説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】良好な塗布性を示し、かつ、液晶パネルに光や熱ストレスを印加したり、長時間液晶パネルを駆動させても電圧保持率の低下や焼付きが発生しない液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供する。
【解決手段】下記式(1−1)または(1−2)


で表わされるプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体を含有する液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液晶配向剤および当該液晶配向剤により形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。さらに詳しくは優れた塗布性、高い電圧保持率を示し、かつ、液晶パネルに光や熱によるストレスを長時間印加したり、液晶パネルを長時間駆動させた場合の電圧保持率の低下や焼付きが発生するのを抑制する液晶配向剤および当該配向剤から形成される液晶配向膜、当該液晶配向膜を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース、低消費電力等の観点から液晶ディスプレイに代表される液晶表示素子は液晶電卓が初めて量産化されて以来、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノートブック型パソコン、カーナビゲーション、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなど多方面への応用が進み、また活発な開発が継続されている。液晶表示素子としては、正の誘電異方性を有するネマティック型液晶を用い、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにしたTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子やTN型液晶表示素子に比べて高コントラストとなるSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子が広く使用されてきた。また近年、液晶ディスプレイの表示品位を更に改良すべく、視野角依存性が小さいVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、IPS(In Plane Switching)型液晶表示素子、視野角依存性が小さいと共に映像画面の高速応答性にも優れた光学補償ベンド(OCB)型液晶表示素子などが開発されている。
【0003】
液晶表示素子において、液晶の配向を制御する部材が液晶配向膜である。液晶配向膜は、ポリアミック酸または当該ポリアミック酸をイミド化して得られるイミド化重合体を含有する液晶配向剤を、ロールコーター法、スピンナー法、フレキソ印刷法、インクジェット法等により基板に塗布し、次いで、塗布面を加熱乾燥する手法により形成されている。ここで配向膜の塗布ムラは直接的に液晶の配向不良に繋がり、液晶パネルの表示品位を著しく低下させる要因となる。従来使用されているポリイミド含有配向剤において電圧保持率等の電気特性改良にはポリイミドのイミド化率を高くする検討がなされてきたが、高イミド化率と配向剤の塗布性はトレードオフの関係があり、優れた電気特性と塗布性を両立する液晶配向剤の開発が切望されている。また、液晶配向膜の劣化や当該配向膜への不純物の吸着は電圧保持率を低下させ、パネル表示ムラ、画面のちらつき、コントラスト低下等の表示性能の低下を引き起こすと考えられている。これまでに、電圧保持率を改良する方法としてはポリアミック酸に多官能エポキシ化合物を添加する例(特許文献1)、ポリアミック酸およびイミド化重合体の原料であるテトラカルボン酸二無水物やジアミンの骨格により改良を試みた例(特許文献2および3)、ポリアミック酸にアクリルポリマーを添加する例(特許文献4)等が報告されている。しかし、これら報告による初期電圧保持率およびその信頼性(液晶パネルに光や熱ストレスを印加したり、長時間液晶パネルを駆動させても電圧保持率が変化しないこと)の改良効果は十分なものとは言えず、また、同時に配向膜形成時の塗布性を改良するとの観点で検討されたものではなかった。近年、液晶パネルが液晶TVや高品位モニターに適用されるのに伴い、液晶配向膜には高品質な表示性能を達成すべく、高電圧保持率に加え、電圧保持率の信頼性、配向膜形成時の塗布性を更に改良することが切望されている。
【特許文献1】特開平10−168455号公報
【特許文献2】特許第3572690号公報
【特許文献3】特開2001−228481号公報
【特許文献4】特許第3206169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、それ故、本発明の目的は、良好な塗布性を示し、かつ、液晶パネルに光や熱ストレスを印加したり、長時間液晶パネルを駆動させても電圧保持率の低下や焼付きが発生しない液晶配向膜を与える液晶配向剤および当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜によって長期に亘り美しい画像を表示することが可能な液晶表示素子を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する液晶配向剤により達成される。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基であり、Aは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、A、A、Aはそれぞれ独立して単結合、エーテル結合(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)、チオエーテル結合(−S−)または炭素数1〜10のアルキレン基であり、B、B、Bはそれぞれ独立して単結合、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基またはピペリジン−1,4−ジイル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜50の炭化水素基またはフッ素原子を含有する基である、但し、隣接するA〜AとB〜Bがともに単結合であるときには一つの単結合を表わすものとし、またA〜AとB〜Bの全てで一つの単結合を表わすときにはRは水素原子であることはない)
また、本発明によれば、本発明の上記目的は、上記液晶配向剤から形成される液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶配向剤によれば、良好な塗布性を示し、かつ、液晶パネルに光や熱ストレスを印加したり、長時間液晶パネルを駆動させても電圧保持率の低下や焼付きが発生しない液晶配向膜を与える液晶配向剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
「プレチルト角発現成分を有するアクリル重合体」
