液晶装置および電子機器
【課題】イオン性不純物に起因する表示不具合が改善された液晶装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極15が配列する画素領域Eが設けられた第1基板としての素子基板10と、共通電位が印加される共通電極23が設けられた第2基板としての対向基板20と、素子基板10と対向基板20とを貼り合わすシール材40と、シール材40で囲まれた領域内に保持された液晶層50と、を備え、素子基板10は、平面視で画素領域Eとシール材40との間において、共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層としての定電位配線121sと、定電位配線121sと液晶層50との間に設けられると共に、平面視で定電位配線121sの少なくとも一部と重なって設けられ、共通電位より高電位である第2の電位が印加された第2配線層としての周辺電極141と、を含んでいる。
【解決手段】本適用例の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極15が配列する画素領域Eが設けられた第1基板としての素子基板10と、共通電位が印加される共通電極23が設けられた第2基板としての対向基板20と、素子基板10と対向基板20とを貼り合わすシール材40と、シール材40で囲まれた領域内に保持された液晶層50と、を備え、素子基板10は、平面視で画素領域Eとシール材40との間において、共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層としての定電位配線121sと、定電位配線121sと液晶層50との間に設けられると共に、平面視で定電位配線121sの少なくとも一部と重なって設けられ、共通電位より高電位である第2の電位が印加された第2配線層としての周辺電極141と、を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および液晶装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、一対の基板間に挟持された正または負の誘電異方性を有する液晶層を有している。例えば、一対の基板のそれぞれに電極を形成し、液晶層を挟んだ電極間に駆動電圧を印加して液晶層を構成する液晶分子の配向状態を電界効果により変化させることで、液晶層に入射する光を画像信号に基づいて光学的に変調することができる。液晶層の厚みは例えば数μm程度であって高い絶縁性を有している。ところが、液晶層にイオン性不純物が含まれていると、液晶層の全体あるいは局部において絶縁性が低下して所望の駆動電圧が印加されないため表示むらや焼き付きなどの表示不具合が生ずるおそれがあった。
【0003】
イオン性不純物に起因する上記表示不具合を改善すべく、例えば特許文献1には、一対の基板のうち一方の基板のシール材の内側において、表示領域の外側にイオン性不純物吸着電極を備えた液晶表示装置が開示されている。
上記特許文献1には、上記イオン性不純物吸着電極が、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された薄膜トランジスターとが設けられたアクティブマトリクス基板に配置され、コモン電圧に対して正または負の直流電圧を印加して、イオン性不純物を吸着させる例が示されている。
また、上記イオン性不純物吸着電極をデータ信号ラインまたは走査信号ラインあるいは補助容量ラインに電気的に接続する例も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−196355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のアクティブマトリクス基板の表示領域の外側には、データ信号ライン、走査信号ライン、補助容量ラインの他にも電位が与えられた配線が配置されることがある。したがって、電位が与えられた配線と上記イオン性不純物吸着電極との相対的な位置関係を考慮する必要がある。例えば上記イオン性不純物吸着電極よりも電位が与えられた配線が画素電極の近傍に存在すると該配線と画素電極との間に生ずる電界によって液晶中のイオン性不純物が引き寄せられ表示領域に偏在して、上記イオン性不純物吸着電極に電位を与えてもイオン性不純物がまったくあるいは効率的に吸着できないことが考えられる。つまり、アクティブマトリクス基板の表示領域の外側に上記イオン性不純物吸着電極を配置しても所望の効果が得られないおそれがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より高電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、画素電極と、共通電位よりも低電位の第1の電位が印加された第1配線層との間に第1の電界が生ずる。また、画素電極と、第1基板の共通電位よりも高電位の第2の電位が印加された第2配線層との間に第2の電界が生ずる。第1の電界の方向に対して第2の電界の方向は逆向きとなり、且つ第2配線層は平面視で第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられているので、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界を弱めることになる。したがって、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界によって引き寄せられる液晶層中の正のイオン性不純物を第2配線層と画素電極との間に生ずる第2の電界によって跳ね返し液晶層中に分散させることができる。よって、正のイオン性不純物が局所的に偏在することによる表示むらや焼き付きなどの表示不具合が低減され、安定した表示状態が維持される高い信頼性を有する液晶装置を提供できる。
【0009】
[適用例2]本適用例の他の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より低電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、画素電極と、共通電位よりも高電位の第1の電位が印加された第1配線層との間に第1の電界が生ずる。また、画素電極と、第1基板の共通電位よりも低電位の第2の電位が印加された第2配線層との間に第2の電界が生ずる。第1の電界の方向に対して第2の電界の方向は逆向きとなり、且つ第2配線層は平面視で第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられているので、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界を弱めることになる。したがって、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界によって引き寄せられる液晶層中の負のイオン性不純物を第2配線層と画素電極との間に生ずる第2の電界によって跳ね返し液晶層中に分散させることができる。よって、負のイオン性不純物が局所的に偏在することによる表示むらや焼き付きなどの表示不具合が低減され、安定した表示状態が維持される高い信頼性を有する液晶装置を提供できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする。
この構成によれば、走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線は、例えばGND電位などの共通電位よりも低い基準固定電位を供給する配線や、共通電位よりも高い駆動固定電位を供給する配線が挙げられる。このような定電位配線と画素電極との間の第1の電界によって引き寄せられる正または負のイオン性不純物を画素電極と第2配線層との間の第2の電界によって跳ね返して液晶中に分散させることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、且つ平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間において前記画素電極と隣り合って設けられ、前記共通電位が印加された第3配線層を有することを特徴とする。
画素電極には、共通電位を基準として極性が異なる交流の電位が印加されるも平均すればほぼ共通電位となる。この構成によれば、第2配線層と画素電極との間に共通電位が印加される第3配線層を有しているので、第3配線層が無い場合に比べて画素電極と第2配線層との間に生ずる第2の電界の強度が強化される。すなわち、表示不具合を引き起こす要因となる正または負のイオン性不純物をより効果的に液晶層中に分散させることができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の液晶装置において、前記第3配線層は、前記第1配線層と前記第2配線層との間に設けられ、平面視で前記第2配線層と重ならない前記第1配線層の領域の少なくとも一部と重なるように配置されていることが好ましい。
この構成によれば、正または負のイオン性不純物を引き寄せる画素電極と第1配線層との間に生ずる第1の電界を第3配線層により遮ることができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の液晶装置において、前記第2配線層は、平面視で前記第1配線層を覆うように重なっていることが好ましい。
本適用例によっても、正または負のイオン性不純物を引き寄せる画素電極と第1配線層との間に生ずる第1の電界を第2配線層により確実に遮ることができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の液晶装置において、前記第2配線層は、前記画素電極と同じ配線層に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、第2配線層が画素電極と同層に形成されているので、同層でない場合に比べて、画素電極と第2配線層との間に生ずる第2の電界の強度を強化できる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の液晶装置において、前記第2配線層は、前記画素領域の少なくとも角部に沿った部分に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、液晶層のON−OFFによって第1配線層側に引き寄せられる正または負のイオン性不純物が画素領域の角部に偏在することを低減することができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層を有するとしてもよい。
この構成によれば、画素電極と第2配線層との間に生ずる第2の電界の強度をより強化できる。つまり、第1配線層側に引き寄せられる正または負のイオン性不純物を液晶中に分散させることができる。
【0018】
[適用例10]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層を有するとしてもよい。
この構成によれば、第2配線層と第5配線層との間に第3の電界が生ずる。第3の電界によって、シール材に含まれた正または負のイオン性不純物が画素領域側の液晶中に拡散することを低減することができる。
【0019】
[適用例11]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極と同層において、平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層と、平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層とを有するとしてもよい。
この構成によれば、第1配線層側に引き寄せられる正または負のイオン性不純物を液晶中に分散させることができると共に、シール材に含まれた正または負のイオン性不純物が画素領域側の液晶中に拡散することを低減することができる。つまり、正または負のイオン性不純物に起因する表示不具合の発生がより低減された液晶装置を提供できる。
【0020】
[適用例12]上記適用例の液晶装置において、前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が50%となる電位以下であることが好ましい。
この構成によれば、第2の電位を第2配線層に印加したとしても、第2配線層と画素電極との間、あるいは第2配線層と共通電極との間で生ずる電界によって液晶層における液晶分子の配向が乱れて、例えばノーマリーブラックモードにおける光漏れなどの不具合が生ずることを回避できる。
【0021】
[適用例13]上記適用例の液晶装置において、前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が10%となる電位以下であることがより好ましい。
この構成によれば、第2の電位を第2配線層に印加したとしても、第2配線層と画素電極との間、あるいは第2配線層と共通電極との間で生ずる電界によって液晶層における液晶分子の配向が乱れて、例えばノーマリーブラックモードにおける光漏れなどの不具合が生ずることをより確実に回避できる。
【0022】
[適用例14]本適用例の他の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、共通電位よりも低電位の第1の電位が印加された第1配線層に電気的に接続された第2配線層を介して画素電極との間に負のイオン性不純物を跳ね返す電界が生ずる。つまり、第2配線層に外部から共通電位よりも低電位の電位を与える必要が無く、液晶装置における第1配線層を利用して第2配線層に電位を与えて、負のイオン性不純物の偏在に起因する表示不具合を低減できる。
【0024】
[適用例15]本適用例の他の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、共通電位よりも高電位の第1の電位が印加された第1配線層に電気的に接続された第2配線層を介して画素電極との間に正のイオン性不純物を跳ね返す電界が生ずる。つまり、第2配線層に外部から共通電位よりも高電位の電位を与える必要が無く、液晶装置における第1配線層を利用して第2配線層に電位を与えて、正のイオン性不純物の偏在に起因する表示不具合を低減できる。
【0026】
[適用例16]上記適用例の他の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする。
この構成によれば、走査線駆動回路に基準電位を供給する定電位配線や駆動電位を供給する定電位配線を利用して第2配線層に共通電位よりも低いまたは高い電位を与えることができる。
【0027】
[適用例17]本適用例の電子機器は、上記適用例に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、正または負のイオン性不純物の偏在に起因する表示不具合が低減され高い信頼性を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った液晶装置の構造を示す概略断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す回路図。
【図3】画素の電気的な構成を示す等価回路図。
【図4】液晶装置における画素の構造を示す概略断面図。
【図5】無機材料の斜め蒸着方向とイオン性不純物に起因する表示不具合との関係を示す概略平面図。
【図6】実施例に示される配線構造の平面的な位置を示す概略平面図。
【図7】(a)は実施例1の素子基板における配線構造を示す概略断面図、(b)は実施例1の周辺電極および接続配線の配置における変形例を示す概略断面図。
【図8】液晶装置における駆動電圧と画素の透過率との関係を示すV−T曲線。
【図9】実施例2の素子基板における配線構造を示す概略断面図。
【図10】実施例3の素子基板における配線構造を示す概略断面図。
【図11】実施例4の素子基板の配線構造を示す概略断面図。
【図12】実施例5の素子基板の配線構造を示す概略断面図。
【図13】実施例6の素子基板の配線構造を示す概略断面図。
【図14】投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図15】変形例の周辺電極の配置を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0030】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0031】
(第1実施形態)
本実施形態では、薄膜トランジスターを画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0032】
<液晶装置>
まず、本実施形態の液晶装置について図1〜図3を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、図1(b)は図1(a)のH−H’線で切った液晶装置の構造を示す概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す回路図、図3は画素の電気的な構成を示す等価回路図、図4は液晶装置における画素の構造を示す概略断面図である。
