説明

液晶パネルの製法及び製造装置

【課題】液晶パネルの製作において、偏向フィルムを貼着したガラス基板を切断する方法を明らかにし、液晶パネルの生産性の向上を実現する。
【解決手段】ガラス基板1、2の間に、液晶セル4を縦横に並べて形成した大判の液晶ガラス元板3の一方のガラス基板2の外表面にスクライブ溝5を施してから偏向フィルム6を貼着し、該偏向フィルム6を超音波カッター7によって切断し、ガラス基板2をスクライブ溝5でブレイクし、他方のガラス基板1にスクライブ溝51を施してブレイクし、大判の液晶ガラス元板3を、各液晶セル単位の液晶ガラス板81に分断し、該液晶ガラス板81の偏向フィルム未貼着面に偏向フィルム61を貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大判の液晶ガラス元板を液晶セル単位に分断して単位の液晶パネルを得る、液晶パネルの製法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造には、2枚のガラス基板間の空間に液晶を充填させる工程として、液晶注入法又は液晶滴下法(ODF(One Drop Filling))が実施されている。
【0003】
液晶注入法は、2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セル枠をX−Y軸(縦横)方向に並列配備した大判の液晶ガラス元板を形成し、各液晶セル枠の液晶吸込み口が横一列で露出する様に、液晶ガラス元板を横列単位に切断して中判液晶ガラス板を得る。
次に、中判液晶ガラス板の各液晶セル枠の吸込み口側の端縁を液晶槽に浸けて、液晶セル枠内に液晶を真空吸引させる。液晶枠内を液晶で満たした後、液晶吸込み口をシール剤によって塞ぎ、中判液晶ガラス板に複数の液晶セルを形成する。
次に、中判液晶ガラス板の液晶吸込み口側の端縁に付着した液晶、ガラス基板間の液晶セル枠外に吸い込まれた液晶等、余分な液晶を洗浄工程によって除去する。
次に、中判液晶ガラス板の両ガラス基板の外表面に、液晶セル単位の大きさの偏向フィルムを貼着する。
次に、各液晶セル単位に偏向フィルム及びガラス基板を分断することにより、液晶セル単位の大きさの液晶パネルを得る(特許文献1)。
【0004】
液晶滴下法は、2枚のガラス基板の内、一方のガラス基板に液晶セル枠をX−Y軸方向に並ぶ様に形成し、各液晶セル枠内に液晶を滴下させる。他方のガラス基板を液晶セル枠の上から被せて、液晶セル枠内が液晶で充満した複数の液晶セルを具えた大判の液晶ガラス元板を形成する。
次に、大判の液晶ガラス元板を液晶セル単位に分断し、液晶セル単位の個々の液晶ガラス板に偏向フィルムを貼着して、液晶セル単位の大きさの液晶パネルを得る。
【0005】
前者の液晶注入法は、液晶セルを形成した大判の液晶ガラス元板を、一旦中判の液晶ガラス板に分断する作業、各中判液晶ガラス板毎に液晶を注入する作業、液晶吸込み口をシールする作業、洗浄作業、偏向フィルムの貼付けが必要であるから手間が掛かって生産性が低い。
【0006】
後者の液晶滴下法は、大判の液晶ガラス元板の状態で、既に複数の液晶セルがX−Y軸方向に形成されている。液晶注入法の如く、一旦中判液晶ガラス板に分断してから、中判液晶ガラス板毎に液晶を注入する作業、該液晶の注入によってパネルの端縁に付着した液晶を除去するための洗浄作業は不要となる。このため、液晶滴下法は、液晶注入法よりも生産性が高い。しかし、液晶セル単位の個々のガラス板に偏向フィルムを貼着する作業が、更なる生産性向上のネックとなっている。
そこで、上記した現状の液晶滴下法の改良として、液晶ガラス元板の両ガラス基板の夫々外表面に偏向フィルムを貼着して、各液晶セル単位に偏向フィルム及びガラス基板を分断して、液晶セル単位の大きさの液晶パネルを得ることが提案された(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−75067号公報
【特許文献2】特開2003−255360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献2の場合、大判の液晶ガラス元板を偏向フィルムが貼着した儘で最終的には液晶セル単位の液晶パネルに分断せねばならない。しかし分断には下記の困難がある。
ガラス基板の様に、硬質で脆い材料と、偏向フィルムの様に軟質の材料を重ねたまま一緒に切断することは極めて困難である。
特許文献2には、大判の液晶ガラス元板の両ガラス基板の外面に偏向フィルムを貼着してから、スクライブ溝で割断して単位液晶パネルを得る旨が記載されている(特許文献2の段落「0017」)。
しかし、スクライブ溝をどの段階で施すのか、又、偏向フィルムの分断はどのように行なうのか開示はない。
【0009】
ガラス基板にスクライブ溝を施してブレイクする場合、ガラス基板のスクライブ溝とは反対側の面を加圧して、スクライブ溝を拡げる様にガラス基板を撓ませて、スクライブ溝の底面に亀裂を生じさせ、該亀裂を進行させるのである。
スクライブ溝側のガラス面を加圧しても、ガラス基板はスクライブ溝とは関係なく割れてしまい、ブレイク不良が生じる。
【0010】
大判の液晶ガラス元板のガラス基板の外表面に偏向フィルムを貼着する前に、予め両ガラス基板にスクライブ溝を施し、然る後、両ガラス基板の外表面に偏向フィルムを貼着し、ブレイクすることも考えられる。この場合、一方のガラス基板に、ローラ等による加圧を加えて偏向フィルムを貼着する際に、他方のガラス基板がブレイクする虞れがあり、後工程に支障が生じる。
【0011】
又、スクライブ溝でガラス基板がブレイクしても、偏向フィルムは千切れず繋がったままであるから、分断後の単位液晶ガラス板は、偏向フィルムを介して繋がったままである。
【0012】
尚、特許文献1には、偏向フィルム貼着後のガラス基板をレーザで一緒に切断すると記載されているが(段落「0045」)、ガラス基板と偏向フィルムとの積層体の様に、材質の特性が大きく異なる積層体を1基のレーザ照射装置で、一挙に切断することは、困難である。
又、レーザ照射装置は高価であり、偏向フィルム切断用レーザ照射装置と、ガラス基板分断用のレーダ照射装置を配備することは、コスト高を招来する。