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の液晶配向剤は上記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、「プレチルト角発現成分を有するアクリル重合体」とも言う)を含有する。本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表される繰り返し単位の構造選択とその含有量により液晶配向膜のプレチルト角発現性、電圧保持率などの電気特性を制御することができる。
上記式(1)においてRは、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の1価の炭化水素基;または1価の極性基である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0011】
炭素原子数1〜30の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、フルオレニル基等の芳香族基などが挙げられる。これらの基中の炭素原子に結合した水素原子は、例えばフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子およびシアノ基などで置換されていてもよい。
【0012】
また、上記の置換または非置換の1価の炭化水素基は、直接、重合体主鎖骨格に結合していてもよいし、あるいは連結基を介して結合していてもよい。前記連結基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはケイ素原子を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、スルホニル基(−SO−)、スルホニルオキシ基(−SO−O−)、オキシスルホニル基(−O−SO−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−)、シロキサン結合(−Si(R)O−)(式中、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基);あるいはこれらの2種以上が組合わさって連なったものが挙げられる。更に上記の置換または非置換の1価の炭化水素基がシクロアルキル基または芳香族基である場合、前記連結基は炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基(例えば、−(CH)m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基)であってもよい。
【0013】
1価の極性基としては、例えば水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミド基、イミノ基(=NH)、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホン酸基(−SOH)、スルフィノ基(−SOH)、およびカルボキシル基などが挙げられる。
さらに具体的に、トリオルガノシロキシ基としては、例えば、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などが挙げられ;トリオルガノシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては、例えば、第2級アミノ基および第3級アミノ基等が挙げられ、アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0014】
また、Rは水素原子、炭素数1〜50の炭化水素基またはフッ素原子を含有する基である。炭素数1〜50の炭化水素基またはフッ素原子を含有する基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基および2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ステロイド骨格などの脂肪族縮合多環式構造を有する基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、フルオレニル基等の芳香族基ならびにこれらの基中の炭素原子に結合した水素原子をフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子またはトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基等で置換されていてもよい基などが挙げられる。これらの基の選択は液晶配向膜が必要とするプレチルト角発現性によって選択することができる。例えば、垂直配向剤として用いる場合は、Rは嵩高い置換基が好ましく、例えば、炭素原子数が6以上の直鎖状または分岐状アルキル基、複数のシクロアルキル基および芳香族基が連結した基、ステロイド骨格などの脂肪族縮合多環式構造を有する基を用いることが好ましく、高いプレチルト角を安定して発現できる点でステロイド骨格を有する基であることが特に好ましい。
【0015】
式(1)においてAは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、A、A、Aはそれぞれ独立して単結合、エーテル結合(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)、チオエーテル結合(−S−)および炭素数1〜10のアルキレン基よりなる群から選ばれる基であり、B、B、Bはそれぞれ独立して単結合、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基である。
式(1)で表される好ましい構造は下記式(3)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rの定義は式(1)のRの定義に同じである)
で表される。
式(1)で表される構造としては、例えば、以下に示す具体例を例示することができる。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
これら上記式(1)の具体例として挙げられる構造のうち高いプレチルト角の発現性と電圧保持率などの電気特性のバランスが優れる点で式(1−3)および式(1−4)で表される構造が特に好ましい。
【0022】
また、本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体は下記式(2)で表される環状エーテル構造を有する構造をさらに含有することが好ましい。式(2)で表される構造中の環状エーテル構造は、配向膜を形成後、加熱処理(ポストベーク)を行うことによって、熱架橋反応し、配向膜に耐熱性、耐液晶性(耐溶剤性)、膜密度を上昇させることにより不純物イオンの拡散を低減させる効果を付与させることができる。また、これらの効果により、液晶パネルに光や熱ストレスを印加したり、長時間液晶パネルを駆動させても電圧保持率の低下や焼付きが発生しない液晶配向膜とすることができる。
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Rは水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基であり、Rは単結合または2価の有機基であり、Rは炭素数2〜10の環状エーテル構造を有する基である)
上記式(2)において、Rの具体例としては前述の式(1)におけるRと同様の基を例示することができる。
は単結合もしくは2価の有機基であり、好ましくは炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基例えば、−(CH)n−(式中、nは1〜10の整数)である。
