説明

深絞り成形用共押出フィルム、このフィルムを用いた底材および深絞り成形容器

【課題】 高衝撃強度と良好な成形性と優れた外観性とを併有し、特に、低温衝撃強度が良好である深絞り成形用共押出フィルムを提供する。
【解決手段】 非晶性ポリエステル樹脂層(A)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)層(B)、接着性樹脂層(C)、ポリアミド樹脂層(D)、エチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層(E)、およびシール性樹脂層(F)を有する共押出フィルムであって、前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)、前記PET層(B)、および前記シール性樹脂層(F)からなる群から選ばれる少なくとも1層が着色剤を含有し、前記PET層(B)が非晶性ポリエステル樹脂を含有し、非晶性ポリエステル樹脂およびPETの極限粘度(IV)を、0.64〜0.90dl/gとし、かつフィルム全体の厚み(t)に対する前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)および前記PET層(B)の厚みの合計(a+b)の比〔(a+b)/t〕を、0.75〜0.95とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共押出フィルム、このフィルムを用いた底材および深絞り成形容器に関し、特に、高衝撃強度、良好な成形性および優れた外観性を有する深絞り成形容器として好適な共押出フィルム、このフィルムを用いた底材および深絞り成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
深絞り成形用フィルムの製法としては、一般に接着剤により各層を積層するドライラミネート法と、いずれかの材料を基材として複数の層を同時に積層する押出ラミネート法とが知られている。
【0003】
従来、深絞り成形用フィルムとしては、例えば、厚さ150〜600μmの無定形ポリエステル樹脂からなるシートに、EVOH層、Ny層およびシール層の構成からなる厚さ100μm以下の共押出フィルムを接着させる接着加工法(ドライラミネート法)により作製された、以下の層構成を有するフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
無定形ポリエステルシート//共押出フィルム(EVOH層/Ny層/シール層)
【0004】
上記層構成において、「シール層」とは深絞り成形容器の底材において、蓋材との接合面を構成する層をいう。また「シート」は、共押出複合フィルムとは別途作製されたシート状部材を意味する。また、上記層構成における表記「//」は、その前後に記載されている層がドライラミネート法により接合されていることを、「/」はその前後に記載されている層が共押出法により接合されていることを示している。以下においても同様の表記を使用する。また、「EVOH」はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂を、「Ny」はポリアミド樹脂を意味する。
【特許文献1】特開平11−333994号公報(特許請求の範囲、[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の深絞り成形用フィルムを得る工程における接着加工法では、使用するフィルムの種類によっては、接着工程において層間に気泡が入りやすく層間剥離強度が低下するとともに外観性が損なわれ、かつ残留溶剤により食品の安全性が低下するといった問題があった。また、この方法では、積層工程が複雑化するため、生産性が悪化し、製造コストがかかってしまうという問題があった。
【0006】
一方、上記方法で得られた従来の成形用フィルムを深絞り成形機により成形加工する場合、フィルムの剛性から、フィルムを挟持するチャック部分でフィルムに割れが発生しやすいという問題があった。さらに、ガス置換包装で得られた前記従来の成形用フィルムからなるパック品を、4℃以下低温下でチルド流通する場合、ポリエステル樹脂の特徴から脆性破壊が起こり、パック品の底材が割れてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高衝撃強度と良好な成形性と優れた外観性とを併有し、特に、低温衝撃強度が良好である深絞り成形用共押出フィルムを提供することにある。
【0008】
さらに本発明のもう一つの目的は、高衝撃強度と優れた外観性を有し、特に低温衝撃強度が良好である前記フィルムから形成される底材およびこの底材を用いた深絞り成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、成形用フィルムを構成する材料および層構成につき鋭意検討した。その結果、本発明者は、所定の組成を共押出しするにより得られる所定の層構成を有するフィルムであれば、高い衝撃強度、優れた成形性、優れた外観性および優れた低温衝撃強度が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
第一の本発明は、非晶性ポリエステル樹脂層(A)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)層(B)、接着性樹脂層(C)、ポリアミド樹脂層(D)、エチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層(E)、およびシール性樹脂層(F)を有する共押出フィルムであって、前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)、前記PET層(B)、および前記シール性樹脂層(F)からなる群から選ばれる少なくとも1層が着色剤を含有し、前記PET層(B)が非晶性ポリエステル樹脂を含有し、非晶性ポリエステル樹脂およびPETの極限粘度(IV)が、0.64〜0.90dl/gであり、かつフィルム全体の厚み(t)に対する前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)および前記PET層(B)の厚みの合計(a+b)の比〔(a+b)/t〕が、0.75〜0.95であることを特徴とする深絞り成形用共押出フィルムである。
