液晶装置、及び電子機器
【課題】ディスクリネーションの発生が少なく、表示が明るい上、垂直配向に基づく高コントラストの液晶装置を提供する。
【解決手段】TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、初期配向状態が垂直配向を呈し且つ誘電異方性が負の液晶からなる液晶層50が挟持されてなる液晶装置100であって、TFTアレイ基板10上に、複数の画素電極9と、画素電極9上に形成された垂直配向膜60と、画素電極9上及びTFTアレイ基板10上で画素電極9が存在しない領域に形成された水平配向膜42と、からなる配向膜40と、を有し、対向基板20上に、共通電極21と、水平配向膜42に対面して設けられる凸部55と、共通電極21及び凸部55上に形成された垂直配向膜からなる配向膜60と、を有する。
【解決手段】TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、初期配向状態が垂直配向を呈し且つ誘電異方性が負の液晶からなる液晶層50が挟持されてなる液晶装置100であって、TFTアレイ基板10上に、複数の画素電極9と、画素電極9上に形成された垂直配向膜60と、画素電極9上及びTFTアレイ基板10上で画素電極9が存在しない領域に形成された水平配向膜42と、からなる配向膜40と、を有し、対向基板20上に、共通電極21と、水平配向膜42に対面して設けられる凸部55と、共通電極21及び凸部55上に形成された垂直配向膜からなる配向膜60と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置を用いて映像を大画面に表示する装置として液晶プロジェクタがある。プロジェクタにおいては高輝度、高コントラストが要求されており、その点、垂直配向方式の液晶装置は高コントラスト表示が可能で、近年、プロジェクタ用の液晶装置の液晶配向方式として採用されつつある。
【0003】
しかし、垂直配向方式では液晶が基板表面に対して垂直に立っており、電圧印加時に倒れる方位方向での相互作用が弱い。しかも、電圧を印加すると、画素電極端から基板面に平行な方向に、横方向の電界が発生する。この横方向の電界に起因して液晶が様々な方向に倒れてしまい、ディスクリネーションを生じてしまっていた。ディスクリネーションが生じると、明暗のムラやコントラストの低下、残像等の表示欠陥が視認されてしまう。
【0004】
垂直配向の液晶表示素子において、電圧印加時の液晶の配向を一軸に揃えるために以下のような方法が開示されてきている。例えば、特許文献1の液晶装置では、絵素領域内に垂直配向規制領域を、絵素領域外に配向規制領域を持たせることで絵素内部の液晶分子を電圧印加時に一方向に配向させる方法を提案している。これと同様に特許文献2の液晶装置では、無機配向膜を斜方蒸着法によって形成し、その厚さを表示領域および非表示領域で変化させることで無機配向膜のプレチルト角を制御し、表示領域の垂直配向している液晶が電圧印加に伴い、一方向に揃って倒れるとしている。
【特許文献1】特開2001−343651号公報
【特許文献2】特開2005−107373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような方法において、例えば図14に示すように、画素電極9の周囲にHAN(Hybrid Alignment Nematic)配向領域が存在する垂直配向方式の液晶装置では、電圧無印加状態のとき、HAN配向領域において水平配向する液晶分子の影響で垂直配向領域(画素電極9上)の液晶分子が傾いてしまい、黒表示時に光漏れが生じてコントラストが低くなる場合がある。
そこで、本発明は、電圧無印加時において、HAN配向領域に隣接する垂直配向領域への影響を抑えて液晶分子の配向不良を防止し、光漏れのない黒表示を実現するとともに高コントラストの液晶装置を提供することを目的としている。また、当該液晶装置を備えた電子機器について提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶装置は、上記課題を解決するために、第1の基板と第2の基板との間に、初期配向状態が垂直配向を呈し且つ誘電異方性が負の液晶からなる液晶層が挟持されてなる液晶装置であって、第1の基板上に、複数の画素電極と、該画素電極上に形成された垂直配向膜と、画素電極上及び第1の基板上で画素電極が存在しない領域に形成された水平配向膜と、からなる第1の配向膜と、を有し、第2の基板上に、電極と、水平配向膜に対面して設けられる凸部と、電極及び凸部上に形成された垂直配向膜からなる第2の配向膜と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の液晶装置では、表示を行う画素電極上の領域(画素部)において液晶が垂直配向を呈し、画素電極の周辺の領域(周辺部)において、液晶がHAN(Hybrid Alignment Nematic)配向を呈する。
本発明によれば、第2の基板側において、HAN配向領域に凸部を設けることにより、凸部を設けない場合よりもHAN配向領域の液晶層の厚さが薄くなるため、HAN配向領域の液晶層が隣接する垂直配向している液晶分子に対しての影響を抑えることができる。すなわち、垂直配向領域(画素部)とHAN配向領域(周辺部)との境界部分における液晶の配向不良を低減することにより電圧無印加時に垂直配向領域(画素部)内での光漏れが殆どない黒表示が可能となる。これにより垂直配向領域及びHAN配向領域を有する液晶装置において、黒が引き締まった高コントラストの表示を実現することができる。
【0008】
また、該凸部は液晶層の厚さの40%より小さいことが好ましい。
このような構成によれば、凸部の高さが液晶層の厚さの40%以上である場合、凸部の側壁の形状に依存して液晶分子が配向してしまう傾向があるため、本発明では凸部の高さをセルギャップの40%より小さくしておく必要がある。
【0009】
また、凸部の先端面の幅が、水平配向膜の幅と一致しているか、あるいは水平配向膜の幅よりも広いことが好ましい。
このような構成によれば、HAN配向領域全体の液晶層の厚みを薄くすることができ、HAN配向領域で水平配向する液晶分子が、隣接する垂直配向領域の液晶分子の配向に影響を与えることを抑えることができる。
【0010】
また、凸部は、前記画素電極の周縁部に形成される遮光領域内に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、黒表示時における光漏れをより確実に低減することができる。
【0011】
また、凸部は、レジストで形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第2の基板に設けられる遮光膜のパターン形成に用いたレジストマスクを凸部として用いることができ、簡単且つ低コストで形成することができる。
【0012】
また、第1及び第2の基板の外側に配置された一対の1/4波長板と、一対の1/4波長板の外側に配置された偏光板と、を有することが好ましい。
このような構成によれば、液晶分子の方位方向(方位角)によらず複屈折効果が得られるので、液晶装置の輝度を大幅に向上させることができる。
【0013】
本発明は、上記した液晶装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明の液晶装置は、例えば液晶テレビや携帯電話等の電子機器の表示画面、パソコンのモニタ、液晶プロジェクタの光変調装置として用いることができる。このような用途に用いることで表示特性に優れた電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0015】
「液晶装置の第1実施形態」
以下に示す本実施形態の液晶装置は、スイッチング素子としてTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の透過型液晶装置である。
【0016】
図1は本実施形態の透過型液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図である。図2はデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図である。図3は本実施形態の透過型液晶装置について素子領域の断面図であって、図2のA−A’線断面図である。また、図4は本実施形態の透過型液晶装置について複数の画素を模式的に示す断面図である。なお、図3及び図4においては、図示上側が光入射側、図示下側が視認側(観察者側)である場合について図示している。
