説明

液化天然ガス運搬船

【課題】カーゴマニホールドからパイプスペース内への天然ガスの流入を防止するとともに、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガスを効率よく排出すること。
【解決手段】カーゴマニホールド10に隣接して、パイプラインの一部を収容するパイプスペース20と、給気管45,46を介して前記パイプスペース20の内部下方に外気を供給する少なくとも一台の給気ファン41,42と、排気管47,48を介して前記パイプスペース20の内部上方に存する内気を排出するとともに、前記給気ファン41,42の容量よりも容量の小さい少なくとも一台の排気ファン43,44とを備え、前記パイプスペース20と前記カーゴマニホールド10とを区画する壁面4b,4cには、開口32が設けられており、前記パイプスペース20の内部下方に存する内気の一部が、前記開口32を介して前記カーゴマニホールド10に排出されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス運搬船に関し、特に、モス方式球形タンク内に低温にて液化された天然ガス(LNG)を貯蔵して運搬するLNG船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モス方式球形タンク内に低温にて液化された天然ガスを貯蔵して運搬するLNG船としては、複数個(例えば、4個)の球形タンクの上半部を、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーで覆ったものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−521589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような一つの連続したタンクカバーを有する液化天然ガス運搬船では、カーゴマニホールドとカーゴメインラインとをつなぐクロスオーバーラインを、パイプスペース内に収容し、仮にクロスオーバーラインから天然ガスが漏れ出したとしても、漏れ出した天然ガスがタンクカバー内に拡がっていくのを防止しようとするものがある。そして、このようなパイプスペースでは、パイプスペースの内部上方に空気よりも軽い天然ガス(メタンガス)が滞留するおそれがあるため、パイプスペースの上部に排気ファンを設置し、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガスを強制的に排出する、強制排気方式を採用するのが一般的である。しかしながら、強制排気方式を採用した場合には、パイプスペースに隣接して配置されたカーゴマニホールドにおいて大気放出された天然ガスが、パイプスペースとカーゴマニホールドとを区画する壁面に形成された開口等を介してパイプスペース内に吸引されてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、カーゴマニホールドからパイプスペース内への天然ガスの流入を防止することができ、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガスを効率よく排出することができる液化天然ガス運搬船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る液化天然ガス運搬船は、内部に液化された天然ガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカートを介して船体に固定された複数個の球形タンクと、上甲板上に設けられて前記複数個の球形タンクの上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーと、一端が、前記複数個の球形タンクの内部に接続され、他端が、右舷側および/または左舷側の舷側に設けられたカーゴマニホールドに露出するパイプラインとを備えた液化天然ガス運搬船であって、前記カーゴマニホールドに隣接して、前記パイプラインの一部を収容するパイプスペースと、給気管を介して前記パイプスペースの内部下方に外気を供給する少なくとも一台の給気ファンと、排気管を介して前記パイプスペースの内部上方に存する内気を排出するとともに、前記給気ファンの容量よりも容量の小さい少なくとも一台の排気ファンとを備え、前記パイプスペースと前記カーゴマニホールドとを区画する壁面には、開口が設けられており、前記パイプスペースの内部下方に存する内気の一部が、前記開口を介して前記カーゴマニホールドに排出されるように構成されている。
【0007】
本発明に係る液化天然ガス運搬船によれば、給気ファンから送出された外気は、給気管を介してパイプスペースの内部下方に供給され、パイプスペースとカーゴマニホールドとを区画する壁面に設けられた開口を介してカーゴマニホールド内に強制的に排出されることになる。
また、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガス(メタンガス)は、排気管を介して排気ファンに吸引され、パイプスペース外に排出されることになる。
これにより、カーゴマニホールドからパイプスペース内への天然ガスの流入を防止することができ、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガスを効率よく排出することができる。
【0008】
