説明

液状組成物、抵抗体、抵抗体素子及び配線板

【課題】 インクジェット印刷法を用いる場合にも、基材表面への良好な印字を安定的に実現することが可能であり、かつ、体積抵抗率の経時変化が十分に小さい抵抗体形成用インクを提供すること。
【解決手段】 体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂と、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子と、分散剤と、を含有する液状組成物であって、液状組成物中の全液体成分の15〜35質量%が、前記分散剤を溶解可能な溶剤から成り、25℃で前記溶剤100質量部と前記分散剤30質量部とを混合し、得られる混合物を、30日間、25℃で放置した後、目開き20μmのメッシュで濾過した場合に、濾別される前記分散剤の量が、前記混合物中の前記分散剤の含有量の1質量%未満である液状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物、抵抗体、抵抗体素子及び配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層印刷配線板は、エッチングにより回路を形成した片面印刷配線板又は両面印刷配線板を、ガラス織布プリプレグ等の接着層を介して複数枚プレス積層し、得られる積層体にドリル、レーザー等で孔を開け、更に、異なる層の導電層同士をめっき等で電気的に接続することによって製造されていた。
【0003】
このような従来の製造方法に代わる多層印刷配線板の製造方法として、近年、例えば、特許文献1では、インクジェット印刷法による配線パターンの形成方法が提案されている。また、特許文献2では、オフセット印刷法による印刷配線板の製造方法が提案されている。また、特許文献3では、基材上に、導体層と、孔のある絶縁層と、を印刷法で形成することによって、多層印刷配線板を製造する方法が提案されている。
【0004】
これらの製造方法によれば、プレス設備、めっき設備等の大規模な設備を用いずに、多層印刷配線板を製造することが可能となる。また、導体インクや絶縁体インクを必要な箇所にのみ印刷することができるため、材料の使用効率が非常に高いという利点もある。
【0005】
ところで、近年、電子機器の小型化・軽量化の要求に伴って、配線板の薄型化・高密度化の要求が高まっている。また、特に情報通信分野や情報処理分野の電子機器については、高機能化の要求に伴って、部品を搭載するのに十分な実装面積を確保する必要性が高まっている。これまで、十分な実装面積を確保するために、表面実装部品の微小化、端子の狭ピッチ化、基材のファインパターン化、部品を基材表面に高密度に実装するSMT(表面実装技術)化、それらを高度化したAdvanced SMT化、等が検討されてきた。
【0006】
しかしながら、高機能化の要求に伴って、能動素子(チップ部品)の部品数が増加すると、更に、電気的調整を行う受動素子(キャパシタ、インダクタ、レジスタ)の部品数も増加することになった。その結果、受動素子の実装面積が全体の半分以上を占める場合もあり、電子機器の小型化及び高機能化の障害となっていた。
【0007】
そこで、受動素子を基材と一体化させる技術の開発が進められている。このような技術には、表面実装部品と配線板との間の電気的接続に使用されていたはんだ接合部がなくなり、接続信頼性が向上すること、回路設計の自由度が増すこと、受動素子を所望の位置に形成し、配線長を短縮することができるので、寄生容量が低減し、電気特性が向上すること、表面実装の必要がなくなり、低コスト化が可能になること、等の効果が期待されている。
【0008】
このような技術としては、例えば、比較的抵抗の高い金属をめっきして、基材上に抵抗体を形成する技術が挙げられる(特許文献4及び5参照)。
【0009】
また、厚膜抵抗ペーストを用いて、スクリーン印刷法により抵抗体を形成する技術が挙げられる。厚膜抵抗ペーストは、微粉末(導電相形成用微粉末及びガラス相形成用微粉末)、樹脂、溶剤、分散剤等を、重力による成分の分離が生じなくなるまでロールミル等で混練、分散させたものである(非特許文献1参照)。
【0010】
また、インクジェット印刷法により、めっき、エッチング等の工程を経ずに基材上に抵抗体を形成する技術が挙げられる(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−80694号公報
【特許文献2】特開平11−58921号公報
【特許文献3】特開2003−110242号公報
【特許文献4】特公昭57−3234号公報
【特許文献5】米国特許第3808576号明細書
【非特許文献1】「ハイブリッド回路用厚膜材料の開発」、英一太著、(株)シーエムシー出版、1988年5月
【非特許文献2】日経エレクトロニクス6/17号、p.67−78(2002)、「機器の小型化の限界をインクジェットで吹き飛ばす」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1に記載のような、インクジェット印刷法を用いて基材上に抵抗体を形成する技術は、基材と一体化した抵抗体を、めっき、エッチング等の工程を要せずに、簡便に形成することが可能であり、また、抵抗体作製の際の環境負荷を低減させることが可能な点で優れている。