【0017】
本実施形態の透過型液晶装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極9と当該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT素子30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。
【0018】
また、走査線3aがTFT素子30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT素子30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0019】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0020】
次に、図2に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の平面構造について説明する。図2に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と略す)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(点線部9Aにより輪郭を示す)が複数、マトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。本実施形態において、各画素電極9及び各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
本実施形態では、特に、画素のうち表示光が透過する画素電極9上の領域を「画素部」、画素部の周辺の遮光された領域を「周辺部」と規定して区別する。
【0021】
データ線6aは、TFT素子30を構成する例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、後述のチャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0022】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0023】
次に、図3及び図4に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の断面構造について説明する。なお、図4ではスイッチング素子等の一部の構成要素を図面の視認性を考慮して省略してある。図3及び図4に示すように、本実施形態の透過型液晶装置100においては、TFTアレイ基板(第1の基板)10と、これに対向配置される対向基板(第2の基板)20との間に液晶層50が挟持されている。液晶層50は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなるもので、当該透過型液晶装置100は、画素領域の周辺にHAN配向領域が存在する垂直配向モードの表示装置である。
【0024】
TFTアレイ基板10は、石英等の透光性材料からなる基板本体10Aとその液晶層50側表面に形成された画素電極9、配向膜40を主体として構成されており、対向基板20はガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面に形成された共通電極21、配向膜60と、共通電極21上に配置された凸部55と、を主体として構成されている。
【0025】
また、図3に示すように、TFTアレイ基板10において、基板本体10Aの液晶層50側表面には画素電極9が設けられ、各画素電極9に隣接する位置に、各画素電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用のTFT素子30が設けられている。
【0026】
TFT素子30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0027】
また、走査線3a上、ゲート絶縁膜2上を含む基板本体10A上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5、及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第2層間絶縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第2層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上及び第2層間絶縁膜4上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第3層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜4及び第3層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電極9に電気的に接続されている。
【0028】
また、本実施形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体層1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、さらにこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0029】
TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面において、TFT素子30が形成された領域には、TFTアレイ基板10を透過し、TFTアレイ基板10の図示下面(TFTアレイ基板10と空気との界面)で反射されて、液晶層50側に戻る戻り光が、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及び低濃度ソース、ドレイン領域1b、1cに入射することを防止するための第1遮光膜11aが設けられている。また、第1遮光膜11aとTFT素子30との間には、TFT素子30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁するための第1層間絶縁膜12が形成されている。さらに、図2に示したように、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続するように構成されている。
【0030】
また、図4に示すように、TFTアレイ基板10の液晶層50側、すなわち、画素電極9及び第3層間絶縁膜7上には配向膜40(第1の配向膜)が形成されている。配向膜40は、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御するものであって、ここでは図4に示すように、所定領域毎に異なる配向機能を具備した構成となっている。
【0031】
具体的には、配向膜40は、画素電極9が主に形成された領域である画素部Xに形成された垂直配向膜41と、画素部Xの境界を形成する周辺部Yに形成された水平配向膜42とから構成されている。さらに詳細には、水平配向膜42は、周辺部Y(画素電極9が形成されていない領域と画素電極9の周縁とからなる遮光領域(非表示領域))に対して形成されており、垂直配向膜41は、画素部X(水平配向膜42が形成された遮光領域によって囲まれる透過領域(表示領域))に対して形成されている。
【0032】
このような構成により、画素部Xの液晶は主に垂直配向膜41に基づいて基板10に対して垂直に配向する一方、周辺部Yの液晶は主に水平配向膜42に基づいて基板10に対してほぼ水平に一軸配向する。なお、水平配向膜42は所定の方位角に液晶を配向させる機能(プレチルト)を有しており、ポリイミド膜をラビング処理したものから構成されている。
【0033】
垂直配向膜41は、例えばODS(Octadencyltrimethoxysilane)溶液の蒸気をTFTアレイ基板10の画素電極9露出面に接触させることによって形成される。ODS分子の長鎖アルキル基は、無機系の反応基を有していることにより、水平配向膜42の有機材料とは結合することなく、無機材料であるITOからなる画素電極9上に選択的に結合する。したがって、垂直配向膜41は水平配向膜42間に露出した画素電極9上に選択的に形成されることになる。
