説明

液浸露光用ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】新規な化合物、および該化合物を用いた液浸露光用として好適な疎水性を有するポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法の提供。
【解決手段】一般式(F1)[式中、Xはフッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基を示し;nは1〜4の整数を表す。R50はn価の有機基であって、置換基を有していてもよい。ただし、nが1の場合、R50は重合性基を含まない有機基である。]で表される化合物。酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、前記一般式(F1)で表される化合物(F)とを含有することを特徴とする液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)に用いられる液浸露光用ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。
半導体素子の微細化に伴い、露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nmの波長を有するArFエキシマレーザーを光源とするNA=0.84の露光機が開発されている。露光光源の短波長化に伴い、レジスト材料には、露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性の向上が求められる。このような要求を満たすレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジストが用いられている。
現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用される化学増幅型レジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)などが一般的に用いられている。
ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸と、α位にメチル基が結合したメタクリル酸の一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリレート」とは、α位に水素原子が結合したアクリレートと、α位にメチル基が結合したメタクリレートの一方あるいは両方を意味する。
【0003】
解像性の更なる向上のための手法の1つとして、露光機の対物レンズと試料との間に、空気よりも高屈折率の液体(液浸媒体)を介在させて露光(浸漬露光)を行うリソグラフィー法、いわゆる液浸リソグラフィー(Liquid Immersion Lithography。以下、液浸露光ということがある。)が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。
液浸露光によれば、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様の高解像性を達成でき、しかも焦点深度幅の低下もないといわれている。また、液浸露光は既存の露光装置を用いて行うことができる。そのため、液浸露光は、低コストで、高解像性で、かつ焦点深度幅にも優れるレジストパターンの形成を実現できると予想され、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コスト的にも、解像度等のリソグラフィー特性的にも、半導体産業に多大な効果を与えるものとして大変注目されている。
液浸露光はあらゆるパターン形状の形成において有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることも可能であるとされている。現在、液浸露光技術としては、主に、ArFエキシマレーザーを光源とする技術が活発に研究されている。また、現在、液浸媒体としては、主に水が検討されている。
【0004】
近年、含フッ素化合物について、その撥水性、透明性等の特性が着目され、様々な分野での研究開発が活発に行われている。たとえばレジスト材料分野では、現在、ポジ型の化学増幅型レジストのベース樹脂として用いるために、含フッ素高分子化合物に、メトキシメチル基、tert−ブチル基、tert−ブチルオキシカルボニル基等の酸不安定性基を導入することが行われている。しかし、かかるフッ素系高分子化合物をポジ型レジスト組成物のベース樹脂として用いた場合、露光後にアウトガスが多く生成したり、ドライエッチングガスへの耐性(エッチング耐性)が充分でなかったり等の欠点がある。
最近、エッチング耐性に優れた含フッ素高分子化合物として、環状炭化水素基を含有する酸不安定性基を有する含フッ素高分子化合物が報告されている(たとえば、非特許文献2参照)。
【非特許文献1】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE)、第5754巻,第119−128頁(2005年).
【非特許文献2】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE)、第4690巻,第76−83頁(2002年).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液浸露光においては、通常のリソグラフィー特性(感度、解像性、エッチング耐性等)に加えて、液浸露光技術に対応した特性を有するレジスト材料が求められる。具体例を挙げると、液浸媒体が水である場合において、非特許文献1に記載されているようなスキャン式の液浸露光機を用いて浸漬露光を行う場合には、液浸媒体がレンズの移動に追随して移動する水追随性が求められる。水追随性が低いと、露光スピードが低下するため、生産性に影響を与えることが懸念される。この水追随性はレジスト膜の疎水性を高める(疎水化する)ことによって向上すると考えられるが、その一方で、単にレジスト膜を疎水化しても、リソグラフィー特性に対する悪影響がみられ、たとえば解像性や感度の低下、スカム発生量の増大等が生じる傾向がある。また、レジスト膜の疎水性が高くない場合、レジスト膜中から液浸溶媒中へ物質が溶出して露光装置のレンズが汚染されてしまい、リソグラフィー特性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、これに対する保護対策がさらに必要となる。
このように、液浸露光においては、適度な疎水性を有する材料開発が重要な課題になる。しかしながら、現在、リソグラフィー特性と、液浸露光等に必要とされる特性とを両立した材料は、ほとんど知られていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新規な化合物、および該化合物を用いた液浸露光用として好適な疎水性を有するポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために以下の手段を提案する。
すなわち、本発明の第一の態様は、下記一般式(F1)で表される化合物である。
【0007】
【化1】

[式(F1)中、Xはフッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基を示し;nは1〜4の整数を表す。R50はn価の有機基であって、置換基を有していてもよい。ただし、nが1の場合、R50は重合性基を含まない有機基である。]
【0008】
また、本発明の第二の態様は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、前記一般式(F1)で表される化合物(F)とを含有することを特徴とする液浸露光用ポジ型レジスト組成物である。
【0009】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を浸漬露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法である。
【0010】
本明細書および本特許請求の範囲において、「有機基」は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「低級アルキル基」は、炭素原子数1〜5のアルキル基をいう。
「構成単位」とは、樹脂(重合体、高分子化合物)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、新規な化合物、および該化合物を用いた液浸露光用として好適な疎水性を有するポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
≪化合物≫
本発明の化合物(以下、化合物(F)という。)は、前記一般式(F1)で表される。
式(F1)中、Xは、フッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基を示す。
化合物(F)におけるXは、解離前は化合物(F)をアルカリ現像液に対して難溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、酸の作用により解離してこの化合物(F)のアルカリ現像液に対する溶解性を増大させるものであり、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているもののなかから適宜選択して用いることができる。
Xにおいて、フッ素原子で置換されていない状態の酸解離性溶解抑制基の好適なものとしては、化合物(F)におけるカルボキシ基と鎖状または環状の第3級アルキルエステルを形成する基、アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性溶解抑制基、第3級アルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基などが挙げられる。
【0013】
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状または環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状または環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、前記鎖状または環状のアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基」という。
第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が挙げられる。
【0014】
ここで、本特許請求の範囲および明細書における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「脂肪族分岐鎖状」とは、芳香族性を持たない分岐鎖状の構造を有することを示す。
「脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基としては、炭素数4〜10の第3級アルキル基が好ましい。
【0015】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
化合物(F)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数1〜5の低級アルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。「脂肪族環式基」は、多環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基としては、例えば環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には、2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0016】
「アセタール型酸解離性溶解抑制基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のアルカリ可溶性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性溶解抑制基と、当該アセタール型酸解離性溶解抑制基が結合した酸素原子との間で結合が切断される。
アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0017】
【化2】

