説明

混合比検出装置、混合比検出装置の制御方法、および、混合比検出装置搭載の燃料電池システム

【課題】
高精度で小型・軽量、しかも低コスト且つ低消費電力の濃度センサを提供することを目的としている。
【解決手段】
赤外領域の光を含む光を発生させる光源10と、光源10からの赤外領域の光を検出する第1光検出手段18と、第1光検出手段とは範囲が異なる領域の光を検出する第2光検出手段20と、第1光検出手段18と第2光検出手段20からの信号に基づいて混合比率に関する信号を出力し、光源10と第1光検出手段18と第2光検出手段20とを制御する制御手段16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出物を含む混合液から、混合液に対する被検出物の混合比率を検出する混合比検出装置に関し、具体的には、ダイレクトメタノール燃料電池などに用いられるメタノールと水の混合比率を検出する混合比検出装置、いわゆるメタノール水溶液濃度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴はとしては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できる、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性をもっているので、21世紀を担うエネルギ供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、固体高分子形燃料電池の一形態として、ダイレクトメタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)が注目を集めている。DMFCは、燃料であるメタノール水溶液を改質することなく直接アノードへ供給し、メタノール水溶液と酸素との電気化学反応により電力を得るものであり、この電気化学反応によりアノードからは二酸化炭素が、カソードからは生成水が、反応生成物として排出される。メタノール水溶液は水素に比べ、単位体積当たりのエネルギが高く、また、貯蔵に適しており、爆発などの危険性も低いため、自動車や携帯機器などの電源への利用が期待されている。
【0004】
このDMFCのアノードへ供給するメタノール水溶液の濃度は、高いとDMFC内部の固体高分子膜の劣化を促進させ、信頼性が低下してしまうという問題があり、低いとDMFCから充分な出力を取り出すことができないため、0.5〜4mol/L望ましくは0.8〜1.5mol/Lの濃度に調整した方が良く、この濃度域の幅を小さくすることが、DMFCを安定して運転させることにつながることが分かっている。
【0005】
しかしながら、DMFCを有するシステムの場合、DMFCを長時間に渡って運転させ、且つ、システムの小型・軽量化を図るため、一般的には、20mol/L以上の高濃度メタノールタンクを備え、DMFCのアノードへ供給する前に濃度を薄く調整して供給する方式を取っている。そこで、メタノール水溶液の濃度を、システム内部で0.8〜1.5mol/Lに調整するために、高精度で小型のメタノール水溶液濃度センサが求められており、光学式(特許文献1参照)、超音波式、或いは、比重による方式など様々な種類のセンサが研究されているが、高精度で小型・軽量、しかも低コスト且つ低消費電力が求められるDMFCシステム搭載用メタノール水溶液濃度センサは未だ開発されていない。
【特許文献1】特開2001−124695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような光学式の濃度センサでは、水溶液中に気泡やコンタミなどが存在した場合に、測定精度が低下してしまう虞があった。また、検出装置を常に稼動させていると、測定による消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、高精度で小型・軽量、しかも低コスト且つ低消費電力の濃度センサ、特に、DMFC搭載用のメタノール水溶液濃度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、被検出物を含む混合液から、前記混合液に対する前記被検出物の混合比率を検出する混合比検出装置であって、少なくとも赤外領域の光を含む光を発生させる光源と、前記混合液を介して前記光源からの前記赤外領域の光を受光可能な位置に設けられ、前記赤外領域の光を検出する赤外光検出手段と、前記赤外光検出手段からの信号に基づいて前記混合比率に関する信号を出力すると共に、前記光源と前記赤外光検出手段とを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
