説明

液晶装置、液晶装置の製造方法及び電子機器

【課題】コモン電位の長期通電による不安定さを改善し、長期にわたって良好な表示品質を維持することのできる液晶装置を提供する。
【解決手段】基板間導通材206が配置される部分の配向膜16,22を除去し、基板間導通材206と対向電極21及び引き廻し配線209を直接接触させる。また、導電粒子208aが配置される部分の配向膜16を除去し、導電粒子208aと外部回路実装端子202及びフレキシブル回路基板207の端子207aとを直接接触させる。さらに、画像表示領域内に配置される配向膜16と配向膜22の電荷捕獲サイトの密度を等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、液晶装置の製造方法及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶装置の配向膜として、ポリイミド配向膜が知られている。この配向膜は有機物であるため、液晶プロジェクタのように高出力光源を備えた機器に用いた場合に、光源から照射される強い光や熱によって劣化される虞がある。そこで、耐光性および耐熱性に優れた無機配向膜の採用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−77901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無機配向膜は、例えば、酸化珪素膜を基板に対して斜め方向から蒸着することにより形成される(斜方蒸着法)。このような無機配向膜は、表層部に小さな間隙を多く形成した構造となるため、画素部の電極から発生するイオンが間隙の内部に吸着し、長期の駆動を行なった場合に、液晶のコモン電位が変化して、基板間に正確な電圧を印加できなくなるという問題があった。そこで、特許文献1では、無機配向膜の膜厚を上下基板で変えることによって電気的な対称性を制御する方法や、無機配向膜の下にCVD等で形成した緻密な膜を配置し、電極から溶出するイオン成分を遮断する方法等が開示されている。しかしながら、本発明者の検討によれば、無機配向膜の膜厚を変えるだけでは電気的な対称性は制御できず、また、電極からのイオン成分を完全に遮断してもコモン電位の変動が解消されないことが明らかになっている。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、コモン電位の長期通電による不安定さを改善し、長期にわたって良好な表示品質を維持することのできる液晶装置、液晶装置の製造方法及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の液晶装置は、互いに対向配置された第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板上に実装された電子部品とを有し、前記第1基板の前記液晶層側の面には、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続された第1接続端子と、第2接続端子と、前記第2接続端子と電気的に接続された導電部と、前記画素電極、前記第1接続端子、前記第2接続端子及び前記導電部を覆う無機材料からなる第1配向膜とが設けられ、前記第2基板の前記液晶層側の面には、対向電極と、前記対向電極を覆う無機材料からなる第2配向膜とが設けられ、前記第1基板と前記第2基板との間には、前記第1基板と前記第2基板との間に挟まれて前記対向電極と前記導電部とを電気的に接続する第1導電粒子が設けられ、前記第1配向膜及び前記第2配向膜の前記第1導電粒子と接触する部分は除去されており、前記配向膜が除去された部分を介して前記第1導電粒子と前記対向電極及び前記導電部とが直接接触しており、前記第1基板と前記電子部品との間には、前記第1基板と前記電子部品との間に挟まれて前記第1接続端子及び前記第2接続端子と前記電子部品の端子とを電気的に接続する第2導電粒子が設けられ、前記第1配向膜の前記第2導電粒子と接触する部分は除去されており、前記配向膜が除去された部分を介して前記第2導電粒子と前記第1接続端子及び前記第2接続端子とが直接接触しており、前記第1配向膜に含まれる前記画素電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度と、前記第2配向膜に含まれる前記対向電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度とが互いに等しいことを特徴とする。
前述のように、上下基板間の電気的な偏りは、配向膜へのイオン吸着のみを抑制しただけでは解消できない。そこで、本発明者は、その原因として、回路上に存在する電荷(キャリア)の捕獲サイトに着目した。すなわち、酸化珪素等からなる無機配向膜は、酸素欠損やシリコン欠損を多く含むため、それらが電荷の捕獲サイトとなって可変抵抗を形成し、長期通電を行なった場合に、上下基板で電位の偏りが生じると考えたのである。この場合、回路上に存在する材料起因の捕獲サイトを制御することで、コモン電位の変動を抑えることができる。そこで、本発明では、電荷の捕獲サイトとなる接続端子部の配向膜と基板間導通部の配向膜を除去し、画素部以外の配向膜の影響を排除することとした。もともと配向膜を形成しない状態では電位の偏りは存在しないので、このような部分の配向膜を全て除去してしまえば、少なくとも第1接続端子から画素電極までの間、及び第2接続端子から対向電極までの間の電位については、完全な対称性を得ることが可能になる。一方、画素部の配向膜については、除去してしまうことができないので、例えば、配向膜形成時の配向膜の密度、組成、膜厚のいずれかを制御することにより、第1配向膜と第2配向膜の捕獲サイトの密度とが互いに等しくなるようにした。捕獲サイトの密度が等しければ、捕獲される電荷の量も等しくなるため、仮に電荷の捕獲が生じたとしても、上下基板で電位に偏りが生じることはないからである。このように、本発明においては、第1接続端子から第1配向膜までの電位と、第2接続端子から第2配向膜までの電位とが常に等しくなるため、長期の駆動を行なってもコモン電位に変動が生じず、したがって焼き付き等の生じない信頼性の高い映像表示を実現することができる。
【0006】
本発明においては、前記第1配向膜と前記画素電極との間、及び前記第2配向膜と前記対向電極との間に、それぞれ無機材料の下地膜が設けられていることが望ましい。
無機配向膜である第1配向膜及び第2配向膜は、表面に多数の細孔が形成された多孔質な膜である。このため、液晶を駆動中に画素電極や対向電極から発生するイオンが上記細孔内に吸着し、配向膜自体の比抵抗を低下させる虞がある。そこで、本発明では、配向膜の下に緻密な下地膜を形成し、電極から溶出されるイオンを遮断している。このような構成によれば、イオンの吸着によるコモン電位の変動や焼き付き等の表示不良が抑制され、より信頼性の高い映像表示が実現される。また、下地膜と配向膜とを同じ材料で形成した場合には、配向膜自体の膜質も良好なものとなり、基板との密着性も向上する。
【0007】
