説明

液状物吐出装置及び方法

【課題】高粘度の液状物であっても微少量だけ高速に吐出することを連続して実行できる液状物吐出装置を提供する。
【解決手段】筒状容器6、ニードル31およびアクチュエータ10を基本構成要素とする液状物吐出装置1において、筐体60が空圧を加えられる密閉構造であり、筒状容器6は流路制御弁73を有し、ニードルを往復動させるアクチュエータは変位拡大機構11が付加され、ニードルの往復動軌跡と平行にリニアガイド機構20が配置され、歪ゲージセンサ33がニードル部に配置された液状物吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物を吐出するための液状物吐出装置の塗布速度を向上させる機構に関する。本発明は、高速にニードルを往復動させたときに空圧の補助を得て液状物を確実かつ正確にニードル先端に補充する機構に関する。本発明は、上記液状物吐出装置を利用するための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
液状物を吐出できる装置は、近年カラーフィルタリペア、回路パターン描画及びリペア、半田/接着剤塗布、マスク/薄膜形成、LED蛍光体塗布、バイオ分野での分注/スポッター、グリス/オイル充填、インカーマーキング等の用途において利用されている。液状物吐出装置とは一般にディスペンサと呼ばれ、ノズル先端の微細孔から高圧で液状物を吐き出させる装置がある。また、これとは別の方式でニードル先端に液状物を付着させ、その液状物を被付着物に転写する装置はニードル式ディスペンサと呼ばれ、その重要性が益々注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記装置の中で特にニードル式ディスペンサにおいて、液晶パネル製造及び先端電子部品製造への生産時間短縮に伴い、液状物吐出の高速化を図り、生産性を向上させることが懸案になっている。
【0004】
液状物吐出に要する往復動時間が長ければ、液状物吐出装置の使用台数を増設する必要があり、生産コストを増大させることに繋がる。
【0005】
また高速化要求のみならず、往復動中に液状物吐出装置中のニードルが湾曲しないこと、歪み、撓み、捻れを伴わずにより真っ直ぐに正確に直線往復動すること、塗布物即ち種々の粘度である液状物が適量かつ適確にニードル先端に一時付着し被付着物に迄運ばれること、また最終的に塗布された塗布物の形状、寸法、密着度等にまで、動作の正確さと質の向上への期待が益々増大されている。
【0006】
従来、高粘度の液状物を連続して一定量ずつ吐出することは困難であった。一般のディスペンサでは塗布液状物は空圧により押し出されるが、その量、ばらつきは空気の圧力制御の正確さに依存する。空圧を正確に制御するのは困難であり、また温度変化等により変動も多く見られる。しかし、製造現場では高粘度の液状物も多く用いられており、これらの液状物塗布に対する種々の要求が多くなっている。
【0007】
ニードル式ディスペンサであっても、ニードルが高速に往復動したときに液状物がニードルの動きに追従できないために、ニードル先端に的確に適量だけ補充することは困難であった。ニードルにより液状物を被付着物に転写する方式の例として特許文献1(図1)が示されているが、実際には図2に示すように液状物中をニードルが摺動すると液状物がニードルに引きずられる。これにより、ニードル先端に空隙が生じ、ニードル先端に液状物が補充されない現象がおこる。
【特許文献1】特開2001-46062号公報
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、高粘度の液状物であっても微少量だけ高速に吐出することを連続して実行できる液状物吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかる液状物吐出装置は、液状物吐出装置の、少なくとも筒状容器、ニードルおよびアクチュエータを含む筐体を密閉構造にすることにより内部圧力を保ち、筐体に設けられた空気孔より挿入される空気の圧力でニードルの往復摺動時に液状物へ圧力を加わり、液状物が確実にニードル先端部に供給され、ニードルにより吐出されることで被付着物へと運搬される。