具体的には、アルコールを含む混合液から、前記混合液に対する前記アルコールの混合比率を検出する混合比検出装置であって、少なくとも赤外領域の光を含む光を発生させる光源と、前記混合液を介して前記光源からの前記赤外領域の光を受光可能な位置に設けられ、前記赤外領域の光を検出する第1光検出手段と、前記混合液を介して前記光源からの光を受光可能な位置に設けられ、前記第1光検出手段とは範囲が異なる領域の光を検出する第2光検出手段と、前記第1光検出手段と前記第2光検出手段からの信号に基づいて前記混合比率に関する信号を出力すると共に、前記光源と前記第1光検出手段と前記第2光検出手段とを制御する制御手段と、と備える。
【0010】
上記の構成によれば、装置を小型・軽量にすることができ、しかも、高精度な検出が可能となる。
【0011】
また、前記第2光検出手段は、前記混合液を介して前記光源からの可視光領域の光を受光可能な位置に設けられ、前記可視光領域の光を検出する可視光検出手段であることを特徴とする。
【0012】
これにより、気泡やコンタミなどの影響を検出しやすくなる。
【0013】
また、前記光源は、白熱電球を用いると、装置を低コストで作製することができる。
【0014】
また、前記第1光検出手段は、前記可視光領域の光と前記赤外領域の光とを検出可能な受光素子と、前記赤外領域の光を透過する赤外光透過部と、を備え、前記第2光検出手段は、前記可視光領域の光と前記赤外領域の光とを検出可能な受光素子と、前記可視光領域の光をする可視光透過部と、を備えることを特徴とする。あるいは、前記光源と前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段とを結ぶ光路の間に設けられ、前記光源からの光を波長によって角度を回折させる回折部を備え、前記第1光検出手段を、前記回折部によって回折された前記赤外領域の光を受光可能な位置に配置するとともに、前記第2光検出手段を、前記回折部によって回折された前記可視光領域の光を受光可能な位置に配置することを特徴とする。
【0015】
これにより、部品の種類を少なくできるので、低コスト化が図れる。
【0016】
また、前記光源と前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段とを結ぶ光路の間に設けられ、前記光源からの光を反射する反射部を備え、前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段を前記反射部によって反射された光を受光可能な位置に配置することを特徴とする。
【0017】
具体的には、前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段を配置する位置は、前記混合液を介して前記反射部と、前記光源及び前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段とが対向する位置であることを特徴とする。
【0018】
これにより、制御手段からの配線の取り回しが容易になる。
【0019】
また、前記光源と前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段との間に設けられ、前記反射部を介さずに前記光源から直接前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段へ入射する光を遮蔽する遮光部を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、より正確な検出が可能となる。
【0021】
また、前記第1光検出手段は、前記第2光検出手段よりも前記光源からの距離が大きくなるように配置したことを特徴とする。あるいは、前記混合比検出装置の温度を検出する温度検出手段を備え、前記温度検出手段にて検出された温度を用いて、前記制御手段にて前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段から得られた信号に温度補正をかけることを特徴とする。
【0022】
これにより、熱線の影響を受けやすい赤外光検出手段についても、より正確に検出が可能となる。
【0023】
また、前記混合比検出装置は、断熱部材により少なくとも一主面を覆われていることを特徴とする。
【0024】
これにより、光路上に気泡がついた場合にも、光源からの熱により気泡を排除することが容易になる。
【0025】
また、混合比検出装置の制御方法であって、前記光源を点灯するONステップと、前記光源を消灯するOFFステップと、を有し、前記ONステップと前記OFFステップとを所定の間隔にて繰り返すことを特徴とする。
【0026】
これにより、検出に必要な電力の消費を抑えることが可能となる。
【0027】
また、前記第1光検出手段または前記第2光検出手段から異常な信号が検出されたときに、前記ONステップと前記OFFステップとを所定の間隔にて繰り返さずに、所定の時間前記光源を点灯させ続けることを特徴とする。
【0028】
これにより、光路上に気泡がついた場合にも、光源からの熱により気泡を排除することが可能になる。
【0029】