上記液化天然ガス運搬船において、前記給気ファンの容量が、前記排気ファンの容量の約2倍に設定されているとさらに好適である。
【0009】
このような液化天然ガス運搬船によれば、パイプスペースの内部下方に存する内気が、パイプスペースとカーゴマニホールドとを区画する壁面に設けられた開口を介してカーゴマニホールド内に十分に排出されることになる。
これにより、カーゴマニホールドからパイプスペース内への天然ガスの流入を確実に防止することができる。
【0010】
本発明に係る液化天然ガス運搬船は、内部に液化された天然ガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカートを介して船体に固定された複数個の球形タンクと、上甲板上に設けられて前記複数個の球形タンクの上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーと、一端が、前記複数個の球形タンクの内部に接続され、他端が、右舷側および/または左舷側の舷側に設けられたカーゴマニホールドに露出するパイプラインとを備えた液化天然ガス運搬船であって、前記カーゴマニホールドに隣接して、前記パイプラインの一部を収容するパイプスペースと、給気管を介して前記パイプスペースの内部下方に外気を供給する少なくとも一台の給気ファンとを備え、前記パイプスペースと前記カーゴマニホールドとを区画する壁面には、第1の開口が設けられており、前記パイプスペースの内部下方に存する内気の一部が、前記第1の開口を介して前記カーゴマニホールドに排出されるとともに、前記パイプスペースを構成する前記タンクカバーの頂面には、第2の開口が設けられており、前記パイプスペースの内部上方に存する内気の一部が、前記第2の開口を介して前記パイプスペースの外部に排出されるように構成されている。
【0011】
本発明に係る液化天然ガス運搬船によれば、給気ファンから送出された外気は、給気管を介してパイプスペースの内部下方に供給され、パイプスペースとカーゴマニホールドとを区画する壁面に設けられた第1の開口を介してカーゴマニホールド内に強制的に排出されることになる。
また、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガス(メタンガス)は、パイプスペースを構成するタンクカバーの頂面に設けられた第2の開口を介してパイプスペース外に自然に排出されることになる。
これにより、カーゴマニホールドからパイプスペース内への天然ガスの流入を防止することができ、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガスを効率よく排出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液化天然ガス運搬船によれば、カーゴマニホールドからパイプスペース内への天然ガスの流入を防止することができ、パイプスペースの内部上方に滞留した天然ガスを効率よく排出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る液化天然ガス運搬船の右側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る液化天然ガス運搬船の右舷側に配置されたマニホールドを拡大して示す斜視図である。
【図3】図1に示すパイプスペースを船尾側から見た図であって、パイプスペースの概略の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る液化天然ガス運搬船の一実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る液化天然ガス運搬船の右側面図、図2は本実施形態に係る液化天然ガス運搬船の右舷側に配置されたマニホールドを拡大して示す斜視図、図3は図1に示すパイプスペースを船尾側から見た図であって、パイプスペースの概略の構成を示す図である。
【0015】
図1または図2に示すように、本実施形態に係る液化天然ガス運搬船(LNG船)1は、例えば、四個のアルミニウム製の球形タンク(図示せず)を備えた船舶であり、これらアルミニウム製の球形タンク(「モス方式球形タンク」ともいう。)はそれぞれ、その内部に、液化されたガス(本実施形態では低温にて液化された天然ガス)を貯蔵することができるように構成されたものである。
また、これら球形タンクはそれぞれ、その上端部が球形タンクの赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ(図示せず)上に固定された円筒形のスカート(図示せず)を介して船体2に支持されている。すなわち、これら球形タンクの重量は、スカートを通して船体2で受けられるようになっている。
【0016】
さらに、これら球形タンクの上半部は、その下端部が上甲板(メインデッキ)3上に固定されるとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバー4により覆われている。また、タンクカバー4と上甲板3との間に、伸縮継手は一切設けられておらず、タンクカバー4は剛体構造になっている。すなわち、タンクカバー4は、船体2とともに、船級協会のルール等で要求される船舶の縦強度(船首尾方向(縦方向)に対し、自重、積載される貨物、波の力により生じる曲げの力およびせん断力に対する強度)を確保する構造となっている。
