説明

混練装置

【課題】攪拌羽根を有する複数の回転軸を互いに平行に近接させて配した混練装置において、各回転軸の位相ずれを防止し、混練処理を効率よく行えるようにする。
【解決手段】互いに平行に近接して配された2本の回転軸5a、5bを、それぞれ互いに独立した2つのモータ7a、7bで回転駆動するようにし、これらの各モータ7a、7bの軸心をその駆動対象の回転軸5a、5bの軸心からずらし、各モータ7a、7bとその駆動対象の回転軸5a、5bとを等速ジョイント10、11を用いて連結して、各モータ7a、7bを互いに干渉することなく設置できるようにした。これにより、従来の減速機や歯車装置を不要とすることができ、構造の簡略化が図れるとともに、ギアのバックラッシュによる回転軸の位相ずれをなくし、効率よく混練処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌羽根を有する複数の回転軸を互いに平行に近接させて配した混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
混練装置は、液状や粉末状の被混練材料(以下、単に「材料」ともいう。)が供給されるケーシングの内部に、攪拌羽根を有する2本の回転軸を互いに平行に配し、これらの各回転軸を回転駆動することにより、ケーシングに供給された材料を各回転軸の攪拌羽根で混練するものが多い。
【0003】
ところで、上記のような2軸式の混練装置では、通常、被混練材料を効率よく混練するために、両回転軸をその攪拌羽根の外周の軌道が軸方向に重なり合うように互いに接近させており、その2本の回転軸を1つのモータで同時に回転駆動できるように、入力が1軸で出力が2軸の特殊な減速機を使用している。しかし、その減速機は多数の歯車の組合せからなる複雑な構造のもので、両回転軸の位相を変える等、運転条件を変更する際には、減速機の歯車の組合せを変える作業に非常に手間がかかるという問題がある。
【0004】
これに対して、2軸式混練装置において、各回転軸をそれぞれ互いに独立した2つのモータで駆動する構成とすることが提案されている(特許文献1参照。)。この提案によれば、上記のような特殊な減速機を不要とすることができ、構造の簡略化が図れるとともに、各モータの制御により両回転軸の位相差を調整したり逆転運転を行ったりする等、運転条件の変更が容易に行えるようになるとされている。また、各モータには高精度の制御が可能なACサーボモータやIPMモータ(磁石埋め込み型モータ)を用いることが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−69372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載された2軸式混練装置では、各モータとその駆動対象の回転軸とを減速機能のない歯車装置で連結している。これは、回転軸どうしの間隔が狭いため、各モータと回転軸との間に歯車装置を介在させて、各回転軸の延長線上から外れた位置にモータを配置することにより、各モータを互いに干渉することなく設置できるようにしたものと考えられる。
【0007】
しかしながら、上記のような歯車装置を設けているために、各モータを高い精度で制御して運転条件(両回転軸の位相差等)を適切に設定しても、歯車装置のギアのバックラッシュによる回転軸の位相のずれが生じて、運転条件設定時の両回転軸の位相差を維持することができなくなり、必ずしも効率よく混練処理を行えないおそれがある。特に、逆転運転を行った場合は、回転軸の位相ずれが生じやすく、材料の混練度が低下しやすい。
【0008】
そこで、本発明は、攪拌羽根を有する複数の回転軸を互いに平行に近接させて配した混練装置において、各回転軸の位相ずれを防止し、混練処理を効率よく行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では、被混練材料が供給されるケーシングの内部に、攪拌羽根を有する複数の回転軸を互いに平行に配し、これらの各回転軸をそれぞれ互いに独立した複数のモータで回転駆動するようにした混練装置において、前記複数のモータのうちの少なくとも1つのモータの軸心をそのモータが回転駆動する回転軸の軸心からずらし、この軸心をずらしたモータと回転軸とを、交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構を用いて連結した構成を採用した。
【0010】
すなわち、少なくとも1つのモータとそのモータが回転駆動する回転軸の軸心をずらし、その両者を交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構で連結して、各モータを互いに干渉することなく設置できるようにしたのである。これにより、従来の減速機や歯車装置を不要とすることができ、構造の簡略化が図れるとともに、ギアのバックラッシュによる回転軸の位相ずれがなくなるので、運転条件設定時の両回転軸の位相差を維持して効率よく混練処理を行うことができる。
【0011】
本発明は、前記複数の回転軸のうちの少なくとも2本を、その攪拌羽根の外周の軌道が軸方向で重なり合うものとした混練装置に対して、特に有効に適用できる。
【0012】
上記の構成においては、前記複数のモータのすべてを、前記回転伝達機構を用いて前記回転軸と連結するようにしてもよい。
【0013】
前記回転伝達機構としては等速ジョイントを採用することができる。そして、前記複数のモータのうちの少なくとも2つとそのモータが回転駆動する回転軸とを、前記等速ジョイントを用いて連結する場合は、その複数の等速ジョイントを軸方向にずらして配置することにより、等速ジョイントどうしの干渉を生じにくくすることができる。
【0014】
また、前記等速ジョイントを潤滑槽内の潤滑材に浸漬するようにすれば、潤滑材を封入するためのブーツが不要となるので、等速ジョイントどうしの干渉を一層生じにくくできるし、連結する2軸の交差角度を大きくとれるようになり、モータ設置位置の自由度を広げることができる。