【0012】
インクジェット印刷法では、インクジェットヘッドでインクを吐出するので、インクジェットヘッドの目詰まりを防止して、基材表面への良好な印字を安定的に実現するために、インクは、粘度が低く、かつ、含有する粒子の分散粒径が小さいことが要求される。
【0013】
しかしながら、従来、粘度が低く、かつ、粒子の分散粒径が小さい抵抗体形成用インクは、インクジェット印刷法には適しているものの、経時的に体積抵抗率(当該インクから得られる抵抗体の体積抵抗率を意味する。以下同様)が低下するという問題を有していた。
【0014】
そこで、本発明は、インクジェット印刷法を用いる場合にも、基材表面への良好な印字を安定的に実現することが可能であり、かつ、体積抵抗率の経時変化が十分に小さい抵抗体形成用インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、
体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂と、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子と、分散剤と、を含有する液状組成物であって、
液状組成物中の全液体成分の15〜35質量%が、前記分散剤を溶解可能な溶剤から成り、
25℃で前記溶剤100質量部と前記分散剤30質量部とを混合し、得られる混合物を、30日間、25℃で放置した後、目開き20μmのメッシュで濾過した場合に、濾別される前記分散剤の量が、前記混合物中の前記分散剤の含有量の1質量%未満である液状組成物を提供する。
【0016】
本発明の液状組成物は、粘度が十分に低く、かつ、含有する粒子の分散粒径が十分に小さいので、インクジェット印刷法により抵抗体を形成する場合にも、基材表面への良好な印字を安定的に実現することが可能な抵抗体形成用インクとして用いることができる。そして、本発明の液状組成物を抵抗体形成用インクとして用いることにより、インクジェット印刷法を用いる場合にも、基材表面への良好な印字を安定的に実現することが可能となり、基材と一体化した抵抗体を、簡便に、安定的に、かつ環境に大きな負荷を与えることなく形成することが可能となる。また、抵抗体に適した体積抵抗率を有し、微細なパターンを有する抵抗体を基材上に効率的に形成させることが可能となる。
【0017】
また、本発明の液状組成物は、長期間保存しても体積抵抗率の変化が十分に小さい抵抗体形成用インクとして用いることができる。
【0018】
本発明の液状組成物は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以下の溶剤を更に含有するのが好ましい。このような溶剤を更に含有すると、インクジェットヘッドノズルの目詰まり等がより発生しにくくなり、インクジェット印刷法を用いた場合に、基材表面への良好な印字をより安定的に実現することが可能となる。
【0019】
体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子としては、例えば、金、銀、白金、銅、グラファイト、カーボン又はカーボンブラックから成る粒子が挙げられる。導電性粒子は、一種の材料のみから成るものであっても、また、二種以上の材料から成るものであってもよい。
【0020】
上記導電性粒子の平均分散粒径は500nm以下であることが好ましく、また、最大分散粒径は2μm以下であることが好ましい。平均分散粒径が500nmを超えるか、又は、最大分散粒径が2μmを超えると、印字及び抵抗発現の安定性が低下する傾向がある。例えば、インクジェット印刷法を用いた場合に、インクジェットヘッドノズルの目詰まり等が発生し、安定して印刷することが困難になる傾向がある。また、オフセット印刷法を用いた場合に、印刷物にかすれ等が発生する傾向がある。なお、本明細書において、「分散粒径」とは、粒子のブラウン運動による動的光散乱法に基づいて、光子相関法により測定される粒径をいうものとする。
【0021】
また、上記導電性粒子の含有量は、液体成分以外の液状組成物の全成分の合計体積に対して10〜80体積%であることが好ましい。導電性粒子の含有量が10体積%未満であると、抵抗体について所望の体積抵抗率を得ることが困難となる傾向がある。他方、80体積%より多いと、液状組成物の粘度が上昇して印字の安定性が低下したり、抵抗体の強度が低下したりする傾向がある。
【0022】
印字の安定性の低下を抑制するために、本発明の液状組成物は、25℃における粘度が50mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0023】
