説明

液吐出装置

【課題】微細気泡を効率的かつ高密度に発生させることにより、微細気泡による活性化作用を気軽に享受できる液吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の液吐出装置10は、液導入口11cから液流が導入される後部に設けられた環状断面の液流収容部11Bと、外部に連通する外部開口13aを備え、液流収容部の内部を後方から前方へ貫通し、液流収容部より前方において前方へ向いた内部開口13bを備えた気流導入路13Aと、液流収容部に連通するとともに液流収容部より縮径されて気流導入路の周囲を前方へ向けて伸び、気流導入路の前記内部開口に至るまでは環状断面を備え、内部開口に臨む部分から円形断面となる渦流形成路13Aと、渦流形成路に連通し、最前部に設けられた液吐出口16aと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液吐出装置に係り、特に、泡沫流を放出可能に構成された液吐出装置の放水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、泡沫流を大気中へ吐出可能に構成した液吐出装置が知られており、このような液吐出装置は、例えば、風呂場などで用いられるシャワーヘッド、水道の蛇口に取り付けられる吐水栓、ホースの先端部に装着される洗浄器具などとして用いられている。
【0003】
上記の液吐出装置には、泡沫流を吐出するために、例えば、後方から水流を前方の吐出口へ向けて噴出させつつ、吐出口に隣接した取入口より空気を吸入し、水流中に空気を巻き込むことによって泡沫流を発生させるものが知られている。(例えば、以下の特許文献1乃至3参照)。また、ヘッド背面側に空気取入口を開口し、内部に設けた切換弁の後方から空気を導入して、泡沫流を発生させるようにしたシャワーヘッドも知られている(例えば、以下の特許文献4参照)。さらに、前部の本体に対してスプラインを介して係合し、後部の切換えハンドルと螺合するスリーブを設け、当該スリーブに設けられた旋回流チャンバによって旋回流を形成し、この旋回流をスリーブの前方へ向けて円錐状に広がるように噴射するとともに、前端中央に設けられた整流を吐出するための集中吐水孔から吸入した空気を巻き込むことで、集中吐水孔の周囲に設けられた散水孔より泡沫流を放出するように構成されたシャワーヘッドも提案されている(例えば、以下の特許文献5参照)。
【0004】
ところが、前述の従来文献に記載の液吐出装置においては、泡沫流によって洗浄効果を多少は高めることができるものの、例えば気泡径(気泡の球換算径、以下同様)が50μm以下(好ましくは10μm以下)の微細気泡(マイクロバブル)を高密度に含む泡沫流を形成することができず、また、吐出口から離間するほど気泡径が増大し、気泡密度も低下するため、十分な洗浄効果を得ることが難しいという問題点がある。
【0005】
一方、一般に微細気泡を生成する構造として、旋回流中に空気を導入することで気流がせん断されて微細気泡が生ずるように構成された種々のノズル構造が、浴槽などの水中へ微細気泡を含む水流を噴出させる目的で提案されている(例えば、以下の特許文献6乃至9参照)。特に、特許文献9に示すように、上記原理を利用して肌の洗浄効果を高めるようにした吸引洗浄器としては、水流を側方から装置内部に導入することにより旋回流を発生させながら、この旋回流により生ずる負圧により背後の気体自吸口から空気を自吸させ、装置先端に設けた拡径状の気液噴出ガイド部内にて微細気泡を含む泡沫流を生成させて肌へ当てることができるものが知られている。このような装置は、例えば非特許文献1にも記載されている、微細気泡を水中で発生させる装置構造に基づくものである。また、水中に配置したタービン翼で旋回流を形成しつつ空気を導入し、その先に内径を絞って縮径させた後に拡径するノズルを設けることにより、小径部分を通過した先の拡径部分で渦崩壊(渦の構造が急激に変化する現象)を生じさせることで、微細気泡を生成する方法も知られている(以下の非特許文献2参照)。
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2003/040481
【特許文献2】特開2005−290686号公報
【特許文献3】実公昭51−134号公報
【特許文献4】実用新案登録公報第2590832号公報
【特許文献5】特開平4−306331号公報
【特許文献6】特開2003−181258号公報
【特許文献7】特開2003−225546号公報
【特許文献8】特開2006−142300号公報