本発明の液晶装置の製造方法は、互いに対向配置された第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板上に実装された電子部品とを有する液晶装置の製造方法であって、前記第1基板の前記液晶層側の面に、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続された第1接続端子と、第2接続端子と、前記第2接続端子と電気的に接続された導電部と、前記画素電極、前記第1接続端子、前記第2接続端子及び前記導電部を覆う無機材料からなる第1配向膜とを形成する工程と、前記第2基板の前記液晶層側の面に、対向電極と、前記対向電極を覆う無機材料からなる第2配向膜とを形成する工程と、前記対向電極と前記導電部とが対向する部分の前記第1配向膜及び前記第2配向膜を除去し、前記配向膜が除去された部分において前記第1基板と前記第2基板との間に第1導電粒子を挟むことによって前記対向電極と前記第1導電部とを電気的に接続する工程と、前記第1接続端子及び前記第2接続端子と前記電子部品の端子とが対向する部分の前記第1配向膜を除去し、前記配向膜が除去された部分において前記第1基板と前記電子部品との間に第2導電粒子を挟むことによって前記第1接続端子及び前記第2接続端子と前記電子部品の端子とを電気的に接続する工程と、を有し、前記第1配向膜及び前記第2配向膜の形成工程においては、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を成膜するときの配向膜の密度、組成、膜厚のいずれかを制御することにより、前記第1配向膜に含まれる前記画素電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度と、前記第2配向膜に含まれる前記対向電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度とを互いに等しくすることを特徴とする。
この方法によれば、電荷の捕獲サイトとなる接続端子部の配向膜と基板間導通部の配向膜を除去し、画素部の配向膜については、第1配向膜と第2配向膜の捕獲サイトの密度を互いに等しくしているため、第1接続端子から第1配向膜までの電位と、第2接続端子から第2配向膜までの電位とが常に等しくなり、長期の駆動を行なってもコモン電位が変動しない信頼性の高い液晶装置を実現できる。
【0008】
本発明においては、前記第1導電粒子が配置される部分の配向膜を除去する工程は、前記第1基板と前記第2基板との間に前記第1導電粒子を挟んで加圧し、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を前記第1導電粒子で貫通させることにより行なわれることが望ましい。
斜方蒸着法等により形成された配向膜は、表面に多数の細孔が形成されるため、レジスト等を塗布してこれを除去する場合に、レジスト残渣等が細孔内に残留し、十分に除去することができなくなる。このような不純物は、特にイオン性不純物の場合に、液晶の配向特性を阻害し、焼き付き等の原因となる。これに対して、本発明では、配向膜をパターニングする必要がないので、このような不純物の影響を考慮する必要がない。また、パターニングの工程がないので製造も容易になる。
【0009】
本発明においては、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成するに際し、前記第1配向膜と前記画素電極との間、及び前記第2配向膜と前記対向電極との間に、それぞれ無機材料の下地膜を形成することが望ましい。
この方法によれば、配向膜の下に形成した緻密な下地膜によって、画素電極等から溶出されるイオンを遮断でき、長期間の使用によっても焼き付き等の生じない信頼性の高い映像表示が実現される。
【0010】
本発明においては、前記第1導電粒子が配置される部分の配向膜を除去する工程は、前記第1導電粒子が配置される部分に形成された前記下地膜を除去した後、前記下地膜の表面に前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成し、さらに前記第1基板と前記第2基板との間に前記第1導電粒子を挟んで加圧し、前記下地膜が除去された部分に配置された前記第1配向膜及び前記第2配向膜を前記第1導電粒子で貫通させることにより行なわれることが望ましい。
配向膜の下に下地膜を形成した場合、下地膜自体は緻密な膜であるため、これを導電粒子によって貫通させることは容易ではない。したがって、このような場合には、最初に下地膜をエッチング等で除去し、配向膜は基板圧着時の加圧力によって導電粒子によって貫通させることが望ましい。この方法によれば、確実に導電粒子部分の配向膜を除去(貫通)することができる。なお、下地膜は緻密な膜であり、配向膜のような細孔が形成されていないので、レジスト等を用いた場合でも、残渣等が残留する虞がなく、これによって配向が乱されることもない。
【0011】
本発明においては、前記下地膜を除去する工程は、前記下地膜よりも基板側に設けられた絶縁膜を除去する工程と同時に行なわれることが望ましい。
TFT等の製造プロセスにおいては、ソース配線と導電部をAl等の金属材料で形成し、その上にTiN等の表面保護層、SiO等の層間絶縁膜等といった複数の絶縁膜を形成し、更にその上にITO等の画素電極、SiO等の配向膜を形成する。したがって、導電部を表面に露出させるためには、その上層側の表面保護層及び層間絶縁膜等を除去する工程が必要となる。本発明の場合、下地膜は無機膜であるため、同じ無機膜である層間絶縁膜等と同時にエッチングすることが可能である。これらを同時にエッチングすれば、工程数が増えることがなく、製造も容易になる。
【0012】
本発明においては、前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜厚は100nm以下であることが望ましい。
この程度の膜厚であれば、通常の加圧力によって容易に貫通させることができ、第1導電粒子が破壊される虞もない。
【0013】
本発明においては、前記第2導電粒子が配置される部分の配向膜を除去する工程は、前記第1基板と前記第2基板とをシール材を介して貼り合わせた後、前記第2基板をマスクとして、前記第1接続端子及び前記第2接続端子の上に形成された前記第1配向膜を除去することにより行なわれることが望ましい。
第1接続端子及び第2接続端子は、電子部品と接続するためにパネル外部に露出されるため、その表面に形成された配向膜は基板貼り合わせ後の処理によって除去することが可能である。このように基板貼り合わせ後に処理を行なった場合、基板がマスクとなってパネル内部を保護するため、画素部の配向膜等が劣化される虞がない。したがって、配向膜除去に伴う表示品質の低下が防止され、歩留まりの向上が図られる。
【0014】
本発明の電子機器は、上述した本発明の液晶装置又は上述した本発明の液晶装置の製造方法により製造されてなる液晶装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、コモン電位の長期通電による不安定さを改善し、長期にわたって良好な表示品質を維持することのできる電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
