説明

混練機、成形装置及び被混練物の流動体の製造方法

【課題】一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる混練機、成形装置、及び被混練物の流動体の製造方法を提供すること。
【解決手段】被混練物Wを混練する混練部10と、流動体W1が貯留されるバッファー部20と、流動体W1をバッファー部20の外部に排出する排出部30とを備え、混練部10は、軸状の混練スクリュー12と、混練スクリュー駆動部14と、混練スクリュー12を囲繞して混練スクリュー12との間に被混練物Wを混練する混練空間Q1を形成するとともに混練空間Q1で混練された被混練物Wの流動体W1を排出する混練部排出口11bが設けられた混練シリンダー部11aと、混練部排出口11bを開閉する混練部開閉機構18と、混練空間Q1内で被混練物Wを循環させる循環流路13とを有し、バッファー部20は、流動体W1に対して所定圧力以上の圧力を維持するように加圧する加圧部50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機、成形装置及び被混練物の流動体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用材料や医療用材料の特性を向上させるために、複数のポリマー同士、もしくはポリマーと有機粉末や無機粉末といった被混練物を混練する様々な装置が検討されている。そのような装置の1つとして、特許文献1に示すように、スクリュー(混練スクリュー)にその先端面と基端側の側面とを連結する貫通孔(循環流路)を形成して内部帰還形のスクリューとした混練機が知られている。
この混練機によれば、スクリューを高速で回転させることにより、投入された被混練物を循環させながら被混練物に強い剪断力を与えて溶融させ、被混練物の分散相サイズを数十ナノメータ程度まで小さくなるように分散させた押出し成形品が製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−313608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の混練機では、一定量の被混練物を循環させ流動体にして混練するので、混練された被混練物を排出してから次の混練を行う必要がある。このため、混練された被混練物を一定量以上の流動体として一度に取出すことができず、混練機から排出された流動体で押出し成形を行う場合には一定量以上を必要とする押出し成形品を製造することができなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる混練機、成形装置、及び被混練物の流動体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0007】
本発明の混練機は、被混練物を混練する混練部と、該混練部によって混練された被混練物の流動体が貯留されるバッファー部と、前記流動体を前記バッファー部の外部に排出する排出部と、を備えてなり、前記混練部は、軸状の混練スクリューと、該混練スクリューを軸回りに回転させる混練スクリュー駆動部と、前記混練スクリューを囲繞して該混練スクリューとの間に前記被混練物を混練する混練空間を形成するとともに該混練空間で混練された前記被混練物の流動体を排出する混練部排出口が設けられた混練シリンダー部と、前記混練部排出口を開閉する混練部開閉機構と、前記混練空間内で前記被混練物を循環させる循環流路と、を有し、前記バッファー部は、前記流動体に対して所定圧力以上の圧力を維持するように加圧する加圧部を有することを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、混練部では混練スクリュー駆動部により混練スクリューを回転させ、混練スクリューと混練シリンダー部との間の混練空間で循環流路を通じて被混練物を循環させて被混練物を一定量ずつ混練することができる。そして、混練部開閉機構によって混練部排出口を開くことで混練部排出口から被混練物を流動体として排出することができる。これらを順に繰返すことにより、混練部から混練が終了した一定量以上の流動体をバッファー部に貯留することができる。そして、バッファー部に貯留された流動体は、攪拌部によって攪拌された後に排出部によって装置外部に排出される。
このように、バッファー部に一定量以上の流動体を貯留してから排出できるので、流動体を排出するタイミングを調整することが可能となり、混練部で一度に混練される一定量以上の被混練物の流動体をまとめて排出することができる。このとき、加圧部によって流動体にかかる圧力が一定になるように維持されているので、バッファー部の内部にある流動体の残量によらず流動体を排出部に送り出すことができる。このため、混練部からバッファー部へと断続的に継続して流動体を搬送する過程でも排出部から安定して流動体を排出させることができる。
