説明

液晶パネル処理装置及び液晶パネル処理方法

【課題】 液晶パネルからの液晶の分離を短時間に効率よく行うことができる液晶パネル処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明の液晶パネル処理方法は、チャンバー20内に収容した液晶パネル10を減圧加熱処理することで前記液晶パネル10から液晶を分離するに際して、前記液晶パネル10から蒸散して前記処理容器から排出される排出ガスを、クロマトグラフィ法を用いた分離装置22により単一成分ごとに分離する工程を有している。分離された前記各成分は、回収装置23により各成分ごとに回収容器231〜234にそれぞれ回収することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル処理装置及び液晶パネル処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般廃棄物や産業廃棄物の量が増加の一途を辿っており、廃棄量の増加の抑制や、廃棄物による環境の悪化を抑制するための無害化に対する要請が高まっている。
例えば、家電製品や情報機器等の表示部に用いられている液晶パネルは、省電力、省スペースという利点から今後も急速に使用量が増大することが予想され、それに伴う廃棄量の増大を抑えるためのリサイクル技術の確立は非常に重要である。
【0003】
液晶パネルは、一般的には、2枚のガラス基板を、それらの間に枠状のシール材を介在させて貼り合わせ、前記シール材の内側に液晶を封入した構成を備えている。ガラス基板の内側(液晶側)には、ITO等の透光性導電材料からなる電極や、着色した樹脂材料からなるカラーフィルタが設けられており、ガラス基板の間に封入された液晶は、有機物を主成分とするものである。一方、ガラス基板の外側には、樹脂フィルムからなる偏光板や位相差板が設けられている。
【0004】
上述した構成を備える液晶パネルからガラスや希少金属を回収する方法や回収装置の提案が既に成されている。例えば下記特許文献1に記載の技術は、液晶パネルを破砕しないで反応炉に配置し、反応炉内を減圧状態にして加熱することで、液晶パネルを構成する有機物(液晶、カラーフィルタ、偏光板等)を蒸発ないし炭化させることでガラス基板を回収するものである。
【特許文献1】特開2004−230229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の技術を用いて液晶パネルの処理を行うと、チャンバーから液晶の気化物のほか、偏光板やカラーフィルタ、配向膜等の有機物が炭化される際に発生するガスが排出される。そして、同文献に記載の技術では、この排出ガスを冷却して得られる液状有機物や固形有機物を燃料としてリサイクルすることが想定されている。しかしながら、液晶パネルに封入されている液晶は、パネルの使用によって極端に劣化してしまうものではなく、液晶パネルから分離して取り出した状態で再利用が可能であり、少なくとも分解して低分子化合物とすれば容易に再利用することが可能である。そこで本発明者は、減圧加熱処理を用いて液晶パネルから液晶を再利用可能な状態で分離する方法を検討し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって本発明の目的は、液晶パネルからの液晶を再利用可能な状態で効率よく分離することができる液晶パネル処理方法を提供することにある。また本発明は、上記方法を用いた液晶パネルの処理に好適な液晶パネル処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、処理容器内に収容した液晶パネルを減圧加熱処理することで前記液晶パネルから液晶を分離するに際して、前記液晶パネルから蒸散して前記処理容器から排出される排出ガスを、クロマトグラフィ法を用いて単一成分ごとに分離することを特徴とする液晶パネル処理方法を提供する。
この液晶パネル処理方法によれば、液晶及びその分解物を含む排出ガスの成分分離にクロマトグラフィ法を用いるので、簡便な装置を用いて効率よく成分分離を行うことができる。これにより、液晶及びその分解物を効率よく回収でき、また高純度の液晶を回収することも可能になって、液晶回収物のリサイクルが容易なものとなる。
【0008】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記クロマトグラフィ法により、液晶と液晶以外の有機物を分離することが好ましい。