以下の実施形態では、液晶装置の一例として、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)を画素スイッチング素子として備えたアクティブマトリクス型の液晶装置を説明する。この液晶装置は、例えばプロジェクタのライトバルブ(光変調手段)として好適に採用可能なものである。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1実施形態の液晶装置100を各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図であり、図2は、図1のH−H’線に沿う断面図である。図3は、液晶装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0017】
図1に示すように、液晶装置100は、シール材52によって貼り合わされたTFTアレイ基板10と対向基板20とを有する。シール材52は対向基板20の外周に沿って平面視矩形枠状に設けられており、このシール材52によって区画された領域に液晶が封入されている。シール材52の形成領域の内側には、遮光性材料からなる平面視矩形枠状の遮光膜(周辺見切り)53が形成されている。そして、この遮光膜53の内側の領域が画像表示領域10aとなっている。シール材52の形成領域の外側には、データ線駆動回路201及び外部回路実装端子202がTFTアレイ基板10の1辺(図示下辺)に沿って形成されており、この1辺に隣接する2辺に沿ってそれぞれ走査線駆動回路204,204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る1辺(図示上辺)には、画像表示領域10aの両側の走査線駆動回路204,204間を接続する複数の配線205が形成されている。また、対向基板20の各角部には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間の電気的導通をとるための導電粒子である基板間導通材206が配設されている。
【0018】
次に、図2の断面構造を見ると、本実施形態の液晶装置100は、一対の透明基板を有し、その一方の基板をなすTFTアレイ基板10と、これに対向配置された他方の基板をなす対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10の内面側(液晶層50側)には画素電極9が形成されており、さらに画素電極9を覆って配向膜16が形成されている。他方、対向基板20の内面側(液晶層50側)には、TFTアレイ基板10上のデータ線、走査線、画素スイッチング用TFTの形成領域に対向して、平面視格子状の遮光膜23が形成されている。また、遮光膜23を覆って対向基板20の全面に対向電極(共通電極)21が形成されており、さらに対向電極21を覆って配向膜22が形成されている。
【0019】
TFTアレイ基板10には、対向基板20の外側に張り出す張出部10Pが設けられている。この張出部10Pには、データ線駆動回路201及び外部回路実装端子202が形成されている。外部回路実装端子202は、画素電極9と電気的に接続される第1接続端子と、対向電極21と電気的に接続される第2接続端子とを含む。第2接続端子は、導電部である図示略の引き廻し配線に接続されている。引き廻し配線は、対向電極21と対向する領域まで引き廻されており、該引き廻し配線と対向電極21との間に挟まれた基板間導通材206を介して対向電極21と電気的に接続されている。外部回路実装端子202には、導電部材208を介して、電子部品であるフレキシブル回路基板207が電気的にされている。
【0020】
図3は、液晶装置100の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路を示す図である。
図3に示すように、画像表示領域10aには複数の画素Dがマトリクス状に構成されている。これらの画素Dの各々には、画素スイッチング素子であるTFT30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図2に示す対向基板20の対向電極21との間で一定期間保持される。また、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極9と対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量17が付加されている。符号3bは蓄積容量17を構成する容量線である。
【0021】
次に、図4および図5に基づいて、本実施形態の液晶装置のTFTアレイ基板の画素部の構造について詳細に説明する。図4は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板10の相隣接する複数の画素群の平面図であり、図5は図4のA−A’線に沿う断面図である。なお、図5においては、図示上側が光入射側、図示下側が視認側(観察者側)である場合について図示している。
【0022】
図4に示すように、液晶装置100のTFTアレイ基板10上には、マトリクス状に複数の画素電極9(点線部9aにより輪郭が示されている)が設けられている。また、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。データ線6aは、コンタクトホール5を介して半導体層1aのソース領域に電気的に接続されており、画素電極9は、コンタクトホール8を介して半導体層1aのドレイン領域に電気的に接続されている。走査線3aは、半導体層1aのチャネル領域(図中右上がりの斜線の領域)に対向するように配置されており、走査線3a自体がゲート電極として機能する。半導体層1aのドレイン領域は、データ線6a及び走査線3aの下に延設されており、同じくデータ線6a及び走査線3aに沿って伸びる容量線3bと対向配置されている。半導体層1aのうち容量線3bと対向する部分は第1蓄積容量電極(半導体層)1fとされ、第1蓄積容量電極1fと容量線3bとが平面的に重なる部分によって蓄積容量17が形成されている。また、第1蓄積容量電極1fは、同じくデータ線6a及び走査線3aに沿って伸びる第1遮光膜11aと対向配置されており、第1遮光膜11aのうち第1蓄積容量電極1fと対向する部分は第3蓄積容量電極とされ、第1蓄積容量電極1fと第3蓄積容量電極とが平面的に重なる部分によって蓄積容量が形成されている。
【0023】
容量線3bは、走査線3aに沿ってほぼ直線状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有している。そして、図中右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。より具体的には、第1遮光膜11aは、画素部において半導体層1aのチャネル領域を含むTFTをTFTアレイ基板の側から見て覆う位置に設けられており、さらに、容量線3bの本線部に対向して走査線3aに沿って直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って隣接する後段側(図中下向き)に突出した突出部とを有している。第1遮光膜11aの各段(画素行)における下向きの突出部の先端は、データ線6a下において次段における容量線3bの上向きの突出部の先端と重なっている。この重なった箇所には、第1遮光膜11aと容量線3bとを相互に電気的に接続するコンタクトホール13が設けられている。すなわち、本実施の形態では、第1遮光膜11aは、コンタクトホール13により前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続されている。
