説明

液滴吹付け装置

インクジェットプリントヘッドは、列方向に離間された噴出チャンバーの列であって、それぞれがインクオリフィスと連通状態にある噴出チャンバーの列と、この噴出チャンバーと連通する流入および排出プレナムチャンバーと、列方向に延在しかつ多孔質シートを介してプレナムチャンバーと連通する流入および排出マニホールドとを有する。流入および排出マニホールド内には列方向に実質的な正味のインク流が存在するが、流入あるいは排出プレナムチャンバー内には列方向に正味の流れは実質的に存在しない。それゆえインク圧力は噴出チャンバーの列の隅々まで一定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴吹付け装置、特にインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタはもはや単なるオフィスプリンタとして見られることはなく、その融通性は、それらが現在、デジタル印刷および他の産業マーケットで使用されることを意味する。プリントヘッドが500個を上回る数のノズルを有することも珍しいことではなく、2000超のノズルを有する「ページワイド」プリントヘッドも、近い将来、市販されるであろうことが予見される。
【0003】
印刷時および非印刷時にプリントヘッドを通るインクの循環は液滴特性に有利な作用を及ぼすことが分かっている。なぜならヘッドの外部に配置した熱交換器によって、その温度を制御可能だからである。
【0004】
特許文献1が教示するさらなる改良は、インクを連続的に噴出チャンバーを通過させることである。これは、十分に高い流速において、ノズル内への空気やゴミの混入の可能性を低減させかつ噴出チャンバーに新しいインクを連続供給することによりプリントヘッドの信頼性を改善する。
【0005】
この大きな「ページワイド」プリントヘッドのサイズのために、フルブラック印刷時、すなわち全ての噴出チャンバーがその最大速度で印刷を行っているとき、大量のインクがヘッドから噴出させられる。従来型プリントヘッドに関しては、このプリントヘッドからゴミを押し流しかつヘッドを一定温度に維持するため、最大印刷速度の約10倍の流量を扱うことが提案されている。
【0006】
各ノズルは、プリントヘッドの長さに沿った噴出特性の変動を最小限に抑えるため、好ましくは大気力を僅かに下回る同じ圧力であるべきである。
【0007】
インクは、噴出チャンバーに、上記列の長さに及ぶ長尺な流入マニホールドおよび排出マニホールドから供給され、しかもマニホールドに沿った圧力損失は、循環速度、マニホールドサイズおよびインク特性の関数である。
【0008】
各ノズルにおける一定圧力を維持するため、ヘッドを通る大量のインクに鑑みて、大きな水力直径を有する流入および排出マニホールドを備えることが必要である。
【0009】
プリントヘッドは通常、直線列に配置されたノズルを有すると共に、各プリントヘッドの直線列が平行に存在するよう、しばしば印刷装置内に集合させられる。この構造では、多色印刷が、プリントヘッドの下方を、紙を1回通過させるだけで行える。紙の移動に関するばらつきは、プリントヘッドから噴出した液滴の着滴位置に関して最も重大な影響のうちの一つを及ぼし、おそらく印刷された画像には目に付く欠陥が生じる。
【0010】
担体の移動に関する、ばらつきの影響は、プリントヘッドを互いに近接配置することによって低減できる。だが、流入および排出マニホールドの大きな水力直径は、しばしば、これを不可能にする。
【0011】
インクは高価な物資であり、インクが高い価値の流体、たとえば生物学的流体あるいは電子部品の製造に使用される流体である場合、大きなマニホールド内に収容された噴出流体の体積は、プリントヘッドの経済的妥当性に対して法外なものとなり得る。
【特許文献1】国際出願公開第00/38928号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある実施形態の目的は、より小さくかつ一層コンパクトなマニホールドを提供することである。
【0013】
大きなマニホールドは大量のインクを収容し、これは走査キャリッジ上でのプリントヘッドの使用を困難なものとする。なぜならヘッドの移動は、マニホールド内でのインクの「スロッシング」を引き起こすからである。大量のインクはまた、プリントヘッドの質量を増大させ、その結果、走査キャリッジのコストを増大させる。
【0014】
したがって、本発明のある実施形態の目的は、走査あるいは可動キャリッジ上で使用するためのマニホールドを提供することである。
【0015】
本発明の一態様によれば、流入マニホールド、排出マニホールドおよび少なくとも一つの液滴吹付けオリフィスと連通状態となった流体チャンバーを具備してなる液滴吹付け装置であって、上記流体チャンバーは多孔質要素によって上記マニホールドの少なくとも一つから隔離されており、かつ装置の使用時、上記流入マニホールドと上記排出マニホールドとの間には上記チャンバーを通る流体の流れが存在し、上記多孔質要素を跨いだ圧力損失は上記流れにおける支配的圧力損失である液滴吹付け装置が提供される。
【0016】
好ましくは、上記流体チャンバーは、上記流入マニホールドから多孔質要素によって隔離され、かつ上記排出マニホールドから同一のあるいは異なる多孔質要素によって隔離される。
【0017】
有利なことを言えば、細長い列として配置された複数のオリフィスは上記流体チャンバーと連通しており、かつ上記流入および排出マニホールドの一方あるいは両方は上記細長い列に対して平行に延在する。
【0018】
好都合なことを言えば、上記流体チャンバー内には噴出チャンバーの列が存在し、各噴出チャンバーは個々のオリフィスとつながっている。ある実施形態では、上記流体チャンバーは流入チャンバーおよび排出チャンバーへと、噴出チャンバーの上記列によって分割されており、上記流入チャンバーと上記排出チャンバーとの間に上記噴出チャンバーを通る平行な流体の流れが存在する。
【0019】
他の態様では、本発明は、列方向に離間された一続きの噴出チャンバーであって、そのそれぞれは液滴噴出オリフィスと連通している噴出チャンバーと、列方向に延在すると共に噴出チャンバーのそれぞれと連通する少なくとも一つのプレナムチャンバーと、列方向に延在すると共に流体に抵抗を付加する要素を介してプレナムチャンバーと連通する流入マニホールドとを具備してなる液滴吹付け装置であって、使用時には流入マニホールドからプレナムチャンバーを経て噴出チャンバーに至る流体の流れが存在し、流入マニホールド内には列方向に実質的な正味の流れが存在し、上記プレナムチャンバー内には列方向に正味の流れが実質的に存在しない液滴吹付け装置となる。