【0011】
前記EVOH層(E)に隣接する上層および下層は、前記ポリアミド樹脂層(D)であることが好ましい。
【0012】
前記深絞り成形用共押出フィルムは、下記の(1)〜(4)から選ばれる層構成を有していることが好ましい。
(1) A / B / C / D / E / D / C / F
(2) A / B / A / C / D / E / D / C / F
(3) B / A / C / D / E / D / C / F
(4) B / A / B / C / D / E / D / C/ F
【0013】
前記ポリアミド樹脂は、6ナイロン、66ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、およびMXD6ナイロンからなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0014】
前記シール性樹脂層(F)を構成する樹脂が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体(PP−PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリブテン−1、およびエチレン系アイオノマーからなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0015】
前記着色剤の含有量は、前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)を構成する非晶性ポリエステル樹脂100質量部、前記PET層(B)を構成するPET100質量部、または前記シール性樹脂層(F)を構成するシール性樹脂100質量部に対して、それぞれ1〜10質量部であることが好ましい。
【0016】
前記PET層(B)の非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、前記PET100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましい。
【0017】
前記ポリアミド樹脂層(D)、前記EVOH層(E)および前記シール性樹脂層(F)の厚み比は、2〜25:2〜30:5〜80であることが好ましい。
【0018】
フィルム全体の厚みは、150〜600μmであることが好ましい。
【0019】
第二の本発明は、上記の深絞り成形用共押出フィルムにより形成された底材である。
【0020】
第三の本発明は、上記の底材を用いた深絞り成形容器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来の深絞り成形用フィルムとは異なる上記の材料および層構成を有する深絞り成形用共押出フィルムとすることによって、高い衝撃強度、良好な成形性および優れた外観性を併有する深絞り成形容器とすることができる深絞り成形用フィルムを提供することができる。また、非晶性ポリエステル樹脂をPET層へ添加することで、より一層、深絞り成形容器の低温衝撃強度を優れたものとすることができる。さらに本発明によれば、高衝撃強度と優れた外観性を有する、前記フィルムで形成された底材およびこの底材を用いた深絞り成形容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の深絞り成形用共押出フィルム(以下「本発明のフィルム」ともいう)、該フィルムで形成される底材、および該底材を用いた深絞り成形容器(以下「本発明の底材、成形容器」ともいう)について詳細に説明する。
【0023】
[深絞り成形用共押出フィルム]
<非晶性ポリエステル樹脂層(A)>
発明のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)層(B)の外層に非晶性ポリエステル樹脂層(以下「A層」ともいう。)を積層する。従来、外層にPET層を形成した場合には、PETが低粘性であるため、共押出法でフィルムを作製するとPET層に流れムラや表面粗れを生じてしまうとの理由から、予め作製したPETフィルムと共押出フィルムとをドライラミネート法により接着させる手法が一般的であった。本発明のフィルムは、PET層上に非晶性ポリエステル樹脂層を配置することにより、従来不適とされてきた共押出法により作製可能としたフィルムである。
【0024】
本発明のフィルムのA層で用いられる非晶性ポリエステル樹脂とは、多価アルコール成分100モル%中に1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上含まれるポリエステル樹脂をいう。非晶化度を高める観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上、好ましくは12モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上含むことが望ましい。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの衝撃強度が低下してしまうため、上限は50モル%とすることが好ましく、47モル%以下とすることがより好ましく、45モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のフィルムでは、耐破れ性、衝撃強度、耐熱性などを考慮すれば、A層で使用する非晶性ポリエステル樹脂を構成するユニット100モル%中にエチレンテレフタレートユニットが50モル%以上、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上となるように選択することが好ましい。したがって、多価カルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルから形成される成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中にエチレングリコール成分を50〜95モル%、好ましくは55〜90モル%、さらに好ましくは60〜88モル%含有させることが望ましい。
