説明

液滴選択機構

方法および液滴選択装置は、連続プリンタ用であって、第2の液滴(61)を選択的に噴出し、所定の第1の液滴(62)と衝突させるものである。とくに、本装置は、流出路(5)から噴出した流体ジェット(60)から第1の液滴(6)の連続流を生成するように構成された第1の液滴噴出装置(10)と、第2の液滴を噴出して第1の液滴に衝突させ、第1の液滴を予め決められた印刷軌道から選択的にずらすように構成された第2の液滴噴出装置(100)とを備える。第2の液滴噴出装置は、第2の液滴を選択的に噴出し、所定の第1の液滴と衝突させる制御回路(11)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続印刷システムのための液滴選択装置に関する。ここで、連続ジェット印刷とは、所定の印刷処理のために選択的に使用される液滴を連続的に生成することを意味する。液滴の供給は連続的に行われる。これは、所定の印刷処理に応じて液滴が生成される、いわゆるドロップオンデマンドの技術とは対照的である。
【背景技術】
【0002】
既知の装置が、例えばUS4,341,310に開示されている。この公報には、吐出路から噴出した流体から第1の液滴の連続流を生成するよう構成された第1の液滴噴出装置を用いた、印刷材料用のいわゆる連続ジェットプリンタが開示されている。吐出路から流体が噴出する間、圧力調整機構は所定の間隔で、流出開口に隣接する粘性流体の圧力に変化を与える。これにより、流出開口から流出する流体ジェットに乱れが発生する。この乱れによってジェットが圧縮され、ジェットが液滴に分散される。その結果、液滴の寸法等の特性が均一に分布した吐出液滴の連続流が生成される。
【0003】
この公報には、さらに、第2の液滴を生成し、第2の液滴を第1の液滴と衝突させて第1の液滴を選択的に予め決められた印刷軌道からずらすように構成された第2の液滴噴出装置が開示されている。第2の液滴噴出装置は、連続的なものであり、極性流体を用いて第1の液滴噴出装置の連続流の方向に第2の液滴流を偏向させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの態様として、本発明は、第1の液滴の連続流をずらすために用いられる連続液滴噴出システムに代わるシステムを提供することを目的とする。別の態様として、本発明は、極性流体を用いる偏向機構に代わるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、液滴衝突装置は、流出路から噴出した流体ジェットから第1の液滴の連続流を生成するように構成された第1の液滴噴出装置と、第2の液滴を噴出して第1の液滴に衝突させるように構成された第2の液滴噴出装置とを備え、第2の液滴噴出装置は、第2の液滴を選択的に噴出し、所定の第1の液滴と衝突させる制御回路を備える。
【0006】
本発明の別の態様によると、連続プリンタから噴出された流体ジェットからの液滴を衝突させる方法は、流体ジェットから第1の液滴の連続流を生成し、第1の液滴に衝突させる第2の液滴を生成し、第2の液滴は、選択的に噴射されて所定の第1の液滴と衝突する。
【0007】
液滴周波数は2〜80kHz、液滴は80ミクロンよりも小さくしてもよいが、これには限定されない。
【0008】
さらに、高圧を利用することにより、処理の際に、とくに高い粘性の流体、例えば300・10−3 Pa・s以上の粘性流体を印刷することもできる。とくに、所定の圧力を、最大600barとしてもよい。
【0009】
他の特徴および効果は、明細書および添付の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に用いられる印刷システムの第1の実施の形態を概略的に示す。
【図2】図2は、衝突により2つの液滴が合体する様子を示している。
【図3】図3は、軸外衝突により2つの液滴が跳ね返る様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明による連続印刷プリンタヘッド1の第1の実施の形態を示す。プリンタヘッド1は、吐出路5から噴出した流体ジェット60から第1の液滴6の連続流を生成するよう構成された第1の液滴噴出装置10を備える。液滴噴出装置10は、壁4によって規定されたチャンバ2を備える。チャンバ2は、例えばポンプや加圧装置(不図示)で加圧された加圧液体3を収容するのに適している。チャンバ2は吐出路5を備え、この吐出路5を通って、加圧された流体ジェット60が噴出し、液滴6の形状に分離される。概略的に示すように、アクチュエータ7は吐出路の近傍に形成される。アクチュエータ7は振動圧電部材であってもよい。アクチュエータ7の作動により、圧力パルスが形成されて流体ジェットを分裂し、これにより微細な単分散液滴が生成される。
【0012】
吐出路5は、比較的薄いノズル板4に設けられている。ノズル板4は、厚さ0.3mm、例えば0.1〜3mmの金属箔から製造された板とすることができる。プレート4内の吐出路5の直径は、本実施例では50μmである。吐出路5の横方向の寸法は、2〜500μmの間とすることができる。圧力調整範囲のサイズを示すものとして、例えば、平均圧力は最大600bars(≡600x10Pa)である。プリンタヘッド10には、チャンバ内の高圧によって崩壊しないように、ノズル板4を支持する支持板40を設けてもよい。振動アクチュエータの例は、例えば、WO2006/101386に記載されており、吐出路5の近傍に配置された振動プランジャピンを備えるものとすることができる。