【0009】
また、本発明の混練機は、前記加圧部が、前記バッファー部の内部における前記流動体の圧力に応じて前記流動体にかける圧力を調整する圧力調整手段を有することが好ましい。
この場合、混練機によって混練された流動体をバッファー部へと搬送する際に生じるバッファー部内での圧力変動に追従してこの圧力変動を相殺するように圧力が調整される。その結果、排出部において流動体に対してかかる圧力が一定以上に保たれるので、排出部からの流動体の排出を安定して行うことができる。
【0010】
また、本発明の混練機は、前記排出部が、前記バッファー部の鉛直下方に配置され互いに噛み合う一対のギアを有する第一のギアポンプを備えていることが好ましい。
この場合、排出部がバッファー部の鉛直下方にあることで、重力によって流動体を排出部へと移動させることができる。さらに、排出部において流動体を搬送する機構としてギアポンプが採用されているので、ギアの駆動に従って確実に流動体の搬送量を制御することができる。
【0011】
また、本発明の混練機は、前記混練部と前記バッファー部との間に、互いに噛み合う一対のギアを有し前記流動体を前記バッファー部へ搬送する第二のギアポンプが介在されていることが好ましい。
この場合、ギアポンプによって流動体をバッファー部へ搬送することができる。従って、搬送に伴って混練部の内部の流動体が減少して混練空間内の圧力が低下している場合にも、混練部の内部に残された被混練物の流動体を安定してバッファー部へと搬送することができる。さらに、加圧部によってバッファー部の内部の流動体が加圧された際にも第二のギアポンプが逆止弁として機能するため、流動体がバッファー部から混練部へ逆流することが抑制されている。
【0012】
本発明の成形装置は、上述の混練機と、該混練機によって混練され前記排出部から排出された前記流動体を所定の形状に成形する成形部と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、混練機によって一定量以上の被混練物の流動体が攪拌部によって均一に混合された状態で排出部から連続的に排出される。排出部から排出された流動体は成形部に供給され、流動体が所定の形状に成形される。従って、混練部で一度に混練可能な一定量以上の流動体を要する成形品を製造することができる。
【0013】
本発明の被混練物の流動体の製造方法は、被混練物を混練して被混練物の流動体にする混練工程と、該混練工程に続いて前記流動体を貯留可能なバッファー部に前記流動体を搬送する搬送工程と、前記バッファー部の内部で前記流動体を加圧する加圧工程と、前記バッファー部から前記流動体を排出する排出工程と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、混練工程に続いて搬送工程によって流動体がバッファー部に貯留され、続いて加圧工程によってバッファー部の内部の流動体が加圧されて排出部へと押圧移動される。このため、バッファー部に流動体を供給するタイミングによらず一定量以上の流動体を連続的に製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の混練機によれば、混練部で混練された被混練物の流動体がバッファー部の内部に貯留され、加圧部で加圧されながら外部へ排出されるので、一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる。さらに、加圧部によって流動体にかかる圧力が一定になるように維持されているので、バッファー部の内部にある流動体の残量によらず流動体を排出部に送り出すことができ、このため、混練部からバッファー部へと断続的に継続して流動体を搬送する過程でも排出部から安定して流動体を排出させることができる。
また、本発明の成形装置によれば、排出部から一定量以上の被混練物の流動体が連続的に排出されて成形部へと供給されるので、一定量以上の流動体を要する押出し成形品等の製品を製造することができる。
また、本発明の被混練物の流動体の製造方法によれば、加圧工程によってバッファー部の内部の流動体が加圧されて排出部へと押圧移動されるため、バッファー部に流動体を供給するタイミングによらず一定量以上の流動体を連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1実施形態の混練機を示す斜視図である。