【0034】
他方、対向基板20には、基板本体20Aの液晶層50側表面には、その略全面に渡って、ITO等からなる共通電極21が形成されている。
さらに、第2遮光膜23が形成された基板本体20Aの液晶層50側には、データ線6a、走査線3a、TFT素子30の形成領域に対向する領域、すなわち各周辺部Yに、入射光がTFT素子30の半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに侵入することを防止するための第2遮光膜23が設けられている。
【0035】
また、凸部55は、セルギャップの40%以下の高さで形成されている。凸部55の高さがセルギャップの40%を越えると、凸部55の側面に対して液晶分子が配向するようになり、図5(b)に示すように、凸部55の周囲に液晶分子が画素平面内において凸部を中心として放射状に配向してしまう。したがって、凸部55の高さはセルギャップの40%以下にすることが好ましい。
【0036】
共通電極21の液晶層50側には、共通電極21の露出面及び凸部55表面を覆うようにして配向膜60(第2の配向膜)が形成されている。配向膜60は、TFTアレイ基板10側に形成された配向膜40とは異なり、垂直配向膜のみで構成されている。具体的に、配向膜60(以下、垂直配向膜60と呼ぶこともある。)は、垂直配向膜41と同様に、オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)分子の長鎖アルキル基が、共通電極21や凸部55上に結合することによって形成されており、ラビング処理は施されていない。ODS分子の長鎖アルキル基は、無機材料であるITOからなる共通電極21や、レジストからなる凸部55に結合するため、共通電極21の露出面全体と、凸部55の表面全体に垂直配向膜60が形成されることになる。
【0037】
このような構成のTFTアレイ基板10と対向基板20とがシール材を介して貼り合わされており、両基板10,20間に誘電異方性が負の液晶(ネガ型液晶材料)からなる液晶層50を介在してなる液晶パネル58となっている。また、液晶パネル58の両側には一対の偏光板61,62がクロスニコル状態で設けられており、互いの偏光軸61a,62aが略直交している。また、偏光板62の下方には、不図示の光源ユニットが配置されている。このようにして本実施形態の透過型液晶装置100が構成されている。
【0038】
上述したように、対向基板20側に、水平配向膜42(第2遮光膜23)に対応して凸部55を設けることで、垂直配向領域よりもHAN配向領域におけるセルギャップの方が小さくなり、電圧無印加時において、HAN配向領域と隣接する垂直配向領域への影響が小さくなる。すなわち、図5(a)に示すように、液晶層50の厚さ方向において、水平配向膜42によって液晶分子が水平配向している領域が凸部55によって圧縮された状態となる。その結果、電圧無印加時に、水平配向膜42によって水平配向する液晶分子が、垂直配向膜41によって垂直配向する液晶分子の配向に影響を与えることを抑えることができる。よって、HAN配向領域において水平配向する液晶分子の影響を受けて垂直配向領域の液晶分子が傾く(配向不良となる)ことが防止されて、電圧無印加時において略垂直な配向を達成することができる。したがって、黒表示の時に、垂直配向領域(画素部)で光漏れが発生することがなく、液晶装置100の輝度及びコントラストを向上させることが可能となる。
【0039】
図6に、電圧無印加状態における液晶装置内での光透過率をグラフで示す。
ここでは、凸部なし、凸部あり(高さ:低)、凸部あり(高さ:高)の構成をなす3つの液晶装置により比較した。
このグラフによると、凸部が設けられていない液晶装置では、垂直配向領域(画素部X)内に光漏れが生じていることが分かる。また、画素部X内での光の漏れ具合は、凸部の高さが高くなるにつれて低下することが判明した。よって、上記条件の下、凸部を所定の高さで設けることにより、画素部X内の光漏れ防止に効果があることが明らかとなった。
【0040】
「液層装置の第2実施形態」
次に、本発明の第2実施形態における液晶装置について説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図7は本実施形態の液晶装置を模式的に示す断面図である。
【0041】
本発明の第2実施形態における液晶装置200は、液晶パネル58の両側に一対の1/4波長板81,82が配置され、一対の1/4波長板81,82の外側に一対の偏光板61,62が配置されている点において上記実施形態1と相違している。
【0042】
図7に示すように、液晶パネル58を挟持するようにして、TFTアレイ基板10及び対向基板20の外側に透過軸が互いに直交する直線偏光の光の間にほぼ4/1波長の光路差を生じさせる1/4波長板81,82がそれぞれ配置されている。また、1/4波長板81,82の両外側には、偏光板61,62がクロスニコル状態でそれぞれ配置されている。
【0043】
図8(a),(b)は、1/4波長板81,82及び偏光板61,62の光学軸の配置を示している。図8(b)に示すように、基板面に垂直に見ると、偏光板61の偏光軸61aと、偏光板62の偏光軸62aとが略直交している。また、1/4波長板81の光学軸(遅相軸)81aと、1/4波長板82の光学軸82aとが略直交している。偏光軸61aと光学軸81aとのなす角、偏光軸62aと光学軸82aとのなす角はともに約45°である。すなわち、偏光板61及び1/4波長板81、偏光板62及び1/4波長板82は、それぞれ円偏光板を構成している。
【0044】
(第1実施形態の透過シミュレーション)
以下に、第1実施形態における液晶装置100の透過シミュレーション結果について述べる。ここで、図9は、画素電極上における液晶分子のダイレクタ分布を示す斜視図である。また、図10に、電圧印加状態での一画素における光透過の様子を示す。
図4に示すように、光源から出射され、偏光板61、液晶パネル58をこの順で透過した光は、液晶パネル58によってλ/2の位相差が付与された直線偏光と同一の偏光状態で偏光板62から出射するが、電圧印加時における液晶分子の配向は、画素電極9(画素部X)の端部での電界と垂直配向膜60とで決められる方位角アンカリングの相関により、所定の配向方向とは異なり、方位角方向で回転してしまっている領域が一部に存在する(図9参照)。このような液晶分子の配向(方位角方向)は、偏光板61,62のいずれかの透過軸と一致したとき、この部分での透過率が図10に示すように低下してしまう。
【0045】
上記第1の実施形態における液晶装置100では、電圧無印加状態において、HAN配向領域で水平配向する液晶分子が、これに隣接する垂直配向領域内の液晶分子の配向に影響を与えることを防止することができた。しかしながら、電圧印加時に上記課題が生じることが分かった。以下に示す第2実施形態は、このような課題を解決するため、液晶分子の方位方向に起因する光透過率の低下を防止することを目的としたものである。
【0046】
(第2実施形態の透過シミュレーション)
以下に、第2実施形態における液晶装置の透過シミュレーション結果について述べる。ここで、図11に、電圧印加状態での一画素における光透過の様子を示す。なお、以下の説明において図7,8(a)を適宜参照する。
図7,8(a)に示すように、光源から出射され、偏光板61を透過した直線偏光は、1/4波長板81によってλ/4の位相差を付与されて円偏光に変換される。円偏光は、液晶パネル58において実質λ/2の位相差が付与されて逆回転の円偏光となり、さらに1/4波長板82によって入射した直線偏光に対して直交した直線偏光となり偏光板62を透過する。
【0047】
このように、液晶パネル58の両側に、1/4波長板81,82及び偏光板61,62を備えることにより、液晶分子の方位方向(方位角)によらず複屈折効果が得られるので、液晶装置200の輝度を大幅に向上させることができる。
【0048】
また、第1及び第2実施形態では、水平配向膜42に対して方位角を備えたプレチルトを具備させるために、ポリイミド膜にラビング処理を施したものを水平配向膜42としているが、例えばSiO2に代表される無機材料(無機酸化物)を斜方蒸着により形成した斜方蒸着膜や、同じく無機材料(無機酸化物)をイオンビームスパッタ(IBS)法により形成した無機配向膜を水平配向膜42とすることも可能である。
