説明

液晶装置の製造方法

【課題】一対の大判基板を分断することで複数の液晶装置を製造する方法において、各大判基板に含まれる捨て基板部分を低減することにより製造効率の向上及び製造コストの削減を図る。
【解決手段】本発明の液晶装置の製造方法は、一対の大判基板11,21の少なくとも一方の大判基板11には、第1の表示領域11A及び第1の表示領域の内側から第1の基板端子領域11Bまで延在する電気配線を含む第1の基板範囲11Sと、第2の表示領域11C及び第2の表示領域の内側から第2の基板端子領域10Dまで延在する電気配線を含む第2の基板範囲11Tとが設けられ、第1の基板端子領域と第2の基板端子領域が隣接する態様で第1の基板範囲と第2の基板範囲が隣接配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶装置の製造方法に係り、特に、2枚の大判基板を貼り合わせた後にこれらの大判基板を分断して複数の液晶装置を形成する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶装置の製造方法として、2枚の大判基板を張り合わせた後にこれらの大判基板を分断して複数の液晶装置を形成するといった多数個採りの製造方法が知られている。この製造方法では一度に多数の液晶装置を同時並行して製造することができるため、製造コストを低減することができるとともに、複数の液晶装置の性能のばらつきを低減することができるという利点がある。
【0003】
上記の液晶装置の製造方法では、例えば、TNモードの液晶層を有する場合について説明すると、図5(a)及び(b)に示すように、一対の大判基板11と21をシール材13を介して貼り合わせた後に、このシール材13によって画成される液晶封入領域10X内に液晶30を配置し、その後、大判基板11を図示の分断線Dx、Dy、Dzに沿って分断し、大判基板21を分断線Dx、Dy、Dwに沿って分断することで、図5(c)に示す液晶装置10が形成される。
【0004】
このとき、大判基板11上には、上記液晶封入領域10X内に表示領域11Aが設けられ、また、上記液晶封入領域10Xの外側には表示領域11Aから引き出された複数の配線を有する基板端子領域11Bが形成される。また、大判基板21上には、上記液晶封入領域10X内に対面構造(TNモードのため対向電極が含まれる)21Aが形成される。そして、大判基板11では表示領域11A及び基板端子領域11Bを含む基板範囲11Sが図示X方向に繰り返し形成され、また、大判基板21では対面構造21Aを含む基板範囲が同様にX方向に繰り返し形成される。ここで、シール材13には、基板端子領域11Bとは反対側の縁部に液晶30を注入するための注入口13aが設けられる。上記注入口13aは、分断線Dyに沿った最初の基板分断によって基板端縁に露出した状態とされ、当該状態で液晶30を液晶封入領域10Xに注入する際に用いられる。このような製造方法については、以下の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−224872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の液晶装置の製造方法では、注入口13aの開口縁においてシール材13が大判基板11及び21の分断線Dyに近接しているため、分断線Dyに沿った基板分断時(スクライブ・ブレイク時)に分断後の基板の端縁が欠けたり割れたりし易い。このため、隣接する基板端子領域11Bの端縁にも欠けや割れが生じないように、大判基板11における注入口13aが形成された部分と、これに隣接する基板端子領域11Bとの間に捨て基板部分11Eを設け、当該捨て基板部分11Eの両側に設定された分断線DyとDzに沿ってそれぞれ大判基板11を分断するようにしている。したがって、大判基板11には液晶装置10となる部分間に必ず捨て基板部分11Eが存在することとなり、大判基板21の捨て基板部分21Eもその分大きくなるため、大判基板11、21によって製造できる液晶装置10の数が減少し、製造効率の低下や製造コストの増大を招くという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、一対の大判基板を分断することで複数の液晶装置を製造する方法において、各大判基板に含まれる捨て基板部分を低減することにより製造効率の向上及び製造コストの削減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