なお、図1中の符号5は、上甲板3よりも一段高いところに設けられた船尾甲板(プープデッキ)を示している。船尾甲板5の上には、操舵室および居室を備えたハウス(居住区構造物)6が配置されており、船尾甲板5の下方には、機関室(図示せず)が配置されている。
【0017】
液化天然ガス運搬船1の船首尾方向における中央部(より詳しくは、タンクカバー4の長手方向における中央部)両舷側(右舷側および左舷側)には、カーゴマニホールド10がそれぞれ設けられている。
図2に示すように、カーゴマニホールド10内には、各球形タンクの内部と連通するパイプライン11の一端部が配置されている。パイプライン11は、船首尾方向に沿って延びるカーゴメインライン12と、船幅方向に沿って延びるクロスオーバーライン13と、ガス用配管16とを備えている。
【0018】
カーゴメインライン12は、クロスオーバーライン13の上部中央から真上(垂直上方)に延びてタンクカバー4の頂面4aを貫通した後、船首側および船尾側に延び、各球形タンクの頂部から球形タンク内の底部に配置されたカーゴポンプ(図示せず)まで延びている。すなわち、カーゴメインライン12の一端は、クロスオーバーライン13の上部中央に接続され、カーゴメインライン12の他端は、各球形タンク内の底部に設置されたカーゴポンプに接続されている。
【0019】
クロスオーバーライン13は、カーゴメインライン12の一端から真横(右舷側および左舷側に向かって水平)に延び、カーゴマニホールド10の船幅中心側の上方に向かって垂下し、カーゴマニホールド10の上方に位置するタンクカバー4の下面(底面)4b(図3参照)を貫通した後、船首尾方向に沿って延びるヘッダ14の中央に接続されている。すなわち、クロスオーバーライン13の一端は、右舷側に配置されたヘッダ14の中央に接続され、クロスオーバーライン13の他端は、左舷側に配置されたヘッダ14の中央に接続されており、クロスオーバーライン13の中央は、カーゴメインライン12の一端に接続されている。
【0020】
ヘッダ14には、真横(船幅方向外側)に向かって延びるとともに、船首尾方向に沿って配列された複数本(本実施形態では4本)の配管15が接続されている。
各配管15は、一旦真横に向かって延びた後、上甲板3に向かって垂下し、再び真横に向かって延びるとともに、隣接する配管15との間隔が拡がるようにして曲げられている。
【0021】
なお、図2中の符号16は、例えば、球形タンク内の液化天然ガスを陸上に荷揚げする際、液化天然ガス運搬船1の球形タンク内の圧力が低下するのを防止するために、陸揚げした液化天然ガス体積相当分のガス(リターンガス)を液化天然ガス運搬船1へ返送するために使用されるガス用配管である。このガス用配管16は、クロスオーバーライン13の近傍をクロスオーバーライン13と同じように船幅方向に延び、船幅中央からカーゴメインライン12の近傍をカーゴメインライン12と同じように真上に延びてタンクカバー4の頂面4aを貫通した後、カーゴメインライン12の近傍をカーゴメインライン12と同じように船首側および船尾側に延び、各球形タンクの頂部から球形タンク内に向かって延びている。
また、球形タンク内の液化天然ガスを陸上に荷揚げする際、および球形タンク内に液化天然ガスを積み込む際には、各配管15およびガス用配管16の先端に、陸上から延びる図示しないローディング・アーム(またはアンローディング・アーム)の先端が接続されるようになっている。
【0022】
図1に示すように、液化天然ガス運搬船1の船首尾方向における中央部(本実施形態では、船首側から2番目の球形タンク(以下、「No.2タンク」という。)と3番目の球形タンク(以下、「No.3タンク」という。)との間)に、パイプスペース20が設けられている。そして、このパイプスペース20内には、カーゴメインライン12の一端部、クロスオーバーライン13の両端部以外の部分(両端部を除いた部分)、カーゴメインライン12の一端部およびクロスオーバーライン13の両端部以外の部分の近傍に配置されたガス用配管16が収容されている。
【0023】
パイプスペース20とNo.2タンクとは、No.2タンクの船尾側に配置されて、船首尾方向と直交する平面に沿って延びる船首側隔壁21により区画されて(仕切られて)おり、パイプスペース20とNo.3タンクとは、No.3タンクの船首側に配置されて、船首尾方向と直交する平面に沿って延びる船尾側隔壁22により区画されて(仕切られて)いる。
また、図3に示すように、パイプスペース20の下方は下面(底面)23により、パイプスペース20の両側方はタンクカバー4の下面(壁面)4b、側面(壁面)4c,側面4d,4eにより、パイプスペース20の上方はタンクカバー4の頂面4aにより区画されて(仕切られて)いる。
すなわち、パイプスペース20は、船首側隔壁21、船尾側隔壁22、下面23、タンクカバー4の下面4b、側面4c,4d,4e、およびタンクカバー4の頂面4aにより形成されている。
なお、図面を見やすくするため、図3中には、カーゴメインライン12、クロスオーバーライン13、およびガス用配管16を示していない。
【0024】
パイプスペース20の船幅中央には、パイプスペース20を右舷側と左舷側とを二等分する中央隔壁24が設けられている。また、右舷側に位置するパイプスペースには、当該パイプスペース内を船幅方向に複数(本実施形態では4つ)のスペースに区画する(仕切る)複数枚(本実施形態では3枚)の隔壁25,26,27が、船幅中央から外方(右舷側)に向かって設けられている。一方、左舷側に位置するパイプスペースには、当該パイプスペース内を船幅方向に複数(本実施形態では4つ)のスペースに区画する(仕切る)複数枚(本実施形態では3枚)の隔壁28,29,30が、船幅中央から外方(左舷側)に向かって設けられている。