本発明は、上記問題を解決できる、液晶パネルの製法を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の液晶パネルの製法は、2枚のガラス基板(1)(2)の間に、複数の液晶セル(4)をX軸方向及び/又はY軸の方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板(3)を形成する工程、
液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)の外表面に、該ガラス基板(2)を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝(5)を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
スクライブ溝(5)を施したガラス基板(2)の外表面のほぼ全域に偏光フィルム(6)を貼着する工程、
上記ガラス基板(2)上の偏光フィルム(6)を、超音波カッター(305)(310)によって、スクライブ溝(5)に対応する線上を切断する工程、
偏向フィルム(6)を貼着したガラス基板(2)をスクライブ溝(5)でブレイクする工程、
液晶ガラス元板(3)の他方のガラス基板(1)に、該ガラス基板(1)を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝(51)を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
該ガラス基板(1)を該スクライブ溝(51)でブレイクすることによって、大判の液晶ガラス元板(3)を各液晶セル単位の液晶ガラス板(81)に分断する工程、
分断した液晶ガラス板(81)の偏向フィルム未貼着面に偏向フィルム(61)を貼着する工程を含む。
【0014】
請求項2の液晶パネルの製法は、2枚のガラス基板(1)(2)の間に、複数の液晶セル(4)をX軸方向及び/又はY軸方向に並列配置した大判の液晶ガラス元板(3)を形成する工程、
液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)の外表面に、該ガラス基板(2)を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝(5)を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
スクライブ溝(5)を施したガラス基板(2)の外表面のほぼ全域に偏光フィルム(6)を貼着する工程、
上記ガラス基板(2)上の偏光フィルム(6)を、超音波カッター(305)(310)によって、スクライブ溝(5)に対応する線上を切断する工程、
偏向フィルム(6)を貼着したガラス基板(2)をスクライブ溝(5)でブレイクする工程、
液晶ガラス元板(3)の他方のガラス基板(1)に、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にレーザ光線を照射して該ガラス基板(1)をブレイクし、液晶ガラス元板(3)を各液晶セル単位の液晶ガラス板(81)に分断する工程、
分断した液晶ガラス板(81)の偏向フィルム未貼着面に偏向フィルム(61)を貼着する工程を含む。
【0015】
請求項3の液晶パネルの製法は、2枚のガラス基板(1)(2)の間に、複数の液晶セル(4)をX軸方向及び/又はY軸方向に並列配置した大判の液晶ガラス元板(3)を形成する工程、
液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)の外表面に、該ガラス基板(2)を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝(5)をX軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
両ガラス基板(1)(2)の夫々外表面に偏光フィルム(6)(61)を貼着する工程、
スクライブ溝(5)を施したガラス基板(2)に対して、その外表面に貼着している偏光フィルム(6)を、超音波カッター(305)(310)によって、スクライブ溝(5)に対応する線上を切断する工程、
スクライブ溝(5)を施したガラス基板(2)を、該スクライブ溝(5)でブレイクする工程、
他方のガラス基板(1)上の偏向フィルム(61)を、超音波カッター(305)(310)によって、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向に切断する工程、
スクライブ溝(5)を施していないガラス基板(1)に、該ガラス基板(1)上の偏向フィルム(61)の切断線に対応してレーザ光線を照射して、該ガラス基板(1)をブレイクすることにより、大判の液晶ガラス元板(3)を各液晶セル単位の液晶パネルに分断する工程を含む。
【0016】
請求項4は請求項1乃至3の液晶パネルの製法において、一方又は両方のガラス基板にスクライブ溝を施した後に、ガラス基板に化学研磨を施し、その後、ガラス基板に偏向フィルムを貼着する。
【0017】
請求項5の液晶パネルの製造装置は、2枚のガラス基板(1)(2)の間に、複数の液晶セル(4)をX軸方向及び/又はY軸方向に並列配置した大判の液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)の外表面に、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝(5)を施す第1スクライブ溝刻設装置(100)と、
大判液晶ガラス元板(3)のスクライブ溝(5)が刻設された面に偏向フィルム(6)を貼着する偏向フィルム貼着装置(200)と、
大判液晶ガラス元板(3)に貼着された偏向フィルム(6)を、超音波カッター(305)(310)によって、スクライブ溝(5)と対応する線上を各液晶セル(4)を囲んで切断する偏向フィルム切断装置(300)と、
偏向フィルム(6)が切断された大判液晶ガラス元板(3)の偏向フィルム貼着側ガラス基板(2)をスクライブ溝(5)でブレイクする第1ブレイク装置(500)と、
大判液晶ガラス元板(3)のブレイクされていない方のガラス基板(1)に、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝(51)を施す第2スクライブ溝刻設装置(100a)と、