の大判基板がシール材を介して貼り合わされて両大判基板の間に前記シール材によって複数の液晶封入領域が形成され、前記一対の大判基板が前記液晶封入領域ごとに分断されて個々の液晶装置が形成される液晶装置の製造方法において、前記一対の大判基板の少なくとも一方の大判基板には、前記液晶封入領域内に配置される第1の表示領域及び該第1の表示領域の内側から前記液晶封入領域外の第1の基板端子領域まで延在する電気配線を含む第1の基板範囲と、前記液晶封入領域内に配置される第2の表示領域及び該第2の表示領域の内側から前記液晶封入領域外の第2の基板端子領域まで延在する電気配線を含む第2の基板範囲とが設けられ、前記第1の基板端子領域と前記第2の基板端子領域が対向する態様で前記第1の基板範囲と前記第2の基板範囲が隣接配置されることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、第1の基板範囲に含まれる第1の基板端子領域と、第2の基板範囲に含まれる第2の基板端子領域とが対向するため、隣接する第1の基板範囲と第2の基板範囲のうちの一方の基板端子領域と他方のシール材とが対向しなくなることから、両者間に捨て基板部分を設ける必要もなくなり、第1の基板端子領域と第2の基板端子領域との間を単一の分断線に沿って分断することが可能になるため、一対の大判基板からより多くの液晶装置を製造することが可能になり、製造効率の向上及び製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
本発明の一の態様においては、前記第2の基板範囲の前記第2の基板端子の側とは反対側には別の前記第1の基板範囲が隣接配置される。第2の基板範囲の一側に別の第1の基板範囲が隣接配置されることで、第2の基板範囲のシール材と別の第1の基板範囲のシール材とが対向することになる。そして、このような態様で第1の基板範囲と第2の基板範囲とを交互に配置することで、多数の液晶装置を製造することが可能になる。
【0010】
この場合においては、前記シール材の前記第1の表示領域の前記第1の基板端子領域の側とは反対側、及び、前記第2の表示領域の前記第2の基板端子領域の側とは反対側に、前記液晶の注入口がそれぞれ設けられる。これによれば、第2の基板範囲のシール材に設けられた注入口と、隣接する別の第1の基板範囲のシール材に設けられた注入口とが対向するので、両者の間で基板を分断することで、液晶の注入を容易に行うことができる。
【0011】
また、前記第2の基板範囲と、該第2の基板範囲の前記第2の基板端子領域の側とは反対側に隣接配置された前記別の第1の基板範囲との間が単一の分断線に沿って分断される。これによれば、第2の基板範囲と別の第1の基板範囲とが単一の分断線に沿って分断されることで、両者間の捨て基板部分を少なくすることができるため、一対の基板から製造できる液晶装置の数をさらに増加させることができる。
【0012】
本発明の他の態様においては、前記一方の大判基板の液晶側の表面には配向膜が設けられ、該配向膜に対するラビング方向が前記第1の基板範囲と前記第2の基板範囲の一方から他方へ向かう方向若しくは当該方向と直交する方向とされる。これによれば、ラビング方向を上記方向若しくはこれと直交する方向に設定することで、一方の大判基板に対して単一のラビング処理を施した場合でも、姿勢の異なる第1の基板範囲と第2の基板範囲に同一の液晶配向能を付与することができる。
【0013】
本発明の別の態様においては、他方の前記大判基板の液晶側の表面には配向膜が設けられ、該配向膜に対するラビング方向が前記第1の基板範囲と前記第2の基板範囲の一方から他方へ向かう方向若しくは当該方向と直交する方向とされる。これによれば、他方の大判基板の配向膜についてもラビング方向を上記方向若しくはこれと直交する方向に設定することで、単一のラビング処理を施した場合でも、一方の大判基板において姿勢の異なる上記第1の基板範囲と上記第2の基板範囲にそれぞれ対向する他方の大判基板の二つの基板範囲にそれぞれ同一の液晶配向能を付与することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様においては、前記第1の基板範囲における前記第1の表示領域及び前記第1の基板端子領域と、前記第2の基板範囲における前記第2の表示領域及び前記第2の基板端子領域とが前記一方の大判基板上において180度の回転対称性を有する。これによれば、第1の基板範囲に含まれる構造と第2の基板範囲に含まれる構造とが180度の回転対称性を有することで、第1の基板範囲と第2の基板範囲が一方の大判基板上で180度回転した姿勢となっているだけで相互に同一の構造となるので、同一構造の液晶装置をより効率的かつ低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