特にニードルの往復摺動速度が速くなるにつれ筒状容器下端部より空気が侵入するようになり空隙が生じる。これによりニードル先端に液の留まる量が減少し、本来のディスペンサ機能が減退する現象が存在する。この欠点を補うために液状物吐出装置の動作部分を含む筐体を密閉構造とし、先端への液状物の供給量を確保し質及び量共に満足する塗布を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる液状物吐出装置は、液状物を保持する筒状容器に流路制御弁を配置することで、空圧による補助と共に液状物をニードル先端に安定供給することが可能となる。ニードルが筒状容器へ収納される瞬間に筒状容器の微細孔を流路制御弁にて防ぐことで、空気の混入を防ぐ。
【0011】
本発明の第3の態様にかかる液状物吐出装置は、変位拡大機構を利用することにより微少な圧電アクチュエータの動きをより大きな動作に導く。変位拡大機構付き圧電アクチュエータの一例平面図を図3に示す。例えば特許文献2に示されるような、変位拡大機構付き圧電アクチュエータは精密機械分野、例えば初期のプリンタに採用され以降その他の機器に利用されている。変位拡大機構付き圧電アクチュエータを液状物吐出装置のニードルを駆動させるために適用することによりニードルの大きな往復動を確保しながら推進速度をより速くする結果となる。
【特許文献2】特開2008-99399号公報
【0012】
本発明の第4の態様にかかる液状物吐出装置は、リニアガイドは一方向左右にガイドされることにより曲がり、歪み、撓み、捻れ等を伴わずにより真っ直ぐに正確に直線往復動可能となる。このリニアガイドを液状物吐出装置のニードルのガイドとして採用しニードルが安定した往復動を行うことを保証する。
【0013】
また、リニアガイドの使用によりニードルの不必要な動きが拘束されるために、ニードルの交換が容易になる。
【0014】
本発明の第5の態様にかかる液状物吐出装置は、歪ゲージセンサは板材、棒材の伸びと捩れを検知検出するものであるが、該センサを液状物吐出装置のニードル部に適用することにより、ニードルの万が一の歪み、撓み、捻れ現象を検知し、往復動により被付着物への衝突を回避しニードル先端の破損防止と被付着物の破損防止が可能となる。
【0015】
本発明の第6の態様にかかる液状物吐出方法は、歪ゲージセンサの出力はアンプにより増幅され、制御装置へ帰還される。ニードルが被付着物を突くなどして、ニードルに大きな力が加わった場合にもたらされる歪ゲージセンサ出力の変化を検知し、ニードルの往復動を停止させる方法を採用することにより、ニードルの万が一の歪み、撓み、捻れ現象を防ぐことに役立つ。
【0016】
本発明の第7の態様にかかる液状物吐出方法は、空圧補助をするポンプと、液状物を保存するシリンジと、筒状容器内の液状物の量を検知する液面センサと、上記ポンプに制御指令を出す制御本体部と、よりなる液状物吐出装置である。本液状物吐出装置を長時間にわたり連続的に駆動するには、筒状容器内の液状物の量が途切れることなく常に一定量を蓄えておく必要があり、上記容器内の液状物の量を監視し、量が減少すれば多量の液状物を保持しているシリンジから供給することで、筒状容器内の液状物の量を一定量に蓄えられる。
【0017】
本発明の第8の態様にかかる液状物吐出方法は、本液状物吐出装置を駆動するには、本体密閉構造内へ圧縮空気を送入するポンプ、ニードルを往復動させる駆動制御部、ポンプ及び駆動制御部に制御指令を出す制御本体部より構成される。駆動制御部の動作が最大値に達した後、減少に転じたあるタイミングでポンプを動作させ、空圧補助を加えることでニードル先端に付着する液量の増減を制御すること可能であることが解った。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液状物吐出装置の筐体内部の圧力を調整することで、粘度に関係なく液状物が安定してニードル先端に供給される。液状物は高速駆動が可能なアクチュエータにて駆動されたニードルによって瞬時に被付着物へ転写される。その結果本発明によって、低粘度から高粘度までの幅広い粘度範囲の液状物を極微少量だけ高速に安定して吐出できる液状物吐出装置を提供できる。