[式中、R’,R’はそれぞれ独立して水素原子または低級アルキル基を表し、n’は0〜3の整数を表し、Yは低級アルキル基または脂肪族環式基を表す。]
【0018】
上記式中、n’は、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
’,R’の低級アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
本発明においては、R’,R’のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。すなわち、酸解離性溶解抑制基(p1)が、下記一般式(p1−1)で表される基であることが好ましい。
【0019】
【化3】

[式中、R’、n’、Yは上記と同様である。]
【0020】
Yの低級アルキル基としては、上記R’,R’の低級アルキル基として例示したものと同様のものが挙げられる。
Yの脂肪族環式基としては、従来ArFレジスト等において多数提案されている単環又は多環式の脂肪族環式基の中から適宜選択して用いることができ、たとえば上記「脂肪族環式基」と同様のものが例示できる。
【0021】
また、アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(p2)で示される基も挙げられる。
【0022】
【化4】

[式中、R17、R18はそれぞれ独立して直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基または水素原子であり、R19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。または、R17およびR19がそれぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であって、R17とR19とが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【0023】
17、R18において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特に、R17、R18の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
19が直鎖状、分岐鎖状の場合は炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
19が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。なかでもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、上記式においては、R17及びR19が、それぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基)であって、R19とR17とが相互に結合していてもよい。この場合、R17とR19と、R19が結合した酸素原子と、該酸素原子およびR17が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0024】
「第3級アルキルオキシカルボニル基」における第3級アルキル基としては、炭素数4〜8の第3級アルキル基が好ましく、具体的にはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。第3級アルキルオキシカルボニル基として具体的には、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
「アルコキシカルボニルアルキル基」としては、−(CHn”−C(=O)−O−R20で表される基が好ましい。R20は、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、前記R19と同様のものが挙げられる。n”は1〜3の整数であり、1であることが好ましい。
【0026】
上記の中でも、Xにおいて、フッ素原子で置換されていない状態の酸解離性溶解抑制基としては、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基であることがより好ましく、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基であることが特に好ましい。
【0027】
化合物(F)において、Xは、フッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基であり、前記酸解離性溶解抑制基中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されている基である。該酸解離性溶解抑制基のフッ素化率(酸解離性溶解抑制基のフッ素原子の割合)としては、1〜50%であることが好ましく、5〜40であることがさらに好ましく、10〜30%であることが最も好ましい。
【0028】
上記の中でも、Xとしては、本発明の効果に優れることから、下記一般式(F1−1−1)で表される基であることが特に好ましい。
【0029】
【化5】

[式(F1−1−1)中、R〜Rはそれぞれ独立してアルキル基またはフッ素化アルキル基であって、前記フッ素化アルキル基はR〜Rが結合している第三級炭素原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子が結合していない基であり、かつ、R〜Rの少なくとも一つは前記フッ素化アルキル基である。ただし、RおよびRは相互に結合して、RとRと前記第三級炭素原子とからなる一つの環構造を形成していてもよい。]
【0030】
前記式(F1−1−1)中、R〜Rは、それぞれ独立して「アルキル基」またはフッ素化アルキル基である。
ここで、「アルキル基」とは、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
直鎖状、分岐鎖状の場合、該アルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、エチル基が最も好ましい。
環状の場合、該アルキル基は、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。たとえば、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
【0031】
また、フッ素化アルキル基は、メチル基を除くアルキル基中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されている基である。ただし、R〜Rが結合している第三級炭素原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子が結合していない基である。ここで、フッ素原子で置換されていない状態のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
直鎖状、分岐鎖状の場合、フッ素原子で置換されていない状態のアルキル基は、炭素数が2〜7であることが好ましく、炭素数が2〜5であることがより好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。
環状の場合、フッ素原子で置換されていない状態のアルキル基としては、上記「アルキル基」で説明したものと同様のものが挙げられる。
該フッ素化アルキル基中のフッ素原子が結合している炭素原子は、R〜Rが結合している第三級炭素原子から離れている方が好ましい。
このようなフッ素化アルキル基のなかで好ましいものとしては、例えば4,4,4−トリフルオロ−n−ブチル基等が挙げられる。
式(F1−1−1)においては、R〜Rの少なくとも一つは、前記フッ素化アルキル基である。なかでも、R〜Rのいずれか一つが前記フッ素化アルキル基であり、残りの2つはアルキル基であることが好ましい。
【0032】
ただし、式(F1−1−1)中、RおよびRは相互に結合して、RとRと前記第三級炭素原子とからなる一つの環構造を形成していてもよい。かかる場合は、RおよびRはフッ素化されていないことが好ましく、この場合、Rは前記フッ素化アルキル基となる。この時のR、Rおよび前記第三級炭素原子が形成する環状アルキル基としては、上記「アルキル基」で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
前記式(F1)中、nは1〜4の整数を表し、1〜3であることが好ましく、本発明の効果に優れることから、1または2であることが特に好ましい。
【0034】
前記式(F1)中、R50はn価の有機基であって、置換基を有していてもよい。
50の有機基としては、1価の有機基である場合、たとえば、置換または無置換のアルキル基が好適に挙げられる。
ここで、置換のアルキル基とは、無置換のアルキル基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
無置換のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基のいずれであってもよく、また、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基と環状アルキル基との組み合わせであってもよい。
直鎖状または分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1〜6が特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
環状のアルキル基としては、例えば、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のモノシクロアルキル基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基などのポリシクロアルキル基等が挙げられる。
直鎖状または分岐鎖状のアルキル基と環状アルキル基との組み合わせとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基に置換基として環状のアルキル基が結合した基、環状のアルキル基に置換基として直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が結合した基等が挙げられる。
【0035】
また、R50の有機基としては、nが1の場合、たとえば、置換または無置換の芳香族基も挙げられる。
ここで、置換の芳香族基とは、無置換の芳香族基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
無置換の芳香族基としては、アリール基が好ましい。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、たとえばフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0036】
50の有機基において、アルキル基または芳香族基が有していてもよい置換基としては、たとえば、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ原子を含む置換基等が挙げられる。
ここで、本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、たとえば、アルケニル基等が挙げられる。アルケニル基としては、炭素数1〜5のものが挙げられ、炭素数1〜3であることが好ましく、ビニル基、プロペニル基などが好ましい。
芳香族炭化水素基としては、たとえば、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;該アリール基に置換基としてアルキル基が結合したアルキルアリール基;アルキル基に置換基としてアリール基が結合したアリールアルキル基等が挙げられる。アルキルアリール基またはアリールアルキル基におけるアルキル基としては、前記無置換のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0037】
「ヘテロ原子を含む置換基」におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、たとえば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子など)等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基としては、たとえば、酸素原子(=O)、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、複素環式基、一般式R21−A’−[式中、R21は炭化水素基であり、A’はヘテロ原子を含む連結基である。]で表される基等が挙げられる。
複素環式基としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等の複素脂肪族環式基、フルフリル基、チオフェニル基、ピリジル基等の複素芳香族環式基が挙げられる。
【0038】
一般式R21−A’−表される基において、R21の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられる。該アルキル基としては、前記無置換のアルキル基と同様のものが挙げられる。また、前記不飽和脂肪族炭化水素基としては、前記アルキル基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
A’のヘテロ原子を含む連結基としては、前記ヘテロ原子を含む置換基において挙げたヘテロ原子を含む基が挙げられ、たとえば、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−、−NR22(R22はアルキル基)−、−NH−C(=O)−、=N−等が挙げられる。
一般式R21−A’−で表される基として具体的には、アルコキシ基、(メタ)アクリロイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0039】
また、R50が2〜4価の有機基(nが2〜4)である場合、R50の有機基としては、nが1の場合において例示した有機基の水素原子2〜4個が除かれた基が好適に挙げられる。
【0040】
ただし、nが1の場合、R50は重合性基を含まない有機基である。具体的には、ビニル基(CH=CH−),アリル基(CH=CHCH−),プロペニル基(CHCH=CH−)、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性二重結合、シクロオレフィンの二重結合などは、R50には含まれないことを示す。
【0041】
上記のなかでも、R50としては、本発明の効果に優れることから、飽和炭化水素基または芳香族基であることが好ましく、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
50が1価の有機基(nが1)である場合、アルキル基が好ましく、無置換のアルキル基がさらに好ましく、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が特に好ましく、ヘキシル基またはアダマンチル基が最も好ましい。
50が2価の有機基である(nが2の)場合、アルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基がさらに好ましく、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキレン基が特に好ましく、ヘキシレン基またはアダマンタンから2個の水素原子を除いた基が最も好ましい。
【0042】
50における―(C(=O)−O−X)―の結合位置としては、たとえばn=1の場合、R50が直鎖状のアルキル基であって、該アルキル基の末端の炭素原子であることが好ましい。また、n=2の場合、R50が直鎖状のアルキレン基であって、該アルキレン基の両方の末端の炭素原子であることが好ましい。
また、たとえばn=1でかつR50がアダマンチル基の場合、アダマンチル基の1位に結合していることが好ましい。n=2でかつR50がアダマンタンから2個の水素原子を除いた基の場合、アダマンチル基の1位および3位に結合していることが好ましい。n=3でかつR50がアダマンタンから3個の水素原子を除いた基の場合、アダマンチル基の1位、3位、および5位に結合していることが好ましい。
【0043】
上記のなかでも、化合物(F)の好適なものとしては、下記式(F1−1)〜式(F1−5)で表される化合物が例示できる。
【0044】
【化6】