【特許文献9】特開2003−38382号公報
【非特許文献1】大成博文著、「マイクロバブルのすべて」、株式会社日本実業出版社、2006年10月20日、P.144〜164
【非特許文献2】京藤敏達(筑波大学システム情報工学研究科)、"渦崩壊を利用した翼型気泡発生装置"、[online]、[平成18年11月24日検索]、インターネット<http://surface.kz.tsukuba.ac.jp/~kyotoh/MicroBubbleHome.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献6乃至9並びに非特許文献1及び2に記載された装置では、水中で旋回流を形成した上でこの流れの中心に空気を導入して微細気泡を発生させ、これを水中へ噴出させるようにしたものであり、大気中に泡沫流を噴出させる場合にはそのまま適用することができない。これは、上記装置ではノズルから旋回流を水中へ放出する時に大量の微細気泡が発生するように構成されているため、大気中へ微細気泡を含む泡沫流を噴出させる場合には微細気泡の発生効率がきわめて低く、十分小径で高密度の微細気泡を生じさせることができないからである。例えば、上記非特許文献2に記載された装置では、上記小径部分までは水中において渦流が進むが、これに続く上記拡径部分では水流が大気中に放出されるため、当該拡径部分での渦崩壊を水中の場合と同様に生じさせることが難しい。また、大気中へ水流を吐出させると、大気を巻き込むことできわめて短い時間内に微細気泡が消失し、所望の作用が得られないことも予測される。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、効率的かつ高密度に微細気泡を発生させることにあり、その結果、微細気泡を含む泡沫流を大気中へ放出しても微細気泡を或る程度維持することができるなど、微細気泡による活性化作用を気軽に享受することができる液吐出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明の液吐出装置は、液導入口から液流が導入される後部に設けられた環状断面の液流収容部と、外部に連通する外部開口を備え、前記液流収容部の内部を後方から前方へ貫通し、前記液流収容部より前方において前方へ向いた内部開口を備えた気流導入路と、前記液流収容部に連通するとともに前記液流収容部より縮径されて前記気流導入路の周囲を前方へ向けて伸び、前記気流導入路の前記内部開口に至るまでは環状断面を備え、前記内部開口に臨む部分から円形断面となる渦流形成路と、該渦流形成路に連通し、最前部に設けられた液吐出口と、を具備することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、液導入口から液流が導入され環状断面の液流収容部に収容されることで旋回流が発生し、その後にさらに縮径された環状断面の渦流形成路に進む過程において旋回流の流速及び旋回周波数が増大し、この高速な旋回流中に気流導入路の内部開口から気流が導入されることにより、旋回流中心の減圧領域に気流(気柱)を含む渦流が形成され、その後、旋回流による気流のせん断作用で徐々に微細気泡が生成されていく。そして、渦流形成路中で発生した渦流が渦流形成路から液吐出口へ進んで吐出される途中で不安定化して崩壊し、十分小径で高密度の微細気泡が混入された泡沫流が形成される。本発明の場合、大径の液流収容部から小径の渦流形成路に進むことで高速な旋回流が生ずるとともに、この高速な旋回流が形成されている渦流形成路の中心部にのみ気流が導入されることで、その先の円形断面内に渦流が安定した状態で形成されることから、気泡の微細化が効率的に進むとともに、渦流形成路から出て液吐出口を経て大気中に噴出される過程で急激な渦崩壊が生じて気泡のさらなる微細化が生じるので、大気中に放出される場合でも微細気泡が維持されやすくなり、その結果、従来の泡沫流よりも高い活性化作用(洗浄作用、生物活性作用など)を容易に得ることができる。
【0010】
なお、液流収容部における旋回流は、基本的には環状断面の液流収容部に液流が導入されることのみで充分に発生するが、例えば、液導入口による液流の導入位置及び導入方向を後述する実施形態のように環状断面形状の外周側において接線方向に斜めに設定することで、より効率的に生じさせることができる。また、渦流形成部の入口側部分がテーパ状に構成され、出口側部分が同径状に構成されることが旋回流の高速化及び渦流の安定化を両立させる上で好ましい。
【0011】