【0020】
さらに他の態様では、本発明は、オリフィスの列と、このオリフィスの列と平行に延在するインク供給マニホールドとを有する液滴吹付け装置のオリフィスに流体を供給するための方法であって、上記オリフィスの列と実質的に平行に流動するようにかつ上記オリフィスから噴出させることが可能な分量よりも多い分量だけ、インクを上記マニホールド内に供給するステップと、インクを少なくとも一つの制限要素を通ってかつプレナムチャンバー内に流入させるステップとを具備し、上記プレナムチャンバー内の流体の流れは上記オリフィスの列に対して実質的に直交するような方法となる。
【0021】
好ましくは、プレナムチャンバー内の流体の圧力は、このプレナムチャンバー内に開放されたポートによって制御される。
【0022】
その上さらなる態様では、本発明は、使用時に走査されるプリントヘッドを具備してなる印刷装置であって、上記プリントヘッドは、列方向に離間された噴出チャンバーの列であって、それぞれがインクオリフィスと連通している噴出チャンバーの列と、上記噴出チャンバーのそれぞれと連通する流入プレナムチャンバーと、上記列方向に延在すると共に多孔質要素を介して上記流入プレナムチャンバーと連通する流入マニホールドと、上記噴出チャンバーのそれぞれと連通する排出プレナムチャンバーと、上記列方向に延在すると共に、同一のあるいは別な多孔質要素を介して上記排出プレナムチャンバーと連通する排出マニホールドとを具備してなり、使用時には、各噴出チャンバーを通る流体の流れが存在し、上記流入および排出マニホールド内には上記列方向に実質的に正味の流れが存在し、かつ上記流入または排出プレナムチャンバー内には上記列方向に正味の流れが実質的に存在しない印刷装置となる。
【0023】
好ましくは、圧力制御手段は、上記オリフィスにおいて圧力を制御するためにプレナムチャンバーにつながり、この圧力制御手段は好ましくは、制御可能な圧力源に接続された上記抵抗の中間点に直列に接続された一対の流体抵抗を具備してなる。
【0024】
本発明のある形態では、液滴噴出用のオリフィスと連通する流体チャンバーと、上記チャンバー内の流体の圧力を制御する手段と、それぞれがその長さに沿って圧力損失を生じる流入マニホールドおよび排出マニホールドと、上記流入マニホールドから上記チャンバーへの流体の移動を可能にする供給手段と、上記チャンバーから上記排出マニホールドへの流体の移動を可能にする排出手段とを具備してなる液滴吹付け装置であって、上記供給手段あるいは上記排出手段を跨いだ圧力損失が、上記流入マニホールドあるいは上記排出マニホールドの長さに沿った総圧力損失よりも大きなものである液滴吹付け装置が提供される。
【0025】
オリフィスまたはノズルから液滴を噴出させることができるアクチュエータが流体チャンバー内に直接配置されてもよい。これに替えて、アクチュエータを具備してなる噴出チャンバーの列が連通状態で流体チャンバーとオリフィスとの間に設けられもよい。好ましい実施形態では、噴出チャンバーは流体チャンバーを二つの別個のチャンバー、すなわち流入プレナムチャンバーおよび排出プレナムチャンバーへと分割する。流入プレナムチャンバーは、噴出チャンバーの上流であってかつ供給手段と噴出チャンバーとの間に配置される。排出プレナムチャンバーは、噴出チャンバーの下流であってかつ排出手段と噴出チャンバーとの間に配置される。流入プレナムチャンバーと排出プレナムチャンバーとの間には、噴出チャンバーによって流体連通状態がもたらされる。
【0026】
上記アクチュエータはたとえば、電界の印加がアクチュエータの一部の変形を引き起こす電気機械型のものであってもよく、磁界の印加がアクチュエータの一部の変形を引き起こす磁気型のものであってもよく、流体へのエネルギーの印加が泡を生成する熱型のものであってもよく、あるいは何らかの他の適当な形態のものであってもよい。
【0027】
構成に依存する作動壁あるいは非作動壁が噴出チャンバーを形成してもよい。
【0028】
チャンバー内の圧力を制御するための手段は、流入マニホールドに付加される圧力ヘッドが変化させられる間接的なものであってもよい。こうした手段は、たとえば外部ポンプとすることができる。
【0029】
好ましい実施形態においては、チャンバー内の圧力を制御するための手段は直接的なものであり、圧力源、真空源あるいは雰囲気に対して開放されたチューブあるいはポートはチャンバーと直接つながっている。チャンバーの一部を形成するダイヤフラムのような他の手段とすることも可能である。供給手段あるいは排出手段を跨ぐ圧力損失を変化させる手段はまたチャンバー内の圧力を制御するのに使用されてもよい。特に好ましい実施形態では、圧力チャンバー内の圧力を制御するための手段は、WO 03/022586に開示されかつこの引用によって本明細書に組み込まれるホイートストンブリッジ圧力制御器を具備してなる。
【0030】
圧力制御のこの形態は、噴出チャンバー内に位置させられたオリフィスを備える、流入プレナムチャンバーおよび排出プレナムチャンバー間に配置された噴出チャンバーによって、流体チャンバーが、この流入プレナムチャンバーおよび排出プレナムチャンバーに分割される場合の特定の用法である。
【0031】
ホイートストンブリッジは流体に対する抵抗を有する四つの辺からなり、この四つの辺は、a)流入プレナムチャンバーとオリフィスとの間の噴出チャンバー、b)オリフィスと排出プレナムチャンバーとの間の噴出チャンバー、c)排出プレナムチャンバーと外部圧力基準ポイントとの間に設けられた流路、そしてd)外部圧力基準ポイントと流入プレナムチャンバーとの間に設けられた流路である。
【0032】
圧力基準点を備えるホイートストンブリッジの辺の周りに流体の流れが存在してもよく、これは、オリフィスを経て噴出させられたインクの全流量の1倍のオーダーのものである。他の値(より大きいかあるいはより小さい値)も適当であろう。ある状況では、この点の周りの流量がゼロになるであろう。
【0033】
供給手段はチャンバーの一つの壁を形成していてもよく、チャンバー内に配置されていてもよく、あるいは補助チャンバー内のチャンバーからあるいは補助チャンバーの一部から離れて配置されていてもよい。供給手段は好ましくはチャンバーの長さに沿ってインクを供給し、かつ供給手段を出るインクは好ましくはこの供給手段の長さに沿って同じ圧力である。これによって有利なことには、チャンバーの長さに沿って一定の圧力がもたらされる。
【0034】
流体が供給手段によってチャンバーへと供給される流量は、好ましくは、オリフィスを経て流体を噴出させることが可能な流量よりも大きなものである。好ましくは、この流量は最大噴出流量の10倍のオーダーであるが、たとえばインク中のゴミや空気の量、あるいは(インクが駆動回路の冷却に用いられる場合には)駆動回路が放散する熱量に依存して、この数値よりも多いかあるいは少ない、それ以外の流量も適当となるであろう。
