液滴飛翔装置
【課題】 インクのノズル(インク穴)内での目詰まりを防止する。
【解決手段】 単独または複数の超音波出射部7をもち、出射された超音波は途中伝播部材および液剤層を伝播し、液滴を飛翔させる。その液滴飛翔する液面には液面規制用の規制板3があり、規制板には超音波出射部に対応して穴2が開いており液面が現れている。液剤層は超音波出射部共通となっており、液剤層は容積が可変な機構を保持している。そして、キャッピング時にインク層4の容積を小さくしその分のインクがキャッピング材1を押し広げ盛り上がるようにすることにより、インク穴2が非印字時はインクの中に完全に入り目詰まりの防止となるようにする。または、キャッピング終了する時点でキャッピング材中に入っていたインク剤をキャッピング材を回転させることによって外部に排出し、穴近傍の異物の除去を行う。
【解決手段】 単独または複数の超音波出射部7をもち、出射された超音波は途中伝播部材および液剤層を伝播し、液滴を飛翔させる。その液滴飛翔する液面には液面規制用の規制板3があり、規制板には超音波出射部に対応して穴2が開いており液面が現れている。液剤層は超音波出射部共通となっており、液剤層は容積が可変な機構を保持している。そして、キャッピング時にインク層4の容積を小さくしその分のインクがキャッピング材1を押し広げ盛り上がるようにすることにより、インク穴2が非印字時はインクの中に完全に入り目詰まりの防止となるようにする。または、キャッピング終了する時点でキャッピング材中に入っていたインク剤をキャッピング材を回転させることによって外部に排出し、穴近傍の異物の除去を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響式インクジェット記録装置等における液滴飛翔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のインクジェット記録装置において、記録媒体に対してノズルからインクを吐出し記録を行うための印字ヘッドと、ノズルのインク吐出口が形成されたノズル面を被覆するキャッピング手段と、キャッピング手段がノズル面を被覆しているかどうか検知するキャッピングセンサとを有する構造のものが知られている。
【0003】
このような構造において、キャッピング時のノズル内のインクの増粘、および気泡、塵埃の混入を防止し、ノズルの目詰まり、インク滴の着弾不良等の吐出不良を軽減するために、キャッピングセンサがキャッピング中であることを検知した場合、キャッピング時間が所定時間を超える毎に、キャッピング状態のまま、インクを予備吐出させるように制御する予備吐出制御手段を用いた構造が先に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、この特許文献1では、ノズルにキャップをすることで密閉状態にしたり、インクを吐出させたりすることにより、ノズルの清掃をするようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平2004−249583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧電材の変形圧力を利用するピエゾ方式や、発熱体により発生した気泡圧力を利用するサーマル方式等の液滴飛翔方式は、両方式ともインク飛翔圧力を伝達しインクを飛翔させているが、音響式のインクジェット記録装置では、インクや伝播剤、伝播部材を伝播した超音波がインクと出射面の空気との音響インピーダンスの違いにより発生する音響放射圧によりインク滴を飛翔させる力となっている。
【0007】
このため、粘度の増したインク等のように通常インクとの音響インピーダンスに大きな違いがないような場合は、強い放射圧が発生せず超音波は透過してしまい、取り除くことができにくいという問題がある。
このようにインクと音響インピーダンスの近い異物が存在した場合、飛翔によるインクの流れ等は阻害されるためにインク飛翔には影響を及ぼす。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、インクのノズル穴での目詰まりなどを防止することが可能となる液滴飛翔装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記キャッピング材により前記規制板の穴がキャッピングされた後に、前記インク層の容積を減少させるべく前記容積可変手段を動作させ、非キャッピング時、前記容積可変手段が前記インク層の容積をもとに戻した後に、キャッピング材を前記規制板から離間すべく制御することを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、前記制御手段は、キャッピング時前記容積可変手段による容積減縮動作により所定量のインクを前記穴から溢出させるとともに、前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記容積可変手段による容積減縮動作を停止することを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、前記制御手段は、キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項4記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、前記制御手段は、キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記インク供給手段からのインク供給を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る液滴飛翔装置によれば、液滴出射口となる穴を撥インク性の表面をもち、軟らかいキャッピング材でキャッピングをし、インク層のインクがインク層へインクを供給するインク供給口から逆流しないようにし、インク層の容積を減少させるための機構をもち、キャッピング時にキャッピング材をインクが押しいれることを可能にし、インク層の容積を減少させる量をそれぞれの規制板の穴から押しだされるインクの量の全体量よりも多くしたことにより、インク出射口をインクで覆ってしまうようになり、乾燥による出射口部のインク粘度upによる出射口の目詰まりを防止することができる。