【0049】
以上、本発明の一実施形態としての液晶装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、且つ当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0050】
例えば、本実施形態では、TFT素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、TFD(Thin-Film Diode)素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置やパッシブマトリクス型液晶装置等にも適用可能である。また、本実施形態では、透過型液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型や半透過反射型の液晶装置にも適用可能である。このように、本発明は、いかなる構造の液晶装置にも適用することができる。
【0051】
また、カラーフィルタを備える液晶装置において、各着色材を区切るようにして設けられるブラックマスクに上記凸部55の機能を付与してもよい。
【0052】
[電子機器]
上記実施の形態の液晶装置を備えた電子機器の例について説明する。
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0053】
図12(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(b)において、符号600は情報処理装置、符号601はキーボードなどの入力部、符号603は情報処理装置本体、符号602は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0054】
図12(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(c)において、符号700は時計本体を示し、符号701は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0055】
このように図12に示す電子機器は、表示部に上述の本発明の一例たる液晶装置を適用したものであるので、例えばラビング処理を施したときのようなラビング筋が表示される不具合がなく、高コントラストで品質の高い表示を長期に渡って維持することが可能な表示装置となる。
【0056】
[投射型表示装置]
次に、上記実施形態の液晶装置を光変調手段として備えた投射型表示装置(プロジェクタ)の構成について、図13を参照して説明する。図13は、上記実施形態の液晶装置を光変調装置として用いた投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。図13において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は液晶光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投写レンズを示す。
【0057】
光源810はメタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー813は、光源810からの光束のうちの赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた赤色光用液晶光変調装置822に入射される。
【0058】
一方、ダイクロイックミラー813で反射された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー814によって反射され、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた緑色光用液晶光変調装置823に入射される。なお、青色光は第2のダイクロイックミラー814も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ818、リレーレンズ819、出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられ、これを介して青色光が上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0059】
各光変調装置により変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム825に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0060】
上記構造を有する投射型表示装置は、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えたものであるので、例えばラビング処理を施したときのようなラビング筋が表示される不具合がなく、高コントラストで品質の高い表示を長期に渡って維持することが可能な表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態の液晶装置におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図。
【図2】図1の液晶装置についてTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図。
【図3】図1の液晶装置についてその素子構造を示す断面図。
【図4】図1の液晶装置についてその画素部と周辺部の構成を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態の液晶装置において電圧無印加時における液晶の配向状態を模式的に示す説明図。
【図6】電圧無印加状態における液晶装置内(画素周辺部)での光透過率を示すグラフ。
【図7】第2実施形態の液晶装置を模式的に示す断面図。
【図8】1/4波長板及び偏光板の光学軸の配置を示す図。
【図9】本圧発明の液晶表示素子において、1画素だけに電圧を印加したときの、該画素電極上における液晶分子のダイレクタ分布を示す斜視図(シミュレーション)。
【図10】1/4板を液晶表示素子の両側に挿入しない場合の電圧印加状態での一画素における光の透過状態を示す図。
【図11】1/4板を液晶表示素子の両側に挿入した場合の電圧印加状態での一画素における光の透過状態を示す図。
【図12】本発明に係る電子機器について幾つかの例を示す斜視図。
【図13】本発明に係る投射型表示装置についての一例を示す図。
【図14】従来の液晶装置において電圧無印加時における液晶の配向状態を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0062】
100…液晶装置、9…画素電極、10…TFTアレイ基板(第1の基板)、20…対向基板(第2の基板)、50…液晶層、40…配向膜(第1の配向膜)、60…垂直配向膜(第2の配向膜)、42…水平配向膜、55…凸部、55A…先端面、X…画素部(垂直配向領域)、Y…周辺部(HAN配向領域)
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置を用いて映像を大画面に表示する装置として液晶プロジェクタがある。プロジェクタにおいては高輝度、高コントラストが要求されており、その点、垂直配向方式の液晶装置は高コントラスト表示が可能で、近年、プロジェクタ用の液晶装置の液晶配向方式として採用されつつある。
【0003】
しかし、垂直配向方式では液晶が基板表面に対して垂直に立っており、電圧印加時に倒れる方位方向での相互作用が弱い。しかも、電圧を印加すると、画素電極端から基板面に平行な方向に、横方向の電界が発生する。この横方向の電界に起因して液晶が様々な方向に倒れてしまい、ディスクリネーションを生じてしまっていた。ディスクリネーションが生じると、明暗のムラやコントラストの低下、残像等の表示欠陥が視認されてしまう。
【0004】
垂直配向の液晶表示素子において、電圧印加時の液晶の配向を一軸に揃えるために以下のような方法が開示されてきている。例えば、特許文献1の液晶装置では、絵素領域内に垂直配向規制領域を、絵素領域外に配向規制領域を持たせることで絵素内部の液晶分子を電圧印加時に一方向に配向させる方法を提案している。これと同様に特許文献2の液晶装置では、無機配向膜を斜方蒸着法によって形成し、その厚さを表示領域および非表示領域で変化させることで無機配向膜のプレチルト角を制御し、表示領域の垂直配向している液晶が電圧印加に伴い、一方向に揃って倒れるとしている。