【0045】
上記化合物(F)は新規な化合物である。
本発明の化合物(F)の製造方法は、特に限定されず、たとえば以下に示す方法が好適に挙げられる。
無水状態下、特には窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、R50−[C(=O)−OH](ただし、R50、nは前記と同じである。)を、塩化チオニル(SOCl)に溶解して還流し、R50−[C(=O)−Cl]を得る。
次に、無水状態下、特には窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、フッ素アルコールとトリエチルアミン等の塩基触媒をテトラヒドロフラン等の有機溶剤に溶解してなる溶液に、R50−[C(=O)−Cl]をテトラヒドロフラン等の有機溶剤に溶解してなる溶液を滴下する。
次いで、滴下後の溶液に水を加え、濃縮乾固し、酢酸エチル等を用いて分液して乾燥することにより化合物(F)を得る。
【0046】
≪液浸露光用ポジ型レジスト組成物≫
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)(以下、(A)成分という。)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という。)と、前記一般式(F1)で表される化合物(F)(以下、(F)成分という。)とを含有する。
【0047】
<(A)成分>
(A)成分としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大するものであれば特に限定されず、化学増幅型レジスト組成物用の基材成分、たとえばArFエキシマレーザー用レジスト組成物、KrFエキシマレーザー用レジスト組成物(好ましくはArFエキシマレーザー用レジスト組成物)等の基材成分として多数提案されているものの中から任意に選択して用いればよい。
ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物を意味する。
好ましい基材成分としては、分子量が500以上の有機化合物が挙げられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのパターンを形成しやすい。
前記分子量が500以上の有機化合物は、分子量が500以上2000未満の低分子量の有機化合物(以下、低分子化合物という。)と、分子量が2000以上の高分子量の樹脂(重合体、高分子化合物)とに大別される。前記低分子化合物としては、通常、非重合体が用いられる。樹脂(重合体、高分子化合物)の場合は、「分子量」としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、単に「樹脂」という場合は、分子量が2000以上の樹脂を示すものとする。
【0048】
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物において、(A)成分として好ましくは、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分が用いられる。かかる基材成分を含有するレジスト組成物は、露光前はアルカリ現像液に対して不溶性であり、レジストパターン形成時に露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により酸解離性溶解抑制基が解離し、これによって(A)成分全体のアルカリ現像液に対する溶解性が増大し、アルカリ不溶性からアルカリ可溶性へと変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型レジスト組成物を基板上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することができる。これによりレジストパターンを形成できる。
【0049】
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物において、該(A)成分は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂(A1)(以下、(A1)成分ということがある。)であってもよく、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する低分子化合物(A2)(以下、(A2)成分ということがある。)であってもよく、これらの混合物であってもよい。
(F)成分との混和性、入手の容易さ等を考慮すると、(A)成分は、(A1)成分であることが好ましい。
【0050】
[(A1)成分]
(A1)成分としては、これまで、ポジ型の化学増幅型レジスト用のベース樹脂として提案されているものを使用することができ、かかるベース樹脂としては、たとえばアルカリ可溶性基(水酸基、カルボキシ基等)を有する樹脂における前記アルカリ可溶性基の一部または全部が酸解離性溶解抑制基で保護された樹脂が挙げられる。前記アルカリ可溶性基を有する樹脂としては、たとえばノボラック樹脂、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位を有する樹脂(ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン−スチレン共重合体等)、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂、シクロオレフィンから誘導される構成単位を有する樹脂等が挙げられる。
本発明においては、(A1)成分が、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する樹脂であることが好ましい。かかる樹脂は、特にArFエキシマレーザーに対する透明性が高く、ArFエキシマレーザーを用いたリソグラフィーにおいて好適に使用できる。
(A1)成分中、アクリル酸エステルから誘導される構成単位の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0051】
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含む概念とする。前記置換基としては、低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としての低級アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
本発明において、アクリル酸エステルのα位に結合しているのは、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であることが好ましく、水素原子または低級アルキル基であることがより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0052】
・構成単位(a1)
本発明において、(A1)成分は、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有することが好ましい。
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、解離前は(A1)成分全体をアルカリ現像液に対して難溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、酸の作用により解離してこの(A1)成分全体のアルカリ現像液に対する溶解性を増大させるものであり、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基;アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性溶解抑制基などが広く知られている。
【0053】
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状または環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状または環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、前記鎖状または環状のアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基」という。
第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が挙げられる。
【0054】
「脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基としては、炭素数4〜8の第3級アルキル基が好ましく、具体的にはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。
【0055】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
構成単位(a1)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数1〜5の低級アルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。「脂肪族環式基」は、多環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基としては、例えば環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には、2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、下記一般式(a1”−1)〜(a1”−6)で示す構成単位において、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の酸素原子に結合した基の様に、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0056】
【化7】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;R15、R16はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1〜5である)を示す。]
【0057】
一般式(a1”−1)〜(a1”−6)において、Rの低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
【0058】
「アセタール型酸解離性溶解抑制基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のアルカリ可溶性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性溶解抑制基と、当該アセタール型酸解離性溶解抑制基が結合した酸素原子との間で結合が切断される。
アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、上記本発明の第一の態様の化合物における酸解離性溶解抑制基について説明した、フッ素原子で置換されていない状態の「アセタール型酸解離性溶解抑制基」と同様のものが挙げられる。
【0059】
構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−0−1)で表される構成単位および下記一般式(a1−0−2)で表される構成単位からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0060】
【化8】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示す。]
【0061】
【化9】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示し;Yはアルキレン基または脂肪族環式基を示す。]
【0062】
一般式(a1−0−1)において、Rの低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
は、酸解離性溶解抑制基であれば特に限定されることはなく、たとえば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基、アセタール型酸解離性溶解抑制基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基が好ましい。
【0063】
一般式(a1−0−2)において、Rは上記と同様である。
は、式(a1−0−1)中のXと同様である。
は、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は2価の脂肪族環式基であり、該脂肪族環式基としては、水素原子が2個以上除かれた基が用いられること以外は前記「脂肪族環式基」の説明と同様のものを用いることができる。
が炭素数1〜10のアルキレン基である場合、炭素数1〜6であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1〜3であることが最も好ましい。
が2価の脂肪族環式基である場合、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンから水素原子が2個以上除かれた基であることが特に好ましい。
【0064】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0065】
【化10】