大判液晶ガラス元板(3)の、第2スクライブ溝刻設装置(100a)によってスクライブ溝(51)を施されたガラス基板(1)を該スクライブ溝(51)でブレイクする第2ブレイク装置(500a)を含む。
【0018】
請求項6の液晶パネルの製造装置は、2枚のガラス基板(1)(2)の間に、複数の液晶セル(4)をX軸方向及び/又はY軸方向に並列配置した大判の液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)の外表面に、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝(5)を施すスクライブ溝刻設装置(100)と、
大判液晶ガラス元板(3)のスクライブ溝(5)が刻設された面に偏向フィルム(6)を貼着する偏向フィルム貼着装置(200)と、
大判液晶ガラス元板(3)に貼着された偏向フィルム(6)を、超音波カッター(305)(310)によって、スクライブ溝(5)と対応する線上を切断する偏向フィルム切断装置(300)と、
偏向フィルム(6)が切断された大判液晶ガラス元板(3)の偏向フィルム貼着側ガラス基板(2)をスクライブ溝(5)でブレイクするブレイク装置(500)と、
大判液晶ガラス元板(3)の、ブレイクされていない方のガラス基板(1)に、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にレーザ光線を照射して、該ガラス基板(1)をブレイクするレーザブレイク装置を含む。
【0019】
請求項7の液晶パネルの製造装置は、2枚のガラス基板(1)(2)の間に、複数の液晶セル(4)をX軸方向及び/又はY軸方向に並列配置した大判の液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)の外表面に、各液晶セル(4)を囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝(5)を施すスクライブ溝刻設装置(100)と、
大判液晶ガラス元板(3)の夫々外表面に偏光フィルム(6)(61)を貼着する偏向フィルム貼着装置(200)と、
偏向フィルム(6)を貼着した大判液晶ガラス元板(3)の、スクライブ溝(5)を施したガラス基板(2)に対して、該ガラス基板(2)の外表面に貼着している偏光フィルム(6)を、超音波カッター(305)(310)によって、スクライブ溝(5)に対応する線上を切断する第1偏向フィルム切断装置(300)と、
大判液晶ガラス元板(3)の偏向フィルム(6)が切断された側のガラス基板(2)をスクライブ溝(5)でブレイクするブレイク装置(500)と、
大判液晶ガラス元板(3)のブレイクされていないガラス基板(1)の外表面に貼着している偏光フィルム(61)を、超音波カッター(305)(310)によって、各液晶セル(4)を囲んでX軸方向及び/又はY軸方向に切断する第2偏向フィルム切断装置(300a)と、
スクライブ溝(5)を施していないガラス基板(1)に、該ガラス基板(1)上の偏向フィルム(61)の切断線に対応してレーザ光線を照射して、該ガラス基板(1)をブレイクするレーザブレイク装置を含む。
【発明の効果】
【0020】
請求項1では、外表面にスクライブ溝(5)を施し、その上から偏向フィルム(6)を貼着したガラス基板(2)の該偏向フィルム(6)を超音波カッター(305)によって切断する際、超音波カッター(305)の刃先(305a)はスクライブ溝(5)上を走行するから、該刃先(305a)が偏向フィルム(7)の肉厚を貫通しても、超高速で微振動している刃先(305a)が硬質のガラス基板(2)に接触することを可及的に防止して、ガラス面に与えるダメージを最小にすると共に、刃先(305a)の摩耗を防止できる。
【0021】
上記の様に、大判の液晶ガラス元板(3)の2枚のガラス基板(1)(2)の内、一方のガラス基板(2)に対しては、大判のまま、大判の偏向フィルム(6)を貼着した後、各液晶セル(4)単位に該偏向フィルム(6)の切断及びスクライブ溝(5)でのガラス基板(2)のブレイクができる。従って従来の如く、液晶セル単位の液晶ガラス板を形成した後に、1枚ずつ偏向フィルムを貼着する作業に較べて、作業性能率は大幅に向上する。
他方のガラス基板(1)に対しては、液晶セル単位の液晶ガラス板に、単位サイズの偏向フィルムを貼着する作業を行うが、大判の液晶ガラス元板(3)の2枚のガラス基板(1)(2)の内、一方のガラス基板(2)に対してのみに本発明方法を実施しても、全体的には、作業能率が高まる。
又、請求項1の液晶パネルの製法において、偏向フィルム(6)(61)の切断やガラス基板(1)(2)のブレイクに、高価なレーザ照射装置は必要とせず、レーザ照射装置に較べて格段に安価な費用で、ガラスに対するスクライブ溝刻設装置や、偏向フィルムに対する超音波カッター仕様の切断装置(300)を設備でき、液晶パネルの製造コストを下げることができる。
【0022】
請求項2の液晶パネルの製法は、大判液晶ガラス元板(3)の一方のガラス基板(2)をブレイクした後に、他方のガラス基板(1)は、スクライブ溝(5)によるブレイクではなく、レーザ光線の照射によってブレイクする点で請求項1とは異なるだけであり、その点以外の構成による効果は、請求項1と同様である。
【0023】
請求項3では、大判液晶ガラス元板(3)全体を液晶セル単位に分断した時点で、既に個々の分断片の両面に偏向フィルム(6)(61)が貼着されて単位の液晶パネルとなっているから、分断片に液晶フィルム(61)を貼着する手間を省くことができる。
先にブレイクしたガラス基板(2)の不要部分を除去しておけば、他方のガラス基板(1)をブレイクするためにレーザ光線を照射する際、偏向フィルム(61)貼着面の反対側からレーザ光線の照射ができ、偏向フィルム(61)の端縁にレーザ光線が照射されて、偏向フィルム(61)の端縁を溶かす等の悪影響を及ぼす虞れをなくすことができる。
【0024】
請求項4の液晶パネルの製法における化学研磨工程は、下記の効果を奏する。
従来の液晶パネルの製法においても、2枚の大判のガラス基板を張り合わせた後に、化学研磨を施してガラスの厚みを薄くすると共に、ガラス表面をより平滑にすることが行われていた。