この処理方法によれば、積極的に液晶とその他の有機物を分離するので、高純度の液晶を回収することができ、液晶回収物のリサイクルがより容易になる。
【0009】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記クロマトグラフィ法により、前記液晶をさらに複数種の液晶に分離することもできる。例えば、液晶とその分解物を、官能基の種類や質量(分子量)に応じてさらに細かく分離することとすれば、リサイクルの容易性がさらに向上する。
【0010】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記クロマトグラフィ法で用いる固定相が、液晶吸着剤であることが好ましい。この方法によれば、比較的分子量の大きい液晶の移動速度を低くし、その他の比較的分子量の小さい有機物(例えば液晶パネルのシール材や配向膜の分解物)を優先的に排出させるようにすることで、効率よく不純物の少ない液晶を回収できるようになる。
【0011】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記処理容器から排出される排出ガスの成分を、前記液晶パネルの処理温度及び/又は前記処理容器内の排気速度によって調整することが好ましい。
この処理方法によれば、処理容器から排出される排出ガスの主成分を調整することで、例えば液晶とその分解物を多く含む排出ガスを処理容器から排出させることもできるので、液晶等の回収効率を高めることができる。
【0012】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記クロマトグラフィ法が、前記排出ガスを分離カラムに通過させて単一成分ごとに分離する方法であり、前記分離カラムから排出される物質の成分を測定し、該測定の結果に応じて前記液晶パネルの処理温度及び/又は前記処理容器内の排気速度を調整することで、前記処理容器から排出される排出ガスの成分を調整する方法とすることもできる。
この処理方法によれば、前記分離カラムから排出される物質の成分を監視し、分離カラムから排出されている物質の成分に応じて減圧加熱処理の条件を変更するので、分離カラムに導入する排出ガスの成分を所望の成分に調整することができ、例えば、液晶以外の有機物を多く含む排出ガスを分離カラムに導入したり、液晶とその分解物を多く含む排出ガスを分離カラムに導入することができる。これにより、分離カラムによる液晶の分離が良好なものとなり、液晶等の回収効率を高めることができる。
【0013】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記クロマトグラフィ法が、前記排出ガスを分離カラムに通過させて単一成分ごとに分離する方法であり、前記分離カラムから排出される物質の成分を測定し、前記測定の結果に基づいて前記分離カラムから排出される物質に対応した回収容器を前記分離カラムに接続して回収することもできる。
この処理方法によれば、分離カラムから排出される成分に応じて異なる回収容器を選択し、当該物質成分の回収を行うので、高効率に成分分離と回収を行うことができる。
【0014】
本発明の液晶パネル処理方法では、前記クロマトグラフィ法が、前記排出ガスを分離カラムに通過させて単一成分ごとに分離する方法であり、前記分離カラムから排出される物質の成分を測定し、前記測定の結果に基づいて、前記分離カラムから排出される物質の成分毎に異なる溶媒に対して案内し回収することもできる。
この処理方法によれば、分離カラムから排出される物質の成分に応じて異なる溶媒に前記物質成分を案内するので、特にガス成分の回収に好適な処理方法となる。また溶媒に前記物質成分を溶解させて回収するので、不要な成分を溶解しない溶媒を選択することで、回収物質の純度を向上させることができるという利点がある。
【0015】
本発明の液晶パネル処理装置は、減圧加熱処理によって液晶パネルから液晶を分離する液晶パネル処理装置であって、内部に液晶パネルを収容する処理容器と、前記処理容器内部を加熱する加熱手段と、前記処理容器内部を減圧する排気手段と、前記処理容器から排出される排出ガスをクロマトグラフィ法により単一成分ごとに分離する分離手段と、を備えたことを特徴とする。
この液晶パネル処理装置によれば、処理容器から排出される排出ガスをクロマトグラフィ法により成分分離することができるので、液晶とその分解物を他の有機物から分離することができ、液晶等を再利用可能な形態で高効率に回収することができる。
【0016】