ここで、右舷側に位置するパイプスペースのうち、中央隔壁24と隔壁25とで仕切られたスペースを1S、隔壁25と隔壁26とで仕切られたスペースを2S、隔壁26と隔壁27とで仕切られたスペースを3S、隔壁27の外方(右舷側)に位置するスペースを4Sとする。また、左舷側に位置するパイプスペースのうち、中央隔壁24と隔壁28とで仕切られたスペースを1P、隔壁28と隔壁29とで仕切られたスペースを2P、隔壁29と隔壁30とで仕切られたスペースを3P、隔壁30の外方(左舷側)に位置するスペースを4Pとする。
【0025】
中央隔壁24および隔壁25,26,28,29にはそれぞれ、複数(本実施形態では2つ)の開口(第1の開口)31が上下方向に並んで設けられている。また、隔壁27,30にはそれぞれ、少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の開口31が設けられており、タンクカバー4の下面4bおよび側面4cにはそれぞれ、少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の開口32が設けられている。
【0026】
また、タンクカバー4の頂面4a上には、少なくとも一台(本実施形態では2台)の給気ファン(Supply Fan)41,42と、少なくとも一台(本実施形態では2台)の排気ファン(Exhaust Fan)43,44とが設置されている。本実施形態では、給気ファン41,42として400m/minの外気を供給できるものを採用し、排気ファン43,44として200m/minの内気を排出できるものを採用して、パイプスペース20内が常に正圧になるようにしている。
【0027】
船幅中央よりも右舷側に配置された第1の給気ファン(以下、「No.1給気ファン」という。)41には、第1の給気管45が接続され、船幅中央よりも左舷側に配置された第2の給気ファン(以下、「No.2給気ファン」という。)42には、第2の給気管46が接続されている。
第1の給気管45および第2の給気管46はそれぞれ、タンクカバー4の頂面4aを貫通し、中央隔壁24の近傍を中央隔壁24に沿って下面23から所定距離離間した位置まで垂下した後、下面23、側面4c、下面4bの近傍をこれら下面23、側面4c、下面4bに沿って側面4dから所定距離離間した位置まで外方(船幅方向外側)に延びる外気供給管である。また、下面23、側面4c、下面4bに沿って延びる第1の給気管45および第2の給気管46には、肉厚方向に貫通する穴(図示せず)が適宜必要に応じて設けられており、1S,2S,3S,4S,1P,2P,3P,4Pの各スペース内に、No.1給気ファンおよび/またはNo.2給気ファンから送出された外気が供給されるようになっている。
【0028】
一方、船幅中央よりも右舷側に配置された第1の排気ファン(以下、「No.1排気ファン」という。)43には、第1の排気管47が接続され、船幅中央よりも左舷側に配置された第2の排気ファン(以下、「No.2排気ファン」という。)44には、第2の排気管48が接続されている。
第1の排気管47および第2の排気管48はそれぞれ、タンクカバー4の頂面4aを貫通し、頂面4a、側面4eの近傍を頂面4a、側面4eに沿って中央隔壁24、側面4dから所定距離離間した位置まで延びる内気排出管である。また、1S,1Pの各スペース内に位置する第1の排気管47の一端部、第2の排気管48の一端部は、垂直下方に曲げられており、その途中には、管内に流入する内気の量を調整するダンパ(またはオリフィス)49が設けられている。さらに、2S,2Pの各スペース内に位置する第1の排気管47、第2の排気管48には、垂直下方に垂下する枝管50が接続されており、各枝管50の途中には、管内に流入する内気の量を調整するダンパ(またはオリフィス)51が設けられている。さらにまた、3S,3Pの各スペース内に位置する第1の排気管47、第2の排気管48には、垂直下方に垂下する枝管52が接続されており、各枝管52の途中には、管内に流入する内気の量を調整するダンパ(またはオリフィス)53が設けられている。ダンパ49,51,53は、1S,2S,3S,4S,1P,2P,3P,4Pの各スペース内から排出される内気の量が等しくなるように(すなわち、圧力損失が均等になるように)設定されている。そして、1S,2S,3S,4S,1P,2P,3P,4Pの各スペース内から第1の排気管47、第2の排気管48、枝管50,51内に流入した内気は、No.1排気ファン43、No.2排気ファン44により吸引され、パイプスペース20外に排出される。
【0029】
なお、図面を見やすくするため、図1および図2中には、No.1給気ファン41、No.2給気ファン42、No.1排気ファン43、およびNo.2排気ファン44を示していない。
また、No.1給気ファン41、No.2給気ファン42、No.1排気ファン43、およびNo.2排気ファン44は、少なくともクールダウン開始(荷役開始)から荷役が終了して所定時間が経過するまで運転される。
【0030】
本実施形態に係る液化天然ガス運搬船1によれば、No.1給気ファン41、No.2給気ファン42から送出された外気は、第1の給気管45、第2の給気管46を介してパイプスペース20の内部下方に供給され、パイプスペース20とカーゴマニホールド10とを区画する下面4bおよび側面4cに設けられた開口32を介してカーゴマニホールド10内に強制的に排出されることになる。