抵抗体の絶縁信頼性、接続信頼性、耐熱性等の低下を抑制するために、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂の少なくとも一部は熱硬化性樹脂であることが好ましく、当該熱硬化性樹脂の少なくとも一部はエポキシ樹脂であることが好ましい。絶縁性樹脂の少なくとも一部がエポキシ樹脂である場合には、液状組成物に硬化剤を更に含有させる。ここで、抵抗体の耐熱性、接続信頼性等の低下を抑制するために、上記エポキシ樹脂としては、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物のグリシジルエーテル化物が好ましく、また、上記硬化剤としては、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物が好ましい。
【0024】
本発明の液状組成物を印刷法、塗布法等により基材上に付着させた後、液状組成物を加熱すると、液状組成物中の液体成分が除去され、或いは更に、絶縁性樹脂が硬化して、基材上に抵抗体が形成される。すなわち、本発明はまた、本発明の液状組成物を基材上に付着させた後、当該液状組成物を加熱することによって得られる抵抗体を提供する。本発明の抵抗体は、抵抗体に適した体積抵抗率を有するものである。
【0025】
本発明は更に、上記抵抗体を備える抵抗体素子、及び、当該抵抗体素子が基材上に形成された配線板を提供する。これらの抵抗体素子及び配線板は、電子機器の小型化・高機能化に有用である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、インクジェット印刷法を用いる場合にも、基材表面への良好な印字を安定的に実現することが可能であり、かつ、体積抵抗率の経時変化が十分に小さい抵抗体形成用インク、並びに、これを用いて得られる抵抗体、抵抗体素子及び配線板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面中、同一又は同等の要素には同一の符号を付するものとする。
【0028】
(液状組成物)
本発明の液状組成物は、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂と、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子と、分散剤と、を含有するものである。
【0029】
本発明の液状組成物は、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂を含有する。樹脂を含有することにより、液状組成物から抵抗体を作製することが可能となる。また、樹脂の体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上であることにより、抵抗体について所望の体積抵抗率を得ることが容易となる。
【0030】
上記絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられるが、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上であり、導電性粒子のバインダとして働く樹脂であれば特に制限されない。絶縁性樹脂は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、樹脂の体積抵抗率とは、硬化状態の樹脂の体積抵抗率を意味するものとする。
【0031】
抵抗体の絶縁信頼性、接続信頼性、耐熱性等の低下を抑制するために、上記絶縁性樹脂の少なくとも一部は熱硬化性樹脂であることが好ましく、当該熱硬化性樹脂の少なくとも一部はエポキシ樹脂であることが好ましい。絶縁性樹脂の少なくとも一部が熱硬化性樹脂である場合には、モノマー、オリゴマー等を必要に応じて更に含有させ、液状組成物を基材上に付着させた後、加熱処理により液体成分を除去し、当該樹脂を硬化させる。絶縁性樹脂の少なくとも一部がエポキシ樹脂である場合には、液状組成物に硬化剤を更に含有させる。
【0032】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、及びグリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられ、また、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、の縮合物のグリシジルエーテル化物、二官能フェノール化合物のグリシジルエーテル化物、二官能アルコールのグリシジルエーテル化物、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物、及びこれらの水素添加物、ハロゲン化物等が挙げられる。抵抗体の耐熱性及び接続信頼性の低下を抑制するために、エポキシ樹脂としては、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物のグリシジルエーテル化物が好ましい。エポキシ樹脂の分子量に特に制限はなく、また、二種以上のエポキシ樹脂を併用してもよい。
【0033】