が表す環状エーテル構造としては炭素数2〜10の熱架橋反応性を有する基、例えばエポキシ基、オキセタニル基が好ましい。これらのうち、反応性に優れる点でエポキシ基が特に好ましい。
【0025】
上記式(2)で表される繰返し単位の具体例としては下記式(4)で表される構造単位、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルなどのラジカル重合性を有する環状エーテル基含有不飽和化合物を重合した構造単位が挙げられる。
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基を表しそしてaは1〜10の整数である。)
式(4)において、Rの具体例としては前述の式(1)におけるRと同様の基を例示することができる。
これらのうち、熱硬化後の配向膜の膜密度が高く、優れた電気特性、電気特性の信頼性を発現する点でアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルを重合した構造単位を用いることが特に好ましい。
【0028】
更に、上記式(2)で表される環状エーテル構造の架橋反応を促進する為に、本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体中にはカルボン酸基を有する繰返し単位を含有することが好ましく、具体例としてはラジカル重合性を有するカルボン酸基含有化合物を重合した構造単位を含有することが好ましい。カルボン酸基を有する構造単位としては例えば下記式(5)で表されるモノカルボン酸前駆体が重合した繰返し単位あるいはマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸前駆体が重合した繰返し単位を例示することができる。
【0029】
【化8】

【0030】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基を表す。)
式(5)において、Rの具体例としては前述の式(1)におけるRと同様の基を例示することができる。
これらのうち、熱硬化後の配向膜の膜密度が高く電気特性、電気特性の信頼性を発現する点でアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸を重合した構造単位が特に好ましい。
本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体は耐熱性を付与する為に下記式(6)および(7)のそれぞれで表される構造を有することも好ましい。
【0031】
【化9】

【0032】
(上記式中、Rは酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜50の炭化水素基であり、R10、R11はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基を表す。)
【0033】
式(6)においてRは酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜50の炭化水素基であり、その具体例としてはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基等の芳香族基またはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が好ましく、就中、フェニル基、シクロヘキシル基が特に好ましい。
【0034】
式(7)においてR10、R11はそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基を表し、その具体例としては前述の式(1)におけるRと同様の基を例示することができる。式(7)で表される構造の具体例としてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンおよびスチレン、4−ビニルビフェニル、2−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物を重合した構造単位が好ましく、これらの中でもスチレンを重合した構造単位が特に好ましい。
【0035】
本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体製造に用いられる溶媒としては、例えば、アルコール、エーテル、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素、ケトン、エステルなどを挙げることができる。
【0036】
これらの具体例としては、アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノールなど;エーテルとしてテトラヒドロフラン、ジ−n−アミルエーテルなど;グリコールエーテルとして、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど;エチレングリコールアルキルエーテルアセテートとして、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなど;ジエチレングリコールアルキルエーテルとして、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなど;プロピレングリコールモノアルキルエーテルとして、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなど; プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネートとして、例えばプロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールブチルエーテルプロピオネートなど;プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとして、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなど;芳香族炭化水素として、例えばトルエン、キシレンなど;
ケトンとして、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジイソブチルケトンなど;エステルとして、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、3−ブトキシプロピオン酸ブチルなどのエステルをそれぞれ挙げることができる。
【0037】
これらのうち、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートが好ましく、特に、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0038】
本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体製造に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0039】
本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体製造においては、分子量を調整するために分子量調整剤を使用することができる。その具体例としては、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0040】