最初に、本発明に係る液晶装置の製造方法を図1、図4、図6、図7及び図9を参照して説明する。図1(a)は本発明に係る液晶装置の製造方法の第1実施形態の一対の基板によって構成されるパネル構造を示す概略平面図、図1(b)は同パネル構造の概略縦断面図(図1(a)のb−b′線断面図)、図1(c)は同パネル構造の基板を分断することで得られる液晶装置を示す概略縦断面図、図4は本実施形態の基板11上の基板端子領域11Bと11Dの境界部分を拡大して示す拡大部分平面図(図1のVI部分の拡大図)、図6は本実施形態の製造方法を示す製造工程の概略フローチャート、図7は図6に示す基板処理工程の一部を詳細に示す詳細フローチャート、図9は図6の製造工程を略図で示す製造工程の簡略斜視図である。なお、本実施形態においては先に説明した従来構造に対応する部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0017】
本実施形態の製造方法では、最初に、図6のステップS1及びS2に示すように、ガラス等よりなる透明な基板11の内面上にそれぞれ所定の表示領域及び基板端子領域を構成し、基板21の内面上に所定の対面構造を形成する。ここで、本実施形態の製造方法で製造される液晶装置では、基板11上にTFT(薄膜トランジスタ)等の能動素子を画素(サブ画素)ごとに有し、当該能動素子にそれぞれ導電接続される画素電極もまた画素(サブ画素)ごとに有するので、図6には基板11を素子基板と表記してある。また、基板21上に画素(サブ画素)ごとに所定の色のフィルタ層を備えたカラーフィルタを有するので、図6には基板21をカラーフィルタ基板と表記してある。
【0018】
また、本実施形態の上記液晶装置は、最終的に液晶装置の素子基板となる大判基板11上に画素若しくはサブ画素ごとに上記表示領域として画素電極と共通電極を平面方向に配置した横電界制御型とも言うべきタイプの液晶装置である。この横電界制御型の液晶装置にはIPS(In-Plane Switching)モードの液晶装置も含まれるが、特に、以下の説明では、共通電極上に絶縁膜を介して画素電極が配置され、共通電極を画素電極が覆う領域と、共通電極が画素電極によって覆われていない領域とが平面方向に交互に形成されてなるFFS(Fringe Field Switching)モードの液晶装置であることを前提として説明する。
【0019】
図1(a)及び(b)に示すように、大判基板11上には、第1の表示領域11A及び第1の基板端子領域11Bを含む第1の基板範囲11Sと、第2の表示領域11C及び第2の基板端子領域11Dを含む第2の基板範囲11Tとが設けられ、第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11Tとが図示X方向に交互に配列され、第1の基板範囲11S及び第2の基板範囲11Tが図示Y方向にストライプ状に配列される。ここで、第1の基板範囲11S及び第2の基板範囲11Tは、分断線Dx及びDv、Dzによって区画された矩形の平面領域である。ここで、第1の基板端子領域11Bは第1の表示領域11Aの内側から延在する複数の電気配線が引き出され、それらの端子が整列された領域であり、第2の基板端子領域11Dは第2の表示領域11Cの内側から延在する複数の電気配線が引き出され、それらの端子が整列された領域である。
【0020】
ここで、第1の基板範囲11Sにおいては、第1の表示領域11AのX方向一側(図示右側)に第1の基板端子領域11Bが配置される。一方、第2の基板範囲11Tにおいては、第2の表示領域11CのX方向反対側(図示左側)に第2の基板端子領域11Dが配置される。ここで、第1の表示領域11Aは後にシール材13によって画成される液晶封入領域10Xの内部に配置され、第1の基板端子領域11Bは液晶封入領域10Xの外部に配置される。同様に、第2の表示領域11Cは後にシール材13によって画成される液晶封入領域10Yの内部に配置され、第2の基板端子領域11Dは液晶封入領域10Yの外部に配置される。
【0021】
