説明

液晶表示装置

【課題】対向基板の帯電の影響による表示品位の劣化を抑制することが可能な液晶表示装置を提供すること目的とする。
【解決手段】アレイ基板ARと、アレイ基板ARと対向するように配置された対向基板CTと、アレイ基板ARと対向基板CTとの間に保持された液晶層LQと、を備え、
対向基板CTは、絶縁基板30と、絶縁基板上に配置されたシールド電極ESと、シールド電極の上に配置された絶縁層38と、絶縁層の上に配置され液晶層を介して画素電極に対向するとともに各画素において絶縁層の一部を露出する開口部APを有する対向電極ETと、を備え、
シールド電極ESは、絶縁層を介して少なくとも開口部と重なるように配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に係り、例えば、開口部を有する対向電極を備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電極である等の様々な特徴を有しており、OA機器、情報端末機器、時計、及び、テレビ等の様々な用途に応用されている。特に、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を有する液晶表示装置は、高画質性能が得られることから、携帯テレビやコンピュータなどのように多量の情報を表示するモニタとしての用途が増してきている。
【0003】
近年、情報量の増加に伴い、画像の高精細化や表示速度の高速化に対する要求が高まっている。これらの要求に対して、従来のTN(Twisted Nematic)モードの他にも様々なモードが液晶表示装置の表示モードとしてある。例えば、OCB(Optically Compensated Bend)モード、VA(Vertical Aligned)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、マルチドメイン型VA(Multi−domain Vertical Alignment)モードなどがある。
【0004】
特に、MVAモードは、視野角の拡大が比較的容易なことから広く実用化されている。MVAモードは、例えば、マスクラビング、画素電極構造の工夫、画素内に設けた突起などにより、液晶層に電圧を印加した際に液晶分子を複数方位に配向させてマルチドメインを形成し、視角特性の対称性改善や反転減少の抑止を実現している。例えば、特許文献1は、MVAに関する技術を開示している。この特許文献1には、マルチドメインを形成するための手段として、対向電極にスリットが形成された構成が開示されている。
【特許文献1】特開2006−078742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示パネルの表面を布で擦ると、静電気によって対向基板の外面が帯電してしまうことがある。特に、上述したMVAモードの液晶表示装置のように、スリットの開口部が形成された対向電極を備えた液晶表示装置においては、対向基板の外面の帯電によって発生した電界が開口部を介して液晶層まで到達してしまう。つまり、液晶層には、画素電極と対向電極との間に形成される液晶分子の配向に必要な電界の他に、対向基板の外面の電荷による不所望な電界が開口部を介して形成されてしまう。このため、本来画素に入力した信号とは異なる電界の影響を受けて液晶分子が動作するため、帯電した部分において液晶分子の配向不良が生じ、表示ムラなど表示品位の劣化を招いてしまう。
【0006】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、対向基板の帯電の影響による表示品位の劣化を抑制することが可能な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の態様による液晶表示装置は、
画像を表示する表示領域の各画素に対応して配置された画素電極を備えた第1基板と、
前記第1基板と対向するように配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に保持された液晶層と、を備え、
前記第2基板は、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置されたシールド電極と、
前記シールド電極の上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置され、前記液晶層を介して前記画素電極に対向するとともに、前記各画素において、前記絶縁層の一部を露出する開口部を有する対向電極と、を備え、
前記シールド電極は、前記絶縁層を介して少なくとも前記開口部と重なるように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、対向基板の帯電の影響による表示品位の劣化を抑制することが可能な液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の一実施の形態に係る液晶表示装置について図面を参照して説明する。