本発明において、前記渦流形成路に連通し、前記渦流形成路の前方にて前記渦流形成路より拡径された広がりを備え前記液吐出口に連通する液吐出室と、前記液吐出室に臨み、前記渦流形成路の出口に対向配置され、前記渦流形成路から導出された液流を前記液吐出室内において周囲へ飛散させる液流飛散部と、をさらに具備することが好ましい。これによれば、渦流形成路から導出された旋回流が大径の液吐出室に放出されることで渦流の不安定化が生じて急激に渦崩壊が生ずるとともに、旋回流が液流飛散部によって周囲に飛散されることで渦崩壊が促進されることから、液吐出口から吐出された泡沫流中の微細気泡の小径化や形成密度をさらに向上させることができ、その結果、微細気泡の維持性能をさらに高めることができる。
【0012】
本発明において、前記渦流形成路内の前記内部開口より上流側に位置する前記液流収容部若しくは前記渦流形成路中には、液流を旋回させる液流旋回手段が設けられていることが好ましい。これによれば、液流旋回手段によって旋回流の流速及び旋回周波数を増加させることができるが、気泡径は渦崩壊時の旋回周波数のおよそ−6/5乗に比例する(上記非特許文献2参照)ため、旋回周波数の増加によって気泡径をさらに低減できる。なお、液流旋回手段としては、液流を旋回させるために流路内に配置されたフィン(タービン翼)、螺旋溝などの液流案内構造自体若しくは当該構造を備えた部材が挙げられる。また、液流旋回手段としては、上記の液流案内構造に加えて旋回エネルギーを別途供給可能なもの、例えば、回転駆動源に接続されたタービンのようなものであっても構わない。
【0013】
本発明において、前記液流旋回手段は前記渦流形成路内において前記気流導入路を構成する管材を支持することが好ましい。渦流形成路内には上記気流導入路を構成する管材が配置されるが、周囲を高速の旋回流が流れることで当該管材に振動が発生する虞がある。しかしながら、液流旋回手段を介して上記管材を渦流形成路内において支持することで、管材の実質的な剛性を高めることができ、管材の振動等を防止できる。上記管材を支持可能な液流旋回手段としては、例えば、上記管材の外周面から渦流形成路の内周面まで連続した構造部分を有する液流案内構造若しくは当該構造を備えた部材等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態の液吐出装置を示す概略縦断面図である。この液吐出装置(シャワーヘッド)10には、水、湯等の液体を導入するための液導入路11Aを備えた液導入部11aと、この液導入部11aに接続され液流収容部11Bを構成する後側ケース部11bとを含み、液導入部11aの内部と後側ケース部11bとが液導入口11cで連通しているとともに、背面中央に開口部11dを有するように構成された、後方から内部構造を覆うケース11が設けられている。このケース11の上記開口部11d内にはケース11に螺合した管支持部材12が嵌合配置され、この管支持材12には軸線10xの方向に伸びる気流導入管13が固定されている。この気流導入管13は外部に連通する外部開口13aを有するとともに、ケース11の内部を軸線10x方向へ伸び、その先端に内部開口13bを備えている。ここで、管支持部材12のケース11に対する螺合深さを変えることで、内部開口13bの軸線10xに沿った位置を前後に調整することができる。
【0015】
ケース11の内部には、中央に上記軸線10xに沿った筒状部14aと、この筒状部14aの後端外周からフランジ状に張り出したフランジ部14bとを有する内側部材14が配置されている。この内側部材14は、そのフランジ部14bの外周がパッキン等のシール部材を介してケース11の内面に密接している。また、内側部材14の前方にはL字状の断面を備えた環形状に構成された固定部材15が配置されている。固定部材15は前方から内側部材14に当接し、内側部材14をケース11に対して保持固定している。
【0016】
ケース11の前方には、1又は複数の液吐出口16aを備えた吐出部材16が配置され、この吐出部材16はケース11の前端部に螺合する保持枠17によって保持され、パッキン等のシール部材を介してケース11及び固定部材15に密接している。なお、固定部材15は上記吐出部材16から受ける押圧力で内側部材14を保持している。吐出部材16の中央内面側には、吐出部材16と一体に形成され、或いは、別体に構成されて接着等で固定された液流飛散部18が設けられている。この液流飛散部18は、内側部材14の筒状部14aの出口14dに対向し、軸線10x周りにテーパ状に傾斜した円錐面状の液流飛散面18aを備えている。なお、吐出部材16と保持枠17を一体に構成してもよい。