【0035】
供給手段は好ましくは、大きな圧力損失をもたらす一方で、流体が流入マニホールドとチャンバーとの間を通過することを可能にする素材あるいは構造体から形成される。ある実施形態では、この素材は多孔性のもの、たとえば(但しこれに限定されない)焼結セラミックまたは金属、織物状繊維あるいはメッシュ状繊維、あるいは化学的食刻フォイルのような食刻されるか、カットされるか、あるいは電気鋳造された構造体であってもよい。好ましくは、小孔サイズは、流体にろ過作用がもたらされるのに十分なサイズとなるであろう。小孔サイズは、好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。
【0036】
好ましい実施形態では、供給手段を跨ぐ圧力損失は、その長さに沿って変化する。これは、たとえば供給手段の小孔サイズあるいは断面積を変えることによって実現可能である。
【0037】
さらなる実施形態では、圧力損失は、たとえば狭いチャネルを提供する積層プレートによって形成された構造体によってもたらされる。このチャネルの断面積は、動作時、たとえば、チャネル周りの領域を加熱あるいは冷却することによって、あるいは磁界の印加により、その形状体積を変える物質をチャネル内に配置することによって、変更可能である。圧電セラミックは好適な物質の一例である。
【0038】
供給マニホールド内の流体の圧力は流体チャンバー内の流体の圧力よりも高く、供給手段を横切るかなりの圧力損失が存在する。供給手段を横切る圧力損失はマニホールドの長さに沿った総圧力損失よりも大きく、好ましくは著しく大きなものである。
【0039】
排出手段は好ましくは、大きな圧力損失をもたらす一方で、チャンバーと排出マニホールドとの間を流体が通過することを可能にする素材あるいは構造体から形成される。好適な素材の例には供給手段に関して示唆したものが含まれ、同じ素材を両方で使用できると好都合である。小孔サイズはろ過作用を提供する必要がないので、この小孔サイズは供給手段のそれよりも大きなものとすることができる。好ましくは、小孔サイズが供給側と排出側との間で異なる場合、小孔の数は等しい流動抵抗を維持するよう調整される。
【0040】
好ましい実施形態では、排出手段を跨いだ圧力損失はその長さに沿って変化する。これは、たとえば供給手段の小孔サイズあるいは断面積を変えることによって実現可能である。
【0041】
さらなる実施形態では、圧力損失は、たとえば狭いチャネルを提供する積層プレートによって形成された構造体によってもたらされる。このチャネルの断面積は、動作時、たとえば、チャネル周りの領域を加熱あるいは冷却することによって、あるいは磁界の印加により、その形状体積を変える物質をチャネル内に配置することによって、変更可能である。圧電セラミックは好適な物質の一例である。
【0042】
排出手段および供給手段は好ましくは同じ素材から形成され、しかもある実施形態では、単一のコンポーネント、すなわち供給機能を提供するコンポーネントの一部分あるいは部分群および排出機能を提供するコンポーネントの一部分あるいは部分群であってもよい。代替実施形態では、それらは二つの別個なコンポーネントである。
【0043】
排出マニホールド内の流体の圧力は流体チャンバー内の流体の圧力よりも低く、排出手段を跨いで著しい圧力損失が存在する。排出手段を跨いだ圧力損失はマニホールドの長さに沿った圧力損失よりも大きく、好ましくは著しく大きなものである。
【0044】
供給手段および/または排出手段を跨いだ圧力損失は、好ましくは流体チャンバーを跨いだ圧力損失よりも大きく、好ましくは著しく大きなものである。
【0045】
流入あるいは排出マニホールドは、供給手段および/または排出手段がチューブ状である場合、チューブの小孔とすることができる。これに替えて、それらは、供給および排出手段によって流体チャンバーから分離されたチャンバーであってもよい。
【0046】
流入マニホールドには好ましくは外部回路から流体が供給される。たとえば、ポンプあるいは他の手段、たとえば重力を、インク供給マニホールド内に必要な圧力ヘッドを提供するのに使用できる。
【0047】
本発明の第2の態様によれば、流入マニホールドと、排出マニホールドと、少なくとも一つのオリフィスと連通状態にある流体チャンバーとを具備してなる液滴吹付け装置であって、上記流入マニホールドおよび上記排出マニホールドから、少なくとも一つの要素によって隔てられた上記流体チャンバーは、流体に抵抗を付加すると共に流体がそれを通って流動することを可能にし、上記流入マニホールドと上記排出マニホールドとの間には上記チャンバーを通る流体の流れが存在し、かつ圧力制御手段が、上記オリフィスにおいて圧力を制御するために上記流体チャンバーと直接連通している液滴吹付け装置が提供される。
【0048】
プリントヘッドは走査キャリッジに搭載されてもよい。
【0049】
第3の態様によれば、流入マニホールド、排出マニホールドおよび少なくとも一つのオリフィスと連通状態にある流体チャンバーを備えたプリントヘッドを具備してなる液滴吹付け装置であって、
上記流入マニホールドおよび上記排出マニホールドから少なくとも一つの要素によって隔離された上記流体チャンバーは、流体に抵抗を付加すると共に、流体がそれを通って流動することを可能にし、かつ上記流入マニホールドと上記排出マニホールドとの間には上記チャンバーを通る流体の流れが存在し、
上記少なくとも一つの要素を跨いだ圧力損失はプリントヘッド内での支配的圧力損失である液滴吹付け装置が提供される。
【0050】
上記装置は、上記オリフィスにおいて圧力を制御するために上記流体チャンバーと直接連通する圧力制御手段をさらに具備してなる。
【0051】
流入マニホールド、多孔質障壁、流体チャンバーおよび噴出チャンバーは、単一の食刻シートから形成可能である。
【0052】
本発明の第4の態様によれば、流体をチャンバーに均一に、実質的にその長さに沿って供給するための、実質的に上記チャンバーの長さにわたって延在する供給手段を備えた、噴出ノズルと連通するチャンバーを具備し、上記チャンバーはさらにこのチャンバーから実質的にその長さに沿って流体を排出するための、実質的にその長さ沿って延在する排出手段を具備してなり、循環する流体が上記供給手段と上記排出手段との間において上記チャンバーを通過する液滴吹付け装置が提供される。
【0053】
供給手段および排出手段は、チャンバーの一つの壁を形成する圧力損失の大きなフィルター素材すなわち焼結プレートから形成可能である。