また、少なくとも、前記光源のONとOFFの間の電圧を前記光源にかける第1ONステップと、前記光源をONの状態とするのに必要な電圧を前記光源にかける第2ONステップと、を有し、前記第1ONステップと前記第2ONステップと前記OFFステップとを所定の間隔にて繰り返すことを特徴とする。
【0030】
これにより、より正確な検出が可能となる。
【0031】
また、アノードに液体燃料を供給する燃料電池本体を備え、前記燃料電池本体に供給される液体に対する燃料成分の混合比率を検出する混合比検出装置を搭載した燃料電池システムであって、前記燃料電池本体に供給される液体燃料よりも高濃度の燃料が貯蔵される高濃度燃料部と、前記高濃度の燃料を希釈し前記燃料電池本体へ液体燃料を供給する液体燃料供給手段と、前記燃料電池システムを制御するシステム制御手段と、を備え、前記システム制御手段は、前記混合比検出装置からの信号に応じて、前記高濃度燃料部から前記液体燃料供給手段へ前記高濃度の燃料を供給する指示を行うことを特徴とする。
【0032】
これにより、燃料電池システムを安定して運転させることが可能となる。
【0033】
また、前記システム制御手段は、前記混合比検出装置より、前記燃料電池本体へ供給される前記液体燃料の濃度が所定濃度以下である旨の信号が前記システム制御手段へ通知されたときに、前記高濃度燃料部から前記液体燃料供給手段へ所定の量の前記高濃度の燃料を供給する指示を行うことを特徴とする。
【0034】
これにより、液体燃料ポンプなどの容量制御などを必要とせずに、燃料電池システムを安定して運転させることが可能となる。
【0035】
また、前記混合比検出装置は、前記液体燃料供給手段であって、前記燃料電池本体に前記液体燃料が供給される前段の液体燃料供給配管に設置されることを特徴とする。
【0036】
これにより、燃料電池本体に供給される燃料の濃度を、より正確に把握することが可能となる。
【0037】
また、請求項1〜12のいずれかに記載の混合比検出装置を搭載した燃料電池システムにおいて、前記システム制御手段は、前記液体燃料供給手段から液体燃料の流速に関する信号を受信し、前記システム制御手段にて受信された前記流速に関する信号を用いて、前記システム制御手段あるいは前記混合比検出装置の前記制御手段にて、前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段から得られた信号に流速補正をかけることを特徴とする。
【0038】
これにより、燃料電池本体に供給される燃料の濃度を、更に正確に把握することが可能となり、燃料電池システムを、より安定的に運転することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
以上のように本発明によれば、高精度で小型・軽量、しかも低コスト且つ低消費電力の濃度センサを提供することが可能となり、また、ダイレクトメタノール燃料電システムを安定して運転させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明に係るメタノール水溶液濃度センサ(以下、濃度センサと略記する)100の構成について、図を用いて詳細に説明する。
【0041】
図1は、本実施の形態に係る濃度センサ100の構成を表した模式図であり、濃度センサ100は、図9のDMFCシステム200のSで示す部分、即ち、DMFCのアノードにメタノール水溶液が供給される直前の配管212に設けられている。メタノール水溶液供給配管212は、図9に示すようにユニット化されており、樹脂材料を射出成形することにより製造された複数の板状部材を組み合わせて配管ユニット210を構成している。
【0042】
濃度センサ100は、光源10と1個乃至複数の受光素子、メタノール水溶液供給配管212を介して光源10及び受光素子と対向する位置に配置されたミラー12、受光素子の近傍に配置されたサーミスタ14、光源10や受光素子やサーミスタ14の制御及び信号の授受を行うセンサ制御部16などからなっており、本実施の形態では、水の吸収波長である1450nm近辺の近赤外領域に受光感度を有する第1受光素子18と、第1受光素子18よりも短波長側の可視光領域に受光感度を有する第2受光素子20の2つの受光素子18、20を用いる。2種類の受光素子を用いることにより、メタノール水溶液の濃度を正確に測定することが可能となる。また、汚れやコンタミの存在についても、波長域の異なる信号の組合せから検出が可能となる。
【0043】
光源10は、タングステンなどをフィラメントに用いた白熱電球が、可視光領域から赤外領域まで出射し、しかも小型且つ安価なので適している。本実施の形態では、定格100mA、5Vの白熱電球を用いた。ミラー12は、可視光領域から近赤外領域の広い範囲に対して、高い反射率で反射するものを選択することが望ましい。また、サーミスタ14は第1受光素子18と第2受光素子20の間に配置し、受光素子18、20からの信号に温度補正をかけるのに用いる。したがって、間に配置できない場合には、特に温度(熱線)の影響を受けやすい第1受光素子18に近いところに配置した方が良い。