【特許文献1】特開2001−343651号公報
【特許文献2】特開2005−107373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような方法において、例えば図14に示すように、画素電極9の周囲にHAN(Hybrid Alignment Nematic)配向領域が存在する垂直配向方式の液晶装置では、電圧無印加状態のとき、HAN配向領域において水平配向する液晶分子の影響で垂直配向領域(画素電極9上)の液晶分子が傾いてしまい、黒表示時に光漏れが生じてコントラストが低くなる場合がある。
そこで、本発明は、電圧無印加時において、HAN配向領域に隣接する垂直配向領域への影響を抑えて液晶分子の配向不良を防止し、光漏れのない黒表示を実現するとともに高コントラストの液晶装置を提供することを目的としている。また、当該液晶装置を備えた電子機器について提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶装置は、上記課題を解決するために、第1の基板と第2の基板との間に、初期配向状態が垂直配向を呈し且つ誘電異方性が負の液晶からなる液晶層が挟持されてなる液晶装置であって、第1の基板上に、複数の画素電極と、該画素電極上に形成された垂直配向膜と、画素電極上及び第1の基板上で画素電極が存在しない領域に形成された水平配向膜と、からなる第1の配向膜と、を有し、第2の基板上に、電極と、水平配向膜に対面して設けられる凸部と、電極及び凸部上に形成された垂直配向膜からなる第2の配向膜と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の液晶装置では、表示を行う画素電極上の領域(画素部)において液晶が垂直配向を呈し、画素電極の周辺の領域(周辺部)において、液晶がHAN(Hybrid Alignment Nematic)配向を呈する。
本発明によれば、第2の基板側において、HAN配向領域に凸部を設けることにより、凸部を設けない場合よりもHAN配向領域の液晶層の厚さが薄くなるため、HAN配向領域の液晶層が隣接する垂直配向している液晶分子に対しての影響を抑えることができる。すなわち、垂直配向領域(画素部)とHAN配向領域(周辺部)との境界部分における液晶の配向不良を低減することにより電圧無印加時に垂直配向領域(画素部)内での光漏れが殆どない黒表示が可能となる。これにより垂直配向領域及びHAN配向領域を有する液晶装置において、黒が引き締まった高コントラストの表示を実現することができる。
【0008】
また、該凸部は液晶層の厚さの40%より小さいことが好ましい。
このような構成によれば、凸部の高さが液晶層の厚さの40%以上である場合、凸部の側壁の形状に依存して液晶分子が配向してしまう傾向があるため、本発明では凸部の高さをセルギャップの40%より小さくしておく必要がある。
【0009】
また、凸部の先端面の幅が、水平配向膜の幅と一致しているか、あるいは水平配向膜の幅よりも広いことが好ましい。
このような構成によれば、HAN配向領域全体の液晶層の厚みを薄くすることができ、HAN配向領域で水平配向する液晶分子が、隣接する垂直配向領域の液晶分子の配向に影響を与えることを抑えることができる。
【0010】
また、凸部は、前記画素電極の周縁部に形成される遮光領域内に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、黒表示時における光漏れをより確実に低減することができる。
【0011】
また、凸部は、レジストで形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、第2の基板に設けられる遮光膜のパターン形成に用いたレジストマスクを凸部として用いることができ、簡単且つ低コストで形成することができる。
【0012】
また、第1及び第2の基板の外側に配置された一対の1/4波長板と、一対の1/4波長板の外側に配置された偏光板と、を有することが好ましい。
このような構成によれば、液晶分子の方位方向(方位角)によらず複屈折効果が得られるので、液晶装置の輝度を大幅に向上させることができる。
【0013】
本発明は、上記した液晶装置を備えたことを特徴とする。
また、本発明の液晶装置は、例えば液晶テレビや携帯電話等の電子機器の表示画面、パソコンのモニタ、液晶プロジェクタの光変調装置として用いることができる。このような用途に用いることで表示特性に優れた電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0015】
「液晶装置の第1実施形態」
以下に示す本実施形態の液晶装置は、スイッチング素子としてTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の透過型液晶装置である。
【0016】
図1は本実施形態の透過型液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図である。図2はデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図である。図3は本実施形態の透過型液晶装置について素子領域の断面図であって、図2のA−A’線断面図である。また、図4は本実施形態の透過型液晶装置について複数の画素を模式的に示す断面図である。なお、図3及び図4においては、図示上側が光入射側、図示下側が視認側(観察者側)である場合について図示している。
【0017】
本実施形態の透過型液晶装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極9と当該画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT素子30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。
【0018】
また、走査線3aがTFT素子30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT素子30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0019】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0020】
次に、図2に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の平面構造について説明する。図2に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と略す)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(点線部9Aにより輪郭を示す)が複数、マトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。本実施形態において、各画素電極9及び各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
本実施形態では、特に、画素のうち表示光が透過する画素電極9上の領域を「画素部」、画素部の周辺の遮光された領域を「周辺部」と規定して区別する。
【0021】
データ線6aは、TFT素子30を構成する例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、後述のチャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0022】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0023】
次に、図3及び図4に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の断面構造について説明する。なお、図4ではスイッチング素子等の一部の構成要素を図面の視認性を考慮して省略してある。図3及び図4に示すように、本実施形態の透過型液晶装置100においては、TFTアレイ基板(第1の基板)10と、これに対向配置される対向基板(第2の基板)20との間に液晶層50が挟持されている。液晶層50は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなるもので、当該透過型液晶装置100は、画素領域の周辺にHAN配向領域が存在する垂直配向モードの表示装置である。