第1の基板範囲11SのX方向一側(図示右側)には第2の基板範囲11Tが隣接配置され、この第2の基板範囲11TのX方向一側(図示右側)には別の第1の基板範囲11Sが隣接配置される。そして、第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11Tが図示X方向に交互に配置されるため、第1の基板端子領域11Bと第2の基板端子領域11DとがX方向に対向配置される。このような基板11上の平面パターンでは、第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11TとがX方向の向きを異ならせた姿勢で配列されたものとなる。特に、第1の基板範囲11S内の構造(第1の表示領域11A及び第1の基板端子領域11B)と、第2の基板範囲11T内の構造(第2の表示領域11C及び第2の基板端子領域11D)とが基板11上において180度回転して重なる回転対称性を有する関係にあるとき、両基板範囲において同一のパネル構造部分が構成される。
【0022】
上記第1の基板端子領域11Bと第2の基板端子領域11Dの対向隣接部分においては、図4(a)に示すように、第1の基板範囲11Sでは、大判基板11上にアルミニウム、銀、その他の各種単体金属若しくは合金よりなる配線層14が形成されるとともに、この配線層14を全面的に被覆するITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体よりなる被覆層15が設けられている。ここで、配線層14を完全に被覆して腐食等を防止するために、配線層14の終端より分断線Dw寄りに被覆層15の終端が配置される。そして、被覆層15の終端は分断線Dv上には達しておらず、その手前に配置される。そして、配線層14及び被覆層15はY方向に複数配列される。
【0023】
一方、第2の基板範囲11Tにおいても、大判基板11上に上記と同様の配線層16と被覆層17が形成され、これらの終端も分断線Dvには達しておらず、配線層16の終端より被覆層17の終端が分断線Dw寄りに配置される。そして、配線層16及び被覆層17はY方向に複数配列される。
【0024】
この場合には、配線層14,16及び被覆層16,17のいずれもが分断線Dv上に形成されていないので、基板分断をより容易に行うことができるという利点がある。
【0025】
図4(b)は別の構成例を示すもので、この場合には、両基板範囲の配線層14と16は上記と同様に分断線Dwにまで達していないが、被覆層18は分断線Dvを越えて他方の基板範囲まで伸びている。また、図示例の場合には第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11Tにおいて被覆層18が共通に構成され、分断線Dvの両側に形成される配線層14と16を一体に被覆している。
【0026】
この場合には、分断線Dvに沿ったブレイク処理時に基板の欠けや割れ等により破断線が多少左右にずれても、配線層14,16の被覆が損なわれることがないという利点がある。
【0027】
図4(c)はさらに別の構成例を示すもので、この場合には、図4(c)に示す先の例のように左右の両基板範囲に亘る一体の被覆層19で左右両側の配線層14,16を被覆しているが、被覆層19に細幅部(くびれ部)19aを設けることで、当該細幅部19aが分断線Dv上を横断するように構成している。
【0028】
この例では、分断線Dv上を横断する被覆層19の幅が狭くなるため、図4(b)に示す例の利点を確保しつつ、基板分断をより容易に行うことができるという利点も併せ持つ。
【0029】
なお、上記の例は第1の基板範囲11S内の第1の基板端子領域11Bと第2の基板範囲11T内の第2の基板端子領域11Dとが図示上下方向に見て同一位置にそれぞれ配線層14と16を有する構造を前提として説明しているが、配線層14と16が図示上下方向にずれた位置に形成される場合でも、図4(b)及び(c)に示すように、被覆層18、19を分断線Dvを越えて他方の基板範囲上にまで延長形成することができる。この場合には、一方の基板範囲上の被覆層が他方の基板範囲上に形成された他方の配線層上の被覆層と連結されていてもいなくてもよい。
【0030】
ここで、上記のように第1の基板端子領域11Bと第2の基板端子領域11Dの対向部分においてそれぞれに形成された配線(上記配線層及び被覆層)が分断線Dvを越えて導電接続される場合には、製造工程中における静電気の発生の防止を図ることができる。特に、静電気を逃がすために各基板範囲にそれぞれ静電気除去用の配線を設けた場合には、当該対向部分において配線間を接続しておくことで各配線を静電気除去用の配線に容易に導電接続された状態とすることができる。