【0044】
センサ制御部16には図示しないが、光源10のON/OFFの制御、特に光源10が本実施の形態のように白熱電球に場合には、電流を流した直後にラッシュ電流(フィラメントが低温のときには抵抗が低いため、msecオーダーの時間ではあるが、通常使用時の10〜1000倍程度の電流が流れてしまう現象)が流れないようにする回路も含む光源制御回路、受光素子18、20からの信号及びサーミスタ14からの信号を基にメタノール水溶液濃度を演算する演算回路、演算回路にて導き出されたメタノール水溶液濃度を外部へ送信する通信回路などからなっている。これらの回路は濃度センサ100の外部に設け、受光素子18、20からの信号及びサーミスタ14からの信号などを外部のセンサ制御部16にてメタノール水溶液濃度に演算しても良い。
【0045】
受光素子18、20は、上述のように受光感度領域が異なる素子を用いても良いが、図2に示すように、受光感度領域が同じものを用意し、受光素子18、20の前に回折格子22を配置(図2(a))しても、或いは、近赤外領域の光を透過するフィルタ24a及び可視光領域の光を透過するフィルタ24bを配置(図2(b))しても、同様の効果が得られる。いずれの場合も、近赤外領域の光を受光する方の受光素子18を、光源10から離して配置する方が、光源10からの熱線の影響が小さくなるので望ましい。
【0046】
濃度センサ100の周囲は断熱材26で覆い、光源10からの熱が外部に放出されること無く、メタノール水溶液供給配管212を温めるのに用いられるようにする。更に、光源10はメタノール水溶液供給配管212に近接するように配置すると、効果的に温めることができる。これにより、濃度センサ100の光路上に気泡が付着し、光を遮って濃度を測定することができなくなってしまった場合でも、光源10からの熱で温められて気泡が膨張し、割れやすくなる、或いは、水流の抵抗が大きくなって流されやすくなる。
【0047】
光源10及び受光素子18、20は、樹脂材料から製造されたハウジング28に嵌め込まれるように取り付けられており、このように取り付けることにより、位置が固定され、衝撃などの外乱の影響を受けにくくなると共に、遮光効果もあるので、光源10からメタノール水溶液の中を通らずに直接受光素子18、20へ到達してしまう光を遮蔽することが可能となる。
【0048】
次に、濃度センサ100の制御方法について、各実施例で説明する。
【実施例1】
【0049】
図3(a)に示すように、実施例1では、光源10を30sec間隔で、1.5sec点灯させる。本実施の形態のように光源10として白熱電球を用いる場合には、上述のようにラッシュ電流の影響を受けるため、光源10からの光が安定するまでの時間を考慮して、受光素子18、20は光源10の点灯後1sec経過した時点の光を測定し電圧に変換する。このとき、予めメタノール水溶液の濃度が所定の高濃度状態、例えば2mol/Lのときの透過光に対して受光素子18、10が5Vを出力するように設定しておく。
【0050】
通常の運転時であれば、図3(b)に示すように、閾値を例えば上限を1.2mol/L、下限を0.8mol/Lに設定し、下限値を所定時間下回っていることを検出したときには、濃度センサ10からDMFCシステム200の制御部220へ濃度が低下している旨の信号が送られ、これを受けて、高濃度メタノールタンク230から高濃度のメタノールがバッファタンク232へ供給される。そして、上限値を超えたところ、或いは、所定の供給量を供給したところで、高濃度メタノールタンク230からの供給を停止する。
【0051】
図4(a)のようにメタノール水溶液中に気泡などが混入し、測定時の光路上にかかった場合には、図3(b)のX1のように異常な値が検出される。気泡などが測定時に通過しただけであれば、次の測定時には通常の値に戻るが、図4(b)のようにメタノール水溶液供給配管212の光路を妨げる位置に付着した場合には、次の測定時にも通常の値に戻らず、異常な値が検出される。このような場合には、光源10を1.5secで消灯することなく点灯させた状態にし、光源10からの熱によって気泡を膨張させる。
【0052】
このような光源10のON/OFFの制御を行うことによって、光源10による消費エネルギを低減させることができると共に、気泡などによって測定が妨げられた場合にも、気泡を除去して測定することが可能となる。
【実施例2】
【0053】
次に図5に示すように、実施例2では、光源10を30sec間隔で、1.5secずつ電圧を変えて点灯させる。光源10が白熱電球の場合、光源10にかける電圧を変化させることで、図6のように、光源10から出射する光の波長域を変化させることが可能となる。受光素子18、20が受光する光は、光源10の発光特性、ミラー12の反射特性、水溶液の吸収特性、及び、受光素子18、20自体の受光特性に依存するため、図5のように光源10にかける電圧を3段階に変化させて発光特性を調節することにより、2つの受光素子18、20から合わせて6種類の信号を得ることができ、メタノール水溶液の濃度をより正確に測定することが可能となる。また、汚れやコンタミの存在についても、波長域の異なる信号の組合せから検出が容易になる。