【0026】
上記多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上述した1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールの他に、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用できる。
【0027】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などを用いることができる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0028】
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつアルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。
【0029】
A層で用いられる非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価アルコール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールからなり、かつ多価カルボン酸成分がテレフタル酸からなるポリエチレンテレフタレート樹脂を好適に用いることができる。例えば、イーストマン社製の商品名PETGが市販されており、これを使用するのが好ましい。
【0030】
A層の厚みは、製膜上とコスト的な観点から2〜250μmの範囲であることが好ましく、3〜100μmの範囲であることがさらに好ましく、4〜50μmの範囲であることが最も好ましい。
【0031】
<ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)層(B)>
本発明のフィルムのPET層(以下「B層」ともいう)は、フィルムに剛性、強度、成形性を付与するための層である。B層で使用可能なPETは、エチレンテレフタレートユニットを80モル%以上含む樹脂である。好ましいPETは、エチレンテレフタレートユニットを83モル%以上含み、より好ましくは85モル%以上含む。
【0032】
上記B層を構成するPETは、以下に記載の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とにより形成され得る。多価カルボン酸成分としては、エチレンテレフタレートユニットを構成するテレフタル酸の他、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸のいずれも用いられる。
【0033】
上記芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸類;2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸類;4,4’−ジカルボキシジフェニル、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸などのジカルボキシビフェニル類;1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸およびその置換体;1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸およびその置換体などが挙げられる。また上記脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシリン酸、テトラデカンジカルボン酸、タプシン酸、ノナデカンジカルボン酸、ドコサンジカルボン酸などが挙げられる。さらに、上記脂環式ジカルボン酸としては、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン、1,3−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。
【0034】
上記多価アルコール成分としては、ポリエチレンテレフタレートユニットを構成するエチレングリコールの他、脂肪族ジオール、脂環式ジオールおよび芳香族ジオールのいずれも用いることができる。
【0035】
上記脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。また、上記脂環式ジオールとしては、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。さらに、上記芳香族ジオールとしては、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール系化合物のエチレンオキサイド付加物;キシリレングリコールなどが挙げられる。また、上記多価アルコール成分としては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールなどを用いることもできる。
【0036】
このような多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を用いて上記B層に用いられるPETを調製するには、深絞り成形用共押出フィルムとしての特性を改良するため、1種類以上の多価カルボン酸成分または多価アルコール成分を組み合わせて用いることが好ましい。組み合わせられるモノマー成分の種類および含有量は、所望のフィルム特性、経済性などに基づいて適宜決定することができる。
