説明

液晶表示装置

【課題】導電性が高く、透明性に優れ、更にコントラスト比が高い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の液晶表示装置は、液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電膜とを備え、前記透明導電膜は、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側の主面上に塗布により形成され、前記透明導電膜は、導電性無機粒子と樹脂成分とを含み、前記導電性無機粒子の平均粒子径が、30〜180nmであり、前記導電性無機粒子の前記透明導電膜の全体に対する重量含有率が、71%以上85%未満であり、前記透明導電膜を配置した前記第1の透明基板のヘイズ値が、1.4%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は軽量・薄型・低消費電力等の特性を生かし、各種情報機器端末やカメラ等の小型表示装置のほか、近年ではテレビ等の大型表示装置としても市場を拡大している。液晶表示装置の種類としては、かつてはTN(ツイスト・ネマチック)形に代表される縦電界方式が大勢を占めていたが、最近では横電界方式と称される液晶表示装置も主流となってきている。
【0003】
縦電界方式の液晶表示装置は、液晶層を介して互いに対向して配置される透明基板のうち、片方の透明基板には画素電極が設けられ、もう片方の透明基板には共通電極が設けられ、この画素電極と共通電極との間に発生する電界、即ち透明基板に対して垂直な電界によって液晶の配向を制御することを特徴としている。これに対し、横電界方式の液晶表示装置の構成は、液晶層を介して互いに対向して配置される透明基板のうち、主に片方の透明基板の液晶層側に表示用電極と基準電極とが備えられ、この表示用電極と基準電極との間に発生する電界、即ち透明基板と平行に発生させる電界によって液晶の配向を制御することによって、上記液晶層を透過する光を変調させるようにしたものである。
【0004】
横電界方式の液晶表示装置は縦電界方式に比べて視野角が広いという利点があるが、縦電界方式の液晶表示装置には発生しない課題として、装置の外部又は内部からの静電的な影響や外部の電磁的妨害を受けて、黒表示したとき光抜けが生ずるなど、表示品位が低下するという問題があった。これは、横電界方式の液晶表示装置は、片方の透明基板に表示用電極と基準電極とが集積した構造になっているため、外部からの静電気等に対するシールド機能を備える導電層を全く有していない構成となっているためである。
【0005】
このような問題を解決するため、液晶表示装置の透明基板のうち、バックライトユニットに対して遠い側の透明基板の液晶層とは反対側の面に透光性を備える導電層を形成し、シールド機能を持たせるという技術が提案されており、具体的には導電層としてITOからなるスパッタリング膜を形成する方法や、液晶表示装置の透明基板に貼り付ける粘着材中に導電性粒子を散在させて導電層とする方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2758864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のスパッタリングにより導電層を形成する方法では、スパッタリング工程のための大型の真空装置が必要であり、製造工程の簡略を図ることができず、製造コスト的にも不利である。また、特許文献1に記載の粘着材中に導電性粒子を散在させて導電層を形成する方法では、粘着層は一般的に膜厚が10μm以上と厚いため、導電性粒子を散在させて粘着層に導電性を付与する方法では透明性が低下する。導電層の透明性が低下してヘイズ値が高くなると、液晶パネル内において偏光解消が起こり、暗表示での漏れ光の発生や、明表示での正面輝度の低下により、コントラスト比が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決したもので、導電性高く、透明性に優れ、更にコントラスト比が高い液晶表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電膜とを含む液晶表示装置であって、前記透明導電膜は、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側の主面上に塗布により形成され、前記透明導電膜は、導電性無機粒子と樹脂成分とを含み、前記導電性無機粒子の平均粒子径が、30〜180nmであり、前記導電性無機粒子の前記透明導電膜の全体に対する重量含有率が、71%以上85%未満であり、前記透明導電膜を配置した前記第1の透明基板のヘイズ値が、1.4%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性が高く、透明性に優れ、更にコントラスト比が高い液晶表示装置を提供できる。特に、帯電防止機能が高くかつ透明性に優れる透明導電膜を、横電界方式の液晶表示装置の透明基板に直接的かつ簡易に配置でき、コントラスト比が高い横電界方式の液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】コントラスト比の測定方法を説明する模式断面図である。