【0024】
TFTアレイ基板10は、石英等の透光性材料からなる基板本体10Aとその液晶層50側表面に形成された画素電極9、配向膜40を主体として構成されており、対向基板20はガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面に形成された共通電極21、配向膜60と、共通電極21上に配置された凸部55と、を主体として構成されている。
【0025】
また、図3に示すように、TFTアレイ基板10において、基板本体10Aの液晶層50側表面には画素電極9が設けられ、各画素電極9に隣接する位置に、各画素電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用のTFT素子30が設けられている。
【0026】
TFT素子30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0027】
また、走査線3a上、ゲート絶縁膜2上を含む基板本体10A上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5、及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第2層間絶縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第2層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上及び第2層間絶縁膜4上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第3層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜4及び第3層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電極9に電気的に接続されている。
【0028】
また、本実施形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体層1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、さらにこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0029】
TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面において、TFT素子30が形成された領域には、TFTアレイ基板10を透過し、TFTアレイ基板10の図示下面(TFTアレイ基板10と空気との界面)で反射されて、液晶層50側に戻る戻り光が、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及び低濃度ソース、ドレイン領域1b、1cに入射することを防止するための第1遮光膜11aが設けられている。また、第1遮光膜11aとTFT素子30との間には、TFT素子30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁するための第1層間絶縁膜12が形成されている。さらに、図2に示したように、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続するように構成されている。
【0030】
また、図4に示すように、TFTアレイ基板10の液晶層50側、すなわち、画素電極9及び第3層間絶縁膜7上には配向膜40(第1の配向膜)が形成されている。配向膜40は、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御するものであって、ここでは図4に示すように、所定領域毎に異なる配向機能を具備した構成となっている。
【0031】
具体的には、配向膜40は、画素電極9が主に形成された領域である画素部Xに形成された垂直配向膜41と、画素部Xの境界を形成する周辺部Yに形成された水平配向膜42とから構成されている。さらに詳細には、水平配向膜42は、周辺部Y(画素電極9が形成されていない領域と画素電極9の周縁とからなる遮光領域(非表示領域))に対して形成されており、垂直配向膜41は、画素部X(水平配向膜42が形成された遮光領域によって囲まれる透過領域(表示領域))に対して形成されている。
【0032】
このような構成により、画素部Xの液晶は主に垂直配向膜41に基づいて基板10に対して垂直に配向する一方、周辺部Yの液晶は主に水平配向膜42に基づいて基板10に対してほぼ水平に一軸配向する。なお、水平配向膜42は所定の方位角に液晶を配向させる機能(プレチルト)を有しており、ポリイミド膜をラビング処理したものから構成されている。
【0033】
垂直配向膜41は、例えばODS(Octadencyltrimethoxysilane)溶液の蒸気をTFTアレイ基板10の画素電極9露出面に接触させることによって形成される。ODS分子の長鎖アルキル基は、無機系の反応基を有していることにより、水平配向膜42の有機材料とは結合することなく、無機材料であるITOからなる画素電極9上に選択的に結合する。したがって、垂直配向膜41は水平配向膜42間に露出した画素電極9上に選択的に形成されることになる。
【0034】
他方、対向基板20には、基板本体20Aの液晶層50側表面には、その略全面に渡って、ITO等からなる共通電極21が形成されている。
さらに、第2遮光膜23が形成された基板本体20Aの液晶層50側には、データ線6a、走査線3a、TFT素子30の形成領域に対向する領域、すなわち各周辺部Yに、入射光がTFT素子30の半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに侵入することを防止するための第2遮光膜23が設けられている。
【0035】
また、凸部55は、セルギャップの40%以下の高さで形成されている。凸部55の高さがセルギャップの40%を越えると、凸部55の側面に対して液晶分子が配向するようになり、図5(b)に示すように、凸部55の周囲に液晶分子が画素平面内において凸部を中心として放射状に配向してしまう。したがって、凸部55の高さはセルギャップの40%以下にすることが好ましい。
【0036】
共通電極21の液晶層50側には、共通電極21の露出面及び凸部55表面を覆うようにして配向膜60(第2の配向膜)が形成されている。配向膜60は、TFTアレイ基板10側に形成された配向膜40とは異なり、垂直配向膜のみで構成されている。具体的に、配向膜60(以下、垂直配向膜60と呼ぶこともある。)は、垂直配向膜41と同様に、オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)分子の長鎖アルキル基が、共通電極21や凸部55上に結合することによって形成されており、ラビング処理は施されていない。ODS分子の長鎖アルキル基は、無機材料であるITOからなる共通電極21や、レジストからなる凸部55に結合するため、共通電極21の露出面全体と、凸部55の表面全体に垂直配向膜60が形成されることになる。
【0037】
このような構成のTFTアレイ基板10と対向基板20とがシール材を介して貼り合わされており、両基板10,20間に誘電異方性が負の液晶(ネガ型液晶材料)からなる液晶層50を介在してなる液晶パネル58となっている。また、液晶パネル58の両側には一対の偏光板61,62がクロスニコル状態で設けられており、互いの偏光軸61a,62aが略直交している。また、偏光板62の下方には、不図示の光源ユニットが配置されている。このようにして本実施形態の透過型液晶装置100が構成されている。
【0038】