【0037】
上記PETは、単一の共重合レジンを用いてもよいし、2種類以上の共重合またはホモポリエステルの混合物を用いることも可能である。経済上の観点から、ホモのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートコポリマーなどを好適に用いることができる。例えば、三井化学社製、商品名GM(APET)が市販されており、これを使用するのが好ましい。
【0038】
B層の厚みは、リジット性(腰)およびコスト的な観点から50〜550μmの範囲であることが好ましく、100〜520μmの範囲であることがさらに好ましく、130〜500μmの範囲であることが最も好ましい。
【0039】
本発明のフィルムは、低温において衝撃強度を付与する目的で、A層で用いられる非晶性ポリエステル樹脂およびB層で用いられるPETは、極限粘度(IV)が0.64〜0.90dl/gのものを用いる。極限粘度(IV)は、製膜後のA層とB層のシート状試料300mgを溶媒30ml(フェノ−ルと1,1,2,2−テトラクロルエタンとの混合溶媒、質量比=1:1)に溶解させ、ウベローゼ型粘度計を用いて、試料落下時間を測定し極限粘度値を計算して得ることができる。極限粘度(IV)が0.64dl/g以上であればフィルム剛性、強度および成形性に対する良好な改良効果が得られ、また、極限粘度が0.90dl/g以下であれば製膜性が良好である。両樹脂の極限粘度(IV)は、好ましくは0.65〜0.87dl/gであり、さらに好ましくは0.68〜0.85dl/gである。
【0040】
B層に含有する非晶性ポリエステル樹脂の量は、PET100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがさらに好ましく、5〜15質量部であることが特に好ましい。少なすぎると耐衝撃性の効果が出ない。多すぎると腰の強さ、剛性少なくなる、コスト高になる。
【0041】
<接着性樹脂層(C)>
本発明のフィルムは、層間剥離強度を向上させる目的で接着性樹脂層(以下、「C層」ともいう。)を有する。C層で用いられる接着性樹脂は、C層が隣接するB層およびポリアミド樹脂層(以下、「D層」ともいう。)、並びにEVOH層(以下、「E層」ともいう。)およびシール性樹脂層(以下、「F層」ともいう。)を必要な強度(好ましくは層間剥離強度が5.88N/mm幅以上、より好ましくは7.84N/15mm幅以上、さらに好ましくは9.8N/15mm幅以上)で接着させることができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。かかる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。またこれら不飽和カルボン酸のエステルや無水物も用いることができる。さらに誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。例えば、三井化学(株)製、商品名アドマーが市販されており、これを使用するのが好ましい。中でもB層とE層とを接着させる場合、ポリオレフィンベースのものが有用である。また、E層とF層とを接着させる場合、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)タイプのものが好適に使用される。
【0042】
C層の厚みは、必要な強度に接着することができれば特に制限はないが、2〜30μm、好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは5〜15μmの範囲とすることができる。
【0043】
<ポリアミド樹脂層(D)>
本発明のフィルムを構成するポリアミド樹脂層(D層)は、フィルムに衝撃強度を付与し、かつガスバリア性を付与するための層である。D層で用いられる好適なポリアミド系樹脂としては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の縮合単位の重合体またはこれら2種以上との共重合体さらにはこれらの混合物を挙げることができる。中でも6−66ナイロンまたは6ナイロンの混合物を好適に用いることができる。例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の商品名MOVAMIDが市販されており、これを使用するのが好ましい。
【0044】
D層は、厚すぎると製膜上困難となる場合があり、逆に薄すぎると面荒れやスジのようなトラブルの原因となる場合がある。そのため、D層の厚みは2〜25μmの範囲、好ましくは3〜20μmの範囲、さらに好ましくは4〜15μmの範囲とすることが望ましい。
【0045】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層(E)>
本発明のフィルムは、ガスバリア性を付与するためにエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層(E層)を有する。E層を形成する樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)であり、エチレン含有率が29〜47モル%、好ましくは32〜44モル%である。EVOHのケン化度は、90%以上、好ましくは95モル%以上のものが望ましい。EVOHのエチレン含有量およびケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。例えば、日本合成化学製の商品名ソアノールが市販されており、これを使用するのが好ましい。
【0046】
E層の厚みは2〜30μm、好ましくは3〜25μm、さらに好ましくは5〜20μmの範囲とすることができる。E層の厚みが薄すぎると良好な酸素バリア性を保つことが困難になる。一方、E層の厚みが厚すぎるとフィルムの共押出性が悪化し、フィルム強度を保持する上で不利になる。