本発明の液晶パネル処理装置では、前記分離手段が、ガスクロマトグラフィ法により排出ガスを単一成分ごとに分離するものであってもよい。
あるいは、本発明の液晶パネル処理装置では、前記分離手段が、前記排出ガスの少なくとも一部を液化させて得られる液状物質を、液体クロマトグラフィ法により単一成分ごとに分離するものであってもよい。
前記クロマトグラフィ法の種類は、気相、液相のいずれであっても構わない。処理容器から排出されるのは液晶パネルの構成部材が分解されて発生した気体成分であるため、ガスクロマトグラフィ法を用いるのが簡便であるが、前記排出ガスを液化させた後に分離カラムに案内する構成であれば、より高精度の成分分離が可能な液体クロマトグラフィ法を用いることができる。
【0017】
本発明の液晶パネル処理装置では、前記分離手段が、固定相としての液晶吸着剤を有する分離カラムを備えていることが好ましい。この構成によれば、分離カラム内で液晶やその分解物の移動速度を低下させ、その他の有機物を優先的に排出した後で液晶等を回収することができるので、高効率に高純度の液晶を回収することができる処理装置を構成することができる。
【0018】
本発明に係る液晶パネル処理装置では、前記分離カラムがキャピラリーカラム又はパックドかラムである構成とすることができる。すなわち、液晶等の回収対象物質の回収効率等に応じて適宜分離カラムの構成を変更することができる。
【0019】
本発明の液晶パネル処理装置では、前記分離手段から排出される物質の成分を測定する検出手段と、前記分離手段により単一の成分ごとに分離した各成分を回収する複数の回収容器を具備した回収手段と、前記検出手段による測定結果に応じて前記回収手段の回収容器を切り替える制御手段とを備えた構成とすることもできる。
この構成によれば、前記検出手段によって分離手段から分離されて排出される物質の成分を監視し、当該物質成分の種類に応じて適切な回収容器を選択することができるようになる。したがって、各物質成分を高精度に分離して回収することができる。
【0020】
本発明の液晶パネル処理装置では、前記分離手段から排出される物質の成分を測定する検出手段と、前記検出手段による測定結果に応じて前記加熱手段及び/又は前記排気手段の動作条件を制御する制御手段とを備えた構成とすることもできる。
この構成によれば、分離手段から排出される物質成分を監視し、かかる物質成分の状態に応じて減圧加熱処理の条件を変更することが可能になる。したがって、液晶やその分解物の回収に好適な成分の排出ガスを分離手段に導入することが可能になり、高効率に高純度の液晶を回収できる液晶パネル処理装置となる。
【0021】
本発明の液晶パネル処理装置では、前記分離手段から排出される物質を液化させる冷却手段を備えた構成とすることもできる。この構成によれば、分離手段からガス成分として排出される物質成分を効率よく回収できる液晶パネル処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る液晶パネル処理装置の一構成例を示す概略構成図である。図2は、液晶パネル処理装置の主要部たるチャンバーの断面構成図である。
【0023】
図1に示す液晶パネル処理装置は、内部に液晶パネルを収容するチャンバー(処理容器)20と、チャンバー20内部を減圧可能に接続された減圧ポンプ(排気手段)24とを主体として構成されている。チャンバー20には、収容された液晶パネルを加熱する加熱装置(加熱手段)21が設けられている。
チャンバー20に接続された減圧ポンプ24には、チャンバー20の排出ガスを単一成分ごとに分離する分離装置(分離手段)22が接続されている。分離装置22には、分離装置22で分離した液晶等の物質を回収する回収装置23が接続されている。回収装置23には、分離回収処理後の排出ガスを処理するガス処理装置25が接続されている。
【0024】
チャンバー20は、本実施形態の場合、図2に示すように、内部に密閉可能な空間を有する略球状を成して構成されており、その内部空間20aに液晶パネル10を収容できるようになっている。チャンバー20に併設された加熱装置21は、前記内部空間20aに収容された液晶パネル10を加熱して液晶等の構成部材(主として有機物)を気化ないし炭化させる主熱源として機能するものである。
加熱装置21の方式としては、チャンバー20の内壁を加熱してその輻射熱により液晶パネル10を加熱する方式や、ヒータ線やランプヒータ等を用いて直接に液晶パネル10を加熱する方式等、種々の方式が採用でき、複数の加熱手段を併設してもよい。
