減速応答性車両用シート
車両の着座者(9)用の減速応答性車両用シート(20)であって、前記着座者の体重及び前記着座者によってシートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有するシート。前記フレーム構造は、シートクッション(22)を上部に支持するシートクッション・フレーム(21)を備えるシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、さらに、上部(26)及び下部(28)を有する背もたれクッションを支持する背もたれフレーム・アセンブリ(25、27)を含む。前記シートクッション及び背もたれクッションは、前記着座者を通常端座位置に支持する。前記シートはさらに、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段(2、3)を含む。前記シートはさらに、前記着座者用の一体型シートベルト・システム(40、41、42、43)を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート(vehicle seat)の分野に関する。本分野では、衝突発生時及び急発進状況でのシートの着座者(occupant)の安全確保が主な課題である。
【背景技術】
【0002】
一般的な設計では、車両用シートは、しばしばリクライニング角が調整可能な背もたれを有し、シートクッション上に通常の端座姿勢で座る着座者の胴体を背後から背もたれクッションで支持しながら、該着座者の体重を吸収するように適合された固定フレーム構造を有する。
【0003】
本明細書では、着座者は着座時に前方を向くものとされ、衝突は前面衝突と見なされる。当業者なら、本シートが後面衝突の場合にも有利であり得ることを理解するであろう。また、当業者なら、本シートは前向き配置が好ましいが、後向き配置も可能であることを理解するであろう。
【0004】
「車両(vehicle)」という用語は、少なくとも自動車、バン、(公共輸送)バス、ミニ・バス、長距離バス(coach)、トラック、ローリー、レーシングカー、列車、航空機を含む。
【0005】
大部分の自動車では、衝突時に着座者をシート内に保持するものとして3点シートベルトが一般に用いられている。一般に、3点シートベルト・システムは、車体のピラーに組み込まれたシートベルト用ショルダー・ガイド部材を有する。
【0006】
3点安全ベルト・システムは着座者の安全に大きく貢献するが、バン、バス(ミニ・バスを含む)、及び長距離バスでは一般にラップ・ベルト式シートベルト・システムが提供される。一方、現在知られている大部分のシート設計、特にバン、(ミニ)バス、及び長距離バスの乗客シートは、3点安全ベルト・システムの組み込みには不向きである。特に、それらの車両内の背もたれ、及び乗客シートのフレーム構造下部への背もたれの取り付けでは一般に、ショルダー・シートベルト・ガイドの領域において衝突時に背もたれに作用する力に耐えることができない。StyleRide Pty社の豪州特許出願第AU2007200954号に開示されるように、オーストラリアの法規制による3点安全ベルト・システムが組み込まれた長距離バス・シートが開発されている。
【0007】
バス及びトラック運転者にとって複雑で重く非常に高額な3点安全ベルト・システムが組み込まれたシートが開発されていることに留意されたい。一例には、「Profi Class Sigus」の商品名で販売されるRecaro社の商用車運転シートがある。上記の既知のシートでは、背もたれ上部にシートベルト・リトラクタが取り付けられる。
【0008】
シートベルト・システムが組み込まれるこれらのシートは、衝突発生時に着座者を可能な限り各自の通常位置に維持するように設計され、シートクッション及び背もたれは一般に、それぞれの当初位置を維持するように設計される。衝突が発生するとシートベルトは背もたれ上部に大きな荷重をかけるため、この既知のシートでは、背もたれ及びシート構造下部への背もたれの取り付けは、背もたれ及びその取り付け部にかかる大きい運動量を吸収するように高い頑健性をもって設計されることが理解されるだろう。
【0009】
このようなシートベルト一体型シートに課される要件、主として衝突中のG力要件に応じて、シートの固定フレーム構造は、衝突時のシートベルトの力を吸収するために非常に頑健に設計する必要がある。その結果、現在使用されている乗客シートと比較してシート重量が大幅に増加する可能性が高くなる。例えば、約50席のバスでは、そのような重量増加は非常に大きな問題となる。また、シートが取り付けられる床及び/又は他の車両本体要素(例えば長距離バス内の側壁等)は、シートを支持するためならびに衝突時及び/又は急発進時の力を吸収するために、より高い強度で設計する必要があり、その結果車両の総重量はさらに増加する。航空機の場合では、この問題はさらに悪化する。
【0010】
3点シートベルト・システムに関連する別の問題は、「シートベルト・スラック(seat belt slack)」の問題である。シートベルト・スラックは、シートに対する着座者の望ましくない変位をもたらす。衝突の際、着座者は前方に加速された後、シートベルトによって突然停止されるため、望ましくない荷重が身体にかかることになる。言うまでもなく、着座者はシートベルトを自らきつく締めることによってそのような作用を低減することができるが、大半の着座者は自動車内でもベルトをきつく締めないことが分かっており、公共輸送車両にあってはそうする着座者はもっと少なくなることが予想される。
【0011】
シートベルト・スラックを少なくするために、しばしばシートベルト係止部材又はシートベルト・ロック部材と一体化される「プリ・テンショナ(pre‐tensioner)」が開発されている。多くのプリ・テンショナは、実際の衝突時に適切なセンサから指令を受けてトリガされ、その後シートベルトを緊張させる火工装置である。また、例えば運転者による車両のブレーキングによって生じる減速に基づいて、やはり適切なセンサによって統制されるプリ・テンション式シートベルト・リトラクタも知られている。座席数の多いバス等で応用する場合、このようなプリ・テンショナは、調達と保守の両面からコストが高くなりすぎる可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】豪州特許出願第AU2007200954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一目的は、改良型車両用シートを提供することである。