【0047】
<シール性樹脂層(F)>
本発明のフィルムは、シール性を確保する目的で、蓋材との接合面を構成する最内層としてシール性樹脂層(F層)を有する。F層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体(PP−PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリブテン−1、およびエチレン系アイオノマー、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0048】
上記樹脂のうち、LDPEは密度0.92以上のものが好ましく、HDPEは密度0.95以上のものが好適に用いられる。またエチレン系アイオノマーのベースポリマーとなるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン成分を70〜99質量%、特に80〜95質量%、不飽和カルボン酸成分を1〜30質量%、特に5〜20質量%含有するものを挙げることができる。またエチレンと不飽和カルボン酸以外にその他の不飽和モノマー成分を0〜25質量%、特に0〜12質量%の割合で共重合されたものを用いることができる。さらに、総和が上記条件を満たす限り、不飽和カルボン酸成分単位の異なるものを2種以上用いてもよい。
【0049】
エチレン系アイオノマーを構成する不飽和カルボン酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸などを例示でき、特にメタクリル酸またはアクリル酸が好ましい。
【0050】
また、他の不飽和モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルのようなアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、あるいは酢酸ビニルなどが例示できる。
【0051】
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーにおける金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属を例示できる。金属イオンによる中和度は、特に限定されないが、平均中和度が3%以上、好ましくは10〜90%からなるものが好適である。
【0052】
アイオノマーとしては、例えば、190℃、21.17Nにおけるメルトフローレートが0.1〜50g/10分、特に0.2〜30g/10分程度のものを使用するのが好ましい。
【0053】
F層を構成する樹脂としては、上記の樹脂のうち、特にフィルムの成形時に熱板にフィルム付着し難いLDPE、LLDPE、PP−PE(好ましくはPP−PEランダム共重合体)等の軟化温度の高いポリオレフィン系樹脂、またはエチレン系アイオノマーを好適に用いることができる。
【0054】
F層の厚みは、良好なシール性が確保できれば厚みは限定されないが、5〜80μm、好ましくは8〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmの範囲とすることができる。
【0055】
本発明のフィルムは、深絞り成形用底材とした場合に優れた外観性を得る目的で、A層、B層およびF層からなる群から選ばれる少なくとも1層に着色剤を含有させる。着色剤の含有量は、A層を構成する非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、B層を構成するPET100質量部に対して、またはF層を構成するシール性樹脂100質量部に対して、それぞれ1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることが特に好ましい。着色剤の含有量が少なすぎると、底材として用いた場合に良好な外観が得られない場合があり、また着色剤の含有量が多すぎると、低温衝撃性が低下する場合がある。
【0056】
本発明において用いる着色剤としては、無機系または有機系の顔料または染料を用いることができる。例えば、白色系の顔料としては、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、亜鉛華、硫酸亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク等を用いることができる。また、黒色系の顔料としては、鉄黒、黒鉛、カーボンブラック等を用いることができる。これらの中で、無機系の顔料を用いることが、優れた外観性を得る点から好ましく、特に、酸化チタンを用いることが、優れた白色の外観を得る点から好ましい。また、着色剤は、二種以上を混合して使用することもできる。
【0057】
例えば、B層の厚みが200〜350μm程度であれば、ヘーズ測定による光全透過率は、18〜25%が優れた外観性を得る点から望ましく、そのためには、B層における着色剤の含有量は上記の範囲内とすることが好ましい。
【0058】
上記したように、優れた外観性を付与すべくB層に着色剤を含有させた場合、本発明のフィルムにより形成した深絞り成形容器を、例えば、チルド流通等の低温条件において用いたとき、着色剤の存在によってはPETが脆くなり、低温衝撃性が低下するという問題があった。そこで、本発明においては、B層に低温衝撃性を付与する目的で、A層に用いられている樹脂と同じ非晶性ポリエステル樹脂を添加し、非晶性ポリエステル樹脂とPETとのポリマーアロイとすることで、特に0℃以下のマイナス雰囲気下にて、低温衝撃性に優れたフィルムとすることができる。
【0059】
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムは、フィルム全体の厚み(t)に対するA層およびB層の厚みの合計(a+b)の比〔(a+b)/t〕は、0.75〜0.95であり、好ましくは0.77〜0.88であり、さらに好ましくは0.79〜0.85である。前記厚み比が0.75以上であれば、剛性に対する改良効果が得られ、また厚み比が0.95以下であれば、成形性が劣るという問題もないため好ましい。