【0014】
また、本発明によれば、液滴出射口となる穴を撥インク性の表面をもち、軟らかいキャッピング材でキャッピングをし、そのキャッピング材を円筒状にして回転するようにし、さらにインク層のインクがインク層へインクを供給するインク供給口から逆流しないようにし、インク層の容積を減少させるための機構をもち、キャッピング時にキャッピング材をインクが押しいれることを可能にしたことにより、インク出射口をインクで覆ってしまうようになり、乾燥による出射口部のインク粘度upによる出射口の目詰まりを防止することができる。
【0015】
さらに、キャッピング解除時にはキャッピング材の回転にあわせインク供給口からインクを供給するようにしたことにより、キャッピング材中に押し入っているインクをインク層に戻ることなく外部へ排除する事が可能になり、規制板の穴(出射口)付近の異物をも取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図4は本発明に係る液滴飛翔装置の第1実施形態を示す。
この実施形態では、超音波放射圧によりインク滴を生成し飛翔させる装置において、その出射部に設けられる出射口のインク粘度上昇による目詰まりの対策に対する場合を説明する。さらに、ここでは液剤としてインクを例にとり説明するが、もちろん飛翔させる液剤はインクによらず多種多様な液剤についても同様である。
【0017】
また、インク飛翔部としては、図2(a),(b)のように、複数の出射口11の場合やライン状に長さをもつ出射口11の場合や色々な形状の場合がある。ここでは、例として丸い出射口11を2列の場合について説明する。
【0018】
図3にインク飛翔部の簡単な構造を記述している。
すなわち、図中7はPZTやZnO等の圧電材からなる超音波発生材である。この超音波発生材7は図示されていない電極で上下にはさまれており、基材6にスパッタ等の成膜技術で生成される。
【0019】
超音波発生材7は図示されていない駆動部により高周波駆動され超音波を出射する。出射された超音波は液剤層4を伝播し、規制板3の穴2で規制されている液面で発生する放射圧により液剤を液滴として噴射する。このとき、規制板3は液面の電極から空気までの高さを一定にする役割や液がたれない役割を持っている。規制板3の穴2は規制板3に電極の位置と同じに位置に電極から出射された超音波をふさがないような位置に設けられている。
【0020】
さらに、図4(a),(b)に上記規制板3の穴2のすべてを覆う形状をもつキャッピング材1を例示している。すなわち、キャッピング材1としては、(a)のように四角い形状であってもよいが、(b)のように円筒形であってもよい。
【0021】
図1は図2を横から見た図である奥行き方向に超音波発生材が並んでいる。なお、図2では超音波発生材は2列として記述したが、図1では説明簡単にするために1列で説明する。また、上述したキャッピング材1としてはわかりやすく四角い形状で記述している。
【0022】
規制板3の穴2すべてを覆う形状のキャッピング材1を規制板3の上部または付近に設置する。キャッピング材1はその表面は撥インク処理がなされている。インク層4はその容積が可変となっている。また、図1ではインク層容積圧縮機構5を設けている。その設置場所に関しては図の位置である必要はなくインク層の容積を小さくする機能を実現可能などこか都合の良い場所であればよい。
【0023】
このような構成において、印字終了時等の印字を実行しない時にキャッピング材1を、図1(b)中1Aのようなキャップした状態のキャッピング材の位置にキャッピングし全ての穴をふさぐ。キャッピング材1はマイクロセルポリマーシート等の圧縮荷重の小さい材質で表面を覆われている。
【0024】
なお、飛び出したインク8の量はインク層に圧力をかけインク穴からインクが微量盛り上りインク穴が完全にインクで満たされる程度の量のインクであればよいので、キャッピング材としてはシリコンゴム、ウレタンゴム等多種の材料が考えられる。
【0025】
このようなキャッピング材1やインク層4を制御するインク層容積圧縮機構5の動作を、図5に示す。
【0026】
ここで、図6にキャッピング材の別な構造を示す。
すなわち、キャッピング基材21に規制穴に対向する位置に第2軟性ゴム材23に軟らかいゴム材として例えば硬度5のシリコンゴム材を使い、その周囲に第1軟性ゴム材22として硬度5より大きい例えば硬度50のシリコンゴムを使用する。
【0027】
このようにすると、キャッピング時にはキャッピング基材がヘッドの規制穴方向に押し付けられるが、規制板とキャッピング材の密着性は第1軟性ゴム材22で保持され押し出されたインクは第1軟性ゴム材22より硬度の小さい第2軟性ゴム材23を圧縮させ、かつ第1軟性ゴム材22により外部に漏れることはない。
【0028】
この構造の場合はキャッピング材のインクの圧力により圧縮する部分の第2軟性ゴム材23の硬度は周囲の軟性ゴム材1よりも小さければ、大きめの硬度も選択可能となるので選択の自由度が増える。また、第2軟性ゴム材23としてシリコンゴム材を選択したが、シリコンスポンジやポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジ等のスポンジ材を使用してもよい。
【0029】