【図2】同混練機を一部断面で示す斜視図である。
【図3】同混練機を一部断面で示す側面図である。
【図4】同混練機における圧力調整手段を示すブロック図である。
【図5】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す側面図である。
【図6】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す側面図である。
【図7】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す側面図である。
【図8】同混練機のバッファー部への被混練物の流動体の供給過程を示すグラフである。
【図9】同混練機におけるバッファー部の内圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の1実施形態の混練機、成形装置、及び被混練物の流動体の製造方法について図1から図9を参照して説明する。まず、図1から図3を参照して本実施形態の混練機の構成について詳述する。図1は、本実施形態の混練機を示す斜視図である。
混練機1は、一定量の被混練物Wを混練する混練部10と、混練部10によって混練された被混練物Wの流動体が貯留されるバッファー部20と、流動体をバッファー部の外部に排出する排出部30と、を備える。また、バッファー部20には、詳細は後述する加圧部50が固定されている。本実施形態では、被混練物Wは高分子材料と粉末材料とからなる2種類の材料で構成されている。
【0017】
高分子材料の被混練物Wとしては、熱可塑性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(低密度・高密度・直鎖状低密度・超高分子量)、アイオノマー樹脂(例えばエチレン−メタクリル酸コポリマーアイオノマー樹脂等)、ポリプロピレン(ホモ・ランダム・ブロック・アタクチック・シンジオタクチック)、超高分子量ポリプロピレン、ポリブテン、4−メチルペンテン−1ポリマー、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂など)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、酢酸セルロース、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、生分解性ポリマー、及びその共重合体などを用いることができる。
【0018】
また、粉末粒子の被混練物Wとしては、分子材料と複合化できる材料であれば特に限定されるものではなく、たとえば無機物では硫酸バリウム・炭酸カルシウムなどの金属無機塩、アルミナなどの金属酸化物、窒化ホウ素などの窒素化合物、粉末炭素・針状炭素、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの単一物もしくは複合物、有機物ではポリ4フッ化エチレン粉末・超高分子量粉末・ポリイミド粉末などを添加してもよい。無機物と有機物との複合粒子であっても構わない。また、上記無機粒子の添加量についても、高分子材料と複合化できる量であれば特に限定されるものではない。無機粒子の複合化に際して、使用する無機粒子は単独であっても、二種類以上の複合であっても良い。
【0019】
また、被混練物Wにおいて樹脂混合物に分散させる成分として常用の各種添加成分、例えば、相溶化剤、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤などの添加剤を用いても良い。
【0020】
図2は、混練機1を一部破断して示す斜視図である。図1及び図2に示すように、混練部10は、略円柱状の混練スクリュー12と、混練スクリュー12を回転させる混練スクリュー駆動部14と、混練スクリュー12を囲繞して混練スクリュー12との間に被混練物Wを混練する混練空間Q1を形成するとともに混練空間Q1で混練された被混練物Wの流動体W1を排出する混練部排出口11bが設けられた混練シリンダー部11aと、混練部排出口11bを開閉する混練部開閉機構18と、混練空間Q1内で被混練物Wを循環させる循環流路13と、を有する。
【0021】
本実施形態の混練シリンダー部11aは、混練部本体11の内部に円柱状の穴部として水平方向に延びて形成されている。また、混練スクリュー12は外周部に螺旋状のスクリュー12aが形成され、混練シリンダー部11aの内部に混練シリンダー部11aと同軸に配置されている。これにより、混練スクリュー12は混練空間Q1内で混練部排出口11bの方向に被混練物Wを搬送できるようになっている。