【0060】
本発明のフィルムにおいて、ポリアミド樹脂層(D層)、EVOH層(E層)およびシール性樹脂層(F層)の厚み比は、2〜25:2〜30:5〜80であり、好ましくは3〜20:3〜25:8〜50、さらに好ましくは4〜15:5〜20:10〜30ある。D層〜F層の各層の厚み比が上記範囲内であれば、耐衝撃性、酸素バリア性およびシール性を良好に維持できるほか、製膜上のコストを安価に抑えることができる。
【0061】
また、本発明のフィルムの合計厚みは、150〜600μm、好ましくは180〜550μm、さらに好ましくは200〜500μmの範囲であることが望ましい。フィルムの合計厚みが小さすぎると、適度な剛性が得られず、フィルムの腰が弱く、深絞り成形した後のガスパック包装容器等として利用しにくい場合がある。一方、フィルムの合計厚みが大きすぎると、フィルムの成形性、打ち抜き性に劣り易い場合がある。
【0062】
本発明のフィルムは、以下の態様で構成することができる。
(1) A / B / C / D / E / D / C / F
(2) A / B / A / C / D / E / D / C / F
(3) B / A / C / D / E / D / C / F
(4) B / A / B / C / D / E / D / C/ F
【0063】
上記(1)〜(4)の層構成は、共押出成形時に製造条件を調整することにより作製することができる。上記(1)と(2)の層構成では、非晶性ポリエステル樹脂層(A層)を最外層に配することにより、共押出成形時に発生するオリゴマーの発生を低減できるという利点があるため好ましい。また、上記(3)の層構成では、最外層(底材を形成した場合に蓋材と接触する最内層とは反対側の層)のPET層(B層)と接着性樹脂層(C層)との間に非晶性ポリエステル樹脂層(A層)を介在させることにより、B層およびC層間において接着不良が発生するのを防止することができる。さらに上記(1)から(4)のいずれの層構成においても、EVOH層(E層)が隣接する上層および下層は、ポリアミド樹脂層(D層)であるため、接着樹脂層(C層)とEVOH層(E層)とを積層した場合に、頻繁に発生する流れムラを解消できる。また、EVOH層(E層)と接着樹脂層(C層)とを積層した場合よりも、ポリアミド樹脂層(D層)と接着樹脂層(C層)とを積層した場合の方が、層間剥離強度を強くすることができる。
【0064】
<深絞り成形用共押出フィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、Tダイ法、水冷または空冷インフレーション法、チューブラ法など既存の方法により、Tダイを備えた押出機を用いて共押出しすることにより、非晶性ポリエステル樹脂層(A層)、PET層(B層)、接着性樹脂層(C層)、ポリアミド樹脂層(D層)、EVOH層(E層)、およびシール性樹脂層(F層)を同時に積層して作製することができる。また、本発明のフィルムは、A〜F層の各層を構成する樹脂を別々にシート化した後にプレス法やロールニップ法などを用いて積層して逐次的に作製することもできる。本発明のフィルムは、作業性および生産性等の点から好ましくは前者の方法で作製することができる。
【0065】
[深絞り成形容器用底材および深絞り成形容器]
本発明のフィルムは、深絞り包装機を用いて内容物に対応した大きさおよび形状を有する深絞り成形容器用底材に成形することができる。特に本発明のフィルムを深絞り成形容器の底材として用いる場合、光沢性に優れた深絞り成形容器を得ることができる。深絞り成形容器用底材として用いる場合、例えば、本発明のフィルムを深絞り成形型で所望の形状および大きさに成形した後(フィルム供給工程およびフィルム成形工程)、その中にスライスハム等の内容物を充填し(内容物充填工程)、さらにその上から蓋材フィルムでシールして(蓋材フィルム供給工程およびシール工程)、真空包装し(真空包装工程)、冷却し(冷却工程)、カットすることにより(切断工程)、深絞り成形容器を作製することができる。
【0066】
本発明の深絞り成形容器の蓋材は、本発明のフィルムによりシール可能であり、本発明のフィルムのイージーピール性が得られれば特に制限はない。例えば、延伸ポリプロピレン樹脂層と透明蒸着ポリエチレンテレフタレート系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)層をラミネートした蓋材や延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂と共押出フィルム(EVOHとNyを含み、LLDPEをシール層としたフィルム)をラミネートした蓋材を挙げることができる。
【0067】
本発明の深絞り成形容器は、上記の蓋材と本発明の底材とをヒートシール等の接着手段により接着させることにより作製することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
<製膜>
(実施例1)
以下の層構成および各層の厚みを有する本発明の深絞り成形用共押出フィルムを共押出法により製膜した。また、PET層に、PET100質量部に対してTiOを2.5質量部、非晶性ポリエステル樹脂を10質量部添加した。PET層に添加した非晶性ポリエステル樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂層に用いた樹脂と同様のものを用いた。
非晶性ポリエステル樹脂層(20μm)/PET層(TiOを2.5質量部、非晶性ポリエステル樹脂を10質量部含有)(210μm)/接着性樹脂層(10μm)/ポリアミド樹脂層(5μm)/EVOH層(10μm)/ポリアミド樹脂層(5μm)/接着性樹脂層(10μm)/シール性樹脂層(30μm)
各層に用いた樹脂を以下に示す。