図7にもうひとつキャッピング材の別の構造を示す。
キャッピング基材25において、空隙26,27はひとつの規制穴にひとつ、または複数の規制穴にひとつというように対応した位置に設けられており、表面を薄膜シリコンゴム等の軟らかいシートで覆われている構造である。
【0030】
図8では1個の規制穴28に1個の空隙を対応させた場合のキャッピング動作を示している。また、インク層29は密閉されており図示されていないインク供給口への逆流はしないようになっている。
【0031】
次に、インク層容積圧縮機構5を、図中1(b)の5Aのように位置移動させインク層の容積を減少させる。インク層の内圧が上昇しインクは規制穴から押し出されキャピング材をへこませそこに飛び出す(飛び出したインク8のように)。インク穴およびその上部はインクで満たされインク穴での空気との接触がなくなる。
【0032】
印字開始時(キャッピング解除時)にはインク層容積圧縮機構5をもとの位置に戻すことにより、押し出されたインクは元のインク層へと戻る。これにより空気との接触により粘度が上昇し規制板穴をふさぐことはなくなる。このとき、キャッピング材表面及び規制板表面は撥インク処理がなされている。
【0033】
図8ではキャッピング材の表面の薄膜シリコンゴム等がインクにより空隙内に押されインクで規制穴をキャッピングする動作を示している。
この場合にもインクが規制穴を充満し穴表面から飛び出す量が正の量であればよい。
【0034】
また、インク層容積圧縮機構5により圧縮される容積V1はそれぞれのインク穴表面からインクが押し出す量v2としたときに、穴の個数nのとき、v1≧v2×nを満たすように設定されている。これにより、確実に全穴からインクを必要量押し出すことが可能となるのである。
【0035】
ここで、図1では、超音波が超音波振動子7からインク層4(または伝播材を通して)を伝播し、規制板3の穴2から飛翔する例であるが、記述はしていないが、音響レンズにより超音波を集束させる方式であっても良い。
【0036】
また、インク層容積圧縮機構5としては、図1のようにインク層の一部に可動部を設けインク層容積を可変してもよいし、インク層の内部に例えば風船のように外部からの空気の量によって大きさを制御できる部材を設置しておき。設置した部材の体積を可変する事によりインク層の実質容積を制御する方法等が考えられる。
【0037】
上述した第1実施形態での液滴飛翔装置によれば、液滴出射口となる穴3を撥インク性の表面をもち、軟らかいキャッピング材1でキャッピングをし、インク層4のインクがインク層へインクを供給するインク供給口から逆流しないようにし、インク層の容積を減少させるための機構をもち、キャッピング時にキャッピング材をインクが押しいれることを可能にし、インク層の容積を減少させる量をそれぞれの規制板の穴から押しだされるインクの量の全体量よりも多くしたことにより、インク出射口をインクで覆ってしまうようになり、乾燥による出射口部のインク粘度upによる出射口の目詰まりを防止することができるのである。
【0038】
図9ないし図10は本発明の第2実施形態を示す。
【0039】
図9は、前述した図1と同じように図4を横からみた図であり、またキャッピング材は奥行き方向に円筒上になっている場合を示す。
【0040】
これを詳述すると、キャッピング材1は軟らかく規制板3の穴2から押しだされたインクによりへこみインクを保持する。また、表面は撥インク処理されており、インクは付着することはなく、また規制板3に押し付けられた場合にはそのすきまからインクが漏れることがないように強く押さえつけられている。
【0041】
印字終了時にキャッピング材1を図示されていない機構により規制板の穴2をふさぐように液面規制板3に密着させる。インク入り口32はインク層4からインクが出て行かないようにインクの流れは一方通行になっている。
【0042】
図示されていないインク層圧縮機構によりインク層が圧縮され規制板穴2からインクが出てキャッピング材をへこませてそのへこみ部分にインクが充満する。この状態でインク穴には空気が存在せず、インク穴のインク粘度上昇は防げる。
【0043】
次に、印字をする場合には、インク入り口32からインクをいれつつキャッピング材1を回転させ最初にキャッピング材に進入していたインクを外に移動させる。完全にキャッピング材の中のインクが入れ替わったところでインク注入をやめ、インク容積を元にもどす。このときキャッピング材にはいっていたインクはインク層へもどるが、初期にキャッピング材にはいっていたインクは周囲の異物とともに規制板の穴周辺から取り除かれている。(図9、図10、図11参照)
【0044】
なお、図10中、33は押し出されたインク、34は取り除かれたインク、35は取り除かれたインクと同調を供給する状態、36はインク層容積をもとにもどし、新たに押しだされたインクをインク層へもどす状態を示す。
【0045】
インク層容積圧縮機構5の動き31により圧縮される容積V1はそれぞれのインク穴表面からインクが押し出す量v2としたときに、穴の個数nのとき、v1≧v2×nを満たすように設定されている。これにより、確実に全穴からインクを必要量押し出すことが可能となるのである。
【0046】
規制板の穴の断面積をsとし、規制板の厚さをdとしたときに、v2≧s×dを満たすように設定する。これにより、規制板の穴のインクは全て取り除かれる。また、逆流防止機構のついたインク入り口からのインク注入量v3/秒は、穴の円周方向の長さをL、キャッピング材の回転速度をcとしたときにv3≧v1/(L/c)を満たす。
【0047】
さらに、キャッピング解除時には、キャッピング材の回転にあわせインク供給口からインクを供給するようにしたことにより、キャッピング材中に押し入っているインクをインク層に戻ることなく外部へ排除することが可能となり、これにより規制板の穴(出射口)付近の異物をも取り除くことができるのである。
