説明

液晶表示パネル及びこれを用いる残像消去方法

【課題】残像を消去することのできる液晶表示パネルを提供する。
【解決手段】液晶表示パネルの第1基板の画素上にメイン薄膜トランジスタ90とサブ薄膜トランジスタ91が配置される。メイン薄膜トランジスタ90は、当列走査線に接続される第1ゲート90aと、当列データ線に接続される第1ソース90bを有する。サブ薄膜トランジスタ91は、前列走査線に接続される第2ゲート91aと、次列データ線に接続される第2ソース91bを有する。これにより、画素に蓄積した電荷が次列データ線から放出を促進されて効果的に残像を消去することができる。また、液晶表示時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに関する。
特に、画素上にサブ薄膜トランジスタが配置され、そのゲートが走査線(ゲート線)に接続され、そのソースがデータ線に接続されて、画素に蓄積した電荷の放出を促進することにより効果的に残像を消去できる液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
光学、半導体技術の発展に伴い、液晶表示パネルは、消費者に広く利用されている。液晶表示パネルは、概して高精細、小型、軽量で、駆動電圧や消費電力が低く、多用途に用いられるため、従来のCRTディスプレイに置き換わって主流技術となっている。
【0003】
一般に、液晶表示パネルは、2枚の基板(第1基板、第2基板)、その間にはさまれる液晶、第1基板に配置される画素電極と薄膜トランジスタ、第2基板に配置されるコモン電極(対向電極)、および画素電極に対向するカラーフィルタ膜から構成される。
カラーフィルタ膜は、赤、緑、青(RGB)の3色のフィルタ膜から構成され、3つのフィルタ膜上にそれぞれ画素が形成される。赤、緑、青の画素は、互いに近接して配置され、一つの画素を形成する。
【0004】
さらに、視野角を改善するため、1つの子画素を4つのドメインに分割するMVA(マルチドメイン垂直配向)技術が開発され、液晶テレビに最もよく応用されている。MVA技術による液晶表示パネルは、コントラストが高く、視野角が広く、大型画面にも使えるという特長があるが、大きな視野角にて画面の色が薄くなるカラーウォッシュアウトと、レスポンス時間が遅いことの2つが、MVA方式の画像品質を低下させる残された課題であった。カラーウォッシュアウトを減らすために最も効果的な方法は、子画素のドメインを4個から8個またはそれ以上にすることである。
8ドメインの子画素を利用して、静電容量結合型(C−C型)、デュアルデータまたはデュアルゲート型(T−T型)、コモン電圧スイング技術が提案された。しかし、T−T型とコモン電圧スイング技術は、ICや他の電気素子を余分に要しコストが増す。C−C型ではコストは増えないが、自己結合キャパシタのフローティング電極により、深刻な残像現象(イメージスティッキング)が起きるという問題があった。
【0005】
図1の左側に示すように、従来のC−C型の画素は、金属容量充電法を利用して2つの画素区域、メイン区域60とサブ区域61とを形成する。メイン区域60では、キャパシタClc−1にデータ信号(例えば5V)が直接入力され、データ信号と同じ電圧が生じる。一方、サブ区域61では、キャパシタClc−2にキャパシタCxが直列接続されてチャージ(充電)される結果、キャパシタClc−1とキャパシタClc−2の電極間電圧に差が生じ(例えばキャパシタClc−1が5V、キャパシタClc−2が3V)、よってメイン区域60とサブ区域61の明るさが異なる。また、図1の右側にC−C型の画素回路を示す。C−C型は充電金属層の残留電荷により深刻な残像現象を生じる。
また、図2に示す格子板の画像において、左側の画像の区域65、66が、燃焼試験後、それぞれ右側の画像の区域65,67のようになる。右側の画像の区域67はグレー画像となり、最初の区域65の画像には戻すことができない。
【0006】