【図3】ヘイズ値とコントラスト比の比率A/Bとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶表示装置は、液晶層と、上記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、上記第1の透明基板の上記液晶層とは反対側に配置された透明導電膜とを備えている。また、上記透明導電膜は、上記第1の透明基板の上記液晶層とは反対側の主面上に塗布により形成され、上記透明導電膜は、導電性無機粒子と樹脂成分とを含み、上記導電性無機粒子の平均粒子径が、30〜180nmであり、上記導電性無機粒子の上記透明導電膜の全体に対する重量含有率が、71%以上85%未満であり、上記透明導電膜を配置した上記第1の透明基板のヘイズ値が、1.4%以下であることを特徴としている。
【0013】
本発明の液晶表示装置は、液晶層と、上記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、上記第1の透明基板の上記液晶層とは反対側に配置された透明導電膜とを備えているので、液晶表示装置に、装置の外部又は内部からの静電的な影響や外部の電磁的妨害に対するシールド機能を付与できる。
【0014】
また、本発明の液晶表示装置では、上記透明導電膜は、上記第1の透明基板の上記液晶層とは反対側の主面上に塗布により形成され、更に、上記透明導電膜は、導電性無機粒子と樹脂成分とを含み、上記導電性無機粒子の平均粒子径が、30〜180nmであり、上記導電性無機粒子の上記透明導電膜の全体に対する重量含有率が、71%以上85%未満であり、上記透明導電膜を配置した上記第1の透明基板のヘイズ値が、1.4%以下であるため、帯電防止機能が高くかつ透明性に優れる透明導電膜を、液晶表示装置の透明基板に直接的かつ簡易に配置することができ、コントラスト比が高い液晶表示装置を提供できる。特に、本発明では、表示用電極及び基準電極が、上記第2の透明基板の上記液晶層の側に配置されている横電界方式の液晶表示装置のコントラスト比を高めことができる。
【0015】
本発明においては、透明導電膜中の導電性無機粒子の平均粒子径及び重量含有率の相関を鋭意検討した結果、導電性無機粒子の平均粒子径及び重量含有率を上記の範囲に設定することにより、導電性と透明性とのバランスがとれた透明導電膜を得ることができ、その透明導電膜を液晶表示装置に用いることにより、コントラスト比の高い液晶表示装置、特に横電界方式の液晶表示装置を提供できる。
【0016】
上記透明導電膜中の導電性無機粒子の平均粒子径は、30〜180nmであり、50〜180nmであることが好ましく、80〜150nmであることが特に好ましい。ここで、上記平均粒子径は、透明導電膜に含まれる導電性無機粒子の平均分散粒子径をいい、単位はナノメートル(nm)で表記するものとする。上記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により、透明導電膜の表面又は断面における個々の粒子の粒子径を観察・測定した後、少なくとも100個の粒子の粒子径を平均することにより得るものとする。上記平均粒子径が180nmを超えると、粒子の散乱によって塗膜のヘイズ値が上昇しすぎるという問題が生じる。また、導電性無機粒子の平均粒子径を小さくするためには1次粒子径の小さい導電性無機粒子を用いることが必要となるが、一般に、粒子の1次粒子径が小さいほど比表面積が増大して分散が難しくなるため、上記平均粒子径を30nm未満にすることは実質的に困難である。
【0017】
上記平均粒子径を30〜180nmとするためには、導電性無機粒子の1次粒子径は5〜160nmであることが好ましい。ここで、粒子の1次粒子径とは、導電性無機粒子そのものをサンプルとし、透過型電子顕微鏡(TEM)により、粒界で区切られた個々の粒子の粒子径を観察・測定した後、少なくとも100個の粒子の粒子径を平均した平均粒子径をいう。導電性無機粒子の1次粒子径が5nm未満であると、結晶性のよい粒子を得ることが難しい傾向がある。一方、上記1次粒子径が160nmよりも大きいと、平均粒子径を180nm以下にすることが困難である。
【0018】