【0024】
次に断面構造を見ると、図5に示すように、本実施の形態の液晶装置は、一対の透明基板を有しており、その一方の基板をなすTFTアレイ基板10と、これに対向配置された他方の基板をなす対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。液晶層50は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなり、当該透過型液晶装置は垂直配向モードの表示装置となっている。
【0025】
TFTアレイ基板10は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体10Aと、その内側(液晶層50側)に形成されたTFT30、画素電極9、配向膜16等を備えている。一方の対向基板20は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20Aと、その内側に形成された対向電極21、配向膜22等を備えている。
【0026】
TFTアレイ基板10の基体である基板本体10A上に、クロム等からなる第1遮光膜11aが部分的に形成されている。第1遮光膜11aを覆って、酸化シリコン等からなる第1層間絶縁膜12が形成されている。第1層間絶縁膜12上に、ポリシリコン膜からなる半導体層1aがパターン形成されている。半導体層1aの表面に、酸化シリコン等からなるゲート絶縁膜2が形成されており、ゲート絶縁膜2を介して半導体層1aと部分的に対向する走査線3aが形成されている。半導体層1aにおける走査線3aとの対向部分にはチャネル領域1a’が形成され、その両側にソース領域およびドレイン領域が形成されている。
【0027】
TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を採用しており、ソース領域およびドレイン領域に、それぞれ不純物濃度が相対的に高い高濃度領域と、相対的に低い低濃度領域(LDD領域)とが形成されている。すなわち、ソース領域には低濃度ソース領域1bと高濃度ソース領域1dとが形成され、ドレイン領域には低濃度ドレイン領域1cと高濃度ドレイン領域1eとが形成されている。
【0028】
ゲート絶縁膜2および走査線3aを覆って、酸化シリコン等からなる第2層間絶縁膜4が形成されている。第2層間絶縁膜4上に、アルミニウム等からなるデータ線6aが形成され、第2層間絶縁膜4を貫通して半導体層1aに達するコンタクトホール5を介して、高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。データ線6aを覆って、窒化チタン等からなる表面保護膜19が形成されている。表面保護膜19は、データ線6a及びTFT30のチャネル領域1a′を覆うように少し大きなサイズにパターニングされている。表面保護膜19は耐食性の高い材料からなり、エッチング液等の薬液からデータ線6aを保護する。また、TiN等の遮光性材料を用いることで、対向基板20側から入射した光がTFT30のチャネル領域1a′等に入射するのを防止する。表面保護膜19を覆って、酸化シリコン等からなる第3層間絶縁膜7が形成されている。第3層間絶縁膜7の表面に、ITO等の透明導電材料からなる画素電極9が形成され、第3層間絶縁膜7及び第2層間絶縁膜4を貫通して半導体層1aに達するコンタクトホール8を介して、高濃度ドレイン領域1eと電気的に接続されている。さらに、画素電極9を覆って、酸化シリコン等の無機物からなる配向膜(無機配向膜)16が形成されている。
【0029】
また、図4に示したように、半導体層1aを延設して平面視略L形とした第1蓄積容量電極1fが画素電極9の一辺の角部に沿って配置されている。第1蓄積容量電極1fの表面には、ゲート絶縁膜2を延設してなる誘電体膜が形成されており、かかる誘電体膜(ゲート絶縁膜2)上に形成された容量線3bのうち、当該誘電体膜を介して対向する部分が第2蓄積容量電極を形成し、前記第1蓄積容量電極1fとともに蓄積容量17を構成している。
【0030】
TFT30の基板本体10A側に形成された前記第1遮光膜11aは、液晶パネル60に入射した光が半導体層1aのチャネル領域1a'、低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1cに入射して光リークを生じるのを防止する。第1遮光膜11aは、第1層間絶縁膜12を貫通して形成されたコンタクトホール13を介して前段あるいは後段の容量線3bと電気的に接続されている。これにより、第1遮光膜11aは蓄積容量17の第3蓄積容量電極として機能し、第1層間絶縁膜12を誘電体膜として、第1蓄積容量電極1fとの間に容量を形成するようになっている。
【0031】
データ線6a、走査線3aおよびTFT30の形成領域に対応する基板本体20Aの表面には、クロム等からなる第2遮光膜23が形成されている。第2遮光膜23を覆って、基板本体20Aのほぼ全面にITO等の透明導電材料からなる対向電極(共通電極)21が形成されている。対向電極21の表面には酸化シリコン等の無機物からなる配向膜(無機配向膜)22が形成されている。そして、この配向膜22と配向膜16によって、液晶分子は電圧を印加しない状態(初期配向状態)において基板に略垂直方向に配向される。
【0032】
ここで、配向膜16,22の構成について説明する。図6は、これらの配向膜の断面構造を示す模式図である。
図6に示すように、配向膜16は、基板10の表面に対して所定角度だけ傾斜した無数の柱状構造体16aからなる。また、配向膜22は、基板20の表面に対して所定角度だけ傾斜した無数の柱状構造体22aからなる。これらの柱状構造体16a,22aは、SiOやSiO等の珪素酸化物、又はAl、ZnO、MgOやITO等の金属酸化物等により、厚さ0.02μm〜0.3μm(好ましくは、0.02μm〜0.08μm)程度に形成されたものである。
【0033】
柱状構造体16a,22aは、SiO等の分子を基板の法線方向に対して傾斜した方向から蒸着することにより形成される。このような方法で成膜を行なうと、蒸着分子が基板に対して斜め方向に結晶成長し、その結果、蒸着方向に傾斜して配列された無数の柱状構造体16a,22aが形成されるようになる。これらの柱状構造体16a,22aは、疎に形成されることから、隣接する柱状構造体間に多数の間隙(細孔)を有している。そして、その表面に沿って液晶分子51が配向することにより、電圧無印加時の液晶分子の配向が基板に対して略垂直に規定されるようになっている。また、各柱状構造体16aが同じ方向に傾斜しているので、液晶分子51を全体として蒸着方向に傾斜させることができ、これにより、所望のプレチルトを得ることが可能になる。
【0034】
しかしながら、このような配向膜16,22は、酸素欠損やシリコン欠損を多く含むため、それらが電極に供給される電荷(キャリア)の捕獲サイトとなって可変抵抗を形成し、長期通電を行なった場合に、上下基板で電位の偏りを生じる可能性がある。このメカニズムを図7を用いて説明する。
【0035】