【0014】
前記シートは、3点シートベルト・システムを装備することが好ましい。
【0015】
本発明の別の目的は、衝突前及び/又は衝突の初期段階中に一般に発生する減速時に着座者が衝突位置(crash position)に向かって移動するような、着座者の減速応答性可動支持(deceleration responsive mobile support)を実現するフレーム構造を含む車両用シートを提供することである。
【0016】
本発明のまた別の目的は、シートベルト・スラックに対処する車両用シートを提供することである。
【0017】
本発明のまた別の目的は、むち打ちの発生及び/又は重症度を軽減する車両用シートを提供することである。
【0018】
本発明のまた別の目的は、比較的低重量のシート設計で着座者の安全性を高めることが可能な車両用シートを提供することである。
【0019】
本発明のまた別の目的は、バス、ミニバン、又は長距離バスの場合と同様に、シートが縦並び及び/又は横一列に配置された車両内の乗客の安全性を高める車両用シートを提供することである。
【0020】
本発明のまた別の目的は、車両の床上、例えばバス又は長距離バスの床上に配置され、当該床上に作用する力が低減されるように相互連結することが可能な車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的の1つ又は複数は、請求項1に記載の減速応答性車両用シートによって達成される。
【0022】
大部分の衝突は、ごく短い期間であっても運転者が力強くブレーキをかけ、車両速度の減少を試みた後に発生することが知られている。一般的なシート設計では、着座者は、車両を減速した時点で既に、静止しているシートクッション及び背もたれに対して前方に移動していることになる。既知のプリ・テンショナは一般に、余分のシートベルト・スラックの低減にしか有効でない。
【0023】
本発明では、関連する減速条件下でシートクッションと背もたれが共に有利な衝突位置に移動することが想定される。例えば、このことは、着座者にとって自身が前進運動するとき、例えば有利には初期段階で自身の背中が背もたれによって「受け止められる(caught)」と同時に着座者が「反発(rebound)」したときに、背もたれクッション(又は少なくともその上部)が自身の胴体に追従することを意味する。
【0024】
背もたれフレーム・アセンブリは、着座者の頭部の後側に延在するヘッド・レストを含むことが好ましい。これは、むち打ちの(影響の)軽減に有利であることが想定される。
【0025】
以下で詳述するように、シートクッション及び背もたれクッションを支持するフレーム構造の各部の「可動性(mobility)」は、潜在的な魅力を有する多数の選択肢を提供する。
【0026】
例えば、前記可動性を利用して前進運動中のシートベルト・スラックの低減を実現することができる。
【0027】
また、この可動性を利用することにより、主として衝突時の着座者の安全性を高める目的で、フレーム構造の各部を所望の衝突位置まで持っていくこと、あるいは少なくとも該位置に向かわせることが可能となる。一般に、この「可動性」は、衝突状態において着座者の身体をより有利な位置に持っていくことが可能となる時間と着座者身体の運動経路の両方を提供するだけでなく、エネルギーをより漸次的に吸収する機会も提供する。
【0028】
シートは、関連する減速時に着座者の臀部領域又は着座者の胴体下部がシートクッションに沿って前方に移動するように、好ましくはシートクッション上で着座者が滑らないように又は着座者の滑りを最小限に抑えるように設計されることが好ましく、この効果は減速と同時に発生する後述の傾斜効果によって高められ得る。このような胴体下部の前進運動は、通常のシートでの衝突と比較して、胴体、特に頭部の前傾運動が低減される有利な効果を有する。シートベルトを有する前記シートでは、衝突時に頭部が激しく前傾することになり、その結果、同等の激しさで頭部が後方に反発するとともに、頸部が急激に屈曲されることになる。胴体の重い部分が前方移動可能となった時点から、胴体及び頭部の前傾運動の激しさが緩和され、その結果、シートベルトに対する荷重(したがって胴体ならびにシート構造に対する荷重)が軽減され、着座者の頸部に対する荷重も軽減される。
【0029】
好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速(collision induced deceleration)時に、背もたれクッション(又は少なくともその上部)がシートクッションよりも長い距離にわたって前方移動するような構造となる。これにより、車両の激しいブレーキング又は衝突時に着座者の胴体が前傾する可能性が高くなるので、「背もたれを着座者の背中に追従」させることが可能となる。この効果は、着座者の頭部に追従するヘッド・レストの存在下で高められる。
【0030】
さらに好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、主として背もたれ(の上部)が前傾していく着座者の背中に追従するような形で、背もたれクッション(又は少なくともその上部)が前傾されるような構造となる。この効果は、着座者の頭部に追従するヘッド・レストの存在下で高められる。
【0031】