【0025】
分離装置22は、例えば螺旋状の管状部材22bを主体としてなる分離カラム22aを備えたものを用いることができる。すなわち分離装置22は、分離カラムを用いたクロマトグラフィ装置であり、内面に固定相を設けた管状部材22b中で被処理試料を移動させつつ、被処理試料の各成分の固定相に対する吸着性等の差に基づく移動速度の差を利用して成分を分離するものである。
分離カラム22aは、管状部材22bの内面に薄層の固定相を設けたキャピラリーカラム、管状部材22bの内部に粒状基体の表面に固定相を形成した充填材等を充填したパックドカラムのいずれであってもよい。
【0026】
本実施形態の液晶パネル処理装置においては、前記固定相として液晶吸着剤を用いることが好ましい。液晶とそれ以外の物質とを積極的に分離することで、回収する液晶の純度を高めることができるからである。前記液晶吸着剤としては、100mol%ジメチルポリシロキサン、5mol%ジフェニル−95mol%ジメチルポリシロキサン、7mol%シアノプロピル−7mol%フェニル−86mol%ジメチルポリシロキサン、50mol%フェニル−50mol%メチルポリシロキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(TPA(テレフタル酸)処理)等を例示することができ、液晶パネル10に含まれる液晶の成分に応じて適宜選択することができる。
【0027】
回収装置23は、図2に示すように、分離カラム22aを通過して排出される気体又は液体を検出してその成分を同定する検出装置(検出手段)23aと、検出装置23aによる同定結果に基づき単一成分ごとに分離された各成分を回収する分離回収部23bとを備えて構成されており、分離回収部23bには、回収対象の成分毎に複数(図示では4個)の回収容器231〜234が設けられている。
【0028】
検出装置23aとしては、種々の検出器を用いることができ、例えば、熱伝導度型検出器(TCD)、水素炎イオン化検出器(FID)、窒素リン検出器(NPD)、電子捕獲型検出器(ECD)、炎光光度検出器(FPD)、ヘリウムイオン化検出器(HID)、イオン移動度スペクトル検出器(IMS)、質量分析計(MS)等を挙げることができる。
分離回収部23bは、検出装置23aでの同定結果に基づき各成分を分類する機能と、分類された各成分を回収する機能とを具備しており、例えば、検出装置23aで検出された成分に応じて検出装置23aに接続する回収容器を切り替える機能を備えた構成とすることができる。
【0029】
回収容器231〜234には、回収されるガス成分に応じた溶媒を入れておいてもよく、かかる構成により前記ガス成分を選択的に前記溶媒に溶解させれば、ガス成分を効率よく回収でき、また不要な成分を除去して回収する成分の純度を向上させることができる。この場合、分離カラム22aから排出されるガス成分は、例えばハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル系化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素等であるので、これらのガス成分を溶解させることのできる溶媒を適宜選択して回収容器に貯留しておく。溶媒の具体例を挙げるならば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、等である。
【0030】
なお、回収装置23によって液晶の回収を行う場合、回収物に不純物が混入するのを防止するために、少なくとも上記回収容器231〜234は防塵環境(クラス1000程度のクリーンブース/クリーンルーム)に配置することが好ましい。このようにして純度の高い液晶を回収することができれば、リサイクルに要するコストを低減することができる。
【0031】
図1に戻り、減圧ポンプ24は、チャンバー20の内部空間20aを例えば0.01〜10kPa程度に減圧可能なポンプである。ガス処理装置25は、液晶等の回収対象の物質を分離した後の排気を清浄化する装置であり、例えば活性炭フィルタ等を用いて排気に含まれる有機物のガス等を吸着除去するものを適用できる。
【0032】
本実施形態の液晶処理装置による減圧加熱処理に供される液晶パネル10は、液晶パネルの製造工場より排出されたり、市場において使用済みとなった表示装置等から取り出されたものである。