【0031】
再び図1に戻って説明を続ける。大判基板21上には、上記第1の表示領域11Aと対向する対面構造21Aと、上記第2の表示領域11Cと対向する対面構造21Bとが設けられる。対面構造21A、21Bは本実施形態の場合にはカラーフィルタを含み、電極を含まないが、本発明はこれに限定されず、対向電極を含む構成であってもよい。対面構造21A、21Bはいずれも上記液晶封入領域10X、10Yの内部に配置される。これらの対面構造21Aと21Bもまた上記と同様に大判基板21上で180度回転して重なる回転対称性を有する関係にあるとき、両基板範囲において同一のパネル構造部分が構成される。したがって、大判基板11と21を貼り合わせた後に後述するように基板分断を行うことで両大判基板の各基板範囲ごとに全て同一の液晶パネルが形成される。
【0032】
上記のように大判基板11及び大判基板21にそれぞれ所定の表示領域が形成されると、次に、両大判基板の内面上に配向膜が形成される。配向膜は本実施形態の場合、図7に示すように、両大判基板の表面を洗浄し(ステップS11、S21)未硬化のポリイミド樹脂をフレキソ印刷等により塗布(ステップS12、S22)する。ここで、塗布方法としては印刷法以外にディスペンサによる描画的な塗布であっても構わない。
【0033】
次に、上記未硬化のポリイミド樹脂を焼成して硬化させ(ステップS13、S23)、その後、ラビング布等によって擦ることでラビング処理を施し(ステップS14、S24)、最後に大判基板を洗浄する(ステップS15、S25)。ここで、上記ラビング処理は、本実施形態の場合、例えば、大判基板11上の配向膜に対しては図1(a)のX方向をラビング方向R1とし、基盤21上の配向膜に対しては図1(a)のY方向をラビング方向R2とする。ここで、両大判基板上の配向膜のラビング方向R1とR2が逆であってもよく、或いは、ラビング方向R1とR2が同一方向(共にX方向、或いは、共にY方向)であってもよい。
【0034】
このようにすると、大判基板11上の第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11Tの内部構造が相互に180度回転して重なる(一致する)回転対称性を有している場合には、いずれの基板範囲においても同一のラビング方向(液晶装置を同じ姿勢にしたときの配向膜のラビング方向の向きが同一)となる。
【0035】
上記のようにして大判基板11、21の内面上にそれぞれ所定の構造が形成されると、次に、大判基板11上に基板間隔を規制するためのスペーサを散布し、必要に応じて加熱などの固着処理を施す(ステップS3)。一方、大判基板21にはシール材13をスクリーン印刷等で塗布し(ステップS4)、必要に応じて仮乾燥や加熱処理による半硬化処理を行う(ステップS5)。なお、シール材13の塗布は精密ディスペンサによる塗布などでも行うことができる。
【0036】
その後、両大判基板11,21を上記シール材13を介して貼り合わせ(ステップS6)、図1(a)及び(b)に示す大判パネルを構成し、両大判基板11,21を圧着することで基板間隔を設定する(ステップS7)。その後、硬化処理(シール材13が熱硬化性樹脂であれば加熱処理、光硬化性樹脂であれば光照射処理)を施してシール材13を硬化させる(ステップS8)。ここで、シール材13は各表示領域11A、11C及び各対面構造21A、21Bを包囲する液晶封入領域10X、10Yを画成する。また、第1の基板範囲11SのX方向反対側(図示左側)と、第2の基板範囲11TのX方向一側(図示右側)には、それぞれシール材13に注入口13aが形成されている。
【0037】
その後、図1に示す分断線Dy、Dzに沿って大判基板11、大判基板21を公知のスクライブ・ブレイク法等により分断し、図9に示す短冊状のパネルを構成する(1次ブレイク、ステップS9)。ここで、大判基板11には分断線Dy、Dz間の捨て基板部分11Eが生じ、大判基板21には当該捨て基板部分11Eに対向する捨て基板部分21Eが生ずる。しかしながら、図5に示す従来構造と対比すると、従来構造において捨て基板部分11Eの数は一つの基板範囲11Sに一つの割合で生ずるのに対して、本実施形態の捨て基板11C、21Cの数は二つの基板範囲11S、11Tに一つの割合で生ずるため、従来構造よりも捨て基板部分の面積が少なくなり、その結果、同じ基板面積でも、より多くの液晶装置を製造することができるので、製造効率を高めるとともに製造コストを低減できる。