本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体は重合条件(溶媒種、溶媒/モノマー仕込み比(重量比)、重合温度、開始剤種とその添加量、連鎖移動剤の種類とその添加量など)を適切に調整することによって望みの分子量に制御することができる。本発明で用いられるプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、好ましくは2×10〜1×10、より好ましくは5×10〜5×10、特に好ましくは1×10〜4×10である。Mwが2×10未満であると、配向剤とした際に適切な粘度が得らないため望みの膜厚を有する配向膜を形成できず、また、配向膜の耐熱性が劣り、低分子化合物の溶出によりパネル特性が悪化する(電圧保持率の低下やパネル焼付きの要因になる)ことが問題になる場合がある。一方1×10を超えると、配向剤とした際に粘度が高くなりすぎ、塗布性に問題を生じることがある。また、分子量分布(以下、「Mw/Mn」という。Mnはポリスチレン換算の数平均分子量を表す)は、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、特に好ましくは10.0以下であることが望ましい。Mw/Mnを小さくすることで配向剤塗布性に優れ、前述の低分子化合物の溶出等に起因するパネル特性悪化の問題が発生しない配向膜を得ることが可能となる。
【0041】
本発明の液晶配向剤はVA方式、TN方式、IPS方式、OCB方式、FFS方式など種々の方式の液晶配向剤として適用する事が可能であるが、好ましくは垂直配向(VA)モード用配向剤として好適に用いることができる。VA配向剤として用いる場合の上記式(1)で表されるプレチルト角発現成分となる繰返し単位の含有量は、好ましくは4〜60モル%、より好ましくは5〜40モル%、特に好ましくは6〜30モル%である。式(1)で表されるプレチルト角発現成分の含有量が4モル%より少ないと十分な液晶の垂直配向性を発現することができず、また60モル%より多くなると印刷性が悪化したり、残留DCに関連づけて考察される焼付きが発生しやすくなる場合がある。
【0042】
本発明において、液晶配向膜に高い初期電圧保持率と、その高い信頼性(長時間液晶パネルを駆動させたり、熱や光のストレスを長時間加えた際に電圧保持率が変化しないこと)を付与するには、プレチルト角発現成分を有するアクリル重合体に上記式(2)で表される環状エーテル構造を有する繰返し単位を含有させることが好ましい。上記式(2)で表される環状エーテル構造を有する繰返し単位の含有量は例えば5〜50モル%、好ましくは15〜45モル%、特に好ましくは20〜40モル%含有させるとよい。上記式(2)で表される環状エーテル構造を有する繰返し単位の含有量が5モル%より少ない場合は電圧保持率の高い信頼性等の目的とする架橋反応による効果が十分に得られず、50モル%より多い場合は未反応官能基が残留し、電気特性等を悪化させる原因となる場合がある。更に、上記式(2)で表される環状エーテル構造の架橋反応を促進する為、本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体には、上記式(5)で表されるカルボン酸基を有する繰返し単位を適時含有させてもよい。式(5)で表されるカルボン酸基を有する繰返し単位は上記式(2)で表される環状エーテル構造を有する繰返し単位とほぼ同モル量含有させることが好ましく、例えば5〜50モル%、好ましくは15〜45モル%、特に好ましくは20〜40モル%含有させるとよい。
【0043】
上記式(6)および上記式(7)のそれぞれで表される構造単位はプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体に耐熱性を付与するために適時使用することができ、それぞれ同モル量程度含有させることが好ましく、ポリマー全量から、上記式(1)で表されるプレチルト角発現成分となる繰返し単位、上記式(2)で表される環状エーテル構造を有する繰返し単位および上記式(5)で表されるカルボン酸基を有する繰返し単位を差し引いた分が適用される。
【0044】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表される構造単位を有する重合体の少なくとも1種以上と必要に応じてその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
【0045】
本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、上記式(1)で表されるプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒と同じものを挙げることができる。更に印刷性の観点から沸点160℃以上の溶媒を含有することが好ましい場合がある。これらの溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールジエチルエーテルを例示することができる。特に好ましい溶媒組成は、前記の溶媒を組み合わせて得られる組成であって、液晶配向剤中で固形成分が析出せず、かつ、液晶配向剤の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるような組成である。
【0046】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択され、例えば1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは3〜30重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い。固形分濃度が50重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣り面内均一性に優れる液晶配向膜が得られない場合がある。
なお、特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる塗布方法によって異なり、更に具体的には各塗布方法に適切な液晶配向剤粘度を得る為に適切となる固形分濃度に調節する必要がある。例えば、スピンナー法による場合には配向剤粘度を3.0〜10.0mPa・sの範囲に調整することが好ましい。印刷法による場合には、配向剤粘度を12〜50mPa・sの範囲に調整することが好ましい。インクジェット法による場合には配向剤粘度を3〜15mPa・sの範囲することが好ましい。
また、本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0047】
本発明の液晶配向剤は、冷凍保管後、室温まで十分に解凍した後、パーティクルカウンターを用いて測定される大きさが1.0μm以上のパーティクル異物の数(リオン(株)製 液中パーティクルセンサーにて測定される値)が、好ましくは20個/ml以下であるものであり、より好ましくは10個/ml以下のものであり、特に好ましくは5個/ml以下のものである。大きさが1.0μm以上のパーティクル異物の数が20個/mlより多い場合は、液晶配向剤中で当該異物の凝集体が発生し、その凝集体が液晶配向膜のピンホールやハジキ等の原因となる。
【0048】