【0015】
さらに、前記モータとしてサーボモータを採用すれば、高精度の制御が可能となり、一層効率よく混練処理を行えるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の混練装置は、上述したように、少なくとも1つのモータとそのモータが回転駆動する回転軸とを、交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構を用いて連結して、各モータを互いに干渉することなく設置できるようにしたものであるから、従来の減速機や歯車装置を組み込んだものに比べて、構造が簡単なうえ、ギアのバックラッシュによる回転軸の位相ずれがなく、効率よく混練処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】aは第1実施形態の混練装置の本体の縦断正面図、bはaのI−I線に沿った断面図
【図2】第1実施形態の混練装置の駆動部の横断平面図
【図3】図2の縦断正面図
【図4】aは図2のモータ側の等速ジョイントの縦断正面図、bはaのIV−IV線に沿った断面図
【図5】図2の回転軸一端部付近を拡大して示す横断平面図
【図6】第2実施形態の混練装置の駆動部の横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図5は第1の実施形態を示す。この混練装置は、図1に示す本体1と図2および図3に示す駆動部2とからなる。
【0019】
図1(a)、(b)に示すように、前記本体1は、同径の2つの円が交差する断面形状を有する筒状のケーシング3の内部に、軸方向に沿って多数のパドル(攪拌羽根)4が設けられた2本の回転軸5a、5bを互いに平行に配したものである。
【0020】
前記ケーシング3は、一端側上部に供給口3aを、他端側下部に排出口3bをそれぞれ有し、両端を蓋部材3c、3dで閉じられている。また、その供給口3aと排出口3bを除く外周面に加熱・冷却用のジャケット6が設けられている。
【0021】
前記2本の回転軸5a、5bは、そのパドル4の外周の軌道が軸方向に重なり合うように近接しており、それぞれの一端部をケーシング3一端側の蓋部材3cから突出させている。そのパドル4は、被混練材料を混練(攪拌)するとともに排出側へ送るもの、混練のみを行うもの、混練と逆送りを行うもの等、数種類がその機能に応じて軸方向の所定の位置に組み込まれている。なお、回転軸としては、このような数種類のパドルを組み込んだものに限らず、一種類のパドルを軸方向に間隔をおいて組み込んだものや、外周にスクリュ形の攪拌羽根が形成されたもの等も用いることができる。
【0022】
そして、各回転軸5a、5bを回転駆動することにより、ケーシング3の供給口3aから供給された被混練材料を各回転軸5a、5bのパドル4で混練しながらケーシング3の他端側へ送り、混練の完了した材料を排出口3bから排出するようになっている。
【0023】
図2および図3に示すように、前記駆動部2は、前記本体1の2本の回転軸5a、5bをそれぞれ互いに独立した2つのモータ7a、7bで回転駆動するものである。これらの各モータ7a、7bには、サーボモータ、例えば一般的なACサーボモータやIPMモータ等が用いられる。
【0024】
前記各モータ7a、7bは、その軸心が駆動対象の回転軸5a、5bの軸心と平行にずれた状態で基台8上に設置されている。そして、各モータ7a、7bと回転軸5a、5bとは、両者の軸心と交差する方向に延びる連結シャフト9と、交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構である等速ジョイント10、11とにより連結されている。また、各等速ジョイント10、11は、隣り合うものどうしが軸方向にずれた位置に配されている。
【0025】
前記モータ7a、7b側の等速ジョイント10は、一般的な構造のもので、図4(a)、(b)に示すように、一端にカップ部12aを有するアウターレース12と、アウターレース12のカップ部12aに一端部を挿入されるインナーヘッド13と、アウターレース12のカップ部12a内周面の溝とインナーヘッド13の一端部外周面の溝との間に組み込まれる複数のボール14と、各ボール14を保持するケージ15とを備え、アウターレース12が接続されるモータ7a、7bの出力軸とインナーヘッド13が接続される連結シャフト9との間で回転伝達を行うようになっている。また、蛇腹状のブーツ16がその両端部をアウターレース12のカップ部12aとインナーヘッド13に固定され、このブーツ16の内側にグリース等の潤滑材(図示省略)が封入されている。
【0026】
一方、前記回転軸5a、5b側の等速ジョイント11は、図2および図3に示すように、基台8上に設置した潤滑槽17内の潤滑材18に浸漬され、潤滑材封入用のブーツは有していない。このように等速ジョイント全体の外径を大きくするブーツをなくしたこと、および前述のように2つを軸方向にずらして配置したことにより、隣り合うものどうしを干渉することなく近接して設置することが可能となっている。その他の部分の構成はモータ7a、7b側の等速ジョイント10と同じであり、連結シャフト9と回転軸5a、5bとの間で回転伝達を行うようになっている。
【0027】
また、前記基台8には、本体1と隣接する位置に、ケーシング3の一端側の蓋部材3cと凹凸嵌合する回転軸支持台19が設置され、この回転軸支持台19内に各回転軸5a、5bを回転自在に支持するベアリング20が設けられている。
【0028】
前記各ベアリング20は、図5に示すように、3つのアンギュラ玉軸受を組み合わせて回転軸5a、5bに作用するスラスト力を負荷できるようにしたもので、隣り合うものどうしが互いに干渉しないように軸方向にずれた位置に配されている。
【0029】
