説明

混練設備

【課題】 混練設備において、スクリュ軸の基端側だけを軸受で支持する片持ち構造を採用しつつもスクリュ軸の先端がバレルに接触することを抑制する。
【解決手段】本発明の混練設備1は、材料を混練するスクリュ軸2とスクリュ軸2が内部に挿入可能とされたバレル3とを備えており、スクリュ軸2とバレル3との間にはスクリュ軸2が回転中にバレル3に接触することを磁力を用いて防止する接触防止手段13が設けられている。なお、混練設備1は、スクリュ軸2を2軸備えた押出機であるのが好ましく、スクリュ軸2は回動自在に支持された基端側に対して先端側が自由端とされているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレルに対するスクリュ軸の接触を防止することができる混練設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出機や混練機などの混練設備は、材料を混練するスクリュ軸と、このスクリュ軸が内部に挿入可能とされたバレルとを備えていて、バレル内に供給された材料に対してスクリュ軸を回転させることで混練が行われる。例えば、特許文献1には、このようなスクリュ軸とバレルとを備えた2軸押出機が開示されている。
この特許文献1の押出機では、スクリュ軸の基端側はバレルに設けられた軸受により回転自在に支持されており、またスクリュ軸の先端側は基端側のような支持機構を備えておらず、自由端となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−220579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した押出機は、スクリュ軸の先端側を自由端としたまま基端側だけを軸受で支持する片持ち構造を採用している。このような片持ち構造ではスクリュ軸の先端側が基端側に対して振れて、スクリュ軸がバレルに接触していわゆる「摩耗」が発生する可能性が高くなる。
特に、押出機のように材料に大きな吐出圧を加える場合やスクリュ軸の回転速度が大きい場合は、スクリュ軸に大きな荷重が加わるため、スクリュ軸に大きな振れが生じる可能性が高くその分摩耗も起きやすい。このような摩耗が発生すると、摩耗粉が混入して材料の混練品質を悪化させる虞があり、高い生産能力を実現することも困難となる。
【0005】
そこで、このような片持ち構造のスクリュ軸に代えて、両持ち構造のスクリュ軸を採用することも考えられる。両持ち構造のスクリュ軸では、スクリュ軸の先端をダイを貫通して伸ばし、ダイの下流側に軸受を設けてスクリュ軸の先端側を支持する必要がある。
ところが、混練設備の下流側にはペレタイザのような設備や水槽が付帯されることが多く、ダイの下流側に軸受を設けると軸受が邪魔になってこのような設備や水槽の設置スペースを物理的に確保し難くなる場合が多い。
【0006】
特に、押出機の場合は、スクリュ軸の先端がダイを貫通するため、材料の押出自体が阻害されたり、ダイの有効面積が減少して材料の吐出量が低下してしまう虞もある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、スクリュ軸の基端側だけを軸受で支持する構造を採用しつつもスクリュ軸の先端がバレルに接触することを抑制することができ、摩耗粉の混入がない材料を効率良く生産することができる混練設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の混練設備は、材料を混練するスクリュ軸と当該スクリュ軸が内部に挿入可能とされたバレルとを備えた混練設備であって、前記スクリュ軸とバレルとの間には当該スクリュ軸が回転中にバレルに接触することを磁力を用いて防止する接触防止手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
上述した混練設備は前記スクリュ軸を2軸備えた押出機であるのが好ましく、前記スクリュ軸は回動自在に支持された基端側に対して先端側が自由端とされている(片持ち構造とされている)のが好ましい。
なお、前記バレルがスクリュ軸の先端と対向する側に混練された材料を押し出すダイを備えている場合にあっては、前記接触防止手段はスクリュ軸の先端と前記ダイとの間に設けられているのが好ましい。