【0033】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された第1基板としての素子基板10および第2基板としての対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、基材10s,20sとして透明な例えば石英基板やガラス基板が用いられている。
【0034】
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、対向基板20の外周に沿って配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0035】
シール材40の内側に複数の画素Pが配列した画素領域Eが設けられている。また、シール材40と画素領域Eとの間に画素領域Eを取り囲んで見切り部21が設けられている。見切り部21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなる。なお、画素領域Eは、表示に寄与する複数の画素Pに加えて、複数の画素Pを囲むように配置されたダミー画素を含むとしてもよい。また、図1では図示省略したが、画素領域Eにおいて複数の画素Pをそれぞれ平面的に区分する遮光部(ブラックマトリックス;BM)が対向基板20に設けられている。
【0036】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40と該1辺部との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40と画素領域Eとの間に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40と画素領域Eとの間に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部に沿ったシール材40と検査回路103との間には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。
【0037】
これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101に沿ったシール材40と画素領域Eとの間に設けてもよい。
【0038】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた透光性の画素電極15およびスイッチング素子である薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以降、TFTと呼称する)30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。本発明における第1基板としての素子基板10は、少なくとも基材10sと、基材10s上に形成された画素電極15、TFT30、信号配線、配向膜18を含むものである。
【0039】
対向基板20の液晶層50側の表面には、見切り部21と、これを覆うように成膜された平坦化層22と、平坦化層22を覆うように設けられた共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とが設けられている。本発明における第2基板としての対向基板20は、少なくとも基材20sと、基材20s上に形成された見切り部21、共通電極23、配向膜24を含むものである。
【0040】
見切り部21は、図1(a)に示すように画素領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置に設けられている。これにより対向基板20側からこれらの駆動回路を含む周辺回路に入射する光を遮蔽して、周辺回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が画素領域Eに入射しないように遮蔽して、画素領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0041】
平坦化層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して見切り部21を覆うように設けられている。このような平坦化層22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0042】
共通電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、平坦化層22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0043】
画素電極15を覆う配向膜18および共通電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施された有機配向膜や、気相成長法を用いてSiOx(酸化シリコン)などの無機材料を成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向させた無機配向膜が挙げられる。本実施形態では、配向膜18および配向膜24として上記無機配向膜が採用されている。
【0044】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。本実施形態ではノーマリーブラックモードが採用されている。
【0045】
次に、図2および図3を参照して、液晶装置100の電気的な構成について説明する。図2に示すように、液晶装置100は、素子基板10上の画素領域Eの周辺に位置する周辺領域に形成された、データ線駆動回路101、走査線駆動回路102、サンプリング回路70などの駆動回路と、複数の外部接続用端子104と、を有している。さらに、外部接続用端子104に接続された、データ線駆動回路101に電源(VDDX、VSSX)や駆動用の信号(DX、CLXなど)を供給するためのデータ線駆動回路用配線114、走査線駆動回路102に電源(VDDY、VSSY)や駆動用の信号(DY、CLYなど)を供給するための走査線駆動回路用配線121、画像信号(VID1〜VID6)をサンプリング回路70を介してデータ線6aに供給するための複数の画像信号線111などを含む複数の引き回し配線を有している。
【0046】
データ線駆動回路101には、外部回路から外部接続用端子104及びデータ線駆動回路用配線114を介してXクロック信号CLX(及び反転Xクロック信号CLX)、及びXスタートパルスDXが供給される。データ線駆動回路101は、XスタートパルスDXが入力されると、Xクロック信号CLX(及び反転Xクロック信号CLX)に基づくタイミングで、選択信号S1,S2,・・・,Snを順次生成して複数の選択信号供給線113にそれぞれ出力する。
【0047】
走査線駆動回路102には、外部回路から外部接続用端子104及び走査線駆動回路用配線121を介してYクロック信号CLY(及び反転Yクロック信号CLY)、Yスタートパルス信号DYが供給される。走査線駆動回路102は、これらの信号に基づいて走査信号G1,G2,・・・,Gmを順次生成して複数の走査線3aにそれぞれ出力する。
【0048】
サンプリング回路70は、Nチャネル型の片チャネル型TFT、もしくは相補型のTFTから構成されたサンプリングトランジスター(以降、S−TFTと称する)71を複数備えている。互いに隣り合う6本のデータ線6aがそれぞれ接続された6個のS−TFT71のゲートは1つに纏められて1本の選択信号供給線113に接続されている。つまりデータ線駆動回路101から各選択信号S1,S2,・・・,Snが6個のS−TFT71を1つの単位(系列)として供給される。1つの単位(系列)を構成する6個のS−TFT71のソースには6本の画像信号線111のうちいずれかが接続配線112を経由して接続されている。S−TFT71のドレインにはデータ線6aが接続されている。サンプリング回路70は、選択信号S1,S2,・・・,Snが入力されると、1つの単位(系列)を構成する6個のS−TFT71に対応するデータ線6aに選択信号S1,S2,・・・,Snに応じて画像信号(VID1〜VID6)を順次供給する。
【0049】
図2に示すように、液晶装置100には、前述したように、素子基板10の中央部分を占める画素領域Eに、マトリックス状に配列された複数の画素Pを有している。
【0050】
図3に示すように、複数の画素Pには、それぞれ、画素電極15と当該画素電極15をスイッチング制御するためのTFT30と、保持容量16とが形成されている。画像信号(VID1〜VID6)が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。走査信号G1,G2,・・・,Gmが供給される走査線3aが当該TFT30のゲートに接続されている。画素電極15と保持容量16の一方の電極がTFT30のドレインに接続されている。保持容量16の他方の電極は走査線3aと並行して配置された容量線3bに接続されている。
【0051】
容量線3bは、図2に示すようにX方向において画素領域Eの外側まで引き出され、容量線3bの両端が走査線駆動回路102と画素領域Eとの間においてY方向に延在する一対の接続配線131に電気的に接続されている。一対の接続配線131のそれぞれは、対向基板20の角部に設けられた4つの上下導通部106のうちX方向において対峙する上下導通部106同士を電気的に接続する一対の接続配線132に電気的に接続されている。
一対の接続配線132同士は、上下導通部106と電気的に接続された対向基板20の共通電極23を介して電気的に接続される。さらに一対の接続配線132のうちの外部接続用端子104側に位置する接続配線132は、共通電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104に接続された引き回し配線133に接続されている。つまり、容量線3bには、共通電位(LCCOM)が印加される。
【0052】
サンプリング回路70の6個を1つの単位(系列)としたS−TFT71に供給される選択信号S1,S2,・・・,Snは、この順に順次に供給してもよいし、隣り合う6本のデータ線6aに対応するS−TFT71に対して、系列ごとに供給するようにしてもよい。なお、図2に示すように、本実施形態においては、選択信号S1,S2,・・・,Snは、6相にシリアル−パラレル展開された画像信号(VID1〜VID6)の夫々に対応して、6本のデータ線6aの組に対してグループ(系列)ごとに供給されるよう構成されている。画像信号(VID1〜VID6)の相展開数(即ち、シリアル−パラレル展開される画像信号の系列数)に関しては、6相に限られるものでなく、例えば、9相、12相、24相など、複数相に展開された画像信号が、その展開数に対応した数を一組としたデータ線6aの組に対して供給されるように構成してもよい。
【0053】
走査線3aには走査線駆動回路102から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1,G2,…,Gmが、この順に順次印加される構成となっている。前述したように、画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されており、走査信号G1,G2,…,GmによってTFT30が一定期間だけON状態となり、データ線6aから供給される画像信号(VID1〜VID6)が画素電極15に所定のタイミングで書き込まれる。
さらに、各画素Pに保持された画像信号(VID1〜VID6)がリークするのを防ぐために、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が付加されている。
【0054】
画素電極15を介して液晶層50(図1(b)参照)に書き込まれた所定レベルの画像信号(VID1〜VID6)は、対向基板20に形成された共通電極23との間で一定期間保持される。液晶層50は印加される電圧レベルにより液晶分子の配向や秩序が変化して、液晶層50を透過する光が変調され、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少して暗表示となり、ノーマリーブラックモードであれば、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加して明表示となり、全体として液晶装置100からは画像信号(VID1〜VID6)に応じたコントラストをもつ表示光が射出され、表示が行われる。なお、画像信号(VID1〜VID6)は、液晶層50を交流駆動するために共通電位(LCCOM)に対して正の極性を有する電位パルスと負の極性を有する電位パルスとが組み合わされて構成される。上記のような液晶装置100の駆動方式は相展開駆動方式と呼ばれている。なお、液晶装置100の駆動方式は、相展開駆動方式に限定されるものではない。
【0055】
図2に戻り、素子基板10には、共通電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104に接続した接続配線131の近傍に本発明における第2配線層としての周辺電極141が画素領域Eを囲んで設けられている。周辺電極141は、素子基板10のX方向における両端側においてY方向に延在する一対の引き回し配線142にそれぞれ接続されている。一対の引き回し配線142のそれぞれは、X方向に配列した複数の外部接続用端子104のうち両端側に位置する共通電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104と、本発明の第1の電位としての駆動電位(VDDY)が供給される外部接続用端子104との間に配置された本発明の第2の電位(CE)が供給される外部接続用端子104に接続されている。素子基板10における周辺電極141の詳しい配置については、後述する実施例において説明する。
【0056】
次に、図4を参照して液晶装置100の画素Pにおける構造、特に素子基板10の詳しい配線構造と液晶分子の配向状態について説明する。
図4に示すように、素子基板10の基材10s上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、例えばAl(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
【0057】
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(下地絶縁膜)11aが形成され、第1絶縁膜11a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、第1ソース・ドレイン領域、接合領域、チャネル領域、接合領域、第2ソース・ドレイン領域を有するLDD構造が形成されている。
【0058】
半導体層30aを覆うように第2絶縁膜(ゲート絶縁膜)11bが形成される。さらに第2絶縁膜11bを挟んでチャネル領域に対向する位置にゲート電極30gが形成される。
【0059】
ゲート電極30gと第2絶縁膜11bとを覆うようにして第3絶縁膜11cが形成され、半導体層30aのそれぞれの端部と重なる位置に第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを貫通する2つのコンタクトホールCNT1,CNT2が形成される。
【0060】
そして、2つのコンタクトホールCNT1,CNT2を埋めると共に第3絶縁膜11cを覆うようにAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の導電部材料を用いて導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT1を介して第1ソース・ドレイン領域に繋がるソース電極31ならびにデータ線6aが形成される。同時にコンタクトホールCNT2を介して第2ソース・ドレイン領域に繋がるドレイン電極32(第1中継電極6b)が形成される。
【0061】
次に、データ線6aおよび第1中継電極6bと第3絶縁膜11cを覆って第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0062】
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT3が形成される。このコンタクトホールCNT3を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT3を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。
配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
【0063】
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13aが形成される。第2層間絶縁膜13aも、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理が施される。
【0064】
第2層間絶縁膜13aの第2中継電極7bと重なる位置にコンタクトホールCNT4が形成される。このコンタクトホールCNT4を被覆すると共に第2層間絶縁膜13aを覆うように例えばAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の金属からなる導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aと第3中継電極16dとが形成される。