さらに好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、シートクッション・フレームがそれ自体の前進運動に加えて、シートクッション・フレームの前部がシートクッション・フレームの後部に対して相対的に高くなるように傾斜がつけられるような構造となる。この特徴により、着座者をさらに有利な衝突位置に持っていくことが可能となる。一般には、これによって着座者の大腿部は通常の運転位置よりも「傾いた」シートクッション上に置かれることになり、シートクッションに対する身体の前方滑動も打ち消され、着座者の慣性力の大部分はシートクッション・フレーム・アセンブリによって吸収されることになる。フレーム構造の寸法によっては、この「傾き効果(inclination effect)」によって着座者の潜り込み現象を完全に解消することができ、したがって、着座者がシートクッション上で滑動しなくなるとともに、着座者にかかるシートベルトの荷重が大幅に軽減される。身体にかかるシートベルトの荷重が着座者の重傷の原因となることが多いので、後者の効果は非常に重要である。
【0032】
シートの可能な一実施形態では、この「傾き効果」は、(部分的には)シートクッション・フレームの後部を低くすることによってもたらされる。好ましいことに、シートベルトは、着座者の骨盤領域が上記シートクッション・フレームの低くなった後部と共に効果的に引き下げられるようにシートクッション・フレームに効果的に取り付けられ、好ましくはその後部に効果的に取り付けられる。これにより、着座者の頭部は「より低い軌道」で運ばれ、したがって車両のステアリング・ホイール、フロントガラス、及び/又はフロントガラスのヘッダー・バーから効果的に遠ざけられる。背の高い着座者の場合、このことは、衝突中に生じ得る頭部損傷に対して非常に有益な効果を有する。
【0033】
スポーツ・カーのような一部の車両では、車両本体床上のシートクッションの高さが低い故に、このように後部を低くすることは現実的でない可能性がある。そのような状況では、シートクッション・フレームの傾き効果は、シートクッション・フレームの前部だけを持ち上げることによって生み出すことができる。なお、従来技術では、衝突前減速又は衝突時にシートクッション・フレームの前部の傾斜をもたらすセンサ制御アクチュエータが開示されている。
【0034】
この前部に特化した(front portion only)本発明の好ましい実施形態は、フレーム構造自体の適切な機械設計によって傾き効果がもたらされ、また、上記のアクチュエータは(特にバスや長距離バスでは)コストが高く、保守/管理も必要となるので、そのようなアクチュエータなしに傾き効果が発揮されることに基づいている。
【0035】
多くのバス及び長距離バスの場合と同様にシートが縦並びとなる一構成では、本発明は、着座者と一緒に目の前のシートの背もたれも前方に移動することから(空席の場合も同様)、着座者が前記背もたれにぶつかる可能性が低減される能力を提供する。着座者がいないシートも衝突位置に向けて推進されるように、このタイプのシート同士を機械的に連結することが想定され得る。この措置は、シートが横並びに配置される状況でも適用することができる。
【0036】
本発明に係るシートの特に好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突位置への前記前進運動が専ら着座者の質量及びシートの関連部品の質量の慣性によって誘起されるような構造となることが想定される。これにより、衝突前減速時にシートクッション及び背もたれ(少なくともその上部)の所望の運動をもたらすために通常設けられるアクチュエータを省略することが可能となる。フレーム構造の関連部品は基本的に、シートクッション上に着座するとともに安全ベルトで「シートに取り付けられ(attached to the seat)」、所望の衝突位置に到達する着座者に「追従(follow)」する。
【0037】
実際の一実施形態では、本フレーム構造によってもたらされる可動性は、運転者が衝突を想定しないブレーキング状況であってもその時点で既に衝突位置に向かう前記運動が開始されているように、関連部品が小さい減速に対しても応答するような可動性である。ブレーキング・アクションが終了すると、フレーム構造は、例えば重力に基づいてシートをそれ自体の通常位置に復帰させる。
【0038】
別の実際の実施形態では、シートはさらに、ブロック手段であって、前記シートをそれ自体の通常位置にブロックし、「1つ又は複数の条件が存在」するとき、例えば、前記ブロック手段にかかる荷重が慣性誘起により所定の荷重レベルを超えたとき、所定の減速率を上回る減速が感知されたとき、(レーダ又は他の遠隔感知デバイスによって)他の任意の衝突リスク、急激な車両動作(ステアリング)等が感知されたときに、前記シートの衝突位置に向かう運動を可能にするように企図(construe)及び構成されたブロック手段を含む。また、車両が斜面上を走行しているときにシートをそれ自体の通常位置にブロックすることも想定され得る。
【0039】
例えば、前記ブロック手段は、前記フレーム構造の一部と係合し、前記フレーム構造が通常位置にあるときに動かないように保持し、例えばそれ自体の閾値荷重を超過したとき、又はそれ自体に関連するセンサが所定の減速を感知したときに前記フレーム構造を解放する、(例えばシートベルト・リトラクタのブロックに使用される)ばね付き戻り止め(spring loaded detent)とすることもできる。
【0040】
好ましくはないが、本発明では、前記シートが、例えば減速の感知に基づいてそれ自体に指令が送られたときに、前記シートをそれ自体の衝突位置に押し出す(force)ように適合されたアクチュエータを含むことも想定される。
【0041】
上述のとおり、本発明では、関連するシート部品が前記衝突位置へと前方移動するだけでなく、前記フレーム構造を用いることにより、減速の緩和又は終了に応答して前記シートクッション及び背もたれクッションをそれぞれの通常位置に復帰させ得ることが想定される。
【0042】
特に、急ブレーキの多くの場面では衝突は発生せず、ブレーキング・アクションが運転者によって終了されることが想定される。その後、前記シートはそれ自体の通常位置に復帰する。
【0043】
好ましい一実施形態では、前記フレーム構造は、前記「復帰運動」が主として重力に基づいて実現されるようなフレーム構造となる。これは、前記衝突位置に向けた前進運動中に前記関連するシート部品及び着座者の重心が前記フレーム構造によって高められ、その後減速が終了又は緩和されたときに当該重心がより低い位置に復帰しようとするときに可能となる。
【0044】