【0019】
少なくとも吐出する液状物を保持するための筒状容器と、該筒状容器内に往復動可能に配置されたニードルと、該ニードルを往復動させるアクチュエータよりなる液状物吐出装置において、上記筒状容器、上記ニードルおよび上記アクチュエータを内部に密閉する筐体、該筐体に設けられた空気孔とより成る本発明液状物吐出装置により、該空気孔より挿入される空気の圧力によって液状物を押し出すことを可能にする。
【0020】
上記液状物吐出装置において、上記液状物を保持する上記筒状容器に流路制御弁を配置することにより往復動するニードル先端部に空隙を伴わないことを可能にする。
【0021】
上記液状物吐出装置において、上記アクチュエータと変位拡大機構で構成し、上記ニードルを往復動させることにより、着実な上記ニードルの往復動を可能にする。
【0022】
上記液状物吐出装置において、上記ニードルの往復動軌跡と平行にリニアガイド機構を配置し上記ニードルの軸方向と平行に上記ニードルを往復動させることにより真っ直ぐなニードル往復動を可能にする。
【0023】
上記液状物吐出装置において、歪ゲージセンサを上記ニードル部に配置し上記ニードルの歪み、撓み、捻れ現象の少なくとも1つを検知することを可能にする。
【0024】
上記液状物吐出装置において、上記歪ゲージセンサの電気信号を増幅し、増幅されたアンプの出力を上記ニードルを駆動させる上記変位拡大機構付きアクチュエータへ指令を送る制御装置に帰還し、上記ニードルに歪み、撓み、捻れ現象の少なくとも1つの現象が発生した場合に変化する上記電気信号を検出し、上記制御装置から上記変位拡大機構付きアクチュエータへの指令を停止もしくはゼロにし、ニードルの歪み、撓み、捻れ現象の少なくとも1つを防止する方法を可能にする。
【0025】
液状物吐出装置に空圧補助をするポンプと、液状物を保存するシリンダと、筒状容器内の液状物の量を検知する液面センサと、上記ポンプに制御指令を出す制御本体部と、よりなる液状物を上記シリンダより上記筒状容器へ連続的に供給する装置でおいて、上記液面センサの出力が変化したときに参照値と比べることで上記液状物の現象を判断し、上記ポンプからの圧力により、上記シリンダ内の上記液状物を上記筒状容器内へ送り込むことを可能にする。
【0026】
液状物吐出装置に空圧補助するポンプと、ニードルを往復摺動させる駆動制御部と、上記ポンプ及び該駆動制御部に制御指令を出す制御本体部と、よりなる装置において、上記駆動制御部への電圧信号が最大値より小さくなったときに上記ポンプを動作させることで、ニードル先端に付着する液量の増減を制御することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図4ないし図5は、本発明の一実施例の液状物吐出装置の断面図である。図4は圧電アクチュエータの最収縮時、即ちニードルが筒状容器内に最も収納された状態であり、図5は圧電アクチュエータの最伸長時、即ちニードルが筒状容器より最も突出し被付着物に液状物を転写する状態を示す。
【0028】
図4および図5において、液状物吐出装置1は、液状物7を貯蔵する筒状容器6を備えている。筒状容器6の内部には塗布針ユニット30が挿入されており、当該塗布針ユニット30は止めネジ24によってリニアガイド20のスライダ22に固定されている。リニアガイド20のスライダ22は拡大機構付き圧電アクチュエータ10によって駆動される。
【0029】
筒状容器6は二条ネジ等の構造8により特殊な工具を必要とせずに手動で簡単に着脱が可能である。筒状容器6内側は、取り付け部から先端に行くに従い徐々に細くなるテーパ状である。内側の形状が前記の通りならば外側の形状は問題とならない。この構造により、万一塗布針ユニット30が曲がったとしても確実に下端穴より飛び出ることになる。取り付け部の内径は、たとえば、φ2mmであり、先端部の内径はφ0.2mm程度を用いることができる。
【0030】
筒状容器6の材質としては、例えばポリプロピレンなどの樹脂、ガラス、ステンレスなどの金属を用いることができる。また、ぬれ性を制御するため内部表面に表面処理を行っても良い。
【0031】