【0065】
第1容量電極16aのうち、後に形成される誘電体層16bを介して第2容量電極16cと対向する部分の外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。また、第3中継電極16dのうちコンタクトホールCNT5と重なる部分を除いた外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。
【0066】
絶縁膜13bと第1容量電極16aを覆って誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いてもよい。平面的に第3中継電極16dと重なる部分の誘電体層16bはエッチング等により除かれる。誘電体層16bを覆うように例えばTiN(窒化チタン)などの導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aに対向配置され、第3中継電極16dに繋がる第2容量電極16cが形成される。誘電体層16bと、誘電体層16bを挟んで対向配置された第1容量電極16aと第2容量電極16cとにより保持容量16が構成される。
【0067】
次に、第2容量電極16cと誘電体層16bとを覆う第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、CMP処理などの平坦化処理が施される。第2容量電極16cが第3中継電極16dと接した部分に到達するように第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。
【0068】
このコンタクトホールCNT5を被覆し、第3層間絶縁膜14を覆うようにITOなどの透明導電膜(電極膜)が成膜される。この透明導電膜(電極膜)をパターニングしてコンタクトホールCNT5を介して第2容量電極16cおよび第3中継電極16dと電気的に繋がる画素電極15が形成される。
【0069】
第2容量電極16cは第3中継電極16d、コンタクトホールCNT4、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT3、第1中継電極6bを介してTFT30のドレイン電極32と電気的に接続すると共に、コンタクトホールCNT5を介して画素電極15と電気的に接続している。
【0070】
第1容量電極16aは複数の画素Pに跨るように形成され、等価回路(図3参照)における容量線3bとして機能している。これにより、TFT30のドレイン電極32を介して画素電極15に与えられた電位を第1容量電極16aと第2容量電極16cとの間において保持することができる。
【0071】
このように素子基板10の基材10s上には、複数の配線層が形成されており、配線層間を絶縁する絶縁膜や層間絶縁膜の符号を用いて配線層を表すこととする。すなわち、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを括って配線層11と呼ぶ。配線層11の代表的な配線はゲート電極30gである。配線層12の代表的な配線はデータ線6aである。第2層間絶縁膜13a、絶縁膜13b、誘電体層16bを括って配線層13と呼び、代表的な配線は配線7aである。同じく、配線層14の代表的な配線は、第1容量電極16a(容量線3b)である。
【0072】
画素電極15を覆うように配向膜18が形成され、液晶層50を介して素子基板10に対向配置される対向基板20の共通電極23を覆うように配向膜24が形成される。前述したように、配向膜18,24は無機配向膜であって、酸化シリコンなどの無機材料を所定の方向から例えば斜め蒸着して柱状に成長したカラム18a,24aの集合体からなる。このような配向膜18,24に対して負の誘電異方性を有する液晶分子LCは、配向膜面の法線方向に対してカラム18a,24aの傾斜方向に3度〜5度のプレチルト角度θpを有して略垂直配向する。画素電極15と共通電極23との間に交流電位を与えて液晶層50を駆動することによって液晶分子LCは画素電極15と共通電極23との間に生ずる電界方向に傾くように挙動(振動)する。
【0073】
図5は無機材料の斜め蒸着方向とイオン性不純物に起因する表示不具合との関係を示す概略平面図である。カラム18a,24aを形成するところの無機材料の斜め蒸着方向は、図5に示すように、例えば素子基板10側では、破線の矢印で示したように右上から左下に向かって所定の方位角度θaでY方向と交差する方向である。素子基板10に対して対向配置される対向基板20側では、実線の矢印で示したように左下から右上に向かって所定の方位角度θaでY方向と交差する方向である。所定の角度θaは例えば45度である。なお、図5に示した斜め蒸着方向は、液晶装置100を対向基板20側から見たときの方向である。
【0074】
液晶層50を駆動することにより、液晶分子LCの挙動(振動)が生じ、液晶層50と配向膜18,24との界面近傍に図5に示した破線あるいは実線の矢印で示した斜め蒸着方向に液晶分子LCのフロー(流れ)が生ずる。仮に液晶層50に正または負のイオン性不純物が含まれていると、イオン性不純物は液晶分子LCのフロー(流れ)に沿って画素領域Eの角部に向かって誘導され偏在するおそれがある。イオン性不純物の偏在により角部に位置する画素Pにおいて液晶層50の絶縁抵抗が低下すると、当該画素Pにおいて駆動電位の低下を招き、図5に示すような表示ムラや通電による焼き付き現象が顕著となる。
【0075】
本実施形態の液晶装置100は、図2に示した素子基板10の第2配線層としての周辺電極141に直流電位を与えて、上記表示ムラや焼き付き現象を招く要因となる正または負のイオン性不純物の偏在を改善するものである。前述したように素子基板10は、複数の配線層を有しており、シール材40と画素領域Eとの間の周辺領域には、所定の電位が与えられた各種の配線が存在する。周辺電極141の機能を十分に発揮させるには、他の配線の電位の影響を受け難くする必要があり、周辺電極141と他の配線との相対的な配置を適正化する必要がある。以降、本実施形態の素子基板10の配線構造に基づいた実施例を挙げて説明する。
【0076】
図6は実施例に示される配線構造の平面的な位置を示す概略平面図である。図6に示すように画素領域Eは、表示に寄与する画素PがX方向およびY方向に配列した表示領域E1と、表示領域E1を囲んで複数のダミーの画素Pが配置されたダミー画素領域E2とを含んでいる。画素領域Eを囲むシール材40と画素領域Eとの間の領域を周辺領域E3と呼ぶ。以降の各実施例では、図6に示すように周辺領域E3を囲むシール材40の左辺を横断し表示領域E1の左下角部に位置する画素Pに至るA−A’線で切った液晶装置100の概略断面図を示して説明する。シール材40の左辺に沿った周辺領域E3の部分における素子基板10の配線構造に対して、シール材40の右辺に沿った周辺領域E3の部分における素子基板10の配線構造は基本的にX方向において対称な構造となっている。なお、図6において画素領域Eの上辺に沿った周辺領域E3の部分と、画素領域Eの下辺に沿った周辺領域E3の部分には、走査線駆動回路102に定電位を供給する本発明における第1配線層のうち共通電位(LCCOM)よりも低電位の基準電位(VSS)を供給する配線は配置されていない。共通電位(LCCOM)と同電位または共通電位(LCCOM)よりも高電位の配線が配置されている。なお、本実施形態における定電位配線は、走査線駆動回路102のバッファ回路の最終段に電源としての駆動電位(VDDY)や基準電位(VSSY)を供給する配線である。
【0077】
本実施形態の液晶装置100における走査線駆動回路102に供給される電源(定電位)は、例えば駆動電位(VDDY)が15.5v、基準電位(VSSY)が0v(GND)である。容量線3bや対向基板20の共通電極23に印加される共通電位(LCCOM)は例えば6vである。表示用の画素Pにおける画素電極15には、画像信号の階調度合いに応じて、共通電位(LCCOM)を基準として±5vの範囲の矩形状の交流電位が駆動周波数に基づくフレームに対応して印加される。
【0078】
以降の実施例における素子基板10の配線構造において、「同層」とは、同じ配線層において同じ配線材料を用いて同じ膜厚で形成された配線を言う。同一の配線層であれば、接続先が異なる配線同士を例えばフォトリソグラフィ法により同時に形成することができる。なお、上記配線同士を同時に形成することに限定されず、異なるタイミングで形成してもよい。
【0079】
(実施例1)
図7(a)は実施例1の素子基板における配線構造を示す概略断面図、図7(b)は実施例1の周辺電極および接続配線の配置における変形例を示す概略断面図である。
図7(a)に示すように、実施例1では、周辺領域E3の配線層12に、基準電位(VSSY)が供給(印加)される走査線駆動回路用配線121s(以降、定電位配線121sと呼ぶ)と、駆動電位(VDDY)が供給(印加)される走査線駆動回路用配線121d(以降、定電位配線121dと呼ぶ)とが配置されている。定電位配線121sとダミー画素領域E2との間の配線層13に共通電位(LCCOM)が供給(印加)される接続配線131が配置されている。画素電極15と同層において、配線層12の定電位配線121sと重なる位置に周辺電極141が配置されている。実施例1では、本発明における第1配線層の例が定電位配線121s,121dであり、本発明における第2配線層の例が周辺電極141であり、本発明における第3配線層の例が接続配線131である。
【0080】
図8は液晶装置における駆動電圧と画素の透過率との関係を示すV−T曲線である。例えば、ノーマリーブラックの場合、表示領域E1の画素電極15には、前述したように画像信号に基づいた交流電位が与えられ、画素Pの透過率は図8のV−T曲線が示すように0%〜100%の間で変化する。液晶装置100が駆動されているとき、ダミー画素領域E2の画素電極15には光漏れが生じない程度の例えば、透過率が50%以下の電位V50以下、好ましくは透過率が10%以下のV10以下の電位が液晶層50のON−OFFに係らず与えられる。具体的には、V50は共通電位(LCCOM;6v)を基準として±2.5vであり、V10は共通電位(LCCOM;6v)を基準として±1v程度である。
【0081】
まず、実施例1の周辺電極141が無い場合について説明する。周辺領域E3には共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131よりも低電位である基準電位(VSSY)が供給される定電位配線121sが定電位配線121dと接続配線131との間に配置されているので、定電位配線121sよりも高電位のダミー画素領域E2の画素電極15から定電位配線121sに向かう第1の電界が生ずる。液晶層50中に正のイオン性不純物が含まれていた場合には、正のイオン性不純物は接続配線131(共通電位;6v)よりもさらに低電位(0v)な定電位配線121sに引き寄せられる。したがって、図5に示したようなイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラが生じ易くなる。なお、負のイオン性不純物は定電位配線121sと画素電極15との第1の電界の影響を受けて定電位配線121sに引き寄せられずむしろ表示領域E1側に跳ね返される。
【0082】
これに対して、実施例1では、画素電極15と同層に設けられた周辺電極141に共通電位(LCCOM;6v)よりも高電位な第2の電位として例えば+7vの直流電位を印加する。そうすると、図7(a)の実線の矢印で示したように、周辺電極141から画素電極15に向かうと共に、周辺電極141から共通電極23に向かう第2の電界が生ずる。このような第2の電界は、前述した第1の電界と逆向きであって、第1の電界によって引き寄せられる正のイオン性不純物を表示領域E1側に跳ね返し、液晶層50中に分散させることができる。つまり、正のイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することによる表示ムラを低減できる。一方で、負のイオン性不純物は定電位配線121sよりも強く周辺電極141に引き寄せて吸着されることになる。負のイオン性不純物が周辺電極141に吸着されて、液晶分子の配向に影響したとしても、周辺領域E3は、図1に示したように見切り部21によって遮光されているので、負のイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラは目立たない。
【0083】
実施例1における第1配線層としての定電位配線121s,121dの配置や周辺電極141に印加される電位は、これに限定されない。例えば、図7(a)において括弧書きで示すように、定電位配線121s,121dの位置を入れ替えて、定電位配線121sと接続配線131との間に駆動電位(VDDY)が印加される定電位配線121dが配置されていてもよい。その場合、周辺領域E3には共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131よりも高電位である駆動電位(VDDY)が供給される定電位配線121dが定電位配線121sと接続配線131との間に配置されるので、定電位配線121dから定電位配線121dよりも低電位のダミー画素領域E2の画素電極15に向かう第1の電界が生ずる。液晶層50中に負のイオン性不純物が含まれていた場合には、負のイオン性不純物は接続配線131(共通電位;6v)よりもさらに高電位(15.5v)な定電位配線121dに引き寄せられる。したがって、画素電極15と同層に定電位配線121dと平面視で重なるよう周辺電極141を設け、周辺電極141に共通電位(LCCOM;6v)よりも低電位な第2の電位として例えば+5vの直流電位を印加する。そうすると図7(a)の破線の矢印で示したように、画素電極15から周辺電極141に向かうと共に、共通電極23から周辺電極141に向かう第2の電界が生ずる。よって、定電位配線121dと画素電極15との間の第1の電界で引き寄せられる負のイオン性不純物を表示領域E1側に跳ね返し、液晶層50中に分散させることができる。つまり、負のイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することによる表示ムラを低減できる。一方で、正のイオン性不純物は定電位配線121dよりも強く周辺電極141に引き寄せて吸着することになる。正のイオン性不純物が周辺電極141に吸着されて、液晶分子の配向に影響したとしても、周辺領域E3は、図1に示したように見切り部21によって遮光されているので、正のイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラは目立たない。
【0084】
イオン性不純物は、液晶装置100を構成するところの材料に含まれていたり、あるいは別の部材や薬品類など液晶装置100を製造する工程において侵入するものと考えられる。したがって、液晶層50中に含まれるイオン性不純物は、正と負の両方の極性を示すものが含まれる可能性があるものの、正と負のイオン性不純物の量が同じであることは極めて少ない。図5に示したような表示ムラや焼き付き現象を呈する製品を解析することより、液晶層50中に含まれるイオン性不純物の極性を調べることができる。支配的なイオン性不純物の極性に応じて、実施例1のように周辺電極141を配置して対応する直流電位を印加すれば、支配的なイオン性不純物の偏在による表示ムラや焼き付き現象を低減することができる。
【0085】
周辺電極141に与えられる第2の電位の大きさは、ダミー画素領域E2における液晶分子の配向状態を乱して光漏れなどの不具合が生じないように、共通電位(LCCOM;6v)に対してV50以下の電位、好ましくはV10以下の電位とする。
【0086】
また、図7(b)に示すように、配線層12に設けられた定電位配線121s(定電位配線121d)と配線層13に設けられた接続配線131とが平面視で重なっているとき、周辺電極141は、接続配線131と重なっていない定電位配線121s(定電位配線121d)の部分と重なるように配置することが好ましい。言い換えれば、定電位配線121s(定電位配線121d)に周辺電極141で覆われていない領域があるとき、接続配線131は、平面視で周辺電極141と重ならない定電位配線121s(定電位配線121d)の領域の少なくとも一部と重なるように配置されていることが好ましい。これによれば、定電位配線121s(定電位配線121d)と画素電極15との間に生ずる第1の電界を第3配線層としての接続配線131によって遮って、正または負のイオン性不純物が定電位配線121s(定電位配線121d)に向かって引き寄せられることを低減できる。
【0087】
(実施例2)
図9は実施例2の素子基板における配線構造を示す概略断面図である。実施例2は、実施例1に対して周辺電極141が設けられる範囲を異ならせたものである。具体的には、図9に示すように、実施例2の周辺電極141は、配線層12に設けられた定電位配線121s,121dと、配線層13に設けられた接続配線131とに平面的に重なるように、画素電極15と同層に形成されている。
【0088】
