説明

液晶装置及びプロジェクタ

【課題】回路の短絡を防ぐことが可能で、フレキシブルプリント配線基板(FPC)全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置を提供する。
【解決手段】液晶パネル10と、液晶パネル10に接続されたフレキシブルプリント配線基板20と、フレキシブルプリント配線基板20を包囲する筒状絶縁部材30とを有する液晶装置1。フレキシブルプリント配線基板20の表面には、複数の配線が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルにフレキシブルプリント配線基板(Flexible Printed Circuit、以下「FPC」ということもある。)が接続された液晶装置を備えるプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなFPCの表面には、短絡防止用の絶縁テープが貼り付けられている場合がある。この場合には、FPC上に形成された回路の短絡を防ぐことが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−259094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、FPCの表面に絶縁テープが貼り付けられている場合には、次のような問題がある。
すなわち、FPCの表面に絶縁テープが貼り付けられている場合には、FPCにおける絶縁テープが貼り付けられている部分は他の部分に比べて柔軟性が低いため、FPC全体としての柔軟性が低下してしまう。また、FPCの表面に絶縁テープが貼り付けられている場合には、FPCを屈曲したときにFPCが絶縁テープの縁付近で鋭角に曲がり易くなるため、FPC上に形成された回路が断線する場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、回路の短絡を防ぐことが可能で、FPC全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置を提供することを目的とする。また、そのような優れた液晶装置を備えるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルに接続されたフレキシブルプリント配線基板と、前記フレキシブルプリント配線基板を包囲する筒状絶縁部材とを有することを特徴とする。
【0007】
このため、本発明の液晶装置によれば、筒状絶縁部材でFPCを絶縁することができるため、FPC上に形成された回路の短絡を防ぐことが可能となる。
【0008】
また、本発明の液晶装置によれば、筒状絶縁部材でFPCを包囲しているため、FPCの表面に絶縁テープを直接貼り付ける場合のようにFPCの一部に柔軟性の低い部分が発生することもなく、FPC全体としての柔軟性を確保することができる。
【0009】
また、本発明の液晶装置によれば、FPCを屈曲したときにFPCと筒状絶縁部材とが接触したとしても、FPCに対して局所的に力がかかることはないため、FPC上に形成された回路が断線するのを抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の液晶装置においては、前記フレキシブルプリント配線基板は、電子素子が実装されたフレキシブルプリント配線基板であり、前記筒状絶縁部材は、少なくとも前記フレキシブルプリント配線基板における前記電子素子が実装された部分を包囲するように配置されていることが好ましい。
【0011】
このように構成することにより、電子素子も含めた回路の短絡を防ぐことが可能となる。
【0012】
本発明の液晶装置においては、前記筒状絶縁部材における前記電子素子に対応する部分には、凹部が形成されていることが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、フレキシブルプリント配線基板に対する筒状絶縁部材の配置位置がずれてしまうのを抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の液晶装置においては、前記筒状絶縁部材における前記液晶パネルとは反対側の開口部は、前記フレキシブルプリント配線基板の曲がる方向に広がっていることが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、筒状絶縁部材(筒状絶縁部材の開口部の端縁)によってFPCが傷付くのを抑制することが可能となる。
【0016】
本発明の液晶装置においては、前記筒状絶縁部材は、接地されていることが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、輻射ノイズを除去することができ、いわゆるシールド効果を得ることができる。
【0018】
本発明の液晶装置においては、前記筒状絶縁部材は、フェライトを含む材料からなることが好ましい。
【0019】
フェライトは電磁波を吸収するため、このように構成することにより、輻射ノイズを除去することができ、いわゆるシールド効果を得ることができる。
【0020】
本発明のプロジェクタは、照明光束を射出する照明装置と、前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルを有する液晶装置と、前記液晶パネルにより変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタにおいて、前記液晶装置は、本発明の液晶装置であることを特徴とする。
【0021】
このため、本発明のプロジェクタは、回路の短絡を防ぐことが可能で、FPC全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置を備える高品質なプロジェクタとなる。