[式中、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基を表し、Yは炭素数1〜5の低級アルキル基、または脂肪族環式基を表し;n’は0〜3の整数を表し;Yはアルキレン基または脂肪族環式基を表し;Rは前記と同じであり、R’、R’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0066】
式中、X’は、前記Xにおいて例示した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基と同様のものが挙げられる。
’、R’、n’、Yとしては、それぞれ、上述の「アセタール型酸解離性溶解抑制基」の説明において挙げた一般式(p1)におけるR’、R’、n’、Yと同様のものが挙げられる。
としては、前記一般式(a1−0−2)におけるYと同様のものが挙げられる。
【0067】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
【0068】
【化11】

【0069】
【化12】

【0070】
【化13】

【0071】
【化14】

【0072】
【化15】

【0073】
【化16】

【0074】
【化17】

【0075】
【化18】

【0076】
【化19】

【0077】
【化20】

【0078】
【化21】

【0079】
構成単位(a1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、一般式(a1−1)で表される構成単位が好ましく、具体的には(a1−1−1)〜(a1−1−6)および(a1−1−35)〜(a1−1−41)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、構成単位(a1)としては、特に式(a1−1−1)〜式(a1−1−4)で表される構成単位を包括する下記一般式(a1−1−01)で表されるものや、式(a1−1−35)〜(a1−1−41)で表される構成単位を包括する下記一般式(a1−1−02)で表されるものも好ましい。
【0080】
【化22】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R11は低級アルキル基を示す。)
【0081】
【化23】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R12は低級アルキル基を示す。hは1〜3の整数を表す。)
【0082】
一般式(a1−1−01)において、Rについては上記と同様である。R11の低級アルキル基は、Rにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0083】
一般式(a1−1−02)において、Rについては上記と同様である。R12の低級アルキル基は、Rにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基が最も好ましい。hは、1又は2が好ましく、2が最も好ましい。
【0084】
(A1)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に容易にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0085】
・構成単位(a2)
(A1)成分は、上記構成単位(a1)に加えて、さらに、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有することが好ましい。
ここで、ラクトン含有環式基とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、水を含有する現像液との親和性を高めたりするうえで有効なものである。
【0086】
構成単位(a2)としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。
【0087】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0088】
【化24】

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;R’は水素原子、低級アルキル基、または炭素数1〜5のアルコキシ基であり;mは0または1の整数であり;Aは炭素数1〜5のアルキレン基または酸素原子である。]
【0089】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRは、前記構成単位(a1)におけるRと同様である。
R’の低級アルキル基としては、前記構成単位(a1)におけるRの低級アルキル基と同じである。
一般式(a2−1)〜(a2−5)中、R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
Aの炭素数1〜5のアルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。
以下に、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)の具体的な構成単位を例示する。
【0090】
【化25】

【0091】
【化26】

【0092】
【化27】

【0093】
【化28】

【0094】
【化29】

【0095】
これらの中でも、一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、一般式(a2−1)〜(a2−3)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。なかでも、化学式(a2−1−1)、(a2−1−2)、(a2−2−1)、(a2−2−2)、(a2−3−1)、(a2−3−2)、(a2−3−9)及び(a2−3−10)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0096】
(A1)成分において、構成単位(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分中の構成単位(a2)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましく、20〜55モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0097】
・構成単位(a3)
(A1)成分は、上記構成単位(a1)に加えて、または構成単位(a1)および構成単位(a2)に加えて、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することが好ましい。構成単位(a3)を有することにより、(A1)成分の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ現像液に対する溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、たとえばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該多環式基の炭素数は7〜30であることが好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0098】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)で表される構成単位、下記式(a3−2)で表される構成単位、下記式(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0099】
【化30】