ここで、図3は、液晶パネル10の平面構成図であり、図4は、図3のA−A線に沿う断面構成図である。本実施形態では液晶パネル10としてパッシブマトリクス型のものを例示して説明するが、液晶パネル処理装置を用いて処理できる液晶パネルの種類は、パッシブマトリクス型に限られず、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)が基板上に形成されたアクティブマトリクス型のパネルであってもよい。また、基板内面にアルミニウムや銀等からなる反射膜が形成された反射型や半透過反射型の液晶パネルであってもよい。
【0033】
液晶パネル10は、図3及び図4に示すように、シール材7を介して所定間隔に対向配置された2枚のガラス基板11,12を備え、ガラス基板11,12とシール材7とに囲まれる領域に注入された液晶をシール材7の開口部に設けられた封止材7bによって封止したものとなっている。なお、図3には封止材7bを有する液晶パネル10を示しているが、シール材に開口部が設けられていない、いわゆる封口レスタイプの液晶パネルであっても、本発明に係る処理装置は問題なく処理することが可能である。
【0034】
次に、図4に示す断面構造をみると、液晶パネル10を構成するガラス基板11,12は、それらの間に分散配置されたスペーサ34により所定間隔に離間され、基板端部に設けられたシール材7によって貼り合わされており、ガラス基板11,12とシール材7とに囲まれた空間に液晶35が封入されている。各ガラス基板11,12の外面側には、それぞれ粘着材を介して偏光板や位相差板等の光学素子31,32が設けられている。
【0035】
ガラス基板11の内面側(液晶側)には、カラーフィルタ18R、18G、18Bが配列形成されており、これらのカラーフィルタの間には遮光膜(ブラックマトリクス)16が形成されている。カラーフィルタ18R、18G、18Bを覆って樹脂材料等からなる平坦化膜13が形成され、平坦化膜13上にITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料かからなる平面視略ストライプ状の電極パターン40と、ポリイミド等からなる配向膜21とが順に形成されている。
【0036】
ガラス基板12の内面側には、平面視略ストライプ状を成して前記電極パターン40と交差する方向に延びる電極パターン50が形成されており、電極パターン50上に、樹脂材料等からなるオーバーコート膜29と、ポリイミド等からなる配向膜22とが順に形成されている。
【0037】
上記構成の液晶パネル処理装置を用いて液晶パネル10の減圧加熱処理を行うには、図1及び図2に示したように、チャンバー20内に液晶パネル10を配置した後、チャンバー20を密閉して減圧ポンプ24を動作させ、内部空間20aを所定の圧力(0.01〜10kPa)とする。その後、加熱装置21によりチャンバー20内を所定温度(例えば40℃〜100℃程度)に加熱し、規定温度に上昇した後、分離カラム22aにチャンバー20からの排気を導入する。次いで、チャンバー20内を窒素ガスでパージして分離カラム22aに操出するとともに、検出装置23aにて分離カラム22aから排出されるガスの成分をモニタする。
【0038】
上記検出装置23aによるモニタで、チャンバー20から分離カラム22aに送出されたガスが全て分離カラム22aを通過したのを確認したならば、次に、加熱装置21によりチャンバー20内を200〜800℃に加熱し、液晶パネル10の減圧加熱処理を開始する。
【0039】
上記減圧加熱環境に液晶パネル10を保持すると、加熱装置21による直接加熱又はチャンバー内壁の輻射熱によって、液晶パネル10の各構成部材が内部空間20aに蒸発され、あるいはガラス基板11,12上で炭化される。例えばパネル内部に封止されている液晶は、加熱により封止材7bやシール材7が脆弱化ないし分解されることで内部空間20aに蒸散される。シール材7、封止材7b、光学素子31,32、配向膜21,22、カラーフィルタ18R、18G、18B等の有機物からなる構成部材は、一部が分解されて内部空間20aに気体として蒸散され、一部が炭化されてガラス基板11,12上に残る。
液晶パネル10がガラス基板上にドライバIC等を実装した構造であれば、前記ドライバICを封止しているモールド材等も、上記配向膜等と同様に気体を発生して炭化される。
【0040】
チャンバー20から排出される排出ガスは、液晶やその分解物のガス成分、シール材7や封止材7b、配向膜21,22等の他の有機物から発生したガス成分を含むものであり、このような排出ガスを分離カラム22aに導入すると、分離カラム22aには固定相として液晶吸着剤が設けられているので、液晶及びその分解物の分離カラム22a内での移動速度が低下し、液晶以外の有機物から発生したガスが分離カラム22aから先に排出される。