上記硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等のアミン類;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸等の酸無水物;イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イミノ基がアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等でマスクされた上述の種々のイミダゾール化合物;ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ポリビニルフェノール等のフェノール化合物;フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、の縮合物;及びこれらのハロゲン化物等が挙げられる。抵抗体の耐熱性及び接続信頼性の低下を抑制するために、硬化剤としては、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物が好ましい。硬化剤の分子量に特に制限はなく、また、二種以上の硬化剤を併用してもよい。
【0034】
上記硬化剤の含有量は、従来採用されている範囲内でよいが、エポキシ当量に対して水酸基当量が0.5〜2.0当量となる量が好ましい。ジシアンジアミドの場合は、エポキシ樹脂100質量部に対して2〜5質量部であることが好ましい。
【0035】
上記絶縁性樹脂の少なくとも一部がエポキシ樹脂である場合には、液状組成物に硬化促進剤を更に含有させてもよい。硬化促進剤としては、イミダゾール化合物(例えば、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、並びに、イミノ基がアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート若しくはメラミンアクリレートでマスクされた上述の種々のイミダゾール化合物)、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
上記硬化促進剤の含有量は、従来採用されている範囲内でよいが、エポキシ樹脂100質量部に対して0.001〜15質量部であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が0.001質量部未満であると、液状組成物の硬化性が不十分になる傾向があり、他方、15質量部を超えると、液状組成物のポットライフが低下する傾向がある。液状組成物の硬化性及びポットライフの点で、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部であることがより好ましい。
【0037】
本発明の液状組成物はまた、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子を含有する。これにより、液状組成物から得られる抵抗体について、所望の体積抵抗率を得ることが容易となる。
【0038】
体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子としては、例えば、金、銀、白金、銅、グラファイト、カーボン又はカーボンブラックから成る粒子が挙げられる。導電性粒子は、一種の材料のみから成るものであっても、また、二種以上の材料から成るものであってもよい。
【0039】
印字及び抵抗発現の安定性の低下を抑制するために、上記導電性粒子の一次粒子径としては、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。また、同様の観点から、導電性粒子の平均分散粒径としては、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。また、同様の観点から、導電性粒子の最大分散粒径としては、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。ここで、分散粒径(平均分散粒径、最大分散粒径)は、粒子のブラウン運動による動的光散乱法に基づいて、光子相関法により測定される。
【0040】
上記導電性粒子の含有量は、液体成分以外の液状組成物の全成分の合計体積に対して10〜80体積%であることが好ましい。導電性粒子の含有量が10体積%未満であると、抵抗体について所望の体積抵抗率を得ることが困難となる傾向がある。他方、80体積%より多いと、液状組成物の粘度が上昇して印字の安定性が低下したり、抵抗体の強度が低下したりする傾向がある。印字の安定性、及び抵抗体の強度の点で、上記導電性粒子の含有量は、液体成分以外の液状組成物の全成分の合計体積に対して10〜70体積%であることがより好ましい。
【0041】
本発明の液状組成物はまた、上記導電性粒子の分散性を向上させることが可能な分散剤を含有する。これにより、導電性粒子の分散粒径(平均分散粒径、最大分散粒径)を低減させることが容易となり、また、導電性粒子の分散状態の安定性が向上する。
【0042】