非晶性ポリエステル樹脂層:PETG6763(イーストマン社製)
PET層:APET(GM700(三菱化学社製))
接着性樹脂層:アドマーNF500(三井化学社製)
ポリアミド樹脂層:NOVAMID(6−66共重合ナイロン(66ナイロン含有率15%))(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
EVOH層:ソアノール(エチレン含量44モル%タイプ)(日本合成化学社製)
シール性樹脂層:ノバテックLD(LDPE(融点109℃)(日本ポリエチレン社製))
【0069】
(実施例2)
以下の層構成および各層の厚みを有する本発明の深絞り成形用共押出フィルムを共押出法により製膜した。また、PET層に、PET100質量部に対してTiOを5.0質量部、非晶性ポリエステル樹脂を10質量部添加した。PET層に添加した非晶性ポリエステル樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂層に用いた樹脂と同様のものを用いた。
【0070】
非晶性ポリエステル樹脂層(20μm)/PET層(TiOを5.0質量部、非晶性ポリエステル樹脂を10質量部含有)(210μm)/接着性樹脂層(10μm)/ポリアミド樹脂層(5μm)/EVOH層(10μm)/ポリアミド樹脂層(5μm)/接着性樹脂層(10μm)/シール性樹脂層(30μm)
各層に用いた樹脂を以下に示す。
非晶性ポリエステル樹脂層:PETG6763(イーストマン社製)
PET層:APET(GM700(三菱化学社製))
接着性樹脂層:アドマーNF500(三井化学社製)
ポリアミド樹脂層:NOVAMID(6−66共重合ナイロン(66ナイロン含有率15%))(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
EVOH層:ソアノール(エチレン含量44モル%タイプ)(日本合成化学社製)
シール性樹脂層:ノバテックLD(LDPE(融点109℃)(日本ポリエチレン社製))
【0071】
(実施例3)
TiO3.0質量部を非晶性ポリエステル樹脂層にさらに含有させたことを除き、実施例2と同様の方法により深絞り成形用共押出フィルムを製膜した。
【0072】
(実施例4)
TiO3.0質量部をシール性樹脂層にさらに含有させたことを除き、実施例2と同様の方法により深絞り成形用共押出フィルムを製膜した。
【0073】
(比較例1)
以下の層構成および各層の厚みを有するフィルムを共押出法およびドライラミネート法を組み合わせた製法により製膜した。また、PET層に、PET100質量部に対してTiOを5.0質量部添加した。
PET層(TiOを5.0質量部含有)(250μm)//EVOH層(10μm)/ポリアミド樹脂層(5μm)/接着性樹脂層(10μm)/シール性樹脂層(25μm)
各層に用いた樹脂を以下に示す。
PET層:APET(GM700(三菱化学社製))
接着性樹脂層:アドマーNF500(三井化学社製)
ポリアミド樹脂層:NOVAMID(6−66共重合ナイロン(66ナイロン含有率15%))(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
EVOH層:ソアノール(エチレン含量44モル%タイプ)(日本合成化学社製)
シール性樹脂層:ノバテックLD(LDPE(融点109℃)(日本ポリエチレン社製))
【0074】
<深絞り成形容器の作製>
上記の実施例および比較例にて作製したフィルムを成形して底材とし、深絞り成形容器を作製した。成形条件および用いた蓋材の構成を以下に示す。
(成形条件)
深絞り包装機:ムルチバック社製R530
成形温度:95℃
フィルム加熱時間:3秒
成形時間:2秒
シール温度:130℃
パック品の大きさ:縦170mm×横127mmの長方形
シール幅:5mm幅の枠シール
(蓋材の構成)
PET(12μm)//EVOH(10μm)/Ny(30μm)/AD(10μm)/層間剥離タイプイージーピール層(20μm)/(PEシーラント)(70μm)
蓋材における各層に用いた樹脂を以下に示す。
PET層:ダイヤホイル(三菱化学ポリエステルフィルム社製)
EVOH層:ソアノール(エチレン含量44モル%タイプ)(日本合成化学社製)
Ny層:NOVAMID(6−66共重合ナイロン(66ナイロン含有率15%))(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
接着性樹脂層:アドマーNF500(三井化学社製)
EVOH層:ソアノール(エチレン含量44モル%タイプ)(日本合成化学社製)
イージーピール層:タフマー(エチレン−ブテン−1)(三井化学社製)
PEシーラント層:ノバテックPE(日本ポリエチレン社製)
【0075】
<評価方法>
実施例1〜2および比較例1で得られた成形品について成形性、隠蔽性(外観性)、層間強度、低温衝撃性(落下テスト)、およびミサイル衝撃強度値を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(成形性)
深絞り包装機の成形工程において、絞り深さ35mm、入れ子の形状はリブが複雑なものとし、良好に成形ができることを以下の基準により評価した。
○:成形性良好
△:成形性やや悪い
×:成形性悪い
【0077】
(隠蔽性(外観性))
底材に成形する前のフィルムを分光光度計で測定し、得られた全光透過率を以下の基準により評価した。
○:全光透過率20%以上
△:全光透過率10%以上20%未満
×:全光透過率10%未満
【0078】
(層間剥離強度)
底材に成形する前のフィルムを用い、引張試験機(引張速度:200mm/分)により層間剥離強度を以下の基準により測定した。
○:9.8N/15mm幅以上
△:5.88N/15mm幅以上9.8N/15mm幅未満
×:5.88N/15mm幅未満
【0079】
(低温衝撃性(落下テスト))