さらに、Y.P.Huangらの「高品質液晶ディスプレイのためのアドバンストMVA方式の付加更新技術(ART)」において、アドバンストMVA方式の付加更新技術が提案された。この方法は、8ドメイン子画素をメイン区域とサブ区域に分割するもので、図3にその画素回路を示す。付加更新技術により、8ドメイン子画素は自己オーバードライブ機能を有し、カラーウォッシュアウトを減らすだけでなく、レスポンス時間も短縮できる。この技術では、画素回路にサブ薄膜トランジスタ81を付加して配置する。サブ薄膜トランジスタ81のゲートは画素のゲート線に、ソースはサブ区域の電極に、ドレインは画素のデータ線に接続される。サブ薄膜トランジスタ81は、メイン薄膜トランジスタ80と電極面積(幅×長さ)およびそれに比例する静電容量が異なり、各キャパシタにサブ区域電圧(Vsub)を再チャージ(更新)する。このサブ薄膜トランジスタ81の再チャージ(更新)のため、電極上にイオンが蓄積せず、残像の問題を抑制できる。図3にて、CstsubとClcsubはサブ区域の貯蔵(ストレージ)キャパシタおよび液晶キャパシタであり、Cxは結合キャパシタである。Vmainはメイン区域の電圧である。Isubはサブ薄膜トランジスタ81のチャージ電流である。
本技術では、コストの高い素子を余分に使わずに、Vsubを最適化してカラーウォッシュアウトを減らすため、画素レイアウトからCxとIsubを簡単に設計変更することができる。要約すれば、付加更新技術は、サブ薄膜トランジスタを画素回路に付加配置することにより、わずかなAC信号をサブ区域の電極に供給する技術であり、これにより残留電荷の蓄積を防ぐことができる。
【0007】
このように、アドバンストMVA方式の付加更新技術では画素回路にサブ薄膜トランジスタを付加配置することにより、サブ薄膜トランジスタのゲートが「その子画素に対応するゲート線」に接続され、サブ区域の電極に蓄積された電荷が「その子画素に対応するデータ線」から放出される。すなわち、その子画素のメイン薄膜トランジスタとサブ薄膜トランジスタは同一のゲート線とデータ線を共用することになる。
サブ区域の電極に蓄積された電荷は、サブ薄膜トランジスタがオンされた時に放出される。言い換えれば、残留電荷が除去された後に子画素の再チャージ(更新)がされる必要があり、そのため液晶の表示時間が長くなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の欠点に鑑み、本発明の目的は、液晶表示パネルの性能を向上するため、残像を抑制する装置及び方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、液晶の表示時間を短縮することのできる液晶表示パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の問題点を解決するため、本発明は、残像を消去するために画素を数個のドメインに分割した液晶表示パネルを提供する。
請求項1に記載の発明によると、液晶表示パネルの第1基板の画素上にメイン薄膜トランジスタとサブ薄膜トランジスタが配置される。メイン薄膜トランジスタは、「当列走査線(その子画素に対応する走査線)」に接続される第1ゲートと、「当列データ線(その子画素に対応するデータ線)」に接続される第1ソースを有する。サブ薄膜トランジスタは、「前列走査線(当列走査線の一つ前の列の走査線)」に接続される第2ゲートと、「次列データ線(当列データ線の一つ次の列のデータ線)」に接続される第2ソースを有する。これにより、画素に蓄積した電荷が次列データ線から放出を促進されて効果的に残像を消去することができる。また、液晶表示時間を短縮することができる。
【0010】
請求項2および3に記載の発明によると、液晶表示パネルは、請求項1に記載の発明に、サブ薄膜トランジスタの第2ドレインに接続される第2貯蔵キャパシタあるいは第2液晶キャパシタに接続する補助キャパシタをさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明によると、液晶表示パネルは、請求項1に記載の発明に、第2基板をさらに備える。
【0012】
請求項5に記載の発明によると、液晶表示パネルの同一画素上にメイン薄膜トランジスタとサブ薄膜トランジスタとを配置する。次のステップで、当列走査線をメイン薄膜トランジスタの第1ゲートに接続し、当列データ線をメイン薄膜トランジスタの第1ソースに接続する。続いて、前列走査線をサブ薄膜トランジスタの第2ゲートに接続し、次列データ線をサブ薄膜トランジスタの第2ソースに接続することにより、残像を消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術のC−C型液晶表示パネルの画素回路を示す模式図(左)及び回路図(右)である。