【0009】
このような接触防止手段としては、前記スクリュ軸の先端に取り付けられたスクリュ磁石と前記ダイに設けられ且つスクリュ磁石と対面する位置に配備されたダイ磁石とを有するものであって、前記スクリュ磁石とダイ磁石とが互いに対面する側が異極とされていて、両磁石の間に発生する磁気引力を用いて前記スクリュ軸がバレルに接触することを防止する構成とされたものを採用することができる。
【0010】
また、前記接触防止手段としては、前記ダイに設けられ且つ前記ダイ磁石の周囲に配備されたダイ外側磁石を有するものであって、前記スクリュ磁石とダイ外側磁石とが互いに対面する側が同極とされていて、両磁石の間に発生する磁気反力を用いて前記スクリュ軸がバレルに接触することを防止する構成とされたものを採用することもできる。
なお、前記接触防止手段としては、前記スクリュ軸の径方向外側部と当該スクリュ軸の外側部と対面するバレルとの間に配備されていて、磁気反力を用いて前記スクリュ軸がバレルに当接することを防止する構成を採用しても良い。
【0011】
このような接触防止手段としては、前記スクリュ軸が当該スクリュ軸の軸心を基準として径方向外側に向かって突出するフライトを備えている場合に、前記フライトの突端部に取り付けられたフライト磁石と、前記バレルに設けられ且つフライト磁石と対面する位置に配備されたバレル磁石とを有するものであって、前記フライト磁石とバレル磁石とが互いに対面する側が同極とされていて、両磁石の間に発生する磁気反力を用いて、前記スクリュ軸がバレルに接触することを防止する構成とされたものを採用することができる。
【0012】
また、前記バレルの内周に対して前記スクリュ軸のフライト頂面が近接乃至は接触する「摩耗位置」が存在する場合にあっては、当該摩耗位置に前記接触防止手段が設けられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の混練設備により、スクリュ軸の基端側だけを軸受で支持する構造を採用しつつもスクリュ軸の先端がバレルに接触することを抑制することができ、摩耗粉の混入がない材料を効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の混練設備の正面断面図である。
【図2】(a)はダイをスクリュ側から見た側面図、(b)は接触防止手段の平面断面図、(c)は第1実施形態の変形例のダイを(a)と同じ視野から見た側面図である。
【図3】第2実施形態の混練設備の正面断面図である。
【図4】接触防止手段が設けられた部分で混練設備を切断した側面断面図である。
【図5】第2実施形態の変形例の正面断面図である。
【図6】荷重に対するスクリュ軸のたわみの変化に対して、接触防止手段の有無が及ぼす効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「第1実施形態」
以下、本発明の混練設備1の第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1は第1実施形態の混練設備1の正面断面図である。この図1に示すように、第1実施形態の混練設備1は、材料を混練するスクリュ軸2と、このスクリュ軸2が内部に挿入可能とされたバレル3と、を備えている。本発明の混練設備1には押出機と連続混練機との双方が含まれるが、本実施形態ではスクリュ軸2を水平方向に並んで2軸備えた押出機(2軸押出機)を例に挙げて本発明の混練設備1を説明する。
【0016】
なお、以降の説明において、図1の紙面における左側を混練設備1を説明する際の基端側又は上流側と、また右側を混練設備1を説明する際の先端側又は下流側とする。また、スクリュ軸2の軸心を中心として径方向に沿って遠ざかる方向を混練設備1を説明する際の径外側とし、径外側からスクリュ軸2の軸心に近づく方向を径内側という。
スクリュ軸2は、バレル3の内部を軸方向に貫通するように左右一対設けられている。それぞれのスクリュ軸2は、材料を上流側から下流側に向かって送り出せるように軸方向に沿ってねじれたフライト4を有している。スクリュ軸2は、軸方向の中途側に、図示しない混練用フライトを有していて、この混練用フライトを回転させることでバレル3内の材料を混練できる構成となっている場合もある。