【0038】
なお、この工程において、もう一つの分断線Dvで大判基板11を分断し、分断線Dw、Duで大判基板21を分断してもよい。この場合には図9に示すように液晶封入領域10X又は10Yが一列に配列された単列の短冊状パネルが形成される。ただし、分断線Dvに沿った大判基板11、21の分断は、後述する二次ブレイク工程で行ってもよい。この場合には、液晶封入領域10Xと10Yとが背中合わせに配置され、パネル構造が二列に配列されてなる短冊状パネルが形成される。
【0039】
次に、上記のように構成された短冊状のパネルにおいて露出した注入口13aから液晶を注入する(ステップS10)。この液晶の注入は、例えば、真空中でパネルの注入口13aを液晶中に浸漬し、周囲の圧力を上昇させていく(大気に開放する)ことで、液晶封入領域10X、10Yと外部との間の内外圧力差によって液晶が自動的に注入されるようにする。
【0040】
その後、注入口13aを樹脂等によって閉鎖し、これで液晶封入領域10X、10Yを封止する(ステップS11)。この工程では、例えば、注入口13aに光硬化性樹脂を塗布し、光を照射することで硬化させて封止を行う。
【0041】
しかる後に、大判基板11、21を分断線Dxに沿って分断する二次ブレイク工程を実施する(ステップS12)。この工程では、一次ブレイク工程で分断線Dv、Dw、Duに沿った分断を行っていない場合、当該分断線Dvに沿った大判基板11の分断及び分断線Dw、Duに沿った大判基板21の分断をも実施する。このようにすると、図1(c)に示すように、一つの液晶封入領域10X又は10Yを備えた単独の液晶装置10が形成される。最後に、当該液晶装置10を洗浄する(ステップS13)。この状態では、上記の分断線Dw、Duに沿った大判基板21の分断により大判基板11上の第1の基板端子領域11B及び第2の基板端子領域11Dが外部に露出した状態となっている。
【0042】
上記のようにして、図1(c)に示す液晶装置10が形成されるが、本実施形態では、大判基板11において第1の基板端子領域11Bと第2の基板端子領域11Dとが直接隣接するように構成され、両構造間が単一の分断線Dvによって分断されるので、この間に捨て基板部分が発生せず、したがって、従来構造よりも捨て基板部分の面積を低減することができ、また、大判基板21の捨て基板部分の面積もその分低減されるので、その結果、製造効率の向上や製造コストの低減を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態の場合、第1の基板範囲11S内の構造と、第2の基板範囲11T内の構造とが大判基板11上において180度回転して重なる回転対称性を備えるように構成することで、第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11Tから同一のパネル構造を得ることができる。そして、大判基板21上に第1の表示領域11Aに対向する第1の対面構造21Aと、第2の表示領域11Cに対向する第2の対面構造21Bとを設け、これらの第1の対面構造21Aと第2の対面構造21Bを大判基板21上において180度回転して重なる回転対称性を備えるように構成すれば、上記と同様に大判基板21においても同一のパネル構造を得ることができるため、両基板範囲から同一の液晶装置を得ることが可能になる。
【0044】
この場合、本実施形態では横電界制御型の液晶装置10を構成するようにしているため、ラビング方向R1、R2を図1のX方向若しくはY方向のいずれかに設定することができる。したがって、パネル構造が180度回転した姿勢となる第1の基板範囲11Sと第2の基板範囲11Tを設けた場合においても、ラビング処理工程で両基板範囲に亘り同一のラビング方向R1としたところで、180度回転させて同姿勢としてもラビング方向R1は不変であるから、同一の液晶装置を得るのに全く支障がない。
【0045】
[第2実施形態]
次に、図2を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、本実施形態において第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、同様の部分に係る説明は全て省略する。
【0046】