実施例2によれば、定電位配線121s,121dと画素電極15との間に生ずる第1の電界を遮り、周辺電極141と画素電極15との間に生ずる第2の電界の強度を強化できる。周辺電極141に与える直流電位によって、正または負のイオン性不純物のうち一方は跳ね返されて液晶層50中に分散し、他方は実施例1よりも面積が大きくなった周辺電極141に吸着される。つまり、正または負のイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することによる表示ムラや焼き付き現象をより低減することができる。
【0089】
実施例2における定電位配線121s,121dの配置はこれに限定されず、実施例1と同様に、場所を入れ替えて配置してもよい。周辺電極141に与える直流電位についても実施例1と同じであり、液晶層50に支配的に含まれるイオン性不純物の極性に応じた直流電位を印加する。
また、周辺電極141は平面視で第1配線層としての定電位配線121s,121dと重なっていればよく、共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131のすべてに重ならなくてもよい。
【0090】
(実施例3)
図10は実施例3の素子基板における配線構造を示す概略断面図である。図10に示すように、実施例3は、実施例1に対して、画素電極15と同層において、周辺電極141とダミー画素領域E2の画素電極15との間に共通電位(LCCOM;6v)が印加される第2の周辺電極151を設けたものである。
【0091】
実施例3によれば、共通電位(LCCOM;6v)よりも高いまたは低い直流電位が印加される周辺電極141と、共通電位(LCCOM;6v)を基準とした交流電位が印加されるダミー画素領域E2の画素電極15との間に、直流の共通電位(LCCOM;6v)が印加される第2の周辺電極151を配置することよって、周辺電極141と画素電極15との間に生ずる(実線または破線で示した)第2の電界の強度を強化できる。
【0092】
また、周辺電極141に正または負のイオン性不純物を吸着させた場合には、画素電極15との間に第2の周辺電極151を配置することによって、直流電位が印加された電極が並列することになり、周辺電極141に吸着させたイオン性不純物が画素電極15側に拡散し難くなる。
【0093】
第2の周辺電極151の平面的な配置は、周辺電極141と画素領域Eとの間であって、画素領域Eを囲むように配置してもよいし、図5に示した表示ムラの発生状況を考慮して、図6における画素領域Eの左辺と右辺とに沿って、接続配線131と平面視で重なるように直線的に配置してもよい。第2の周辺電極151に共通電位(LCCOM)を与える方法としては、図2に示したX方向に延在する接続配線132と重なる位置においてコンタクトホールを設けて、第2の周辺電極151と接続配線132とを電気的に接続する方法が挙げられる。
【0094】
(実施例4)
図11は実施例4の素子基板の配線構造を示す概略断面図である。図11に示すように、実施例4は、実施例3に対して、周辺電極141とシール材40との間において、共通電位(LCCOM;6v)が印加される第3の周辺電極152をさらに設けたものである。
シール材40は、シール材40自体や液晶装置100の製造工程において微量の金属イオンや未硬化物などのイオン性不純物を含むおそれがある。
実施例4によれば、周辺領域E3においてシール材40と周辺電極141との間に共通電位が印加される第3の周辺電極152が配置されている。また、第3の周辺電極152は、平面視で第1配線層としての定電位配線121d(定電位配線121s)と重なるように配置されている。
したがって、共通電位(LCCOM;6v)よりも高いまたは低い直流電位が印加される周辺電極141と、共通電位(LCCOM;6v)が印加される第3の周辺電極152との間に第3の電界が生ずる。実線あるいは破線で示した第3の電界の方向により、シール材40から液晶層50中に拡散しようとする正または負のイオン性不純物をシール材40側に跳ね返して表示領域E1側に拡散することを低減することができる。
つまり、実施例4は、液晶層50中に含まれるイオン性不純物だけでなく、シール材40中に含まれるイオン性不純物に起因する表示不具合も同時に改善することができる。
【0095】
(実施例5)
図12は実施例5の素子基板の配線構造を示す概略断面図である。図12に示すように、実施例5は、素子基板10の基材10s上において、第1配線層としての定電位配線121d,121sと画素電極15との間の配線層14に第2配線層としての周辺電極161が形成されている。周辺電極161は、下層の配線層13に形成された中継電極134を介して基準電位(VSSY;0v)が印加される定電位配線121sに電気的に接続されている。また、平面視で第1配線層としての定電位配線121d,121sと第3配線層としての接続配線131と重なるように配置されている。なお、周辺電極161は実施例1の周辺電極141と同様に平面的には画素領域Eを囲むように配線層14において形成されている。また、平面視で少なくとも第1配線層としての定電位配線121d,121sに重なるように配置されていればよく、接続配線131のすべてと重ならなくてもよい。
【0096】
実施例5によれば、図12の破線の矢印で示すように、周辺電極161とダミー画素領域E2の画素電極15との間に画素電極15から周辺電極161に向かう電界が生ずる。また、周辺電極161と共通電極23との間に共通電極23から周辺電極161に向かう電界が生ずる。このような電界を第4の電界とすると、第4の電界により液晶層50中に含まれる正のイオン性不純物は周辺電極161に引き寄せられ、負のイオン性不純物は跳ね返される。第4の電界の強度は、周辺電極161と液晶層50との間の第3層間絶縁膜14の材質と膜厚とによって決まる。例えば、第3層間絶縁膜14をNSGとBSGの積層膜として膜厚をおよそ600nmとすれば、周辺電極161が設けられた配線層14の液晶層50に面する表面における直流電位をおよそ+1vとすることができる。
つまり、実施例1のように画素電極15と同層に周辺電極141を設けなくても、周辺電極141と同様な効果を得ることができる。加えて、周辺電極141の場合は、外部接続用端子104を介して外部から共通電位(LCCOM)よりも低い電位が印加されるが、実施例5では、液晶装置100における走査線駆動回路102に電源(定電位)を供給する定電位配線121sの電位を利用して周辺電極161に共通電位(LCCOM)よりも低い電位を与えることができる。すなわち、外部から電位を供給しなくてよいので、外部接続用端子104を増やすことなく有効利用できる。
【0097】
(実施例6)
図13は実施例6の素子基板の配線構造を示す概略断面図である。図13に示すように、実施例6は、実施例5に対して第2配線層としての周辺電極161が電気的に接続される第1配線層を駆動電位(VDDY)が供給される定電位配線121dとしたものである。
素子基板10の基材10s上において、第1配線層としての定電位配線121s,121dと画素電極15との間の配線層14に周辺電極161が形成されている。周辺電極161は、下層の配線層13に形成された中継電極134を介して駆動電位(VDDY;15.5v)が印加される定電位配線121dに電気的に接続されている。また、平面視で第1配線層としての定電位配線121s,121dと第3配線層としての接続配線131と重なるように配置されている。周辺電極161は実施例1の周辺電極141と同様に平面的には画素領域Eを囲むように配線層14において形成されている。また、平面視で少なくとも第1配線層としての定電位配線121s,121dに重なるように配置されていればよく、接続配線131のすべてと重ならなくてもよい。
【0098】
実施例6によれば、図13の実線の矢印で示すように、周辺電極161とダミー画素領域E2の画素電極15との間に周辺電極161から画素電極15に向かう電界が生ずる。また、周辺電極161と共通電極23との間に周辺電極161から共通電極23に向かう電界が生ずる。このような電界を第5の電界とすると、第5の電界により液晶層50中に含まれる負のイオン性不純物は周辺電極161に引き寄せられ、正のイオン性不純物は跳ね返される。第5の電界の強度もまた、周辺電極161と液晶層50との間の第3層間絶縁膜14の材質と膜厚とによって決まる。例えば、第3層間絶縁膜14をNSGとBSGの積層膜として膜厚をおよそ600nmとすれば、周辺電極161が設けられた配線層14の液晶層50に面する表面における直流電位をおよそ+14.5vとすることができる。
つまり、実施例1のように画素電極15と同層に周辺電極141を設けなくても、周辺電極141と同様な効果を得ることができる。加えて、周辺電極141の場合は、外部接続用端子104を介して外部から共通電位(LCCOM)よりも高い電位が印加されるが、実施例6では、液晶装置100における走査線駆動回路102に電源(定電位)を供給する定電位配線121dの電位を利用して周辺電極161に共通電位(LCCOM)よりも高い電位を与えることができる。すなわち、外部から電位を供給しなくてよいので、外部接続用端子104を増やすことなく有効利用できる。
【0099】
以上、本実施形態の液晶装置100において、実施例1〜実施例6に示すように、画素領域Eの周辺領域E3に、走査線駆動回路102のバッファ回路の最終段に電源(定電位)を供給する定電位配線121s,121dや、共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131の配置を考慮して周辺電極141(周辺電極161)を配置する。そして、周辺電極141(周辺電極161)に直流電位を印加することにより、液晶層50中あるいはシール材40中に含まれるイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することに起因する表示ムラや焼き付き現象を低減することができる。
【0100】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置について、図14を参照して説明する。図14は投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【0101】
図14に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0102】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0103】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0104】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0105】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0106】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0107】
このような投射型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、イオン性不純物に起因する表示ムラや焼き付き現象などが低減された液晶装置100を用いているので、見栄えのよい表示品質と高い信頼性とが実現されている。
【0108】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置100および該液晶装置100を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0109】
(変形例1)上記液晶装置100における第2配線層としての周辺電極141(周辺電極161)は、画素領域Eを囲むように配置されることに限定されない。図15は変形例の周辺電極の配置を示す概略平面図である。図15に示すように、液晶分子の挙動によるフローの発生で、イオン性不純物が偏在し易い画素領域Eの対角に位置する角部に対応して、当該角部に沿った部分に一対の周辺電極141Aと周辺電極141Bとを配置してもよい。なお、周辺電極141A,141Bは実施例1〜実施例4のように画素電極15と同層に形成してもよいし、実施例5および実施例6のように配線層14に形成して第1配線層と電気的に接続させてもよい。
【0110】
(変形例2)上記液晶装置100の実施例4では、画素電極15と同層においてシール材40と画素領域Eとの間に、画素領域E側から第2の周辺電極151、周辺電極141、第3の周辺電極152を隣り合って配置した。図5に示したような表示ムラや焼き付き現象が主にシール材40に含まれるイオン性不純物に起因する場合には、実施例4の第2の周辺電極151を削除した構成も採用することができる。
【0111】
(変形例3)上記液晶装置100における配向処理は、VA(Vertical Alignment)方式に限定されない。例えば、TN(Twisted Nematic)方式やOCB(Optically Compensated Bend)方式においても周辺電極141(周辺電極161)を適用して、イオン性不純物に起因する表示不具合を改善することができる。
【0112】
(変形例4)周辺電極141(周辺電極161)が適用される液晶装置100は、透過型に限定されない。画素電極15が光反射性を有する反射型の液晶装置においても適用することができる。
【0113】
(変形例5)液晶装置100を適用可能な電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
3a…走査線、10…第1基板としての素子基板、15…画素電極、20…第2基板としての対向基板、23…共通電極、30…薄膜トランジスター(TFT)、40…シール材、50…液晶層、100…液晶装置、102…走査線駆動回路、121s,121d…第1配線層および走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線、131…第3配線層としての接続配線、141,161…第2配線層としての周辺電極、151…第4配線層としての第2の周辺電極、152…第5配線層としての第3の周辺電極、1000…電子機器としての投射型表示装置、E…画素領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および液晶装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、一対の基板間に挟持された正または負の誘電異方性を有する液晶層を有している。例えば、一対の基板のそれぞれに電極を形成し、液晶層を挟んだ電極間に駆動電圧を印加して液晶層を構成する液晶分子の配向状態を電界効果により変化させることで、液晶層に入射する光を画像信号に基づいて光学的に変調することができる。液晶層の厚みは例えば数μm程度であって高い絶縁性を有している。ところが、液晶層にイオン性不純物が含まれていると、液晶層の全体あるいは局部において絶縁性が低下して所望の駆動電圧が印加されないため表示むらや焼き付きなどの表示不具合が生ずるおそれがあった。
【0003】
イオン性不純物に起因する上記表示不具合を改善すべく、例えば特許文献1には、一対の基板のうち一方の基板のシール材の内側において、表示領域の外側にイオン性不純物吸着電極を備えた液晶表示装置が開示されている。
上記特許文献1には、上記イオン性不純物吸着電極が、複数の画素電極とこれらの画素電極にそれぞれ接続された薄膜トランジスターとが設けられたアクティブマトリクス基板に配置され、コモン電圧に対して正または負の直流電圧を印加して、イオン性不純物を吸着させる例が示されている。
また、上記イオン性不純物吸着電極をデータ信号ラインまたは走査信号ラインあるいは補助容量ラインに電気的に接続する例も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−196355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のアクティブマトリクス基板の表示領域の外側には、データ信号ライン、走査信号ライン、補助容量ラインの他にも電位が与えられた配線が配置されることがある。したがって、電位が与えられた配線と上記イオン性不純物吸着電極との相対的な位置関係を考慮する必要がある。例えば上記イオン性不純物吸着電極よりも電位が与えられた配線が画素電極の近傍に存在すると該配線と画素電極との間に生ずる電界によって液晶中のイオン性不純物が引き寄せられ表示領域に偏在して、上記イオン性不純物吸着電極に電位を与えてもイオン性不純物がまったくあるいは効率的に吸着できないことが考えられる。つまり、アクティブマトリクス基板の表示領域の外側に上記イオン性不純物吸着電極を配置しても所望の効果が得られないおそれがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より高電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、画素電極と、共通電位よりも低電位の第1の電位が印加された第1配線層との間に第1の電界が生ずる。また、画素電極と、第1基板の共通電位よりも高電位の第2の電位が印加された第2配線層との間に第2の電界が生ずる。第1の電界の方向に対して第2の電界の方向は逆向きとなり、且つ第2配線層は平面視で第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられているので、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界を弱めることになる。したがって、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界によって引き寄せられる液晶層中の正のイオン性不純物を第2配線層と画素電極との間に生ずる第2の電界によって跳ね返し液晶層中に分散させることができる。よって、正のイオン性不純物が局所的に偏在することによる表示むらや焼き付きなどの表示不具合が低減され、安定した表示状態が維持される高い信頼性を有する液晶装置を提供できる。