(式中、Rは前記と同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。)
【0100】
式(a3−1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0101】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0102】
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0103】
構成単位(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1)成分中、構成単位(a3)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位に対し、5〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより、構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0104】
・構成単位(a4)
(A1)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成単位(a1)〜(a3)以外の他の構成単位(a4)を含んでいてもよい。
構成単位(a4)は、上述の構成単位(a1)〜(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定されるものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
構成単位(a4)としては、例えば非酸解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。該多環式基としては、たとえば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の基材成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)の構造のものを例示することができる。
【0105】
【化31】

(式中、Rは前記と同じである。)
【0106】
かかる構成単位(a4)を(A1)成分に含有させる際には、(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a4)を1〜30モル%含有させることが好ましく、10〜20モル%含有させることがより好ましい。
【0107】
本発明において、(A1)成分は、構成単位(a1)、(a2)および(a3)を有する共重合体であることが好ましい。かかる共重合体としては、たとえば、上記構成単位(a1)、(a2)および(a3)からなる共重合体、上記構成単位(a1)、(a2)、(a3)および(a4)からなる共重合体等が例示できる。
【0108】
(A1)成分としては、特に、下記一般式(A1−11)に示す3種の構成単位を有する共重合体が好ましい。
【0109】
【化32】

[式中、Rは前記と同じであり、R10は低級アルキル基である。]
【0110】
式(A1−11)中、R10の低級アルキル基は、Rの低級アルキル基と同様であり、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0111】
(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、(A1)成分には、上記重合の際に、たとえばHS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0112】
(A1)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではないが、2000〜50000が好ましく、3000〜30000がより好ましく、5000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
また、分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5がさらに好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0113】
[(A2)成分]
(A2)成分としては、分子量が500以上2000以下であって、上述の(A1)成分の説明で例示したような酸解離性溶解抑制基と、親水性基とを有する低分子化合物が好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが挙げられる。
(A2)成分は、たとえば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や、耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
かかる低分子量フェノール化合物としては、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2、3、4核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。
酸解離性溶解抑制基も、特に限定されず、上記したものが挙げられる。
【0114】
(A)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
本発明において、(A)成分は、フッ素原子を有さないことが好ましい。(A)成分がフッ素原子を有さないことにより、特に、リソグラフィー特性が向上する。
【0115】
<(B)成分>
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0116】
オニウム塩系酸発生剤として、たとえば、下記一般式(b−1)または(b−2)で表される化合物が挙げられる。
【0117】
【化33】

[式中、R”〜R”,R”〜R”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し;式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよく;R”は、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基またはフッ素化アルキル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0118】
式(b−1)中、R”〜R”は、それぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。なお、式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
また、R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、たとえば炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R”〜R”は、それぞれ、フェニル基またはナフチル基であることが最も好ましい。
【0119】
式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、イオウ原子を含めて3〜10員環を形成していることが好ましく、5〜7員環を形成していることが特に好ましい。式(b−1)におけるR”〜R”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、残りの1つは、アリール基であることが好ましい。前記アリール基は、前記R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
【0120】
”は、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基またはフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
また、該フッ素化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中の全水素原子の個数に対する置換したフッ素原子の個数の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基(パーフルオロアルキル基)が、酸の強度が強くなるので好ましい。
”としては、直鎖状もしくは環状のアルキル基、またはフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0121】
式(b−2)中、R”〜R”は、それぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のすべてがアリール基であることが好ましい。
”〜R”のアリール基としては、R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”は、すべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR”としては、上記式(b−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0122】
式(b−1)、(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。
また、これらのオニウム塩のアニオン部がメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0123】
また、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部を下記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b−1)又は(b−2)と同様)。
【0124】
【化34】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0125】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0126】
また、下記一般式(b−5)または(b−6)で表されるカチオン部を有するスルホニウム塩をオニウム塩系酸発生剤として用いることもできる。
【0127】
【化35】

[式中、R41〜R46はそれぞれ独立してアルキル基、アセチル基、アルコキシ基、カルボキシ基、水酸基またはヒドロキシアルキル基であり;n〜nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
【0128】
41〜R46において、アルキル基は、炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、なかでも直鎖状または分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、又はtert−ブチル基であることが特に好ましい。
アルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、なかでも直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
ヒドロキシアルキル基は、上記アルキル基中の一個又は複数個の水素原子がヒドロキシ基に置換した基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
およびnは、好ましくはそれぞれ独立して0又は1であり、より好ましくは0である。
は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。
【0129】
式(b−5)または(b−6)で表されるカチオン部を有するスルホニウム塩のアニオン部は、特に限定されず、これまで提案されているオニウム塩系酸発生剤のアニオン部と同様のものであってよい。かかるアニオン部としては、たとえば上記一般式(b−1)または(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤のアニオン部(R”SO)等のフッ素化アルキルスルホン酸イオン;上記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部等が挙げられる。
これらの中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンが好ましく、炭素数1〜4のフッ素化アルキルスルホン酸イオンがより好ましく、炭素数1〜4の直鎖状のパーフルオロアルキルスルホン酸イオンが特に好ましい。具体例としては、トリフルオロメチルスルホン酸イオン、ヘプタフルオロ−n−プロピルスルホン酸イオン、ノナフルオロ−n−ブチルスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0130】
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0131】
【化36】

(式(B−1)中、R31、R32はそれぞれ独立に有機基を表す。)
【0132】
31、R32の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
31の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していてもよい。
該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。
ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある。)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0133】
32の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R32のアルキル基、アリール基としては、前記R31で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0134】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0135】
【化37】

[式(B−2)中、R33は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R34はアリール基である。R35は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。]
【0136】
【化38】

[式(B−3)中、R36はシアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R37は2または3価の芳香族炭化水素基である。R38は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。p”は2または3である。]
【0137】
前記一般式(B−2)において、R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが特に好ましい。
【0138】
34のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、およびこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
34のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していても良い。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
【0139】
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0140】
前記一般式(B−3)において、R36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p”は、好ましくは2である。
【0141】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号パンフレット(65〜85頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
【0142】
【化39】