【0054】
供給手段および排出手段は、上記チャンバーから離間した前置チャンバー内に配置可能である。
【0055】
上記圧力制御手段のいずれか一つは、チャンバーと連通状態で設けることができ、それによって圧力が制御される。
【0056】
本明細書で説明する発明はまた方法に関係する。
【0057】
第5の態様によれば、オリフィスの列と、このオリフィスと平行に延在するインク供給マニホールドとを有する液滴吹付け装置のオリフィスに流体を供給するための方法であって、オリフィスの列と実質的に平行に流動するように、かつオリフィスから噴出させることが可能な分量よりも多い分量だけ、インクを上記マニホールド内に供給するステップと、インクを少なくとも一つの制限要素を通ってかつ流体チャンバー内に流入させるステップとを具備し、流体チャンバー内の流体の流れは上記オリフィスの列に対して実質的に平行でない方法が提供される。
【0058】
本明細書で使用する多孔質という用語は、天然自然に多孔質である素材への限定を意図してはおらず、穿孔された、すなわち小孔が形成された素材を含むことを意図している。本発明の実施形態で使用される多孔質素材における小孔の数は、多孔質素材を通る流体を受ける噴出チャンバーの数よりも格段に多い(少なくとも一桁、通常は数桁規模で多い)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
ここで本発明について図面を参照して例証としてのみ説明する。
【0060】
図1は従来技術によるインクジェットプリンタのインク供給サポートを示す。同図はマニホールド構造体を通る断面図であり、これはインクの流れを制御するのに加えて、その上面に圧電素子用のサポートを提供する。この圧電素子は、同図には示していないノズルを経てインクを噴出するよう作動可能である。この圧電素子については、図2を参照して後に説明する。
【0061】
図1において、中央流入マニホールド920は、列の長さに沿って一方向(915で示す)に流動するインクを収容する。列の上部であってベースプレート970に形成された流路は、インクが圧力チャンバー(図示せず)に達するのを可能にする。インクはノズルを経て噴出させられ、かつ噴出させられないインクは二つのポート940および950を介して排出マニホールド910へと循環させられる。排出マニホールド内のインクは、プリントヘッドの長さにわたる温度勾配を最小限に抑えるために逆方向935に流れる。
【0062】
大気に対する正圧はポンプによって流入マニホールドへの入口において実現され、しかも大気に対する負圧は排出マニホールドの出口において実現される。
【0063】
いかなる流体システムにおいてもそうであるように、たとえばマニホールドに沿って、供給サポートの孔930,940および950、そしてベースプレート970に設けたポートによる圧力勾配および圧力損失が存在する。
【0064】
プリントヘッド内のマニホールドは、流入側が最大印刷流量の(通常)10倍の量を導き、一方、排出マニホールドが最大印刷流量の9倍と10倍の間の量を導くような大きなものである必要がある。ノズルにおける圧力の均一性は、流入マニホールドの入口と排出マニホールドの出口との間の圧力差が噴出チャンバーによって抑制されることを確実なものとすることによって維持される。
【0065】
それゆえ、ポート930,940および950による圧力損失、ならびに流入および排出マニホールドに沿った圧力損失の両方を最小限に抑えるために、マニホールド920,910およびポート930,940および950は大きなものであることが不可欠である。
【0066】
図2はアクチュエータおよび流路の構造をより詳しく示す。ポート974が流体チャンバーにインクを供給するためベースプレート970に設けられているが、この流体チャンバーは2列のPZT110a,110b内に形成された噴出チャンバー982によって三つのセクション980,980',980''に分割されている。排出ポート972は、インクがプレナムチャンバーから供給サポートへ戻るよう流れることを可能にする。
【0067】
圧電素子110a,110bには、噴出チャンバーを提供するためにチャネルが刻まれている。電気接続路(図示せず)が基板970に形成されており、しかもチャネルを画定している壁の両面上でチップ(図示せず)を電極(図示せず)に接続している。圧電壁は、壁の両側に形成された電極間の電場が活性化されているとき、それらが、壁の上面に接合されたカバープレート986上に形成されたノズル984からインク滴を噴出するように、せん断モードで撓むよう分極されている。
【0068】
プリントヘッド用の特に洗練されたインク供給源が図3に示されている。図3に示す装置は、図2の個々の圧電素子110a,110bによって実現された平行な2列の噴出チャンバーではなく、単列の噴出チャンバーを有する。だが動作原理は同じである。単列プリントヘッド68はノズル30の両側の二つの抵抗体58,56として概略的に示されている。流入マニホールド920、ポート974および図2の噴出チャンバーの半分が、ノズルの上流で抵抗体58を構成する。排出マニホールド910、ポート972および図2の噴出チャンバーの半分が、ノズルの下流で抵抗体56を構成する。ノズルが噴出チャンバーに沿って中間に位置していない場合、噴出チャンバーが抵抗体56および58の値に与える寄与率は変動するであろう。好都合なことを言えば、抵抗体56および58によって示される流体抵抗は実質的に同一である。
【0069】
ポンプ52によって、プリントヘッド68、および電気に関するホイートストンブリッジ回路に類似した装置における圧力基準辺の両方が供給を受ける。フィルター66はインクのためのクリーニング機能を提供する。抵抗体60および抵抗体62は抵抗体58および56にそれぞれ適合したものであり、好ましくは四つの抵抗体の全てがそうである。ノズルにおける圧力は小さなリザーバ64の高さを増大あるいは低下させることによって制御でき、このリザーバ64は圧力基準点“A”につながっている。プリントヘッドを通るインクの流量は基準辺を通るインクの流量よりも多い。リザーバ54は回路に流体を供給し、蒸発による損失あるいは噴出によるノズルからの損失を補う。
【0070】
図1、図2および図3に示す従来型プリントヘッド装置は多くの有用な機能を有するが、それは全くマニホールド内での大量のインクの使用を伴う。
【0071】
ここで本発明の実施形態について説明する。このものでは従来装置の有用な機能は保持されているが、大きなマニホールド容積の必要性は排除されている。
【0072】
図4Aおよび図4Bに本発明の一実施形態を概略的に示す。図4Aは斜視図であり、図4Bは断面図である。