【0022】
本発明のプロジェクタにおいては、前記プロジェクタ内には、冷却風流路が形成されており、前記筒状絶縁部材には、冷却風の流れを整える整流板が形成されていることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、筒状絶縁部材を通る冷却風の流れを整えることができ、冷却性能を向上することが可能となる。
【0024】
本発明のプロジェクタにおいては、前記プロジェクタ内には、冷却風流路が形成されており、前記筒状絶縁部材における前記液晶パネル側の開口部及び前記液晶パネルとは反対側の開口部のうち、冷却風流路の風上側の開口部の開口面積は、冷却風流路の風下側の開口部の開口面積よりも広いことが好ましい。
【0025】
このように構成することにより、筒状絶縁部材内に冷却風を比較的多く取り込むことができるため、FPC及び筒状絶縁部材の冷却効率を向上することが可能となる。
【0026】
なお、冷却風が上から下に向かって流れている場合には、「冷却風流路の風上側の開口部」は、筒状絶縁部材における上側の開口部となり、「冷却風流路の風下側の開口部」は、筒状絶縁部材における下側の開口部となる。また、冷却風が下から上に向かって流れている場合には、「冷却風流路の風上側の開口部」は、筒状絶縁部材における下側の開口部となり、「冷却風流路の風下側の開口部」は、筒状絶縁部材における上側の開口部となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の液晶装置及びプロジェクタについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0028】
[実施形態1]
実施形態1では、本発明の液晶装置について説明する。
まず、実施形態1に係る液晶装置1の構成について、図1を用いて説明する。
【0029】
図1は、実施形態1に係る液晶装置1を説明するために示す図である。図1(a)は液晶装置1の正面図であり、図1(b)は液晶装置1の側面図であり、図1(c)は液晶装置1の斜視図である。
【0030】
実施形態1に係る液晶装置1は、図1に示すように、液晶パネル10と、液晶パネル10に接続されたフレキシブルプリント配線基板(以下、FPCという。)20と、FPC20を包囲する筒状絶縁部材30とを有する。
【0031】
液晶パネル10は、図1(b)に示すように、一対の透明なガラス基板(素子基板12及び対向基板14)に電気光学物質である液晶16を密閉封入したものである。液晶16に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルによって液晶分子の配向が変化し、液晶パネル10に入射する光が変調される。
【0032】
素子基板12には、ここでは図示による説明を省略するが、複数の画素がマトリクス状に配置されている。各画素には、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下「TFT」という。)が形成されている。各TFTのソースには、画素信号を供給するデータ線が電気的に接続されている。各TFTのゲートには、走査線が電気的に接続されている。各TFTのドレインには、画素電極が電気的に接続されている。データ線及び走査線は素子基板12の端部まで延長されている。
【0033】
なお、スイッチング素子としては、TFTの代わりに、二端子型非線形素子である薄膜ダイオード(Thin Film Diode、以下「TFD」という。)を設けてもよい。この場合、TFDにはデータ線が接続されてデータ信号が供給される。一方、対向基板の内側には対向電極がストライプ状に形成されている。各対向電極は、走査信号が印加される走査線として機能する。なお、対向電極側をデータ信号が印加されるデータ線とし、TFDに接続された配線を走査信号が印加される走査線としてもよい。
【0034】
FPC20は、例えばポリイミドフィルムからなる可撓性を有する基板である。FPC20は、図示しない異方性導電膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介して、素子基板12の端部に接続されている。異方性導電膜は、例えば熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂の中に多数の導電粒子を分散させたものである。FPC20の表面には、図示しない複数の配線が形成されている。
【0035】
筒状絶縁部材30は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリイミドからなり、筒形状を有する絶縁部材である。筒状絶縁部材30は、接地されている(図示せず。)。筒状絶縁部材30における液晶パネル10側(すなわち下側)の開口部34の開口面積は、筒状絶縁部材30における液晶パネル10とは反対側(すなわち上側)の開口部32の開口面積と同じ大きさである。
【0036】
以上のように構成された実施形態1に係る液晶装置1によれば、筒状絶縁部材30でFPC20を絶縁することができるため、FPC20上に形成された回路の短絡を防ぐことが可能となる。
【0037】
また、実施形態1に係る液晶装置1によれば、筒状絶縁部材30でFPC20を包囲しているため、FPCの表面に絶縁テープを直接貼り付ける場合のようにFPCの一部に柔軟性の低い部分が発生することもなく、FPC20全体としての柔軟性を確保することができる。
【0038】
また、実施形態1に係る液晶装置1によれば、FPC20を屈曲したときにFPC20と筒状絶縁部材30とが接触したとしても、FPC20に対して局所的に力がかかることはないため、FPC20上に形成された回路が断線するのを抑制することが可能となる。
【0039】