【0054】
更に、図4のように気泡などが混入した場合には、実施例1と同様に、光源10を消灯することなく点灯させた状態にし、光源10からの熱によって気泡を膨張させれば、光源10による消費エネルギを低減させることができると共に、気泡などによって測定が妨げられた場合にも、気泡を除去して測定することが可能となる。
〔参考例〕
【0055】
図7は参考例の濃度センサ300の構成を示す模式図である。本参考例の濃度センサ300の設置場所は、実施例と同様でよい。
【0056】
参考例の濃度センサ300の光源は、コヒーレントな光を出射する光源(レーザ光を出射する光源)が適しており、メタノール検出用の波長2310nmの第1光源310と水分検出用の波長1378nmの第2光源311の2種類の光源を用いる。
【0057】
各光源310、311から出射された光を、それぞれ第1偏光ビームスプリッタ312および第2偏光ビームスプリッタ313にて分割し、分割したそれぞれの光314、315、316、317を、同じ光源から分割された光どうし(光314と光315、あるいは、光316と光317)少しずつ周波数が異なるように、音響光学素子(Acousto−Optic Modulator:AOM)318、319、320、321を用いて、光の周波数を約40MHz(数十MHz〜数百MHz程度)変化させる。
【0058】
分割した一方の光314、316は、測定光314、316としてメタノール水溶液の流れるメタノール水溶液供給配管212に照射し、光路がメタノール水溶液中を通るようにする。また、分割した他方の光315、317は、参照光315、317としてメタノール水溶液中を通さず、空気中を通るよう光路を設ける。
【0059】
測定光314、316がメタノール水溶液を通過後、第3偏光ビームスプリッタ322および第4偏光ビームスプリッタ323にて、同じ光源から分割された光どうし(光314と光315、あるいは、光316と光317)を合わせて偏光板324、325を通すと、少しずつ周波数の異なる光が掛算され、光の強さが掛け合わされた光どうしの周波数差で強弱する信号が受光素子326、327から得られる。いわゆる、光ヘテロダイン干渉計である。
【0060】
光ヘテロダイン干渉計は、測定光が微弱になってしまう測定系でも参照光により信号を大きくすることができるため、ノイズに強く、高精度・高感度な測定が可能となるという特性を有している。したがって、メタノールや水の吸光特性が顕著な2310nm、1378nmの光源を用いても、測定が可能となり、かつ、顕著な吸光特性を示す波長であるので正確な濃度測定が可能となる。更に、メタノール検出用の参照波長として1669nmの第3光源を用いると、より正確なメタノール水溶液濃度検出が可能となる。
〔その他の事項〕
上記実施の形態では、濃度センサ100はDMFCのアノードにメタノール水溶液が供給される直前の配管に取り付ける場合について説明したが、取り付け場所は、メタノール水溶液が供給される直前の配管に限定されるものではなく、バッファタンク232、DMFC本体240のマニホールドの部分、メタノール水溶液の排出側の配管などでも良い。また、配管の寸法は、濃度センサ100において光路長が5mmを超えないように設定することが望ましく、必要な流量を確保するために配管の内側寸法が2.5mm以上(光路長で5mm以上)となってしまうような場合には、厚み寸法が小さい流路を設けてその部分に配置することが望ましい。
【0061】
そのほか、図8に示すように、光源10から第1受光素子18までと光源10から第2受光素子20までの光路長差Lと、メタノール水溶液供給配管212中を流れるメタノール水溶液の流速Vとの関係から、メタノール水溶液中の同じ部分を測定した光は、第1受光素子18の方が遅れて受光素子に入射すると考えられる。そこで、第1受光素子18にて光を測定するタイミングを、第2受光素子20よりも遅らせる補正を加えると、更に正確に測定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の実施の形態では、DMFCに特化して説明したが、メタノール水溶液などアルコール類の濃度を高精度に測定できる本発明は、アルコール含有飲料の製造過程や検査にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施の一形態に係る濃度センサの構成を示す模式図である。
【図2】本実施の別の形態に係る濃度センサの構成を示す模式図である。
【図3】実施例1に係る光源のON/OFF制御と測定結果を示すグラフである。
【図4】メタノール水溶液中に気泡が混入した場合の模式図である。
【図5】実施例2に係る光源のON/OFF制御と測定結果を示すグラフである。