上記透明導電膜中の導電性無機粒子の透明導電膜の全体に対する重量含有率は、71%以上85%未満であり、77%以上85%未満であることが好ましく、81%以上85%未満であることが特に好ましい。ここで、上記重量含有率は、不揮発固形成分からなる透明導電膜中の導電性無機粒子の透明導電膜の全体に対する重量割合を意味する。上記重量含有率が85%以上となると、透明導電膜中の粒子による散乱が増加するだけでなく、導電性無機粒子間に樹脂が充填されずに粒子と空気の界面が増加したり、透明導電膜表面に粒子が露出して表面が粗くなったりするため、塗膜のヘイズ値が上昇してしまうという問題が生じる。また、上記重量含有率が71%を下回ると、粒子間の接点が少なくなりすぎるため、透明導電膜の表面抵抗が上昇する。
【0019】
本発明の透明導電膜の膜厚は、0.3〜3.0μmが好ましく、0.5〜2.5μmであることが更に好ましい。上記膜厚が0.3μm未満であると、透明導電膜の光透過率は向上するものの、透明導電膜が薄すぎるために表面抵抗が上昇してシールド機能が低下する傾向にある。また、上記膜厚を厚くすると表面抵抗は低下する傾向にあるが、膜厚が3.0μmを超えると光透過率が低下する傾向がある。
【0020】
本発明において、透明性は、ヘイズ値により示され、ヘイズ値が低いほど、透明性に優れる。本発明では、上記透明導電膜を用いることにより、上記透明導電膜を配置した上記第1の透明基板のヘイズ値を1.4%以下にすることができる。
【0021】
更に、本発明では、ヘイズ値を1.4%以下にすることにより、上記透明導電膜を配置した上記第1の透明基板を対向する2枚の偏光板の間に配置した状態のコントラスト比をAとし、上記透明導電膜を配置していない上記第1の透明基板を対向する2枚の上記偏光板の間に配置した状態のコントラスト比をBとすると、コントラスト比の比率A/Bを0.80以上にすることができる。また、ヘイズ値を0.9%以下とするとA/Bを0.92以上にでき、更に、ヘイズ値を0.8%以下とするとA/Bを0.94以上にできる。
【0022】
ここで、上記コントラスト比A及びBは、次にようにして求めるものとする。先ず、片面に透明導電膜を形成した透明基板を、対向する2枚の偏光板の間に配置し、更に、透明基板の透明導電膜を形成していない側に配置した偏光板の外側にバックライト光源を配置する。次に、この状態で、輝度計を用いて、直行ニコルの状態の正面輝度C1と、平行ニコルの状態の正面輝度P1とを測定し、P1/C1の値をコントラスト比Aとする。続いて、透明導電膜を形成していない透明基板のみを用いて、上記と同様にして、直行ニコルの状態の正面輝度C2と、平行ニコルの状態の正面輝度P2とを測定し、P2/C2の値をコントラスト比Bとする。
【0023】
上記透明導電膜の表面抵抗は、1×104〜1×1014Ω/スクエアであることが好ましく、1×105〜1×1012Ω/スクエアであることが更に好ましい。上記表面抵抗が1×1014Ω/スクエアを超えると、シールド機能が低下し、液晶表示装置の表示劣化を防止することが困難になる。また、上記透明導電膜に含有させる導電性無機粒子の量を増加させると上記表面抵抗は低下するが、導電性無機粒子による光の散乱も増加して、ヘイズ値が増加して透明性が低下するため、上記透明導電膜の透明性を保持したまま上記表面抵抗を1×104Ω/スクエア未満にすることは困難である。
【0024】
次に、上記透明導電膜の製造方法を説明する。
【0025】
上記透明導電膜の製造方法は、導電性無機粒子と樹脂成分とを含むコーティング組成物を作製する工程と、透明基板の上に、上記コーティング組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、上記塗膜を乾燥して透明導電膜を形成する工程とを含む。
【0026】
上記コーティング組成物における導電性無機粒子の平均粒子径は、30〜180nmであり、50〜180nmであることが好ましく、80〜150nmであることが特に好ましい。ここで、上記平均粒子径は、コーティング組成物中に分散している導電性無機粒子の平均分散粒子径をいい、単位はナノメートル(nm)で表記するものとする。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱法や動的光散乱法によって測定される粒度分布の平均値と定義する。上記コーティング組成物における導電性無機粒子の平均粒子径を30〜180nmにすることにより、コーティング組成物を塗布して形成した上記透明導電膜における導電性無機粒子の平均粒子径も30〜180nmにすることができる。
【0027】
上記コーティング組成物における導電性無機粒子の重量含有率は、71%以上85%未満であり、77%以上85%未満であることが好ましく、81%以上85%未満であることが特に好ましい。ここで、上記重量含有率は、溶剤を除く不揮発固形成分全体に対する導電性無機粒子の重量割合を意味する。上記コーティング組成物における導電性無機粒子の重量含有率を71%以上85%未満にすることにより、コーティング組成物を塗布して形成した上記透明導電膜中の導電性無機粒子の透明導電膜の全体に対する重量含有率も71%以上85%未満にすることができる。