【0041】
そうすると、検出装置23aで前記排出ガスをモニタしているので、モニタ結果により分離カラム22aから排出されている成分を容易に把握でき、各成分毎に分離回収部23bの回収容器に回収することができる。そして、分離カラム22aから排出されてくる順に、回収容器231〜234に異なる成分の回収物を収容するとすれば、各構成部材の材質によって回収の順番は異なるが、例えば、回収容器231〜233に、シール材7や封止材7bが分解されて発生したガス成分、配向膜21,22が分解されて発生したガス成分、光学素子31,32が分解されて発生したガス成分等を順次回収し、最後に分離カラム22aから排出されてくる液晶やその分解物を回収容器234に回収することができる。
【0042】
液晶パネル10を構成する各部材の分解温度はそれぞれ異なっているため、液晶パネル10の昇温速度やチャンバー排気速度の調整により排出ガスの成分を異ならせることができる。例えば、液晶又はその分解物のガス成分が、シール材7や封止材7b、あるいは配向膜21,22等から発生するガス成分よりも先に減圧ポンプ24側へ排出されるようにすることもできる。
【0043】
なお、チャンバー20からのガス排出量が多すぎたり、排出速度が速すぎる場合には、分離カラム22a内における成分間の移動速度差が小さくなって分離が不十分になると考えられる。その場合には、検出装置23aでのモニタリング結果を参照し、液晶パネル10の昇温速度を低くしたり、減圧ポンプ24による排気速度を低くする等の調整を行えばよい。
【0044】
また、減圧加熱処理時にチャンバー20内の加熱温度を変化させて排出ガスの分離回収をさらに容易なものとすることができる。例えば、まず、液晶パネル10を加熱して封止材7bあるいはシール材7を脆弱化させることでシール機能を低下させ、チャンバーの内部空間20aと液晶パネル10の内部(液晶が封止されている部分)とを連通させるリーク路を、シール材7あるいは封止材7bとガラス基板との間に形成する。その後、内部空間20aを液晶の蒸発温度程度に保持することで、前記リーク路を介して液晶をチャンバー内部に蒸散させ、チャンバー20外へ排出する。このように他の構成部材が分解しない温度で液晶の回収を行うことで、高純度の液晶の回収が可能になる。
【0045】
その後、液晶の分離処理が終了したのを検出装置23aのモニタ結果により確認し、続いてチャンバー20の内部温度を上昇させる。すると、液晶パネル10の他の構成部材(シール材7や封止材7b、配向膜21,22等)の分解が開始される。このとき、液晶の分離処理は終了しているので、チャンバー20からの排出ガスはそのほとんどが液晶以外の成分となり、各構成部材から発生するガス成分に対して、回収処理や無害化処理等の処理を効率よく行うことができる。
なお、上記液晶の分離回収を行った後のガラス基板11,12は、チャンバー20から取り出した後、基板上に残る有機物の灰や金属類(反射膜や配線等)を溶解除去することでリサイクル品として回収することができる。
【0046】
(変形例)
次に、本発明に係る液晶パネル処理装置の変形例について図5及び図6参照して説明する。図5は、液晶パネル処理装置の第1変形例を示す概略構成図、図6は、同、第2変形例を示す概略構成図である。なお、図5及び図6において、図1及び図2と共通の構成要素には同一の符号を付しており、以下の説明ではそれらの構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0047】
図5に示す第1変形例の液晶パネル処理装置は、チャンバー20と、減圧ポンプ24と、分離カラム22a(分離装置)と、検出装置23aと、分離回収部23bと、制御装置26とを備えて構成されている。本例の液晶パネル処理装置では、分離回収部23bが、検出装置23aに対して複数の回収容器231〜233を切替可能に接続する機能を有したものとなっている。また、制御装置26は、チャンバー20の加熱装置21、減圧ポンプ24、検出装置23a、及び分離回収部23bに接続されており、上記各装置の制御が可能なものとなっている。
【0048】