実施形態1に係る液晶装置1においては、筒状絶縁部材30は、接地されているため、輻射ノイズを除去することができ、いわゆるシールド効果を得ることができる。
【0040】
なお、筒状絶縁部材30における液晶パネル10とは反対側(すなわち上側)の開口部32の形状を、図2〜図4に示す形状とすることも可能である。
【0041】
図2は、変形例1の筒状絶縁部材30aを説明するために示す図である。図2(a)は筒状絶縁部材30aの上側の開口部32aを拡大して示す側面図であり、図2(b)は筒状絶縁部材30aの上側の開口部32aを拡大して示す断面図である。
図3は、変形例2の筒状絶縁部材30bを説明するために示す図である。図3(a)は筒状絶縁部材30bの上側の開口部32bを拡大して示す側面図であり、図3(b)は筒状絶縁部材30bの上側の開口部32bを拡大して示す断面図である。
図4は、変形例3の筒状絶縁部材30cを説明するために示す図である。図4(a)は筒状絶縁部材30cの上側の開口部32cを拡大して示す側面図であり、図4(b)は筒状絶縁部材30cの上側の開口部32cを拡大して示す断面図である。
【0042】
変形例1〜3の筒状絶縁部材30a〜30cは、図2〜図4に示すように、筒状絶縁部材30a〜30cの上側の開口部32a〜32cがFPC20の曲がる方向に広がっている。これにより、筒状絶縁部材30a〜30c(筒状絶縁部材30a〜30cの開口部32a〜32cの端縁)によってFPC20が傷付くのを抑制することが可能となる。
【0043】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る液晶装置2を説明するために示す図である。図5(a)は液晶装置2の斜視図であり、図5(b)は液晶装置2を図5(a)とは異なる方向(図5(a)の図面奥から図面手前方向)から見たときの斜視図であり、図5(c)は図5(b)に示す液晶装置2から筒状絶縁部材50を取り外したときの液晶装置2の斜視図であり、図5(d)は液晶装置2を横から見たときの断面図である。なお、図5において、図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
実施形態2に係る液晶装置2は、基本的には実施形態1に係る液晶装置1とよく似た構成を有するが、FPCとして電子素子が実装されたFPCを備える点及び筒状絶縁部材の一部に凹部が形成されている点で、実施形態1に係る液晶装置1とは異なる。
【0045】
すなわち、実施形態2に係る液晶装置2においては、図5に示すように、FPCとして、電子素子42が実装されたFPC40を備える。電子素子42は、ICやLSI等の液晶駆動用の素子からなる。電子素子42の端子は、FPC40の表面に形成された各配線に対してFCB(Flip Chip Bonding)等により接続されている。
【0046】
また、実施形態2に係る液晶装置2においては、筒状絶縁部材50における電子素子42に対応する部分には、FPC40に対する筒状絶縁部材50の位置ずれの発生を抑制するための凹部56が形成されている。筒状絶縁部材50は、少なくともFPC40における電子素子42が実装された部分を包囲するように配置されている。
【0047】
このように、実施形態2に係る液晶装置2は、実施形態1に係る液晶装置1とは、FPCとして電子素子が実装されたFPCを備える点及び筒状絶縁部材の一部に凹部が形成されている点で異なるが、実施形態1に係る液晶装置1の場合と同様に、筒状絶縁部材50でFPC40を包囲しているため、回路の短絡を防ぐことが可能で、FPC40全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置となる。
【0048】
実施形態2に係る液晶装置2においては、筒状絶縁部材50は、少なくともFPC40における電子素子42が実装された部分を包囲するように配置されているため、電子素子42も含めた回路の短絡を防ぐことが可能となる。
【0049】
実施形態2に係る液晶装置2においては、筒状絶縁部材50における電子素子42に対応する部分には凹部56が形成されているため、FPC40に対する筒状絶縁部材50の配置位置がずれてしまうのを抑制することが可能となる。
【0050】
実施形態2に係る液晶装置2は、FPCとして電子素子が実装されたFPCを備える点及び筒状絶縁部材の一部に凹部が形成されている点以外の点では、実施形態1に係る液晶装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る液晶装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0051】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係る液晶装置3の斜視図である。なお、図6において、図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0052】
実施形態3に係る液晶装置3は、基本的には実施形態1に係る液晶装置1とよく似た構成を有するが、筒状絶縁部材の構成が、実施形態1に係る液晶装置1とは異なる。
【0053】
すなわち、実施形態3に係る液晶装置3においては、図6に示すように、筒状絶縁部材60には、冷却風の流れを整える整流板66が形成されている。
【0054】
このように、実施形態3に係る液晶装置3は、実施形態1に係る液晶装置1とは、筒状絶縁部材の構成が異なるが、実施形態1に係る液晶装置1の場合と同様に、筒状絶縁部材60でFPC20を包囲しているため、回路の短絡を防ぐことが可能で、FPC全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置となる。
【0055】