【0010】
ここでは、表示モードとして、MVAモードの液晶表示装置を例に説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、液晶表示装置は、アクティブマトリクスタイプの液晶表示装置であって、液晶表示パネルLPNを備えている。この液晶表示パネルLPNは、アレイ基板(第1基板)ARと、アレイ基板ARに対向して配置された対向基板(第2基板)CTと、これらのアレイ基板ARと対向基板CTとの間に保持された液晶層LQと、を備えて構成されている。これらのアレイ基板ARと対向基板CTとは、シール材によって貼り合わせられている。
【0012】
また、この液晶表示装置は、液晶表示パネルLPNの一方の外面(すなわち、アレイ基板ARの液晶層LQと接触する面とは反対側の面)に設けられた第1光学素子OD1、及び、液晶表示パネルLPNの他方の外面(すなわち、対向基板CTの液晶層LQと接触する面とは反対側の面)に設けられた第2光学素子OD2を備えている。さらに、この液晶表示装置は、第1光学素子OD1側から液晶表示パネルLPNを照明するバックライトユニットBLを備えている。
【0013】
このような液晶表示パネルLPNは、画像を表示する表示領域DSPを備えている。表示領域DSPは、m×n個のマトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。
【0014】
アレイ基板ARは、ガラス板や石英板などの光透過性を有する絶縁基板10を用いて形成されている。すなわち、このアレイ基板ARは、表示領域DSPにおいて、各画素PXに対応して配置されたm×n個の画素電極EP、これらの画素電極EPの行方向に沿って延出するようにそれぞれ配置されたn本の走査線Y(Y1〜Yn)、これらの画素電極EPの列方向に沿って延出するようにそれぞれ配置されたm本の信号線X(X1〜Xm)、各画素PXにおいて走査線Yと信号線Xとの交差部を含む領域に配置されたm×n個のスイッチング素子W(例えば薄膜トランジスタ)、走査線Yと同様に行方向に沿って延出するようにそれぞれ配置され液晶容量CLCと並列に補助容量CSを構成するよう画素電極EPに容量結合する補助容量線AYなどを備えている。
【0015】
走査線Y及び補助容量線AYは、略平行に配置され、同一材料によって形成可能である。また、補助容量線AYは、層間絶縁膜16などの絶縁膜を介して画素電極EPと対向するとともに複数の画素電極EPを横切るように配置されている。信号線Xは、層間絶縁膜16を介して走査線Y及び補助容量線AYと略直交するように配置されている。これらの信号線X、走査線Y、及び、補助容量線AYは、例えば、アルミニウム、モリブデン、タングステン、チタンなどの導電材料によって形成されている。
【0016】
各スイッチング素子Wは、例えば、nチャネル薄膜トランジスタであり、絶縁基板10の上に配置された半導体層12を備えている。この半導体層12は、例えば、ポリシリコンやアモルファスシリコンなどによって形成可能であり、ここではポリシリコンによって形成されている。半導体層12は、チャネル領域12Cを挟んだ両側にそれぞれソース領域12S及びドレイン領域12Dを有している。この半導体層12は、ゲート絶縁膜14によって覆われている。
【0017】
スイッチング素子Wのゲート電極WGは、走査線Yに接続され(あるいは、走査線Yと一体的に形成され)、走査線Y及び補助容量線AYとともにゲート絶縁膜14上に配置されている。これらのゲート電極WG、走査線Y、及び、補助容量線AYは、層間絶縁膜16によって覆われている。
【0018】
スイッチング素子Wのソース電極WS及びドレイン電極WDは、層間絶縁膜16の上においてゲート電極WGの両側に配置されている。ソース電極WSは、信号線Xに接続される(あるいは信号線Xと一体に形成される)とともに、半導体層12のソース領域12Sにコンタクトしている。ドレイン電極WDは、画素電極EPに接続される(あるいは画素電極EPと一体に形成される)とともに、半導体層12のドレイン領域12Dにコンタクトしている。これらのソース電極WS、ドレイン電極WD、及び、信号線Xは、有機絶縁膜18によって覆われている。
【0019】
画素電極EPは、有機絶縁膜18の上に配置され、有機絶縁膜18に形成されたコンタクトホールを介してドレイン電極WDと電気的に接続されている。この画素電極EPは、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)やインジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する導電材料によって形成されている。すべての画素PXに対応した画素電極EPは、第1配向膜20によって覆われている。
【0020】