また、「それ自体の通常位置に復帰」する能力は、衝突による前記シート及び着座者の反発を吸収する観点から非常に有利である。この反発によって前記着座者の背中が背もたれに押し付けられ、その後前記背もたれが着座者と「一緒に移動(move along)」して当該反発を吸収することが可能となる。
【0045】
「復帰方向」に作用し、前記復帰方向における(したがって衝突による反発時の)前記シート(及び着座者)の速度を減少させる働きをする、遅延又はエネルギー吸収手段を前記シートに含めることが想定され得る。かかる遅延又はエネルギー吸収手段は、例えばオイル・ダンパ又は(好ましくは反発方向にのみ作用する)他のダンパ(例えば摩擦ベース・ダンパ)、前記シートの復帰運動時等に塑性変形される犠牲部材を前記シート構造に含めることができる。前記遅延又はエネルギー吸収手段は、例えば犠牲ベース(車両の床)上に取り付けられるある種のシートベルト・リトラクタを有する他のベルトを含むこともできる。衝突が発生すると、前記リトラクタは、前記シートの前進運動時に前記ベルトを短縮し、突然の(衝突誘起による)復帰運動時にランド・ロックされる。前記リトラクタは、前記犠牲ベースが退くとともに前記ベルトと一緒に移動され、したがって前記シートを遅延させる。衝突が発生しない場合は、突然の復帰運動も発生せず、前記リトラクタは、前記ベルトの再延長を可能にする。
【0046】
好ましい一実施形態では、前記一体型シートベルト・システムはさらに、互いに離間し、前記ショルダー・ガイド部材及び前記リトラクタ又は前記シートベルトの他の終端部からも離間する、前記フレーム構造内の1つ又は複数の位置に設けられた1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材を含み、前記中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトを案内し、それによって前記リトラクタと前記シートベルト・ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの経路を定義することを可能にする。これにより、前記リトラクタは、上述の従来技術によるRecaro社のシートのように背もたれ内ではなく、例えば前記フレーム構造上の前記シートクッションの下の領域に設けることが可能となる。
【0047】
特に有利な一実施形態では、前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記リトラクタ、前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド、及び前記ショルダー・シートベルト・ガイドの空間方向が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによって前記リトラクタと前記ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの前記経路が、前記シートが衝突位置にある場合、好ましくは少なくとも10cm、好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長されるような構造となる。この概念は、前記フレーム構造によってもたらされる「可動支持(mobile support)」を利用してシートベルト・スラックの問題に対処することができるという洞察に基づく。衝突位置への所望の可動性をもたらすフレーム構造では、当業者なら所望の伸長が実現されるように各部品を配置することができるはずである。これにより、例えば前記シートにおいて好ましいことに前記リトラクタ以外の追加的なシートベルト緊張装置を省略することが可能となり、前記シートは、減速又は衝突センサによって制御されるプリ・テンショニング装置なしに実施される。
【0048】
好ましい一実施形態では、前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる。前記シートベルト・ガイド部材は、例えば前記シートベルトがそれに沿って滑動可能なフレーム部材と一体化される金属棒又は金属管とすることができる。
【0049】
実際の一実施形態では、前記フレーム構造は、それぞれ少なくとも1つの中間シートベルト・ガイド部材を備える第1及び第2のフレーム部材を含み、前記第1及び第2のフレーム部材は、前記シートの前記通常位置から前記衝突位置への運動中に互いの空間方向が変更され、それによって前記シートベルトの前記経路が伸長される。
【0050】
実際の有利な一実施形態では、前記第1の部材は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリと関連付けられ、前記第2の部材は、前記背もたれフレーム・アセンブリと関連付けられる。これは、例えば前記背もたれ(の上部)が前記シートクッションよりも前方に移動するように設計され、したがって各アセンブリ内のフレーム部材が前記前進運動中に必然的に異なる「軌道」をとることになる場合に実現される。
【0051】
前記シートベルトの経路の大きな伸長が得られる実際の一実施形態では、前記シートベルト内の前記中間ガイド部材の周囲に開ループが形成されるように、前記第1及び第2のフレーム部材の一方のフレーム部材上に1対の中間シートベルト・ガイド部材が配置され、前記第1及び第2のフレーム部材の他方のフレーム部材上に別の中央中間シートベルト・ガイド部材(central intermediate seat belt guide member)が配置され、前記各フレーム部材は、前記衝突位置への運動時に前記中央中間ガイド部材を前記1対から離れるように移動させ、それによって前記シートベルトの前記経路を伸長するように企図及び構成される。
【0052】
前記フレーム構造内の1つ又は複数の中間ガイド部材に沿った前記シートベルトの案内により、設計者は、衝突中に前記フレーム構造に高い力がかかるときに「前記フレーム構造内の力を吸収」することも可能となる。その後、前記シートベルトは、前記フレーム構造内の「張力伝達要素」として働く。
【0053】