【0073】
ベースプレート970は多孔質状の、焼結セラミックから形成される。
【0074】
流体チャンバー980はアクチュエータ984を有し、これはベースプレート970上に配置された共有サポート984aに取り付けられている。サポート984aは必要な電気コネクタの全てを支持してもよい。この装置のアクチュエータは壁により隣接するアクチュエータから分離されていない。アクチュエータを横切るインクの流れは依然として実質的に矢印Dの方向である。各アクチュエータは付随するノズル30を有する。
【0075】
多孔質プレート970を跨いだ圧力損失は、各マニホールドの長さ(このコンテクストにおける長さとは図4Aにおいて紙面から突出する方向である)に沿った圧力損失よりも著しく大きなものとなるよう構成されており、これによって、流入マニホールド930の長さに沿った圧力損失にもかかわらず、流体チャンバー流入口980の長さに沿った実質的に一定の圧力が維持される。
【0076】
好ましくは、プレート970の小孔は、流入および/または排出マニホールドの長さに沿って、サイズおよび/または分布が変化し、これによって、マニホールドの流入口あるいは排出口のそれぞれから離れる方向におけるマニホールドに沿った粘性抵抗および他の流動抵抗の増大を補償するよう多孔質プレートの抵抗が低下する。これによって、流入マニホールド930の長さに沿った圧力損失にもかかわらず、流体チャンバー流入口980の長さ沿った正確に一定な圧力を維持できる。
【0077】
有利なことを言えば、これによってマニホールド930のサイズを低減することが可能になる。なぜなら、もはやその長さに沿って一定圧力を維持する必要はなく、しかも長さに沿った大きな圧力差でさえ、多孔質サポート970を跨いだ圧力損失をマニホールドの長さに沿った圧力損失に比べて大きくすることにより、均一にできるからである。
【0078】
上記実施形態では、多孔質サポートによってプレナムチャンバーから分離された流入マニホールドおよび排出マニホールドを設けることによって、マニホールドに沿ったインクの流れが、マニホールドの長さに対して直交するチャンバーを横切る流れに変換される。
【0079】
図4の構造においては、アクチュエータがサポート970の上に設けられる。このアクチュエータはヒーターの形態をとることができ、このヒーターは流体に熱エネルギーを供給し、そしてこれによって流体を、ノズルを経て噴出させる。プレナムチャンバー内の流体の平行な流れは、アクチュエータのそれぞれに、休止状態にあるときには同一である圧力を付与する。
【0080】
図5Aに示すように、流体チャンバー980はしかしながら、二つ以上の別個のチャンバー、流入プレナムチャンバー980'および排出プレナムチャンバー980''に分割でき、これらは噴出チャンバー990を介して流体連通状態となっている。これら噴出チャンバーは、流入および排出マニホールド930,940の間において流体チャンバー内に配置されている。PZT製のブロック110は個々の噴出チャンバー990を形成するためにマニホールドの長さに対して直交するように、かつチャンバー内のインクの流れに対して平行に刻設された噴出チャネルを有する。流体はこのチャネルを通って連続循環し、クリーニングおよび冷却作用をもたらす。壁は噴出チャネルの延伸に対して直交するよう分極されており、しかも壁の両側に設けられた電極は電界がこの壁を通り抜けることを可能にする。壁を通り抜けた電界は、この壁をチャネル内に入るように、あるいはそれから出るように撓ませ、これによってインクの液滴を噴出させる。
【0081】
図5Bは変形例を示し、ここでは(図2の装置におけるのと同様に)、PZT製の二つの刻まれたブロック110aおよび110bは、別個の、噴出チャンバーの背中合わせの列を提供し、これは共有流入マニホールドおよび共有流入プレナムチャンバーからの供給を受ける。
【0082】
図4および図5の実施形態の両方に関して、および流体がノズルを通って流動する実施形態に関して、ノズルにおける圧力は、図3に示した実施例に基づく、改良された「ホイートストンブリッジ」インク供給源を用いて制御できる。本発明による、この改良されたインク供給源について図6を参照して説明する。
【0083】
噴出チャネル990が、ノズル上流の抵抗R2およびノズル下流の抵抗R1を有する抵抗体として示されている。インク供給源の圧力基準辺における抵抗体R3およびR4は、これらの抵抗と釣り合っている。
【0084】
プリントヘッド、流入マニホールド930および排出マニホールド940からなる第2の回路を巡るインク流がもたらされる。この回路を巡るようインクを圧送する第2のポンプ53が設けられる。可能な場合、全ての他の参照数字は図3のそれと同じである。
【0085】
本システム内の圧力および流量は次のように表される。すなわち、Pi(x)は流入マニホールド930の長さに沿った圧力、Pf(x)は流入プレナムチャンバー980'内の圧力、Pn(x)はノズル30における圧力、Pr(x)は排出プレナムチャンバー980''内の圧力、Po(x)は排出マニホールド940内の圧力、Vi(x)は流入マニホールド内の体積流量、Vf(x)は流入プレナムチャンバー内の体積流量、Vr(x)は排出プレナムチャンバー内の体積流量、そしてVo(x)は排出マニホールド内の体積流量である。
【0086】
圧力および流量は、小さなリザーバ64によって付加される圧力Pc、ポンプV1,V2のポンプ流量対圧力特性および流体抵抗(すなわちチャネル通過抵抗s、多孔質要素通過抵抗RおよびここではQに等しいと考える外部抵抗体R4およびR5)によって決定される。
【0087】
列の適当な長さにわたって平均した、チャネルを通る体積流量v(x)は、この解析では終始一定であると考える。
【0088】
上記装置では、多孔質要素は、供給手段および排出手段機能の両方を提供する共有構成要素であり、それゆえRは供給および排出の両方に関して実質的に同じである。ある装置では、別な多孔質要素が供給および排出側に設けられるであろう。ある例では、異物粒子が流体チャンバー内に侵入するのを阻止し、その排除を促進するために、小孔のサイズを排出側よりも供給側が小さくなるようにすることが有用であろう。抵抗は、各例において小孔の数を変更することによって、やはり等しくすることができる。もちろん、供給および排出の両方に関する抵抗が異なるようにすることも可能である。
【0089】
プリントヘッドが印刷を行っていないとき(v=0)、ノズルにおける圧力はPcであり、これは小さなリザーバによって決定され、しかも通常は僅かに負である。プリントヘッドが均一な印刷を行っているとき(v≠0)、全てのノズルにおける圧力は、