【0048】
なお、この第2実施形態では、キャッピング材を回転し、キャッピング材に入っているインクを外部へ排出するときにインク供給口からインクを供給し、インク層の内圧を変えることなく、キャッピング材中のインクを外部へ排出するようにしたが、これに限定されず、インク供給口からインクを供給し内圧を維持する代わりに、図12、図13に示すように、インク層圧縮機構を利用し、外部へ排出される分と同等の容積分インク層を小さくすることによって、インク層内圧を維持してもよい。
【0049】
なお、図12中、37は取り除かれたインクと同量分容積を減少させる状態、38はインク層容積をもとにもどし、新たに押しだされたインクをインク層へもどす状態を示す。
【0050】
また、図14、図15に示すように、インク供給口からのインク供給もせず、インク層の容積の減少もせず、簡易的にはキャッピング材を回転するだけでもよい。このとき、外部に排出されたインク分だけ内圧が下がるが、完全にキャピング材中のインクが排出されるまでは、内圧によりインク圧力は次第に弱まっていくがキャッピング材方向へ向いているために、ほとんどの異物は外部へ排出される。このとき、インク層を印字時の状態に拡張するときインク供給口から外部に排出したインクと同量を買う超速度に応じて供給するとよい。
【0051】
なお、図14中、39は外部へ排出したインクと同量をインク層容積を印字時にもどす速度に応じてインク供給口からインクを供給することを示している。
【0052】
さらに、ヘッドの構造としても、図16(a)に示すように、液剤が伝播材の場合であっても、図16(b)に示すように、超音波伝播材がある場合であっても適用可能であることは言うまでもない。
【0053】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、液滴飛翔装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る液滴飛翔装置の第1実施形態を示し、(a),(b)は概略断面図およびその動作説明図である。
【図2】本発明に係る液滴飛翔装置において、(a),(b)はヘッドの概略構成を示す概略図である。
【図3】本発明に係る液滴飛翔装置において、ヘッド構造の概略図である。
【図4】本発明に係る液滴飛翔装置において、(a),(b)はキャッピング材の概略図である。
【図5】本発明に係る液滴飛翔装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明に係る液滴飛翔装置の変形例を示し、(a),(b)は概略断面図およびその動作説明図である。
【図7】キャッピング材の変形例を示す図である。
【図8】(a),(b)はキャッピング材の動作を説明する説明図である。
【図9】本発明に係る液滴飛翔装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
【図10】図9の動作を(a),(b),(c)に示す動作説明図である。
【図11】図9、図10の液滴飛翔装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】第2実施形態の変形例を示し、(a),(b),(c)はその動作説明図である。
【図13】図12の動きを説明するフローチャートである。
【図14】第2実施形態のさらなる変形例を示し、(a),(b),(c)はその動きを説明する動作説明図である。
【図15】図14の動きを説明するフローチャートである。
【図16】(a),(b)は本発明の変形例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…キャッピング材、2…規制板の穴、3…液面規制板、4…インク層、5…インク層容積圧縮機構、6…基材、7…超音波発生材、8…飛び出したインク、11…出射口、21…キャッピング基材、22…第1軟性ゴム材、23…第2軟性ゴム材、25…キャッピング基材、26,27…空隙、28…規制穴。
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響式インクジェット記録装置等における液滴飛翔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のインクジェット記録装置において、記録媒体に対してノズルからインクを吐出し記録を行うための印字ヘッドと、ノズルのインク吐出口が形成されたノズル面を被覆するキャッピング手段と、キャッピング手段がノズル面を被覆しているかどうか検知するキャッピングセンサとを有する構造のものが知られている。
【0003】
このような構造において、キャッピング時のノズル内のインクの増粘、および気泡、塵埃の混入を防止し、ノズルの目詰まり、インク滴の着弾不良等の吐出不良を軽減するために、キャッピングセンサがキャッピング中であることを検知した場合、キャッピング時間が所定時間を超える毎に、キャッピング状態のまま、インクを予備吐出させるように制御する予備吐出制御手段を用いた構造が先に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、この特許文献1では、ノズルにキャップをすることで密閉状態にしたり、インクを吐出させたりすることにより、ノズルの清掃をするようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平2004−249583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧電材の変形圧力を利用するピエゾ方式や、発熱体により発生した気泡圧力を利用するサーマル方式等の液滴飛翔方式は、両方式ともインク飛翔圧力を伝達しインクを飛翔させているが、音響式のインクジェット記録装置では、インクや伝播剤、伝播部材を伝播した超音波がインクと出射面の空気との音響インピーダンスの違いにより発生する音響放射圧によりインク滴を飛翔させる力となっている。