【0013】
図1において、液滴噴出装置100は第2の液滴61を選択的に噴出するように構成されている。第2の液滴61は、プリンタヘッド10から連続的に噴出される液滴6の流れに向けられている。第2の液滴61は所定の第1の液滴62に向けて噴出され、第1の液滴62と衝突させて第1の液滴62を予め決められた印刷軌道からずらす。第2の液滴61を第1の液滴62に衝突させることにより、第1の液滴62は基板8には到達せず、例えば収集溝9に収集される。好ましい実施の形態においては、収集溝9の印刷材料は液滴61と液滴62の混合物であり、分離(demix)またはすくい取り(skim)により、印刷液体3をプリンタヘッド10に循環、および/または印刷液体30をプリンタヘッド100に供給する。一般に、プリンタヘッド10は連続プリンタヘッド、プリンタヘッド100はドロップオンデマンド型のプリンタヘッドとすることができる。このため、第2のプリンタヘッド100は、チャンバ20と流体接続するものであり、当技術分野で周知のタイプのアクチュエータ70を備えている。アクチュエータ70は、吐出路50を介して第2の液滴61を選択的に噴出するように構成されている。アクチュエータ70は、制御回路11によって制御される。制御回路11は、アクチュエータ70の作動を制御する信号出力12と、第1の液滴噴出装置10の液滴生成周波数を示す信号入力13とを備える。さらに、制御回路11は、第2の液滴61の液滴噴出を、プリンタヘッド10による第1の液滴6の噴出周波数(頻度)に同期させる同期回路14を備える。制御回路11により、プリンタヘッド10の液滴流6から液滴62を個々に選択的にずらすことができる。本発明の1つの態様においては、プリンタヘッド10の液滴周波数は20kHzよりも高い。このような周波数の場合、とくに、液滴の直径は100ミクロン未満、とくに50ミクロン未満とすることができる。ジェット速度を8m/s以上とすることに加えて、ドロップオンデマンド型のプリンタヘッド100は、連続流6の所定の液滴62を選択し、第2の液滴61と衝突させるのにとくに適している。とくに、液滴のサイズが小さいため、従来の静電偏向機構では実現が困難である。ジェット材料60の粘性が300〜900 10−3Pa.sの範囲から選択されることもあること、およびジェット材料が電気的に絶縁された印刷材料から生成され、印刷材料が非極性であることもあることから、生成された液滴6を電磁場により偏向するのは困難である。本発明概念により、従来の連続偏向システムと比較して、個々の液滴を正確に特定して制御する適切な代替システムを提供することができる。例えば、液滴6の連続流れの個々の液滴62について、液滴の局所的な速度差、例えば連続流の第1の液滴が異なる速度で噴出されたという現象による速度差も考慮されている。この現象は、周辺雰囲気の摩擦効果によって発生することがある。このように、本発明の実施の形態による偏向方法によって、高ダイナミックレンジを得ることができる。1つの態様においては、第1の液滴は粘性が高く、絶縁印刷材料、または導電率が500mS/cm未満と低い印刷材料である。この場合、第2の液滴は異なる粘性とすることができ、普通の印刷目的のための一般的な粘性、すなわち、300mPa.sよりも十分に低い粘性とすることができる。図1に示す構成により、連続プリンタヘッドから噴出された流体ジェット60から液滴を選択する方法を提供することができる。液滴は、イメージプリント、高速生産、医療器具、および重合体エレクトロニクスを含む多くの目的に使用できる。とくに、この方法は、静電気、または、電気力学的な偏向方法に反応しない印刷流体に適している。従って、流体ジェット60から発生する第1の液滴6の連続流についての偏向方法は、所定の印刷軌道をもつ選択された第1の液滴に衝突させる第2の液滴を生成する。第2の液滴の射出は、液滴の連続流60から生成された多くの液滴6のうちの所定の1つの液滴と衝突するように、個々に、かつ選択的に設定される。
【0014】
1つの態様では、第1の液滴を印刷基板8に向かう所定の印刷軌道から選択的にずらすために、衝撃伝達による偏向を利用することもできる。
【0015】
あるいはまた、図2の顕微鏡写真に示すように、液滴衝突方法を用い、第2の液滴61を第1の液滴62と合体させることも可能であり、例えば、所定の印刷作用を得るために、第1のジェット60から液滴62の特性を選択的に変化させることができる。例えば、温度を変化させたり、混合により化学特性を変化させることができる。
【0016】
図3に示す実施の形態には、第1および第2の液滴を軸外で衝突させることによる液滴の跳ね返りが示されている。この場合、混合は起こらず、第1および第2の液滴は互いに跳ね返るだけであるので、別々に回収することができる(図3)。このような特殊なケースの場合、異なる材料を簡単にリサイクルすることができる。
【0017】
さらに、液滴の跳ね返り、または衝突により、とくに、複数回の衝突により、カプセルに封入された特別な形状の液滴を提供することができる。例えば、2つの液滴噴出装置を、第1の液滴の連続流に対向するように配置し、連続流に向けて第2の液滴を選択的に射出する。これにより、特別な液滴組成を提供することができる。例えば、親水側と疎水側を有する液滴、または複数の有色側を有する液滴、例えば黒色側と白色側を有する液滴や赤色側、緑色側、および青色側を有する液滴を提供することができる。