上記第1変形例の液晶パネル処理装置により減圧加熱処理を行うと、チャンバー20からの排出ガスは減圧ポンプ24を介して分離カラム22aに導入され、分離カラム22aから排出されたガスを検出装置23aでモニタすることで成分毎に分離制御部23bの回収容器231〜233への回収を行うことができる。この処理において、検出装置23aによるモニタリング結果は制御装置26に出力される。そして、分離カラム22aから排出される成分に係る情報を受信した制御装置26は、かかる情報に基づいて分離制御部23bを動作させ、前記分離カラム22aから排出されている成分に対応する回収容器を選択し、検出装置23aに接続する。この構成により排出ガスをその成分毎に異なる回収容器231〜233に適切に回収することができる。またこのとき、回収容器231〜233に適切な溶媒231a〜233aを貯留しておけば、高効率に液晶等を回収することができる。
【0049】
また制御装置26は、加熱装置21及び減圧ポンプ24に接続されているので、上記検出装置23aから受信した情報に基づいて、加熱装置21及び減圧ポンプ24の動作条件を変更し、チャンバー20内の昇温速度や加熱温度、排気速度等を調整することができる。したがって、前記情報により分離カラム22aによる排出ガスの成分分離が十分でないことが検知されたときには、加熱装置21及び減圧ポンプ24の動作条件を調整し、良好な成分分離が可能な温度条件及び排気条件にて減圧加熱処理を行うことができるようになっている。
【0050】
このように第1変形例に係る液晶パネル処理装置を用いるならば、分離カラム22aから排出されるガスの成分に応じて適切な回収容器231〜233を自動選択し、前記ガス成分を回収するようになっているので、極めて効率よくかつ正確に液晶等の回収を行うことができる。また、減圧加熱処理の条件についても、分離カラム22aからの排出ガスのモニタ結果に基づいて、より分離が容易な条件に再設定されるようになっているので、排出ガスの各成分の分離をより正確なものとすることができ、高純度の液晶回収物を得ることができる。
【0051】
次に、図6に示す第2変形例の液晶パネル処理装置は、分離回収部23bの回収容器231と検出装置23aとの間に、冷却装置27が設けられている点に特徴を有している。なお、図6では、単一の回収容器231のみを示しているが、複数の回収容器を備えた分離回収部にも問題なく適用することができる。例えば図5に示した第1変形例に係る液晶パネル処理装置では、複数の回収容器231〜233が設けられているが、前記冷却装置27を、図5に示す検出装置23aと分離回収部23bとの間に介挿した構成とすることもでき、あるいは各回収容器231〜233に対応して冷却装置27を設けた構成とすることもできる。この冷却装置27としては、特に限定はなく、公知の冷却手段を用いることができる。水冷式冷却装置、空冷式冷却装置、電子式冷却装置等のいずれも適用が可能である。
【0052】
このように回収容器231の前段に冷却装置27を設けておくことで、分離カラム22aから排出されてくるガス成分を冷却して液化し、回収することができる。チャンバー20から気体の状態で排出される液晶及びその分解物を回収する際に冷却装置27による液化を行えば、効率よく液晶ないしその分解物を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態に係る液晶パネル処理装置の概略構成図。
【図2】同、具体的構成例を示す断面構成図。
【図3】液晶パネルの平面構成図。
【図4】液晶パネルの部分断面構成図。
【図5】液晶パネル処理装置の第1変形例を示す概略構成図。
【図6】液晶パネル処理装置の第2変形例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0054】
10 液晶パネル、20 チャンバー(処理容器)、20a 内部空間、21 加熱装置(加熱手段)、22 分離装置(分離手段)、23 回収装置、23a 検出装置(検出手段)、23b 分離回収部、24 減圧ポンプ(排気手段)、25 ガス処理装置、26 制御装置(制御手段)、27 冷却装置(冷却手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に収容した液晶パネルを減圧加熱処理することで前記液晶パネルから液晶を分離するに際して、
前記液晶パネルから蒸散して前記処理容器から排出される排出ガスを、クロマトグラフィ法を用いて単一成分ごとに分離することを特徴とする液晶パネル処理方法。
【請求項2】
前記クロマトグラフィ法により、液晶と液晶以外の有機物を分離することを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項3】