上述したように、対向基板20側に、水平配向膜42(第2遮光膜23)に対応して凸部55を設けることで、垂直配向領域よりもHAN配向領域におけるセルギャップの方が小さくなり、電圧無印加時において、HAN配向領域と隣接する垂直配向領域への影響が小さくなる。すなわち、図5(a)に示すように、液晶層50の厚さ方向において、水平配向膜42によって液晶分子が水平配向している領域が凸部55によって圧縮された状態となる。その結果、電圧無印加時に、水平配向膜42によって水平配向する液晶分子が、垂直配向膜41によって垂直配向する液晶分子の配向に影響を与えることを抑えることができる。よって、HAN配向領域において水平配向する液晶分子の影響を受けて垂直配向領域の液晶分子が傾く(配向不良となる)ことが防止されて、電圧無印加時において略垂直な配向を達成することができる。したがって、黒表示の時に、垂直配向領域(画素部)で光漏れが発生することがなく、液晶装置100の輝度及びコントラストを向上させることが可能となる。
【0039】
図6に、電圧無印加状態における液晶装置内での光透過率をグラフで示す。
ここでは、凸部なし、凸部あり(高さ:低)、凸部あり(高さ:高)の構成をなす3つの液晶装置により比較した。
このグラフによると、凸部が設けられていない液晶装置では、垂直配向領域(画素部X)内に光漏れが生じていることが分かる。また、画素部X内での光の漏れ具合は、凸部の高さが高くなるにつれて低下することが判明した。よって、上記条件の下、凸部を所定の高さで設けることにより、画素部X内の光漏れ防止に効果があることが明らかとなった。
【0040】
「液層装置の第2実施形態」
次に、本発明の第2実施形態における液晶装置について説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図7は本実施形態の液晶装置を模式的に示す断面図である。
【0041】
本発明の第2実施形態における液晶装置200は、液晶パネル58の両側に一対の1/4波長板81,82が配置され、一対の1/4波長板81,82の外側に一対の偏光板61,62が配置されている点において上記実施形態1と相違している。
【0042】
図7に示すように、液晶パネル58を挟持するようにして、TFTアレイ基板10及び対向基板20の外側に透過軸が互いに直交する直線偏光の光の間にほぼ4/1波長の光路差を生じさせる1/4波長板81,82がそれぞれ配置されている。また、1/4波長板81,82の両外側には、偏光板61,62がクロスニコル状態でそれぞれ配置されている。
【0043】
図8(a),(b)は、1/4波長板81,82及び偏光板61,62の光学軸の配置を示している。図8(b)に示すように、基板面に垂直に見ると、偏光板61の偏光軸61aと、偏光板62の偏光軸62aとが略直交している。また、1/4波長板81の光学軸(遅相軸)81aと、1/4波長板82の光学軸82aとが略直交している。偏光軸61aと光学軸81aとのなす角、偏光軸62aと光学軸82aとのなす角はともに約45°である。すなわち、偏光板61及び1/4波長板81、偏光板62及び1/4波長板82は、それぞれ円偏光板を構成している。
【0044】
(第1実施形態の透過シミュレーション)
以下に、第1実施形態における液晶装置100の透過シミュレーション結果について述べる。ここで、図9は、画素電極上における液晶分子のダイレクタ分布を示す斜視図である。また、図10に、電圧印加状態での一画素における光透過の様子を示す。
図4に示すように、光源から出射され、偏光板61、液晶パネル58をこの順で透過した光は、液晶パネル58によってλ/2の位相差が付与された直線偏光と同一の偏光状態で偏光板62から出射するが、電圧印加時における液晶分子の配向は、画素電極9(画素部X)の端部での電界と垂直配向膜60とで決められる方位角アンカリングの相関により、所定の配向方向とは異なり、方位角方向で回転してしまっている領域が一部に存在する(図9参照)。このような液晶分子の配向(方位角方向)は、偏光板61,62のいずれかの透過軸と一致したとき、この部分での透過率が図10に示すように低下してしまう。
【0045】
上記第1の実施形態における液晶装置100では、電圧無印加状態において、HAN配向領域で水平配向する液晶分子が、これに隣接する垂直配向領域内の液晶分子の配向に影響を与えることを防止することができた。しかしながら、電圧印加時に上記課題が生じることが分かった。以下に示す第2実施形態は、このような課題を解決するため、液晶分子の方位方向に起因する光透過率の低下を防止することを目的としたものである。
【0046】
(第2実施形態の透過シミュレーション)
以下に、第2実施形態における液晶装置の透過シミュレーション結果について述べる。ここで、図11に、電圧印加状態での一画素における光透過の様子を示す。なお、以下の説明において図7,8(a)を適宜参照する。
図7,8(a)に示すように、光源から出射され、偏光板61を透過した直線偏光は、1/4波長板81によってλ/4の位相差を付与されて円偏光に変換される。円偏光は、液晶パネル58において実質λ/2の位相差が付与されて逆回転の円偏光となり、さらに1/4波長板82によって入射した直線偏光に対して直交した直線偏光となり偏光板62を透過する。
【0047】
このように、液晶パネル58の両側に、1/4波長板81,82及び偏光板61,62を備えることにより、液晶分子の方位方向(方位角)によらず複屈折効果が得られるので、液晶装置200の輝度を大幅に向上させることができる。
【0048】
また、第1及び第2実施形態では、水平配向膜42に対して方位角を備えたプレチルトを具備させるために、ポリイミド膜にラビング処理を施したものを水平配向膜42としているが、例えばSiO2に代表される無機材料(無機酸化物)を斜方蒸着により形成した斜方蒸着膜や、同じく無機材料(無機酸化物)をイオンビームスパッタ(IBS)法により形成した無機配向膜を水平配向膜42とすることも可能である。
【0049】
以上、本発明の一実施形態としての液晶装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、且つ当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0050】
例えば、本実施形態では、TFT素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、TFD(Thin-Film Diode)素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置やパッシブマトリクス型液晶装置等にも適用可能である。また、本実施形態では、透過型液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型や半透過反射型の液晶装置にも適用可能である。このように、本発明は、いかなる構造の液晶装置にも適用することができる。
【0051】
また、カラーフィルタを備える液晶装置において、各着色材を区切るようにして設けられるブラックマスクに上記凸部55の機能を付与してもよい。
【0052】
[電子機器]
上記実施の形態の液晶装置を備えた電子機器の例について説明する。
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0053】
図12(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(b)において、符号600は情報処理装置、符号601はキーボードなどの入力部、符号603は情報処理装置本体、符号602は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0054】
図12(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(c)において、符号700は時計本体を示し、符号701は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0055】
このように図12に示す電子機器は、表示部に上述の本発明の一例たる液晶装置を適用したものであるので、例えばラビング処理を施したときのようなラビング筋が表示される不具合がなく、高コントラストで品質の高い表示を長期に渡って維持することが可能な表示装置となる。
【0056】
[投射型表示装置]
