説明

液圧回路内、特には自動変速機の液圧回路内、での圧力レベルを調整するための比例圧力調整弁

本発明は、液圧回路、特には自動変速機の液圧回路内での圧力レベルを調整するための比例圧力調整弁(10)に関するもので、マグネット部とバルブ部とを備えており、当該バルブ部には、流入体積流用の流入口(11)と、圧力接続部(A)用の第1流出口(12)と、タンク体積流用の第2流出口(13)と、ボールシート(14)と、開口部(15)が設けられたフラットシート(8)と、当該フラットシート(8)の開口部を通る流量を制御する閉塞部(9)と、前記ボールシート(14)と前記フラットシート(8)との間に配置された流動方向転換器と、が設けられている。前記流動方向転換器(3)の外面は、流動方向転換角(γ)が流動方向に対して30°以下である、というように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う、油圧回路内、特には自動変速機の油圧回路内、での圧力レベルを調整するための比例圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の液圧回路内において、圧力を必要に応じて調整する従来技術が知られている。変速機の構成部品に潤滑油を供給するために、油圧回路内では、圧力レベルが低く保持され得る一方、シフト過程の間は、例えばシフト要素に素早く充填できるよう、圧力は急激に増大されなければならない。
【0003】
この種の液圧回路において圧力を調整するために、通常、シフト要素を作動させるための後続弁(Nachfolgeschieber)を制御する圧力調整機が採用される。この場合、後続弁の制御は、当該圧力調整機の内部で比例磁石によって行われる。この比例磁石は、とりわけ、磁心、電磁コイル、マグネットアンカーで構成されている。コイル電流は、当該比例磁石を介して、その出力の大きさに比例して、制御される。つまり、マグネットアンカー及びクラッチ制御のための後続弁は、コイル電流に応じて制御される。そのことから結果的に生じる、圧力調整機の特徴的な磁力−電流特性曲線から、自動変速機の電気液圧式制御装置の中で、クラッチ調整に必要な特性曲線が生じる。
【0004】
例えばDE19943066A1から、電磁操作可能な液圧式比例弁が知られている。この比例弁はマグネット部とバルブ部とを備えており、マグネット部は、電気的に制御可能なコイルと、当該コイル内部に突出する固定式のコアと、当該コイルによって影響されて移動可能な、閉塞要素に結合されているアンカーと、で構成されており、バルブ部は、それぞれ少なくとも1本の供給管、1本の還流管、1本の作動管、ならびに、閉塞要素との機能的結合によって前記作動管と前記還流管との間で圧力材接続を制御するバルブシート、を有している。このとき、この閉塞要素は、少なくともバルブシートに向いた端部の領域で、本質的に円錐形状の封止体を有しており、その小さい方の前面がバルブシートに向いており、当該封止体は、そのバルブシートとは反対側の端部に、少なくとも一つの流動分離エッジ部(Stromungsabrisskante)を有している。
【0005】
この構成により、温度の影響や流動による振動励起に対して、比例弁の安定した特性が達成される。この比例弁の圧力特性/流動特性は、当該比例弁の密封特性及び磨耗特性が改善されているために、従来の圧力調整弁と比較して、より一定で安定した推移を示す。
【0006】
減圧機能および圧力保持機能を有するパイロット弁として形成されている別の比例圧力調整弁は、本件出願人のDE19904901A1に説明されている。この弁は、供給口と流出口とを有するバルブハウジングと、制御要素と、アンカーロッドと、比例磁石と、で構成されている。その比例磁石は、磁心、マグネットアンカー、マグネットコイルを有し、当該比例磁石は、その作用領域の中で、ほぼ一定の磁力を示す。マグネットアンカーの停止位置において、マグネットアンカーと磁心との間の最小の軸間隔は、当該停止位置での当該二つの部品間の磁力が比例磁石の作用領域での磁力より大きい、というように決定される。このとき、マグネットアンカーは、この磁力によって停止位置に固定(ロック)可能である。
【0007】
さらに、本件出願人のDE10034959A1から、供給口および流出口、面板及び開口部を制御するための少なくとも1つの閉塞手段(Schliessmittel)、を有するバルブ部と、磁心、マグネットコイル、移動可能に配置されたマグネットアンカー、を有するマグネット部と、を備えた比例圧力調整弁が知られている。このアンカーと共に、作動エレメントが一緒に作用する。そのエレメントは、閉塞手段、特には面板において供給口、に作用し、当該作動エレメントは、調整過程の間、少なくとも部分的に面板の中に入り込む。このとき、液圧で作用する面板の横断面は、本質的に、面板の長さ、面板の直径、面板内に入り込む作動エレメントの部分の直径、によって決定される。