一方、対向基板CTは、ガラス板や石英板などの光透過性を有する絶縁基板30を用いて形成されている。すなわち、この対向基板CTは、表示領域DSPにおいて、対向電極ETなどを備えている。対向電極ETは、液晶層LQを介して画素電極EPに対向するように、複数の画素PXに共通に配置されている。この対向電極ETは、ITOなどの光透過性を有する導電材料によって形成されている。また、この対向電極ETは、第2配向膜36によって覆われている。さらに、対向電極ETは、表示領域DSP外において、コモン電位が供給されるコモン配線COMと電気的に接続されている。
【0021】
カラー表示タイプの液晶表示装置は、各画素PXに対応して液晶表示パネルLPNの内面に設けられたカラーフィルタ層34を備えている。図2に示した例では、カラーフィルタ層34は、対向基板CTに設けられている。カラーフィルタ層34は、互いに異なる複数の色、例えば、赤色、青色、緑色といった3原色にそれぞれ着色された着色樹脂によって形成されている。赤色着色樹脂、青色着色樹脂、及び緑色着色樹脂は、それぞれ赤色画素、青色画素、及び緑色画素に対応して配置されている。
【0022】
また、各画素PXは、ブラックマトリクス32によって区画されている。このブラックマトリクス32は、黒色着色樹脂などによって形成され、アレイ基板ARに設けられた走査線Yや信号線X、スイッチング素子Wなどの配線部に対向するように配置されている。カラー表示タイプの液晶表示装置においては、カラーフィルタ層34は、ブラックマトリクス32によって区画された領域にそれぞれ配置されている。
【0023】
また、対向基板CTは、絶縁層38を備えている。特に、カラー表示タイプの液晶表示装置においては、各画素のカラーフィルタ層34は、それらの境界付近で一部が互いに重なり合ったり、ブラックマトリクス32に重なったりするため、その表面に凹凸が形成されやすい。このため、絶縁層38は、カラーフィルタ層34の上に配置され、カラーフィルタ層34の表面の凹凸の影響を緩和している。このような絶縁層38は、有機系材料によって形成することが望ましい。この絶縁層38は、対向電極ETによって覆われている。つまり、絶縁層38は、カラーフィルタ層34と対向電極ETとの間に配置されている。
【0024】
また、対向基板CTは、遮光層を有している。この遮光層は、表示領域DSPを囲むように配置されている。この遮光層は、例えば、黒色着色樹脂などによって形成されている。遮光層は、ブラックマトリクス32と同一材料によって形成可能であり、ブラックマトリクス32と同一のフォトリソグラフィ工程で形成されても良い。
【0025】
このような対向基板CTと、上述したようなアレイ基板ARとをそれぞれの第1配向膜20及び第2配向膜36を対向するように配置したとき、両者の間に配置されたスペーサにより、所定のギャップが形成される。液晶層LQは、これらのアレイ基板ARの第1配向膜20と対向基板CTの第2配向膜36との間に形成ギャップに封入された負の誘電率異方性の液晶分子40を含む液晶組成物によって構成されている。
【0026】
第1配向膜20及び第2配向膜36は、それぞれ液晶分子40を絶縁基板10(あるいは、アレイ基板AR)及び絶縁基板30(あるいは、対向基板CT)に対して略垂直に配向する特性を有している。このような第1配向膜20及び第2配向膜36を形成するための材料としては、基本的には垂直配向性を示す光透過性を有する薄膜であれば特に限定されない。
【0027】
また、液晶表示装置は、アレイ基板ARの表示領域DSPの周辺の駆動回路領域DCTにおいて、n本の走査線Yに接続された走査線ドライバYDを構成する少なくとも一部、及び、m本の信号線Xに接続された信号線ドライバXDを構成する少なくとも一部を備えていても良い。このとき、これらの走査線ドライバYD及び信号線ドライバXDは、スイッチング素子Wと同様にポリシリコンを含む薄膜トランジスタを含んでいても良い。
【0028】
走査線ドライバYDは、コントローラCNTによる制御に基づいてn本の走査線Yに順次走査信号(駆動信号)を供給する。また、信号線ドライバXDは、コントローラCNTによる制御に基づいて各行のスイッチング素子Wが走査信号によってオンするタイミングでm本の信号線Xに映像信号(駆動信号)を供給する。これにより、各行の画素電極EPは、対応するスイッチング素子Wを介して供給される映像信号に応じた画素電位にそれぞれ設定される。
【0029】
第1光学素子OD1及び第2光学素子OD2は、それぞれ少なくとも偏光板を含んでいる。これらの偏光板は、それぞれの吸収軸が互いに直交するように配置されている。また、これらの第1光学素子OD1及び第2光学素子OD2は、透過光に対して適当な位相差を付与する位相差板を含んでいてもよい。例えば、円偏光を利用した表示モードにおいては、第1光学素子OD1及び第2光学素子OD2は、それぞれ偏光板以外に、透過光にλ/4の位相差を付与する位相差板を含んでいる。
【0030】
この実施の形態では、液晶分子40は、画素電極EPと対向電極ETとの間に電圧が印加されていない、あるいはしきい値電圧より低い電圧が印加されている場合に、第1配向膜20及び第2配向膜36による配向制御によって液晶表示パネルLPNの法線方向(つまり、アレイ基板AR及び対向基板CTの法線方向)に配向している。