液状物吐出装置1の筐体60は密閉構造となっており、内部の圧力を自由に変更できるようになっている。空圧コネクタ50より適度な圧力の空気が送り込まれ、液状物吐出装置1内部の圧力を調整できるようになっている。信号線用のコネクタ53は空気を通さない密閉用のものであり、内部圧力を変化させない構造となっている。
【0032】
また、本発明の液状物吐出装置1において、液状物が安定してニードル先端に流れ込むように圧力を加えるための気体は、空気以外にも希ガス等の容易に化学反応の起こらない気体を用いても良い。
【0033】
変位拡大機構付圧電アクチュエータ10は、大きな電圧を加えるほど大きな変位を示す圧電素子12を駆動源として、変位拡大機構11によってその変位が拡大されて出力されるアクチュエータである。
【0034】
変位拡大機構付圧電アクチュエータ10の変位部分とスライダ22は、例えば、板バネや棒バネなどの位置ずれ吸収機構2を介してリニアガイド20のスライダ22に連結されている。該位置ずれ吸収機構2は該アクチュエータ10の変位方向とスライダ22の動作方向が若干違ったとしても、その違いを吸収することができる。変位拡大機構付圧電アクチュエータ10が伸縮変位すると、その分だけスライダ22と該スライダ22に連結された塗布針ユニット30が往復動をする。
【0035】
変位拡大機構付圧電アクチュエータ10により塗布針ユニット30が下降すると、ニードル31先端が筒状容器6の下端孔から飛び出す。飛び出したニードルの先端についた液状物、ニードル、もしくは両方を被付着物に接触させることで液状物を被付着物に転写する。
【0036】
変位拡大機構付圧電アクチュエータ10は高精度かつ高速に伸縮変位することが可能であり、ニードルの例えば10Hz以上の高速な往復動を実現する。
【0037】
筒状容器6の先端には先端孔を開閉できる流路制御弁73が取り付けられている。流路制御弁73は、アクチュエータ72により筒状容器6の下端孔を開閉する。開閉の動作は、塗布針ユニット30の動作と連携している。
【0038】
リニアガイド20は、塗布針ユニット30を保持すると共にその塗布針ユニット30が真っ直ぐに直線往復動するために取り付けられている。リニアガイド20のレール21は筐体60に固定されている。スライダ22はレール21に対し一方向(図では上下方向)以外の動きは拘束されており、塗布針ユニット30が確実に上下動(往復動)のみを行うことを実現する。
【0039】
さらに、スライダ22により上下方向以外の動作は固定されているため、塗布針ユニット30の交換作業時に止めネジ7を容易に着脱可能にするための効果もある。
【0040】
塗布針ユニット30のニードル31部は、液状物が付着し被付着物まで運ぶものであり、外形が円筒形状、テーパ状、あるいは両方の形状を含んでいてもよい。
【0041】
塗布針ユニット30のニードル31はハウジング32に挿入固定されている。ハウジング32には歪ゲージセンサ33が貼り付けられており塗布針ユニット30もしくはニードル31に歪み、撓み、捻れの少なくとも一つの現象が起こった場合に、歪ゲージセンサ33の出力が変化する。
【0042】
ニードル31の材質としては、樹脂、ガラス、タングステンなどの金属を用いることができる。また、ぬれ性を制御するために、ニードル31端面もしくは側面ないし前記両者へ表面処理を行っても良い。
【0043】
筐体60には液状物7の液面5高さを検出するための液面センサ3が取り付けられている。液面5を正確に検知するために、液面5に浮上し液面5高さに応じてその高さが変化する遮蔽板4が設けられている。液面センサ3は前記遮蔽板4の高さを検知し、液状物7の量が常にある範囲内にあるように制御される。しかし、液面センサ3が液面5高さを直接検知でき、かつ、液状物7の蒸発が問題とならなければ、遮蔽板4は必要としない。液面センサ3は物体との距離を検知できるものであればよく、例えば反射型フォトカプラを使うことができる。
【0044】
筒状容器6内部は、流路9を通してシリンジ40と接続されている。シリンジ40には、筒状容器6より多量の液状物を保持しておくことができる。
【0045】
シリンジ40は、例えば二条ネジ構造にて、接続部42を介して筐体60と接続されており、手動により簡単に取り付けと取り外しが可能である。