実施形態3に係る液晶装置3においては、筒状絶縁部材60には、冷却風の流れを整える整流板66が形成されているため、例えばプロジェクタ(後述する実施形態5に係るプロジェクタ1000)に実施形態3に係る液晶装置3を用いた場合には、筒状絶縁部材60を通る冷却風の流れを整えることができ、冷却性能を向上することが可能となる。
【0056】
実施形態3に係る液晶装置3は、筒状絶縁部材の構成が異なる点以外の点では、実施形態1に係る液晶装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る液晶装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0057】
[実施形態4]
図7は、実施形態4に係る液晶装置4を説明するために示す図である。図7(a)は実施形態4に係る液晶装置4の斜視図であり、図7(b)は筒状絶縁部材70の上面図であり、図7(c)は筒状絶縁部材70の底面図である。なお、図7(a)において、図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0058】
実施形態4に係る液晶装置4は、基本的には実施形態1に係る液晶装置1とよく似た構成を有するが、筒状絶縁部材の形状が、実施形態1に係る液晶装置1とは異なる。
【0059】
すなわち、実施形態4に係る液晶装置4においては、図7に示すように、筒状絶縁部材70は、液晶パネル10側(すなわち下側)の開口部74の開口面積が筒状絶縁部材70における液晶パネル10とは反対側(すなわち上側)の開口部72の開口面積よりも広くなるような形状を有する。
【0060】
このように、実施形態4に係る液晶装置4は、実施形態1に係る液晶装置1とは、筒状絶縁部材の形状が異なるが、実施形態1に係る液晶装置1の場合と同様に、筒状絶縁部材70でFPC20を包囲しているため、回路の短絡を防ぐことが可能で、FPC全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置となる。
【0061】
実施形態4に係る液晶装置4においては、下側の開口部74の開口面積が上側の開口部72の開口面積よりも広くなるような形状を有する筒状絶縁部材70を備えるため、例えば液晶パネルに対して冷却風が下から上に向かって流れるような冷却風流路を有するプロジェクタ(後述する実施形態5に係るプロジェクタ1000)に実施形態4に係る液晶装置4を用いた場合には、筒状絶縁部材70内に冷却風を比較的多く取り込むことができ、FPC20及び筒状絶縁部材70の冷却効率を向上することが可能となる。
【0062】
実施形態4に係る液晶装置4は、筒状絶縁部材の形状が異なる点以外の点では、実施形態1に係る液晶装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る液晶装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0063】
[実施形態5]
実施形態5では、本発明のプロジェクタについて説明する。
まず、実施形態5に係るプロジェクタ1000の構成について、図8を用いて説明する。
【0064】
図8は、実施形態5に係るプロジェクタ1000を説明するために示す図である。図8(a)はプロジェクタ1000の光学系を示す図であり、図8(b)は液晶装置400Rの斜視図である。
【0065】
実施形態5に係るプロジェクタ1000は、図8に示すように、照明装置100と、照明装置100からの照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離された3つの色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する液晶パネル410R,410G,410Bを有する3つの液晶装置400R,400G,400Bと、3つの液晶装置400R,400G,400Bの液晶パネル410R,410G,410Bによって変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイックプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光学系600とを備えたプロジェクタである。
【0066】
照明装置100は、被照明領域側に照明光束を射出する光源装置110と、光源装置110から射出される照明光束を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、第2レンズアレイ130からの各部分光束を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光に変換して射出する偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有する。
【0067】
光源装置110は、楕円面リフレクタ114と、楕円面リフレクタ114の第1焦点近傍に発光中心を有する発光管112と、発光管112から被照明領域側に向けて射出される光を発光管112に向けて反射する副鏡116と、楕円面リフレクタ114からの集束光を略平行光として射出する凹レンズ118とを有する。光源装置110は、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0068】
発光管112は、管球部と、管球部の両側に延びる一対の封止部とを有する。管球部は、球状に形成された石英ガラス製であって、この管球部内に配置された一対の電極と、管球部内に封入された水銀、希ガス及び少量のハロゲンとを有する。発光管112としては、種々の発光管を採用でき、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を採用できる。
【0069】