上述した前記シートベルトの前記経路の伸長により、前記シートベルトが前記シートによる衝突位置への前進運動を「遅延」させる効果を生むことも可能となる。このことは特に、好ましくは前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材がそれぞれ、前記シートベルトと接触したときに前記シートベルトがその面に沿って摩擦案内されるような前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる場合に実現される。
【0054】
「摩擦係合」は、前記着座者が前記シートベルトをかけ、前記ベルトのロックが前記着座者によって解除された際の前記シートベルトの引き込みの容易さの観点から望ましくない可能性がある。上記及び他の目的で、前記フレーム構造及び前記フレーム構造内の前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイドは、前記シートの通常位置では、前記中間シートベルト・ガイドのいくつかが前記シートベルトから離間され、前記衝突位置への運動時は、前記1つ又は複数の「通常離間された(normally spaced)」中間シートベルト・ガイドが前記シートベルトに接触するようなフレーム構造及び中間シートベルト・ガイドとされることが想定され得る。
【0055】
本発明は、他のクレーム/サブクレーム及び/又は明細書に記載される追加的な特徴を有し得る請求項33及び35に記載のシートにも関係する。
【0056】
本発明の他の態様は、請求項39に記載の車両用シートに関するものである。本シートは、背もたれフレーム及び3点シートベルト・システムを有し、前記シートベルト用の前記ショルダー・ガイドは、前記背もたれフレームの一部であり、水平面に対してある角度で配置され、前記背もたれフレームは、前記ショルダー・ガイドに隣接する内側シートベルト・ガイドをさらに含み、前記内側シートベルト・ガイドは、やはり前記背もたれフレームの一部であり、隣接の前記ショルダー・ガイドとの間の90度未満の角度の傾斜向きに配置され、前記シートベルトは、前記内側シートベルト・ガイドの下方から前記内側シートベルト・ガイドに到達し、次に前記内側シートベルト・ガイドの前側から前記ガイドを越えて裏側に通され、その後前記ショルダー・ガイドの裏側に向けて通され、そこから前記ショルダー・ガイドを越えて前記背もたれフレームの前側に通され、その結果、前記着座者の胴体を横切るように通すことが可能となり、前記ショルダー・ガイドの効果的な幅は、好ましくは前記シートベルトの幅の少なくとも2倍である。
【0057】
前記ショルダー・ガイドの前記傾斜向きは、前記シートベルトの位置が前記着座者の高さ(特に前記着座者の肩の位置)に自動的に調整されるという効果を有する。この効果は、現時点でショルダー・ガイドの調整設備が存在しないバス等において非常に有利である。また、ショルダー・ガイドが可動部分を含まないので、その設計は安価であり、背もたれへの組み込みも単純である。
【0058】
本発明の他の好ましい実施形態は添付の特許請求の範囲の各請求項に記載されており、以下では、添付の図面を参照してこれらの実施形態についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第1の実施例を示す概略図である。
【図2】衝突位置にある図1のシートを示す図である。
【図3】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第2の実施例を示す概略図である。
【図4】衝突位置にある図3のシートを示す図である。
【図5】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第3の実施例を示す概略図である。
【図6】衝突位置にある図5のシートを示す図である。
【図7】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第4の実施例を示す概略図である。
【図8】衝突位置にある図7のシートを示す図である。
【図9】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第5の実施例を示す概略図である。
【図10】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第6の実施例を示す概略図である。
【図11】請求項33に記載のシートにおける背もたれの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1乃至図10は、本発明のシートが固定される車両の床1、例えばバン、(ミニ)バス、又は長距離バスの床の一部を示す。本明細書から分かるように、前記シートは、かかる車両内、特に1つ又は複数のシートから成る複数のシート列が縦並びに置かれる車両内の乗客シートとして有利である。本発明のシートは、例えば車内及び/又は運転席としての応用例あるいは航空機内での応用等、他の応用例も企図される。本シートは、スポーツ・カーに設置することもできる。
【0061】
床1上では、前方及び後方枢動コネクタ(pivotal connector)2、3が図示のシートと一体に(belonging to)締結される。1つ又は複数のシートから成る複数のシート列が縦並びに配置される車両では、1つのシートの前方枢動コネクタは、例えば前後のシートに共通する枢動軸(pivot shaft)2a及び3aを有することにより、前記1つのシートの前のシートにおける後方枢動コネクタとしても機能し得ることが想定される。
【0062】
図1乃至図10には、頭部10、肩12を含む胴体11、背中13、膝14、及び脚15を有する着座者9が概略的に示される。各シートは大人の着座者を収容するように設計されるが、一定の目的で特定の子供用シートも企図され得ることが想定される。
【0063】
以下では、図1及び図2に示されるシート20について、車両の衝突前減速中のそれ自体の挙動と共に詳細に論じる。上記の説明に基づけば、他の図面に示される各シートも当業者には容易に理解されるはずであり、そのため、図3乃至図10については簡単な説明のみとする。
【0064】