また、混練部排出口11bは、混練シリンダー部11aの軸線方向に沿って形成されている(図3参照)。
また、本実施形態の循環流路13は、混練スクリュー12の内部に形成されている。すなわち、循環流路13は、混練スクリュー12の先端側である混練部排出口11b側の端部に形成された先端側開口13aから混練スクリュー12の基端側において混練スクリュー12の外周面に形成された基端側開口13bまで延びて設けられている。基端側開口13bは、混練スクリュー12の径方向に対向する外周面の二箇所に開口されている。
【0022】
混練スクリュー駆動部14は、混練スクリュー12の基端側で混練部本体11の外面に取付けられ、混練スクリュー12を例えば2段階に速度を変えて回転させることが可能になっている。
【0023】
図3は、混練機1を一部断面で示す側面図である。図3に示すように、混練部開閉機構18は、混練部排出口11bの軸線に直交する方向に進退動作して流路を塞ぐことが可能な板状の混練シャッター18aと、混練シャッター18aを進退動作させる混練シャッター開閉部18bと、を有する。
【0024】
混練部本体11には、上面から鉛直下方に延びて混練シリンダー部11aの内部に連通する材料投入口15aが形成され、この材料投入口15aには被混練物W(図1参照)を貯留し材料投入口15aに供給するホッパー15が取付けられている。
また、図3に示すように、混練部10とバッファー部20との間には、互いに噛み合う一対のギア42、43を有し流動体W1をバッファー部20へ搬送する第二のギアポンプ40が介在されている。ギア42、43は図示しないポンプモーターによってケース41の内部で回転動作し、これによりギア42、43とケース41との間に生じる空間に沿って流動体W1をバッファー部20側へ搬送することができる。
【0025】
バッファー部20には、混練部排出口11bに連通するバッファー部開口24が形成されており、これに連通して被混練物の流動体W1が貯留されるバッファー空間Q2が形成されている。バッファー空間Q2は、中心軸線が鉛直方向に向かう柱状の孔部として形成されている。本実施形態ではバッファー空間Q2は円柱状の孔部として形成されている。
【0026】
バッファー空間Q2の最大容積は、混練空間Q1の容積よりも大きいことが好ましく、例えばバッファー空間Q2の最大容積は混練空間Q1の容積の4〜5倍程度に設定されていてもよい。これは、混練部10において被混練物Wを混練している最中にバッファー部20から流動体W1を途切れることなく排出させるためであるとともに、バッファー部20から流動体W1が完全に排出される前に混練部10で混練された後続の流動体W1の全量をバッファー空間Q2に充填可能にするためである。
【0027】
また、バッファー部には、バッファー空間Q2に貯留された流動体W1を加圧する加圧部50が設けられている。図2及び図3に示すように、加圧部50は、バッファー空間Q2の内壁面20bに密着しながら摺動移動可能なピストン51と、ピストン51の中心からバッファー空間Q2の軸線方向に延びるネジ部52と、ネジ部52をバッファー部筐体21に対して回転させる回転駆動部53とを備え、ネジ部52は軸回りに回転するに従って中心軸線方向に進退動作可能である。ネジ部52の進退動作と連動してピストン51もバッファー空間Q2の軸線方向に進退動作する。従って、バッファー空間Q2の容積はピストン51の位置によって変動する。
【0028】
また、加圧部50には、バッファー部20の内部のバッファー空間Q2における流動体W1の圧力に応じて流動体W1にかける圧力を調整する圧力調整手段70が設けられている。図4は圧力調整手段70の構成を示すブロック図である。
圧力調整手段70は、バッファー部20の内壁面に配置されてバッファー空間Q2における圧力を検知する圧力センサ71を備え、圧力センサ71によって検知された圧力の値に基づいて第二のギアポンプ40と回転駆動部53との動作を制御する制御信号を送信するものである。
【0029】
排出部30は、バッファー空間Q2に連通する筒状に形成されており、バッファー部20の鉛直下方に突出された排出パイプ31を有する。さらに、排出部30はバッファー部20の鉛直下方に固定されたケース61の内部に配置され互いに噛み合う一対のギア62、63を有する第一のギアポンプ60を備えている。
また、排出パイプ31はバッファー部20の外部に排出部開口31aを有し、流動体W1をバッファー部20の外部に排出するための排出口になっている。
【0030】
排出部開口31aは、流動体W1を所定の形状に形成する図示しない成形部に接続可能であり、公知の押出し成形機等の成形部を適宜採用して接続できるようになっている。混練機1と成形部とを組み合わせることによって被混練物Wの流動体W1から押出し成形品を成形する成形装置を構成することができる。