しかし、請求項4では、ガラス基板(2)に対してスクライブ溝(5)を施した後に、ガラス基板(2)に化学研磨を施すことに大きな意味がある。即ち、溝刻刃で機械的にガラスに傷を付けることによって施されたスクライブ溝(5)の壁面は粗面となるから、非常にクラックの進行し易い状態となる。このまま、偏向フィルム(6)を切断する際に、超音波カッター(305)(310)の刃圧と振動がスクライブ溝(5)に加わると、スクライブ溝(5)のクラックが進行して、微細なガラスカレットが、切断された偏向フィルム(6)の端部に多数付着する不都合を生じる虞れがある。化学研磨によって、予めスクライブ溝(5)の壁面を平滑化することにより、超音波カッター(305)の刃圧と振動が加わっても、ガラスカレットの発生を抑えることができる。
【0025】
請求項5の液晶パネル製造装置は、請求項1の液晶パネルの製法を実施する装置であり、請求項1の効果を生み出す。
【0026】
請求項6の液晶パネル製造装置は、請求項2の液晶パネルの製法を実施する装置であり、請求項2の効果を生み出す。
【0027】
請求項7の液晶パネル製造装置は、請求項3の液晶パネルの製法を実施する装置であり、請求項3の効果を生み出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下の説明では、両ガラス基板を区別して説明する都合上、一方を第1ガラス基板(1)、他方を第2ガラス基板(2)としているが、両ガラス基板(1)(2)は入れ替えても同様に実施できる。
[第1実施例の製造工程]
【0029】
第1工程(大判液晶ガラス元板の製作)
図2は、大判の液晶ガラス元板(3)を示しており、液晶ガラス元板(3)は、第1、第2の2枚の矩形のガラス基板(1)(2)の間に、X−Y軸(縦横)方向に液晶セル(4)を規則的に形成している。
尚、実施例では、大判の液晶ガラス元板(3)は、X−Y軸方向に液晶セル(4)を配置しているが、これに限ることなく、X軸方向、Y軸方向の何れか一方の方向に液晶セルを配置した大判の液晶ガラス元板に対しても、本発明を実施できるのは勿論である。
上記大判液晶ガラス元板(3)を形成する
ためには、図1に示す如く、第1ガラス基板(1)上に、X−Y軸方向に液晶セル枠(41)を、接着剤を兼用するシール剤の塗布によって形成する。
次に、各液晶セル枠(41)に所定量の液晶を滴下する。
次に、液晶セル枠(41)の上から第2ガラス基板(2)を第1ガラス基板(1)に重ねて貼り付ける。
第1ガラス基板(1)と第2ガラス基板(2)の間は、両ガラス基板(1)(2)に介在させたスペーサ粒(図示せず)によって数μmの隙間があり、該隙間に液晶が広がって充満し液晶セル(4)が形成される。
尚、第1、第2ガラス基板(1)には、予め配線膜の形成、配向処理、シールパターンの形成等、液晶ガラス基板に必要に処理が施されているが、これらは公知であるので、詳細説明は省略する。
【0030】
第2工程(第2ガラス基板へのスクライブ溝の形成)
図3に示す如く、第2ガラス基板(2)の外表面に、液晶セル(4)を包囲して、X−Y軸方向に、溝刻刃でスクライブ溝(5)を施す(図2の二点鎖線(50)参照)。
【0031】
第3工程(大判液晶ガラス元板の化学研磨)
第2ガラス基板(2)にスクライブ溝(5)を施した大判液晶ガラス元板(3)全体を化学研磨して、両ガラス基板(1)(2)の厚みを薄くすると共に、スクライブ溝(5)の壁面の微細なクラックを無くしてスクライブ溝(5)の溝表面を平滑面とする。
【0032】
第4工程(第2ガラス基板への偏向フィルムの貼着)
図4に示す如く、第2ガラス基板(2)上に、第2ガラス基板(2)のほぼ全域を覆う大きさの偏向フィルム(6)を貼着する。
【0033】
第5工程(第2ガラス基板上の偏向フィルムの切断)
図4に示す如く、超音波カッター(305)の刃先(305a)を上記第2ガラス基板(2)上のスクライブ溝(5)に対応する真上位置にて、偏向フィルム(6)に当てて、該刃先(305a)をスクライブ溝(5)に沿って走行させ、偏向フィルム(6)をX−Y軸方向に切断する。
【0034】
第6工程(第2ガラス基板のブレイク)
図4に示す如く、スクライブ溝(5)を施した第2ガラス基板(2)とは反対側の第1ガラス基板(1)側から、ブレイクローラ等の押圧部材(503)により、第1ガラス基板(1)を介して第2ガラス基板(2)を押圧する。押圧力は、第2ガラス基板(2)はスクライブ溝(5)の溝底から亀裂が進行してスクライブ溝(5)でブレイクするが、スクライブ溝(5)の施されていない第1ガラス基板(1)は微量撓む程度とする。
これによって、第2ガラス基板(2)はスクライブ溝(5)でブレイクするが、第1ガラス基板(1)の破損は免れる。
【0035】
第7工程(第1ガラス基板へのスクライブ溝の形成)
第1ガラス基板(1)を必要に応じて反転し、図5に示す如く、第1ガラス基板(1)の外表面に、液晶セル(4)を包囲して、X−Y軸方向に、溝刻刃でスクライブ溝(51)を施す。
公知の如く、液晶セル(4)からの配線を露出させて外部配線に接続するために、完成単位液晶パネルの上下両ガラス板の大きさが異なる。スクライブ溝(51)は、第1ガラス基板(1)のブレイク端面と重なる場合(図5の通り)と、重ならない場合(図示せず)とがある。
【0036】
第8工程(第1ガラス基板のブレイク)
第1ガラス基板(1)をスクライブ溝(51)とは反対側の面、即ち、第2ガラス基板(2)側から押圧して、該スクライブ溝(51)で第1ガラス基板(1)をブレイクして、図6に示す如く、液晶セル(4)単位の液晶ガラス板(81)を形成する。
【0037】
第9工程(液晶ガラス板への偏向フィルムの貼着)
図7に示す如く、各液晶ガラス板(81)の第1ガラス基板(1)の偏向フィルム未貼着面に、液晶ガラス板(81)と同形又は稍小形の偏向フィルム(61)を貼着して、液晶パネル(8)を得る。
【0038】
[第1実施例の工程を実施する液晶パネル製造装置]
図8は、上記第1実施例の第2工程から第8工程のガラス基板のブレイクまでの詳細工程を示し、図9乃至図12はそれら工程を実施するための液晶パネル製造装置を示している。但し、何れも第3工程の化学研磨は省略している。
図8において、各工程における大判液晶ガラス元板(3)の向きと天地の状態が表されており、白抜きの大判液晶ガラス元板(3)は天(上側)が第2ガラス基板(2)、斜線の大判液晶ガラス元板(3)は天が第1ガラス基板(1)であることを示している。