s.v.[QL/(2s)+1+s/(2LQ)]/[1+s/(LQ)]に等しい量だけ低下させられる。
【0090】
この数値はRとは無関係であり、ポンプがさらなる圧力損失に対処可能ならば、多孔質障壁の透過性は、問題が生じないように、封鎖その他によって、使用中に制限されてもよい。
【0091】
印刷時のノズル圧力損失はQによって次のように変化する。すなわち、もしQ<<s/Lならば、圧力損失は1/2svである。もしQ>>s/Lならば、圧力損失はvQL/2であり、これは過大なものであることが判明している。もしQ=s/Lならば、ノズル印刷降下は許容し得るsvである。
【0092】
Q<<s/Lの場合、流量Viは、チャンバー内の負の流量を回避するため非常に大きなものでなければならない。負の流量は、基準辺を通って循環する第2のポンプからの流れによって生じる。
【0093】
V2が、実質的に最大印刷流量の概ね10倍である場合、本システムは流入マニホールドの長さに沿った、かなりの圧力損失に抗することができる。
【0094】
Q=s/Lである場合、本システムの流量は、制限体を通るのが(V1−vL+V2)/2、チャネルを通るのが(V1+vL+V2)/2、流入マニホールド内においてV2、流入プレナムチャンバー内において(V1+vL−V2)/2、そして排出プレナムチャンバー内において(V1−V2)/2である。もし、V1=V2=10vLならば、チャネル内で所望の通過流量を実現できるが、(チャネルを通過する以外の)プレナムチャンバー内に入りかつそこから出る流量は小さなものとなる。プレナムチャンバーならびに流入および排出マニホールドは、好ましくない圧力損失を生じさせることなく、小さなものとすることが可能である。
【0095】
図7においては、二重ポンプ52および53が単一のポンプ52で置き換えられている。ここで、追加的抵抗R5,R6が設けられており、これらは、R3およびR4と共に、ブリッジとして作用し、しかもノズルにおける圧力を制御する。R5は、多孔質壁970の抵抗と同じオーダーのものである。
【0096】
ポンプ52の体積流量はここでは最大印刷流量の約20倍である。半分がR5,R3を、続いてR4およびR6を通って流れ、残り半分はプリントヘッド内の多孔質要素を通って流れる。流体チャンバーから出るかあるいはそこに入る流れは極めて僅かなものであり、したがって流体チャンバーの内面に沿った圧力損失は存在しない。
【0097】
ホイートストンブリッジの圧力基準辺を巡る流れは非常に小さなものであるので、ある状況では、この構造体を、正圧源あるいは負圧源への簡単な接続で置き換えることができる。ある実施形態では、これは、ホイートストンブリッジ装置が必要とするプレナムチャンバーからの二つの排出口とは対照的に、流体チャンバーからの単一の排出口によって実現可能である。
【0098】
図8に示されたさらなる実施形態では、多孔質要素970はプレナムチャンバーの一つの壁を形成してはおらず、前置チャンバー931,941内に配置されており、これは流体チャンバー982と連通状態にあるか、あるいは分離したプレナムチャンバー980'および980''と連通状態にある。多孔質要素は小孔を備えたチューブである。この小孔が流入マニホールド930を形成しており、流体は要素970を通って、流入前置チャンバー931内に入る。ベースプレートに形成されたポート972はプレナムチャンバー980'と流入前置チャンバー931との間の流体連通をもたらす。
【0099】
上記実施形態は全て、ノズルおよび噴出チャンバーを、流体チャンバー内であってかつインク入口とインク出口との間に配置した。だが、少ない圧力損失、小さなマニホールドおよびインク循環をもたらす能力はまた、一般にエンドシュータとして知られるプリントヘッドに関しても有用である。
【0100】
エンドシュータプリントヘッドは概してインクを循環させず、むしろ単一のインク流入口を備えたチャンバーおよび端壁に配置されたノズルを有する。図9はそうした構造体を示す。
【0101】
流入マニホールド930はプリントヘッドの長さにわたって延在すると共に、多孔質セラミックプレート970を経て流体チャンバー980にインクを供給する。排出マニホールド940はプレナムチャンバーからインクを排出すると共に一定の循環を可能にする。エンドシュータ噴出チャンバー990が流体チャンバーの一面に設けられ、それはこの流体チャンバーによってインクの供給を受ける。噴出チャンバーの上面および流体チャンバーの上面の両方を閉塞するためにカバー992を使用してもよい。上記圧力制御機構のいずれかを流体チャンバー内の圧力を制御するのに用いてもよい。
【0102】
図10に示すように、本構造体は複数のモジュールから形成可能であり、各モジュールはプレート(a)ないし(g)の積層スタックとして形成される。各モジュールは、第1のプレート(a)に一列に配置された多数のノズル994を有する。ノズル994は、第2のプレート(b)内に形成された個々の圧力チャンバー996と連通している。プレート(c)の多数のポート997,998は、圧力チャンバー996と、プレート(d)に互いに噛み合う状態で形成された流入プレナムチャンバー931および排出プレナムチャンバー941それぞれとの間を連通させる。
【0103】
コネクタ961,963が流入および排出プレナムチャンバー931,941の個々に設けられており、これは外部圧力制御器とつながっている。プレート(e)の多孔質障壁970は、プレナムチャンバーを形成するプレート(d)と、互いに噛み合う流入および排出マニホールド930および940を形成するさらなるプレート(f)との間に積層される。
【0104】
四つのポート961,963,967,969を備えたカバープレート965はマニホールドを閉塞している。このプレートは好ましくは、PZT、たとえばNilo42のそれに近似した熱膨張係数を有する材料からなる。
【0105】
モジュールはそのまま使用されても、あるいはインク供給源サポートに搭載されてもよい。図11に示すサポートは四つの流路1000,1001,1002,1003を具備してなり、これらはそれぞれ流入マニホールド、流入プレナムチャンバー、排出プレナムチャンバーおよび排出マニホールドと連通している。本モジュールは好ましくは、図11に示すように、サポートに対して取り外し可能に取り付けられる。
【0106】
本発明を例証としてのみ説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく広範な変更が可能である。
【0107】
