説明

液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物、液晶ポリマー用ヒートシール材、蓋材

【課題】液晶ポリマーを主成分とする被着体に対し、ヒートシールすることができるヒートシール材を提供することができる液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物、ヒートシール材、蓋材を提供する。
【解決手段】液晶ポリマーを主成分とする被着体にヒートシールされるヒートシール材に使用される液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物であって、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)と、スチレン系エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)とを含む液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物、液晶ポリマー用ヒートシール材、蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマーは、加工が容易であり、耐熱性、ガスバリア性等に優れているため、様々な用途、たとえば、プリント基板等の電子部品や各種の容器等に使用されている。
しかしながら、液晶ポリマーは非常に結晶性が高く、他の樹脂との接着性が良好ではない。そこで、特許文献1に示すような接着材料が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−159419号公報
【特許文献2】特開2009−102453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液晶ポリマー用の接着剤に対して、ヒートシール性が求められている。特許文献1においては、液晶樹脂に対する接着性が良好なエポキシ基含有エチレン共重合体からなる接着材料が開示されているが、ヒートシール性については全く考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述したように、液晶ポリマーは非常に結晶性が高いため、他の樹脂との接着性が良好ではない。従来、ポリエチレン系樹脂等の樹脂を主成分とする被着体に対するヒートシール材として、種々の組成物が開発されている。しかしながら、これらのヒートシール材の多くは、液晶ポリマーに対しては、良好なヒートシール性を示さず、液晶ポリマー用のヒートシール材を得ることは非常に困難であるとされていた。
これに対し、本発明者が鋭意検討した結果、本発明者は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)と、スチレン系エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)、を含むヒートシール性樹脂組成物が液晶ポリマーを主成分とする被着体に対し、良好なヒートシール性を示すことを見出したのである。
【0006】
すなわち、本発明によれば、液晶ポリマーを主成分とする被着体にヒートシールされるヒートシール材に使用される液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物であって、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)と、スチレン系エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)とを含む液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物が提供される。
【0007】
この液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を使用してヒートシール材を成形すれば、液晶ポリマーを主成分とする被着体に対し、良好なヒートシール性を示すヒートシール材を提供することができる。
【0008】
また、本発明によれば、上述した液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を含む液晶ポリマー用ヒートシール材を提供することができる。
さらには、液晶ポリマーを含む容器にヒートシールされる蓋材であって、上述した液晶ポリマー用ヒートシール材を備える蓋材も提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶ポリマーを主成分とする被着体に対し、良好なヒートシール性を示すヒートシール材を提供することができる液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物、ヒートシール材、蓋材が提供される。
このような材料の用途としては、耐熱性、ガスバリア性等を要するものに適しており、化粧品包装や医薬品包装、医療器具包装等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
はじめに、本発明の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物の概要について説明する。
液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、液晶ポリマーを主成分とする被着体にヒートシールされるヒートシール材に使用される液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物であって、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)と、スチレン系エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)とを含む。
このような液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、液晶ポリマーを主成分とする被着体に対し、良好にヒートシールすることができる。
具体的には、液晶ポリマーを含む被着体に対し、160℃〜220℃のいずれかの温度で、1秒あるいは2秒、圧力0.3MPaでヒートシールした場合に、T型剥離試験における剥離強度が5N /15mm以上、 15 N/15mm以下 であるヒートシール材を得ることができる。
また、このような液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、良好な易開封性も有している。
【0011】
次に、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物について詳細に説明する。
(成分(A))
液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、成分(A)としてエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を含む。
エチレンと共重合される不飽和カルボン酸エステルの不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8の不飽和カルボン酸、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸(マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル)、アクリル酸などが用いられる。