本実施形態では、図2(a)及び(b)に示すように、第2の基板範囲11Tと、そのX方向一側(図示右側)に隣接する第1の基板範囲11Sとの間が単一の分断線Dyによって分断されるように構成され、第1実施形態とは両基板範囲間に捨て基板部分11Eが設けられない点で異なる。したがって、大判基板21にも捨て基板部分21Eが存在しなくなるから、第1実施形態の場合よりもさらに製造効率の向上及び製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
ここで、上記第1実施形態では、シール材13の注入口13aが分断線に近接することに起因する問題を回避する目的で、分断線DyとDzを設けている。このようにすると、一方の分断線に沿った分断部分に欠けや割れが生じても他方の分断線に沿った分断部分に影響しないという利点があるが、注入口13aが対向配置される部分ではそもそも基板端子領域が存在しないので、特に重大な支障が生ずるわけではない。そこで、本実施形態では、注入口13a同士が対向配置される隣接する基板範囲間を単一の分断線Dyで分断するようにしている。この場合、分断線Dyに沿った分断部分では、分断後の一方に欠けが発生すると他方には突起が生じるという関係となるが、上述のようにいずれの部分にも基板端子領域が存在しないので、大きな問題は生じない。
【0048】
[第3実施形態]
次に、図3、図8及び図10を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。なお、本実施形態において第1実施形態及び第2実施形態と同一部分には同一符号を付し、同様の部分に係る説明は全て省略する。
【0049】
本実施形態では、大判基板11及び21上の構造については第2実施形態と同様で、捨て基板部分11E、21Cが存在しないが、シール材13′に注入口が設けられず、シール材13′が平面的に閉じた形状とされている点で上記各実施形態と異なる。この構成では、液晶を注入口を通して液晶封入領域10X、10Yに導入することができないので、上記第1実施形態で説明した方法と異なる製造方法を採用する。
【0050】
本実施形態では、図8に示すように、大判基板11及び21の内面に第1実施形態と同様の構造を形成し(ステップS1、S2)た後、大判基板11上にはスペーサの散布を実施し(ステップS3)、その後、必要に応じて過熱してスペーサを固着させる(ステップS3′)。また、大判基板21については、必要に応じて大判基板21を加熱して余分なガス成分を除去し(ステップS4′)、その後、精密ディスペンサ等によってシール材13を配置する(ステップS5′)。このときにシール材13を平面的に閉じた形状にする点は上述の通りである。
【0051】
次に、大判基板11上に液晶を滴下し(ステップS6′)、真空チャンバの内部で大判基板21と貼りあわせる(ステップS7′)。そして、シール材13を光照射によって半硬化させる(ステップS8′)。その後、周囲を常圧に戻して圧着させ、しかる後に、加熱処理を施し、シール材13の硬化とともに液晶の等方性処理を行う(ステップS9′)。最後に、分断線Dx、Dy、Dv、Dw、Duに沿った大判基板11、21の分断を行い、液晶装置10を完成させる。
【0052】
本実施形態では、第2実施形態と同様に、隣接する基板範囲のシール材13同士が対向配置される部分間において、単一の分断線Dvで大判基板11が分断される。この場合、本実施形態では注入口が設けられないので、分断線Dvにシール材13が近接することもないから、単一の分断線Dvに沿った基板分断に特に支障はない。一方、捨て基板部分11E、21Cが発生しない点は第2実施形態と全く同様である。
【0053】
尚、本発明の液晶装置の製造方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、第1及び第2の表示領域に画素電極と共通電極の双方が含まれ、第1及び第2の対面構造にはカラーフィルタが含まれる構成の横電界制御型の液晶装置について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、上記表示領域や上記対面構造の内部は液晶装置の構成に従って適宜に設定しうる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の一対の大判基板よりなるパネル構造の平面図(a)、当該パネル構造の縦断面図(b)及び基板分断後の液晶装置の縦断面図(c)。
【図2】第2実施形態の一対の大判基板よりなるパネル構造の平面図(a)、当該パネル構造の縦断面図(b)及び基板分断後の液晶装置の縦断面図(c)。