【0031】
以上に説明する構成の、本実施形態の混練機及び成形装置の使用時の動作、及び被混練物の流動体の製造方法について、図5から図9を参照しながら説明を行う。
図5は、混練機1の使用時の動作を示す側面図である。混練機1は、初期状態では混練シャッター18aによって混練部排出口11bは閉鎖されており、混練空間Q1は材料投入口15aが外部に開口されている。
【0032】
使用者は混練スクリュー駆動部14を駆動して混練スクリュー12を軸回りに回転させる。このとき、混練スクリューの2段階の回転速度のうち速い方の第2の回転速度で回転させる。そして、ホッパー15に貯留された被混練物Wのうち一度に混練部10で混練される一定量を、材料投入口15aを通して混練シリンダー部11aの内部に投入する。
【0033】
すると、図5に示すように、混練シリンダー部11a内に投入された被混練物Wは、混練スクリュー12のスクリュー12aの回転により混練空間Q1を通って混練スクリュー12の先端側へ移動されてゆく。
この間、被混練物Wは混練空間Q1において混練スクリュー12から剪断力を受けて発熱、溶融し、被混練物Wが流動体W1となって混練されてゆく。そして、混練スクリュー12の先端に到達した流動体W1は、混練スクリュー12と混練シリンダー部11aとの間で大きな剪断力を受けつつ先端側開口13a(図2参照)から循環流路13(図2参照)に流入し、基端側開口13b(図2参照)から再び混練スクリュー12の外周面へと排出されて混練空間Q1内を通じて混練スクリュー12の先端側に押出される。こうして、一定量の被混練物Wは流動体W1として、混練空間Q1及び循環流路13内を循環しながら繰返し混練されてゆく(混練工程S1)。
【0034】
このようにして、被混練物Wが一定時間混練されて一回目の混練が終了すると、図6に示すように、混練部開閉機構18によって混練シャッター18aが開放されて混練部排出口11bから流動体W1が排出される。このとき、混練スクリュー駆動部14は、上述の第2の回転速度よりも低速な第1の回転速度で混練スクリュー12を回転させ、混練空間にある流動体W1が順次混練部排出口11bへと搬送される。混練部排出口11bに搬送された流動体W1はギアポンプ40によってバッファー部20側へと搬送され、流動体W1はバッファー部20のバッファー空間Q2に充填される(搬送工程S2)。
【0035】
図6に示すように、バッファー部20の内部に搬送された流動体W1は、重力に従ってバッファー空間Q2の下から堆積してゆく。混練空間Q1において混練された流動体W1がすべてバッファー部20へと搬送されたら、ギアポンプ40を停止させ、さらに混練部開閉機構18を動作させて混練シャッター18aによって混練部排出口11bを閉鎖させ、上述と同様に被混練物Wを混練空間Q1及び循環流路13内で混練して後続の流動体W1を製造する。
【0036】
混練部10における混練工程S1は、バッファー部20のバッファー空間Q2に所定量の流動体W1が貯留されるまで繰り返され、その間、バッファー部20に貯留された流動体W1はバッファー空間Q2に保持されている。
【0037】
バッファー部20に所定量の流動体W1が貯留されたら、加圧部50において回転駆動部53によってネジ部52が回転動作され、ピストン51が鉛直下方に摺動移動し、流動体W1を鉛直下方へと押圧する。このため、流動体W1にはピストン51による一定の圧力が加えられている(加圧工程S3)。
【0038】
加圧工程S3では、圧力調整手段70は、圧力センサ71からの圧力値に基づいて、流動体に好適な圧力がかかるように回転駆動部53を制御して流動体W1にかかる圧力を所定圧力以上に維持するように調整している。なお、流動体W1に加えられる圧力の上限値は、バッファー部20等の強度に応じた最大圧力を超えないように設定される。
続いて、第一のギアポンプ60が駆動され、ギア62、63が軸回りに回転動作される。すると、図7に示すように、排出部30の排出パイプ31の排出部開口31aから流動体W1が排出される。(排出工程S4)
排出部開口31aから押出された流動体W1は、上述した成形部等によって所定の形状に成形され、押出し成形品となる。
【0039】
以下では、混練部10で混練可能な一定量以上の流動体W1を連続的に排出させる際の混練機1の動作について詳述する。
混練部10で混練可能な一定量以上の流動体W1を排出させるためには、排出部30から流動体W1を排出させる排出工程S4の間に断続的に搬送工程S2が介在する必要がある。このとき、混練部10の混練部排出口11bからバッファー部20のバッファー部開口24に至る流路が連通されているので、加圧部50によって流動体W1にかかる圧力の一部が混練部10側へかかる。従って、このとき排出部30において流動体W1の圧力に変動が生じている。