不飽和カルボン酸エステルは、上述した不飽和カルボン酸のアルキルエステルが好ましく、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、等があげられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、加工性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸のアルキル(特にメチル、エチル)エステルが好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、不飽和カルボン酸エステルを1〜40質量%、特には2〜30質量%含むことが好ましい。
不飽和カルボン酸エステルの含有量が前記範囲内にあると、エチレン・不飽和カルボン酸エステル本来の好ましい諸物性を保持し、ヒートシール性も良好な液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を得ることができる。
エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体の融点は70〜110℃程度であることが好ましい。成形加工性などを考慮すると、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体のメルトフローレート(MFR、JIS K7210−1999(190℃、2160g荷重)、以下同一)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、特には1〜20g/10分がよい。
成分(A)としては、以上のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を1種類または2種類以上併用して使用することができる。
【0012】
(成分(B))
スチレン系エラストマーは、ジエンブロック(ジエン重合体部)からなるソフトセグメントとスチレンブロック(スチレン重合体)からなるハードセグメントとを有するブロック共重合体である。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)若しくはそれらブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。かかる水素添加物は、スチレンブロックとジエンブロックの全てが水素添加されたブロック共重合体であっても、ジエンブロックのみ水素添加されたブロック共重合体あるいはスチレンブロックとジエンブロックの一部が水素添加されたブロック共重合体等の部分水素添加物であってもよい。
これらブロック共重合体若しくはその水素添加物を成分(B)として用いる際には、単独でも2種以上用いてもよい。
これらブロック共重合体の中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)の水素添加物等のスチレンブロックとジエンブロックとを含有するブロック共重合体の水素添加物がより好ましい。具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物であるスチレン−エチレン−ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が押出成形時の熱安定性に優れ、加工時の安定性や、劣化物の発生及び臭いの発生を抑制する点で好ましい。なかでも、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)がより好ましく、なかでも、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
スチレン系エラストマーのMFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重5kg、温度200℃)は特に限定されないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲がよい。
スチレン系エラストマーは、上記の中から二種以上の複数を選択して併用しても良い。
【0013】
(成分(C))
成分(C)として使用される粘着付与剤としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂があげられる。成分(C)としては、上述した材料のうち、1種類の樹脂類を使用してもよく、また、上述した樹脂類のうち、2種以上を併用してもよい。
脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えばブテン、イソブチレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン等のC及び/又はCのオレフィン、ジオレフィン等を主成分とした重合体があげられる。
脂環族系炭化水素樹脂としては、例えばスペントC〜C留分中のジエン成分を環化二量体化後重合した樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合した樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂(水素添加芳香族炭化水素樹脂)等が挙げられる。
芳香族系炭化水素樹脂としては、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレン等のC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を主成分とする樹脂等が例示できる。
ポリテルペン系樹脂としては具体的にはα−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体等が挙げられる。
ロジン類としてはロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンのグリセリンエステル及びその水添物又はその重合体及びロジンのペンタエリスリットエステル及びその水添物又はその重合体等が挙げられる。
スチレン系樹脂としてはスチレン系モノマーの単独重合体、スチレン・オレフィン共重合体、ビニルトルエン・α−メチルスチレン共重合体等が例示できる。
なかでも、成分(A)との分散性の観点から、水素添加芳香族炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂が好ましい。
脂肪族系炭化水素樹脂としては、たとえば、日本ゼオン社製のクイントン100シリーズ
(C5留分から抽出された高純度の1、3−ペンタジエンを主原料とした石油樹脂)があげられる。
脂環族系炭化水素樹脂としては、たとえば、日本ゼオン社製のクイントン1000シリーズ(C5留分から抽出された高純度のシクロペンタジエンを主原料とした石油樹脂)があげられる。
さらに、水素添加芳香族炭化水素樹脂としては、荒川化学社製のアルコンAM-1(C9系水添芳香族石油樹脂)があげられる。
【0014】
ここで、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分の合計量を100質量%とした場合、
前記(A)成分が合計で50質量%以上、90質量%以下
前記(B)成分が合計で5質量%以上、40質量%以下
前記(C)成分が合計で1質量%以上、30質量%以下
であることが好ましい。
前記(A)成分を50質量%以上、好ましくは60質量%以上とすることで加工性が良好に発現するという効果がある。また、前記(A)成分を90質量%以下、好ましくは75質量%以下とすることでヒートシール性を確実に発現できるという効果がある。
また、前記(B)成分を5質量%以上、好ましくは10質量%以上とすることでヒートシール性を確実に発現できるという効果がある。また、前記(B)成分を40質量%以下、好ましくは30質量%以下とすることで加工性が良好に発現するという効果がある。
さらに、前記(C)成分を1質量%以上、好ましくは10質量%以上とすることでヒートシール性を確実に発現できるという効果がある。また、前記(C)成分を30質量%以下、好ましくは25質量%以下とすることで加工性が良好に発現するという効果がある。