シート20は、車両の着座者9用の減速応答性車両用シートである。一般に、シート20は、以下で詳述するように、着座者9の体重及び前記着座者によってシート20にかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有する。
【0065】
本明細書に記載のフレーム構造は一般に、相互連結される2つのアセンブリ、即ち、シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリから構成される。
【0066】
一般に、本フレーム構造の各フレーム要素は鋼製とすることができるが、他の材料、例えば適切なプラスチック材料も想定される。
【0067】
シートクッション・フレーム・アセンブリは、シートクッション・フレーム21を含み、シートクッション22は、前記シートクッション・フレーム21上に支持される。シートクッション・フレーム21は、クッション22の少なくとも大部分の下方に延在することが好ましい。
【0068】
本明細書に記載のシートクッション・フレーム・アセンブリはさらに、それ自体の下端が枢動コネクタ2と接続され、それ自体の上端が枢動コネクタ24によってシートクッション22を上部に支持するシートクッション・フレーム部材21と枢動接続された、枢動フレーム部材23を含む。
【0069】
本明細書に記載の背もたれフレーム・アセンブリは、背もたれクッションの上部26を支持する上部背もたれフレーム部材25と、背もたれクッションの下部28を支持する下部背もたれフレーム部材27とを含む。
【0070】
シートクッション及び/又は背もたれクッション及び/又はヘッド・レスト・クッションは、多数の異なる設計を有することができ、着座者にとっての弾性特性を伴う場合も伴わない場合もあることに留意されたい。例えば、クッションは、比較的厚い弾性製品(現行の自動車で一般に見られるような製品)、比較的薄く非常に硬い薄型クッション(しばしば公共輸送車両で見受けられるクッション、例えば破損防止クッション)、薄い網目状クッション(例えば、プラスチック・メッシュ)、有孔金属板要素等である可能性がある。
【0071】
各図から分かるように、上部背もたれフレーム部材25は、後方枢動コネクタ3にそれ自体の下端が接続された枢動フレーム部材29と一体化されている。
【0072】
詳細には、一体に構築された上部背もたれ部材25及び枢動フレーム部材29は、後方枢動コネクタ3から順に、前向きセクション(forwardly directed section)29a(床1に対して上方に傾斜する向きが好ましい)と、その後に続く部材25の下端とそれ自体の上端が一体化された後方上向きの傾斜セクション(angled section)29bとを含む。
【0073】
図2から分かるように、セクション29aと床1との間の自由角度によって部材29の前方枢動が可能となる。
【0074】
図1及び図2は、下部背もたれフレーム部材27の上端が、本例では枢動コネクタ30によって(本例では着座者の背中の約半分の高さで)上部背もたれ部材25と枢動接続されることも示す。また、下部背もたれフレーム部材27の下端は、枢動コネクタ31においてシートクッション・フレーム部材21の後部と枢動接続されることが分かるだろう。
【0075】
本例において、シートクッション22は下部背もたれクッション28と一体化されているが、下部背もたれクッション28は別個の部品であることが図示される。他の設計も理解されるはずであり、例えば、シートクッションと下部及び上部背もたれクッションとを1つの一体型クッションとして形成することも可能であり、また、クッションを別々の部品に細分化することも可能である。
【0076】
本実施例では、シートクッション・フレーム部材21は、それ自体の後端に一体型後方延長部(integral rearward extension)33を含む。
【0077】
図1に示されるシート20の通常位置において、下部背もたれフレーム部材27は、セクション29bによって背面が支持され(bear against)、それにより、通常端座位置(upright sitting normal position)に着座した着座者の体重を受けてフレーム構造が前記位置に維持されることになる。
【0078】
シート20はさらに、着座者9用の一体型3点シートベルト・システムを含む。本シートでは、シートベルト・システムによってシート内の着座者の安全性をさらに高めるために、4点シートベルト・システムあるいは5点システムも採用され得ることに留意されたい。好ましさが劣る一設計で述べたように、本シートは、単純なラップ・ベルト・シート・システムを含むこともできるが、その場合もなお、ラップ・ベルト・システムを有する従来技術のシートと比較して、衝突時の重要な改善点及び有益な効果をもたらす。
【0079】
本例のシートベルト・システムは、シートベルト40と、本例ではシートクッション22下方の枢動フレーム部材23上に取り付けられたシートベルト・リトラクタ41とを含む。
【0080】
このシステムはさらに、着座者9の肩を覆う前記位置にシートベルトを案内するように上部背もたれフレーム部材25上に取り付けられたシートベルト・ショルダー・ガイド部材42を含む。
【0081】
この3点シートベルト・システムはさらに、シートクッション22の両側でフレーム構造上に取り付けられたシートベルト係止部材(図面では見えない)及びシートベルト・ロック部材43を含む。したがって、シートベルトの膝部分は、着座者の膝又は骨盤領域14全体に延在し、肩部分は、ショルダー・ガイド42から胴体11の前部をやや斜めに横切ってロック部材43まで延在する。
【0082】
シート20は、ヘッド・レスト・フレーム及びヘッド・レスト・クッションを有するヘッド・レスト35も含む。本例のヘッド・レスト35は、頭部10の後側に延在するように一体化フレーム部材29、25の上端に取り付けられる。
【0083】
シートベルト40は、互いに離間し、ショルダー・ガイド部材42及びリトラクタ41からも離間する、フレーム構造内の多数の位置に設けられたいくつかの中間シートベルト・ガイド部材、本例では44、45、46、47によって定義されるリトラクタ41とガイド部材42との間の経路を通る。
【0084】