図7は、キャリア捕獲によるポテンシャル障壁の変化を示す概念図である。図7のキャリア捕獲は、無機配向膜のような酸素欠損やシリコン欠損を多く含む材料に見られる。電荷を流し、捕獲されれば、その周辺の伝導帯が持ち上がり、電荷にとって壁が形成される。これが可変抵抗の発生メカニズムである。このような可変抵抗は、電荷の供給経路に配向膜16,22が直列に接続される箇所に発生する。
【0036】
図8は、可変抵抗を考慮した場合の液晶装置の等価回路図である。
図8に示すように、外部回路実装端子(第1接続端子、第2接続端子)202から液晶層50までの電荷の供給経路には、符号B1〜B6で示す複数の可変抵抗が存在する。可変抵抗B1は、第1接続端子202上に形成され、フレキシブル回路基板と第1接続端子202との間に挟まれる配向膜16である。可変抵抗B2は、画像表示領域内の画素電極上に形成される配向膜16である。可変抵抗B3は、画像表示領域内の対向電極上に形成される配向膜22である。可変抵抗B4は、対向電極上に形成され、対向電極と基板間導通材206との間に挟まれる配向膜22である。可変抵抗B5は、基板間導通材206とTFTアレイ基板上の引き廻し配線との間に挟まれる配向膜16である。可変抵抗B6は、引き廻し配線と接続された第2接続端子202上に形成され、フレキシブル回路基板と第2接続端子との間に挟まれる配向膜16である。
【0037】
可変抵抗B1〜B6のうち、可変抵抗B1,B2,B5,B6は、TFTアレイ基板上の配向膜16に起因するものであり、可変抵抗B3,B4は、対向基板上の配向膜22に起因するものである。ここで、可変抵抗B1〜B6のうち、表示に不可欠なものは画層表示領域内に配置された可変抵抗B2,B3に係る配向膜のみであり、それ以外のものは除去しても表示に影響はない。そこで、本実施形態では、接続端子上の配向膜と基板間導通部の配向膜を除去し、画素部以外の配向膜の影響を排除することとした。もともと配向膜16,22を形成しない状態では電位の偏りは存在しないので、このような部分の配向膜を全て除去してしまえば、少なくとも第1接続端子から画素電極までの間、及び第2接続端子から対向電極までの間の電位については、完全な対称性を得ることができる。
【0038】
もっとも、対向電極側と画素電極側に可変抵抗が存在しても、それらが同じ割合で変化するものであれば、駆動によってコモン電位を合わせ込むことが可能である。つまり、可変抵抗が同じ割合で変化した場合には、コモン電位の変動量は常に一定値となるため、その分の変動量を考慮した補整電圧を加えれば、コモン電位を所望の電位に合わせ込むことができる。しかしながら、TFT30を備えた構成では、配向膜16に起因する可変抵抗B1は、走査信号とデータ信号の双方に影響を及ぼすため、コモン電位の変動量は印加電圧によって変化してしまい、常に所望の電位に合わせ込むことは不可能である。したがって、このような場合には、可変抵抗B1を完全に除去し、そのような変動が生じないようにすることが望ましいものとなる。
【0039】
一方、画素部の配向膜については、除去してしまうことができないので、例えば、配向膜形成時の配向膜の密度、組成、膜厚のいずれかを制御することにより、配向膜16と配向膜22の単位面積当たりの捕獲サイトの密度を互いに等しくする。捕獲サイトの密度が等しければ、捕獲される電荷の量も等しくなるため、仮に電荷の捕獲が生じたとしても、上下基板間で電位に偏りが生じることがないからである。
【0040】
具体的には、配向膜16と配向膜22の密度、組成、膜厚等の条件を全て等しくすることで、捕獲サイトの密度を一致させることができる。この方法では、配向膜16,22を同じ成膜条件で成膜すればよく、成膜条件の合わせ込みの必要がないので、最も容易に所望の条件が得られる。
【0041】
一方、成膜条件を変える場合には、上述した一又は複数の条件を組み合わせることで、成膜条件の合わせ込みが可能になる。例えば、一方の配向膜の蒸着角度(基板水平方向からの仰角)を相対的に大きくし、他方の配向膜の蒸着角度を相対的に小さくした場合には、前記一方の配向膜の膜厚を相対的に小さくし、前記他方の配向膜の膜厚を相対的に大きくする。こうすることで、両者の捕獲サイトの密度を近づけることができる。
【0042】
捕獲サイトの量は、配向膜表面に形成される細孔(柱状構造体間の間隙)の密度、すなわち細孔内に露出する柱状構造体の表面積に依存し、その表面積が多いほど、捕獲サイトの量も大きくなる。柱状構造体自身は、疎らに形成された粗い膜であるため、その表面には酸素欠損、シリコン欠損等が多く含まれるからである。ここで、蒸着角度を小さくした場合には、柱状構造体は疎らに形成され、細孔の密度も大きくなるため、同じ膜厚であれば捕獲サイトの密度は大きくなる。また、膜厚を小さくした場合には、柱状構造体の配置密度が小さくなるため、やはり捕獲サイトの密度は大きくなる。他方、蒸着角度を大きくした場合には、柱状構造体は密に形成されるため、細孔の密度も小さくなり、捕獲サイトの密度も小さくなる。また、膜厚を大きくした場合には、柱状構造体の間隙に蒸着分子が堆積され易くなるため、やはり捕獲サイトの密度は小さくなる。したがって、これらの条件を適切に組み合わせれば、配向膜16と配向膜22に含まれる捕獲サイトの密度を一致させることができる。
【0043】
上述の方法は、電荷の捕獲サイトを配向膜の膜厚又は蒸着角度によって制御するものであるが、同様の制御は、配向膜の組成を制御することによっても行なうことができる。ここで、「配向膜の組成」とは、配向膜を構成する分子の組成を意味し、「組成を制御する」とは、その組成の一部を異なる組成とすること等をいう。例えば、配向膜がSiOからなる場合には、その一部をSiOとすることで、電荷の捕獲サイトの密度を制御することができる。
【0044】
このようにした場合、第1接続端子から配向膜16までの電位と、第2接続端子から配向膜22までの電位とが常に等しくなるため、駆動中にコモン電位に変動が生じることがない。したがって、長期間の使用によっても焼き付き等が生じず、表示品質の高い映像表示が実現される。
【0045】
上述の構成を図9を用いて具体的に説明する。図9(a)は、基板間導通材206が配置される基板間導通部の断面構造を示す模式図であり、図9(b)は、フレキシブル回路基板207が実装される張出部10Pの断面構造を示す模式図である。
【0046】
図9(a)に示すように、TFTアレイ基板10の対向電極209に対向する面には、引き廻し配線209が形成されている。この引き廻し配線209は、TFTアレイ基板10の外周部を通って張出部10Pに引き廻されており、そこで外部回路実装端子202の第2接続端子に電気的に接続されている。引き廻し配線209と対向電極21との間には、導電粒子である基板間導通材206が配置されている。この基板間導通材206は、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に挟まれることで、引き廻し配線209と対向電極21とを電気的に接続する。この基板間導通材206は、引き廻し配線209上に形成された配向膜16と、対向電極21上に形成された配向膜22とを貫通した状態で、引き廻し配線209と対向電極21とに直接接触している。図9において符号16H及び22Hは、それぞれ配向膜16及び配向膜22が除去された領域(開口部)である。これらの開口部16H,22Hは、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に基板間導通材206を挟んで加圧し、配向膜16及び配向膜22を基板間導通材206で貫通させることにより形成されたものである。このように配向膜の開口部16H,22Hを設けて基板間導通材206を対向電極21と引き廻し配線209に直接接触させることで、図8に示した可変抵抗B4,B5を除去することができる。