【0007】
このため、粘度の増したインク等のように通常インクとの音響インピーダンスに大きな違いがないような場合は、強い放射圧が発生せず超音波は透過してしまい、取り除くことができにくいという問題がある。
このようにインクと音響インピーダンスの近い異物が存在した場合、飛翔によるインクの流れ等は阻害されるためにインク飛翔には影響を及ぼす。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、インクのノズル穴での目詰まりなどを防止することが可能となる液滴飛翔装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記キャッピング材により前記規制板の穴がキャッピングされた後に、前記インク層の容積を減少させるべく前記容積可変手段を動作させ、非キャッピング時、前記容積可変手段が前記インク層の容積をもとに戻した後に、キャッピング材を前記規制板から離間すべく制御することを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、前記制御手段は、キャッピング時前記容積可変手段による容積減縮動作により所定量のインクを前記穴から溢出させるとともに、前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記容積可変手段による容積減縮動作を停止することを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、前記制御手段は、キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項4記載の発明)に係る液滴飛翔装置は、PZT、ZnO等の圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、前記制御手段は、キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記インク供給手段からのインク供給を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る液滴飛翔装置によれば、液滴出射口となる穴を撥インク性の表面をもち、軟らかいキャッピング材でキャッピングをし、インク層のインクがインク層へインクを供給するインク供給口から逆流しないようにし、インク層の容積を減少させるための機構をもち、キャッピング時にキャッピング材をインクが押しいれることを可能にし、インク層の容積を減少させる量をそれぞれの規制板の穴から押しだされるインクの量の全体量よりも多くしたことにより、インク出射口をインクで覆ってしまうようになり、乾燥による出射口部のインク粘度upによる出射口の目詰まりを防止することができる。
【0014】
また、本発明によれば、液滴出射口となる穴を撥インク性の表面をもち、軟らかいキャッピング材でキャッピングをし、そのキャッピング材を円筒状にして回転するようにし、さらにインク層のインクがインク層へインクを供給するインク供給口から逆流しないようにし、インク層の容積を減少させるための機構をもち、キャッピング時にキャッピング材をインクが押しいれることを可能にしたことにより、インク出射口をインクで覆ってしまうようになり、乾燥による出射口部のインク粘度upによる出射口の目詰まりを防止することができる。
【0015】
さらに、キャッピング解除時にはキャッピング材の回転にあわせインク供給口からインクを供給するようにしたことにより、キャッピング材中に押し入っているインクをインク層に戻ることなく外部へ排除する事が可能になり、規制板の穴(出射口)付近の異物をも取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図4は本発明に係る液滴飛翔装置の第1実施形態を示す。
この実施形態では、超音波放射圧によりインク滴を生成し飛翔させる装置において、その出射部に設けられる出射口のインク粘度上昇による目詰まりの対策に対する場合を説明する。さらに、ここでは液剤としてインクを例にとり説明するが、もちろん飛翔させる液剤はインクによらず多種多様な液剤についても同様である。
【0017】
また、インク飛翔部としては、図2(a),(b)のように、複数の出射口11の場合やライン状に長さをもつ出射口11の場合や色々な形状の場合がある。ここでは、例として丸い出射口11を2列の場合について説明する。
【0018】
図3にインク飛翔部の簡単な構造を記述している。
すなわち、図中7はPZTやZnO等の圧電材からなる超音波発生材である。この超音波発生材7は図示されていない電極で上下にはさまれており、基材6にスパッタ等の成膜技術で生成される。
【0019】
超音波発生材7は図示されていない駆動部により高周波駆動され超音波を出射する。出射された超音波は液剤層4を伝播し、規制板3の穴2で規制されている液面で発生する放射圧により液剤を液滴として噴射する。このとき、規制板3は液面の電極から空気までの高さを一定にする役割や液がたれない役割を持っている。規制板3の穴2は規制板3に電極の位置と同じに位置に電極から出射された超音波をふさがないような位置に設けられている。
【0020】
さらに、図4(a),(b)に上記規制板3の穴2のすべてを覆う形状をもつキャッピング材1を例示している。すなわち、キャッピング材1としては、(a)のように四角い形状であってもよいが、(b)のように円筒形であってもよい。
【0021】