楕円面リフレクタ114は、発光管112の一方の封止部に挿通・固着される筒状の首状部と、発光管112から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面とを有する。
【0070】
副鏡116は、発光管112の管球部の略半分を覆い、楕円面リフレクタ114の反射凹面と対向して配置される反射手段である。副鏡116は、発光管112の他方の封止部に挿通・固着されている。副鏡116は、発光管112から放射された光のうち楕円面リフレクタ114に向かわない光を発光管112に戻し楕円面リフレクタ114に入射させる。
【0071】
凹レンズ118は、楕円面リフレクタ114の被照明領域側に配置されている。そして、楕円面リフレクタ114からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。
【0072】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ118からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。図示による説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状は、液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0073】
第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120と略同様な構成を有し、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0074】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束のうち一方の偏光成分(例えばP偏光成分)を有する光を透過し他方の偏光成分(例えばS偏光成分)を有する光を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の偏光成分を有する光を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、偏光分離層を透過した一方の偏光成分を有する光を他方の偏光成分を有する光に変換する位相差板とを有する。
【0075】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換素子140を経た複数の部分光束を集光して液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150の光軸と照明装置100の照明光軸100axとが略一致するように、重畳レンズ150が配置されている。なお、重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。
【0076】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー230,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有する。色分離導光光学系200は、重畳レンズ150から射出される照明光束を、赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる3つの液晶パネル410R,410G,410Bに導く機能を有する。
【0077】
実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、液晶装置として、実施形態1で説明した液晶装置1と同様の構成を有する液晶装置400R,400G,400Bを備えている。
すなわち、液晶装置400Rは、図8(b)に示すように、液晶パネル410Rと、液晶パネル410Rに接続されたFPC420Rと、FPC420Rを包囲する筒状絶縁部材430Rとを有する。なお、液晶装置400G,400Bは、液晶装置400Rと同様の構成を有するため、詳細な説明を省略する。
【0078】
液晶パネル410R,410G,410Bは、画像情報に応じて照明光束を変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。
液晶パネル410R,410G,410Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に従って、入射側偏光板から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0079】
液晶パネル410R,410G,410Bの光路前段には、集光レンズ300R,300G,300Bが配置されている。
【0080】
また、ここでは図示を省略したが、集光レンズ300R,300G,300Bと各液晶パネル410R,410G,410Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が介在配置され、各液晶パネル410R,410G,410Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、それぞれ射出側偏光板が介在配置されている。これら入射側偏光板、液晶パネル410R,410G,410B及び射出側偏光板によって入射する各色光の光変調が行われる。
【0081】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板から射出された各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0082】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0083】