【0009】
[適用例2]本適用例の他の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より低電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、画素電極と、共通電位よりも高電位の第1の電位が印加された第1配線層との間に第1の電界が生ずる。また、画素電極と、第1基板の共通電位よりも低電位の第2の電位が印加された第2配線層との間に第2の電界が生ずる。第1の電界の方向に対して第2の電界の方向は逆向きとなり、且つ第2配線層は平面視で第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられているので、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界を弱めることになる。したがって、第1配線層と画素電極との間に生ずる第1の電界によって引き寄せられる液晶層中の負のイオン性不純物を第2配線層と画素電極との間に生ずる第2の電界によって跳ね返し液晶層中に分散させることができる。よって、負のイオン性不純物が局所的に偏在することによる表示むらや焼き付きなどの表示不具合が低減され、安定した表示状態が維持される高い信頼性を有する液晶装置を提供できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする。
この構成によれば、走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線は、例えばGND電位などの共通電位よりも低い基準固定電位を供給する配線や、共通電位よりも高い駆動固定電位を供給する配線が挙げられる。このような定電位配線と画素電極との間の第1の電界によって引き寄せられる正または負のイオン性不純物を画素電極と第2配線層との間の第2の電界によって跳ね返して液晶中に分散させることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、且つ平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間において前記画素電極と隣り合って設けられ、前記共通電位が印加された第3配線層を有することを特徴とする。
画素電極には、共通電位を基準として極性が異なる交流の電位が印加されるも平均すればほぼ共通電位となる。この構成によれば、第2配線層と画素電極との間に共通電位が印加される第3配線層を有しているので、第3配線層が無い場合に比べて画素電極と第2配線層との間に生ずる第2の電界の強度が強化される。すなわち、表示不具合を引き起こす要因となる正または負のイオン性不純物をより効果的に液晶層中に分散させることができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の液晶装置において、前記第3配線層は、前記第1配線層と前記第2配線層との間に設けられ、平面視で前記第2配線層と重ならない前記第1配線層の領域の少なくとも一部と重なるように配置されていることが好ましい。
この構成によれば、正または負のイオン性不純物を引き寄せる画素電極と第1配線層との間に生ずる第1の電界を第3配線層により遮ることができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の液晶装置において、前記第2配線層は、平面視で前記第1配線層を覆うように重なっていることが好ましい。
本適用例によっても、正または負のイオン性不純物を引き寄せる画素電極と第1配線層との間に生ずる第1の電界を第2配線層により確実に遮ることができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の液晶装置において、前記第2配線層は、前記画素電極と同じ配線層に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、第2配線層が画素電極と同層に形成されているので、同層でない場合に比べて、画素電極と第2配線層との間に生ずる第2の電界の強度を強化できる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の液晶装置において、前記第2配線層は、前記画素領域の少なくとも角部に沿った部分に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、液晶層のON−OFFによって第1配線層側に引き寄せられる正または負のイオン性不純物が画素領域の角部に偏在することを低減することができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層を有するとしてもよい。
この構成によれば、画素電極と第2配線層との間に生ずる第2の電界の強度をより強化できる。つまり、第1配線層側に引き寄せられる正または負のイオン性不純物を液晶中に分散させることができる。
【0018】
[適用例10]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層を有するとしてもよい。
この構成によれば、第2配線層と第5配線層との間に第3の電界が生ずる。第3の電界によって、シール材に含まれた正または負のイオン性不純物が画素領域側の液晶中に拡散することを低減することができる。
【0019】
[適用例11]上記適用例の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極と同層において、平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層と、平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層とを有するとしてもよい。
この構成によれば、第1配線層側に引き寄せられる正または負のイオン性不純物を液晶中に分散させることができると共に、シール材に含まれた正または負のイオン性不純物が画素領域側の液晶中に拡散することを低減することができる。つまり、正または負のイオン性不純物に起因する表示不具合の発生がより低減された液晶装置を提供できる。
【0020】
[適用例12]上記適用例の液晶装置において、前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が50%となる電位以下であることが好ましい。
この構成によれば、第2の電位を第2配線層に印加したとしても、第2配線層と画素電極との間、あるいは第2配線層と共通電極との間で生ずる電界によって液晶層における液晶分子の配向が乱れて、例えばノーマリーブラックモードにおける光漏れなどの不具合が生ずることを回避できる。
【0021】
[適用例13]上記適用例の液晶装置において、前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が10%となる電位以下であることがより好ましい。
この構成によれば、第2の電位を第2配線層に印加したとしても、第2配線層と画素電極との間、あるいは第2配線層と共通電極との間で生ずる電界によって液晶層における液晶分子の配向が乱れて、例えばノーマリーブラックモードにおける光漏れなどの不具合が生ずることをより確実に回避できる。
【0022】
[適用例14]本適用例の他の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、共通電位よりも低電位の第1の電位が印加された第1配線層に電気的に接続された第2配線層を介して画素電極との間に負のイオン性不純物を跳ね返す電界が生ずる。つまり、第2配線層に外部から共通電位よりも低電位の電位を与える必要が無く、液晶装置における第1配線層を利用して第2配線層に電位を与えて、負のイオン性不純物の偏在に起因する表示不具合を低減できる。
【0024】
[適用例15]本適用例の他の液晶装置は、一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、共通電位よりも高電位の第1の電位が印加された第1配線層に電気的に接続された第2配線層を介して画素電極との間に正のイオン性不純物を跳ね返す電界が生ずる。つまり、第2配線層に外部から共通電位よりも高電位の電位を与える必要が無く、液晶装置における第1配線層を利用して第2配線層に電位を与えて、正のイオン性不純物の偏在に起因する表示不具合を低減できる。
【0026】
[適用例16]上記適用例の他の液晶装置において、前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする。
この構成によれば、走査線駆動回路に基準電位を供給する定電位配線や駆動電位を供給する定電位配線を利用して第2配線層に共通電位よりも低いまたは高い電位を与えることができる。
【0027】
[適用例17]本適用例の電子機器は、上記適用例に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、正または負のイオン性不純物の偏在に起因する表示不具合が低減され高い信頼性を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った液晶装置の構造を示す概略断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す回路図。
【図3】画素の電気的な構成を示す等価回路図。
【図4】液晶装置における画素の構造を示す概略断面図。
【図5】無機材料の斜め蒸着方向とイオン性不純物に起因する表示不具合との関係を示す概略平面図。
【図6】実施例に示される配線構造の平面的な位置を示す概略平面図。
【図7】(a)は実施例1の素子基板における配線構造を示す概略断面図、(b)は実施例1の周辺電極および接続配線の配置における変形例を示す概略断面図。
【図8】液晶装置における駆動電圧と画素の透過率との関係を示すV−T曲線。
【図9】実施例2の素子基板における配線構造を示す概略断面図。
【図10】実施例3の素子基板における配線構造を示す概略断面図。
【図11】実施例4の素子基板の配線構造を示す概略断面図。
【図12】実施例5の素子基板の配線構造を示す概略断面図。
【図13】実施例6の素子基板の配線構造を示す概略断面図。
【図14】投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図15】変形例の周辺電極の配置を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0030】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0031】
(第1実施形態)
本実施形態では、薄膜トランジスターを画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0032】
<液晶装置>
まず、本実施形態の液晶装置について図1〜図3を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、図1(b)は図1(a)のH−H’線で切った液晶装置の構造を示す概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す回路図、図3は画素の電気的な構成を示す等価回路図、図4は液晶装置における画素の構造を示す概略断面図である。
【0033】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された第1基板としての素子基板10および第2基板としての対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、基材10s,20sとして透明な例えば石英基板やガラス基板が用いられている。
【0034】
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、対向基板20の外周に沿って配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0035】
シール材40の内側に複数の画素Pが配列した画素領域Eが設けられている。また、シール材40と画素領域Eとの間に画素領域Eを取り囲んで見切り部21が設けられている。見切り部21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなる。なお、画素領域Eは、表示に寄与する複数の画素Pに加えて、複数の画素Pを囲むように配置されたダミー画素を含むとしてもよい。また、図1では図示省略したが、画素領域Eにおいて複数の画素Pをそれぞれ平面的に区分する遮光部(ブラックマトリックス;BM)が対向基板20に設けられている。
【0036】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40と該1辺部との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40と画素領域Eとの間に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40と画素領域Eとの間に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部に沿ったシール材40と検査回路103との間には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。
【0037】
これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101に沿ったシール材40と画素領域Eとの間に設けてもよい。
【0038】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた透光性の画素電極15およびスイッチング素子である薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以降、TFTと呼称する)30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。本発明における第1基板としての素子基板10は、少なくとも基材10sと、基材10s上に形成された画素電極15、TFT30、信号配線、配向膜18を含むものである。
【0039】
対向基板20の液晶層50側の表面には、見切り部21と、これを覆うように成膜された平坦化層22と、平坦化層22を覆うように設けられた共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とが設けられている。本発明における第2基板としての対向基板20は、少なくとも基材20sと、基材20s上に形成された見切り部21、共通電極23、配向膜24を含むものである。
【0040】
見切り部21は、図1(a)に示すように画素領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置に設けられている。これにより対向基板20側からこれらの駆動回路を含む周辺回路に入射する光を遮蔽して、周辺回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が画素領域Eに入射しないように遮蔽して、画素領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0041】
平坦化層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して見切り部21を覆うように設けられている。このような平坦化層22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0042】
共通電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、平坦化層22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0043】
画素電極15を覆う配向膜18および共通電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、正の誘電異方性を有する液晶分子に対して略水平配向処理が施された有機配向膜や、気相成長法を用いてSiOx(酸化シリコン)などの無機材料を成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向させた無機配向膜が挙げられる。本実施形態では、配向膜18および配向膜24として上記無機配向膜が採用されている。
【0044】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。本実施形態ではノーマリーブラックモードが採用されている。