ゆえに、上記多孔質素材は、流体の通過を可能にしながら、大きな圧力損失をもたらす素材あるいは構造体の一例に過ぎず、この素材あるいは構造体を跨いだ測定可能な圧力差は、素材あるいは構造体を通過することによる圧力損失よりも、かなり大きなもの(少なくとも十倍、好ましくは百倍)である。焼結セラミックあるいは金属、織物状繊維あるいはメッシュ状繊維、あるいはたとえば化学的食刻フォイルのような、食刻されるか、カットされるかあるいは電気鋳造された構造体が、多孔質素材の適当な例である。マニホールドの長さに沿った多孔質要素の多孔率に関して示唆される任意の変更はまた、マニホールドの長さが方向が水平でない場合に、重力の影響を補償するのに利用できる。
【0108】
圧力を制御するための上記ホイートストンブリッジ装置は有用であるが必須ではない。この装置が採用された場合、大気に開放されかつ高さ調節可能な上記リザーバは、制御可能な圧力源によって置き換えることができる。
【0109】
本明細書(これは特許請求の範囲を含む)に開示しかつ/または図面に示した各特徴は、開示しかつ/または図面に示した他の特徴とは関係なく、またはそれらと組み合わせて本発明に組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】従来技術によるインク供給マニホールドを示す図である。
【図2】従来技術による貫流インクジェットプリントヘッドを示す図である。
【図3】従来技術によるインク供給回路を示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態によるインク供給を示す図である。
【図4B】本発明の一実施形態によるインク供給を示す図である。
【図5A】本発明の第2実施形態によるインク供給の変形例を示す図である。
【図5B】本発明の第2実施形態によるインク供給の変形例を示す図である。
【図6】プリントヘッドにインクを供給するための本発明によるインク循環システムを示す図である。
【図7】プリントヘッドにインクを供給するための本発明による、さらなるインク循環システムを示す図である。
【図8】本発明によるインク供給マニホールドを示す図である。
【図9】本発明によるエンドシュータプリントヘッドを示す図である。
【図10】(a)〜(g)は積層時に本発明によるプリントヘッドを形成する各層を示す図である。
【図11】インク供給サポートに取り付けられた、図10に係る複数のモジュールを示す図である。
【符号の説明】
【0111】
30 ノズル
52,53 ポンプ
54,64 リザーバ
56,58,60,62 抵抗体
66 フィルター
68 単列プリントヘッド
110a,110b 圧電素子
910 排出マニホールド
920 中央流入マニホールド
930 流入マニホールド
931,941 前置チャンバー
940 排出マニホールド
961,963,967,969 ポート
965 カバープレート
970 多孔質プレート(多孔質障壁)
972 排出ポート
974 ポート
980 流体チャンバー
980' 流入プレナムチャンバー
980'' 排出プレナムチャンバー
982 噴出チャンバー
984a 共有サポート
986 カバープレート
990 噴出チャンバー
992 カバー
994 ノズル
996 圧力チャンバー
997,998 ポート
1000,1001,1002,1003 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入マニホールドと、排出マニホールドと、少なくとも一つの液滴吹付けオリフィスと連通状態にある流体チャンバーとを具備してなる液滴吹付け装置であって、
前記流体チャンバーは多孔質要素によって前記マニホールドの少なくとも一つから分離されており、かつ装置の使用時、前記流入マニホールドと前記排出マニホールドとの間に前記チャンバーを通る流体の流れが存在し、前記多孔質要素を跨いだ圧力損失は前記流れにおける支配的な圧力損失であることを特徴とする液滴吹付け装置。
【請求項2】
前記流体チャンバーは、前記流入マニホールドから多孔質要素によって分離されていると共に、前記排出マニホールドから同一の多孔質要素あるいは別な多孔質要素によって分離されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
長尺な列のごとく配置された複数のオリフィスは前記流体チャンバーと連通していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記流入マニホールドおよび排出マニホールドのいずれか一方あるいは両方は、前記長尺な列と平行に延在していることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記流体チャンバー内の噴出チャンバーの列をさらに具備してなり、各噴出チャンバーは個々のオリフィスと連通していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記流体チャンバーは前記噴出チャンバーの列によって流入チャンバーおよび排出チャンバーに分割されており、前記流入チャンバーと前記排出チャンバーとの間に前記噴出チャンバーを通る平行な流体の流れが存在することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
各前記オリフィスは、前記噴出チャンバーに沿った中間点にて、それぞれの前記噴出チャンバーと連通していることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記多孔質要素は平坦なものであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記多孔質要素は多孔質素材からなる平坦なシートを具備してなり、前記流入マニホールドおよび前記排出マニホールドの両方は前記シートの一面上に存在すると共に、前記流体チャンバーは前記シートの他面上に存在することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記多孔質要素は筒状であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記多孔質要素は焼結材であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記多孔質要素はメッシュであることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
ホイートストンブリッジ装置が前記オリフィスにおける圧力を制御するために設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
列方向に離間された噴出チャンバーの列であって、それぞれが液滴噴出オリフィスと連通している噴出チャンバーの列と、