【0143】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、たとえば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0144】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(B)成分として、上記のなかでも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0145】
<(F)成分>
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物において、(F)成分は、上記本発明の第一の態様の化合物と同じものである。当該(F)成分を含有することにより、液浸露光用として好適な疎水性を有する効果が得られる。そして、液浸媒体がレンズの移動に追随して移動する水追随性が向上する。
【0146】
(F)成分としては、本発明の効果に優れることから、前記一般式(F1)におけるR50が飽和炭化水素基または芳香族基であるものが好ましい。また、前記一般式(F1)におけるXが、前記一般式(F1−1−1)で表される基であるものも好ましい。
本発明において、(F)成分としては、前記式(F1−1)〜式(F1−5)で表される化合物から選択される少なくとも一種であることが好ましく、前記式(F1−1)〜式(F1−4)で表される化合物から選択される少なくとも一種であることが特に好ましい。
【0147】
(F)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(F)成分の含有割合は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましく、0.3〜6質量部であることが特に好ましく、0.4〜5質量部であることが最も好ましい。下限値以上とすることでレジスト組成物の疎水性向上の効果に優れ、上限値以下とすることでリソグラフィー特性が向上する。
【0148】
<(D)成分>
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、任意の成分として、さらに、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という。)を含有することが好ましい。これにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などが向上する。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いればよく、なかでも脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミンが特に好ましく、トリ−n−ペンチルアミンが最も好ましい。
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
(D)成分としては、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分をレジスト組成物に含有させる場合、(D)成分は、通常、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0149】
<任意成分>
[(E)成分]
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、ならびにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下、(E)成分という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸およびその誘導体としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
(E)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分としては、有機カルボン酸が好ましく、特にサリチル酸が好ましい。
(E)成分をレジスト組成物に含有させる場合、(E)成分は、通常、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0150】
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0151】
[(S)成分]
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤(以下、(S)成分という。)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類及びその誘導体;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤としては、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分としてその他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜99:1とされる。
さらに、(S)成分としては、上述のPGMEAとPGMEとの混合溶剤と、γ−ブチロラクトンとの混合溶媒も好ましい。
(S)成分の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0152】
材料の(S)成分への溶解としては、たとえば、上記各成分を通常の方法で混合、撹拌するだけでも行うことができ、また、必要に応じてディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用い分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0153】
上記本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、液浸露光に用いられるレジスト組成物に求められる特性である、液浸露光用として好適な疎水性を有することから、液浸露光用として好適に用いられる。
すなわち、液浸露光は、上述したように、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト膜との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光(浸漬露光)を行う工程を有する方法である。液浸露光においては、レジスト膜と液浸溶媒とが接触すると、レジスト膜中の物質((B)成分、(D)成分等)の液浸溶媒中への溶出(物質溶出)が生じる。物質溶出は、レジスト層の変質、液浸溶媒の屈折率の変化等の現象を生じさせ、リソグラフィー特性を悪化させる。この物質溶出の量はレジスト膜表面の特性(たとえば親水性・疎水性等)の影響を受ける。そのため、たとえばレジスト膜表面の疎水性が高まることによって、物質溶出が低減されると推測される。
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、分子内にエステル結合を有し、かつ、フッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基を含む化合物(F)を含有することから、前記化合物(F)を含まない場合に比べて、当該レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜の疎水性が高い。したがって、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物によれば、浸漬露光時の物質溶出を抑制できることが期待される。
また、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、種々のリソグラフィー特性も良好である。たとえば、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いることにより、ラインアンドスペース(L/S)パターンのライン幅が120nm以下の微細なレジストパターンを形成できる。
【0154】
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、(F)成分を含有することにより、(F)成分を含有しない場合と比較して、レジスト膜の疎水性が高まり、水に対する接触角、たとえば静的接触角(水平状態のレジスト膜上の水滴表面とレジスト膜表面とのなす角度)、動的接触角(レジスト膜を傾斜させていった際に水滴が転落し始めたときの接触角(転落角)、水滴の転落方向前方の端点における接触角(前進角)、転落方向後方の端点における接触角(後退角)とがある。)が変化する。たとえばレジスト膜の疎水性が高いほど、静的接触角、前進角、および後退角は大きくなり、一方、転落角は小さくなる。
ここで、前進角は、図1に示すように、その上に液滴1が置かれた平面2を次第に傾けていった際に、当該液滴1が平面2上を移動(落下)し始めるときの当該液滴1の下端1aにおける液滴表面と、平面2とがなす角度θである。また、このとき(当該液滴1が平面2上を移動(落下)し始めるとき)、当該液滴1の上端1bにおける液滴表面と、平面2とがなす角度θが後退角であり、当該平面2の傾斜角度θが転落角である。
本明細書において、静的接触角、前進角、後退角および転落角は、たとえば以下の様にして測定される。
まず、シリコン基板上に、レジスト組成物溶液をスピンコートした後、110℃の温度条件で60秒間加熱してレジスト膜を形成する。
次に、上記レジスト膜に対して、DROP MASTER−700(製品名、協和界面科学社製)、AUTO SLIDING ANGLE:SA−30DM(製品名、協和界面科学社製)、AUTO DISPENSER:AD−31(製品名、協和界面科学社製)等の市販の測定装置を用いて測定することができる。
【0155】
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜における後退角の測定値が50°以上であることが好ましく、50〜150°であることがより好ましく、50〜130°であることが特に好ましく、53〜100°であることが最も好ましい。後退角が下限値以上であると、浸漬露光時の物質溶出抑制効果が向上する。その理由は明らかではないが、主な要因の1つとして、レジスト膜の疎水性との関連が考えられる。つまり、液浸媒体は水等の水性のものが用いられているため、疎水性が高いことにより、浸漬露光を行った後、液浸媒体を除去した際に速やかにレジスト膜表面から液浸媒体を除去できることが影響していると推測される。また、後退角が上限値以下であると、リソグラフィー特性等が良好である。
同様の理由により、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜における静的接触角の測定値が、60°以上であることが好ましく、63〜95°であることがより好ましく、65〜95°であることが特に好ましい。
また、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、当該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜における転落角の測定値が36°以下であることが好ましく、10〜36°であることがより好ましく、7〜30°であることが特に好ましく、14〜27°であることが最も好ましい。転落角が上限値以下であると、浸漬露光時の物質溶出抑制効果が向上する。また、転落角が下限値以上であると、リソグラフィー特性等が良好である。
【0156】
上述の各種角度(動的接触角(前進角、後退角、転落角等)の大きさは、液浸露光用ポジ型レジスト組成物の組成、たとえば(F)成分の配合量や、前記一般式(F1)におけるnの値、(A)成分の種類等を調整することにより調整できる。たとえば、(F)成分の含有割合が高いほど、得られるレジスト組成物の疎水性が高まり、静的接触角が大きくなる。
【0157】
また、本発明においては、上述したように、浸漬露光時のレジスト膜中から液浸溶媒中への物質溶出が抑制されることが期待される。そのため、液浸露光において、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いることにより、レジスト膜の変質や、液浸溶媒の屈折率の変化を抑制できる。したがって、液浸溶媒の屈折率の変動が抑制される等により、形成されるレジストパターンの形状等が良好となる。
また、露光装置のレンズの汚染を低減でき、そのため、これらに対する保護対策を行わなくてもよく、プロセスや露光装置の簡便化に貢献できる。
さらに、上述したように、非特許文献1に記載されているようなスキャン式の液浸露光機を用いて浸漬露光を行う場合には、液浸媒体がレンズの移動に追随して移動する水追随性が求められるが、本発明においては、レジスト膜の疎水性が高く、水追随性が高い。しかも、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、リソグラフィー特性も良好で、液浸露光においてレジストとして使用した際に、実用上問題なくレジストパターンを形成できる。
このように、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、リソグラフィー特性(感度、解像性等)が良好であることに加え、疎水性、物質溶出抑制能、水追随性等にも優れており、液浸露光においてレジスト材料に求められる特性を充分に備えたものである。
【0158】
≪レジストパターン形成方法≫
次に、本発明のレジストパターン形成方法について説明する。
本発明のレジストパターン形成方法は、上記本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を浸漬露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含む。
【0159】
本発明のレジストパターンの形成方法の好ましい一例を下記に示す。
まず、支持体上に、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、たとえば80〜150℃の温度条件下、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB)処理)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施すことにより、レジスト膜を形成する。
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と、下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)とに分けられる。
【0160】
レジスト膜の形成後、レジスト膜上にさらに有機系の反射防止膜を設けて、支持体と、レジスト膜と、反射防止膜とからなる3層積層体とすることもできる。レジスト膜上に設ける反射防止膜はアルカリ現像液に可溶であるものが好ましい。
【0161】
ここまでの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用する液浸露光用ポジ型レジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
【0162】
次いで、上記で得られたレジスト膜に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に液浸露光(Liquid Immersion Lithography)を行う。このとき、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う。
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fレーザーなどの放射線を用いて行うことができる。本発明にかかるレジスト組成物は、KrFまたはArFエキシマレーザー、特にArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0163】
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ上記本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物は、特に水による悪影響を受けにくく、感度、レジストパターンプロファイル形状に優れることから、本発明においては、液浸媒体として、水が好ましく用いられる。また、水は、コスト、安全性、環境問題および汎用性の観点からも好ましい。
【0164】
次いで、浸漬露光工程を終えた後、たとえば80〜150℃の温度条件下、露光後加熱(ポストエクスポージャーベーク(PEB))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理する。そして、好ましくは純水を用いて水リンスを行う。水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下または噴霧して、基板上の現像液および該現像液によって溶解した液浸露光用ポジ型レジスト組成物を洗い流すことにより実施できる。そして、乾燥を行うことにより、レジスト膜(液浸露光用ポジ型レジスト組成物の塗膜)がマスクパターンに応じた形状にパターニングされたレジストパターンが得られる。
【実施例】
【0165】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪化合物の合成≫
以下に示す実施例1〜4の合成例により、化合物(F1−1)〜(F1−4)を得た。
【0166】
(実施例1:化合物(F1−1)の合成例)
下記合成経路によって、化合物(F1−1)を合成した。
【0167】
【化40】