【0046】
空気孔45より圧縮空気が送り込まれ、その圧力によりピストン44が押される。この作用により液状物7が流路9を通って筒状容器6へ送り込まれる。
【0047】
液状物吐出装置1を用いて吐出する液状物7としては、例えば、接着剤や金属ペーストがある。液状物7としての接着剤は、例えば、電子部品を実装する際に一時的に電子部品を基板に仮止めするために用いられる。この接着剤は、熱や光などで硬化するものも含まれる。金属ペーストは、銅や銀などの微少な粒子を液体に混ぜ込んでペースト状にしたものである。また、液状物7は液体に限らず流動性のあるものならば、固体等を含んでいてもよい。
【0048】
吐出される液状物7は、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下においてE型粘度計によって測定される粘度に対して、回転数1rpmにおける粘度が1〜500,000cPの範囲内の値となる液状物であってもよい。
【0049】
図6は制御系を含めた液状物吐出装置1の概略構成図である。図7は液状物吐出装置1の制御系を含めたブロック図である。図1ないし図3、図6、図7を参照して全体の構成を説明する。変位拡大機構付き圧電アクチュエータ10を動作させる信号は制御装置200より出力され、アンプ104にて出力が増幅された後、変位拡大機構付き圧電アクチュエータ10へ送られ塗布針ユニット30を往復動させる。流路制御弁ユニット70を動作させる信号は制御装置200より直接流路制御弁ユニット70へ送られ弁の開閉を行う。ニードルの歪み等を検出する歪ゲージセンサ33の出力はアンプ109により増幅され、制御装置200に入力される。液面センサの出力はケーブル108により制御装置200に入力される。ポンプ105からの圧縮空気は、途中2方向に分岐され、そのうち一方は電磁弁102を経由して筐体60に入力され液状物7の押し出し補助として利用される。電磁弁102の開放と封止は制御装置200からの信号で行われる。圧力はレギュレータ106により調整される。もう一方の圧縮空気は、電磁弁103を経由してシリンジ40に入力され、液状物7をシリンジ40から筒状容器6へ供給するために使われる。電磁弁103の開放と封止は制御装置200からの信号で行われる。圧力はレギュレータ107により調整される。
【0050】
図2は液状物吐出装置1において塗布針ユニット30が高速に伸縮したときに発生する空隙の問題を示した詳細図である。図2(a)に示すように塗布針ユニット30が伸長した状態から縮小した状態になると、図2(b)に示すように空隙300が生じる。この現象は、液状物の粘度が高いほど、また塗布針ユニット30の動作速度が速いほど顕著である。空隙が生じた場合には、塗布針ユニット30先端に付着する液状物7の量がばらついてしまい、結果として、液状物7の被付着物への転写量にばらつきを生じることになる。
【0051】
そこで、図8(a)に示すように筒状容器6の上端より圧力を加えることで、液状物7が下方へ押し出され、ニードル先端に液状物が供給されるため上記の問題が解決される。また、図8(b)に示すように、塗布針ユニット30が上昇する際に、流路制御弁73で筒状容器6の下端孔を塞ぐことで空隙の発生を防ぐことができる。
【0052】
液状物吐出装置1内部の圧力の制御による効能を図8および図9を用いて説明する。図8は塗布針ユニット30が高速で往復動したときに筒状容器6内部の液状物7で発生する空隙を本発明による解決した効果を示したものである。図9は本発明を実施するための各信号のタイミングを示したグラフである。
【0053】
図8(a)に示すように、塗布針ユニット30が縮小しているときに圧縮空気を筐体60に送り、その圧力で液状物7が押され塗布針ユニット30先端まで液状物7が移動する。図9(a)に示すように、拡大機構付き圧電アクチュエータ10への印可電圧信号400の変化に合わせて、塗布針ユニット30が再下降点から上昇を始めた時間402後に時間403だけ電磁弁102を開放して、圧縮空気を筐体60へ送ることで液状物7が塗布針ユニット30先端に押し出される。時間403後には電磁弁102を封止し、筐体60への空圧補助を停止させる。時間403が大きいほど、もしくは圧縮空気の圧力が大きいほど、塗布針ユニット30先端に流れ込む液状物7の量は多くなり、結果的に被付着物に転写される量が多くなる。時間402と時間403は液状物7の性状、筒状容器6の形状や性質、塗布針ユニット30の断面積に依存する。