【0031】
このような状態においては、第1光学素子OD1を透過したバックライト光は、液晶層LQを透過した後、第2光学素子OD2に吸収される。したがって、黒表示となる。
【0032】
一方、画素電極EPと対向電極ETとの間にしきい値以上の電圧が印加された場合には、液晶分子40は、液晶表示パネルLPNの法線方向に対して傾斜もしくは略直交する(つまり、アレイ基板AR及び対向基板CTの主面に略平行となる)ように配向している。
【0033】
このような状態においては、第1光学素子OD1を透過したバックライト光は、液晶層LQを透過した後、第2光学素子OD2を透過する。したがって、白表示となる。
【0034】
このようにして、垂直配向モードが実現される。
【0035】
ところで、MVAモードの液晶表示装置においては、対向電極ETは、図3及び図4に示すように、各画素PXにおいて、開口部APを有している。なお、図3及び図4では、主要部のみを図示している。図3に示した例では、開口部APは、画素電極EPの略中央を通り、列方向に延出したスリット状に形成されている。この開口部APは、第2配向膜36によって覆われている。このような開口部APは、対向電極ETのパターニング工程で同時に形成可能である。アレイ基板AR上の各画素PXの画素電極EPは、対向電極ETの開口部APに対向している。
【0036】
図4に示すように、画素電極EPと対向電極ETとの間にしきい値以上の電圧を印加した場合には、開口部APが形成された部分を除いて画素電極EPと対向電極ETとの間に電界(電気力線)Eが形成される。開口部APが配置された部分及びその周辺では、開口部APを避けるように液晶表示パネルの法線に対して傾斜した電界Eが形成される。液晶分子40は、傾斜した電界Eの影響を受けて電界Eと垂直になるように配向する。言い換えれば、しきい値以上の電圧を印加した場合には、開口部APによって形成された傾斜した電気力線に対して直交するように配向する。このように、各画素には、電界Eにより液晶分子40がそれぞれ異なる方位に配向された複数の領域が形成される。このようにして、MVAモードが実現される。
【0037】
ここで、本実施の形態について、図5乃至図8を用いて説明する。なお、図5乃至図8では、主要部のみを図示している。
【0038】
図5に示した例では、アレイ基板ARと対向基板CTとは、両者の間に配置された柱状スペーサSPにより、所定のギャップが形成された状態でシール材300により貼り合わせられている。
【0039】
対向基板CTは、絶縁基板30上にシールド電極ESを備えている。表示領域DSPにおいて、シールド電極ESの上には、ブラックマトリクス32及びカラーフィルタ層34が配置されている。さらに、カラーフィルタ層34の上には、絶縁層38が配置されている。絶縁層38の上には、対向電極ETが配置されている。この対向電極ETは、各画素PXにおいて、絶縁層38の一部を露出する開口部APを有している。
【0040】
シールド電極ESは、絶縁層38を介して少なくとも対向電極ETの開口部APと重なるように配置されている。ここでは、シールド電極ESは、表示領域DSPを含む絶縁基板30の全面に配置されている。すなわち、シールド電極ESは、対向基板CTと略同等のサイズに形成されており、切れ目なく絶縁基板30の端部まで延在している。このようなシールド電極ESは、ITO、IZOなどの光透過性を有する導電材料によって形成されている。
【0041】
このように、本実施の形態においては、対向基板CTは、対向電極ETよりも外面側(つまり液晶層LQから離れる側)にシールド電極ESを備えている。このため、たとえ対向基板CTの外面が帯電したとしても、シールド電極ESにより、対向基板CTの外面に帯電した電荷によって生じうる電界を遮断することが可能である。したがって、対向基板CTの外面が帯電しても、液晶層LQには、画素電極EPと対向電極ETとの間に形成される電界の他に不所望な電界が形成されない。
【0042】
このため、対向電極ETが形成されていない領域、すなわち、開口部APが形成されている領域においても、液晶層LQの液晶分子が帯電の影響による不所望な電界によって動作することがなく、液晶分子の配向不良を抑制することが可能となる。これにより、対向基板CTの外面の帯電の影響による表示品位の劣化を抑制することができる。
【0043】
図5に示した構成の液晶表示パネルLPNを製造し、実際に対向基板CTの表面を布で擦り、帯電の影響を調べたが、帯電の影響による表示ムラは発生しなかった。
【0044】
また、近年、液晶表示パネルの薄型化が要求されており、基板の表面を研磨するケースが増えている。絶縁基板30の外面にシールド電極ESを設けた場合には、研磨ができないといった不都合が生じるが、絶縁基板30の内面(つまり液晶層に対向する面)にシールド電極ESを設ける構成を採用したことにより、基板の研磨が可能となる。
【0045】