【0040】
図8は、バッファー部20のバッファー空間Q2における流動体W1の残量を経時的に示すグラフである。縦軸には流動体W1の量を示し、横軸には時間を示している。
図8に示すように、初期状態(時間T0)では、バッファー空間Q2に貯留される流動体の残量はV0(まったく貯留されていない)である。時間T0から時間T1の間では、混練部10において一回目の混練工程S1が行われている。
時間T1から時間T2の間では搬送工程S2が行われ、バッファー部20へ流動体W1が搬送される。このとき、バッファー空間Q2の内部では流動体W1の残量が残量V0から残量V2まで増加する。残量V2はバッファー空間Q2の容積以下の量であり、バッファー空間Q2における流動体W1の残量が残量V2を超えた後に排出部30の動作が開始される。なお、一回の混練工程で残量V0からV2まで増加させるだけの混練ができない場合には混練工程S1と搬送工程S2とを繰り返して流動体W1を製造する。
【0041】
排出部30では、時間T2以降は連続的に第一のギアポンプ60が動作され、第一のギアポンプ60の動作によって流動体W1が連続的に排出されている。このとき、混練部10においては時間T2から時間T3までの間に後続の被混練物Wを混練する混練工程S1が行われている。
【0042】
時間T3では、バッファー空間Q2における流動体W1の残量は残量V1になっている。残量V1は、バッファー空間Q2から排出部30へと流動体W1を搬送する際に流動体W1が途切れずに供給できる量として設定されている。流動体W1の残量が残量V1を下回った際には、混練部10で二回目に混練された被混練物Wの流動体(便宜的に「後続の流動体W2」と称する)が上述と同様に搬送工程S2によってバッファー部20へと搬送され、バッファー空間Q2における残量は再び残量V2まで増加する。
【0043】
また、図9は、排出工程S4の間に断続的に搬送工程S2が介在する際のバッファー空間Q2内の圧力変動を模式的に示すグラフである。縦軸は圧力値を示しており、横軸は時間を示している。
図9において、L1は回転駆動部53が動作されることによるピストン51による加圧である。またL2は第二のギアポンプ40が動作されることによる加圧である。なお、縦軸のP2は排出部30から流動体W1を排出する際に好適な圧力値として設定された値である。
【0044】
時間T1において一回目の混練工程S1が完了して搬送工程S2が開始されると、バッファー部20の内部のバッファー空間Q2には流動体W1が搬送され、第二のギアポンプ40によって圧力P2を超える圧力P3までバッファー空間Q2の流動体W1が加圧される。
【0045】
時間T2において搬送工程S2が完了したら、第二のギアポンプ40は停止され、これに変わって回転駆動部53が駆動されてピストン51による流動体W1の加圧が開始される。時間T2から時間T3までの間では、ピストン51によって流動体W1の圧力が圧力P2を超える圧力P3になるように調整されている。時間T2以降は排出部30から流動体W1が連続的に排出されており、バッファー空間Q2における流動体W1の圧力は漸次減少してゆくため、この減少を補償するようにピストン51を漸次押し下げてゆく。
【0046】
時間T3においてバッファー空間Q2における流動体の残量がV1以下になった際には、混練空間Q1からバッファー空間Q2へ流動体W1を搬送するために混練空間Q1とバッファー空間Q2とが連通状態となるが、このとき、圧力調整手段70は、ピストン51による加圧を弱め、圧力P2付近を目標圧力とするように設定を変更する。同時に第二のギアポンプ40を動作させて混練空間Q1から後続の流動体W1を搬送させる。従って第二のギアポンプ40による流動体W1の加圧によってバッファー空間Q2における流動体W1の圧力は圧力P2以上に上昇する。
【0047】
時間T4において搬送工程S2が完了したら上述のように第二のギアポンプ40による加圧から回転駆動部53による加圧に切り替える。
【0048】
このように、時間T2以降はバッファー空間Q2には少なくとも残量V1以上の流動体W1が残っており、さらに流動体W1の圧力が圧力P2を下回らないように調整されているので、排出部30が連続的に駆動されてもバッファー部20の内部の流動体W1が枯渇することが抑制され、かつ、流動体W1の残量が減少しても流動体W1の圧力は好適な圧力値を維持できる。従って、排出部30から一定量以上の流動体を排出することができ、一定量以上の流動体を要する成形品を成形することができる。