【0039】
液晶パネル製造装置は、長方形の大判液晶ガラス元板(3)の天側である第2ガラス基板(2)の外表面に、各液晶セルを囲んでスクライブ溝(5)を施す第1スクライブ溝刻設装置(100)と、大判液晶ガラス元板(3)のスクライブ溝(5)が刻設された面に偏向フィルム(6)を貼着する偏向フィルム貼着装置(200)と、大判液晶ガラス元板(3)に貼着された偏向フィルム(6)を、スクライブ溝(5)と対応する線上を超音波カッター(305)(310)によって各液晶セル(4)を囲んで切断する偏向フィルム切断装置(300)と、偏向フィルム(6)が切断された大判液晶ガラス元板(3)の偏向フィルム貼着側第2ガラス基板(2)をスクライブ溝(5)でブレイクする第1ブレイク装置(500)と、大判液晶ガラス元板(3)のブレイクされていない方の第1ガラス基板(1)に各液晶セルを囲んでスクライブ溝(51)を施す第2スクライブ溝刻設装置(100a)と、大判液晶ガラス元板(3)の第1ガラス基板(1)をスクライブ溝(51)でブレイクする第2ブレイク装置(500a)を、上流側から下流側へ配置している。
【0040】
図9に示す如く、大判液晶ガラス元板(3)は、第2ガラス基板(2)を上向き(天側)にしてテーブル(603)上に1枚づつ供給され、搬送手段(600)によって第1スクライブ溝刻設装置(100)に搬送される。
第1スクライブ溝刻設装置(100)は、上流側のX軸方向溝刻設部(101)と下流側のY軸方向スクライブ溝刻設部(106)とからなる。
搬送手段(600)は、下面に多数の吸盤(602)を配置した吊上げ枠(601)を昇降及び前後進させて、大判液晶ガラス元板(3)をX軸方向溝刻設部(101)に搬送する。
各吸盤(602)には吸引ホース(図示せず)が接続され、吸引解除の制御ができる(以下の説明にでてくる「吸盤」についても同様)。
【0041】
第1スクライブ溝刻設装置(100)のX軸方向溝刻設部(101)とY軸方向スクライブ溝刻設部(106)は共にテーブル(102)(107)と、該テーブル(102)(107)を跨ぎ平行軌条(104)(104)、(109)(109)上を前後に間欠走行する門形のスライド台(103)(108)と、該スライド台(103)(108)上を左右にスライドする超鋼製、ダイヤモンド製等の溝刻設刃(105)(110)からなる。
X軸方向溝刻設部(101)にて、テーブル(102)上の大判液晶ガラス元板(3)は、スライド台(103)の間欠停止毎に、溝刻設刃(105)によってX軸方向に平行にスクライブ溝(5)が施される。
X軸方向に平行にスクライブ溝(5)が施された大判液晶ガラス元板(3)を、前記搬送手段(600)に水平面内で90°反転する機能を付加した水平反転搬送手段(600a)によって、Y軸方向スクライブ溝刻設部(106)のテーブル(107)上に搬送する。
大判液晶ガラス元板(3)は、Y軸方向スクライブ溝刻設部(106)にて、スライド台(108)の間欠停止毎に、溝刻刃(110)によってY軸方向に平行スクライブ溝(5)が施される。
尚、搬送手段(600a)は、スライド台(103)(108)がテーブル(102)(107)の側方に待避して、テーブル(102)(107)上を開放している際に、大判液晶ガラス元板(3)をテーブル(102)(107)に受け渡す。
以下の説明で、大判液晶ガラス元板(3)を上流側から下流側に向きを変えずに搬送する際は、上記搬送手段(600)と同様の搬送手段が用いられ、向きを90°反転させて搬送する際は、上記水平反転搬送手段(600a)と同様の搬送手段が用いられる。
【0042】
偏向フィルム貼着装置(200)は、テーブル(201)と、該テーブル(201)上を下流側から上流側へ転動して移動する押えローラ(202)と、前記Y軸方向スクライブ溝刻設部(106)から大判液晶ガラス元板(3)をテーブル(201)上へ90°水平反転させて搬送する水平反転搬送手段(図示せず)と、偏向フィルム(6)をテーブル(201)上の大判液晶ガラス元板(3)に下流端を位置合わせして重なる様に供給する偏向フィルム供給装置(図示せず)とによって構成される。
テーブル(201)上の大判液晶ガラス元板(3)に、下流端を位置合わせして重なった偏向フィルム(6)を押えローラ(202)が転動して上流側に移動することによって、大判液晶ガラス元板(3)と偏向フィルム(6)との間に空気を巻き込むことなく大判液晶ガラス元板(3)に偏向フィルム(6)を貼着できる。
図示しない偏向フィルム供給装置は、従前のこの種偏向フィルム貼着装置の偏向フィルム供給装置を実施でき、又、大判液晶ガラス元板(3)に対して位置合わせして偏向フィルムを供給できるものであれば構成は問わない。
【0043】
偏向フィルム切断装置(300)は、上流側のX軸方向切断部(301)と、下流側のY軸方向切断部(306)と、X軸方向切断部(301)からY軸方向切断部(306)へ大判液晶ガラス元板(3)を90°水平反転して搬送する水平反転搬送手段(図示せず)とからなる。
X軸方向切断部(301)とY軸方向切断部(306)は共にテーブル(302)(307)と、該テーブル(302)(307)を跨ぎ平行軌条(304)(304)、(309)(309)上を前後に間欠走行する門形のスライド台(303)(308)と、該スライド台(303)(308)上を左右にスライドする超音波カッター(305)(310)からなる。
テーブル(302)上の大判液晶ガラス元板(3)に貼着された偏向フィルム(6)は、X軸方向切断部(301)にて、スライド台(303)の間欠停止毎に、X軸方向に平行切断される。
更に、該偏向フィルム(6)は、Y軸方向切断部(306)にて、スライド台(308)の間欠停止毎に、Y軸方向に平行に切断される。
【0044】
Y軸方向切断部(306)と、Y軸方向切断部(306)の下流側に位置する該第1ブレイク装置(500)との間に、大判液晶ガラス元板(3)の天地を逆にする第1天地反転手段(400)が配備される。
図11に示す如く、天地反転手段(400)は、大判液晶ガラス元板(3)を載せるテーブル(401)と、該テーブル(401)上の大判液晶ガラス元板(3)を反転させるフォーク(402)とによって構成される。
テーブル(401)にはテーブル上面から一斉に出没可能な多数の突上げピン(403)が配備されている。