【0017】
上記のように構成された液吐出装置10には、上記ケース11の液導入部11aの内側に液導入路11Aが構成され、この液導入路11Aは液導入口11cに連通している。液導入口11cはケース11の後側ケース部11bの内側に形成された液流収容部11Bに開口している。液導入口11cは上記液流収容部11Bに対して外周側から軸線10xの周りを周回する方向に向けて斜めに開口し、これによって液流収容部11B内に旋回流を生じやすくしている。液流収容部11Bは上記管支持部材12及び気流導入管13が軸線10xに沿って貫通していることで、全体として環状断面を有するものとなっている。
【0018】
気流導入管13の内部は外部(ケース11の後方)から気流を導入する気流導入路13Aを形成する。この気流導入路13Aは上記外部開口13aから内部開口13bまで伸びる直線路である。また、上記内側部材14の筒状部14aは渦流形成路14Aを構成する。この渦流形成路14Aは液流収容部11Bよりも縮径され、入口14cが液流収容部11Bに開口している。この場合、渦流形成路14Aの内径が入口14cから徐々に前方へ向けて縮径していることが好ましい。
【0019】
また、渦流形成路14Aの内部には上記気流導入管13が軸線10xに沿って導入され、その内部開口13bが途中で開口している。すなわち、渦流形成路14Aの入口側部分は気流導入管13の存在により環状断面とされ、出口側部分は気流導入管13が存在しないことで円形断面とされている。図示例の場合、渦流形成路14Aは入口14cから徐々に縮径するようにテーパ状に構成され、途中でほぼ同径に構成されて出口14dに至るように構成される。テーパ状の部分は上記の入口側部分にほぼ対応し、同径の部分は上記の出口側部分にほぼ対応する。このように渦流形成路の入口側部分がテーパ状に構成され、出口側部分が同径状に構成されることが旋回流の高速化及び渦流の安定化を両立させる上で好ましい。なお、内部開口13bの軸線10xに沿った位置は上述のように調整可能であり、この調整によって渦流形成路14A内の気流が導入される位置が変わるため、後述する微細気泡の発生状態を適宜に設定することが可能になる。
【0020】
渦流形成路14Aの出口14dは、上記固定部材15及び吐出部材16に囲まれた液吐出室16Aに開口している。この液吐出室16Aは渦流形成路14Aより拡径された断面を有し、吐出部材16に設けられた液吐出口16aを介して外部と連通している。この液吐出室16A内において、渦流形成路14Aの出口14dは上記液流飛散部18の液流飛散面18aに対向配置されている。液吐出口16Aは液流飛散面18aの外周側に複数分散して形成されている。
【0021】
以上のように構成された第1実施形態の液吐出装置10においては、液導入路11Aから液導入口11cを通して液流収容部11Bに液体が導入され、環状断面の液流収容部11B内において旋回流が発生する。液流収容部11B内の旋回流は入口14cから渦流形成路14A内に導入され、小径の渦流形成路に導入されることで流速及び旋回周波数が増加する。ここで、図2に示すように、液体の旋回流Xが内部開口13bを通過することで生ずる減圧作用により気流導入路13Aを通して気流が内部に吸引されており、これによって旋回流X中に気流Yが導入される。高速な旋回流Xは遠心力によって軸線10xに沿った中央部に減圧領域を生じさせるので、気流Yは当初軸線10xに沿って気柱状となり、旋回流Xの内側を流れながら徐々に旋回流Xのせん断力で分離され、微細気泡を発生させる。このようにして、渦流形成路14A内では旋回流X中に気流Y及びその周辺の微細気泡によって形成される渦流Zが形成される。この渦流Zは小径の渦流形成路14A内においては高速な旋回流Xによって比較的安定な状態にあり、当初は軸線10xに沿って旋回流Xの中心部を流れるとともに旋回流Xによるせん断力で徐々に微細気泡が形成されていくが、渦流形成路14Aの出口14d近傍から液吐出室16Aにかけて旋回流Xの不安定化により渦崩壊を生ずる。この渦崩壊によって不安定化された渦流Z′中の気流は急激に微細化され、小径及び高密度の微細気泡が形成される。
【0022】
液吐出室16A内に出た旋回流Xは渦流Z′とともに液流飛散面18aに衝突し、ここで渦流Z′は完全に破壊されるとともに、さらに微細気泡が形成される。このようにして小径(50μ以下、好ましくは10μm以下)できわめて高密度の微細気泡が水中に含まれたまま、液吐出室16Aで形成された泡沫流が液吐出口16aより外部へ吐出される。
【0023】