前記列方向に延在すると共に前記噴出チャンバーのそれぞれと連通する少なくとも一つのプレナムチャンバーと、
前記列方向に延在すると共に、流体に抵抗を付加する要素を介して前記プレナムチャンバーと連通する流入マニホールドと、を具備してなる液滴吹付け装置であって、
使用時、前記流入マニホールドから前記プレナムチャンバーを経て前記噴出チャンバーに至る流体の流れが存在し、前記流入マニホールド内には前記列方向に実質的な正味の流れが存在し、かつ前記プレナムチャンバー内には前記列方向に正味の流れが実質的に存在しないことを特徴とする液滴吹付け装置。
【請求項15】
排出マニホールドをさらに具備してなり、この排出マニホールドは前記列方向に延在しかつ流体に抵抗を付加する同一のあるいは異なる要素を介して同一のあるいは異なるプレナムチャンバーと連通していることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
使用時、前記流入マニホールドから、流入プレナムチャンバーを通り、前記噴出チャンバーを通り、排出プレナムチャンバーを通って前記排出マニホールドに至る流体の流れが存在し、前記流入マニホールドおよび排出マニホールドの両方の中には前記列方向に実質的に正味の流れが存在すると共に、前記流入プレナムチャンバーまたは前記排出プレナムチャンバーのいずれかの中には前記列方向に正味の流れが実質的に存在しないことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
圧力制御手段をさらに具備してなり、この圧力制御手段は前記オリフィスにおいて圧力を制御するためにプレナムチャンバーと連通していることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記圧力制御手段は一対の流体抵抗体を具備してなり、この流体抵抗体は、制御可能な圧力源に接続された前記抵抗体の中間点に直列に接続されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記要素は多孔質素材から形成されてなると共に前記列方向に延在していることを特徴とする請求項14ないし請求項18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記要素の多孔率は前記列方向に変化することを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
オリフィスの列と、このオリフィスの列と平行に延在するインク供給マニホールドとを有する液滴吹付け装置の前記オリフィスに流体を供給するための方法であって、
前記オリフィスの列と実質的に平行に流動するように、かつ前記オリフィスから噴出させることが可能な分量よりも多い分量だけ、インクを前記マニホールド内に供給するステップと、
前記インクを少なくとも一つの制限要素を通ってプレナムチャンバー内に流入させるステップと、を具備し、
前記プレナムチャンバー内の流体の流れは前記オリフィスの列に対して実質的に直交することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記プレナムチャンバー内の流体の圧力を、前記プレナムチャンバー内に通じているポートを介して制御することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記オリフィスから噴出させられた流体よりも多い流体を、前記プレナムチャンバーから多孔質要素を介して排出マニホールド内へと流動させるステップをさらに具備することを特徴とする請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
噴出チャネルは前記プレナムチャンバー内と連通しており、前記流体は前記噴出チャネルを通って平行に流動することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
使用時、走査されるプリントヘッドを具備してなる印刷装置であって、
前記プリントヘッドは、
列方向に離間された噴出チャンバーの列であって、それぞれがインクオリフィスと連通している噴出チャンバーの列と、
前記噴出チャンバーのそれぞれと連通する流入プレナムチャンバーと、
前記列方向に延在すると共に、多孔質要素を介して前記流入プレナムチャンバーと連通する流入マニホールドと、
前記噴出チャンバーのそれぞれと連通する排出プレナムチャンバーと、
前記列方向に延在すると共に、同一のあるいは別な多孔質要素を介して前記排出プレナムチャンバーと連通する排出マニホールドと、を具備してなり、
使用時、各噴出チャンバーを通る流体の流れが存在し、前記流入および排出マニホールド内には前記列方向に実質的に正味の流れが存在し、かつ前記流入または排出プレナムチャンバー内には前記列方向に正味の流れが実質的に存在しないことを特徴とする印刷装置。
【請求項26】
圧力制御手段をさらに具備し、この圧力制御手段は、前記オリフィスにおいて圧力を制御するために前記プレナムチャンバーと連通していることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記圧力制御手段は一対の流体抵抗体を具備してなり、この流体抵抗体は、制御可能な圧力源に接続された前記抵抗体の中間点に直列に接続されていることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記流入マニホールドと排出マニホールドとの間に接続された第1のインクポンプと、前記流入プレナムチャンバーと排出プレナムチャンバーとの間に接続された第2のインクポンプとを具備してなることを特徴とする請求項25ないし請求項27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記ポンプの少なくとも一つは印刷ヘッド上で支持されることを特徴とする請求項28に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−516106(P2007−516106A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520018(P2006−520018)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003116
【国際公開番号】WO2005/007415
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(301055608)ザール テクノロジー リミテッド (31)
【Fターム(参考)】