【0168】
[アダマンタンカルボニルクロライド(化合物2)の合成]
窒素雰囲気下で、化合物1(10.00g,55.52mmol)を塩化チオニル(SOCl)45mlに溶解した。次いで、撹拌させながら90℃で5時間還流した。その後、溶液を真空乾燥させることによってアダマンタンカルボニルクロライド(化合物2)を得た。
【0169】
窒素雰囲気下で、化合物3のフッ素アルコール(3.04g,15.31mmol)とトリエチルアミン(3.098g,30.62mmol)をTHF20mlに溶解させた溶液に、化合物2(3.0g 15.10mmol)をTHF20mlに溶解させた溶液を氷冷中で滴下した。その後、常温に戻し撹拌した。12時間後に水を入れた後、溶液を濃縮乾固した。これを、酢酸エチルを用いて分液して有機相を得て、これを乾燥させることによって化合物(F1−1)を得た。
得られた化合物(F1−1)について、H−NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl、400MHz):δ(ppm)1.42−2.20(m,21H),0.87(t,6H,H)
【0170】
(実施例2:化合物(F1−2)の合成例)
下記合成経路によって、化合物(F1−2)を合成した。
【0171】
【化41】

【0172】
[アダマンタンジカルボニルクロライド(化合物5)の合成]
窒素雰囲気下で、アダマンタン1,3−ジカルボン酸(10.00g,44.59mmol)を塩化チオニル(SOCl)45mlに溶解した。次いで、撹拌させながら90℃で5時間還流した。その後、溶液を真空乾燥させることによってアダマンタンジカルボニルクロライド(化合物5)を得た。
【0173】
窒素雰囲気下で、化合物3のフッ素アルコール(3.04g,15.31mmol)とトリエチルアミン(3.098g,30.62mmol)をTHF20mlに溶解させた溶液に、化合物5(3.0g,11.49mmol)をTHF20mlに溶解させた溶液を氷冷中で滴下した。その後、常温に戻し撹拌した。12時間後に水を入れた後、溶液を濃縮乾固した。これを、酢酸エチルを用いて分液して有機相を得て、これを乾燥させることによって化合物(F1−2)を得た。
得られた化合物(F1−2)について、H−NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
【0174】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ(ppm)2.22(m,2H,Ha),1.92(m,8H,Hb),1.71(m,2H,Hc),2.08(m,4H, Hg),1.60(m,4H,Hf),1.47(m,12H,He),0.87(t,12H,Hd)
上記の結果から、化合物(F1−2)が下記に示す構造を有することが確認できた。
【0175】
【化42】

【0176】
(実施例3:化合物(F1−3)の合成例)
下記合成経路によって、化合物(F1−3)を合成した。
【0177】
【化43】

【0178】
窒素雰囲気下で、化合物3のフッ素アルコール(2.64g)とトリエチルアミン(1.40g)をTHF20mlに溶解させた溶液に、化合物6(2.97g)をTHF20mlに溶解させた溶液を氷冷中で滴下した。その後、常温に戻し撹拌した。12時間後に水を入れた後、溶液を濃縮乾固した。これを、酢酸エチルを用いて分液して有機相を得て、これを乾燥させることによって化合物(F1−3)を得た。
得られた化合物(F1−3)について、H−NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
【0179】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ(ppm)0.9(m,9H,Ha),1.3(m,8H,Hb),1.4−1.6(m,4H,Hc),1.8(t,2H,Hd),2.1(m,4H,He),2.45(t,2H,Hf)
上記の結果から、化合物(F1−3)が下記に示す構造を有することが確認できた。
【0180】
【化44】