本実施形態では、液流収容部11Bで発生した旋回流は、縮径された小径の渦流形成路14A内で高速な旋回流Xとなり、この旋回流X内に内部開口13bから気流が導入され、ここで渦流Z、Z′が形成されるため、安定した渦流Zを形成することができるとともに、その後に、渦崩壊が発生するので、微細気泡の小径化及び高密度化がさらに促進される。したがって、従来のシャワーヘッド等から吐出される泡沫流に比べてより小径の微細気泡が高密度に含まれるため、液吐出口16aから吐出された後においても微細気泡が失われにくく、大気中に放出された泡沫流であっても微細気泡が従来よりも長く維持されるので、十分な活性化作用、例えば、洗浄作用、血流増大作用等を奏することが可能になる。
【0024】
図3は、上記第1実施形態の基本構成を踏襲しつつ、細部に改良を加えた第2実施形態の液吐出装置20の構造を示す縦断面図である。この第2実施形態の液吐出装置20は、液導入部21a及び後側ケース部21bを有し、それらの内部に液導入路21A、液導入口21c及び液流収容部21Bを備えたケース21、ケース21の開口部21dに装着された管支持部材22、管支持部材22に支持固定され、外部開口23a、気流導入路23A及び内部開口23bを備えた気流導入管23、筒状部24a及びフランジ部24bを有するとともに、筒状部24aに入口24c及び出口24dを備えた渦流形成路24Aを構成する内側部材24、この内側部材24を固定する固定部材25、液吐出孔26aを備えた吐出部材26、吐出部材26を保持する保持枠27、並びに、液流飛散面28aを備えた液流飛散部28を具備し、これらはすべて以下に説明する点を除き基本的に第1実施形態と同様であるので、同様の点についての説明を省略する。なお、吐出部材26と保持枠27を一体に構成してもよい点は同様である。
【0025】
本実施形態では、管支持部材22の後部に凹穴22aが設けられ、この凹穴22aの内部に上記気流導入管23の外部開口23aが開口している。上記凹穴22aには気流調整ねじ29がねじ込まれ、このねじ込み量によって気流調整ねじ29の先端に設けられた調整端29aが気流吸引口23aの開口面積を増減して気流の導入量を調整できるようになっている。具体的には、上記調整端29aは円錐形状を有し、その先端の外部開口23a内への挿入深さにより、気流の通過面積が増減するようになっている。なお、気流調整ねじ29に設けられた貫通孔29bは気流の流入口を構成している。
【0026】
また、内側部材24の筒状部24a内に構成される渦流形成路24A内には、液流旋回手段である液流旋回部材31が配置され、バヨネット構造等で取り付けられる保持部材32により保持固定されている。この液流旋回部材31は、上流側から流入した液流を螺旋状に案内する螺旋溝31aを有し、この螺旋溝31aによって液流を案内し、螺旋溝31aに沿って旋回させるように作用する。
【0027】
なお、液流旋回手段としては、図4に示す液流旋回部材31′のように、タービン形のフィン31a′を備えたものを用いてもよい。この液流旋回部材31′は気流導入管23の外周面上から筒状部24aの内周面上に至るまで連続する構造部分を有しているので、気流導入管23と内側部材24の間に介在し、気流導入管23を外側から支持する。これによって気流導入管23に振動が発生することを防止でき、また、衝撃を受けたときに気流導入管23が破損する虞も低減できる。
【0028】
本実施形態において、液流旋回部材31は渦流形成路24A内に導入された旋回流の流速及び旋回周波数を増大させる。また、渦流形成路24Aは、液流旋回部材31から出た部分でさらに縮径し、旋回流の流速及び旋回周波数をさらに増大させることができる。これによって、気流導入路23Aの内部開口23bから導出される気流は第1実施形態よりさらに高速な旋回流の中心部に流入することとなるため、微細気泡の生成効率をより高めることができる。
【0029】
図5は、上記第1実施形態又は第2実施形態の液吐出装置10、20に対して交換装着可能な別の吐出部材36、並びに、追加装着可能な延長アダプタ37を示す縦断面図である。吐出部材36は、基本的に上記各実施形態のケース11,21に対して保持枠17,27により保持固定されるように構成されているが、上記各実施形態とは異なり、中央部に上記内側部材14,24の筒状部14a,24aの前端と密接する筒状部36aが形成され、この筒状部36aの吐出口36bが外部へ開口していることによって、上記渦流形成路14A,24Aの出口14d、24dが筒状部36aを通して外部へ直接に連通するように構成される。
【0030】