図1は図2を横から見た図である奥行き方向に超音波発生材が並んでいる。なお、図2では超音波発生材は2列として記述したが、図1では説明簡単にするために1列で説明する。また、上述したキャッピング材1としてはわかりやすく四角い形状で記述している。
【0022】
規制板3の穴2すべてを覆う形状のキャッピング材1を規制板3の上部または付近に設置する。キャッピング材1はその表面は撥インク処理がなされている。インク層4はその容積が可変となっている。また、図1ではインク層容積圧縮機構5を設けている。その設置場所に関しては図の位置である必要はなくインク層の容積を小さくする機能を実現可能などこか都合の良い場所であればよい。
【0023】
このような構成において、印字終了時等の印字を実行しない時にキャッピング材1を、図1(b)中1Aのようなキャップした状態のキャッピング材の位置にキャッピングし全ての穴をふさぐ。キャッピング材1はマイクロセルポリマーシート等の圧縮荷重の小さい材質で表面を覆われている。
【0024】
なお、飛び出したインク8の量はインク層に圧力をかけインク穴からインクが微量盛り上りインク穴が完全にインクで満たされる程度の量のインクであればよいので、キャッピング材としてはシリコンゴム、ウレタンゴム等多種の材料が考えられる。
【0025】
このようなキャッピング材1やインク層4を制御するインク層容積圧縮機構5の動作を、図5に示す。
【0026】
ここで、図6にキャッピング材の別な構造を示す。
すなわち、キャッピング基材21に規制穴に対向する位置に第2軟性ゴム材23に軟らかいゴム材として例えば硬度5のシリコンゴム材を使い、その周囲に第1軟性ゴム材22として硬度5より大きい例えば硬度50のシリコンゴムを使用する。
【0027】
このようにすると、キャッピング時にはキャッピング基材がヘッドの規制穴方向に押し付けられるが、規制板とキャッピング材の密着性は第1軟性ゴム材22で保持され押し出されたインクは第1軟性ゴム材22より硬度の小さい第2軟性ゴム材23を圧縮させ、かつ第1軟性ゴム材22により外部に漏れることはない。
【0028】
この構造の場合はキャッピング材のインクの圧力により圧縮する部分の第2軟性ゴム材23の硬度は周囲の軟性ゴム材1よりも小さければ、大きめの硬度も選択可能となるので選択の自由度が増える。また、第2軟性ゴム材23としてシリコンゴム材を選択したが、シリコンスポンジやポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジ等のスポンジ材を使用してもよい。
【0029】
図7にもうひとつキャッピング材の別の構造を示す。
キャッピング基材25において、空隙26,27はひとつの規制穴にひとつ、または複数の規制穴にひとつというように対応した位置に設けられており、表面を薄膜シリコンゴム等の軟らかいシートで覆われている構造である。
【0030】
図8では1個の規制穴28に1個の空隙を対応させた場合のキャッピング動作を示している。また、インク層29は密閉されており図示されていないインク供給口への逆流はしないようになっている。
【0031】
次に、インク層容積圧縮機構5を、図中1(b)の5Aのように位置移動させインク層の容積を減少させる。インク層の内圧が上昇しインクは規制穴から押し出されキャピング材をへこませそこに飛び出す(飛び出したインク8のように)。インク穴およびその上部はインクで満たされインク穴での空気との接触がなくなる。
【0032】
印字開始時(キャッピング解除時)にはインク層容積圧縮機構5をもとの位置に戻すことにより、押し出されたインクは元のインク層へと戻る。これにより空気との接触により粘度が上昇し規制板穴をふさぐことはなくなる。このとき、キャッピング材表面及び規制板表面は撥インク処理がなされている。
【0033】
図8ではキャッピング材の表面の薄膜シリコンゴム等がインクにより空隙内に押されインクで規制穴をキャッピングする動作を示している。
この場合にもインクが規制穴を充満し穴表面から飛び出す量が正の量であればよい。
【0034】
また、インク層容積圧縮機構5により圧縮される容積V1はそれぞれのインク穴表面からインクが押し出す量v2としたときに、穴の個数nのとき、v1≧v2×nを満たすように設定されている。これにより、確実に全穴からインクを必要量押し出すことが可能となるのである。
【0035】
ここで、図1では、超音波が超音波振動子7からインク層4(または伝播材を通して)を伝播し、規制板3の穴2から飛翔する例であるが、記述はしていないが、音響レンズにより超音波を集束させる方式であっても良い。
【0036】
また、インク層容積圧縮機構5としては、図1のようにインク層の一部に可動部を設けインク層容積を可変してもよいし、インク層の内部に例えば風船のように外部からの空気の量によって大きさを制御できる部材を設置しておき。設置した部材の体積を可変する事によりインク層の実質容積を制御する方法等が考えられる。
【0037】
上述した第1実施形態での液滴飛翔装置によれば、液滴出射口となる穴3を撥インク性の表面をもち、軟らかいキャッピング材1でキャッピングをし、インク層4のインクがインク層へインクを供給するインク供給口から逆流しないようにし、インク層の容積を減少させるための機構をもち、キャッピング時にキャッピング材をインクが押しいれることを可能にし、インク層の容積を減少させる量をそれぞれの規制板の穴から押しだされるインクの量の全体量よりも多くしたことにより、インク出射口をインクで覆ってしまうようになり、乾燥による出射口部のインク粘度upによる出射口の目詰まりを防止することができるのである。
【0038】
図9ないし図10は本発明の第2実施形態を示す。
【0039】
図9は、前述した図1と同じように図4を横からみた図であり、またキャッピング材は奥行き方向に円筒上になっている場合を示す。
【0040】