ガイド部材45は、本例では枢動フレーム部材29上の角部付近に配置され、ガイド部材46は、シートクッション・フレーム部材21の延長部33上に配置される。
【0085】
したがって、図1及び図2から分かるように、本例のフレーム構造は本質的に、クッション部品を支持するとともに車両の床1(及び/又は車両設計によっては車両の他の部品)とも枢動接続される、相互に枢動接続されたフレーム部材から構成される。
【0086】
図2は、着座者9が衝突位置にあるときのシート20を示す。この位置は、衝突を予見した運転者が車両の急ブレーキをかけることによって通常発生する、車両の衝突前減速の結果到達する位置である。実際には、そのようなブレーキングは実際の衝突が発生する前の非常に短い時間だけ行われる可能性があるが、(図2に示される)適切な設計では、その時点で既にシートが前記減速に応答していることになる。説明するまでもないが、衝撃時はずっと大きな減速が経験され、シートは衝突前ブレーキングが行われなかった場合も応答することになる。とはいえ、多くの衝突では事前に急ブレーキがかけられるため、本発明のシートは、着座者にとって(後のシートに着座者がいる場合はその着座者にとっても)有利な衝突位置にシート及び着座者を持っていくことによって前記減速を「利用(profit)」しようと試みる。本明細書を読めば分かるように、各自の元の通常着座位置から衝突位置に向かう着座者の運動も(それが当てはまる場合は反発運動も)また、主に衝突状態で身体にかかる力と、着座者の身体の各部分の空間運動との観点から、着座者にとって非常に有益であることに留意されたい。
【0087】
図2は、背もたれフレーム・アセンブリのフレーム部材25/29と、シートクッション・フレーム・アセンブリの枢動フレーム部材23が共に前方枢動された状態を示す。本例では、床係合部材29上の迫台(abutment)4が部材29の端位置を定義する。
【0088】
これらのフレーム部材25/29及び23の枢動運動は、様々な効果をもたらす。
【0089】
シートクッション22及び背もたれクッション部品26、28は、図1の通常位置と比較して、衝突位置に対してほぼ順方向に移動していることが分かるだろう。したがって、これらの部品は、シートクッション上で身体が前方滑動し、(例えばシートベルト・スラックによって)胴体11が背もたれから前方に傾斜し始めた着座者の動きに追従している。このように、本フレーム構造は、主に着座者及び関連するシート部品の慣性によって誘起される車両の衝突前ブレーキングに応答して作動する(バス等の空席も同様に作動することが想定され得る)。
【0090】
図1と図2を比較すると、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、背もたれクッション、特に上部26は、上部26が着座者の背中の「背後に近付く(closer behind)」ことが可能となるように、シートクッション22よりも長い距離にわたって前方移動することが観察できるだろう。
【0091】
本例のシート20は、前記衝突位置への運動時に、上部背もたれフレーム部材が床上の枢動コネクタ3の周りを枢動し、したがって前傾していく着座者の胴体11の角運動に「追従」するようなシートである。
【0092】
全体として、シート20は、上部背もたれクッション26が(本例ではヘッド・レスト35と共に)着座者の胴体(及び頭部)の動きに追従するという効果を有する。上述のとおり、これによって衝撃時の着座者の有利な衝突位置が保証され、一般に衝撃後間もなく経験される反発に起因するむち打ちの観点からも有利である。頭部はなお胴体に対して前傾するが、反発時点で上部背もたれクッション及びヘッド・レストがそれらの身体部分の「背後に近付いている(close behind)」ため、反発の悪影響は小さくなる。
【0093】
図1及び図2は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、シートクッション22が、本例では好ましくはそれ自体の前進運動に加えて、シートクッション・フレーム部材21の前部がシートクッション・フレーム部材21の後部に対して高くなるように傾斜がつけられるフレーム構造も示す。上述のとおり、これによって着座者がシートクッション上で滑動することがなくなり、即ち、当技術分野で知られるような「潜り込み効果」が解消される。また、部材21の前部が上向きに傾斜することにより、着座者の「前向き荷重」の大部分が部材23に伝達され、それによってシートベルト40にかかる荷重を軽減することが可能となる。
【0094】
さらに、衝突位置に向かって運動するシート20の特に有利な効果は、センサ制御プリ・テンショナ、あるいは衝突/危険感知システムと結合されたアクティブ制御を有するシートベルト・テンショナ等の他のアクティブ・デバイスを用いることなく、シートベルト・スラックが低減されることにある。無論、本発明のシートは、そのようなプリ・テンショナ又はシステムと組み合わせることもできる。
【0095】
図2と図1を比較すれば分かるように、リトラクタ41とショルダー・ガイド42との間のシートベルト40の経路は、図1よりも図2の方がずっと長くなっている。前記経路は、フレーム構造が衝突位置に向かう前記運動の結果として、前記運動中に徐々に伸長することが理解されるだろう。
【0096】
実際には、中間シートベルト・ガイドのフレーム構造及び配置は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記リトラクタ41、中間シートベルト・ガイド44〜47、及び前記ショルダー・シートベルト・ガイド42の空間方向(spatial orientation)が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによってリトラクタ41とショルダー・ガイド部材42との間のシートベルトの経路が伸長されるようなフレーム構造及び配置である。前記経路は、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長される。
【0097】
望ましさは劣るがコストが低い変形形態(図示せず)では、リトラクタ41は、シートベルトの端部がそこに固定されるような引き込み能力のない終端部に置き換えられる。これは、例えばシートベルト内に他の長さ調整機構(例えばシートベルト・リトラクタの開発以前から一般に用いられてきた長さ調整機構等)を設ける場合に可能となる。