なお、ここでは図示を省略したが、プロジェクタ1000内には、各光学系などを冷却するための少なくとも1つのファン及び複数の冷却風流路が設けられている。プロジェクタ1000外部から取り込まれた空気は、これらファン及び複数の冷却風流路によってプロジェクタ1000内を循環し、外部へと排出される。液晶パネル410R,410G,410Bの部分では、冷却風が下から上に向かって流れるように冷却風流路が形成されている。
【0084】
以上のように構成された実施形態5に係るプロジェクタ1000は、回路の短絡を防ぐことが可能で、FPC全体としての柔軟性を確保しつつ回路が断線するのを抑制することが可能な液晶装置400R,400G,400Bを備える高品質なプロジェクタとなる。
【0085】
以上、本発明の液晶装置及びプロジェクタを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0086】
(1)上記実施形態1〜4に係る液晶装置1〜4においては、筒状絶縁部材30,50,60,70がポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリイミドからなるとともに、筒状絶縁部材30,50,60,70が接地されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、筒状絶縁部材として、フェライトを含む材料からなる筒状絶縁部材を用いてもよい。フェライトは電磁波を吸収するため、このような構成からなる筒状絶縁部材を用いることにより、輻射ノイズを除去することができ、いわゆるシールド効果を得ることができる。
【0087】
(2)上記実施形態1〜4に係る液晶装置1〜4においては、筒状絶縁部材として、穴開き(メッシュ)構造を有する筒状絶縁部材を用いてもよい。
【0088】
(3)上記実施形態3及び4に係る液晶装置3,4においては、電子素子が実装されていないFPCを備える液晶装置(実施形態1に係る液晶装置1)において、筒状絶縁部材の構成が異なる場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子素子が実装されたFPCを備える液晶装置(実施形態2に係る液晶装置2)において、実施形態3及び4で説明した筒状絶縁部材60,70を用いたものであってもよい。
【0089】
(4)上記実施形態4に係る液晶装置4においては、筒状絶縁部材として、下側の開口部の開口面積が上側の開口部の開口面積よりも広くなるような形状を有する筒状絶縁部材70を備える場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上側(液晶パネル側)の開口部の開口面積が下側(液晶パネルとは反対側)の開口部の開口面積よりも広くなるような形状を有する筒状絶縁部材を備えていてもよい。このような形状を有する筒状絶縁部材を備える液晶装置は、例えば液晶パネルに対して冷却風が上から下に向かって流れるような冷却風流路を有するプロジェクタに用いることにより、筒状絶縁部材内に冷却風を比較的多く取り込むことができ、FPC及び筒状絶縁部材の冷却効率を向上することが可能となる。
【0090】
(5)上記実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、液晶装置として、実施形態1に係る液晶装置1と同様の構成を有する液晶装置400R,400G,400Bを備える場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施形態2〜4に係る液晶装置2〜4と同様の構成を有する液晶装置を備えていてもよい。
【0091】
(6)上記実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、発光管に配設される反射手段として副鏡を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射手段として反射膜を用いることも好ましい。また、上記実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、発光管に反射手段としての副鏡が配設されたプロジェクタを例示して説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、副鏡が配設されていないプロジェクタに本発明を適用することも可能である。
【0092】
(7)上記実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、光源装置として、楕円面リフレクタ及び凹レンズからなる光源装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、放物面リフレクタからなる光源装置を用いることも好ましい。
【0093】
(8)上記実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、光均一化光学系として、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロッド部材からなるロッドインテグレータ光学系をも好ましく用いることができる。
【0094】
(9)上記実施形態5に係るプロジェクタ1000は透過型のプロジェクタであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は反射型のプロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶装置等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶装置等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクタにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクタと同様の効果を得ることができる。