上記分散剤としては、市販の溶剤型用湿潤分散剤を使用することができる。例えば、導電性粒子としてカーボンブラック粒子を使用する場合、市販の溶剤型用湿潤分散剤の例としては、ビックケミー(BYK−chemie)社のDisperbyk(登録商標)−140(酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液)、Disperbyk(登録商標)−142(顔料に親和性のある基を有する高分子量共重合物のリン酸エステル塩の溶液)、Disperbyk(登録商標)−161、162、163、164、167、170、171、174(いずれも顔料に親和性のあるブロック共重合物)等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の液状組成物において、全液体成分の15〜35質量%は、液状組成物中の分散剤を溶解可能な溶剤から成る。そして、この溶剤は、25℃で溶剤100質量部と分散剤30質量部とを混合し、得られる混合物を、30日間、25℃で放置した後、目開き20μmのメッシュで濾過した場合に、濾別される分散剤の量が、上記混合物中の分散剤の含有量の1質量%未満であるような溶剤である。このような溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等の低沸点(沸点:120〜150℃)の溶剤が挙げられる。
【0044】
分散剤を溶解可能な上記溶剤の含有量が全液体成分の15質量%より少ないか、又は35質量%より多いと、15〜35質量%の場合と比較して、液状組成物の体積抵抗率の経時変化が大きくなる。これは、主として次の理由によるものと考えられる。すなわち、上記溶剤の含有量が全液体成分の15質量%より少ないと、液状組成物中の導電性粒子の凝集が生じやすくなり、その結果、導電性粒子の分散状態の安定性が低下する。他方、上記溶剤の含有量が全液体成分の35質量%より多いと、液状組成物中の分散剤の凝集が生じやすくなり、その結果、やはり導電性粒子の分散状態の安定性が低下する。
【0045】
体積抵抗率の経時変化がより小さく、また、印字の安定性(特にインクジェット吐出性)がより優れた抵抗体形成用インクを得るために、上記溶剤の含有量(全液体成分に占める割合)としては15〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
【0046】
印字の安定性(特にインクジェット吐出性)がより優れた抵抗体形成用インクを得るために、本発明の液状組成物は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以下の溶剤を更に含有するのが好ましい。そのような溶剤としては、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン等が挙げられるが、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以下であり、絶縁性樹脂を溶解又は分散させることが可能な溶剤であれば特に制限されない。上記溶剤は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。抵抗体の体積抵抗率の最適化の観点から、溶剤の25℃における蒸気圧としては、0.005×10〜1.34×10Paが好ましい。蒸気圧が0.005×10Paより小さいと、0.005×10Pa以上の場合と比較して、抵抗体の体積抵抗率が高くなる傾向がある。
【0047】
本発明の液状組成物は、上記溶剤に加えて、25℃における蒸気圧が1.34×10Paより高い溶剤を含有してもよい。そのような溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられるが、25℃における蒸気圧が1.34×10Paより高く、絶縁性樹脂を溶解又は分散させることが可能な溶剤であれば特に制限されない。上記溶剤は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。印刷又は塗布の際の液状組成物の粘度低下や、印刷又は塗布の後の液状組成物の流動を抑制するために、上記溶剤の配合割合は、全液体成分の合計質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0048】
印字の安定性の低下を抑制するために、本発明の液状組成物の25℃における粘度は、好ましくは100mPa・s以下、特に好ましくは50mPa・s以下である。また、液状組成物の25℃における粘度は、好ましくは1mPa・s以上である。
【0049】
体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子の分散粒径(平均分散粒径、最大分散粒径)を低減させるために、液状組成物の状態で、又は粒子と溶剤との混合物の状態で、溶剤中の導電性粒子を分散機等で分散させることが好ましい。分散機としては、らいかい機、3本ロールミル、ビーズミル、サンドミル等を、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、超音波発振器を備えた装置によって導電性粒子を分散させることもできる。分散後、液状組成物中に気泡が発生した場合は、減圧下で放置又は攪拌することによって、気泡を除去することが好ましい。
【0050】
また、導電性粒子の最大分散粒径を2μm(好ましくは1μm)以下にするために、開口径2μm(好ましくは1μm)以下のフィルター等で液状組成物を濾過することが好ましい。これにより、液状組成物の調製の際の歩留まりを向上させることができる。
【0051】