【0028】
上記導電性無機粒子としては、透明性と導電性を兼ね備えた粒子であればよく、特に限定されず、例えば、金属粒子、カーボン粒子、導電性金属酸化物粒子、導電性窒化物粒子等を用いることができる。中でも、透明性と導電性とを兼ね備えた導電性金属酸化物粒子が好ましい。上記導電性金属酸化物粒子としては、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ(ATO)粒子、スズ含有酸化インジウム(ITO)粒子、アルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)粒子、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)粒子等の金属酸化物粒子が挙げられる。上記導電性金属酸化物粒子は、単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。また、上記導電性無機粒子は、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子及びスズ含有酸化インジウム粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種を主成分とすることが好ましい。これらの化合物は透明性、導電性や化学特性に優れており、塗膜にした場合にも高い光透過率と導電性を実現することができるからである。ここで、主成分とは、導電性無機粒子全体に対して、70重量%以上含まれる導電性無機粒子をいう。
【0029】
上記樹脂成分としては、上記導電性無機粒子を分散して塗膜を形成できるものであればよく、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、及び光硬化性モノマーと重合開始剤とを含む光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0030】
上記コーティング組成物は、更に溶剤を含むことが好ましい。コーティング組成物は固形成分である導電性無機粒子を多く含むため、仮に樹脂成分が光硬化性モノマーのような液状成分であったとしても、溶剤を含まない場合にはコーティング組成物を塗布に適した粘度とすることが困難になる傾向があるからである。
【0031】
上記溶剤としては、樹脂成分を溶解し、かつ塗布後の乾燥工程によって除去できるものであればよく、特に限定されない。例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアルキルエーテルやグリコールアルキルエステル類等が挙げられる。
【0032】
上記コーティング組成物には、更に、導電性無機粒子の分散性を向上させるための分散剤や、透明基板に対する濡れ性及び/又はレベリング性を向上させるための表面調整剤が添加されていてもよい。
【0033】
上記コーティング組成物の作製は、導電性無機粒子を樹脂及び/又は溶剤中に分散できればよく、特に限定されない。例えば、導電性無機粒子を分散させるために、ボールミル、サンドミル、ピコミル、ペイントコンディショナー等のメディアを介在させた機械的処理、又は超音波分散機、ホモジナイザー、ディスパー及びジェットミル等を使用して分散処理を施してもよい。
【0034】
次に、上記コーティング組成物を透明基板に塗布して透明導電膜を形成する。塗布方法としては、平滑な塗膜を形成しうる塗布方法であればよく、特に限定されない。例えば、スピンコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、リバースコート、グラビアコート、マイクログラビアコート等の塗工法、又はグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法、スプレー塗布やディップ塗布等の塗布法を用いることができる。コーティング組成物を塗布した後、乾燥によって溶剤を除去する。また、必要に応じて、塗膜にUV光やEB光を照射して塗膜を硬化させたりして、透明導電膜を形成してもよい。また、透明導電膜を形成する透明基板としては、透明で平滑な基板であればよく、ガラス基板であることが特に好ましい。
【0035】
以下、本発明の液晶表示装置を図面に基づき説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の一例を示す模式断面図である。
【0036】
図1において、本発明の液晶表示装置10は、液晶層11と、液晶層11を介して互いに対向して配置された第1の透明基板12a及び第2の透明基板12bと、第1の透明基板12aの液晶層11とは反対側に配置された透明導電膜13とを備えている。また、図示は省略したが、第2の透明基板12bの液晶層11の側には表示用電極及び基準電極が配置されている。これにより、液晶表示装置10は、横電界方式の液晶表示装置を構成している。