【図6】白熱電球の発光波長特性を示す模式図である。
【図7】参考例に係る濃度センサの構成を示す模式図である。
【図8】光路とメタノール水溶液の流速の関係を示す模式図である。
【図9】本実施の形態に係るDMFCシステムの構成を表した模式図である。
【符号の説明】
【0064】
10 光源
12 ミラー
14 サーミスタ
16 センサ制御部
18 第1受光素子
20 第2受光素子
22 回折格子
24 フィルタ
26 断熱材
28 ハウジング
100 メタノール水溶液濃度センサ
200 ダイレクトメタノール燃料電池システム
210 配管ユニット
212 メタノール水溶液供給配管
220 DMFCシステム制御部
230 高濃度メタノールタンク
232 バッファタンク
240 DMFC本体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物を含む混合液から、前記混合液に対する前記被検出物の混合比率を検出する混合比検出装置であって、
少なくとも赤外領域の光を含む光を発生させる光源と、
前記混合液を介して前記光源からの前記赤外領域の光を受光可能な位置に設けられ、前記赤外領域の光を検出する赤外光検出手段と、
前記赤外光検出手段からの信号に基づいて前記混合比率に関する信号を出力すると共に、前記光源と前記赤外光検出手段とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする混合比検出装置。
【請求項2】
アルコールを含む混合液から、前記混合液に対する前記アルコールの混合比率を検出する混合比検出装置であって、
少なくとも赤外領域の光を含む光を発生させる光源と、
前記混合液を介して前記光源からの前記赤外領域の光を受光可能な位置に設けられ、前記赤外領域の光を検出する第1光検出手段と、
前記混合液を介して前記光源からの光を受光可能な位置に設けられ、前記第1光検出手段とは範囲が異なる領域の光を検出する第2光検出手段と、
前記第1光検出手段と前記第2光検出手段からの信号に基づいて前記混合比率に関する信号を出力すると共に、前記光源と前記第1光検出手段と前記第2光検出手段とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする混合比検出装置。
【請求項3】
前記第2光検出手段は、前記混合液を介して前記光源からの可視光領域の光を受光可能な位置に設けられ、前記可視光領域の光を検出する可視光検出手段である
ことを特徴とする請求項2記載の混合比検出装置。
【請求項4】
前記光源は、白熱電球である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項5】
前記第1光検出手段は、前記可視光領域の光と前記赤外領域の光とを検出可能な受光素子と、前記赤外領域の光を透過する赤外光透過部と、を備え、
前記第2光検出手段は、前記可視光領域の光と前記赤外領域の光とを検出可能な受光素子と、前記可視光領域の光をする可視光透過部と、を備える
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項6】
前記光源と前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段とを結ぶ光路の間に設けられ、前記光源からの光を波長によって角度を回折させる回折部を備え、
前記第1光検出手段を、前記回折部によって回折された前記赤外領域の光を受光可能な位置に配置するとともに、前記第2光検出手段を、前記回折部によって回折された前記可視光領域の光を受光可能な位置に配置する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項7】
前記光源と前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段とを結ぶ光路の間に設けられ、前記光源からの光を反射する反射部を備え、
前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段を前記反射部によって反射された光を受光可能な位置に配置する
ことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の混合比検出装置において、
前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段を配置する位置は、前記混合液を介して前記反射部と、前記光源及び前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段とが対向する位置である
ことを特徴とする請求項7記載の混合比検出装置。
【請求項9】
前記光源と前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段との間に設けられ、前記反射部を介さずに前記光源から直接前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段へ入射する光を遮蔽する遮光部
