説明

液晶表示装置

【課題】 本発明はIPS方式等の液晶表示装置において、表示品質を劣化させる静電気などの影響を確実に抑えることができる構成を提供するものである。
【解決手段】 Feイオン及びNiイオンなどの金属イオンを高濃度でガラス基板表面に照射することにより、ガラス基板表面に導電パスが形成され、本来絶縁であるガラス基板表面に導電性が生じる。本発明では、このガラス基板2が観測者側にくるように液晶表示装置を構成することとした。そして、静電気をグラウンド11に落とすための金属などの導電性の部材12を組み込み、表面で発生した静電気の影響を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計、携帯電話、オーディオなどの電子機器に使用される液晶表示装置や電子ペーパなどの表示装置に関し、静電気による悪影響を抑制し、表示品質を向上するものである。特に液晶表示装置の場合、横電界方式、すなわちIPS方式と呼ばれる広視野角液晶表示装置において、静電気などによる基板と垂直な縦電界の影響を抑制し、表示品質の向上を促進するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置において広視野角を得るために、IPS方式を用いられることが多い。IPS方式とはTN方式と異なり、液晶分子の駆動方向が基板に対して平行に動作する。図1は一般的なIPS方式の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、液晶パネルはCF側ガラス基板2とTFT側ガラス基板5の間にIPS液晶分子4を含んだIPS液晶3が設けられた構成であり、液晶パネルは上偏光板1と下偏光板2に挟まれている。ここで、CF側ガラスとは、液晶パネルを構成する基板のうち、カラーフィルタが形成された基板のことであり、TFT側ガラス基板とは、TFT素子が形成された基板のことである。電界方向が基板と平行に作用する横電界7が印加されると、液晶分子の向きはガラス基板と平行な面内で回転する。また、このIPS液晶分子の回転によりIPS液晶の複屈折性を制御することで、バックライト8からの光の透過を制御し、画像を表示させる。
【0003】
ここでIPS液晶特有の問題について図2を用いて説明する。通常IPS液晶分子は基板と平行な向きで揃っているが、静電気などを起因とするTFT側ガラス基板に対して垂直な縦電界9の影響があるとIPS液晶分子3の向きは基板に対して平行とならず、向きが定まらない。また横電界が作用している状態でも、IPS液晶分子は同様に縦電界の影響を受ける。この結果、IPS液晶は予定としていた複屈折性を持つことができないため、バックライト8からの光を制御し切れず、表示品質の劣化につながる。
【0004】
そこで、この課題を解決するため、静電気が発生する面に透明導電膜を成膜することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法を図示したのが図3である。図示するように、CF側ガラス基板2には、CFを成膜した面に対して裏側の表面にITO、FTO、ATOなどの透明導電膜10が設けられており、その表面に上偏光板1を貼り付けている。ここで上偏光板1の表面で発生した場合、電荷が透明導電膜を介し、導電材料12を通してグラウンド端子11に流れる。これによって上偏光板1で電荷が留まることが無いため、IPS液晶に対して縦電界が発生することがなく、縦電界の影響を抑制することができる。
【特許文献1】特開2000−111957号公報(第7頁、17行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術はCF側ガラス表面に透明導電膜が成膜されているため、途中工程、搬送中、また偏光板を貼りなおすために偏光板を剥がすときなどに、透明導電膜が剥がれることがあり、静電気などの影響を抑制するという機能が失われることがあった。
【0006】
そこで、本発明ではこのような問題を解決したカラーTFT液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明ではガラス表面に金属イオンを注入することによって、ガラス表面に導電性機能を持たせることとした。これにより、従来の透明導電膜を成膜するという方法に対して懸念点であった透明導電膜が剥がれることによる静電気抑制機能の損失を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガラス基板の表面の材質を変化させて導電性を持たせているので、力学的な要因で剥がれることはなく、従来の導電膜と異なり、その導電性機能を失うことは無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、基板と、基板と対向する対向基板と、基板と対向基板の間隙に設けられた液晶層を備えており、対向基板の液晶層を挟持する面とは反対側の表面に金属イオンを注入することにより、該表面に導電性を持たせており、この表面をグラウンドに電気的に接続している。これにより、対向基板側に帯電した静電気を逃がすための導電体の強度か高くなり、静電気などの影響の抑制を確実に行える。ここで、対向基板は観察者側に設けられた基板である。
【0010】
特に、基板にTFT素子などのアクティブ素子が形成されている場合に、帯電防止策が重要になる。そのため、アクティブ型の液晶表示装置に適用すると効果が高い。さらに、IPS液晶を用いている場合に、縦方向の電界が表示に影響を与えてしまうので、帯電防止策が重要になる。そのため、IPS方式の液晶表示装置に適用すると効果が高い。
【0011】