【0047】
なお、配向膜16,22に開口部16H,22Hを形成する方法としては、マスク蒸着やエッチング等の方法も考えられるところである。しかし、斜方蒸着法等により形成された配向膜16,22は、表面に多数の細孔が形成されるため、レジスト等を塗布してこれを除去する場合に、レジスト残渣等が細孔内に残留し、十分に除去することができなくなる。このような不純物は、特にイオン性不純物の場合に、液晶の配向特性を阻害し、焼き付き等の原因となる。これに対して、基板間導通材206を加圧して貫通させる方法では、配向膜16,22をパターニングする必要がないので、このような不純物の影響を考慮する必要がない。また、パターニングの工程がないので製造も容易になる。なお、配向膜16,22を貫通させる場合には、配向膜16,22の膜厚は100nm以下であることが望ましい。この程度の膜厚であれば、通常の加圧力によって容易に貫通させることができ、基板間導通材206が破壊される虞もない。
【0048】
図9(b)に示すように、TFTアレイ基板10の張出部10Pには外部回路実装端子202が設けられており、外部回路実装端子202上には、フレキシブル回路基板207が平面的に重なるように配置されている。そして、これらの間に設けられた導電部材208によって、外部回路実装端子202とフレキシブル回路基板207の端子207aとが電気的に接続されている。本実施形態の場合、導通部材208は、エポキシ樹脂等の絶縁フィルム208bの内部に導電粒子208aを分散させた異方性導フィルム(ACF)であり、導電粒子208aは、表面に金属膜が被覆された樹脂粒子や金属粒子である。そして、上記異方性導電フィルム208は、フレキシブル回路基板207と外部回路接続端子202との接続に際して、フレキシブル回路基板207の端子207a上に貼着され、基板10,207を貼り合わせることで導電粒子208aが互いに対向する端子202及び端子207aに挟まれる。そして、これらの導電粒子208aが両端子202,207aに接触することで、両者を導通するようになっている。なお、導電部材208としては、上記異方性導電フィルムに限らず、異方性導電ペースト(導電粒子を内部に分散させた絶縁ペースト)も問題なく用いることができる。
【0049】
ここで、TFTアレイ基板10の張出部10Pには配向膜16は存在せず、張出部10P上は、配向膜16が形成されない領域となっている。張出部10P上の配向膜16は図10に示す方法により除去されており、したがって、導電粒子208aはフレキシブル回路基板207の端子207aと外部回路実装端子202の双方に対して直接接触した状態となっている。
【0050】
図10は、張出部10Pの配向膜16を除去する方法を示す図である。
まず、図10(a)に示すように、TFTアレイ基板10及び対向基板20を作製し、これら一対の基板10,20をシール材52によって貼り合わせ、真空注入法等により、シール材52の枠内に液晶50を注入する。ここで、TFTアレイ基板10及び対向基板20の最表面には、酸化珪素等からなる配向膜16,22が形成されている。この配向膜16,22は斜方蒸着法等により基板全面に形成されたものであり、したがってTFTアレイ基板10の張出部10P上にも配向膜16が存在する。外部回路実装端子202上に配置された配向膜16は、前述した理由により、図8に示した可変抵抗B1,B6の原因となる。そこで、本実施形態では、図10(b)のように、CF系ガス(CF、C等)を用いて基板10,20の外表面全体に等方性ドライエッチングを施し、余分な配向膜16,22を除去している。このような処理を行なうと、シール材52の外側に露出した配向膜16,22が除去され、外部回路実装端子202の表面が露出されるため、この後でフレキシブル回路基板を実装すれば、配向膜を挟まない状態で(すなわち図8の可変抵抗B1,B6を含まない状態で)外部回路との接続を行なうことができる。この際、基板10,20がマスクとなってパネルの内側を保護するため、画像表示領域内の配向膜等が劣化する虞はない。また、張出部10Pに形成された配向膜16は、表面に多数の細孔が形成された多孔質な膜であり、吸湿性も高いため、そのまま放置しておくと、シール材52と配向膜16との隙間を通って液晶装置の外部から液晶層50内に水分や不純物などが浸入する場合があるが、張出部10Pの配向膜を除去しておけば、このような水分の侵入を遮断することができ、信頼性の向上も図れるようになる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態においては、液晶装置の第1接続端子から第2接続端子までの間に存在する配向膜起因の電荷捕獲サイトを除去し、さらに配向膜の密度、組成、膜厚等を制御することで、配向膜16及び配向膜22に含まれる電荷捕獲サイトの密度を等しくした。このため、第1接続端子から配向膜16までの電位と、第2接続端子から配向膜22までの電位とが常に等しくなり、駆動中にコモン電位に変動が生じることがない。したがって、長期間使用しても焼き付き等が生じず、表示品質の高い映像表示が実現できる。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2実施形態の液晶装置について図11及び図12を用いて説明する。図11は、同液晶装置において配向膜が形成されている部分及びその近傍部分の断面構造を示す図であり、図12は、同液晶装置の基板間導通部の断面構造を示す図である。
本実施形態の液晶装置200は、第1実施形態の液晶表示装置100と略同様の基本構成を具備しており、液晶表示装置100との違いは、配向膜の下に緻密な下地膜を形成した点のみである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
図11に示すように、配向膜16と画素電極9との間には、無機材料の下地膜19が設けられている。また、配向膜22と対向電極21との間には、無機材料の下地膜29が設けられている。前述のように、配向膜16,22は表面に多数の細孔が形成された多孔質な膜である。このため、液晶を駆動中に画素電極9又は対向電極21から発生するイオンが細孔内に吸着し、配向膜自体の比抵抗を低下させる虞がある。そこで、本実施形態では、配向膜16,22の下に、物理蒸着法(PVD)、化学気相蒸着法(CVD)又は原子堆積法(ALD)等で形成された緻密な下地膜19,29を5nm〜50nmの厚みで形成し、電極9,21から溶出されるイオンを遮断している。このような構成によれば、イオンの吸着によるコモン電位の変動や焼き付き等の表示不良が抑制され、より信頼性の高い映像表示が実現される。また、下地膜と配向膜とを同じ材料で形成した場合には、配向膜自体の膜質も良好なものとなり、基板との密着性も向上する。
【0054】