【0037】
また、透明導電膜13は、第1の透明基板12aの液晶層11とは反対側の主面上に塗布により形成されている。
【0038】
更に、透明導電膜13の上には、偏光板14aが配置され、第2の透明基板12bの外側には偏光板14bが配置されている。また、偏光板14bの外側には、バックライトユニット15が配置されている。また、液晶層11は、封止部16により密閉されている。
【0039】
液晶表示装置10は、液晶層11と、液晶層11を介して互いに対向して配置された第1の透明基板12a及び第2の透明基板12bと、第1の透明基板12aの液晶層11とは反対側に配置された透明導電膜13と、第2の透明基板12bの液晶層11の側に配置された表示用電極及び基準電極(図示せず。)とを備えているので、横電界方式の液晶表示装置に、装置の外部又は内部からの静電的な影響や外部の電磁的妨害に対するシールド機能を付与できる。また、透明導電膜13を形成した第1の透明基板12aのヘイズ値を1.4%以下にすることで、液晶表示装置10のコントラスト比を高めることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
先ず、以下のようにしてITO分散体組成物を調製した。
【0042】
<ITO分散体組成物a>
100mlのプラスチック製ビンに、下記の成分を計り取り、ペイントシェーカー(東洋精機社製)で18分間分散した後、ジルコニアビーズを取り除いて、ITO分散体組成物aを得た。下記スズ含有インジウム酸化物(ITO)粒子におけるスズの含有率は10重量%である。
【0043】
(1)スズ含有インジウム酸化物(ITO)粒子 12.0g
(2)分散剤“BYK163”(商品名、ビックケミー社製) 0.60g
(3)メチルエチルケトン(和光純薬社製) 13.7g
(4)トルエン(和光純薬社製) 13.7g
(5)ジルコニアビーズ(液の攪拌分散用、直径0.3mm) 60.0g
【0044】
<ITO分散体組成物b、c、d>
分散時間を、それぞれ20分、25分、30分にしたこと以外は、ITO分散体組成物aの場合と同様にして、ITO分散体組成物b、c、dを得た。
【0045】
上記ITO分散体組成物a〜dにおける、ITO粒子の平均粒子径を動的光散乱方式の粒度分布計(コールター社製“N4PLUS”商品名)で測定したところ、それぞれ200nm、180nm、110nm、75nmであった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測して、原料のITO粒子の1次粒子径を測定したところ、32nmであった。上記ITO粒子の1次粒子径は、100個の粒子の粒子径を測定して平均した結果である。
【0046】
次に、以下のようにしてコーティング組成物1〜7を調製した。
【0047】
<コーティング組成物1>
紫外線を遮蔽したプラスチック製ビンに、上記ITO分散体組成物b及び下記の成分を計り取り、混合・攪拌して、30gのコーティング組成物1を調製した。
【0048】
(1)ITO分散体組成物b 18.0g
(2)アクリル樹脂“BR116”(商品名、三菱レイヨン社製) 1.83g
(3)メチルエチルケトン(和光純薬社製) 2.27g
(4)トルエン(和光純薬社製) 2.27g
(5)シクロヘキサノン(和光純薬社製) 5.63g
【0049】
上記コーティング組成物の不揮発固形成分中のITO粒子の重量含有率は72%である。
【0050】
<コーティング組成物2〜7>
下記表1に示すITO分散体組成物及びその他の成分を、表1に示す配合量で配合し、コーティング組成物1と同様にして、それぞれ、コーティング組成物2〜7を調製した。また、表1には、コーティング組成物1〜7の不揮発固形成分中のITO粒子の重量含有率を示した。
【0051】
【表1】

【0052】
(実施例1)
上記コーティング組成物1を、厚さ2mmのガラス基板上にスピンコーター(ミカサ社製“1−HDX2”商品名)を用いて回転数500rpmにて塗布した後、100℃の乾燥機で2分間乾燥させて、実施例1の透明導電膜を得た。この透明導電膜中のITO粒子の平均粒子径を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測して測定した結果、180nmであり、コーティング組成物1におけるITO粒子の平均粒子径とほぼ同一であることが分かった。上記のITO粒子の平均粒子径は、100個の粒子の粒子径を測定して平均した結果である。
【0053】
(実施例2〜5)
それぞれ、コーティング組成物2〜5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5の透明導電膜を得た。
【0054】
(比較例1〜2)