この混練装置は、上記の構成であり、2本の回転軸5a、5bが互いに近接するように配置されているが、各モータ7a、7bとその駆動対象の回転軸5a、5bとを、交差する2軸間の回転伝達が可能な等速ジョイント10、11を用いて連結して、各モータ7a、7bを互いに干渉することなく設置できるようにしたので、従来の減速機や歯車装置を組み込む必要がない。このため、従来よりもシンプルな構造とすることができるとともに、ギアのバックラッシュがないため、逆転運転等による回転軸5a、5bの位相ずれが生じにくく、運転条件設定時の両回転軸5a、5bの位相差を維持して効率よく混練処理を行うことができる。
【0030】
また、前記モータ7a、7bにはサーボモータを用いているので、高精度の制御が可能である。例えば、ケーシング3内での材料の発熱を抑えながら混練度を向上させるために、運転中に回転数を変化させるパターンや逆転運転を行うパターンを組み込むことができる。また、両回転軸5a、5bの回転速度を異ならせたり、両回転軸5a、5bの位相差を任意に変更したりすることにより、材料の混練度向上やパドル4の局所熱劣化防止を図ることもできる。
【0031】
なお、上述した第1の実施形態では、各モータ7a、7bと回転軸5a、5bとを連結するのにそれぞれ2つの等速ジョイント10、11を用いたが、各モータ7a、7bをその軸心が回転軸5a、5bの軸心と交差する方向にずれた状態で設置して、モータ7a、7bの出力軸と連結シャフト9とを直接に(等速ジョイント10を介さずに)接続するようにしてもよい。
【0032】
図6は第2の実施形態を示す。この実施形態では、第1実施形態の等速ジョイント10、11の代わりに、交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構としてフレキシブルシャフト21を採用している。各フレキシブルシャフト21は、一端をモータ7a、7bの出力軸に直接に接続され、他端を回転軸5a、5bにキー結合した中間シャフト22に接続されている。また、各フレキシブルシャフト21の中央部および中間シャフト22の中央部は、それぞれ基台8上に設置されたシャフト支持台23、24に回転自在に支持されている。
【0033】
なお、前記回転伝達機構としては、軸方向寸法のコンパクト性、トルク伝達の効率、位相ずれの生じにくさの面から、第1実施形態のような等速ジョイントを用いることが望ましいが、コスト面等を考慮すれば、第2実施形態のようなフレキシブルシャフトのほか、ユニバーサルジョイント等も採用することができる。
【0034】
また、上述した各実施形態では、各モータとその駆動対象の回転軸とを等速ジョイントまたはフレキシブルシャフトを用いて連結しているが、いずれか一方のモータのみを、交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構を用いて回転軸と連結し、他方のモータはその駆動対象の回転軸と同一軸心上に配置するようにしてもよい。
【0035】
また、本発明は、各実施形態のような連続式の混練装置だけでなく、バッチ式の混練装置にも適用できるし、連続式またはバッチ式の混練装置が回転軸とその駆動モータを3組以上備えている場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 本体
2 駆動部
3 ケーシング
4 パドル(攪拌羽根)
5a、5b 回転軸
7a、7b モータ
8 基台
9 連結シャフト
10、11 等速ジョイント
17 潤滑槽
18 潤滑材
19 回転軸支持台
20 ベアリング
21 フレキシブルシャフト
22 中間シャフト
23、24 シャフト支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被混練材料が供給されるケーシングの内部に、攪拌羽根を有する複数の回転軸を互いに平行に配し、これらの各回転軸をそれぞれ互いに独立した複数のモータで回転駆動するようにした混練装置において、前記複数のモータのうちの少なくとも1つのモータの軸心をそのモータが回転駆動する回転軸の軸心からずらし、この軸心をずらしたモータと回転軸とを、交差する2軸間の回転伝達が可能な回転伝達機構を用いて連結したことを特徴とする混練装置。
【請求項2】
前記複数の回転軸のうちの少なくとも2本を、その攪拌羽根の外周の軌道が軸方向で重なり合うものとしたことを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
前記複数のモータのすべてを、前記回転伝達機構を用いて前記回転軸と連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の混練装置。
【請求項4】
前記回転伝達機構として等速ジョイントを採用したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の混練装置。
【請求項5】
前記複数のモータのうちの少なくとも2つとそのモータが回転駆動する回転軸とを、前記等速ジョイントを用いて連結し、その複数の等速ジョイントを軸方向にずらして配置したことを特徴とする請求項4に記載の混練装置。
【請求項6】
前記等速ジョイントを潤滑槽内の潤滑材に浸漬したことを特徴とする請求項4または5に記載の混練装置。
【請求項7】
前記モータとしてサーボモータを採用したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の混練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40523(P2012−40523A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185101(P2010−185101)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】