フォーク(402)は、昇降可能、垂直面内で180°反転可能且つテーブル(401)上面に接近する高さ位置にて水平面内で水平移動可能である。
フォーク(402)は多数の吸盤(404)を具えている。
テーブル(401)に搬送された大判液晶ガラス元板(3)を、突上げピン(401)が一斉に上昇して、テーブル(401)から浮上させる。
フォーク(401)が水平移動してテーブル(401)と大判液晶ガラス元板(3)との間に侵入する。
フォーク(401)が上昇して大判液晶ガラス元板(3)を持ち上げ、且つ吸盤(404)で吸着しつつ垂直面内で180°反転させる。
フォーク(401)が下降して、大判液晶ガラス元板(3)を突上げピン群に受け渡し、吸着を解除する。
フォーク(401)が水平移動して元位置に戻ると、突上げピン群が下降して大判液晶ガラス元板(3)をテーブル(401)に載せる。
これによって、大判液晶ガラス元板(3)は偏向フィルム貼着面、即ち、スクライブ溝(5)刻設面を下側にして待機する。
【0045】
実施例の第1ブレイク装置(500)は、テーブル(501)と、該テーブル(501)の上方にて昇降及び、水平面内で移動可能な弾性を有するロール状の押圧部材(503)とによって構成される。
テーブル(501)はテーブル中心Cを中心に水平面内で90°回転可能である。
押圧部材(503)は、エアーシリンダ等の押圧駆動装置(図示せず)によって昇降可能、且つ制御モータ等を駆動源とし水平移動距離を任意に設定可能な水平移動駆動装置(図示せず)によって水平移動可能である。
偏向フィルム貼着面、即ち、スクライブ溝(5)刻設面を下側にしてテーブル(501)に載せた大判液晶ガラス元板(3)に対して、押圧部材(503)がX軸方向のブレイク溝群の内、一端側のブレイク溝の対応位置を押圧する様に下降し、該大判液晶ガラス元板(3)を該ブレイク溝でブレイクする。
次に、押圧部材(503)が上昇して1ピッチ横移動してから再び下降して、次のブレイク溝で大判液晶ガラス元板(3)をブレイクする。この動作を繰り返して、X軸方向の全てのブレイク溝でブレイクする。
次に、テーブル(501)を90°回転させ、上記したブレイク手順を繰り返して、全てのY軸方向のブレイク溝でも大判液晶ガラス元板(3)をブレイクする。
押圧部材(503)の横移動ピッチは、Y軸方向のブレイク溝のピッチとするは勿論である。
この様にして、大判液晶ガラス元板(3)の第2ガラス基板(2)が各スクライブ溝(5)でブレイクされる。
尚、テーブル(501)上には、必要に応じて紙シート等の薄手の弾性シートを敷いておいてもよい。
【0046】
第1ブレイク装置(500)の下流側の第2スクライブ溝刻設装置(100a)は、前記第1スクライブ溝刻設装置(100)と同様の構成であり、第1ブレイク装置(500)から搬送された大判液晶ガラス元板(3)のブレイクされていない方の第1ガラス基板(1)に、各液晶セル(4)を囲んでX−Y軸方向にスクライブ溝(51)(51)を施す。
【0047】
図12に示す如く、第2スクライブ溝刻設装置(100a)の下流側に前記第1天地反転手段(400)と同様の第2天地反転手段(400a)が配備され、スクライブ溝(51)(51)を施された大判液晶ガラス元板(3)の第1ガラス基板(1)が下側となる様に反転させる。
【0048】
第2天地反転手段(400a)の下流側に前記第1ブレイク装置(500)と同様の構成の第2ブレイク装置(500a)が配備され、大判液晶ガラス元板(3)の第1ガラス基板(1)はスクライブ溝(51)(51)でブレイクされる。これによって、大判液晶ガラス元板(3)は、液晶セル(4)単位の液晶ガラス板(81)に分割される。
【0049】
[第2実施例の製造工程]
第1乃至第6工程
前記第1実施例の第1工程から第6工程と同じである。
第7工程
第1ガラス基板(1)の外表面或いは、第6工程での第2ガラス基板(2)のブレイクによって、第2ガラス基板(2)の不要部を除去して露出した第1ガラス基板(1)の内表面に、レーザ光線を照射することによって第1ガラス基板(1)をブレイクし、図6に示す如く、液晶セル(4)単位の液晶ガラス板(81)を形成する。
【0050】
第8工程
前記第1実施例の第9工程と同じである
【0051】
[第2実施例の工程を実施する液晶パネル製造装置]
前記した第1実施例の液晶パネル製造装置において、図11の第2スクライブ溝刻設装置(100a)をレーザ照射ブレイク装置(700)に代えればよい。
レーザ照射ブレイク装置(700)は、図9のスクライブ溝刻設装置(100)の溝刻設刃(105)(110)を参照)に代えてレーザ光線照射装置(図示せず)とすればよい。
尚、レーザ光線照射装置をX−Y軸の二次元で移動させると、レーザ光線照射装置は1基で済む。
【0052】
[第3実施例の製造工程]
第1乃至第3工程
前記第1実施例の第1乃至第3工程と同じである。
第4工程(第1、第2ガラス基板への偏向フィルムの貼着)
第1、第2の両ガラス基板(1)(2)の外表面に、該ガラス基板のほぼ全域を覆う大きさの偏光フィルム(6)(61)を貼着する。
【0053】
第5工程(第2ガラス基板上の偏向フィルムの切断)
スクライブ溝(5)を施した第2ガラス基板(2)に対して、その外表面に貼着している偏光フィルム(6)を、第1実施例で説明した様に、クライブ溝(5)に沿って超音波カッター(305)(310)で切断する。
【0054】
第6工程(第2ガラス基板のブレイク)
前記第1実施例で説明した様に、第2ガラス基板(2)を第1ガラス基板(1)側から押圧して、第2ガラス基板(2)だけをブレイクする。ブレイク後の不要なガラス片は除去しておく。
【0055】
第7工程(第1ガラス基板上の偏向フィルムの切断)
第1ガラス基板(1)の偏向フィルム(61)の上から、超音波カッターの刃先を当てて、スクライブ溝(51)に沿って走行させて、偏向フィルム(61)をX−Y軸方向に切断する。
【0056】
第8工程(第1ガラス基板のブレイク)
第1ガラス基板(1)のに、偏向フィルム(61)の切断線に対応してX−Y軸方向にレーザ光線を照射して、第1ガラス基板(1)をブレイクする。
これによって、大判の液晶ガラス元板(3)から、各液晶セル単位の液晶パネル(8)を得ることができる。
【0057】
[第3実施例の工程を実施する液晶パネル製造装置]