本発明の液状組成物は、上述の成分の他、カップリング剤、イオン補足剤、粘度調整剤、無機絶縁粒子等を適宜含有してもよい。
【0052】
(抵抗体、抵抗体素子及び配線板)
本発明の液状組成物を印刷法、塗布法等により基材上に付着させた後、液状組成物を加熱すると、液状組成物中の液体成分が除去され、或いは更に、絶縁性樹脂が硬化して、基材上に抵抗体が形成される。すなわち、本発明はまた、本発明の液状組成物を基材上に付着させた後、当該液状組成物を加熱することによって得られる抵抗体を提供する。本発明は更に、当該抵抗体を備える抵抗体素子、及び、当該抵抗体素子が基材上に形成された配線板を提供する。
【0053】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る配線板を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿った端面図である。図1及び2に示す配線板1は、板状の基材3と、基材3の一方面上に設けられた抵抗体素子5と、を備えている。抵抗体素子5は、1対の電極を形成している導電体12と、1対の導電体12を電気的に接続するように形成された抵抗体11と、を備えている。抵抗体11の厚さは特に制限されないが、典型的には200nm〜500μmである。
【0054】
抵抗体11は、例えば、本発明の液状組成物を基材3上に導電体12と接するように付着させた後、当該液状組成物を加熱することによって形成させることができる。液状組成物を加熱すると、液状組成物中の液体成分が除去され、或いは更に、絶縁性樹脂が硬化する。すなわち、抵抗体11は、体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂(硬化物)と、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の粒子と、を含有する。抵抗体11を形成させる際の加熱の条件(温度、時間等)は、液体成分が十分に除去され、或いは更に、絶縁性樹脂が十分に硬化するように、液体成分及び樹脂の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0055】
液状組成物を付着させる方法としては、所望の厚さの抵抗体の形成が可能な方法であればよく、公知の印刷法又は塗布法を用いることができる。抵抗体を任意の位置に任意の形状で形成することが容易であること等から、インクジェット印刷法又はオフセット印刷法が好ましい。そして、印刷時に版を必要とせず、簡便に実施できることからインクジェット印刷法が特に好ましい。
【0056】
導電体12は、銅等の導電性材料からなる。導電体12を形成する方法は特に制限されないが、例えば、エッチング、めっき、印刷等が挙げられる。
【0057】
基材3としては、例えば、紙フェノール絶縁板、ガラス/ビスマレイミド絶縁板、ガラス/ポリイミド絶縁板等の絶縁基板;フレキシブル配線板等に用いられるポリイミド、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム;ガラス板等が好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
なお、以下の実施例及び比較例において、液状組成物の粘度は、株式会社エー・アンド・ディー社製小型振動式粘度計CJV5000を用いて25℃で測定した。また、液状組成物中の平均分散粒径及び最大分散粒径は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5型を用いて25℃で測定した。また、体積抵抗率は、三菱化学製ロレスタGPを用いて測定した。
【0060】
また、以下の実施例及び比較例で使用した酢酸ブチル及び分散剤は、下記条件を満たしていた。
条件:25℃で酢酸ブチル100質量部と分散剤30質量部とを混合し、得られる混合物を、30日間、25℃で放置した後、目開き20μmのメッシュで濾過した場合に、濾別される分散剤の量が、混合物中の分散剤の含有量の1質量%未満である。
【0061】
(実施例1)
γ−ブチロラクトン及び酢酸ブチルの混合液中にカーボンブラック粒子が分散したカーボンブラックスラリー(マルコ8162ブラック、株式会社トクシキ製)[カーボンブラック粒子:20質量%、γ−ブチロラクトン:64質量%、酢酸ブチル:9質量%、分散剤:6.8質量%]67.7g、γ−ブチロラクトン17.8g、及び酢酸ブチル8gを混合し、更に、変性ノボラック型エポキシ樹脂「N−865」(大日本インキ化学工業株式会社製)4.0g、ノボラック型フェノール樹脂「VH−4170」(大日本インキ化学工業株式会社製)2.2g、及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール0.3gを混合して、液状組成物を得た。酢酸ブチルの含有量は、液状組成物中の全液体成分の合計質量に対して19質量%である。液状組成物の粘度は11mPa・sであり、液状組成物中のカーボンブラック粒子の平均分散粒径/最大分散粒径は150nm/480nmであった。
【0062】
(実施例2)