また、パイプスペース20の内部上方に滞留した天然ガス(メタンガス)は、第1の排気管47、第2の排気管48を介してNo.1排気ファン43、No.2排気ファン44に吸引され、パイプスペース20外に排出されることになる。
これにより、カーゴマニホールド10からパイプスペース20内への天然ガスの流入を防止することができ、パイプスペース10の内部上方に滞留した天然ガスを効率よく排出することができる。
【0031】
また、No.1給気ファン41、No.2給気ファン42の容量が、No.1排気ファン43、No.2排気ファン44の容量の2倍に設定されているので、パイプスペース20の内部下方に存する内気が、パイプスペース20とカーゴマニホールド10とを区画する下面4bおよび側面4cに設けられた開口32を介してカーゴマニホールド10内に十分に排出されることになる。
これにより、カーゴマニホールド10からパイプスペース20内への天然ガスの流入を確実に防止することができる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜必要に応じて変形実施および変更実施することができる。
例えば、No.1給気ファン41、No.2給気ファン42、No.1排気ファン43、およびNo.2排気ファン44は、常に運転させてもよい。
【0033】
また、上述したNo.1排気ファン43、No.2排気ファン44、第1の排気管47、および第2の排気管48の代わりに、タンクカバー4の頂面4aに図示しない開口(第2の開口)を設け、この開口に図示しないベンチレータ(ventilator)等を接続した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 液化天然ガス運搬船
2 船体
3 上甲板
4 タンクカバー
4a 頂面
4b 下面(壁面)
4c 側面(壁面)
10 カーゴマニホールド
11 パイプライン
20 パイプスペース
32 開口
41 No.1給気ファン
42 No.2給気ファン
43 No.1排気ファン
44 No.2排気ファン
45 第1の給気管
46 第2の給気管
47 第1の排気管
48 第2の排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液化された天然ガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカートを介して船体に固定された複数個の球形タンクと、
上甲板上に設けられて前記複数個の球形タンクの上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーと、
一端が、前記複数個の球形タンクの内部に接続され、他端が、右舷側および/または左舷側の舷側に設けられたカーゴマニホールドに露出するパイプラインとを備えた液化天然ガス運搬船であって、
前記カーゴマニホールドに隣接して、前記パイプラインの一部を収容するパイプスペースと、
給気管を介して前記パイプスペースの内部下方に外気を供給する少なくとも一台の給気ファンと、
排気管を介して前記パイプスペースの内部上方に存する内気を排出するとともに、前記給気ファンの容量よりも容量の小さい少なくとも一台の排気ファンとを備え、
前記パイプスペースと前記カーゴマニホールドとを区画する壁面には、開口が設けられており、前記パイプスペースの内部下方に存する内気の一部が、前記開口を介して前記カーゴマニホールドに排出されることを特徴とする液化天然ガス運搬船。
【請求項2】
前記給気ファンの容量が、前記排気ファンの容量の約2倍に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガス運搬船。
【請求項3】
内部に液化された天然ガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカートを介して船体に固定された複数個の球形タンクと、
上甲板上に設けられて前記複数個の球形タンクの上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーと、
一端が、前記複数個の球形タンクの内部に接続され、他端が、右舷側および/または左舷側の舷側に設けられたカーゴマニホールドに露出するパイプラインとを備えた液化天然ガス運搬船であって、
前記カーゴマニホールドに隣接して、前記パイプラインの一部を収容するパイプスペースと、
給気管を介して前記パイプスペースの内部下方に外気を供給する少なくとも一台の給気ファンとを備え、
前記パイプスペースと前記カーゴマニホールドとを区画する壁面には、第1の開口が設けられており、前記パイプスペースの内部下方に存する内気の一部が、前記第1の開口を介して前記カーゴマニホールドに排出されるとともに、
前記パイプスペースを構成する前記タンクカバーの頂面には、第2の開口が設けられており、前記パイプスペースの内部上方に存する内気の一部が、前記第2の開口を介して前記パイプスペースの外部に排出されることを特徴とする液化天然ガス運搬船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−247663(P2010−247663A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99188(P2009−99188)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】