【0008】
特には低温領域で、すなわち、液圧流体の粘性が高い場合において、バルブ部の最適の貫流を考慮し、そして、低い流動抵抗を考慮すると、DE10034959A1に従う比例圧力調整弁は、貫流を決定付ける供給幾何形状の最適な特性を示す。すなわち、面板の直径に対する面板の長さの比は、2.0未満に選択されている。このとき、この貫流を決定付ける面板は、特には、バルブの供給口の中に配置されている。これによって、このバルブは、特に油の粘性が高い場合、つまり、低温の場合、流動損失がより少ない、ということが達成される。すなわち、より多くの流量とバルブのより短い応答時間とが達成され、それによって、この比例圧力調整弁は、より良い動的な値を可能にしている。
【0009】
さらに従来技術から、マグネット部とバルブ部とを有する比例圧力調整弁が知られている。この場合、バルブ部は、供給体積流用の供給口と、充填体積流用の第1流出口と、タンク体積流用の第2流出口と、が設けられており、また、ボールシートと、開口部が設けられたフラットシートと、フラットシートの開口部を通る流量を制御する閉塞部と、ボールシートとフラットシートとの間に配置された流動方向転換器と、を有している。
【0010】
ここでは、供給体積流用の供給口が、マグネット部とは反対側のバルブ部の正面端部においてバルブ部の縦軸と同軸に配置されていること、クラッチ用の充填体積流用の流出口が、バルブ部の側壁においてバルブ部の縦軸に対して半径方向に、供給口から流出口へ流れる液体部分が最大90°の偏向に晒されるように、形成されていること、ボールシートからの流動方向転換器の軸方向の距離、ならびに、当該流動方向転換器の直径、肉厚及び形態が、ボールシートを通過した後さらに流動方向転換器を通って流動する液体部分が30°未満の偏向に晒されるように、選択されること、があらかじめ考慮されている。
【0011】
自動変速機、とりわけ乗用車の自動変速機には、主として流体式コンバーターが発進要素として採用される。特に、ギヤオイルが冷えているとき、コンバーターのエネルギー需要は非常に高く、これによって車両の発進特性は不利に影響される。同様に、氷点下の温度領域でのギヤシフト要素の応答特性も同じように遅れ、これも同様にネガティブな影響を与える。
【発明の開示】
【0012】
本発明の課題は、パワーシフトクラッチ、特には自動変速機内の発進クラッチ、の動的な調整(制御)能力の向上が流体式発進要素なしに達成できるというような、液圧回路内での圧力レベルを調整する比例圧力調整弁を提供すること、である。
【0013】
特に、例えば圧力調整素子と湿式発進クラッチとで構成されるシステムの、遮断周波数(Eckfrequenz)を向上させることにより、一つには、氷点下においても流体式コンバーターを有するトランスミッションの場合と同レベルの良好な発進快適性が得られ、もう一つには、パワーシフトもより迅速に(spontaner)、つまり、より直接的に知覚できる(fuehlbar)ように進行する、ということが求められる。
【0014】
この課題は、特許請求の範囲の請求項1の特徴によって解決される。その他の本発明に従う形態や利点は、下位請求項から読み取ることができる。
【0015】
それによれば、マグネット部とバルブ部とを備えた比例圧力調整弁が提案され、このバルブ部は、供給体積流用の供給口と、作動圧力接続部用の第1流出口と、タンク体積流用の第2流出口と、ボールシートと、開口部が設けられたフラットシートと、フラットシートの開口部を通る流量を制御する閉塞部と、ボールシートとフラットシートとの間に配置された流動方向転換(偏向)器と、を有しており、流動方向転換器は、比例圧力調整弁の縦軸に沿って(左右)対称に形成されており、円錐状の外面形状の本体を有し、当該本体はリブを介してバルブ部に結合されている。
【0016】
流動方向転換器の直径は1.25NW以下が好ましい。ここで、NWは名目値(Nennwerte)であり、フラットシートの開口部の直径として規定されている。
【0017】
さらに、この流動方向転換器は、ボールシートとフラットシートとの間で、ボールシート出口に対する位置決め間隔vが0.5NW以上であってリング流入口に対する位置決め間隔hが0.3NW以上である、というように配置される。
【0018】
本発明によれば、この流動方向転換器は、本体の円錐状外面により、位置決め間隔v及びhと相まって、流動方向転換器の頂点から流入エッジ部ないし流出エッジ部に至る投影線と流動方向転換器領域の中央の流動軸との間の角度α及びβの差が、3°未満になるように、そして、法線sに関して良好な流動対称が流動方向転換器領域の中央の流動軸に沿って生じるように、作用する。