【0017】
スクリュ軸2の上流側には、このスクリュ軸2を回転駆動する回転機構5が設けられている。この回転機構5は、駆動モータ6、減速機7及びカップリング8(接手)から成っていて、駆動モータ6で発生した駆動軸10の回転駆動力を減速機7で減速しつつ二分して伝達し、二分された回転駆動力をカップリング8を介してそれぞれのスクリュ軸2に伝達し、軸受9により回転自在に支持されたスクリュ軸2を回転させる構成となっている。
【0018】
軸受9は、スクリュ軸2の基端側に少なくとも1箇所以上配備されていて、スクリュ軸2はこの基端側の軸受9により回転自在に支持されている。一方、スクリュ軸2の先端側は軸受9によって支持されておらず自由端となっていて、本実施形態の混練設備1に備えられるスクリュ軸2は回動自在に支持された基端側に対して先端側が自由端とされた片持ち構造を採用している。
【0019】
バレル3は、軸方向に沿って長い筒状に形成されている。バレル3の内部には断面がめがね孔状の空洞部が軸方向に沿って形成されており、この空洞部に一対のスクリュ軸2が回転自在に挿通されている。このバレル3は、スクリュ軸2の外周面から径方向に一定の距離を保つように設置されており、軸方向の下流側には混練された材料を押し出すダイ11を備えている。
【0020】
図2(a)はスクリュ軸2の先端側から見た場合のダイ11の側面図であり、図2(b)は上方から見た場合のダイ11の平面図である。図2(a)及び(b)に示すように、このダイ11は、バレル3の下流側端部に嵌め込まれており、スクリュ軸2の先端よりもさらに下流側に配備されている。ダイ11は、材料の押出を可能とする押出孔12を板厚方向に貫通状に備えた板部材であり、板面を軸垂直方向に向けるようにしてバレル3に取り付けられている。この押出孔12は、本実施形態ではスクリュ軸2の軸心に対応した位置とその周囲を囲む位置に複数箇所に亘って設けられている。
【0021】
ところで、上述したような片持ち構造の混練設備1であっても、スクリュ軸2は基端側が軸受9でしっかりと支持されているため、普通であれば回転中のスクリュ軸2の先端側がバレル3に接触することはない。しかしながら、押出機のようにバレル3内の材料に大きな吐出圧を加える場合やスクリュ軸2を高回転速度で回転させる場合は、スクリュ軸2に大きな力が加わるため振れが大きくなりやすく、スクリュ軸2がバレル3の内周面に接触していわゆる「摩耗」が起こる可能性も高くなってしまう。このような摩耗が起こると、スクリュ軸2やバレル3が摩耗して摩耗粉が発生し、摩耗粉が材料に混入して混練品質を悪化させる虞がある。また、摩耗粉の混入を防止すべくスクリュ軸2の回転速度を抑えざるを得ず、高い生産能力を発揮させることも困難となる。
【0022】
そこで、本発明の混練設備1は、スクリュ軸2とバレル3との間に、スクリュ軸2が回転中にバレル3に接触することを磁力を用いて防止する接触防止手段13を設けている。この接触防止手段13は、バレル3側に設けられる磁石と、スクリュ軸2側に設けられる磁石とを備えており、両磁石の間に作用する磁気反発力または磁気引力を利用してバレル3に対するスクリュ軸2の接触、言い換えれば摩耗を防止するものである。
【0023】
なお、上述した接触防止手段13は、磁石を配備する場所により様々な実施形態が考えられる。以降の説明では、スクリュ軸2の先端とスクリュ軸2より下流側に設けられるダイ11との間に設けられる接触防止手段13を第1実施形態として例示して、本発明の混練設備1を説明する。
図1及び図2に示すように、第1実施形態の混練設備1の接触防止手段13は、スクリュ軸2の先端に取り付けられたスクリュ磁石14と、このスクリュ磁石14と対面するダイ11に配備されたダイ磁石15及びダイ外側磁石16を有している。
【0024】
図2(b)に示すように、スクリュ磁石14は、スクリュ軸2の先端に略円筒状の凹部を先端側に向かって開口するように形成し、この凹部に埋め込むように取り付けられている。スクリュ磁石14は、凹部に挿入可能な円柱状の永久磁石であり、その重心がスクリュ軸2の軸心上に来るように配備されている。スクリュ磁石14は、一方の磁極を軸方向の上流側に、また他方の磁極を下流側に向けて配備されており、図例ではN極を下流側に向けて取り付けられている。