【0095】
(10)上記実施形態5に係るプロジェクタ1000においては、3つの液晶装置400R,400G,400Bを用いたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶装置を用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0096】
(11)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクタに適用する場合にも可能である。
【0097】
(12)本発明は、携帯電話やPDA(携帯情報端末)など、液晶パネルを備える電子機器に適用する場合にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施形態1に係る液晶装置1を説明するために示す図。
【図2】変形例1の筒状絶縁部材30aを説明するために示す図。
【図3】変形例2の筒状絶縁部材30bを説明するために示す図。
【図4】変形例3の筒状絶縁部材30cを説明するために示す図。
【図5】実施形態2に係る液晶装置2を説明するために示す図。
【図6】実施形態3に係る液晶装置3の斜視図。
【図7】実施形態4に係る液晶装置4を説明するために示す図。
【図8】実施形態5に係るプロジェクタ1000を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3,4,400R,400G,400B…液晶装置、10,410R,410G,410B…液晶パネル、12…素子基板、14…対向基板、16…液晶、20,40,420R…FPC、30,30a,30b,30c,50,60,70,430R…筒状絶縁部材、32,32a,32b,32c,52,62,72,432R…筒状絶縁部材における液晶パネルとは反対側の開口部、34,54,64,74,434R…筒状絶縁部材における液晶パネル側の開口部、42…電子素子、56…凹部、66…整流板、100…照明装置、100ax…照明光軸、110…光源装置、112…発光管、114…楕円面リフレクタ、116…副鏡、118…凹レンズ、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、1000…プロジェクタ、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、
前記液晶パネルに接続されたフレキシブルプリント配線基板と、
前記フレキシブルプリント配線基板を包囲する筒状絶縁部材とを有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置において、
前記フレキシブルプリント配線基板は、電子素子が実装されたフレキシブルプリント配線基板であり、
前記筒状絶縁部材は、少なくとも前記フレキシブルプリント配線基板における前記電子素子が実装された部分を包囲するように配置されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶装置において、
前記筒状絶縁部材における前記電子素子に対応する部分には、凹部が形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液晶装置において、
前記筒状絶縁部材における前記液晶パネルとは反対側の開口部は、前記フレキシブルプリント配線基板の曲がる方向に広がっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液晶装置において、
前記筒状絶縁部材は、接地されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の液晶装置において、
前記筒状絶縁部材は、フェライトを含む材料からなることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
照明光束を射出する照明装置と、
前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルを有する液晶装置と、
前記液晶パネルにより変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタにおいて、
前記液晶装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶装置であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロジェクタにおいて、
前記プロジェクタ内には、冷却風流路が形成されており、
前記筒状絶縁部材には、冷却風の流れを整える整流板が形成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項9】
請求項7に記載のプロジェクタにおいて、
前記プロジェクタ内には、冷却風流路が形成されており、
前記筒状絶縁部材における前記液晶パネル側の開口部及び前記液晶パネルとは反対側の開口部のうち、冷却風流路の風上側の開口部の開口面積は、冷却風流路の風下側の開口部の開口面積よりも広いことを特徴とするプロジェクタ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−116875(P2008−116875A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302486(P2006−302486)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】