を備えることを特徴とする請求項7または8記載の混合比検出装置。
【請求項10】
前記第1光検出手段は、前記第2光検出手段よりも前記光源からの距離が大きくなるように配置したことを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項11】
前記混合比検出装置の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記温度検出手段にて検出された温度を用いて、前記制御手段にて前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段から得られた信号に温度補正をかける
ことを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項12】
前記混合比検出装置は、断熱部材により少なくとも一主面を覆われている
ことを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載の混合比検出装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の混合比検出装置の制御方法であって、
前記光源を点灯するONステップと、
前記光源を消灯するOFFステップと、を有し、
前記ONステップと前記OFFステップとを所定の間隔にて繰り返す
ことを特徴とする混合比検出装置の制御方法。
【請求項14】
前記第1光検出手段または前記第2光検出手段から異常な信号が検出されたときに、
前記ONステップと前記OFFステップとを所定の間隔にて繰り返さずに、所定の時間前記光源を点灯させ続ける
ことを特徴とする請求項13記載の混合比検出装置の制御方法。
【請求項15】
少なくとも、前記光源のONとOFFの間の電圧を前記光源にかける第1ONステップと、前記光源をONの状態とするのに必要な電圧を前記光源にかける第2ONステップと、を有し、
前記第1ONステップと前記第2ONステップと前記OFFステップとを所定の間隔にて繰り返す
ことを特徴とする請求項13または14記載の混合比検出装置の制御方法。
【請求項16】
アノードに液体燃料を供給する燃料電池本体を備え、前記燃料電池本体に供給される液体に対する燃料成分の混合比率を検出する混合比検出装置を搭載した燃料電池システムであって、
前記燃料電池本体に供給される液体燃料よりも高濃度の燃料が貯蔵される高濃度燃料部と、前記高濃度の燃料を希釈し前記燃料電池本体へ液体燃料を供給する液体燃料供給手段と、前記燃料電池システムを制御するシステム制御手段と、を備え、
前記システム制御手段は、前記混合比検出装置からの信号に応じて、前記高濃度燃料部から前記液体燃料供給手段へ前記高濃度の燃料を供給する指示を行う
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項17】
前記システム制御手段は、前記混合比検出装置より、前記燃料電池本体へ供給される前記液体燃料の濃度が所定濃度以下である旨の信号が前記システム制御手段へ通知されたときに、前記高濃度燃料部から前記液体燃料供給手段へ所定の量の前記高濃度の燃料を供給する指示を行う
ことを特徴とする請求項16記載の燃料電池システム。
【請求項18】
前記混合比検出装置は、前記液体燃料供給手段であって、前記燃料電池本体に前記液体燃料が供給される前段の液体燃料供給配管に設置される
ことを特徴とする請求項16または17記載の燃料電池システム。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれかに記載の混合比検出装置を搭載した燃料電池システムにおいて、
前記システム制御手段は、前記液体燃料供給手段から液体燃料の流速に関する信号を受信し、前記システム制御手段にて受信された前記流速に関する信号を用いて、前記システム制御手段あるいは前記混合比検出装置の前記制御手段にて、前記第1光検出手段及び前記第2光検出手段から得られた信号に流速補正をかける
ことを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項20】
前記液体燃料は、メタノール水溶液である
ことを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の燃料電池システム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−17539(P2006−17539A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194260(P2004−194260)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】