【0054】
一方で、流路制御弁73を制御することで筒状容器6内の空隙発生を防ぐ方法を図8(b)に示してある。図9(b)に示すように、塗布針ユニット30が下降を始めて時間405となったときに流路制御弁73を開放し、筒状容器6の下端孔を開放する。塗布針ユニット30が下端孔から飛び出したのち上昇をはじめ、塗布針ユニット30先端がちょうど筒状容器6の下端孔に達した瞬間に流路制御弁73を封止する。これにより、筒状容器6への空気の入り込みを防ぐことができる。
【0055】
次に、本発明の液状物吐出装置1において、歪ゲージセンサ33の出力を利用して、ニードル31の歪み、撓み、捻れ現象を検知し、ニードル31の破損と被付着物の破損を防ぐ方法について、図7と図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。本実施例では、ニードル31に歪み、撓み、捻れなどの現象が起きると、歪ゲージセンサ33の出力が増大すると設定されている場合について説明する。
【0056】
まず、ステップP1において歪検出部202からセンサアンプ109にて増幅された歪ゲージセンサ33の出力が読み込まれる。歪ゲージセンサ33の出力を読み込むタイミングは、ニードルが往復運動している間や、停止しているとき、もしくはその両方であってもよい。
【0057】
次に、参照値の読み込みを行う(ステップP2)。参照値は、制御装置200の記憶部201bに保存されており、いつでも読み込みができる状態にあるものとする。また、この参照値はニードル31の条件などにより変更することが可能である。
【0058】
次に、制御本体部201内で歪ゲージセンサ33の出力と前記参照値の比較を行う(ステップP3)。センサ出力が参照値より大きい場合、ニードル31に歪み、撓み、捻れ現象が発生していることを意味し、塗布針ユニット30の停止が必要である。この場合、ステップP4に進む。センサ出力が参照値より小さい場合、ニードル31に歪み、撓み、捻れ現象が発生しておらず正常である。この場合、処理を行わずにステップP1からの処理が繰り返される。
【0059】
ステップP4では、駆動制御部203を通して変位拡大機構付きアクチュエータ10の変位を小さくする指令を送る。もしくは、そのまま変位を停止する動作としてもよい。この後、ステップP1に処理が戻る。
【0060】
次に、本発明の液状物吐出装置1における液状物7の量を筒状容器6内にほぼ一定量保持するために、量が減少すると自動的に液状物7がシリンジ40より供給される動作について、図7と図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態では、液状物7の量が減少すると液面センサ3の出力が減少すると設定されている場合について説明する。
【0061】
まず、ステップS1において液面センサ3の出力が読み込まれる。液面センサ3の出力を読み込むタイミングは、ニードルが往復運動している間や、停止している間や、もしくはその両方のときでもよい。
【0062】
参照値の読み込みを行う(ステップS2)。参照値は、制御装置のメモリに保存されており、いつでも読み込みができる状態にあるものとする。この参照値は、筒状容器6に溜めておく液状物7の量を決定する値であり自由に変更できるものとする。
【0063】
次に、制御装置内で前記液面センサ出力と前記参照値の比較を行う(ステップ3)。センサ出力が参照値より小さい場合、筒状容器6内の液状物7の量が減少していることを意味し、シリンジ40から筒状容器6へ液状物7の供給が必要である。この場合、ステップS4に進む。センサ出力が参照値より小さくない場合、筒状容器6内の液状物7が十分にあるために、液状物7の供給は必要としない。この場合、処理を行わずにステップS1からの処理が繰り返される。
【0064】
ステップS4では、電磁弁103を開放しポンプ105からの圧縮空気をシリンジ40に送り、シリンジ40内の液状物7を押し出して筒状容器6に供給する。