【0045】
次に、図2および図3を参照して、液晶装置100の電気的な構成について説明する。図2に示すように、液晶装置100は、素子基板10上の画素領域Eの周辺に位置する周辺領域に形成された、データ線駆動回路101、走査線駆動回路102、サンプリング回路70などの駆動回路と、複数の外部接続用端子104と、を有している。さらに、外部接続用端子104に接続された、データ線駆動回路101に電源(VDDX、VSSX)や駆動用の信号(DX、CLXなど)を供給するためのデータ線駆動回路用配線114、走査線駆動回路102に電源(VDDY、VSSY)や駆動用の信号(DY、CLYなど)を供給するための走査線駆動回路用配線121、画像信号(VID1〜VID6)をサンプリング回路70を介してデータ線6aに供給するための複数の画像信号線111などを含む複数の引き回し配線を有している。
【0046】
データ線駆動回路101には、外部回路から外部接続用端子104及びデータ線駆動回路用配線114を介してXクロック信号CLX(及び反転Xクロック信号CLX)、及びXスタートパルスDXが供給される。データ線駆動回路101は、XスタートパルスDXが入力されると、Xクロック信号CLX(及び反転Xクロック信号CLX)に基づくタイミングで、選択信号S1,S2,・・・,Snを順次生成して複数の選択信号供給線113にそれぞれ出力する。
【0047】
走査線駆動回路102には、外部回路から外部接続用端子104及び走査線駆動回路用配線121を介してYクロック信号CLY(及び反転Yクロック信号CLY)、Yスタートパルス信号DYが供給される。走査線駆動回路102は、これらの信号に基づいて走査信号G1,G2,・・・,Gmを順次生成して複数の走査線3aにそれぞれ出力する。
【0048】
サンプリング回路70は、Nチャネル型の片チャネル型TFT、もしくは相補型のTFTから構成されたサンプリングトランジスター(以降、S−TFTと称する)71を複数備えている。互いに隣り合う6本のデータ線6aがそれぞれ接続された6個のS−TFT71のゲートは1つに纏められて1本の選択信号供給線113に接続されている。つまりデータ線駆動回路101から各選択信号S1,S2,・・・,Snが6個のS−TFT71を1つの単位(系列)として供給される。1つの単位(系列)を構成する6個のS−TFT71のソースには6本の画像信号線111のうちいずれかが接続配線112を経由して接続されている。S−TFT71のドレインにはデータ線6aが接続されている。サンプリング回路70は、選択信号S1,S2,・・・,Snが入力されると、1つの単位(系列)を構成する6個のS−TFT71に対応するデータ線6aに選択信号S1,S2,・・・,Snに応じて画像信号(VID1〜VID6)を順次供給する。
【0049】
図2に示すように、液晶装置100には、前述したように、素子基板10の中央部分を占める画素領域Eに、マトリックス状に配列された複数の画素Pを有している。
【0050】
図3に示すように、複数の画素Pには、それぞれ、画素電極15と当該画素電極15をスイッチング制御するためのTFT30と、保持容量16とが形成されている。画像信号(VID1〜VID6)が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。走査信号G1,G2,・・・,Gmが供給される走査線3aが当該TFT30のゲートに接続されている。画素電極15と保持容量16の一方の電極がTFT30のドレインに接続されている。保持容量16の他方の電極は走査線3aと並行して配置された容量線3bに接続されている。
【0051】
容量線3bは、図2に示すようにX方向において画素領域Eの外側まで引き出され、容量線3bの両端が走査線駆動回路102と画素領域Eとの間においてY方向に延在する一対の接続配線131に電気的に接続されている。一対の接続配線131のそれぞれは、対向基板20の角部に設けられた4つの上下導通部106のうちX方向において対峙する上下導通部106同士を電気的に接続する一対の接続配線132に電気的に接続されている。
一対の接続配線132同士は、上下導通部106と電気的に接続された対向基板20の共通電極23を介して電気的に接続される。さらに一対の接続配線132のうちの外部接続用端子104側に位置する接続配線132は、共通電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104に接続された引き回し配線133に接続されている。つまり、容量線3bには、共通電位(LCCOM)が印加される。
【0052】
サンプリング回路70の6個を1つの単位(系列)としたS−TFT71に供給される選択信号S1,S2,・・・,Snは、この順に順次に供給してもよいし、隣り合う6本のデータ線6aに対応するS−TFT71に対して、系列ごとに供給するようにしてもよい。なお、図2に示すように、本実施形態においては、選択信号S1,S2,・・・,Snは、6相にシリアル−パラレル展開された画像信号(VID1〜VID6)の夫々に対応して、6本のデータ線6aの組に対してグループ(系列)ごとに供給されるよう構成されている。画像信号(VID1〜VID6)の相展開数(即ち、シリアル−パラレル展開される画像信号の系列数)に関しては、6相に限られるものでなく、例えば、9相、12相、24相など、複数相に展開された画像信号が、その展開数に対応した数を一組としたデータ線6aの組に対して供給されるように構成してもよい。
【0053】
走査線3aには走査線駆動回路102から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1,G2,…,Gmが、この順に順次印加される構成となっている。前述したように、画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されており、走査信号G1,G2,…,GmによってTFT30が一定期間だけON状態となり、データ線6aから供給される画像信号(VID1〜VID6)が画素電極15に所定のタイミングで書き込まれる。
さらに、各画素Pに保持された画像信号(VID1〜VID6)がリークするのを防ぐために、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が付加されている。
【0054】
画素電極15を介して液晶層50(図1(b)参照)に書き込まれた所定レベルの画像信号(VID1〜VID6)は、対向基板20に形成された共通電極23との間で一定期間保持される。液晶層50は印加される電圧レベルにより液晶分子の配向や秩序が変化して、液晶層50を透過する光が変調され、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少して暗表示となり、ノーマリーブラックモードであれば、各画素Pの単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加して明表示となり、全体として液晶装置100からは画像信号(VID1〜VID6)に応じたコントラストをもつ表示光が射出され、表示が行われる。なお、画像信号(VID1〜VID6)は、液晶層50を交流駆動するために共通電位(LCCOM)に対して正の極性を有する電位パルスと負の極性を有する電位パルスとが組み合わされて構成される。上記のような液晶装置100の駆動方式は相展開駆動方式と呼ばれている。なお、液晶装置100の駆動方式は、相展開駆動方式に限定されるものではない。
【0055】
図2に戻り、素子基板10には、共通電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104に接続した接続配線131の近傍に本発明における第2配線層としての周辺電極141が画素領域Eを囲んで設けられている。周辺電極141は、素子基板10のX方向における両端側においてY方向に延在する一対の引き回し配線142にそれぞれ接続されている。一対の引き回し配線142のそれぞれは、X方向に配列した複数の外部接続用端子104のうち両端側に位置する共通電位(LCCOM)が供給される外部接続用端子104と、本発明の第1の電位としての駆動電位(VDDY)が供給される外部接続用端子104との間に配置された本発明の第2の電位(CE)が供給される外部接続用端子104に接続されている。素子基板10における周辺電極141の詳しい配置については、後述する実施例において説明する。
【0056】
次に、図4を参照して液晶装置100の画素Pにおける構造、特に素子基板10の詳しい配線構造と液晶分子の配向状態について説明する。
図4に示すように、素子基板10の基材10s上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、例えばAl(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
【0057】
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる第1絶縁膜(下地絶縁膜)11aが形成され、第1絶縁膜11a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、第1ソース・ドレイン領域、接合領域、チャネル領域、接合領域、第2ソース・ドレイン領域を有するLDD構造が形成されている。
【0058】
半導体層30aを覆うように第2絶縁膜(ゲート絶縁膜)11bが形成される。さらに第2絶縁膜11bを挟んでチャネル領域に対向する位置にゲート電極30gが形成される。
【0059】
ゲート電極30gと第2絶縁膜11bとを覆うようにして第3絶縁膜11cが形成され、半導体層30aのそれぞれの端部と重なる位置に第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを貫通する2つのコンタクトホールCNT1,CNT2が形成される。
【0060】
そして、2つのコンタクトホールCNT1,CNT2を埋めると共に第3絶縁膜11cを覆うようにAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の導電部材料を用いて導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT1を介して第1ソース・ドレイン領域に繋がるソース電極31ならびにデータ線6aが形成される。同時にコンタクトホールCNT2を介して第2ソース・ドレイン領域に繋がるドレイン電極32(第1中継電極6b)が形成される。
【0061】
次に、データ線6aおよび第1中継電極6bと第3絶縁膜11cを覆って第1層間絶縁膜12が形成される。第1層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0062】
第1中継電極6bと重なる位置に第1層間絶縁膜12を貫通するコンタクトホールCNT3が形成される。このコンタクトホールCNT3を被覆すると共に第1層間絶縁膜12を覆うように例えばAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の金属からなる導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、配線7aと、コンタクトホールCNT3を介して第1中継電極6bに電気的に接続される第2中継電極7bとが形成される。
配線7aは、平面的にTFT30の半導体層30aやデータ線6aと重なるように形成され、固定電位が与えられてシールド層として機能するものである。
【0063】
配線7aと第2中継電極7bとを覆うように第2層間絶縁膜13aが形成される。第2層間絶縁膜13aも、例えばシリコンの酸化物や窒化物あるいは酸窒化物を用いて形成することができ、CMP処理などの平坦化処理が施される。
【0064】
第2層間絶縁膜13aの第2中継電極7bと重なる位置にコンタクトホールCNT4が形成される。このコンタクトホールCNT4を被覆すると共に第2層間絶縁膜13aを覆うように例えばAl(アルミニウム)やその合金などの遮光性の金属からなる導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aと第3中継電極16dとが形成される。
【0065】
第1容量電極16aのうち、後に形成される誘電体層16bを介して第2容量電極16cと対向する部分の外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。また、第3中継電極16dのうちコンタクトホールCNT5と重なる部分を除いた外縁を覆うように絶縁膜13bがパターニング形成される。
【0066】
絶縁膜13bと第1容量電極16aを覆って誘電体層16bが成膜される。誘電体層16bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いてもよい。平面的に第3中継電極16dと重なる部分の誘電体層16bはエッチング等により除かれる。誘電体層16bを覆うように例えばTiN(窒化チタン)などの導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aに対向配置され、第3中継電極16dに繋がる第2容量電極16cが形成される。誘電体層16bと、誘電体層16bを挟んで対向配置された第1容量電極16aと第2容量電極16cとにより保持容量16が構成される。
【0067】
次に、第2容量電極16cと誘電体層16bとを覆う第3層間絶縁膜14が形成される。第3層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、CMP処理などの平坦化処理が施される。第2容量電極16cが第3中継電極16dと接した部分に到達するように第3層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT5が形成される。
【0068】
このコンタクトホールCNT5を被覆し、第3層間絶縁膜14を覆うようにITOなどの透明導電膜(電極膜)が成膜される。この透明導電膜(電極膜)をパターニングしてコンタクトホールCNT5を介して第2容量電極16cおよび第3中継電極16dと電気的に繋がる画素電極15が形成される。
【0069】
第2容量電極16cは第3中継電極16d、コンタクトホールCNT4、第2中継電極7b、コンタクトホールCNT3、第1中継電極6bを介してTFT30のドレイン電極32と電気的に接続すると共に、コンタクトホールCNT5を介して画素電極15と電気的に接続している。
【0070】
第1容量電極16aは複数の画素Pに跨るように形成され、等価回路(図3参照)における容量線3bとして機能している。これにより、TFT30のドレイン電極32を介して画素電極15に与えられた電位を第1容量電極16aと第2容量電極16cとの間において保持することができる。
【0071】
このように素子基板10の基材10s上には、複数の配線層が形成されており、配線層間を絶縁する絶縁膜や層間絶縁膜の符号を用いて配線層を表すこととする。すなわち、第1絶縁膜11a、第2絶縁膜11b、第3絶縁膜11cを括って配線層11と呼ぶ。配線層11の代表的な配線はゲート電極30gである。配線層12の代表的な配線はデータ線6aである。第2層間絶縁膜13a、絶縁膜13b、誘電体層16bを括って配線層13と呼び、代表的な配線は配線7aである。同じく、配線層14の代表的な配線は、第1容量電極16a(容量線3b)である。
【0072】
画素電極15を覆うように配向膜18が形成され、液晶層50を介して素子基板10に対向配置される対向基板20の共通電極23を覆うように配向膜24が形成される。前述したように、配向膜18,24は無機配向膜であって、酸化シリコンなどの無機材料を所定の方向から例えば斜め蒸着して柱状に成長したカラム18a,24aの集合体からなる。このような配向膜18,24に対して負の誘電異方性を有する液晶分子LCは、配向膜面の法線方向に対してカラム18a,24aの傾斜方向に3度〜5度のプレチルト角度θpを有して略垂直配向する。画素電極15と共通電極23との間に交流電位を与えて液晶層50を駆動することによって液晶分子LCは画素電極15と共通電極23との間に生ずる電界方向に傾くように挙動(振動)する。
【0073】
図5は無機材料の斜め蒸着方向とイオン性不純物に起因する表示不具合との関係を示す概略平面図である。カラム18a,24aを形成するところの無機材料の斜め蒸着方向は、図5に示すように、例えば素子基板10側では、破線の矢印で示したように右上から左下に向かって所定の方位角度θaでY方向と交差する方向である。素子基板10に対して対向配置される対向基板20側では、実線の矢印で示したように左下から右上に向かって所定の方位角度θaでY方向と交差する方向である。所定の角度θaは例えば45度である。なお、図5に示した斜め蒸着方向は、液晶装置100を対向基板20側から見たときの方向である。
【0074】
液晶層50を駆動することにより、液晶分子LCの挙動(振動)が生じ、液晶層50と配向膜18,24との界面近傍に図5に示した破線あるいは実線の矢印で示した斜め蒸着方向に液晶分子LCのフロー(流れ)が生ずる。仮に液晶層50に正または負のイオン性不純物が含まれていると、イオン性不純物は液晶分子LCのフロー(流れ)に沿って画素領域Eの角部に向かって誘導され偏在するおそれがある。イオン性不純物の偏在により角部に位置する画素Pにおいて液晶層50の絶縁抵抗が低下すると、当該画素Pにおいて駆動電位の低下を招き、図5に示すような表示ムラや通電による焼き付き現象が顕著となる。