次に、上記実施形態の液晶装置を光変調手段として備えた投射型表示装置(プロジェクタ)の構成について、図13を参照して説明する。図13は、上記実施形態の液晶装置を光変調装置として用いた投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。図13において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は液晶光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投写レンズを示す。
【0057】
光源810はメタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー813は、光源810からの光束のうちの赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた赤色光用液晶光変調装置822に入射される。
【0058】
一方、ダイクロイックミラー813で反射された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー814によって反射され、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた緑色光用液晶光変調装置823に入射される。なお、青色光は第2のダイクロイックミラー814も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ818、リレーレンズ819、出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられ、これを介して青色光が上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0059】
各光変調装置により変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム825に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0060】
上記構造を有する投射型表示装置は、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えたものであるので、例えばラビング処理を施したときのようなラビング筋が表示される不具合がなく、高コントラストで品質の高い表示を長期に渡って維持することが可能な表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態の液晶装置におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図。
【図2】図1の液晶装置についてTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図。
【図3】図1の液晶装置についてその素子構造を示す断面図。
【図4】図1の液晶装置についてその画素部と周辺部の構成を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態の液晶装置において電圧無印加時における液晶の配向状態を模式的に示す説明図。
【図6】電圧無印加状態における液晶装置内(画素周辺部)での光透過率を示すグラフ。
【図7】第2実施形態の液晶装置を模式的に示す断面図。
【図8】1/4波長板及び偏光板の光学軸の配置を示す図。
【図9】本圧発明の液晶表示素子において、1画素だけに電圧を印加したときの、該画素電極上における液晶分子のダイレクタ分布を示す斜視図(シミュレーション)。
【図10】1/4板を液晶表示素子の両側に挿入しない場合の電圧印加状態での一画素における光の透過状態を示す図。
【図11】1/4板を液晶表示素子の両側に挿入した場合の電圧印加状態での一画素における光の透過状態を示す図。
【図12】本発明に係る電子機器について幾つかの例を示す斜視図。
【図13】本発明に係る投射型表示装置についての一例を示す図。
【図14】従来の液晶装置において電圧無印加時における液晶の配向状態を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0062】
100…液晶装置、9…画素電極、10…TFTアレイ基板(第1の基板)、20…対向基板(第2の基板)、50…液晶層、40…配向膜(第1の配向膜)、60…垂直配向膜(第2の配向膜)、42…水平配向膜、55…凸部、55A…先端面、X…画素部(垂直配向領域)、Y…周辺部(HAN配向領域)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板との間に、初期配向状態が垂直配向を呈し且つ誘電異方性が負の液晶からなる液晶層が挟持されてなる液晶装置であって、
前記第1の基板上に、複数の画素電極と、
該画素電極上に形成された垂直配向膜と、前記画素電極上及び前記第1の基板上で前記画素電極が存在しない領域に形成された水平配向膜と、からなる第1の配向膜と、を有し、
前記第2の基板上に、
電極と、
前記水平配向膜に対面して設けられる凸部と、
前記電極及び前記凸部上に形成された垂直配向膜からなる第2の配向膜と、を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記凸部の高さは前記画素電極上での液晶層の厚さの40%以内であることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
前記凸部の先端面の幅が、前記水平配向膜の幅と一致しているか、あるいは前記水平配向膜の幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記画素電極の周縁部に形成される遮光領域内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶装置。
【請求項5】
前記凸部は、レジストで形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の基板の外側に配置された一対の1/4波長板と、
前記一対の1/4波長板の外側に配置された偏光板と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液晶装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1の基板と第2の基板との間に、初期配向状態が垂直配向を呈し且つ誘電異方性が負の液晶からなる液晶層が挟持されてなる液晶装置であって、
前記第1の基板上に、複数の画素電極と、
該画素電極上に形成された垂直配向膜と、前記画素電極上及び前記第1の基板上で前記画素電極が存在しない領域に形成された水平配向膜と、からなる第1の配向膜と、を有し、
前記第2の基板上に、
電極と、
前記水平配向膜に対面して設けられる凸部と、
前記電極及び前記凸部上に形成された垂直配向膜からなる第2の配向膜と、を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記凸部の高さは前記画素電極上での液晶層の厚さの40%以内であることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
前記凸部の先端面の幅が、前記水平配向膜の幅と一致しているか、あるいは前記水平配向膜の幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記画素電極の周縁部に形成される遮光領域内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶装置。
【請求項5】
前記凸部は、レジストで形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の基板の外側に配置された一対の1/4波長板と、
前記一対の1/4波長板の外側に配置された偏光板と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液晶装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−69781(P2009−69781A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241019(P2007−241019)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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