【0025】
図2(a)及び(b)に示すように、ダイ磁石15は、それぞれのスクリュ軸2に対応してダイ11の中央側に2箇所に亘って設けられた円柱状の磁石であり、中心(重心)がスクリュ軸2の軸心上に来るように配備されている。ダイ磁石15はスクリュ軸2側(上流側)を向く端面21がダイ11に対するスクリュ軸2の先端の投影面積程度に形成されており、このダイ磁石15の端面21の中央にはダイ磁石15を軸方向に貫通するように上述した押出孔12が形成されている。ダイ磁石15は、スクリュ磁石14と同様にそれぞれの磁極を軸方向の上流側と下流側とに向けるように配備されており、図例ではS極を上流側に向けて取り付けられている。
【0026】
ダイ外側磁石16は、ダイ磁石15を囲むようにダイ磁石15の外側に設けられた磁石である。2つ設けられるダイ磁石15の一方だけに着目すれば、ダイ外側磁石16はダイ磁石15と同心の円筒状の磁石であって内側にダイ磁石15が嵌め込まれたようになっており、その中心(重心)がスクリュ軸2の軸心上に来るように配備されている。本実施形態ではスクリュ軸2同士の距離が短いため2つのダイ外側磁石16は円筒同士の一部が重なり合うようになっており、ダイ外側磁石16は外観上「8」の字状の断面(メガネ状の断面)を備えた筒形状として形成されている。
【0027】
ダイ外側磁石16も、ダイ磁石15やスクリュ磁石14と同様にそれぞれの磁極を軸方向の上流側と下流側とに向けるように配備されており、図例ではN極を上流側に向けて取り付けられている。なお、ダイ外側磁石16にも、ダイ磁石15の押出孔12の回りを取り囲むように複数の押出孔12が形成されている。
図2(b)に示すように、スクリュ磁石14とダイ磁石15とは互いに対面する側が異極とされており、またスクリュ磁石14とダイ外側磁石16とは互いに対面する側が同極とされている。図例ではスクリュ磁石14のN極とダイ磁石15のS極とが互いに対面するようになっていて、両磁石間に磁気引力が発生するようになっている。また、スクリュ磁石14のN極とダイ外側磁石16のN極とが対面するようになっていて、両磁石間に磁気反発力が発生するようになっている。
【0028】
このようにスクリュ磁石14、ダイ磁石15及びダイ外側磁石16を配置するのは以下のような理由からである。
まず、スクリュ磁石14とダイ磁石15とを、スクリュ軸2の軸心上に重心が来るように且つ対面する側が異極となるように配備した場合、両磁石間には磁気引力が発生する。この磁気引力は、両磁石がスクリュ軸2の軸心上に並んで位置する限りは軸方向と平行に加わるが、スクリュ軸2に振れが発生してスクリュ軸2の軸心がダイ磁石15の重心から少しでもずれると軸に向かって(軸垂直方向に)力成分が生じ、スクリュ磁石14を元の位置に戻す方向に作用する。
【0029】
また、スクリュ磁石14とダイ外側磁石16とを、スクリュ軸2の軸心上に重心が来るように且つ対面する側が同極となるように配備した場合、両磁石間には磁気反発力が発生する。この磁気反発力は、両磁石の重心がスクリュ軸2の軸心上にある限り軸方向に沿って作用するが、スクリュ軸2に振れが発生してダイ外側磁石16の重心がスクリュ軸2の軸心上から少しでもずれると、スクリュ磁石14に近い側と遠い側とのバランスが崩れて軸に向かって(軸垂直方向に)力成分を生じ、磁気反発力がスクリュ磁石14を元の位置に戻す方向に作用する。
【0030】
そのため、本実施形態の接触防止手段13を設ければ、スクリュ軸2に振れが発生してもこの振れは大きくなることがなく、振れが高じてバレル3に対するスクリュ軸2の摩耗が発生することは防止されるのである。
なお、上述の例では、ダイ磁石15の外側にダイ外側磁石16が同心の円筒状に配備された例を挙げたが、図2(c)に示すようにダイ磁石15の外側のダイ11がすべてダイ外側磁石16で構成されていてもよい。このようにすれば、ダイ外側磁石16の面積が大きくなった分だけスクリュ磁石14に作用する磁気反発力が大きくなり、スクリュ軸2の振れをより確実に防止することができる。
【0031】