図13は、上記第3実施例の第2工程から第8工程のガラス基板のブレイクまでの詳細工程を示している。
第3実施例の工程を実施する液晶パネル製造装置は、図9に示す第1実施例の第1スクライブ溝刻設装置(100)の下流側に、大判液晶ガラス元板(3)の両面に偏向フィルム(6)(61)を貼着できる偏向フィルム貼着装置(200a)、該偏向フィルム貼着装置(200a)の下流側に図11に示す天地反転手段(400)、該天地反転手段(400)の下流側に、図10に示す偏向フィルム切断装置(300)、該偏向フィルム切断装置(300)の下流側に、図11に示す天地反転手段(400)、該天地反転手段(400)の下流側に図11に示すブレイク装置(500)、該第1ブレイク装置(500)の下流側に図10に示す偏向フィルム切断装置(300)、該偏向フィルム切断装置(300)の下流側に、前記第2実施例で説明したレーザ照射ブレイク装置(700)を配備すればよい。
【0058】
尚、上記大判液晶ガラス元板(3)の両面に偏向フィルム(6)(61)を貼着できる偏向フィルム貼着装置(200a)とは、図10に示す偏向フィルム貼着装置(200)と同様のフィルム貼着部(200b)の下流側に、該フィルム貼着部(200b)と同様のフィルム貼着部(200c)を配備し、両者の間に図11に示す天地反転手段(400)を設けたものである。
【0059】
上記した第1乃至第3の液晶パネル製造装置のライン構成は、全ての工程において、大判液晶ガラス元板(3)に対して上方から加工を行なう様に構成されているが、工程の全て或いはスクライブ溝刻設工程、偏向フィルム貼着工程、ブレイク工程の内、所望の工程を大判液晶ガラス元板(3)の下方から行なう様に構成することができ、それに応じて、第1天地反転手段(400)と第2天地反転手段(400a)の両方或いは一方を省略できる。
又、大判液晶ガラス元板(3)の長手方向が、装置ラインの搬送方向に向く様に装置ラインを構成したが、これに限定されることはない。要は、請求項1乃至3の製造工程の内、何れか1つの工程が実施できる装置ラインであれば、本発明の技術範囲に含まれるのは勿論である。
【0060】
尚、第3実施例の液晶パネル製造装置において、大判液晶ガラス元板(3)の両面に偏向フィルム(6)を貼着する場合、大判液晶ガラス元板(3)を起こした状態で、一度の工程で大判液晶ガラス元板(3)の両面に偏向フィルム(6)を貼ることもできる。
【0061】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0062】
例えば、上記実施例では、大判液晶ガラス元板(3)は、X軸とY軸方向に液晶セル(4)が並んでいるが、X軸又はY軸の何れか一方の方向に液晶セル(4)が並んだ大判液晶ガラス元板(3)についても本発明を実施できるのは勿論である。
従って、液晶注入法によって液晶セルを形成した中判の液晶ガラス元板を、本発明での大判液晶ガラス元板とすれば、本発明の実施は、液晶滴下法のみならず液晶注入法によって液晶セルを形成した液晶ガラス元板に対しても実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】液晶セル枠を形成したガラス基板の一部を示す斜視図である。
【図2】大判液晶ガラス元板の一部を示す斜視図である。
【図3】一方のガラス基板にスクライブ溝を施した液晶ガラス元板の部分縦断面図である。
【図4】スクライブ溝を施したガラス基板に偏向フィルムを貼着した液晶ガラス元板の部分縦断面図である。
【図5】スクライブ溝を施したガラス基板をブレイクした液晶ガラス元板の部分縦断面図である。
【図6】液晶ガラス元板を分断して得た単位サイズの小判液晶ガラス板の縦断面図である。
【図7】単位サイズの液晶パネルの縦断面図である。
【図8】第1実施例の工程図である。
【図9】第1スクライブ溝刻設装置の概略斜視図である。
【図10】偏向フィルム貼着装置と偏向フィルム切断装置の概略斜視図である。
【図11】天地反転手段とブレイク装置の概略斜視図である。
【図12】第2スクライブ溝刻設装置、天地反転手段第2天地反転装置及び第2ブレイク装置の配置関係を示す説明図である。
【図13】第3実施例の工程図である。
【符号の説明】
【0064】
1 第1ガラス基板
2 第2ガラス基板
3 液晶ガラス元板
4 液晶セル
41 液晶セル枠
5 スクライブ溝
51 スクライブ溝
6 偏向フィルム
61 偏向フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セルをX軸方向及び/又はY軸方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板を形成する工程、
液晶ガラス元板の一方のガラス基板の外表面に、該ガラス基板を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
スクライブ溝を施したガラス基板の外表面のほぼ全域に偏光フィルムを貼着する工程、
上記ガラス基板上の偏光フィルムを、超音波カッターによって、スクライブ溝に対応する線上を切断する工程、
偏向フィルムを貼着したガラス基板をスクライブ溝でブレイクする工程、
液晶ガラス元板の他方のガラス基板に、該ガラス基板を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
該ガラス基板を該スクライブ溝でブレイクすることによって、大判の液晶ガラス元板を各液晶セル単位の液晶ガラス板に分断する工程、
分断した液晶ガラス板の偏向フィルム未貼着面に偏向フィルムを貼着する工程、
を含む、液晶パネルの製法。
【請求項2】
2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セルをX軸方向及び/又はY軸方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板を形成する工程、
液晶ガラス元板の一方のガラス基板の外表面に、該ガラス基板を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
スクライブ溝を施したガラス基板の外表面のほぼ全域に偏光フィルムを貼着する工程、
上記ガラス基板上の偏光フィルムを、超音波カッターによって、スクライブ溝に対応する線上を切断する工程、