本発明の液晶配向剤には、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、残留DC、耐焼付き性を改良する観点からポリアミック酸、電圧保持率を改良する観点からイミド化重合体、静電気特性や基板表面に対する接着性を向上させ、また、電圧保持率を向上させる観点から官能性シラン含有化合物または分子内に2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物が挙げられる。
【0049】
本発明の液晶配向剤に必要に応じて添加することができるポリアミック酸およびイミド化重合体としてはテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を重付加反応させて合成されたポリアミック酸および前記ポリアミック酸をイミド化して得られるイミド化重合体を挙げることができる。これらは1種単独でも、2種以上含有させてもよい。ここで言うイミド化重合体には、上記ポリアミック酸を部分的にイミド化した部分イミド重合体および100%イミド化した重合体が含まれ、以下、これらを総称して『イミド化重合体』と記載する。また、ここで用いられるイミド化重合体における好ましいイミド化率は、10〜100モル%、更に好ましくは20〜95モル%、特に好ましくは45〜90モル%である。ここで、「イミド化率」とは、重合体におけるアミック酸繰返し単位とイミド繰り返し単位の総数に対する、イミド繰り返し単位の数の割合を%で表したものとする。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であるものもイミド繰返し単位の数に含まれるものとする。本発明の液晶配向剤に添加することができるポリアミック酸および前記ポリアミック酸をイミド化して得られるイミド化重合体の具体例としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種以上とp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3’―(テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロピルアミン)から選ばれるジアミンの少なくとも1種以上を反応させて得られるポリアミック酸およびそのポリアミック酸をイミド化して得られるイミド化重合体を挙げることができる。これらの中で1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から選ばれるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種以上とp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選ばれるジアミンの少なくとも1種以上を反応させて得られるポリアミック酸およびそのポリアミック酸をイミド化して得られるイミド化重合体を用いることが好ましい。これらポリアミック酸およびイミド化重合体の重量部で表記される配合割合は、通常、(本発明のプレチルト角発現成分を有するアクリル重合体総量) : (ポリアミック酸およびイミド化重合体の総量)=10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、特に好ましくは30:70〜70:30である。
【0050】
官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。これら官能性シラン含有化合物を使用する場合、その配合割合は、本発明の重合体総量100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜40重量部、特に好ましくは3〜20重量部である。
【0051】
分子内に2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。これら分子内に2個以上のエポキシ基を有する低分子化合物を使用する場合、その配合割合は、本発明の重合体総量100重量部に対して、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは5〜40重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。
【0052】
〈液晶表示素子〉
本発明の液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0053】
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここで、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィンなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。反射電極にはAlやAgなどの金属、あるいは、これらの金属を含有する合金などを用いることができるが、十分な反射率を有してさえいればこれらに限定されるものではない。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜や反射電極と液晶配向膜との密着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で通常、予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜300℃であり、より好ましくは40〜200℃であり、特に好ましくは50〜150℃である。その後、溶剤を完全に除去し、重合体が環状エーテル構造を含有する場合は、当該官能基の熱架橋反応を促進することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。このようにして、本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる塗膜を形成することができる。形成される液晶配向膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0054】
(2)必要に応じて形成された塗膜表面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻きつけたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能やプレチルト角を制御した液晶配向膜を得ることができる。また、ラビング処理による方法以外に、塗膜表面に偏光紫外光を照射して配向能を制御する方法も適用できる。なお、ラビング処理時などに発生する微粉末(異物)を除去して塗膜表面を清浄な状態とするために、形成された液晶配向膜をイソプロピルアルコールおよび/または純水等によって洗浄することが好ましい。また、本発明の液晶向配剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理された液晶配向膜上にレジスト膜を部分的に形成し、先行のラビング処理とは異なる方向にラビング処理を行った後、前記レジスト膜を除去して、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視野特性を改善することが可能である。
【0055】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の外面側に、偏光板を配することにより、液晶表示素子が得られる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