これを詳述すると、キャッピング材1は軟らかく規制板3の穴2から押しだされたインクによりへこみインクを保持する。また、表面は撥インク処理されており、インクは付着することはなく、また規制板3に押し付けられた場合にはそのすきまからインクが漏れることがないように強く押さえつけられている。
【0041】
印字終了時にキャッピング材1を図示されていない機構により規制板の穴2をふさぐように液面規制板3に密着させる。インク入り口32はインク層4からインクが出て行かないようにインクの流れは一方通行になっている。
【0042】
図示されていないインク層圧縮機構によりインク層が圧縮され規制板穴2からインクが出てキャッピング材をへこませてそのへこみ部分にインクが充満する。この状態でインク穴には空気が存在せず、インク穴のインク粘度上昇は防げる。
【0043】
次に、印字をする場合には、インク入り口32からインクをいれつつキャッピング材1を回転させ最初にキャッピング材に進入していたインクを外に移動させる。完全にキャッピング材の中のインクが入れ替わったところでインク注入をやめ、インク容積を元にもどす。このときキャッピング材にはいっていたインクはインク層へもどるが、初期にキャッピング材にはいっていたインクは周囲の異物とともに規制板の穴周辺から取り除かれている。(図9、図10、図11参照)
【0044】
なお、図10中、33は押し出されたインク、34は取り除かれたインク、35は取り除かれたインクと同調を供給する状態、36はインク層容積をもとにもどし、新たに押しだされたインクをインク層へもどす状態を示す。
【0045】
インク層容積圧縮機構5の動き31により圧縮される容積V1はそれぞれのインク穴表面からインクが押し出す量v2としたときに、穴の個数nのとき、v1≧v2×nを満たすように設定されている。これにより、確実に全穴からインクを必要量押し出すことが可能となるのである。
【0046】
規制板の穴の断面積をsとし、規制板の厚さをdとしたときに、v2≧s×dを満たすように設定する。これにより、規制板の穴のインクは全て取り除かれる。また、逆流防止機構のついたインク入り口からのインク注入量v3/秒は、穴の円周方向の長さをL、キャッピング材の回転速度をcとしたときにv3≧v1/(L/c)を満たす。
【0047】
さらに、キャッピング解除時には、キャッピング材の回転にあわせインク供給口からインクを供給するようにしたことにより、キャッピング材中に押し入っているインクをインク層に戻ることなく外部へ排除することが可能となり、これにより規制板の穴(出射口)付近の異物をも取り除くことができるのである。
【0048】
なお、この第2実施形態では、キャッピング材を回転し、キャッピング材に入っているインクを外部へ排出するときにインク供給口からインクを供給し、インク層の内圧を変えることなく、キャッピング材中のインクを外部へ排出するようにしたが、これに限定されず、インク供給口からインクを供給し内圧を維持する代わりに、図12、図13に示すように、インク層圧縮機構を利用し、外部へ排出される分と同等の容積分インク層を小さくすることによって、インク層内圧を維持してもよい。
【0049】
なお、図12中、37は取り除かれたインクと同量分容積を減少させる状態、38はインク層容積をもとにもどし、新たに押しだされたインクをインク層へもどす状態を示す。
【0050】
また、図14、図15に示すように、インク供給口からのインク供給もせず、インク層の容積の減少もせず、簡易的にはキャッピング材を回転するだけでもよい。このとき、外部に排出されたインク分だけ内圧が下がるが、完全にキャピング材中のインクが排出されるまでは、内圧によりインク圧力は次第に弱まっていくがキャッピング材方向へ向いているために、ほとんどの異物は外部へ排出される。このとき、インク層を印字時の状態に拡張するときインク供給口から外部に排出したインクと同量を買う超速度に応じて供給するとよい。
【0051】
なお、図14中、39は外部へ排出したインクと同量をインク層容積を印字時にもどす速度に応じてインク供給口からインクを供給することを示している。
【0052】
さらに、ヘッドの構造としても、図16(a)に示すように、液剤が伝播材の場合であっても、図16(b)に示すように、超音波伝播材がある場合であっても適用可能であることは言うまでもない。
【0053】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、液滴飛翔装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る液滴飛翔装置の第1実施形態を示し、(a),(b)は概略断面図およびその動作説明図である。
【図2】本発明に係る液滴飛翔装置において、(a),(b)はヘッドの概略構成を示す概略図である。
【図3】本発明に係る液滴飛翔装置において、ヘッド構造の概略図である。
【図4】本発明に係る液滴飛翔装置において、(a),(b)はキャッピング材の概略図である。
【図5】本発明に係る液滴飛翔装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明に係る液滴飛翔装置の変形例を示し、(a),(b)は概略断面図およびその動作説明図である。
【図7】キャッピング材の変形例を示す図である。
【図8】(a),(b)はキャッピング材の動作を説明する説明図である。
【図9】本発明に係る液滴飛翔装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
【図10】図9の動作を(a),(b),(c)に示す動作説明図である。
【図11】図9、図10の液滴飛翔装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】第2実施形態の変形例を示し、(a),(b),(c)はその動作説明図である。