【0181】
(実施例4:化合物(F1−4)の合成例)
下記合成経路によって、化合物(F1−4)を合成した。
【0182】
【化45】

【0183】
窒素雰囲気下で、化合物3のフッ素アルコール(3.04g,15.31mmol)とトリエチルアミン(3.098g,30.62mmol)をTHF20mlに溶解させた溶液に、化合物7の1,6−へキシレン−ジカルボニルクロライド(6.0g,10.94mmol)をTHF20mlに溶解させた溶液を氷冷中で滴下した。その後、常温に戻し撹拌した。12時間後に水を入れた後、溶液を濃縮乾固した。これを、酢酸エチルを用いて分液して有機相を得て、これを乾燥させることによって化合物(F1−4)を得た。
得られた化合物(F1−4)について、H−NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
【0184】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ(ppm)2.1−1.9(m,8H,Ha),1.7−1.5(m,16H, Hb),1.3−1.1(m,8H,Hc),0.9−0.7(m,12H,Hd)
上記の結果から、化合物(F1−4)が下記に示す構造を有することが確認できた。
【0185】
【化46】

【0186】
≪ポジ型レジスト組成物の調製および評価≫
実施例5〜8における(F)成分は、前記実施例1〜4の合成例により合成された化合物(F1−1)〜(F1−4)を用いた。
また、実施例5〜8および比較例1において、(A)成分として用いた樹脂(A)−1は、下記モノマー(1)〜(3)を用いて、公知の滴下重合法により共重合して得た。
【0187】
【化47】

【0188】
得られた樹脂(A)−1についてGPC測定を行い、質量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mwは7000、Mw/Mnは1.8であった。
樹脂(A)−1の構造を以下に示す。式中、( )の右下に付した数字は、当該高分子化合物を構成する全構成単位の合計に対する各構成単位の割合(モル%)を示す。各構成単位の割合はカーボンNMRにより算出した。
【0189】
【化48】

【0190】
<ポジ型レジスト組成物の調製>
表1に示す各成分を混合し、溶解してポジ型レジスト組成物を調製した。
【0191】
【表1】

【0192】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:前記樹脂(A)−1。
(B)−1:(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート。
(F)−1:前記化合物(F1−1)。
(F)−2:前記化合物(F1−2)。
(F)−3:前記化合物(F1−3)。
(F)−4:前記化合物(F1−4)。
(D)−1:トリ−n−ペンチルアミン。
(S)−1:PGMEA。
【0193】
得られたポジ型レジスト組成物を用いて、以下の手順で、露光前のレジスト膜表面の静的接触角を測定することにより、レジスト膜の疎水性を評価した。
【0194】
<レジスト膜の疎水性の評価>
8インチシリコンウェーハ上に、表1で示す組成のポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で110℃、60秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。
該レジスト膜(露光前のレジスト膜)の表面に、水2μLを滴下し、DROP MASTER−700(製品名、協和界面科学株式会社製)を用いて静的接触角の測定を行うことにより、レジスト膜の疎水性を評価した。その結果を表2に示す。
【0195】
【表2】

【0196】
表2の結果より、実施例5〜8のポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜は、比較例1のポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜よりも、静的接触角の値が大きいことから、疎水性の高い膜であることが確認できた。
したがって、本発明に係る実施例5〜8のポジ型レジスト組成物は、液浸露光用として好適であることが確認できた。
【0197】
<リソグラフィー評価>
8インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリューワサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、該有機系反射防止膜上に、上記表1に示すポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で、110℃にて60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
次いで、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製;NA(開口数)=0.60,2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターンを介して選択的に照射した。そして、110℃にて60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像処理し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行った。
その結果、いずれのポジ型レジスト組成物を用いた例においても、ライン幅120nm、ピッチ240nmのラインアンドスペースのレジストパターン(L/Sパターン)が形成された。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】前進角(θ)、後退角(θ)および転落角(θ)を説明する図である。
【符号の説明】
【0199】
1 液滴 1a下端 1b上端 2 平面 θ 前進角 θ 後退角 θ 転落角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(F1)で表される化合物。
【化1】

[式(F1)中、Xはフッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基を示し;nは1〜4の整数を表す。R50はn価の有機基であって、置換基を有していてもよい。ただし、nが1の場合、R50は重合性基を含まない有機基である。]
【請求項2】
前記R50が、飽和炭化水素基または芳香族基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記Xが、下記一般式(F1−1−1)で表される基である請求項1または2記載の化合物。
【化2】

[式(F1−1−1)中、R〜Rはそれぞれ独立してアルキル基またはフッ素化アルキル基であって、前記フッ素化アルキル基はR〜Rが結合している第三級炭素原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子が結合していない基であり、かつ、R〜Rの少なくとも一つは前記フッ素化アルキル基である。ただし、RおよびRは相互に結合して、RとRと前記第三級炭素原子とからなる一つの環構造を形成していてもよい。]
【請求項4】
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、下記一般式(F1)で表される化合物(F)とを含有することを特徴とする液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【化3】

[式(F1)中、Xはフッ素原子を有する酸解離性溶解抑制基を示し;nは1〜4の整数を表す。R50はn価の有機基であって、置換基を有していてもよい。ただし、nが1の場合、R50は重合性基を含まない有機基である。]
【請求項5】
前記R50が、飽和炭化水素基または芳香族基である請求項4記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
前記Xが、下記一般式(F1−1−1)で表される基である請求項4または5記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【化4】

[式(F1−1−1)中、R〜Rはそれぞれ独立してアルキル基またはフッ素化アルキル基であって、前記フッ素化アルキル基はR〜Rが結合している第三級炭素原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子が結合していない基であり、かつ、R〜Rの少なくとも一つは前記フッ素化アルキル基である。ただし、RおよびRは相互に結合して、RとRと前記第三級炭素原子とからなる一つの環構造を形成していてもよい。]
【請求項7】
前記化合物(F)の含有割合が、前記基材成分(A)100質量部に対して0.01〜10質量部である請求項4〜6のいずれか一項に記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
前記基材成分(A)が、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂(A1)である請求項4〜7のいずれか一項に記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
前記樹脂(A1)が、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有する請求項8記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
前記樹脂(A1)が、さらに、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有する請求項9記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項11】
前記樹脂(A1)が、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有する請求項9または10記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項12】
含窒素有機化合物(D)を含有する請求項4〜11のいずれか一項に記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物。
【請求項13】
請求項4〜12のいずれか一項に記載の液浸露光用ポジ型レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を浸漬露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−19003(P2009−19003A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182384(P2007−182384)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】