また、このように磁気を利用した接触防止手段13をスクリュ軸2とバレル3との間に設ければ、材料に鉄粉などの異物が入った際に、磁気を利用してこのような異物を取り除くことも可能となる。なお、このような磁気を利用した接触防止手段13は非磁性体の異物に対してはトラップが困難になるが、一般的な混練設備のスクリュ軸2やバレル3は鉄やステンレスなどで形成されていて、異物も強磁性体から形成されることが多いため、このような混練設備に対しては異物除去も可能な接触防止手段13を設けるのが非常に有効である。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態の接触防止手段13を説明する。
【0032】
図3に示すように、第2実施形態の接触防止手段13は、スクリュ軸2と、このスクリュ軸2から径方向に離れたバレル3との間に配備されている。具体的には、スクリュ軸2は、このスクリュ軸2の軸心を基準として径方向外側に向かって突出するフライト4を備えている。そして、接触防止手段13は、フライト4の突端部17に取り付けられたフライト磁石18と、バレル3の内周面に取り付けられたバレル磁石19とを有している。そして、このフライト磁石18とバレル磁石19とは同じ磁極を対面させるように配備されていて、両磁石間に作用する磁気反発力を用いてスクリュ軸2がバレル3に接触することを防止する構成とされている。
【0033】
まず、フライト磁石18が取り付けられるフライト4について説明する。
図4(a)は、スクリュ軸2をフライト磁石18が取り付けられた部分で軸垂直方向に沿って切断した断面図である。図4(a)に示すように、フライト4は、軸垂直方向に沿った断面形状が略楕円形とされていて、スクリュ軸2の軸心を基準として最も径方向外側に向かって突出する部分が軸心回りに2条備えられている。この径方向外側に向かって突出したフライト4の突端部17は、フライト4の外周面の中でも最もバレル3の内周面(スクリュ軸2の外周面から径方向に離れたバレル3の内周面)に近接する部分であり、バレル3の内周面との間に形成されるクリアランス(チップクリアランス)に材料を導いて材料の混練ができるようになっている。
【0034】
フライト磁石18は、軸心を挟んだフライト4の突端部17にそれぞれ形成された凹状部に埋め込むように取り付けられている。フライト磁石18は、凹状部に挿入可能な板状の磁石であって、いずれも一方の磁極を径外側に、他方の磁極を径内側に向けるように取り付けられている。
バレル磁石19は、フライト4の突端部17に対面するバレル3の内周面に形成された凹部に埋め込むように取り付けられている。バレル磁石19も、フライト磁石18と同様にそれぞれの磁極を径内側と径外側とに向けるようにして取り付けられている。
【0035】
このバレル磁石19とフライト磁石18とは、近接したときに両磁石の間に磁気反発力が生じるように対面する側の磁極が同極になるように配備されている。本実施形態ではバレル磁石19はN極を径内側に向けて、またフライト磁石18はN極を径外側に向けて配備されている。このようにすれば、バレル磁石19とフライト磁石18とが近接したときに両磁石の間に磁気反発力が生じて、フライト4がバレル3から離間するためバレル3に対してフライト4が接触することがなくなり、バレル3に対するフライト4の摩耗を防止することができる。
【0036】
バレル磁石19は、バレル3の内周面の中でも特にフライト4の突端部17との接触が起きやすいような「摩耗位置20」に少なくとも設けられているのが好ましい。この摩耗位置20は、材料に加わる圧力が最も大きくなる回転位相にフライト4があるときに、フライト4の突端部17と対面するバレル3の内周面に設けられる。
このような摩耗位置20にバレル磁石19を設けなくてはならないのは、以下のような理由による。
【0037】
例えば、図4(a)に示すように、一対のスクリュ軸2のフライト4がそれぞれ斜め上方又は斜め下方を向く場合に、材料からスクリュ軸2に加わる力が最大になるような混練設備を考える。このような混練設備では、上述した力を受けてスクリュ軸2が撓み、フライト4の突端部17がバレル3の斜め上方又は斜め下方の内周面に近接して、この位置で摩耗が起きやすくなる(以下、この位置を摩耗位置20と呼ぶ)。
【0038】