偏向フィルムを貼着したガラス基板をスクライブ溝でブレイクする工程、
液晶ガラス元板(3)の他方のガラス基板に、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にレーザ光線を照射して該ガラス基板をブレイクし、液晶ガラス元板を各液晶セル単位の液晶ガラス板に分断する工程、
分断した液晶ガラス板の偏向フィルム未貼着面に偏向フィルムを貼着する工程、
を含む、液晶パネルの製法。
【請求項3】
2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セルをX軸方向及び/又はY軸方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板を形成する工程、
液晶ガラス元板の一方のガラス基板の外表面に、該ガラス基板を各液晶セル単位にブレイクするためのスクライブ溝を、X軸方向及び/又はY軸方向に施す工程、
両ガラス基板の夫々外表面に偏光フィルムを貼着する工程、
スクライブ溝を施したガラス基板に対して、その外表面に貼着している偏光フィルムを、超音波カッターによって、スクライブ溝に対応する線上を切断する工程、
スクライブ溝を施したガラス基板を、該スクライブ溝でブレイクする工程、
他方のガラス基板上の偏向フィルムを、超音波カッターによって、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向に切断する工程、
スクライブ溝を施していないガラス基板に、該ガラス基板上の偏向フィルムの切断線に対応してレーザ光線を照射して、該ガラス基板をブレイクすることにより、大判の液晶ガラス元板を各液晶セル単位の液晶パネルに分断する工程、
を含む、液晶パネルの製法。
【請求項4】
一方又は両方のガラス基板にスクライブ溝を施した後に、ガラス基板に化学研磨を施し、その後、ガラス基板に偏向フィルムを貼着する、請求項1乃至3の何れかに記載の液晶パネルの製法。
【請求項5】
2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セルをX軸方向及び/又はY軸方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板の一方のガラス基板の外表面に、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝を施す第1スクライブ溝刻設装置と、
大判液晶ガラス元板のスクライブ溝が刻設された面に偏向フィルムを貼着する偏向フィルム貼着装置と、
大判液晶ガラス元板に貼着された偏向フィルムを、超音波カッターによって、スクライブ溝と対応する線上を各液晶セルを囲んで切断する偏向フィルム切断装置と、
偏向フィルムが切断された大判液晶ガラス元板の偏向フィルム貼着側ガラス基板をスクライブ溝でブレイクする第1ブレイク装置と、
大判液晶ガラス元板のブレイクされていない方のガラス基板に、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝を施す第2スクライブ溝刻設装置と、
大判液晶ガラス元板の、第2スクライブ溝刻設装置によってスクライブ溝を施されたガラス基板を該スクライブ溝でブレイクする第2ブレイク装置を含む、液晶パネル製造装置。
【請求項6】
2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セルをX軸方向及び/又はY軸方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板の一方のガラス基板の外表面に、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝を施すスクライブ溝刻設装置と、
大判液晶ガラス元板のスクライブ溝が刻設された面に偏向フィルムを貼着する偏向フィルム貼着装置と、
大判液晶ガラス元板に貼着された偏向フィルムを、超音波カッターによって、スクライブ溝と対応する線上を切断する偏向フィルム切断装置と、
偏向フィルム(6)が切断された大判液晶ガラス元板の偏向フィルム貼着側ガラス基板をスクライブ溝でブレイクするブレイク装置と、
大判液晶ガラス元板の、ブレイクされていない方のガラス基板に、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にレーザ光線を照射して、該ガラス基板をブレイクするレーザブレイク装置を含む、液晶パネル製造装置。
【請求項7】
2枚のガラス基板の間に、複数の液晶セルをX軸方向及び/又はY軸方向(縦方向及び/又は横方向)に並列配置した大判の液晶ガラス元板の一方のガラス基板の外表面に、各液晶セルを囲んで、X軸方向及び/又はY軸方向にスクライブ溝を施すスクライブ溝刻設装置と、
大判液晶ガラス元板の夫々外表面に偏光フィルムを貼着する偏向フィルム貼着装置と、
偏向フィルムを貼着した大判液晶ガラス元板の、スクライブ溝を施したガラス基板に対して、該ガラス基板の外表面に貼着している偏光フィルムを、超音波カッターによって、スクライブ溝に対応する線上を切断する第1偏向フィルム切断装置と、
大判液晶ガラス元板の偏向フィルムが切断された側のガラス基板をスクライブ溝でブレイクするブレイク装置と、
大判液晶ガラス元板のブレイクされていないガラス基板の外表面に貼着している偏光フィルムを、超音波カッターによって、各液晶セルを囲んでX軸方向及び/又はY軸方向に切断する第2偏向フィルム切断装置と、
スクライブ溝を施していないガラス基板に、該ガラス基板上の偏向フィルムの切断線に対応してレーザ光線を照射して、該ガラス基板をブレイクするレーザブレイク装置を含む、液晶パネル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−191432(P2008−191432A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26244(P2007−26244)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(591056097)淀川ヒューテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】