【0065】
ステップS5では予め設定された電磁弁103の開放時間だけ待ち時間を設け開放し続ける。シリンジ40から筒状容器6へ送り込まれる液状物7の量は、上記待ち時間と空圧レギュレータ107にて設定される空圧によって決定される。例えば、空圧0.1MPaで20msの電磁弁開放を行った場合、0.001ccの液状物供給が可能である。待ち時間後にステップS6で電磁弁を封止し、シリンジ40から筒状容器6への液状物7の供給を停止させる。この後、ステップS1に戻り処理が繰り返される。
【0066】
上記実施形態では、処理の一連の流れを連続的に示したが、この繰返し処理を行うタイミングや回数に制限はなく、制御装置200の負荷が小さいときに行うのが望ましい。
【0067】
以上述べたように、本実施例に係る液状物吐出装置1によれば、液状物7の粘度によらず高速に液状物を吐出することが可能になると共に、液状物を連続して供給できるため長時間にわたって安定した塗布を実現することができる。
【0068】
本発明の液状物吐出装置1において、液状物を貯留するシリンジ40、液状物搬送経路9、筒状容器6等が、冷却、保温、加熱できるような装置を付加したものであってもよい。
【0069】
密閉構造内圧力を負圧にすることにより、筒状容器6からの液状物7の不必要なダレを制御することができる。
【0070】
次に、図12ないし図13を参照して、液状物吐出装置1の具体的な利用例について説明する。図12ないし図13は、液状物吐出装置1の具体的な利用例を説明するための斜視図である。
【0071】
図12は、基板502に液状物7を塗布する作業を示している。基板502上に一定間隔ないし任意の位置へ液状物吐出装置1を用いて液状物7を塗布する。基板502と液状物吐出装置1の相対的な位置を移動させる手段として、基板502のみを動かしてもよく、液状物吐出装置1のみを動かしてもよく、また基板502と液状物吐出装置1ともに移動させても良い。
【0072】
図13は、部品1つ1つに液状物7を塗布する作業を示している。例えば、ベルトコンベアのようなテーブル505上にならべられた電子部品503が順次送られており、その一箇所にて電子部品503へ液状物7を塗布する様子を示している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】筒状容器中をニードルが往復摺動する従来例である。
【図2】本発明により改善しようとする現象、即ちニードル先端に空隙が生じニードル先端に液状物が補充されない状態を示す詳細図である。
【図3】変位拡大機構付きアクチュエータの一例である。
【図4】ニードルが筒状容器内に最も収納された状態での本発明の一実施例断面図である。
【図5】ニードルが筒状容器より最も突出した状態での本発明の一実施例断面図である。
【図6】本発明の制御系を含めた液状物吐出装置の概略構成図である。
【図7】本発明の液状物吐出装置の制御系を含めたブロック図である。
【図8】本発明により液状物が安定して塗布針先端に供給される詳細図である。
【図9】図5にした機能を実現するための信号タイミング図である。
【図10】本発明の一実施例に係るフォローチャートである。
【図11】本発明の一 実施例に係るフォローチャートである。
【図12】本発明の一実施例に係る液状物吐出装置を用いた電子装置の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【図13】図3に示した本発明の他の実施例に係る液状物吐出装置を用いた電子装置の製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 液状物吐出装置
3 液面センサ
4 遮蔽板
5 液面
6 筒状容器
7 液状物
10 拡大機構付き圧電アクチュエータ
11 変位拡大機構
12 圧電素子
14 被付着物
20 リニアガイド
30 塗布針ユニット
31 ニードル
33 歪ゲージセンサ
40 シリンジ
45 空気孔
50 空圧コネクタ
60 筐体
70 流路制御弁ユニット
73 流路制御弁
102 電磁弁
103 電磁弁
104 アンプ