各トレー内に120gの内容物を収納し、蓋材をシールした後、2ケースの段ボール箱内に2列、5段でパック品各10個を入れて、0℃×24時間保管後、1.0mの高さから段ボール箱を側面から落下させて、底材のフランジ部割れの有無を以下の基準により評価した。
○:フランジ部割れが全くなかった
△:20個中1〜3個に底材フランジ部割れが見られた
×:20個中4個以上に底材フランジ部割れが見られた
【0080】
(ミサイル衝撃強度値)
−10℃、−5℃、0℃、および5℃の各測定温度(雰囲気温度)において、直径12.7mmの半球状の先端を有する金属棒(撃心)で試料フィルムを高速(3m/秒)で打ち抜いた時の衝撃破壊エネルギーを求めた。なお、ここにいう「衝撃破壊エネルギー」とは、金属棒に負荷される応力と試料フィルムの伸びの積分値であり、N・mmの単位で表される。
【0081】
【表1】

【0082】
表1より本発明のフィルムで形成された深絞り成形容器は、従来の深絞り成形容器と比較すると、良好な成形性が得られ、かつ低温における衝撃強度が良好であった。これより本発明のフィルムは、高衝撃強度と良好な成形性が得られることが分かる。
【0083】
以上、現時点において、もっとも実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う深絞り成形用共押出フィルム、底材および深絞り成形容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ポリエステル樹脂層(A)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)層(B)、接着性樹脂層(C)、ポリアミド樹脂層(D)、エチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層(E)、およびシール性樹脂層(F)を有する共押出フィルムであって、
前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)、前記PET層(B)、および前記シール性樹脂層(F)からなる群から選ばれる少なくとも1層が着色剤を含有し、
前記PET層(B)が非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
非晶性ポリエステル樹脂およびPETの極限粘度(IV)が、0.64〜0.90dl/gであり、
かつフィルム全体の厚み(t)に対する前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)および前記PET層(B)の厚みの合計(a+b)の比〔(a+b)/t〕が、0.75〜0.95であることを特徴とする深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項2】
前記EVOH層(E)に隣接する上層および下層が、前記ポリアミド樹脂層(D)である請求項1に記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項3】
下記の(1)〜(4)から選ばれる層構成を有する請求項1または2に記載の深絞り成形用共押出フィルム。
(1) A / B / C / D / E / D / C / F
(2) A / B / A / C / D / E / D / C / F
(3) B / A / C / D / E / D / C / F
(4) B / A / B / C / D / E / D / C/ F
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂が、6ナイロン、66ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、およびMXD6ナイロンからなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項5】
前記シール性樹脂層(F)を構成する樹脂が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体(PP−PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリブテン−1、およびエチレン系アイオノマーからなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項6】
前記着色剤の含有量が、前記非晶性ポリエステル樹脂層(A)を構成する非晶性ポリエステル樹脂100質量部、前記PET層(B)を構成するPET100質量部、または前記シール性樹脂層(F)を構成するシール性樹脂100質量部に対して、それぞれ1〜10質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項7】
前記PET層(B)の非晶性ポリエステル樹脂の含有量が、前記PET100質量部に対して1〜20質量部である請求項1〜6のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂層(D)、前記EVOH層(E)および前記シール性樹脂層(F)の厚み比が2〜25:2〜30:5〜80である請求項1〜7のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項9】
フィルム全体の厚みが、150〜600μmである請求項1〜8のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の深絞り成形用共押出フィルムにより形成された底材。
【請求項11】
請求項10に記載の底材を用いた深絞り成形容器。

【公開番号】特開2006−82440(P2006−82440A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270472(P2004−270472)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】