この吐出部材36を上記各実施形態に用いることで、渦流形成路14A,24A中の旋回流及び渦流はそのまま外部へと吐出され、吐出時に渦崩壊が発生することにより、微細気泡が発生する。この構造では、泡沫流が大気中へ吐出されると、大気を巻き込むことで微細気泡が比較的短時間に消滅するが、それでも、渦流形成路14A,24Aと気流導入管13,23の内部開口13b、23bとの位置関係によって従来よりも微細気泡による作用を効果的に発揮させることが可能である。
【0031】
図5に示す延長アダプタ37は、上記各実施形態の保持枠17,27の代わりに吐出部材16、26、36をケース11,21に保持固定するために用いられるものである。延長アダプタ37をケース11、21に装着することで、延長アダプタ37の前端部を対象物に当接させることが可能になり、これによって吐出部材16,26,36と対象物との距離を固定することができるため、吐出部材16,26,36から吐出された泡沫流を対象物に対して確実に所定距離にて作用させることができる。
【0032】
図6は、上記第1実施形態の構成を基本とし、当該構成に対して泡沫流と整流とを切り替えて吐出することができるように構成した第3実施形態の縦断面図である。この実施形態の液吐出装置40は、上記第1実施形態と基本的には同様の、液導入部41a及び後側ケース部41bを有し、それらの内部に液導入路41A、液導入口41c及び液流収容部41Bを備えたケース41、ケース41の開口部41dに装着された管支持部材42、管支持部材42に支持固定され、外部開口43a、気流導入路43A及び内部開口43bを備えた気流導入管43、筒状部44a及びフランジ部44bを有するとともに、筒状部44aによって入口44c及び出口44dを備えた渦流形成路44Aが構成される内側部材44、内側部材を固定する固定部材45、液吐出孔46aを備えた吐出部材46、吐出部材46を保持する保持枠47、並びに、液流飛散面48aを備えた液流飛散部48を具備し、これらはすべて以下に説明する点を除き基本的に第1実施形態と同様であるので、同様の点についての説明を省略する。なお、吐出部材46と保持枠47を一体に構成してもよい点は同様である。
【0033】
本実施形態において、気流導入管43は管支持部材42と一体に構成されて気流導入部材を構成し、その後部の開口部に気流導入通路49aを設けた支持部材49Aが嵌合され、この支持部材49Aに気流調整ねじ49Bが螺入されている。この気流調整ねじ49Bは上記と同様の調整端49bが設けられ、その螺入深さに応じて気流の導入量を調整できるように構成されている。なお、このような構成は上記各実施形態にも同様に適用できる。
【0034】
また、内側部材44は、固定部材45の案内部45Aにより軸線40xに沿って移動可能に案内されている。ここで、案内部45Aは、内側部材44の軸線40xに沿って突出する凸部44pと嵌合するように軸線40xに沿って穿設された嵌合穴45hを有し、内側部材44を軸線40xに沿って移動可能に構成しつつ、内側部材44が軸線40x回りに回転しないようにしている。また、内側部材44は固定部材45の駆動部45Bに対して軸線40x周りに形成されたネジ構造を介して螺合されている。さらに駆動部45Bは吐出部材46及び保持枠47に対して固定されて一体化されているとともに、ケース41及び案内部45Bに対して軸線40x回りに回転可能に取り付けられている。
【0035】
保持枠47をケース41に対して回転させると、一体的に取り付けられた駆動部45Aが共に回転するので、内側部材44は軸線40xに沿って移動する。具体的には、内側部材44は、駆動部45Bのネジ構造により駆動されるとともに案内部45Aに案内されることにより、図示実線で示す前端位置と、図示二点鎖線で示す後端位置との間を移動する。ここで、内側部材44が図示実線の位置にある場合には、上記第1実施形態と同様のプロセスで微細気泡を含む泡沫流が液吐出口46aより吐出される。一方、内側部材44が図示二点鎖線の位置にある場合には、液流収容部41Bから渦流形成路41Aへの液流の流れが遮断され、その代わりに、内側部材44の周囲に設けられた全体として環状断面の液流通過路45Sを液流が通過して液吐出室46Aに至り、最終的に液吐出口46aより整流が吐出される。
【0036】