そこで、本発明の混練設備1では、図4(b)に示す摩耗位置20に形成された凹部にバレル磁石19を設けている。このようにすれば、摩耗位置20でバレル磁石19とフライト磁石18との間に磁気反発力が作用して、磁気反発力の作用でスクリュ軸2がバレル3から離間してその突端部17がバレル3に接触しなくなる。そのため、スクリュ軸2に振れが発生してもこの振れは大きくなることがなく、振れが高じてバレル3に対するスクリュ軸2の摩耗が発生することは防止されるのである。
【0039】
なお、上述したようにバレル磁石19はバレル3の内周面の中でも摩耗位置20に設けられるのが好ましいが、図4(c)に示すようにバレル磁石19をバレル3の内周面に周方向に亘って連続して複数設けることもできる。このようにすれば、周方向に亘って設けられたバレル磁石19との磁気反発力でスクリュ軸2が絶えず径内側にしっかりと保持され、接触防止手段13に磁気軸受としての機能を付与することも可能となる。
【0040】
また、上記第2実施形態では、スクリュ軸2における軸方向の中途側に接触防止手段13が配備された例を挙げたが、接触防止手段13を設ける位置はスクリュ軸2の軸方向の基端側や先端側でも良い。例えば、スクリュ軸2の先端側で特に振れが大きい場合は、図5に示すように接触防止手段13をスクリュ軸2の先端側に設けて、振れを効果的に防止しても良い。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の接触防止手段13の摩耗防止効果を、実施例及び従来例を用いてさらに詳しく説明する。
図6は、軸長1mで軸直径30mmのスクリュ軸2に対してその軸方向の中央に軸垂直方向に最大200Nの荷重Fを加えた場合に、荷重Fが加えられたスクリュ軸2にどの程度のたわみが生じるかをコンピュータシミュレーションで計算したものである。
【0042】
図6に示すように、接触防止手段13を備えていない従来例1のスクリュ軸2では、加えられる荷重Fが大きくなればなるほどたわみも比例して大きくなる傾向がある。図中の1点鎖線は、バレル3とスクリュ軸2との間に形成されるクリアランスであり、スクリュ軸2のたわみがこのクリアランスより大きくなると摩耗が発生し、たわみがこのクリアランスを超えない場合は摩耗は発生しないことを示している。従来例1では荷重Fに比例してたわみが急激に大きくなり、比較的小さな荷重Fでもたわみが1点鎖線を超え、摩耗が発生しやすいことが分かる。そのため、バレル3内の材料に加わる吐出圧が少しでも大きくなった場合やスクリュ軸2の回転速度が少しでも大きくなった場合、言い換えれば荷重Fが大きくなった場合には、摩耗が発生する可能性が高い。
【0043】
しかし、スクリュ軸2の先端側に荷重Fと軸垂直方向の反対方向に向かって荷重fを加えると、荷重Fに対するたわみの増加が抑えられ、たわみの変化曲線の傾きも緩やかになる。つまり、従来例1ほどたわみが急激に大きくならなくなるため、ある程度の荷重Fを加えても摩耗が発生する心配はない。
この摩耗防止効果は、スクリュ軸2の先端側に加えられる軸垂直方向の力fが大きくなるほど顕著になる。例えば、図中のaやbで示すようにスクリュ軸2の先端側に加えられる荷重fが中央に加える荷重Fの1/4以下である場合は、荷重Fが大きくなるとたわみがクリアランスより大きくなり、摩耗が生じる可能性が残る。
【0044】
しかし、図中のcで示すようにスクリュ軸2の先端側に加えられる荷重fが中央に加える荷重Fの1/4以上となる場合は、荷重Fが大きくなってもたわみがクリアランスを超えて大きくなることはなく、摩耗の発生を確実に防止することが可能となる。このことから、上述の接触防止手段13を設ける際は、スクリュ軸2の中央に加わる荷重Fの1/4以上となる荷重fがスクリュ軸2の先端側に加わるような接触防止手段13を設けるのが良いことが分かる。
【0045】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では混練設備1として2軸押出機を例示したが、本発明の混練設備1は連続混練機であっても良いし、スクリュ軸2は1軸又は3軸以上であっても良い。
例えば、上記実施形態ではスクリュ軸2が片持ち構造とされた混練設備1を挙げたが、本発明の接触防止手段13はスクリュ軸2が両持ち構造とされた混練設備1にも採用することができる。
【0046】
例えば、上記実施形態では接触防止手段13を構成する磁石に永久磁石を用いたものを例示したが、接触防止手段13を構成する磁石に電気磁石を用いても良い。