【0056】
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例および比較例における重合体の分子量測定、液晶配向剤の塗布性、パーティクル数測定、作製した液晶表示素子のプレチルト角、電圧保持率および電圧保持率の信頼性の測定は以下の方法により評価した。
【0058】
[重量平均分子量および分子量分布]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー(株)製、商品名:HLC−8020/カラム3本:東ソー(株)製、商品名:TSK guardcolum α, TSK gel α-M, TSK gel α-2500)を用い、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF ; DMF3Lに臭化リチウム・一水和物9.4g、リン酸1.7gを添加したもの)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、Mnは数平均分子量である。
【0059】
[液晶配向剤の塗布性]
JET−CM連続式インクジェットプリンター(紀州技研工業(株)製)を用い、膜厚200nm、幅20μmのITO膜が100μm間隔でストライプ状に形成されているITO基板上へ乾燥膜厚が60nmとなる液量で液晶配向剤の塗布を実施した。得られた液晶配向剤塗布基板を80℃で1分間プレベーク(ホットプレート上)を実施し、その後200℃で60分間(クリーンオーブン内、窒素雰囲気下)焼成させた後、液晶配向膜の周辺部、中央部を20倍の顕微鏡にて観察し、塗布ムラのない場合を「良好」、ピンホールや塗布ムラ(膜厚ムラ等)が観測された場合を「不良」と判断した。各配向剤について塗布性を評価した結果を表1にまとめた。
【0060】
[パーティクル数]
液中パーティクルセンサー(リオン(株)製 KL−20A)を使用し、液晶配向剤10mlについて大きさが1.0μm以上のパーティクル数を2回測定し、その平均値を大きさが1.0μm以上のパーティクル数とした。光源波長780nm、サンプル吸引速度は10ml/minの条件で測定した。
【0061】
[プレチルト角]
中央精機(株)製アンカリング強度測定装置OMS−J3を使用し、液晶表示素子のプレチルト角の測定を行った。
[電圧保持率]
液晶表示素子に5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を60℃の雰囲気下で測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。電圧保持率が99.0%以上の場合を「良好」、それ以外の場合を「不良」と判断した。
【0062】
[電圧保持率の信頼性]
作成した液晶表示素子を100℃のオーブン中で7日間保管し、熱ストレスを加えた。熱ストレス前後の電圧保持率を測定し、電圧保持率の変化量の絶対値が0.5%以内の場合を「良好」、それ以外の場合を「不良」と判断した。
【0063】
合成例1(プレチルト角発現成分前駆体の合成)
【0064】
【化10】

【0065】
β‐コレスタノール80gを800mlの脱水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、トリエチルアミン27.2gを加えた後、塩化メタクリロイル35.6gを徐々に滴下し、室温(r.t.)で3時間攪拌させた。反応終了後、ろ過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧蒸留によりTHFをとり省いた後にクロロホルム400mlを加えた。この溶液を水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧蒸留により除去した。その後、エタノールによる再結晶を実施し、上記反応式に示す白色固体のコレスタニルメタクリレート54g(収率:57.4%)を得た。
【0066】
合成例2(重合体Aの合成)
攪拌棒、三方コック、温度計をセットした四つ口フラスコにモノマーとして合成例1で得たコレスタニルメタクリレート15.16g(0.0332モル)、グリシジルメタクリレート12.8g(0.09モル)、メタクリル酸7.2g(0.0836モル)、スチレン7.2g(0.0691モル)、N−シクロヘキシルマレイミド7.2g(0.0402モル)を仕込み、更に溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル52.8g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.24g、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.96gを添加した。これを窒素気流で約10分間バブリングして系内の窒素置換を行った後、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させてプレチルト角発現成分を有する重合体Aを得た。GPCにより重合体Aの分子量測定を行ったところ、Mw=96,000、Mw/Mn=7.87であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。本重合体溶液において仕込みモノマーは全量重合体Aに転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤作成に使用した。
【0067】
合成例3(重合体Bの合成)
N−シクロヘキシルマレイミドの代わりにN−フェニルマレイミド7.2g(0.0416モル)を用いた以外は合成例2と全く同様にしてプレチルト角発現成分を有する重合体Bを得た。GPCにより重合体Bの分子量測定を行ったところ、Mw=108,000、Mw/Mn=6.51であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。本重合体溶液において仕込みモノマーは全量重合体Bに転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤作成に使用した。
【0068】
合成例4(重合体Cの合成)
コレスタニルメタクリレート30.0g(0.0657モル)、グリシジルメタクリレート12.0g(0.0844モル)、メタクリル酸7.0g(0.0813モル)、スチレン4.5g(0.0432モル)、N−シクロヘキシルマレイミド7.2g(0.0402モル)を仕込み、更に溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル65.0g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.74g、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー1.18gを用いた以外は合成例2と全く同様にしてプレチルト角発現成分を有する重合体Cを得た。GPCにより重合体Cの分子量測定を行ったところ、Mw=79,000、Mw/Mn=7.31であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。本重合体溶液において仕込みモノマーは全量重合体Cに転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤作成に使用した。