γ−ブチロラクトン及び酢酸ブチルの混合液中にカーボンブラック粒子が分散したカーボンブラックスラリー(マルコ8162ブラック、株式会社トクシキ製)[カーボンブラック粒子:20質量%、γ−ブチロラクトン:64質量%、酢酸ブチル:9質量%、分散剤:6.8質量%]67.7g、γ−ブチロラクトン13.8g、及び酢酸ブチル12gを混合し、更に、変性ノボラック型エポキシ樹脂「N−865」(大日本インキ化学工業株式会社製)4.0g、ノボラック型フェノール樹脂「VH−4170」(大日本インキ化学工業株式会社製)2.2g、及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール0.3gを混合して、液状組成物を得た。酢酸ブチルの含有量は、液状組成物中の全液体成分の合計質量に対して24質量%である。液状組成物の粘度は11mPa・sであり、液状組成物中のカーボンブラック粒子の平均分散粒径/最大分散粒径は150nm/480nmであった。
【0063】
(実施例3)
γ−ブチロラクトン及び酢酸ブチルの混合液中にカーボンブラック粒子が分散したカーボンブラックスラリー(マルコ8162ブラック、株式会社トクシキ製)[カーボンブラック粒子:20質量%、γ−ブチロラクトン:64質量%、酢酸ブチル:9質量%、分散剤:6.8質量%]67.7g、γ−ブチロラクトン7.8g、及び酢酸ブチル18gを混合し、更に、変性ノボラック型エポキシ樹脂「N−865」(大日本インキ化学工業株式会社製)4.0g、ノボラック型フェノール樹脂「VH−4170」(大日本インキ化学工業株式会社製)2.2g、及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール0.3gを混合して、液状組成物を得た。酢酸ブチルの含有量は、液状組成物中の全液体成分の合計質量に対して32質量%である。液状組成物の粘度は10mPa・sであり、液状組成物中のカーボンブラック粒子の平均分散粒径/最大分散粒径は150nm/480nmであった。
【0064】
(比較例1)
γ−ブチロラクトン及び酢酸ブチルの混合液中にカーボンブラック粒子が分散したカーボンブラックスラリー(マルコ8162ブラック、株式会社トクシキ製)[カーボンブラック粒子:20質量%、γ−ブチロラクトン:64質量%、酢酸ブチル:9質量%、分散剤:6.8質量%]67.7g、γ−ブチロラクトン25.8gを混合し、更に、変性ノボラック型エポキシ樹脂「N−865」(大日本インキ化学工業株式会社製)4.0g、ノボラック型フェノール樹脂「VH−4170」(大日本インキ化学工業株式会社製)2.2g、及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール0.3gを混合して、液状組成物を得た。酢酸ブチルの含有量は、液状組成物中の全液体成分の合計質量に対して8質量%である。液状組成物の粘度は12mPa・sであり、液状組成物中のカーボンブラック粒子の平均分散粒径/最大分散粒径は150nm/480nmであった。
【0065】
(比較例2)
変性ノボラック型エポキシ樹脂「N−865」(大日本インキ化学工業株式会社製)4.0g、ノボラック型フェノール樹脂「VH−4170」(大日本インキ化学工業株式会社製)2.2g、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール0.3g、カーボンブラック粒子(一次粒子径:16nm)13.5g、及び分散剤(Disperbyk(登録商標)−164、ビックケミー社製)4.6gを、γ−ブチロラクトン45.4g及び酢酸ブチル30.0gの混合液に溶解又は分散させた後、ビーズミルで1時間攪拌して、液状組成物を得た。酢酸ブチルの含有量は、液状組成物中の全液体成分の合計質量に対して40質量%である。液状組成物の粘度は15mPa・sであり、液状組成物中のカーボンブラック粒子の平均分散粒径/最大分散粒径は190nm/480nmであった。
【0066】
(印字性の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2の液状組成物を、インクジェット印刷装置で基材(ガラス板)表面に印字したところ、実施例1〜3及び比較例1〜2の液状組成物は、いずれもインクジェットの連続吐出性が良好であり、インクジェットヘッドの目詰まりを生じることなく、良好に印字することができた。但し、比較例2の液状組成物は、インクジェットの間欠吐出性が不良であった。
【0067】
(体積抵抗率の測定)
実施例1〜3及び比較例1〜2の液状組成物を、調製直後に、インクジェット印刷装置で基材(ガラス板)表面に印刷した後、210℃で1時間加熱することによって、液状組成物中の液体成分を除去し、樹脂を硬化させて、抵抗体(幅:約4.5cm、長さ:約3cm、厚さ:約10μm)を得た。この抵抗体の体積抵抗率ρ(Ω・cm)を測定した。
【0068】
また、液状組成物を5℃で28日間保存した後、上述と同様にして抵抗体(幅:約4.5cm、長さ:約3cm、厚さ:約10μm)を作製し、その体積抵抗率ρ(Ω・cm)を測定して、保存中(28日間)の体積抵抗率の変化率[{(ρ−ρ)/ρ}×100%]を求めた。
【0069】