それぞれ、コーティング組成物6〜7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜2の透明導電膜を得た。
【0055】
この実施例2〜5及び比較例1〜2の透明導電膜中のITO粒子の平均粒子径を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測して測定した結果、それぞれ、各コーティング組成物におけるITO粒子の平均粒子径とほぼ同一であることが分かった。
【0056】
次に、実施例1〜5及び比較例1〜2の透明導電膜のヘイズ値及びコントラスト比を、下記のとおり測定して、その結果を表2に示す。
【0057】
(ヘイズ値)
紫外可視分光光度計“V−570”(商品名、日本分光社製)を用いて、ヘイズ値を測定した。
【0058】
(コントラスト比)
先ず、図2に示すように、片面に透明導電膜20を形成したガラス基板21を、対向する2枚の偏光板22、23の間に配置し、更に、偏光板23の外側に白色LEDを備えたバックライト光源24を配置した。図示は省略したが、偏光板23とバックライト光源24との間には、光拡散シートを配置して、等方的な光源とした。
【0059】
次に、この状態で、トプコン社製の輝度計“SR−3”(商品名)を用いて、直行ニコルの状態の正面輝度C1と、平行ニコルの状態の正面輝度P1とを測定し、P1/C1の値をコントラスト比Aとした。
【0060】
続いて、透明導電膜を形成していないガラス基板21のみを用いて、上記と同様にして、直行ニコルの状態の正面輝度C2と、平行ニコルの状態の正面輝度P2とを測定し、P2/C2の値をコントラスト比Bとした。
【0061】
以上の結果から、コントラスト比の比率A/Bの値を計算した。また、図3に、ヘイズ値と、コントラスト比の比率A/Bの値との関係図を示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2及び図3から明らかなように、ヘイズ値が1.4%以下である実施例1〜5では、コントラスト比の比率A/Bを0.80以上にでき、コントラスト比を高くできることが分かる。一方、ヘイズ値が1.4%を超える比較例1〜2では、コントラスト比の比率A/Bは0.80を下回り、コントラスト比を高くできないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、導電性が高く、透明性に優れ、更にコントラスト比が高い液晶表示装置を提供できる。
【符号の説明】
【0065】
10 液晶表示装置
11 液晶層
12a 第1の透明基板
12b 第2の透明基板
13 透明導電膜
14a、14b 偏光板
15 バックライトユニット
16 封止部
20 透明導電性膜
21 ガラス基板
22、23 偏光板
24 バックライト光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電膜とを含む液晶表示装置であって、
前記透明導電膜は、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側の主面上に塗布により形成され、
前記透明導電膜は、導電性無機粒子と樹脂成分とを含み、
前記導電性無機粒子の平均粒子径が、30〜180nmであり、
前記導電性無機粒子の前記透明導電膜の全体に対する重量含有率が、71%以上85%未満であり、
前記透明導電膜を配置した前記第1の透明基板のヘイズ値が、1.4%以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
表示用電極及び基準電極が、前記第2の透明基板の前記液晶層の側に配置されている請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記透明導電膜を配置した前記第1の透明基板を対向する2枚の偏光板の間に配置した状態のコントラスト比をAとし、前記透明導電膜を配置していない前記第1の透明基板を対向する2枚の前記偏光板の間に配置した状態のコントラスト比をBとすると、A/Bが0.80以上である請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記透明導電膜の膜厚が、0.3〜3.0μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記導電性無機粒子が、酸化スズ粒子、アンチモン含有酸化スズ粒子及びスズ含有酸化インジウム粒子からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−155291(P2012−155291A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16823(P2011−16823)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】