【0075】
本実施形態の液晶装置100は、図2に示した素子基板10の第2配線層としての周辺電極141に直流電位を与えて、上記表示ムラや焼き付き現象を招く要因となる正または負のイオン性不純物の偏在を改善するものである。前述したように素子基板10は、複数の配線層を有しており、シール材40と画素領域Eとの間の周辺領域には、所定の電位が与えられた各種の配線が存在する。周辺電極141の機能を十分に発揮させるには、他の配線の電位の影響を受け難くする必要があり、周辺電極141と他の配線との相対的な配置を適正化する必要がある。以降、本実施形態の素子基板10の配線構造に基づいた実施例を挙げて説明する。
【0076】
図6は実施例に示される配線構造の平面的な位置を示す概略平面図である。図6に示すように画素領域Eは、表示に寄与する画素PがX方向およびY方向に配列した表示領域E1と、表示領域E1を囲んで複数のダミーの画素Pが配置されたダミー画素領域E2とを含んでいる。画素領域Eを囲むシール材40と画素領域Eとの間の領域を周辺領域E3と呼ぶ。以降の各実施例では、図6に示すように周辺領域E3を囲むシール材40の左辺を横断し表示領域E1の左下角部に位置する画素Pに至るA−A’線で切った液晶装置100の概略断面図を示して説明する。シール材40の左辺に沿った周辺領域E3の部分における素子基板10の配線構造に対して、シール材40の右辺に沿った周辺領域E3の部分における素子基板10の配線構造は基本的にX方向において対称な構造となっている。なお、図6において画素領域Eの上辺に沿った周辺領域E3の部分と、画素領域Eの下辺に沿った周辺領域E3の部分には、走査線駆動回路102に定電位を供給する本発明における第1配線層のうち共通電位(LCCOM)よりも低電位の基準電位(VSS)を供給する配線は配置されていない。共通電位(LCCOM)と同電位または共通電位(LCCOM)よりも高電位の配線が配置されている。なお、本実施形態における定電位配線は、走査線駆動回路102のバッファ回路の最終段に電源としての駆動電位(VDDY)や基準電位(VSSY)を供給する配線である。
【0077】
本実施形態の液晶装置100における走査線駆動回路102に供給される電源(定電位)は、例えば駆動電位(VDDY)が15.5v、基準電位(VSSY)が0v(GND)である。容量線3bや対向基板20の共通電極23に印加される共通電位(LCCOM)は例えば6vである。表示用の画素Pにおける画素電極15には、画像信号の階調度合いに応じて、共通電位(LCCOM)を基準として±5vの範囲の矩形状の交流電位が駆動周波数に基づくフレームに対応して印加される。
【0078】
以降の実施例における素子基板10の配線構造において、「同層」とは、同じ配線層において同じ配線材料を用いて同じ膜厚で形成された配線を言う。同一の配線層であれば、接続先が異なる配線同士を例えばフォトリソグラフィ法により同時に形成することができる。なお、上記配線同士を同時に形成することに限定されず、異なるタイミングで形成してもよい。
【0079】
(実施例1)
図7(a)は実施例1の素子基板における配線構造を示す概略断面図、図7(b)は実施例1の周辺電極および接続配線の配置における変形例を示す概略断面図である。
図7(a)に示すように、実施例1では、周辺領域E3の配線層12に、基準電位(VSSY)が供給(印加)される走査線駆動回路用配線121s(以降、定電位配線121sと呼ぶ)と、駆動電位(VDDY)が供給(印加)される走査線駆動回路用配線121d(以降、定電位配線121dと呼ぶ)とが配置されている。定電位配線121sとダミー画素領域E2との間の配線層13に共通電位(LCCOM)が供給(印加)される接続配線131が配置されている。画素電極15と同層において、配線層12の定電位配線121sと重なる位置に周辺電極141が配置されている。実施例1では、本発明における第1配線層の例が定電位配線121s,121dであり、本発明における第2配線層の例が周辺電極141であり、本発明における第3配線層の例が接続配線131である。
【0080】
図8は液晶装置における駆動電圧と画素の透過率との関係を示すV−T曲線である。例えば、ノーマリーブラックの場合、表示領域E1の画素電極15には、前述したように画像信号に基づいた交流電位が与えられ、画素Pの透過率は図8のV−T曲線が示すように0%〜100%の間で変化する。液晶装置100が駆動されているとき、ダミー画素領域E2の画素電極15には光漏れが生じない程度の例えば、透過率が50%以下の電位V50以下、好ましくは透過率が10%以下のV10以下の電位が液晶層50のON−OFFに係らず与えられる。具体的には、V50は共通電位(LCCOM;6v)を基準として±2.5vであり、V10は共通電位(LCCOM;6v)を基準として±1v程度である。
【0081】
まず、実施例1の周辺電極141が無い場合について説明する。周辺領域E3には共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131よりも低電位である基準電位(VSSY)が供給される定電位配線121sが定電位配線121dと接続配線131との間に配置されているので、定電位配線121sよりも高電位のダミー画素領域E2の画素電極15から定電位配線121sに向かう第1の電界が生ずる。液晶層50中に正のイオン性不純物が含まれていた場合には、正のイオン性不純物は接続配線131(共通電位;6v)よりもさらに低電位(0v)な定電位配線121sに引き寄せられる。したがって、図5に示したようなイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラが生じ易くなる。なお、負のイオン性不純物は定電位配線121sと画素電極15との第1の電界の影響を受けて定電位配線121sに引き寄せられずむしろ表示領域E1側に跳ね返される。
【0082】
これに対して、実施例1では、画素電極15と同層に設けられた周辺電極141に共通電位(LCCOM;6v)よりも高電位な第2の電位として例えば+7vの直流電位を印加する。そうすると、図7(a)の実線の矢印で示したように、周辺電極141から画素電極15に向かうと共に、周辺電極141から共通電極23に向かう第2の電界が生ずる。このような第2の電界は、前述した第1の電界と逆向きであって、第1の電界によって引き寄せられる正のイオン性不純物を表示領域E1側に跳ね返し、液晶層50中に分散させることができる。つまり、正のイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することによる表示ムラを低減できる。一方で、負のイオン性不純物は定電位配線121sよりも強く周辺電極141に引き寄せて吸着されることになる。負のイオン性不純物が周辺電極141に吸着されて、液晶分子の配向に影響したとしても、周辺領域E3は、図1に示したように見切り部21によって遮光されているので、負のイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラは目立たない。
【0083】
実施例1における第1配線層としての定電位配線121s,121dの配置や周辺電極141に印加される電位は、これに限定されない。例えば、図7(a)において括弧書きで示すように、定電位配線121s,121dの位置を入れ替えて、定電位配線121sと接続配線131との間に駆動電位(VDDY)が印加される定電位配線121dが配置されていてもよい。その場合、周辺領域E3には共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131よりも高電位である駆動電位(VDDY)が供給される定電位配線121dが定電位配線121sと接続配線131との間に配置されるので、定電位配線121dから定電位配線121dよりも低電位のダミー画素領域E2の画素電極15に向かう第1の電界が生ずる。液晶層50中に負のイオン性不純物が含まれていた場合には、負のイオン性不純物は接続配線131(共通電位;6v)よりもさらに高電位(15.5v)な定電位配線121dに引き寄せられる。したがって、画素電極15と同層に定電位配線121dと平面視で重なるよう周辺電極141を設け、周辺電極141に共通電位(LCCOM;6v)よりも低電位な第2の電位として例えば+5vの直流電位を印加する。そうすると図7(a)の破線の矢印で示したように、画素電極15から周辺電極141に向かうと共に、共通電極23から周辺電極141に向かう第2の電界が生ずる。よって、定電位配線121dと画素電極15との間の第1の電界で引き寄せられる負のイオン性不純物を表示領域E1側に跳ね返し、液晶層50中に分散させることができる。つまり、負のイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することによる表示ムラを低減できる。一方で、正のイオン性不純物は定電位配線121dよりも強く周辺電極141に引き寄せて吸着することになる。正のイオン性不純物が周辺電極141に吸着されて、液晶分子の配向に影響したとしても、周辺領域E3は、図1に示したように見切り部21によって遮光されているので、正のイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラは目立たない。
【0084】
イオン性不純物は、液晶装置100を構成するところの材料に含まれていたり、あるいは別の部材や薬品類など液晶装置100を製造する工程において侵入するものと考えられる。したがって、液晶層50中に含まれるイオン性不純物は、正と負の両方の極性を示すものが含まれる可能性があるものの、正と負のイオン性不純物の量が同じであることは極めて少ない。図5に示したような表示ムラや焼き付き現象を呈する製品を解析することより、液晶層50中に含まれるイオン性不純物の極性を調べることができる。支配的なイオン性不純物の極性に応じて、実施例1のように周辺電極141を配置して対応する直流電位を印加すれば、支配的なイオン性不純物の偏在による表示ムラや焼き付き現象を低減することができる。
【0085】
周辺電極141に与えられる第2の電位の大きさは、ダミー画素領域E2における液晶分子の配向状態を乱して光漏れなどの不具合が生じないように、共通電位(LCCOM;6v)に対してV50以下の電位、好ましくはV10以下の電位とする。
【0086】
また、図7(b)に示すように、配線層12に設けられた定電位配線121s(定電位配線121d)と配線層13に設けられた接続配線131とが平面視で重なっているとき、周辺電極141は、接続配線131と重なっていない定電位配線121s(定電位配線121d)の部分と重なるように配置することが好ましい。言い換えれば、定電位配線121s(定電位配線121d)に周辺電極141で覆われていない領域があるとき、接続配線131は、平面視で周辺電極141と重ならない定電位配線121s(定電位配線121d)の領域の少なくとも一部と重なるように配置されていることが好ましい。これによれば、定電位配線121s(定電位配線121d)と画素電極15との間に生ずる第1の電界を第3配線層としての接続配線131によって遮って、正または負のイオン性不純物が定電位配線121s(定電位配線121d)に向かって引き寄せられることを低減できる。
【0087】
(実施例2)
図9は実施例2の素子基板における配線構造を示す概略断面図である。実施例2は、実施例1に対して周辺電極141が設けられる範囲を異ならせたものである。具体的には、図9に示すように、実施例2の周辺電極141は、配線層12に設けられた定電位配線121s,121dと、配線層13に設けられた接続配線131とに平面的に重なるように、画素電極15と同層に形成されている。
【0088】
実施例2によれば、定電位配線121s,121dと画素電極15との間に生ずる第1の電界を遮り、周辺電極141と画素電極15との間に生ずる第2の電界の強度を強化できる。周辺電極141に与える直流電位によって、正または負のイオン性不純物のうち一方は跳ね返されて液晶層50中に分散し、他方は実施例1よりも面積が大きくなった周辺電極141に吸着される。つまり、正または負のイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することによる表示ムラや焼き付き現象をより低減することができる。
【0089】
実施例2における定電位配線121s,121dの配置はこれに限定されず、実施例1と同様に、場所を入れ替えて配置してもよい。周辺電極141に与える直流電位についても実施例1と同じであり、液晶層50に支配的に含まれるイオン性不純物の極性に応じた直流電位を印加する。
また、周辺電極141は平面視で第1配線層としての定電位配線121s,121dと重なっていればよく、共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131のすべてに重ならなくてもよい。
【0090】
(実施例3)
図10は実施例3の素子基板における配線構造を示す概略断面図である。図10に示すように、実施例3は、実施例1に対して、画素電極15と同層において、周辺電極141とダミー画素領域E2の画素電極15との間に共通電位(LCCOM;6v)が印加される第2の周辺電極151を設けたものである。
【0091】
実施例3によれば、共通電位(LCCOM;6v)よりも高いまたは低い直流電位が印加される周辺電極141と、共通電位(LCCOM;6v)を基準とした交流電位が印加されるダミー画素領域E2の画素電極15との間に、直流の共通電位(LCCOM;6v)が印加される第2の周辺電極151を配置することよって、周辺電極141と画素電極15との間に生ずる(実線または破線で示した)第2の電界の強度を強化できる。
【0092】
また、周辺電極141に正または負のイオン性不純物を吸着させた場合には、画素電極15との間に第2の周辺電極151を配置することによって、直流電位が印加された電極が並列することになり、周辺電極141に吸着させたイオン性不純物が画素電極15側に拡散し難くなる。
【0093】
第2の周辺電極151の平面的な配置は、周辺電極141と画素領域Eとの間であって、画素領域Eを囲むように配置してもよいし、図5に示した表示ムラの発生状況を考慮して、図6における画素領域Eの左辺と右辺とに沿って、接続配線131と平面視で重なるように直線的に配置してもよい。第2の周辺電極151に共通電位(LCCOM)を与える方法としては、図2に示したX方向に延在する接続配線132と重なる位置においてコンタクトホールを設けて、第2の周辺電極151と接続配線132とを電気的に接続する方法が挙げられる。
【0094】
(実施例4)
図11は実施例4の素子基板の配線構造を示す概略断面図である。図11に示すように、実施例4は、実施例3に対して、周辺電極141とシール材40との間において、共通電位(LCCOM;6v)が印加される第3の周辺電極152をさらに設けたものである。
シール材40は、シール材40自体や液晶装置100の製造工程において微量の金属イオンや未硬化物などのイオン性不純物を含むおそれがある。
実施例4によれば、周辺領域E3においてシール材40と周辺電極141との間に共通電位が印加される第3の周辺電極152が配置されている。また、第3の周辺電極152は、平面視で第1配線層としての定電位配線121d(定電位配線121s)と重なるように配置されている。
したがって、共通電位(LCCOM;6v)よりも高いまたは低い直流電位が印加される周辺電極141と、共通電位(LCCOM;6v)が印加される第3の周辺電極152との間に第3の電界が生ずる。実線あるいは破線で示した第3の電界の方向により、シール材40から液晶層50中に拡散しようとする正または負のイオン性不純物をシール材40側に跳ね返して表示領域E1側に拡散することを低減することができる。
つまり、実施例4は、液晶層50中に含まれるイオン性不純物だけでなく、シール材40中に含まれるイオン性不純物に起因する表示不具合も同時に改善することができる。
【0095】
(実施例5)
図12は実施例5の素子基板の配線構造を示す概略断面図である。図12に示すように、実施例5は、素子基板10の基材10s上において、第1配線層としての定電位配線121d,121sと画素電極15との間の配線層14に第2配線層としての周辺電極161が形成されている。周辺電極161は、下層の配線層13に形成された中継電極134を介して基準電位(VSSY;0v)が印加される定電位配線121sに電気的に接続されている。また、平面視で第1配線層としての定電位配線121d,121sと第3配線層としての接続配線131と重なるように配置されている。なお、周辺電極161は実施例1の周辺電極141と同様に平面的には画素領域Eを囲むように配線層14において形成されている。また、平面視で少なくとも第1配線層としての定電位配線121d,121sに重なるように配置されていればよく、接続配線131のすべてと重ならなくてもよい。
【0096】