上記の構成では、内側部材44が内部を軸線40xに沿って前後に移動することで、液流収容部41Aから渦流形成路44Aを経て液吐出室46Aへと進む泡沫流を形成する経路と、液流収容部41Aから液流通過路45Sを経て液吐出室46Aへと進む整流を形成する経路とを切り替えることができる。この場合、保持枠47を軸線40x回りに回転させても内部の内側部材44の軸線40xに沿った位置が変化するだけで他の構成には何らの変化もないので、泡沫流や整流の吐出特性が変化せず、安定した吐出性能を設定することができる。なお、上記の第3実施形態は第1実施形態に泡沫流と整流との切り替え機能を付加した構成となっているが、第2実施形態に上記切り替え機能を付加した構成としてもよい。
【0037】
上記第1実施形態の液吐出装置10をシャワーヘッドとして構成し、通常のシャワーヘッドの泡沫流との洗浄性能を比較した。それぞれのシャワーヘッドで、それぞれ同一人の皮膚に油性インクを塗った部位、口紅を塗った部位、及び、頭皮の所定部位に対して同一温度の泡沫流を同一時間適用した後の皮膚表面をマイクロスコープで50倍の拡大画像を撮影し、観察した。本実施形態のシャワーヘッドを用いた場合には、油性インク、口紅、皮脂のいずれもが通常のシャワーヘッドを用いた場合よりも大幅に除去され、通常のシャワーヘッドを用いた場合では肉眼でも油性インク、口紅、皮脂の残渣がはっきりと認められたのに対して、実施形態のシャワーヘッドを用いた場合には、拡大画像ではうっすらと残渣が見えるものの、肉眼ではほとんど視認できない程度となった。
【0038】
尚、本発明の液吐出装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態の液吐出装置の縦断面図。
【図2】液吐出装置の渦流の発生と渦崩壊のプロセスを模式的に示す説明図。
【図3】第2実施形態の液吐出装置の縦断面図。
【図4】第2実施形態の異なる液流旋回部材の斜視図。
【図5】各実施形態において使用可能な異なる吐出部材及び延長アダプタを示す縦断面図。
【図6】第3実施形態の液吐出装置の縦断面図。
【符号の説明】
【0040】
10、20、40…液吐出装置、11、21、41…ケース、11a、21a、41a…液導入部、11b、21b、41b…後側ケース部、11c、21c、41c…液導入口、11B、21B、41B…液流収容部、12、22、42…管支持部材、13、23、43…気流導入管、13b、23b、43b…内部開口、14、24、44…内側部材、14A、24A、44A…渦流形成路、15、25、45…固定部材、45A…案内部、45B…駆動部、16、26、36、46…吐出部材、17、27、47…保持枠、18、28、48…液流飛散部、18a、28a、48a…液流飛散面、19、29、49B…気流調整ねじ、37…延長アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液導入口から液流が導入される後部に設けられた環状断面の液流収容部と、
外部に連通する外部開口を備え、前記液流収容部の内部を後方から前方へ貫通し、前記液流収容部より前方において前方へ向いた内部開口を備えた気流導入路と、
前記液流収容部に連通するとともに前記液流収容部より縮径されて前記気流導入路の周囲を前方へ向けて伸び、前記気流導入路の前記内部開口に至るまでは環状断面を備え、前記内部開口に臨む部分から円形断面となる渦流形成路と、
該渦流形成路に連通し、最前部に設けられた液吐出口と、
を具備することを特徴とする液吐出装置。
【請求項2】
前記渦流形成路に連通し、前記渦流形成路の前方にて前記渦流形成路より拡径された広がりを備え前記液吐出口に連通する液吐出室と、前記液吐出室に臨み、前記渦流形成路の出口に対向配置され、前記渦流形成路から導出された液流を前記液吐出室内において周囲へ飛散させる液流飛散部と、をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の液吐出装置。
【請求項3】
前記渦流形成路内の前記内部開口より上流側に位置する前記液流収容部若しくは前記渦流形成路中には、液流を旋回させる液流旋回手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液吐出装置。
【請求項4】
前記液流旋回手段は前記渦流形成路内において前記気流導入路を構成する管材を支持することを特徴とする請求項3に記載の液吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−136931(P2008−136931A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325328(P2006−325328)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(502200405)
【Fターム(参考)】