【0019】
本発明によると、流動方向転換器は、流入角がバルブの縦軸に対して60°以下になるように、形成され位置決めされている。この場合、流動方向転換器のエッジ部は、面取り形成され得る。面取りされたエッジ部では、0.1NW以上のオーダーの曲率半径が特に有利であると証明されている。
【0020】
流出エッジ部は、リング流入口のところで、面取りされるか鋭角に(scharfkantig)仕上げられ得る。面取りされたエッジの場合、0.1NWオーダー以上の曲率半径が選択され得る。
【0021】
本発明によるコンセプトによって、そして特には流動損失の少ない流動方向転換器の対称な形態によって、流動方向転換器の渦のない流動ないしは流動パターン(Umstroemmung)が実現される。
【0022】
本発明は、以下において、添付の図面に基いて、例示的にさらに詳しく説明される。
【0023】
図1は、本発明に従う比例圧力調整弁の図式的断面図である。
【0024】
図2は、図1による、本発明に従う比例圧力調整弁の図式的断面図であり、ここでは、バルブの縦軸に対する流入角γ、ならびに、流動方向転換器の頂点から流入エッジ部ないし流出エッジ部に至る投影線z、yの角度αとβ、が記載されている。
【0025】
図1及び図2には、マグネット部とバルブ部とを備えた比例圧力調整弁10が示されている。バルブ部は、供給体積流用の供給口11(その供給圧力はpで示されている)と、作動圧力接続部A用の第1流出口12と、タンクTへのタンク体積流用の第2流出口13と、ボールシート14と、開口部15が設けられたフラットシート8と、フラットシート8の開口部15を通る流量を制御する閉塞部9と、流動方向転換器3と、を有している。さらに、供給口11の前には、フィルタースクリーン1が設けられている。
【0026】
本発明に従って、流動方向転換器3は、ボールシート14とフラットシート9との間に配置されている。流れの筋(Stromfaden)qが流動方向に誘導(偏向)される角度yが30°以下であるように、流動方向転換器3の外側面(Mantelflaeche)は形成されている。
【0027】
第1の実施の形態では、流動方向転換器(3)は、バルブの縦軸a−aの回りに回転対称に形成されている。流動方向転換器の外側面は、切頭円錐形状を有しており、このとき、流動方向転換器はリブを介してバルブ部に結合されている。
【0028】
もう一つの実施の形態では、流動方向転換器の断面は、台形形状を有している。このとき、流動方向転換器は、回転対称ではなく、流動方向に対して横向きに延伸して、直接バルブ部に結合している。
【0029】
流れの筋qは、ボールシート出口2から流動方向転換器3の周囲に至り、一方では方向転換して作動圧力接続部Aの方向に現れ、他方ではリング流入口4の方向にプッシュロッド6と内壁7との間をフラットシール8の方向へと比例圧力調整弁10のフランジ部Iを貫く。
【0030】
参照記号5で、例示的に、リング流入口4における流出エッジ部が示されている。このエッジ部は、図示されているように、面取り仕上げされ得る。曲率半径は、0.1NWのオーダー以上であることが、特に有利であると証明されている。これに対する別の選択として、流出エッジ部は鋭角に仕上げられていてもよい。
【0031】
図2から分かるように、流れの筋が流動方向に誘導(偏向)される角度yは、30°以下である。この場合、流動方向転換器3のエッジ部は面取り仕上げされており、湾曲半径Rは、0.1NWのオーダー以上である。
【0032】
流動方向転換器3は、ボールシート出口2までの位置決め間隔vが0.5NW以上であってリング流入口4までの位置決め間隔hが0.3NW以上である、というようにボールシート14とフラットシート8との間に配置されている。これらの位置決め間隔により、流動方向転換器3の本体の円錐外面形状との関連で、流動方向転換器3の頂点から流入エッジ部ないし流出エッジ部に至る投影線zないしyと、流動方向転換器領域の中央の流動軸x−xと、の間の角度α及びβの差が3°未満となる。そして、法線sに関して、良好な流動対称が、流動方向転換器領域の中央の流動軸x−xに沿って得られる。その角度α及びβは、23°以下が好ましい。
【0033】
図2には、角度α及びβならびに法線sが記入されている。さらに、図2には、流動方向転換器3の直径Dが記入されており、本発明によれば、それは1.25NW以下である。
【0034】
当然のことながら、本発明に従う比例圧力調整弁のいかなる構造上の形態も、とりわけ構成部品のそれ自体ならびに相互のいかなる空間的配置も、技術的に有意である限り、たとえそれら形態が図面や前記説明の中で明確に示されていなくとも、請求項の中に記載されているような比例圧力調整弁の機能に影響を与えずに、提示されている請求項の保護範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従う比例圧力調整弁の図式的断面図である。