【図2】燃焼試験前後の格子板の画像を示す模式図である。
【図3】従来技術のアドバンストMVA方式液晶表示パネルの画素回路を示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態による液晶表示パネルの画素回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、請求の範囲に明示的に記載された事項の範囲を超えて、他の実施形態の広い範囲で実施しうる。
【0015】
図4は、本発明による液晶表示パネルの画素回路を示す。なお、実施形態の説明において、従来技術と同一の電気素子については繰り返して記載、説明しない。
【0016】
図4は、8ドメイン画素を利用する、本発明による液晶表示パネルの画素回路を示す。
図4にて、メイン区域のメイン薄膜トランジスタ90の第1ゲート90aは第n走査線Gnに、第1ソース90bは第nデータ線Snに、第1ドレイン90cは第1貯蔵キャパシタCstaと第1液晶キャパシタClcaに接続される。
なお、ここで第n走査線Gnの「n」と第nデータ線Snの「n」は、それぞれ独立して整数を表すものであり、相互の関連はない。
ClcaとClcbは、それぞれメイン区域とサブ区域の、画素電極とコモン電極からなる液晶キャパシタである。
CstaとCstbは、それぞれメイン区域とサブ区域の貯蔵キャパシタである。
補助キャパシタ(結合キャパシタ)Ccpは、第nデータ線Snと第2液晶キャパシタClcb(画素電極)の間に配置される。
第1貯蔵キャパシタCstaは、メイン薄膜トランジスタ90の第1ドレイン90cに接続され、第2貯蔵キャパシタCstbは、サブ薄膜トランジスタ91の第2ドレイン91cに接続される。
第1液晶キャパシタClcaは、メイン薄膜トランジスタ90の第1ドレイン90cに接続され、第2液晶キャパシタClcbは、サブ薄膜トランジスタ91の第2ドレイン91cに接続される。
補助キャパシタCcpは、第2液晶キャパシタClcbと第2貯蔵キャパシタCstbに接続される。補助キャパシタCcpは直列接続された第2液晶キャパシタClcbによって充電されるため、第1液晶キャパシタClcaと第2液晶キャパシタClcbの電極間電圧が異なることとなる。
【0017】
画素回路において、サブ薄膜トランジスタ91とメイン薄膜トランジスタ90は、同一画素上に配置される。サブ薄膜トランジスタ91とメイン薄膜トランジスタ90の電極面積(幅×長さ)およびそれに比例する静電容量は異なる。
サブ薄膜トランジスタ91の第2ゲート91aは第(n−1)走査線Gn−1に、第2ソース91bは第(n+1)データ線Sn+1に、第2ドレイン91cは第2貯蔵キャパシタCstbと第2液晶キャパシタClcbに接続される。
【0018】
液晶表示パネルは、対向して配置される第1基板と第2基板と、第1基板と第2基板の間に配置される液晶とを備える。第n走査線Gn、第nデータ線Sn、第(n−1)走査線Gn−1、第(n+1)データ線Sn+1は第1基板上に配線される。
第1基板はアクティブ素子配列基板であり、ガラス、水晶、柔軟な材料などの物質で形成される。第1基板に対向する第2基板はカラーフィルタ基板であり、ガラス、水晶、柔軟な材料などの物質で形成される。液晶は、第1基板(アクティブ素子配列基板)と第2基板(カラーフィルタ基板)との間に形成される。
【0019】
上記の構成により、サブ区域にサブ薄膜トランジスタ91を配置し、その第2ゲート91aを、その画素に対応する走査線Gnではなく、前列の第(n−1)走査線Gn−1に接続して、サブ薄膜トランジスタ91をオン/オフ(スイッチング)する。また、サブ薄膜トランジスタ91は、その画素に対応するデータ線Snではなく、次列の第(n+1)データ線Sn+1をアクティブにすることにより、サブ区域に残る残留電荷を放出、除去して残像を抑制し、さらに画素を再チャージする。
このように、その画素に対応する線とは異なる走査線、データ線を利用して素子の正電荷と負電荷を中和することによって画素の残留電荷を除去する。このことにより、画素に蓄積された電荷が次列データ線から放出されて、残像を効率的に消去でき、さらに、「電荷除去の後に子画素を再チャージする必要がある」という従来技術の問題も解決される。
【0020】