実施例1〜3及び比較例1〜2の液状組成物について、酢酸ブチルの含有量、調製直後の体積抵抗率、及び保存中(28日間)の体積抵抗率の変化率を下記表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から明らかなように、実施例1〜3及び比較例1〜2の液状組成物のいずれについても、調製直後の体積抵抗率は、抵抗体に適した値であった。しかし、28日間の体積抵抗率の変化率の大きさ(絶対値)は、実施例1〜3の液状組成物では10%以下であったのに対して、比較例1〜2の液状組成物では20%を超えていた。
【0072】
以上の実施例及び比較例により、本発明の液状組成物によれば、インクジェット印刷法を用いる場合にも、基材表面への良好な印字を安定的に実現することが可能になることが示された。また、本発明の液状組成物を基材上に付着させた後、当該液状組成物を加熱することによって得られる抵抗体は、抵抗体に適した体積抵抗率を有することが示された。更に、本発明の液状組成物は、長期間保存しても体積抵抗率の変化が十分に小さいことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の液状組成物、抵抗体、抵抗体素子及び配線板は、電子機器の小型化・高機能化に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る配線板を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った端面図である。
【符号の説明】
【0075】
1…配線板、3…基材、5…抵抗体素子、11…抵抗体、12…導電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積抵抗率が1×1010Ω・cm以上の絶縁性樹脂と、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の導電性粒子と、分散剤と、を含有する液状組成物であって、
液状組成物中の全液体成分の15〜35質量%が、前記分散剤を溶解可能な溶剤から成り、
25℃で前記溶剤100質量部と前記分散剤30質量部とを混合し、得られる混合物を、30日間、25℃で放置した後、目開き20μmのメッシュで濾過した場合に、濾別される前記分散剤の量が、前記混合物中の前記分散剤の含有量の1質量%未満である液状組成物。
【請求項2】
25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以下の溶剤を更に含有する、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記導電性粒子の平均分散粒径が500nm以下であり、前記導電性粒子の最大分散粒径が2μm以下である、請求項1又は2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記導電性粒子の含有量が、当該液状組成物の液体成分以外の全成分の合計体積に対して10〜80体積%である、請求項1〜3のいずれかに一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
25℃における粘度が50mPa・s以下である、請求項1〜4のいずれかに一項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記導電性粒子が、金、銀、白金、銅、グラファイト、カーボン及びカーボンブラックの少なくとも一種から成る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項7】
前記絶縁性樹脂の少なくとも一部が熱硬化性樹脂である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂の少なくとも一部がエポキシ樹脂であり、
硬化剤を更に含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂が、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物のグリシジルエーテル化物である、請求項8に記載の液状組成物。
【請求項10】
前記硬化剤が、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合物である、請求項8又は9に記載の液状組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の液状組成物を基材上に付着させた後、当該液状組成物を加熱することによって得られる抵抗体。
【請求項12】
請求項11に記載の抵抗体を備える抵抗体素子。
【請求項13】
請求項12に記載の抵抗体素子が前記基材上に形成された配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−111095(P2008−111095A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184902(P2007−184902)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】