【0069】
合成例5(重合体Dの合成)
コレスタニルメタクリレート10.0g(0.0219モル)、グリシジルメタクリレート15.0g(0.1055モル)、メタクリル酸9.0g(0.1045モル)、スチレン2.5g(0.0240モル)、N−シクロヘキシルマレイミド4.0g(0.0223モル)を仕込み、更に溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル43.0g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.83g、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.78gを用いた以外は合成例2と全く同様にしてプレチルト角発現成分を有する重合体Dを得た。GPCにより重合体Dの分子量測定を行ったところ、Mw=125,000、Mw/Mn=9.54であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。本重合体溶液において仕込みモノマーは全量重合体Dに転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤作成に使用した。
【0070】
比較合成例1(重合体Eの合成)
攪拌棒、三方コック、温度計をセットした四つ口フラスコにモノマーとしてグリシジルメタクリレート40.0g(0.2814モル)、メタクリル酸20.0g(0.2323モル)、スチレン20.0g(0.192モル)、N−シクロヘキシルマレイミド20.0g(0.1116モル)を仕込み、更に溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル132.0g、開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7.00g、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー3.00gを添加した。これを窒素気流で約10分間バブリングして系内の窒素置換を行った後、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させて重合体Eを得た。GPCにより重合体Eの分子量測定を行ったところ、Mw=91,000、Mw/Mn=11.86であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。本重合体溶液において仕込みモノマーは全量重合体Eに転換されたと仮定し、そのまま希釈して液晶配向剤の作成に使用した。
【0071】
比較合成例2(重合体Fの合成)
【0072】
【化11】

【0073】
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物 20.8381g(0.0930モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン9.2129g(0.0852モル)と上記式(a)で表されるジアミン4.9490g(0.0095モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解させ、60℃で5時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸31gを得た。得られたポリアミック30gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、ピリジン6.3gおよび無水酢酸8.1gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、Mw=111,000、Mw/Mn=5.23、イミド化率51%のイミド化重合体F 26gを得た。
【0074】
比較合成例3(重合体Gの合成)
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物 19.8781g(0.0887モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン6.8285g(0.0631モル)、ジアミノジフェニルメタン3.5771g(0.0180モル)と上記式(a)で表されるジアミン4.7162g(0.0090モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸32.8gを得た。得られたポリアミック30gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、ピリジン12.0gおよび無水酢酸15.5gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、Mw=92,000、Mw/Mn=4.19、イミド化率79%のイミド化重合体G 25gを得た。
【0075】
実施例1
合成例2で得られた重合体A溶液に更にジエチレングリコールメチルエチルエーテルを添加し、全固形分濃度3.5重量%の液晶配向剤とした。これを十分に攪拌後、孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の液晶配向剤を得た。得られた液晶配向剤を−15℃の冷凍庫で7日間保管した後、当該配向剤を室温まで解凍し、パーティクル数の測定、塗布性試験を実施した。結果を表1に示す。また、以下の様にVA型液晶表示素子を作製し、プレチルト角、電圧保持率および電圧保持率の信頼性評価を行った。本発明の液晶配向剤をガラス基板の一面に設けたITO膜からなる透明導電膜上にスピナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、80℃で1分間の予備乾燥を行い、次いでクリーンオーブン(窒素雰囲気下)で、200℃で1時間焼成することにより、膜厚60nmの液晶配向膜を有する透明電極基板を作成した。次に、一対の透明電極/透明電極基板の上記液晶配向膜塗布基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−2038)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を貼り合わせ、VA型液晶表示素子を作製した。得られたVA型液晶表示素子についてプレチルト角、電圧保持率および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0076】
実施例2
重合体A溶液の代わりに合成例3で得られた重合体B溶液を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤およびVA型液晶表示素子を得た。パーティクル数、塗布性、プレチルト角、電圧保持率、および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0077】
実施例3
重合体A溶液の代わりに合成例4で得られた重合体C溶液を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤およびVA型液晶表示素子を得た。パーティクル数、塗布性、プレチルト角、電圧保持率、および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0078】
実施例4