【0049】
なお、図9に符号L2で示すように、第二のギアポンプ40による加圧は、時間T2−T3間、時間T4−T5間においてもわずかに行われている。これは、第二のギアポンプ40の内部において部品間の隙間から流動体W1が逆流する場合を想定した制御である。したがって、この逆流が無視できる程度であれば第二のギアポンプ40を完全に停止して加圧をゼロにしても構わない。
【0050】
上述したように、本実施形態の混練機、成形装置、被混練物の流動体の製造方法によれば、混練部排出口11bからバッファー部20へと排出された流動体W1は、加圧部50によって加圧されながら排出部30から排出される。従って、混練部において一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる。
【0051】
また、混練部10からバッファー部20に流動体W1を搬送する際、および排出部30から流動体W1が排出される際の流動体W1の圧力変動を補償する圧力調整手段70が備えられているので、流動体W1を断続的にバッファー部20へ搬送しても、また排出部30から流動体W1を排出しても、排出部30において流動体W1にかかる圧力の変動を抑えることができる。これにより、押出し成形品の寸法精度を向上させることができる。
また、排出部から一定量以上の被混練物の流動体が連続的に排出されて成形部へと供給されるので、一定量以上の流動体を要する押出し成形品等の製品を製造することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 混練機
10 混練部
11a 混練シリンダー部
12 混練スクリュー
13 循環流路
14 混練スクリュー駆動部
18 混練部開閉機構
20 バッファー部
30 排出部
40 第二のギアポンプ
50 加圧部
60 第一のギアポンプ
70 圧力調整手段
S1 混練工程
S2 搬送工程
S3 加圧工程
S4 排出工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被混練物を混練する混練部と、
該混練部によって混練された被混練物の流動体が貯留されるバッファー部と、
前記流動体を前記バッファー部の外部に排出する排出部と、
を備えてなり、
前記混練部は、
軸状の混練スクリューと、
該混練スクリューを軸回りに回転させる混練スクリュー駆動部と、
前記混練スクリューを囲繞して該混練スクリューとの間に前記被混練物を混練する混練空間を形成するとともに該混練空間で混練された前記被混練物の流動体を排出する混練部排出口が設けられた混練シリンダー部と、
前記混練部排出口を開閉する混練部開閉機構と、
前記混練空間内で前記被混練物を循環させる循環流路と、
を有し、
前記バッファー部は、
前記流動体に対して所定圧力以上の圧力を維持するように加圧する加圧部を有することを特徴とする混練機。
【請求項2】
前記加圧部は、
前記バッファー部の内部における前記流動体の圧力に応じて前記流動体にかける圧力を調整する圧力調整手段を有する請求項1に記載の混練機。
【請求項3】
前記排出部は、前記バッファー部の鉛直下方に配置され互いに噛み合う一対のギアを有する第一のギアポンプを備えている請求項1または2に記載の混練機。
【請求項4】
前記混練部と前記バッファー部との間に、
互いに噛み合う一対のギアを有し前記流動体を前記バッファー部へ搬送する第二のギアポンプが介在されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の混練機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の混練機と、
該混練機によって混練され前記排出部から排出された前記流動体を所定の形状に成形する成形部と、
を備えることを特徴とする成形装置。
【請求項6】
被混練物を混練して被混練物の流動体にする混練工程と、
該混練工程に続いて前記流動体を貯留可能なバッファー部に前記流動体を搬送する搬送工程と、
前記バッファー部の内部で前記流動体を加圧する加圧工程と、
前記バッファー部から前記流動体を排出する排出工程と、
を備える被混練物の流動体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20342(P2011−20342A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167105(P2009−167105)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】