【図2】図1による、本発明に従う比例圧力調整弁の図式的断面図であり、ここでは、バルブの縦軸に対する流入角γ、ならびに、流動方向転換器の頂点から流入エッジ部ないし流出エッジ部に至る投影線z、yの角度αとβ、が記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧回路内、特には自動変速機の液圧回路内、での圧力レベルを調整するための比例圧力調整弁であって、
マグネット部と、バルブ部と、を備えており、
前記バルブ部は、
供給体積流用の供給口と、
作動圧力接続部用の第1流出口と、
タンク体積流用の第2流出口と、
ボールシートと、
開口部が設けられたフラットシートと、
当該フラットシートの開口部を通る流量を制御する閉塞部と、
前記ボールシートと前記フラットシートとの間に配置された流動方向転換器と、
を有しており、
流れの筋(Stromfaden)が流動方向において偏向される角度(y)が30°以下である、というように前記流動方向転換器(3)の外側面が形成されている
ことを特徴とする比例圧力調整弁。
【請求項2】
前記流動方向転換器(3)は、縦軸(a−a)の周囲に回転対称に形成されており、
前記流動方向転換器(3)の外側面は、切頭円錐形状を有しており、
前記流動方向転換器(3)は、リブを介してバルブ部に結合されている
ことを特徴とする請求1に記載の比例圧力調整弁。
【請求項3】
前記流動方向転換器(3)の断面は、台形であり、
前記流動方向転換器(3)は、流動方向を横切るように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の比例圧力調整弁。
【請求項4】
前記流動方向転換器(3)のエッジ部は、面取り仕上げされており、曲率半径(R)は、0.1NWのオーダー以上である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の比例圧力調整弁。
【請求項5】
前記流動方向転換器(3)は、ボールシート(14)とフラットシート(18)との間に、前記ボールシート出口(2)に対する位置決め間隔(v)が0.5NW以上でありリング流入口(4)に対する位置決め間隔(h)が0.3NW以上である、というように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の比例圧力調整弁。
【請求項6】
前記流動方向転換器(3)の直径(D)は、1.25NW以下である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の比例圧力調整弁。
【請求項7】
流出エッジ部(5)は、リング流入口(4)のところで、面取りされるか鋭角に(scharfkantig)仕上げられており、
面取り仕上げされた流出エッジでは、曲率半径が0.1NWのオーダー以上である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の比例圧力調整弁。
【請求項8】
前記流動方向転換器(3)は、比例圧力調整弁の縦軸(a−a)に対する流入角(γ)が60°以下になるように、形成され位置決めされている
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の比例圧力調整弁。
【請求項9】
前記流動方向転換器(3)は、当該流動方向転換器(3)の頂点から流入エッジ部ないし流出エッジ部に至る投影線(z)ないし(y)と、当該流動方向転換器領域の中央流動軸(x−x)と、の間の角度(α)及び(β)の差が、3°未満になる、というように形成され位置決めされている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の比例圧力調整弁。
【請求項10】
前記角度(α)及び(β)は、23°以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の比例圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−541250(P2008−541250A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510430(P2008−510430)
【出願日】平成18年4月15日(2006.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003493
【国際公開番号】WO2006/119840
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】