前記クロマトグラフィ法により、前記液晶をさらに複数種の液晶に分離することを特徴とする請求項2に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項4】
前記クロマトグラフィ法で用いる固定相が、液晶吸着剤であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項5】
前記処理容器から排出される排出ガスの成分を、前記液晶パネルの処理温度及び/又は前記処理容器内の排気速度によって調整することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィ法が、前記排出ガスを分離カラムに通過させて複数の物質に分離する方法であり、
前記分離カラムから排出される物質の成分を測定し、該測定の結果に応じて前記液晶パネルの処理温度及び/又は前記処理容器内の排気速度を調整することで、前記処理容器から排出される排出ガスの成分を調整することを特徴とする請求項5に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項7】
前記クロマトグラフィ法が、前記排出ガスを分離カラムに通過させて複数の物質に分離する方法であり、
前記分離カラムから排出される物質の成分を測定し、
前記測定の結果に基づいて前記分離カラムから排出される物質に対応した回収容器を前記分離カラムに接続し回収することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項8】
前記クロマトグラフィ法が、前記排出ガスを分離カラムに通過させて複数の物質に分離する方法であり、
前記分離カラムから排出される物質の成分を測定し、
前記測定の結果に基づいて、前記分離カラムから排出される前記成分毎に異なる溶媒に案内し回収することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶パネル処理方法。
【請求項9】
減圧加熱処理によって液晶パネルから液晶を分離する液晶パネル処理装置であって、
内部に液晶パネルを収容する処理容器と、
前記処理容器内部を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内部を減圧する排気手段と、
前記処理容器から排出される排出ガスをクロマトグラフィ法により単一成分ごとに分離する分離手段と、
を備えたことを特徴とする液晶パネル処理装置。
【請求項10】
前記分離手段が、ガスクロマトグラフィ法により排出ガスを単一成分ごとに分離するものであることを特徴とする請求項9に記載の液晶パネル処理装置。
【請求項11】
前記分離手段が、前記排出ガスの少なくとも一部を液化させて得られる液状物質を、液体クロマトグラフィ法により単一成分ごとに分離するものであることを特徴とする請求項9に記載の液晶パネル処理装置。
【請求項12】
前記分離手段が、固定相としての液晶吸着剤を有する分離カラムを備えていることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の液晶パネル処理装置。
【請求項13】
前記分離手段から排出される物質の成分を測定する検出手段と、
前記分離手段により単一成分ごとに分離した各成分を回収する複数の回収容器を具備した回収手段と、
前記検出手段による測定結果に応じて前記回収手段の回収容器を切り替える制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の液晶パネル処理装置。
【請求項14】
前記分離手段から排出される物質の成分を測定する検出手段と、
前記検出手段による測定結果に応じて前記加熱手段及び/又は前記排気手段の動作条件を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の液晶パネル処理装置。
【請求項15】
前記分離手段から排出される物質を液化させる冷却手段を備えたことを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載の液晶パネル処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−198492(P2006−198492A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11171(P2005−11171)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】