【図13】図12の動きを説明するフローチャートである。
【図14】第2実施形態のさらなる変形例を示し、(a),(b),(c)はその動きを説明する動作説明図である。
【図15】図14の動きを説明するフローチャートである。
【図16】(a),(b)は本発明の変形例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…キャッピング材、2…規制板の穴、3…液面規制板、4…インク層、5…インク層容積圧縮機構、6…基材、7…超音波発生材、8…飛び出したインク、11…出射口、21…キャッピング基材、22…第1軟性ゴム材、23…第2軟性ゴム材、25…キャッピング基材、26,27…空隙、28…規制穴。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、
前記キャッピング材により前記規制板の穴がキャッピングされた後に、前記インク層の容積を減少させるべく前記容積可変手段を動作させ、
非キャッピング時、前記容積可変手段が前記インク層の容積をもとに戻した後に、キャッピング材を前記規制板から離間すべく制御することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項2】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、
前記制御手段は、
キャッピング時前記容積可変手段による容積減縮動作により所定量のインクを前記穴から溢出させるとともに、前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記容積可変手段による容積減縮動作を停止することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項3】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、
前記制御手段は、
キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項4】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、
前記制御手段は、
キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記インク供給手段からのインク供給を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項1】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、
前記キャッピング材により前記規制板の穴がキャッピングされた後に、前記インク層の容積を減少させるべく前記容積可変手段を動作させ、
非キャッピング時、前記容積可変手段が前記インク層の容積をもとに戻した後に、キャッピング材を前記規制板から離間すべく制御することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項2】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、
前記制御手段は、
キャッピング時前記容積可変手段による容積減縮動作により所定量のインクを前記穴から溢出させるとともに、前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記容積可変手段による容積減縮動作を停止することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項3】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、
前記制御手段は、
キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする液滴飛翔装置。
【請求項4】
圧電材からなる超音波生成部と超音波伝播する伝播部をかねたインク層と、インク出射用の穴を有し前記インク層の液厚を規制する規制板と、記録を行わないキャッピング時に前記規制板の穴を塞ぐキャッピング材とからなる音響放射圧液滴飛翔装置において、
インクタンクから前記インク層への片方向のみのインク流れを可能にする逆流防止機構が設けられインクを前記インク層に供給するインク供給手段と、
前記インク層の容積を変更可能にする容積可変手段と、
前記容積可変手段、前記キャッピング材の動作及び前記インク供給手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記キャッピング材は、円筒形状を成すとともに該円筒の軸を中心に回転可能に支持され前記穴から溢出するインクを内部に保持可能な柔軟表面を有し、
前記制御手段は、
キャッピング時前記キャッピング材に保持されたインクが前記キャッピング材の回転によりインク層外へ除去された時点で、前記キャッピング材の回転と前記インク供給手段からのインク供給を停止し、その後前記容積可変手段により前記インク層の容積を印字時の状態に戻すよう制御することを特徴とする液滴飛翔装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−285976(P2009−285976A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140702(P2008−140702)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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