シールド電極ESは、所定の電位に設定されても良い。特に、絶縁基板30の内面にシールド電極ESを設ける構成の場合には、絶縁基板30の外側表面にシールド電極ESを設け、このシールド電極ESと配線とを接続する場合と異なり半田付け作業を必要としないため、シールド電極ESを容易に所定の電位に設定可能である。例えば、シールド電極ESと対向するアレイ基板ARの面に接地電位の接地配線を設け、導電スペーサや銀ペーストなどの導電部材を介して接地配線とシールド電極ESとを電気的に接続することにより、シールド電極ESを接地電位に設定することが可能である。
【0046】
また、対向電極ETは、シールド電極ESと電気的に接続されていても良い。図6に示した例では、対向電極ESは、表示領域DSPの外において、絶縁層38及び遮光層SHに形成されたコンタクトホールを介して、シールド電極ESと電気的に接続されている。このようにシールド電極ESと対向電極ETとを電気的に接続させることによって、シールド電極ESは、常に対向電極ETと同電位に設定される。このような構成においても、上述した例と同様の効果が得られる。なお、図5に示した例では、シールド電極ESはフローティング状態となるが、この図6に示した例では、シールド電極ESが常にコモン電位に設定されるため、より帯電に対して高い耐性を得ることが可能となる。
【0047】
図6に示した構成の液晶表示パネルLPNを製造し、実際に対向基板CTの表面を布で擦り、帯電の影響を調べたが、帯電の影響による表示ムラは発生しなかった。
【0048】
液晶表示装置は、図7に示すように、さらに、表示領域DSP外において、アレイ基板ARから対向基板CTに給電する給電部50を備えている。この給電部50は、主に、アレイ基板ARに備えられたコモン配線COMと対向基板CTに備えられた対向電極ETとを電気的に接続するものである。この給電部50は、導電部材51、及び、給電パッド52によって構成されている。
【0049】
コモン配線COMは、例えば、ゲート電極WGなどと同層に配置され、給電部50まで引き出されており、ゲート電極などと同一材料により形成されている。また、給電パッド52は、画素電極EPと同層に配置され、ITOなどの画素電極材料により形成されている。この給電パッド52は、層間絶縁膜16と有機絶縁膜18を貫通するコンタクトホールを介してコモン配線COMと電気的に接続されている。導電部材51は、例えば、導電スペーサや銀ペーストなどにより形成され、給電パッド52と対向電極ETとの間に配置されており、両者を電気的に接続している。給電部50において、対向電極ETとシールド電極ESとは、電気的に接続されている。
【0050】
このような給電部50において、シールド電極ESとコモン配線COMとが電気的に接続されている。このような例においても、図6に示した例と同様に、シールド電極ESは、常にコモン電位に設定されるため、より帯電に対して高い耐性を得ることが可能となる。このような構成においても、上述した例と同様の効果が得られる。
【0051】
ところで、図2に示したカラー表示タイプの液晶表示装置の例では、カラーフィルタ層34は、対向基板CT側に配置されているが、図8に示すように、アレイ基板AR側に配置しても良い。この場合、アレイ基板ARにおける有機絶縁膜18をカラーフィルタ層34に置き換えることが可能である。または、カラーフィルタ層34は、有機絶縁膜18と画素電極EPとの間に配置しても良い。
【0052】
このとき、対向基板CTは、絶縁基板30の上に配置されたシールド電極ESと、シールド電極ESの上に配置された絶縁層38と、絶縁層38の上に配置された対向電極ETと、を備えている。この場合、絶縁層38は、無機系材料や有機系材料によって形成可能である。このような構成においても上述した例と同様の効果が得られる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態の液晶表示装置によれば、対向基板CTの帯電による影響を抑制することが可能となり、表示品位の改善が可能となる。
【0054】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0055】
ここでは、MVAモードについて説明したが、各画素PXにおいて、開口部APを有する対向電極ETを用いた構造ならば、特にモードは問わない。
【0056】
例えば、一方の基板に櫛歯状の画素電極EP及び対向電極ETを備え、アレイ基板ARの主面に対してほぼ平行な横電界で液晶分子40をスイッチングするIPSモードにおいても本実施の形態を適用可能である。このとき、隣接する対向電極ETの間に開口部APが形成される。シールド電極ESは、少なくともこの開口部APに重なるように配置される。
【0057】
また、例えば、対向基板CTに櫛歯状の対向電極ETを備え、アレイ基板ARに櫛歯状の画素電極EPを備え、アレイ基板ARの主面に対してほぼ平行な横電界で液晶分子40をスイッチングするモードにおいても本実施の形態を適用可能である。このとき、隣接する対向電極ETの間に開口部APが形成される。シールド電極ESは、少なくともこの開口部APに重なるように配置される。
