ1およびステップ2においては、燃料容器10内の圧力P(圧力計センサ25の検出信号)が外部の補給設備のLNG送り出しの能力(圧力P1)以上のときは、BOG回収スイッチのオンにより電磁弁V1(図1の34)を開弁する。これにより、燃料容器10内のBOGがライン30を通して回収され、燃料容器10内の圧力が低下する。また、二重管28a(図1の濃い塗り部)をBOGが流れるので、その内管(LNG補給ライン29)が冷却される。
【0024】
ステップ3においては、燃料容器10内の圧力PがP3に達すと、電磁弁V2を閉弁する。ついで、ステップ4においては、燃料供給(燃料補給)スイッチのオンにより、電磁弁V2(図1の32)を開弁する。これにより、燃料容器10内の圧力Pが外部の補給設備のLNG送り出しの能力(圧力P1)を下回るため、LNG補給ラインへのLNGの注入が開始される。二重管28aの内管(LNG補給ライン29)がBOGによって冷やされているので、BOGの発生が少なくなり、極低温のLNGが燃料容器10へ流れることになる。
【0025】
LNGが燃料容器10内に入ると、燃料容器10が冷やされるまでは、BOGが多量に発生する可能性がある。ステップ5およびステップ6においては、燃料容器10の圧力をP1以下の所定範囲(P3〜P2)に維持するように電磁弁V1を開閉する。すなわち、燃料容器10内の圧力がP2に上昇したら、電磁弁V1を開弁する一方、燃料容器10内の圧力がP3に低下したら、電磁弁V1を閉弁する。これにより、BOGを回収しつつ、極低温のLNGを補給し続けられるのである。その後、ステップ78においては、燃料容器10内の液面が所定レベルに達したら、補給処理の完了が判定され、電磁弁V1.V2を閉弁する。
【0026】
図4は、LNG補給ライン29の全体およびBOG回収ライン30の全体がそれぞれ単管を用いて構成される場合について、燃料容器10への極低温のLNGを補給する処理を説明するものであり、ステップ11およびステップ12においては、燃料容器10内の圧力Pが外部の補給設備のLNG送り出しの能力(圧力P1)以上のときは、BOG回収スイッチのオンにより電磁弁V1(図3、参照)を開弁する。これにより、燃料容器10内のBOGがライン30(単管)を通して回収され、燃料容器10内の圧力が低下する。
【0027】
ステップ13においては、燃料容器10内の圧力PがP2に達すと、電磁弁V1を閉弁する。ついで、ステップ14およびステップ15においては、燃料供給(燃料補給)スイッチのオンにより、電磁弁V2(図3、参照)を開弁する。これにより、LNG補給ライン30へのLNGの注入が開始されるが、単管の熱でBOGが発生し、燃料が流れ込まない可能性が考えられる。そのため、単管(LNG補給ライン30)の燃料の流れが監視され、ステップ16において、燃料の流れが停止かどうかを判定する。ステップ16の判定がyesのときは、ステップ17において、LNG燃料供給の停止スイッチのオン後、ステップ11へリターンする。ステップ11〜ステップ17の繰り返しにより、単管が冷やされ、燃料容器10へ極低温のLNGが流入するようになるが、LNGが燃料容器10内に入ると、燃料容器10が冷やされるまでは、BOGが多量に発生する可能性があるため、さらにステップ11〜ステップ17が繰り返される。このような繰り返しにより、ステップ16の判定がnoになると、ステップ18およびステップ19においては、燃料容器10内の液面(LNGの液相面)が所定レベルに達したら、補給処理の完了が判定され、電磁弁V2を閉弁するのである。
【0028】
この実施形態においては、燃料補給系のライン28を二重管28aを用いて構成すると共に電磁弁32(V2)、34(V1)を図2のように制御することにより、図4の場合に較べて極低温のLNGを極めて効率よく短時間に補給することができる。
【0029】
図1において、ストップ弁35〜38,51〜53は、必要時に閉弁され、通常は開弁状態に保持される。ストップ弁54および56は、通常は閉弁状態に維持され、燃料供給ライン11のBOGおよび加圧ライン19のBOGを放散管へ逃がすときにのみ開弁する。エンジンENGにおいては、吸気系のスロットルバルブの上流または下流に燃料ガスを供給するノズルが配置され、低圧遮断弁17から燃料ガスのノズルへの供給量をエンジンの運転状態に応じて制御する装置が配置される。58は燃料フィルタであり、低圧安全弁59が備えられる。燃料供給系の電磁弁60は、エンジンキーのオンに開弁され、エンジンキースイッチがオフするまで開弁状態に保持される。気化器14および加圧蒸発機18へのエンジン冷却水は、エンジンENGで駆動されるポンプから供給される。図1の網掛け部分は、適宜手段により保冷される部分を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】エンジンの燃料系システムを説明する構成図である。
【図2】液化天然ガスの補給処理を説明する流れ図である。
【図3】図は、同じく補給処理を説明する概略図である。
【図4】別の補給処理を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0031】
10 燃料容器
11 燃料供給系
12 燃料補給系
14 気化器
15 バッファタンク
16 LNGレギュレータ
18 加圧蒸発機
28 燃料補給系のライン
28a 二重管
29 LNG補給ライン
29a 単管部
30 BOG回収ライン
30a 単管部
32,34,60 電磁弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備える液化天然ガス車両のエンジン燃料系システムにおいて、燃料補給系統の配管として二重管を用いて液化天然ガスの補給ラインおよびボイルオフガスの回収ラインを形成したことを特徴とする液化天然ガス車両のエンジン燃料系システム。
【請求項2】
前記二重管の内管の内側を液化天然ガスの補給ライン、内管と外管との間をボイルオフガスの回収ライン、としたことを特徴とする請求項1に係る液化天然ガス車両のエンジン燃料系システム。
【請求項3】
前記燃料補給系の配管は、液化天然ガスの補給ラインの一部を構成する単管部と、同じくボイルオフガスの回収ラインの一部を構成する単管部と、を備える一方、液化天然ガスの補給およびボイルオフガスの回収を制御する手段として、各単管部に介装される電磁弁と、燃料容器の圧力を所定の範囲に保つように各電磁弁を開閉する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に係る液化天然ガス車両のエンジン燃料系システム。
【請求項1】
液化天然ガスを貯蔵する燃料容器と、この燃料容器から送り出される液化天然ガスを気化させてエンジンへ供給する燃料供給系と、燃料容器へ液化天然ガスを補給する燃料補給系と、を備える液化天然ガス車両のエンジン燃料系システムにおいて、燃料補給系統の配管として二重管を用いて液化天然ガスの補給ラインおよびボイルオフガスの回収ラインを形成したことを特徴とする液化天然ガス車両のエンジン燃料系システム。
【請求項2】
前記二重管の内管の内側を液化天然ガスの補給ライン、内管と外管との間をボイルオフガスの回収ライン、としたことを特徴とする請求項1に係る液化天然ガス車両のエンジン燃料系システム。
【請求項3】
前記燃料補給系の配管は、液化天然ガスの補給ラインの一部を構成する単管部と、同じくボイルオフガスの回収ラインの一部を構成する単管部と、を備える一方、液化天然ガスの補給およびボイルオフガスの回収を制御する手段として、各単管部に介装される電磁弁と、燃料容器の圧力を所定の範囲に保つように各電磁弁を開閉する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に係る液化天然ガス車両のエンジン燃料系システム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図1】
【図3】
【図4】
【図1】
【公開番号】特開2010−144845(P2010−144845A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323141(P2008−323141)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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