図4は、基板に金属イオンを注入することに関して説明するための模式図である。ここではガラス基板に金属イオンを注入する方法について説明する。Feイオンなどの金属イオン15を高エネルギーイオンビームとして、ガラス13に照射する。これにより、ガラス基板の被照射面では、Fe原子など金属原子が照射部分を中心に分布することになる。このとき、金属原子同士が導電パスを形成することで、本来絶縁であるガラス表面に導電性を持たせることができる。このとき形成されたガラス表面の導電性機能は透明導電膜とは異なり、物理的に剥がれることは無いものである。更に、イオンビーム照射後、熱処理を行なうことによって、Feイオンは表面に拡散し、基板と相互作用しながらFe23が成長する。これによって、ガラス表面の導電性を更に向上させることができる。
【0012】
本発明の一例の液晶表示装置の断面構成を図5に模式的に示す。ここでは、対向基板としてカラーフィルタが形成されたCF側ガラス基板2を、基板としてTFT素子が形成されたTFT側ガラス基板5を用いている。図示するように、液晶パネルはCF側ガラスとして使用し、このCF側ガラス基板2とTFT側ガラス基板5の間にIPS液晶3が設けられた構成であり、この液晶パネルは上偏光板1と下偏光板2に挟まれている。CF側ガラス基板の観察者側の表面には導電層14が形成されている。この導電層14はガラス基板表面から金属イオンを注入することにより、該表面から内部にかけて存在する金属原子によって形成された層であり、この層により、ガラス基板表面に導電性が備わることになる。そして、CF側ガラス基板の導電機能を有した面に上偏光板1を貼り付けている。
【0013】
ここで上偏光板表面において静電気が発生した場合、電荷が導電層14を介し、導電材料12を通してグラウンド端子11に流れる。これによって上偏光板1に電荷が居続けることが無いため、IPS液晶に対して縦電界が発生することがなく、縦電界の影響を抑制することができる。
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例の液晶表示装置に用いられる液晶パネルを図6に基づいて説明する。図6は液晶パネルを上から見た図である。中央の表示エリア部分16の外側に導電性のSUS外枠17を組み込み、導電材料とする。この表示エリア部分16対応して上述の導電層14が形成されている。更にこのSUS外枠にグラウンド端子11につなげる。これによって液晶パネルの表面に発生した静電気などの高電位の電荷がSUS外枠を伝導しグラウンド端子に流すことができる。従って静電気などによるIPS液晶に対する。縦電界の影響を抑制することができる。
【実施例2】
【0016】
本実施例の液晶表示装置に用いられる液晶表示パネルを図7に基づいて説明する。図7において、CF側表面上かつ中央表示エリア外の一部においてアルミニウム部材18を設置する。またこのアルミニウム部材にグラウンド端子11をつなげる。これによって液晶パネルの表面に発生した静電気などの高電位の電荷がSUS外枠を伝導しグラウンド端子に流すことができる。従って静電気などによるIPS液晶に対する。縦電界の影響を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
明るい白黒反射表示が透過時のカラー表示とともに実現できる構成なので、半透過反射型の表示装置に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】IPS方式液晶表示装置の断面構成を模式的に示す図である。
【図2】垂直な方向に電界が働いた場合のIPS液晶分子の向きを模式的に示す断面図である。
【図3】従来の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】ガラス表面に金属イオンを照射し、ガラス表面に導電性を持たせるところを模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】ガラス基板表面に静電気をグラウンドに落とすための金属などの導電性の部材を組み込むところを模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 上偏光板
2 CF側ガラス
3 IPS液晶
4 IPS液晶分子
5 TFT側ガラス基板
6 下偏光板
7 横電界
8 バックライト
9 縦電界
10 透明導電膜
11 グラウンド端子
12 導電材料
13 ガラス
14 導電層
15 金属イオン
16 表示エリア
17 SUS外枠
18 アルミニウム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板と対向する対向基板と、前記基板と前記対向基板の間隙に設けられた液晶層を備える液晶表示装置において、
前記対向基板の前記液晶層を挟持する面とは反対側の表面に金属イオンを注入することにより、該表面に導電性を持たせるとともに、該表面をグラウンドに電気的に接続することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記基板にはアクティブ素子が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶層は横電界方式により駆動されるIPS液晶であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記対向基板がガラス基板であり、前記金属イオンがFeまたはNiであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−192797(P2009−192797A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33076(P2008−33076)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】