105 ポンプ
106 レギュレータ
107 空圧レギュレータ
109 センサアンプ
200 制御装置
201 制御本体部
201a 主制御部
201b 記憶部
201c 判定部
202 歪検出部
203 駆動制御部
204 駆動制御部
205 電磁弁制御部
206 液面検出部
207 電磁弁制御部
208 通信部
209 外部トリガ
300 空隙
400 電圧信号
401 電磁弁駆動パルス
402 時間
403 時間
404 流路弁駆動パルス
405 時間
406 時間
503 電子部品
505 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも吐出する液状物を保持するための筒状容器と、該筒状容器内に往復動可能に配置されたニードルと、該ニードルを往復動させるアクチュエータよりなる液状物吐出装置において、上記筒状容器、上記ニードルおよび上記アクチュエータを内部に密閉する筐体、該筐体に設けられた空気孔とよりなり、該空気孔より挿入される空気の圧力によって液状物を押し出すことを特徴とする液状物吐出装置。
【請求項2】
上記液状物を保持する上記筒状容器に流路制御弁を配置することにより往復動するニードル先端部に空隙を伴わない液状物を供給することを特徴とする、請求項1における液状物吐出装置。
【請求項3】
上記アクチュエータと変位拡大機構で構成し、上記ニードルを往復動させることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一つの液状物吐出装置。
【請求項4】
上記ニードルの往復動軌跡と平行にリニアガイド機構を配置し上記ニードルの軸方向と平行に上記ニードルを往復動させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの液状物吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つにおいて、歪ゲージセンサを上記ニードル部に配置し上記ニードルの歪み、撓み、捻れ現象の少なくとも1つを検知することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの液状物吐出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの液状物吐出装置において、上記歪ゲージセンサの電気信号を増幅し、増幅されたアンプの出力を上記ニードルを駆動させる上記変位拡大機構付きアクチュエータへ指令を送る制御装置に帰還し、上記ニードルに歪み、撓み、捻れ現象の少なくとも1つの現象が発生した場合に変化する上記電気信号を検出し、上記制御装置から上記変位拡大機構付きアクチュエータへの指令を停止もしくはゼロにし、ニードルの歪み、撓み、捻れ現象の少なくとも1つを防止する方法。
【請求項7】
空圧補助をするポンプと、液状物を保存するシリンジと、筒状容器内の液状物の量を検知する液面センサと、上記ポンプに制御指令を出す制御本体部と、よりなる液状物吐出装置であって、上記液面センサの出力が変化したときに参照値と比べることで上記液状物の現象を判断し、上記ポンプからの圧力により、上記シリンジ内の上記液状物を上記筒状容器内へ送り込むことができる、液状物吐出の方法。
【請求項8】
液状物吐出装置に空圧補助するポンプと、ニードルを往復摺動させる駆動制御部と、上記ポンプ及び該駆動制御部に制御指令を出す制御本体部と、よりなる装置であって、
上記駆動制御部への電圧信号が最大値より小さくなったときに上記ポンプを動作させることで、ニードル先端に付着する液量の増減を制御することができる、液状物吐出の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−173029(P2011−173029A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208312(P2008−208312)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(505246066)株式会社アプライド・マイクロシステム (7)
【Fターム(参考)】