【0058】
また、上述した実施の形態においては、バックライトユニットBLと組み合わせ可能な透過型の液晶表示パネルの例を説明したが、液晶表示パネルはこの例に限らず、外光を選択的に反射して画像を表示する反射型の液晶表示パネルであっても良い。また、各画素PXが反射部及び透過部を有するような半透過型の液晶表示パネルであってもよい。
【0059】
さらに、上述した実施の形態においては、カラー表示タイプの液晶表示装置について説明したが、モノクロ表示タイプの液晶表示装置においては、シールド電極と対向電極との間に絶縁層を配置した対向基板を適用すればよい。
【0060】
また、カラー表示タイプの液晶表示装置において、対向基板がカラーフィルタ層を備えた構成においては、カラーフィルタ層は、絶縁基板と対向電極との間のいずれの位置に配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る液晶表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示した液晶表示装置の一画素分の構造を簡略に示す図である。
【図4】図4は、図3のA−A’線に沿って液晶表示パネルを切断したときの断面である。
【図5】図5は、図1に示した液晶表示装置に適用可能な構造を示す概略的な断面図である。
【図6】図6は、図1に示した液晶表示装置に適用可能な他の構造を示す概略的な断面図である。
【図7】図7は、図1に示した液晶表示装置に適用可能な他の構造を示す概略的な断面図である。
【図8】図8は、図1に示した液晶表示装置に適用可能な他の構造を示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0062】
LPN…液晶表示パネル
AR…アレイ基板 CT…対向基板
LQ…液晶層 BL…バックライトユニット
PX…画素
Y…走査線 X…信号線 AY…補助容量線
W…スイッチング素子
EP…画素電極 ET…対向電極
ES…シールド電極 SH…遮光層
AP…開口部
20…第1配向膜 36…第2配向膜
32…ブラックマトリクス
34…カラーフィルタ層 38…絶縁層
40…液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示領域の各画素に対応して配置された画素電極を備えた第1基板と、
前記第1基板と対向するように配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に保持された液晶層と、を備え、
前記第2基板は、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置されたシールド電極と、
前記シールド電極の上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置され、前記液晶層を介して前記画素電極に対向するとともに、前記各画素において、前記絶縁層の一部を露出する開口部を有する対向電極と、を備え、
前記シールド電極は、前記絶縁層を介して少なくとも前記開口部と重なるように配置されたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記シールド電極は、少なくとも前記表示領域全体に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記対向電極と前記シールド電極とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
さらに、前記表示領域の外において、前記第1基板から前記第2基板に給電する給電部を備え、
前記対向電極と前記シールド電極とが前記給電部において前記絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2基板は、さらに、前記絶縁基板と前記対向電極との間にカラーフィルタ層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1基板は、さらに、カラーフィルタ層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記開口部は、スリット状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記画素電極及び前記対向電極は、櫛歯状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶層の液晶分子は、負の誘電率異方性を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−186514(P2009−186514A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23243(P2008−23243)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】