すなわち、従来技術では、メイン薄膜トランジスタとサブ薄膜トランジスタは同一の走査線とデータ線に接続されていた。そのため、メイン薄膜トランジスタとサブ薄膜トランジスタの貯蔵電荷は、それらのゲートをオンにすると同時に放出され、電荷除去後に子画素を再チャージすることが必要であった。
それに対し、本発明の主要な技術的特徴は、サブ区域のサブ薄膜トランジスタを前列走査線と次列データ線とに接続することである。そして、画素を再チャージする前にサブ薄膜トランジスタをオンにするとともに、次列データ線をアクティブにし、サブ区域に残った残留電荷を除去した後、画素を再チャージすることである。よって、残留電荷を除去するためだけの段階が不要となり、液晶表示時間が短縮するという効果を奏する。
【0021】
上記説明は一例であり、これに限定されるものではない。これら実施形態に基づき、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の付加、置換、修正がされた形態でも実施しうる。
【符号の説明】
【0022】
60:メイン区域、61:サブ区域
80:メイン薄膜トランジスタ、81:サブ薄膜トランジスタ
90:メイン薄膜トランジスタ
90a:第1ゲート、90b:第1ソース、90c:第1ドレイン
91:サブ薄膜トランジスタ
91a:第2ゲート、91b:第2ソース、91c:第2ドレイン
Csta:第1貯蔵キャパシタ、Cstb:第2貯蔵キャパシタ
Clca:第1液晶キャパシタ、Clcb:第2液晶キャパシタ
Ccp:補助キャパシタ(結合キャパシタ)
Gn:第n走査線(ゲート線)、Gn−1:第(n−1)走査線(ゲート線)
Sn:第nデータ線、Sn+1:第(n+1)データ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の画素に配置され、前記画素に対応する走査線に接続される第1ゲートと、前記画素に対応するデータ線に接続される第1ソースとを有するメイン薄膜トランジスタと、
同一の前記画素に配置され、前記画素に対応する走査線の一つ前の列の走査線に接続される第2ゲートと、前記画素に対応するデータ線の一つ次の列のデータ線に接続される第2ソースとを有するサブ薄膜トランジスタと、
前記メイン薄膜トランジスタの第1ドレインに接続される第1貯蔵キャパシタと、
前記サブ薄膜トランジスタの第2ドレインに接続される第2貯蔵キャパシタと、
前記メイン薄膜トランジスタの第1ドレインに接続される第1液晶キャパシタと、
前記サブ薄膜トランジスタの第2ドレインに接続される第2液晶キャパシタと、
を備えることを特徴とする液晶表示パネル。
【請求項2】
前記第2貯蔵キャパシタに接続される補助キャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項3】
前記第2液晶キャパシタに接続される補助キャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
前記第1基板に対向する第2基板をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項5】
同一の画素にメイン薄膜トランジスタとサブ薄膜トランジスタとを配置し、
前記画素に対応する走査線を前記メイン薄膜トランジスタの第1ゲートに接続し、
前記画素に対応するデータ線を前記メイン薄膜トランジスタの第1ソースに接続し、
前記画素に対応する走査線の一つ前の列の走査線を前記サブ薄膜トランジスタの第2ゲートに接続し、
前記画素に対応するデータ線の一つ次の列のデータ線を前記サブ薄膜トランジスタの第2ソースに接続することにより、前記画素上の残像を消去することを特徴とする液晶表示パネルの残像消去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156946(P2010−156946A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209648(P2009−209648)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(509157649)チュングワ ピクチャー チューブス リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CHUNGHWA PICTURE TUBES, LTD.
【Fターム(参考)】