上記第1実施形態では、スクリュ磁石14、ダイ磁石15及びダイ外側磁石16で構成された接触防止手段13を例示したが、スクリュ磁石14とダイ磁石15だけで構成された接触防止手段13やスクリュ磁石14とダイ外側磁石16だけで構成された接触防止手段13を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 混練設備
2 スクリュ軸
3 バレル
4 フライト
5 回転機構
6 駆動モータ
7 減速機
8 カップリング
9 軸受
10 駆動軸
11 ダイ
12 押出孔
13 接触防止手段
14 スクリュ磁石
15 ダイ磁石
16 ダイ外側磁石
17 突端部
18 フライト磁石
19 バレル磁石
20 摩耗位置
21 端面
F 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を混練するスクリュ軸と、当該スクリュ軸が内部に挿入可能とされたバレルと、を備えた混練設備であって、
前記スクリュ軸とバレルとの間には、当該スクリュ軸が回転中にバレルに接触することを磁力を用いて防止する接触防止手段が設けられていることを特徴とする混練設備。
【請求項2】
前記混練設備は、前記スクリュ軸を2軸備えた押出機であり、
前記スクリュ軸は、回動自在に支持された基端側に対して先端側が自由端とされていることを特徴とする請求項1に記載の混練設備。
【請求項3】
前記バレルは、スクリュ軸の先端と対向する側に、混練された材料を押し出すダイを備えていて、
前記接触防止手段は、スクリュ軸の先端と前記ダイとの間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の混練設備。
【請求項4】
前記接触防止手段は、前記スクリュ軸の先端に取り付けられたスクリュ磁石と、前記ダイに設けられ且つスクリュ磁石と対面する位置に配備されたダイ磁石とを有し、
前記スクリュ磁石とダイ磁石とは、互いに対面する側が異極とされていて、両磁石の間に発生する磁気引力を用いて、前記スクリュ軸がバレルに接触することを防止する構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の混練設備。
【請求項5】
前記接触防止手段は、前記ダイに設けられ且つ前記ダイ磁石の周囲に配備されたダイ外側磁石を有し、
前記スクリュ磁石とダイ外側磁石とは、互いに対面する側が同極とされていて、両磁石の間に発生する磁気反力を用いて、前記スクリュ軸がバレルに接触することを防止する構成とされていることを特徴とする請求項3又は4に記載の混練設備。
【請求項6】
前記接触防止手段は、前記スクリュ軸の径方向外側部と、当該スクリュ軸の外側部と対面するバレルとの間に配備されていて、磁気反力を用いて前記スクリュ軸がバレルに当接することを防止する構成とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の混練設備。
【請求項7】
前記スクリュ軸は、当該スクリュ軸の軸心を基準として径方向外側に向かって突出するフライトを備えており、
前記接触防止手段は、前記フライトの突端部に取り付けられたフライト磁石と、前記バレルに設けられ且つフライト磁石と対面する位置に配備されたバレル磁石とを有し、
前記フライト磁石とバレル磁石とは、互いに対面する側が同極とされていて、両磁石の間に発生する磁気反力を用いて、前記スクリュ軸がバレルに接触することを防止する構成とされていることを特徴とする請求項6に記載の混練設備。
【請求項8】
前記バレルの内周に対して前記スクリュ軸のフライト頂面が近接乃至は接触する「摩耗位置」が存在する場合に、当該こじれ位置に前記接触防止手段が設けられることを特徴とする請求項6又は7に記載の混練設備。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−235482(P2011−235482A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107223(P2010−107223)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】