重合体A溶液の代わりに合成例5で得られた重合体D溶液を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤およびVA型液晶表示素子を得た。パーティクル数、塗布性、プレチルト角、電圧保持率、および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0079】
比較例1
重合体A溶液の代わりに比較合成例1で得られた重合体E溶液を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤および液晶表示素子を得た。パーティクル数、塗布性、プレチルト角、電圧保持率、および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0080】
比較例2
比較合成例2で得られた重合体FにN−メチル−2−ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルをN−メチル−2−ピロリドン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合重量比=50/50となるように添加し、更にN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを重合体Fに対して20重量%添加し、全固形分濃度3.5重量%の液晶配向剤とした。それ以外は実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤およびVA型液晶表示素子を得た。パーティクル数、塗布性、プレチルト角、電圧保持率、および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0081】
比較例3
比較合成例3で得られた重合体Gにγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテルをγ−ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合重量比=40/30/30となるように添加し、更にN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを重合体Gに対して20重量%添加し、全固形分濃度3.5重量%の液晶配向剤とした。それ以外は実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤およびVA型液晶表示素子を得た。パーティクル数、塗布性、プレチルト角、電圧保持率、および電圧保持率の信頼性を評価した結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
上記表1において、実施例1〜実施例4で得られた本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜により、優れた配向膜の塗布性、高い電圧保持率、および電圧保持率の優れた信頼性を全て同時に実現できることが明らかである。一方、比較例から明らかなように、従来の配向剤は上記特性を全て同時に満足することができなかった。本発明の液晶配向剤の上記特性は式(1)で表されるプレチルト角発現成分となる繰返し構造単位における構造選択およびその含有量の最適化、ならびに他の共重合成分における構造選択およびその含有量の最適化によって調整できることが明らかである。以上の様に、本発明によって優れた配向剤の塗布性、高い電圧保持率、および電圧保持率の優れた信頼性を全て同時に実現できる液晶配向剤および当該配向膜を有し、美しい画像を具備する液晶表示素子を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式中、Rは水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基であり、Aは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、A、A、Aはそれぞれ独立して単結合、エーテル結合(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)、チオエーテル結合(−S−)または炭素数1〜10のアルキレン基であり、B、B、Bはそれぞれ独立して単結合、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基またはピペリジン−1,4−ジイル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜50の炭化水素基またはフッ素原子を含有する基である、但し、隣接するA〜AとB〜Bがともに単結合であるときには一つの単結合を表わすものとし、またA〜AとB〜Bの全てで一つの単結合を表わすときにはRは水素原子であることはない)
【請求項2】
重合体が更に下記式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式中、Rは水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または1価の極性基であり、Rは単結合または2価の有機基であり、Rは炭素数2〜10の環状エーテル構造を有する基である)
【請求項3】
式(1)においてRが炭素数3〜30の直鎖または分岐状のアルキル基であるか、もしくはステロイド骨格を有する基である請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
式(2)においてRがエポキシ構造またはオキセタン構造を有する基であることを特徴とする請求項2または3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
上記式(1)で表わされる繰返し単位が下記式(3)で表される繰り返し単位である請求項1に記載の液晶配向剤。
【化3】

(式中、Rの定義は式(1)のRの定義に同じである)
【請求項6】
上記式(2)で表わされる繰返し単位が下記式(4)で表される繰り返し単位である請求項2に記載の液晶配向剤。
【化4】

(式中、Rの定義は上記式(1)のRの定義と同じであり、aは1〜10の整数である。)
【請求項7】
重合体が下記式(5)で表される繰り返し単位をさらに含有する請求項5または請求項6に記載の液晶配向剤。
【化5】

(式中、Rの定義は上記式(1)のRの定義と同じである)
【請求項8】
重合体が下記式(6)および(7)のそれぞれで表わされる繰り返し単位の少なくとも一方をさらに含有する請求項5〜7のいずれかに記載の液晶配向剤。
【化6】

(式中、Rは酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換または非置換の炭素原子数1〜50の炭化水素基であり、R10、R11はそれぞれ独立に上記式(1)のRの定義と同じである)
【請求項9】
請求項1〜8に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶配向膜を含む液晶表示素子。

【公開番号】特開2008−191337(P2008−191337A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24599(P2007−24599)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】