【図3】第3実施形態の一対の大判基板よりなるパネル構造の平面図(a)、当該パネル構造の縦断面図(b)及び基板分断後の液晶装置の縦断面図(c)。
【図4】各実施形態の隣接する基板範囲の基板端子領域間の領域を拡大して示す拡大部分平面図(a)乃至(c)。
【図5】従来の一対の大判基板よりなるパネル構造の平面図(a)、当該パネル構造の縦断面図(b)及び基板分断後の液晶装置の縦断面図(c)。
【図6】第1実施形態の製造方法を示す概略工程フローチャート。
【図7】第1実施形態の配向膜処理を示す詳細工程フローチャート。
【図8】第3実施形態の製造方法を示す概略工程フローチャート。
【図9】第1実施形態の製造方法を示す概略工程図。
【図10】第3実施形態の製造方法を示す概略工程図。
【符号の説明】
【0055】
10…液晶装置、10X、10Y…液晶封入領域、11…大判基板、11A…第1の表示領域、11B…第1の基板端子領域、11C…第1の表示領域、11D…第2の基板端子領域、11E、21E…捨て基板部分、11S…第1の基板範囲、11T…第2の基板範囲、13、13′…シール材、13a…注入口、21…大判基板、21A…第1の対面構造、21B…第2の対面構造、14、16…配線層、15、17、18、19…被覆層、Dx、Dy、Dz、Dv、Dw、Du…分断線、R1、R2…ラビング方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の大判基板がシール材を介して貼り合わされて両大判基板の間に前記シール材によって複数の液晶封入領域が形成され、前記一対の大判基板が前記液晶封入領域ごとに分断されて個々の液晶装置が形成される液晶装置の製造方法において、
前記一対の大判基板の少なくとも一方の大判基板には、前記液晶封入領域内に配置される第1の表示領域及び該第1の表示領域の内側から前記液晶封入領域外の第1の基板端子領域まで延在する電気配線を含む第1の基板範囲と、
前記液晶封入領域内に配置される第2の表示領域及び該第2の表示領域の内側から前記液晶封入領域外の第2の基板端子領域まで延在する電気配線を含む第2の基板範囲とが設けられ、
前記第1の基板端子領域と前記第2の基板端子領域が対向する態様で前記第1の基板範囲と前記第2の基板範囲が隣接配置されることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の基板範囲の前記第2の基板端子領域の側とは反対側には別の前記第1の基板範囲が隣接配置されることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記シール材の前記第1の表示領域の前記第1の基板端子領域の側とは反対側、及び、前記第2の表示領域の前記第2の基板端子領域の側とは反対側に、前記液晶の注入口がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の基板範囲と、該第2の基板範囲の前記第2の基板端子領域の側とは反対側に隣接配置された前記別の第1の基板範囲との間が単一の分断線に沿って分断されることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項5】
前記一方の大判基板の液晶側の表面には配向膜が設けられ、該配向膜に対するラビング方向が前記第1の基板範囲と前記第2の基板範囲の一方から他方へ向かう方向若しくは当該方向と直交する方向とされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項6】
他方の前記大判基板の液晶側の表面には配向膜が設けられ、該配向膜に対するラビング方向が前記第1の基板範囲と前記第2の基板範囲の一方から他方へ向かう方向若しくは当該方向と直交する方向とされることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板範囲における前記第1の表示領域及び前記第1の基板端子領域と、前記第2の基板範囲における前記第2の表示領域及び前記第2の基板端子領域とが前記一方の大判基板上において180度の回転対称性を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−237231(P2009−237231A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82825(P2008−82825)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】