しかしながら、配向膜16,22の下に下地膜19,29を形成した場合、下地膜自体は緻密な膜であるため、特に厚膜で形成した場合に、これを導電粒子によって貫通させることは容易ではない。そこで、本実施形態では、基板間導通材206と画素電極9及び対向電極21とが接触する部分の下地膜を除去し、下地膜自体が可変抵抗となることを防止している。
【0055】
図12は、基板間導通材206が配置される基板間導通部の断面構造を示す模式図である。図12に示すように、画素電極が配置される層間絶縁膜7と、配向膜16との間には、下地膜19が設けられている。また、対向電極21と配向膜22との間には、下地膜29が設けられている。下地膜19,29には、基板間導通材206と引き廻し配線209及び対向電極21とが接触する部分に、それぞれ下地膜が形成されない領域(開口部)19H,29Hが設けられている。これらの開口部19H,29Hは、配向膜16,22を形成する前に下地膜19,29をエッチング等することにより形成されたものである。また、配向膜16,22には、基板間導通材206によって貫通されてできた開口部16H,22Hが設けられており、これらの開口部16H,22Hと、下地膜19,29の開口部19H,29Hとは互いに連通している。そして、これらの構成により、基板間導通材206は、引き廻し配線209上に形成された配向膜16と、対向電極21上に形成された配向膜22とを貫通した状態で、引き廻し配線209と対向電極21とに直接接触している。
【0056】
この場合も、引き廻し配線209と対向電極21との間に、図8に示した可変抵抗B4,B5が形成されないので、コモン電位の変動のない信頼性の高い映像表示が実現される。また、基板間導通部の固い下地膜19,29を予め除去しているので、基板間導通材206を基板10,20間に挟んで加圧する際の加圧力を大きくする必要がない。したがって、加圧時の基板間導通材の破損等がなく、信頼性向上、歩留まり向上に寄与することができる。
【0057】
なお、下地膜19,29を除去する工程は、下地膜19,29の基板側に設けられた絶縁膜を除去する工程と同時に行なわれることが望ましい。例えば、本実施形態の場合、下地膜19は、引き廻し配線209上に配置される層間絶縁膜7と同時に除去する。また、引き廻し配線209の表面にTiN等の表面保護層が形成されている場合には、これも同時に除去する。下地膜19は無機膜であるため、同じ無機膜である層間絶縁膜7や表面保護層と同時にエッチングすることが可能であり、これらを同時に除去することで、新たな工程が必要なくなるからである。対向電極21と配向膜22との間には、このような絶縁膜は存在しないが、対向電極上に保護膜等(絶縁膜)を形成した場合には、同様の方法で処理することができる。
【0058】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の一例であるプロジェクタの一実施形態を図13を用いて説明する。図13は、プロジェクタの要部を示す概略構成図である。このプロジェクタは、前述した実施形態に係る液晶装置を光変調手段として備えたものである。
【0059】
図13において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は本発明の液晶装置からなる光変調手段、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズである。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。
【0060】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用光変調手段822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用光変調手段823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用光変調手段824に入射される。
【0061】
各光変調手段822、823、824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、画像が拡大されて表示される。
【0062】
このプロジェクタは、上述した本発明の液晶装置を光変調手段として備えている。このため、コモン電位の長期通電による不安定さを改善し、長期にわたって良好な表示品質を維持することのできるプロジェクタとなる。
【0063】
なお、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、前記実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態では透過型液晶装置を例にして説明したが、反射型液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態ではVA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置を例にして説明したが、TN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、実施形態では3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
【0064】
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、前述した液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液晶装置の平面図である。
【図2】図1のH−H′線に沿う断面図である。
【図3】同液晶装置の等価回路図である。
【図4】同液晶装置のTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群を示す平面図である。
【図5】図4のA−A’線に沿う断面図である。
【図6】配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図7】キャリア捕獲によるポテンシャル障壁の変化を示す概念図である。
【図8】可変抵抗を考慮した場合の液晶装置の等価回路図である。
【図9】基板間導通部及び張出部の断面構造を示す図である。
【図10】張出部の配向膜を除去する方法を説明するための工程図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る液晶装置の配向膜近傍の断面構成図である。
【図12】基板間導通部の断面構造を示す図である。
【図13】電子機器の一例であるプロジェクタを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
7…層間絶縁膜、9…画素電極、10…TFTアレイ基板(第1基板)、16…配向膜(第1配向膜)、16a…柱状構造体、16H…開口部、19…下地膜、20…対向基板(第2基板)、21…対向電極、22…配向膜(第2配向膜)、22a…柱状構造体、22H…開口部、29…下地膜、50…液晶層、52…シール材、100,200…液晶装置、202…外部回路実装端子(第1接続端子、第2接続端子)、206…基板間導通材(第1導電粒子)、207…フレキシブル回路基板(電子部品)、207a…端子、208a…導電粒子(第2導電粒子)、209…引き廻し配線(導電部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置された第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板上に実装された電子部品とを有し、