【0015】
液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、上述した成分(A)〜(C)のほかに、他の成分を含有していても良い。
他の成分としては、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤等がある。
【0016】
また、以上のような液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、以下のようにして製造することができる。
上述した成分(A)〜(C)、さらには、必要に応じて他の成分を混合する。
混合方法としては、特に限定されないが、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダー等を用いて、溶融混合(たとえば、130〜230℃)する方法が好ましい。
このようにして得られた液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、溶剤を含有してないことが好ましい。溶剤を含有しないことで、溶剤を除去する工程が不要となり、作業効率を高めることができる。なお、特許文献2には、不飽和カルボン酸成分を含有するポリオレフィン樹脂とロジンエステル系粘着付与剤および媒体を含有する液晶樹脂基材用接着剤が開示されているが、媒体を除去する工程が必要であり、作業効率が低い。また媒体に有機溶剤を用いた場合は、作業環境へ与える影響も大きい。
本発明の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、キャスト法や、インフレーション成形法、押出成形法等により、フィルムに成形することができる。
このようにして得られたフィルムや、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を直接基材上に積層することで、ヒートシール材とすることができる。
基材としては、たとえば、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート等からなるフィルム、紙、金属箔、金属等を蒸着した樹脂フィルム等が挙げられる。
液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物からなるフィルムを基材上に積層する方法としては、フィルムをドライラミネーション法等により、基材と貼り合わせる方法がある。
また、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物をフィルム状に押し出し、基材上に直接押出コーティングする方法により、基材上に積層してもよい。
さらには、基材上に接着層を積層し、さらにこの接着層上に、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物をサンドイッチラミネーション法により、積層してもよい。
また、基材と、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物とを共押出しすることで、基材上に液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物からなる層を積層してもよい。
また、ポリエチレン等の接着層を介して、基材上に前記フィルムを積層してもよい。
いずれの場合にも、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物に溶媒を添加したり、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を溶剤や水等の溶媒に分散させたり、溶解させたりせずに、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を基材上に積層させることができる。
このように、本発明の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は溶媒を使用せずに、基材上に積層することができ、取り扱い性に非常に優れたものとなる。特許文献2に開示された接着剤は、特定の化合物を水や、有機溶剤中に分散させたものであり、湿式の接着剤であるため、取り扱い性が悪いものとなっている。
【0017】
このようにして得られたヒートシール材は、液晶ポリマーを使用した被着体、たとえば、ブロー成形、インジェクション成形またはインジェクションブロー成形などによるボトル、カップ、トレーなどの容器、単層あるいは複層のフィルム、シートの真空成形、圧空成形または深絞り成形などによる各種容器等の蓋材として使用することができる。
ここで液晶ポリマーは、樹脂が溶融等により流動状態となった場合に、分子鎖がほぼ規則的に配列する状態を示す高分子をいう。
液晶ポリマーとしては、たとえば、全芳香族あるいは半芳香族ポリエステル、芳香族ポリアゾメチン、芳香族脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、全芳香族あるいは非全芳香族ポリエステルアミド等があげられる。
全芳香族あるいは半芳香族ポリエステルの代表例としては、たとえば、
(1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組み合わせを反応させて得られるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを反応させて得られるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの、
などが挙げられる。
【0018】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を蓋材として使用する例をあげたが、これに限らず、たとえば、液晶ポリマーを使用した蓋材にヒートシールされる容器等に使用してもよい。
【実施例】
【0019】
次に、本発明の実施例について説明する。
はじめに、後述する実施例、比較例で使用した各成分について説明する。
【0020】
(A)成分
(A−1)エチレン・アクリル酸メチル共重合体
MFR(190℃、2160g荷重)6.0g/10分、アクリル酸メチル含有量9質量%、密度930kg/m3
(A−2)エチレン・アクリル酸メチル共重合体
MFR(190℃、2160g荷重)8.0g/10分、アクリル酸メチル含有量20質量%、密度942 kg/m3
【0021】
(B)成分
(B−1)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体
MFR(230℃、5000g荷重)22g/10分、密度900 kg/m3
商品名Kraton G1657(クレイトンポリマー社)
【0022】
(C)成分
(C−1)水素添加芳香族炭化水素樹脂
商品名アルコンAM−1(荒川化学)
(C−2)脂環族飽和炭化水素樹脂
商品名アルコンP100(荒川化学)
【0023】
(EVA−1)エチレン・酢酸ビニル共重合体
MFR(190℃、2160g荷重)2.5g/10分、密度940 kg/m3、酢酸ビニル含有量19質量%
(EVA−2)エチレン・酢酸ビニル共重合体
MFR(190℃、2160g荷重)15g/10分、密度940 kg/m3、酢酸ビニル含有量19質量%
(EVA−3)エチレン・酢酸ビニル共重合体
MFR(190℃、2160g荷重)15g/10分、密度950 kg/m3、酢酸ビニル含有量28質量%
【0024】
(実施例1)
表1に示す配合割合で、液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を作成した。具体的には、成分(A−1)を35質量%、成分(A−2)を35質量%、成分(B−1)10質量%、成分(C−1)20質量%とし、これらを混合した。