実施例5によれば、図12の破線の矢印で示すように、周辺電極161とダミー画素領域E2の画素電極15との間に画素電極15から周辺電極161に向かう電界が生ずる。また、周辺電極161と共通電極23との間に共通電極23から周辺電極161に向かう電界が生ずる。このような電界を第4の電界とすると、第4の電界により液晶層50中に含まれる正のイオン性不純物は周辺電極161に引き寄せられ、負のイオン性不純物は跳ね返される。第4の電界の強度は、周辺電極161と液晶層50との間の第3層間絶縁膜14の材質と膜厚とによって決まる。例えば、第3層間絶縁膜14をNSGとBSGの積層膜として膜厚をおよそ600nmとすれば、周辺電極161が設けられた配線層14の液晶層50に面する表面における直流電位をおよそ+1vとすることができる。
つまり、実施例1のように画素電極15と同層に周辺電極141を設けなくても、周辺電極141と同様な効果を得ることができる。加えて、周辺電極141の場合は、外部接続用端子104を介して外部から共通電位(LCCOM)よりも低い電位が印加されるが、実施例5では、液晶装置100における走査線駆動回路102に電源(定電位)を供給する定電位配線121sの電位を利用して周辺電極161に共通電位(LCCOM)よりも低い電位を与えることができる。すなわち、外部から電位を供給しなくてよいので、外部接続用端子104を増やすことなく有効利用できる。
【0097】
(実施例6)
図13は実施例6の素子基板の配線構造を示す概略断面図である。図13に示すように、実施例6は、実施例5に対して第2配線層としての周辺電極161が電気的に接続される第1配線層を駆動電位(VDDY)が供給される定電位配線121dとしたものである。
素子基板10の基材10s上において、第1配線層としての定電位配線121s,121dと画素電極15との間の配線層14に周辺電極161が形成されている。周辺電極161は、下層の配線層13に形成された中継電極134を介して駆動電位(VDDY;15.5v)が印加される定電位配線121dに電気的に接続されている。また、平面視で第1配線層としての定電位配線121s,121dと第3配線層としての接続配線131と重なるように配置されている。周辺電極161は実施例1の周辺電極141と同様に平面的には画素領域Eを囲むように配線層14において形成されている。また、平面視で少なくとも第1配線層としての定電位配線121s,121dに重なるように配置されていればよく、接続配線131のすべてと重ならなくてもよい。
【0098】
実施例6によれば、図13の実線の矢印で示すように、周辺電極161とダミー画素領域E2の画素電極15との間に周辺電極161から画素電極15に向かう電界が生ずる。また、周辺電極161と共通電極23との間に周辺電極161から共通電極23に向かう電界が生ずる。このような電界を第5の電界とすると、第5の電界により液晶層50中に含まれる負のイオン性不純物は周辺電極161に引き寄せられ、正のイオン性不純物は跳ね返される。第5の電界の強度もまた、周辺電極161と液晶層50との間の第3層間絶縁膜14の材質と膜厚とによって決まる。例えば、第3層間絶縁膜14をNSGとBSGの積層膜として膜厚をおよそ600nmとすれば、周辺電極161が設けられた配線層14の液晶層50に面する表面における直流電位をおよそ+14.5vとすることができる。
つまり、実施例1のように画素電極15と同層に周辺電極141を設けなくても、周辺電極141と同様な効果を得ることができる。加えて、周辺電極141の場合は、外部接続用端子104を介して外部から共通電位(LCCOM)よりも高い電位が印加されるが、実施例6では、液晶装置100における走査線駆動回路102に電源(定電位)を供給する定電位配線121dの電位を利用して周辺電極161に共通電位(LCCOM)よりも高い電位を与えることができる。すなわち、外部から電位を供給しなくてよいので、外部接続用端子104を増やすことなく有効利用できる。
【0099】
以上、本実施形態の液晶装置100において、実施例1〜実施例6に示すように、画素領域Eの周辺領域E3に、走査線駆動回路102のバッファ回路の最終段に電源(定電位)を供給する定電位配線121s,121dや、共通電位(LCCOM)が印加される接続配線131の配置を考慮して周辺電極141(周辺電極161)を配置する。そして、周辺電極141(周辺電極161)に直流電位を印加することにより、液晶層50中あるいはシール材40中に含まれるイオン性不純物が画素領域Eの角部に偏在することに起因する表示ムラや焼き付き現象を低減することができる。
【0100】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置について、図14を参照して説明する。図14は投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【0101】
図14に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0102】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0103】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0104】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0105】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0106】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0107】
このような投射型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、イオン性不純物に起因する表示ムラや焼き付き現象などが低減された液晶装置100を用いているので、見栄えのよい表示品質と高い信頼性とが実現されている。
【0108】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置100および該液晶装置100を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0109】
(変形例1)上記液晶装置100における第2配線層としての周辺電極141(周辺電極161)は、画素領域Eを囲むように配置されることに限定されない。図15は変形例の周辺電極の配置を示す概略平面図である。図15に示すように、液晶分子の挙動によるフローの発生で、イオン性不純物が偏在し易い画素領域Eの対角に位置する角部に対応して、当該角部に沿った部分に一対の周辺電極141Aと周辺電極141Bとを配置してもよい。なお、周辺電極141A,141Bは実施例1〜実施例4のように画素電極15と同層に形成してもよいし、実施例5および実施例6のように配線層14に形成して第1配線層と電気的に接続させてもよい。
【0110】
(変形例2)上記液晶装置100の実施例4では、画素電極15と同層においてシール材40と画素領域Eとの間に、画素領域E側から第2の周辺電極151、周辺電極141、第3の周辺電極152を隣り合って配置した。図5に示したような表示ムラや焼き付き現象が主にシール材40に含まれるイオン性不純物に起因する場合には、実施例4の第2の周辺電極151を削除した構成も採用することができる。
【0111】
(変形例3)上記液晶装置100における配向処理は、VA(Vertical Alignment)方式に限定されない。例えば、TN(Twisted Nematic)方式やOCB(Optically Compensated Bend)方式においても周辺電極141(周辺電極161)を適用して、イオン性不純物に起因する表示不具合を改善することができる。
【0112】
(変形例4)周辺電極141(周辺電極161)が適用される液晶装置100は、透過型に限定されない。画素電極15が光反射性を有する反射型の液晶装置においても適用することができる。
【0113】
(変形例5)液晶装置100を適用可能な電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
3a…走査線、10…第1基板としての素子基板、15…画素電極、20…第2基板としての対向基板、23…共通電極、30…薄膜トランジスター(TFT)、40…シール材、50…液晶層、100…液晶装置、102…走査線駆動回路、121s,121d…第1配線層および走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線、131…第3配線層としての接続配線、141,161…第2配線層としての周辺電極、151…第4配線層としての第2の周辺電極、152…第5配線層としての第3の周辺電極、1000…電子機器としての投射型表示装置、E…画素領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より高電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より低電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、
前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第1基板は、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、且つ平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間において前記画素電極と隣り合って設けられ、前記共通電位が印加された第3配線層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第3配線層は、前記第1配線層と前記第2配線層との間に設けられ、平面視で前記第2配線層と重ならない前記第1配線層の領域の少なくとも一部と重なるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第2配線層は、平面視で前記第1配線層を覆うように重なっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第2配線層は、前記画素電極と同じ配線層に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記第2配線層は、前記画素領域の少なくとも角部に沿った部分に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層を有することを特徴とする請求項7または8に記載の液晶装置。
【請求項10】
前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層を有することを特徴とする請求項7または8に記載の液晶装置。
【請求項11】
前記第1基板は、前記画素電極と同層において、平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層と、平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層とを有することを特徴とする請求項7または8に記載の液晶装置。
【請求項12】
前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が50%となる電位以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項13】
前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が10%となる電位以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項14】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項15】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項16】
前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、
前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする請求項14または15に記載の液晶装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より高電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記共通電位より低電位である第2の電位が印加された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、
前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第1基板は、前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、且つ平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間において前記画素電極と隣り合って設けられ、前記共通電位が印加された第3配線層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第3配線層は、前記第1配線層と前記第2配線層との間に設けられ、平面視で前記第2配線層と重ならない前記第1配線層の領域の少なくとも一部と重なるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第2配線層は、平面視で前記第1配線層を覆うように重なっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第2配線層は、前記画素電極と同じ配線層に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記第2配線層は、前記画素領域の少なくとも角部に沿った部分に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層を有することを特徴とする請求項7または8に記載の液晶装置。
【請求項10】
前記第1基板は、前記画素電極と同層において平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層を有することを特徴とする請求項7または8に記載の液晶装置。
【請求項11】
前記第1基板は、前記画素電極と同層において、平面視で前記第2配線層と前記画素電極との間に前記共通電位が印加された第4配線層と、平面視で前記第2配線層と前記シール材との間に前記共通電位が印加された第5配線層とを有することを特徴とする請求項7または8に記載の液晶装置。
【請求項12】
前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が50%となる電位以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項13】
前記第2の電位は、前記共通電位を基準として前記液晶層におけるON−OFF時の透過率の変化の割合を100%とするとき変化の割合が10%となる電位以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項14】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より低電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項15】
一方の面側に複数の画素電極が配列する画素領域が設けられた第1基板と、
共通電位が印加される共通電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わすシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間において前記シール材で囲まれた領域内に保持された液晶層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記画素領域と前記シール材との間において前記第1基板の基材と前記液晶層との間に設けられ、前記共通電位より高電位の第1の電位が印加された第1配線層と、前記第1配線層と前記液晶層との間に設けられると共に、平面視で前記第1配線層の少なくとも一部と重なって設けられ、前記第1配線層と電気的に接続された第2配線層と、を含むことを特徴とする液晶装置。
【請求項16】
前記第1基板は、前記画素電極に対応したトランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続される走査線と、前記走査線に駆動信号を供給する走査線駆動回路とを有し、
前記第1配線層は、前記走査線駆動回路に定電位を供給する定電位配線であることを特徴とする請求項14または15に記載の液晶装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−109192(P2013−109192A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254706(P2011−254706)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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