【0018】
本発明は、例示的な実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲内に入る種々の変形も可能である。例えば、流出路内の粘性印刷液体を、例えば15〜300℃の温度範囲内で加熱する調節可能な発熱体を設けることも考えられる。流体の温度を調整することによって、処理(プリント)目的のための特定の粘性を得ることができる。これにより、例えば、異種のプラスチックや金属(はんだ等)の粘性流体も印刷可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出路から噴出した流体ジェットから第1の液滴の連続流を生成するように構成された第1の液滴噴出装置と、
第2の液滴を噴出して前記第1の液滴に衝突させるように構成された第2の液滴噴出装置とを備え、
前記第2の液滴噴出装置は、前記第2の液滴を選択的に噴出し、所定の第1の液滴と衝突させる制御回路を備えることを特徴とする液滴衝突装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴衝突装置において、
前記制御回路は、印刷基板に向かう予め決められた印刷軌道から前記第1の液滴を選択的にずらすように構成されていることを特徴とする液滴衝突装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液滴衝突装置において、
前記第2の液滴の温度を制御し、前記第2の液滴と衝突することによって前記第1の液滴の温度を変更するように構成された温度制御装置をさらに備えることを特徴とする液滴衝突装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴選択装置において、
前記制御回路は、前記第1の液滴噴出装置の液滴生成周波数を示す信号入力と、前記第2の液滴の液滴噴射を前記第1の液滴噴出装置の周波数と同期させる同期回路とを備えることを特徴とする液滴選択装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液滴分離装置において、
前記流出路は、2〜500ミクロンの範囲内、好ましくは5〜250ミクロン、より好ましくは5〜100ミクロンの間であることを特徴とする液滴分離装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液滴分離装置において、
前記流出路の長さは、0.1〜3mmの範囲内であることを特徴とする液滴分離装置。
【請求項7】
連続プリンタから噴出された流体ジェットからの液滴を衝突させる方法であって、
流体ジェットから第1の液滴の連続流を生成し、
前記第1の液滴に衝突させる第2の液滴を生成し、
前記第2の液滴は、選択的に噴射されて所定の第1の液滴と衝突することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の液滴衝突方法において、
前記第1および第2の液滴は、予め決められた印刷軌道から前記第1の液滴を選択的にずらすように衝突することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の液滴衝突方法において、
前記第1および第2の液滴は、互いに跳ね返るように軸外で衝突することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記第1および第2の液滴は、リサイクル用に別々に回収されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において、
第1および第2の液滴は、絶縁印刷材料、または導電率が500mS/cmよりも低い印刷材料からなることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法において、
前記第1の液滴は、粘性が最大900mPa.sの材料からなることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法において、
前記第1の液滴は、粘性が300〜900.10−3Pa.sの範囲の材料からなり、前記第2の液滴は、粘性が300.10−3Pa.sよりも低い材料からなることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
衝突した液滴は収集されて分離されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法において、
前記連続流の液滴周波数は、2kHzよりも高く、好ましくは5〜150kHzの範囲内であり、より好ましくは10〜70kHzであることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−502763(P2011−502763A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533024(P2010−533024)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050715
【国際公開番号】WO2009/061201
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】