前記第1基板の前記液晶層側の面には、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続された第1接続端子と、第2接続端子と、前記第2接続端子と電気的に接続された導電部と、前記画素電極、前記第1接続端子、前記第2接続端子及び前記導電部を覆う無機材料からなる第1配向膜とが設けられ、
前記第2基板の前記液晶層側の面には、対向電極と、前記対向電極を覆う無機材料からなる第2配向膜とが設けられ、
前記第1基板と前記第2基板との間には、前記第1基板と前記第2基板との間に挟まれて前記対向電極と前記導電部とを電気的に接続する第1導電粒子が設けられ、前記第1配向膜及び前記第2配向膜の前記第1導電粒子と接触する部分は除去されており、前記配向膜が除去された部分を介して前記第1導電粒子と前記対向電極及び前記導電部とが直接接触しており、
前記第1基板と前記電子部品との間には、前記第1基板と前記電子部品との間に挟まれて前記第1接続端子及び前記第2接続端子と前記電子部品の端子とを電気的に接続する第2導電粒子が設けられ、前記第1配向膜の前記第2導電粒子と接触する部分は除去されており、前記配向膜が除去された部分を介して前記第2導電粒子と前記第1接続端子及び前記第2接続端子とが直接接触しており、
前記第1配向膜に含まれる前記画素電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度と、前記第2配向膜に含まれる前記対向電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度とが互いに等しいことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1配向膜と前記画素電極との間、及び前記第2配向膜と前記対向電極との間に、それぞれ無機材料の下地膜が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
互いに対向配置された第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、前記第1基板上に実装された電子部品とを有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1基板の前記液晶層側の面に、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続された第1接続端子と、第2接続端子と、前記第2接続端子と電気的に接続された導電部と、前記画素電極、前記第1接続端子、前記第2接続端子及び前記導電部を覆う無機材料からなる第1配向膜とを形成する工程と、
前記第2基板の前記液晶層側の面に、対向電極と、前記対向電極を覆う無機材料からなる第2配向膜とを形成する工程と、
前記対向電極と前記導電部とが対向する部分の前記第1配向膜及び前記第2配向膜を除去し、前記配向膜が除去された部分において前記第1基板と前記第2基板との間に第1導電粒子を挟むことによって前記対向電極と前記第1導電部とを電気的に接続する工程と、
前記第1接続端子及び前記第2接続端子と前記電子部品の端子とが対向する部分の前記第1配向膜を除去し、前記配向膜が除去された部分において前記第1基板と前記電子部品との間に第2導電粒子を挟むことによって前記第1接続端子及び前記第2接続端子と前記電子部品の端子とを電気的に接続する工程と、を有し、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜の形成工程においては、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を成膜するときの配向膜の密度、組成、膜厚のいずれかを制御することにより、前記第1配向膜に含まれる前記画素電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度と、前記第2配向膜に含まれる前記対向電極に供給された電荷の捕獲サイトの密度とを互いに等しくすることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1導電粒子が配置される部分の配向膜を除去する工程は、前記第1基板と前記第2基板との間に前記第1導電粒子を挟んで加圧し、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を前記第1導電粒子で貫通させることにより行なわれることを特徴とする請求項3記載の液晶装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成するに際し、前記第1配向膜と前記画素電極との間、及び前記第2配向膜と前記対向電極との間に、それぞれ無機材料の下地膜を形成することを特徴とする請求項3記載の液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1導電粒子が配置される部分の配向膜を除去する工程は、前記第1導電粒子が配置される部分に形成された前記下地膜を除去した後、前記下地膜の表面に前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成し、さらに前記第1基板と前記第2基板との間に前記第1導電粒子を挟んで加圧し、前記下地膜が除去された部分に配置された前記第1配向膜及び前記第2配向膜を前記第1導電粒子で貫通させることにより行なわれることを特徴とする請求項5記載の液晶装置の製造方法。
【請求項7】
前記下地膜を除去する工程は、前記下地膜よりも基板側に設けられた絶縁膜を除去する工程と同時に行なわれることを特徴とする請求項6記載の液晶装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜厚は100nm以下であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかの項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2導電粒子が配置される部分の配向膜を除去する工程は、前記第1基板と前記第2基板とをシール材を介して貼り合わせた後、前記第2基板をマスクとして、前記第1接続端子及び前記第2接続端子の上に形成された前記第1配向膜を除去することにより行なわれることを特徴とする請求項3〜8のいずれかの項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1若しくは2記載の液晶装置又は請求項3〜9のいずれかの項に記載の液晶装置の製造方法により製造されてなる液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−225840(P2007−225840A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46277(P2006−46277)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】