その後、厚み12μmのPETフィルム(東レ社製、 商品名 ルミラー)上に厚み20μmのポリエチレンを接着層として積層し、この接着層上に液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物をフィルム状に押し出して、押出ラミネーション法により、積層した。
液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物からなる層の厚みは25μmである。
次に、このようにして得られた積層フィルムを液晶ポリマー(デュポン社製商品名ゼナイト6330NC10)の1mm厚の射出成形板にヒートシールした。積層フィルムの液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物で構成される面が、射出成形板と直接接触するように、積層フィルムを射出成形板にヒートシールしている。
ヒートシール条件は、温度160℃あるいは180℃で、圧力0.3MPa、時間2秒である。また、その後、射出成形板から、積層フィルムを剥がし、ヒートシール強度を測定した。ヒートシール強度は、室温23℃、湿度50%RHの環境下で、T型ピール試験機で300mm/分の剥離速度で測定した(JIS K 6854−3に準拠)。
【0025】
(比較例1)
表1に示す配合割合で、樹脂組成物を作成した。具体的には、成分(C−1)18質量%、EVA−1を16質量%、EVA−2を66質量%とし、これらを混合した。
その後、厚み12μmのPETフィルム(東レ社製、 商品名 ルミラー)上に厚み15μmのポリエチレンを接着層として積層し、この接着層上に樹脂組成物をフィルム状に押し出して、押出ラミネーション法により、積層した。樹脂組成物からなる層の厚みは30μmである。
次に、このようにして得られた積層フィルムを液晶ポリマー(デュポン社製商品名ゼナイト6330NC10)の1mm厚の射出成形板にヒートシールした。積層フィルムの前記樹脂組成物で構成される面が、射出成形板と直接接触するように、積層フィルムを射出成形板にヒートシールしている。
ヒートシール条件は、温度180℃で、圧力0.3MPa、時間2秒である。また、その後、射出成形板から、積層フィルムを剥がし、ヒートシール強度を測定した。ヒートシール強度は、室温23℃、湿度50%RHの環境下で、T型ピール試験機で300mm/分の剥離速度で測定した(JIS K 6854−3に準拠)。
【0026】
(比較例2)
表1に示す配合割合で、樹脂組成物を作成した。具体的には、成分(C−2)7質量%、EVA−1を46質量%、EVA−2を22質量%、EVA−3を25質量%とし、これらを混合した。
その後、厚み12μmのPETフィルム(東レ社製、 商品名 ルミラー)上に厚み15μmのポリエチレンを接着層として積層し、この接着層上に樹脂組成物をフィルム状に押し出して、押出ラミネーション法により、積層した。樹脂組成物からなる層の厚みは30μmである。
次に、このようにして得られた積層フィルムを液晶ポリマー(デュポン社製商品名ゼナイト6330NC10)の1mm厚の射出成形板にヒートシールした。積層フィルムの前記樹脂組成物で構成される面が、射出成形板と直接接触するように、積層フィルムを射出成形板にヒートシールしている。
ヒートシール条件は、温度180℃で、圧力0.3MPa、時間2秒である。また、その後、射出成形板から、積層フィルムを剥がし、ヒートシール強度を測定した。ヒートシール強度は、室温23℃、湿度50%RHの環境下で、T型ピール試験機で300mm/分の剥離速度で測定した(JIS K 6854−3に準拠)。
【0027】
【表1】

【0028】
表1の配合量の単位は、質量%である。
実施例1は、良好なヒートシール性を満たすものであった。
これに対し、比較例1、2はいずれも、ヒートシール強度が低く、ヒートシール性が悪かった。
また、成分(A)〜(C)合計で100質量%とした場合、成分(A)の含有量を50質量%とした場合には、比較例1,2に比べ、ヒートシール強度が高いことがわかった。
さらに、成分(A)〜(C)合計で100質量%とした場合、成分(B)の含有量を5質量%とした場合には、比較例1,2に比べ、ヒートシール強度が高いことがわかった。
また、成分(C)を含有せず、成分(A)、成分(B)からなる組成物は、シール強度の制御が困難という問題点があり、成分(A)を含有せず、成分(B)、成分(C)からなる組成物は、加工性に乏しいという問題点があった。
さらに、成分(B)を含有せず、成分(A)、成分(C)からなる組成物は、ヒートシール強度が発現しないという問題点があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマーを主成分とする被着体にヒートシールされるヒートシール材に使用される液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物であって、
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(A)と、
スチレン系エラストマー(B)と、
粘着付与剤(C)とを含む液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物において、
前記成分(A)のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の不飽和カルボン酸が、アクリル酸又はメタクリル酸である液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物において、
前記成分(B)のスチレン系エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選ばれる少なくとも1種である液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物において、
前記スチレン系エラストマーがスチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)である液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物において、
前記(C)成分が脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂である液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物において、
前記(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量を100質量%とするとき、前記(A)成分が50〜90質量%、前記(B)成分が5〜40質量%、前記(C)成分が1〜30質量%である液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物において、
当該液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物は、押出成形により、フィルム状に成形されるものである液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液晶ポリマー用ヒートシール性樹脂組成物を含む液晶ポリマー用ヒートシール材。
【請求項9】
液晶ポリマーを含む容器にヒートシールされる蓋材であって、
請求項8に記載の液晶ポリマー用ヒートシール材を備える蓋材。


【公開番号】特開2011−195599(P2011−195599A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60266(P2010−60266)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】