【0098】
本例では、ガイド42〜47はすべてシートベルト用の湾曲案内面を含み、前記ガイド42〜47は、フレーム構造上に動かないように取り付けられる。
【0099】
シートベルト・ガイド46に関しては、図1から、シートの通常位置では、このガイドはシートベルト40から離間されており、衝突位置への運動時は、「通常離間された(normally spaced)」前記中間シートベルト・ガイド46が前記シートベルトに接触することが観察できるだろう。
【0100】
本例のシートベルト40は、フレーム構造がそれ自体の前方衝突位置に移動するときに当該フレーム構造を「遅延(retard)」させる又は「ブレーキング(brake)」する働きもする。また、本例のシートベルトの伸縮はフレーム構造内の内部張力伝達部材の働きをし、このことは、他のフレーム部材によって荷重を吸収するのに有利である可能性があり、場合によってはそれらの部材の頑健性を低減することが可能となり、したがって軽量化を図ることが可能となる。
【0101】
シートベルト・ガイドは、シートベルトの経路を伸長するだけでなく、前記シートベルトと接触したときに前記シートベルトと摩擦係合することが望ましい可能性もある。一方、シートベルトにかかる荷重を許容可能な荷重に保つため、また、局所的な過荷重を回避するために、関連するシートベルト・ガイドは、低摩擦設計とすることもでき、且つ/又はシートベルトが通過するローラーを含むこともできる。
【0102】
図1及び図2を見ると、前記通常位置から前記衝突位置に向かうシートの運動時に、上部背もたれフレーム部材25と下部背もたれフレーム部材27との間の角度が徐々に減少していき、その結果、背もたれがすぼめた手(cupped hand)に少し似た外観を呈するようになることが観察できるだろう。このことは、衝突の衝撃による着座者の反発時に着座者を受けるのにも有利である。
【0103】
衝突時は一般に反発が観察され、そのような反発は、むち打ち及び同様の損傷を引き起こす又は増加させるものと考えられる。
【0104】
シート20は、衝突によるシート及び着座者の反発に応答して、シートクッション22及び背もたれクッション26、28(及び関連するフレーム構造)がそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるように設計されることが好ましい。
【0105】
実際には、反発した着座者は、(上述のようにすぼめることが可能な)背もたれによって「受け止め」られ、背もたれ及びシートクッションは、後方に振られる着座者と一緒に移動することができる。したがって、反発した着座者は、反発変位期間の大部分シートによって支持され、その結果損傷及び/又はその重症度が軽減されることになる。
【0106】
また、車両運転者の多くの急ブレーキ・アクションは、衝突時ではなく後に運転者がブレーキを放したときに終了することも理解されるだろう。
【0107】
シート20は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるフレーム構造を有する。特に、当業者なら図面を見れば分かるように、本フレーム構造は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがシート及び着座者に作用する重力に基づいて衝突位置からそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるように適合されている。
【0108】
図示しない一代替形態では、シート20は、ブロック手段であって、前記シート20をそれ自体の通常位置にブロックし、1つ又は複数の条件が検出されたとき、例えば前記ブロック手段にかかる荷重が慣性誘起により所定の荷重レベルを超えたとき、又は所定の減速を上回る減速が感知されたときに、前記シート20の衝突位置への運動を可能にするように企図及び構成されたブロック手段を含むこともできる。
【0109】
図3乃至図10では、同様の部品が同様の参照符号で示される。
【0110】
図3及び図4では、シート80は、枢動コネクタ31の下方に下部延長部27aを含む下部背もたれフレーム部材27を有する。前記延長部上にはさらに、中間中央シートベルト・ガイド部材48が配置されている。フレーム部材29上には、部材45と対をなすように別のシートベルト・ガイド部材49が配置されている。図面から分かるように、このシートベルトは、前記部材45、48、及び49に沿って吊架(slung along)されて開ループを形成する。フレーム部材27a、29は、衝突位置への運動時に前記中央中間ガイド部材を前記1対から離れるように移動させるように企図及び構成されているので、シートベルトの経路が効果的に伸長される。また、この開ループ構成によって大きな遅延効果が生み出される。
【0111】
図3及び図4の設計では、延長部27aの下端が連結アーム36を介してフレーム部材23に連結され、当該アーム36は、両端に枢動コネクタを有する。
【0112】
図5及び図6では、シート100も既に詳細に論じた多数の部品を含む。図面から分かるように、本例のフレーム部材23は、上部背もたれフレーム部材25まで延在し、それ自体の上端101において当該上部背もたれフレーム部材25と滑動可能に係合するように設計される。
【0113】
また、本例のシートクッション・フレーム部材21は、衝突位置への運動時に、それ自体を支持するフレーム部材23に対して前方滑動するように構成される。
【0114】
図7及び図8は、下部及び上部背もたれクッションがそれぞれ部材29/25上に配置されたシート120を示す。
【0115】
図9では、シートクッション・フレーム部材21は、シートクッション22下方に延在する下部21bと、着座者の腰部後方に延在する高くなった(raised)後部21aとを有する一体式構造(monolithic structure)となっている。フレーム部材21の側面フレーム部材21bは、安定性を高めるために(また、側面衝撃耐性ももたらすために)シートクッションの両側に延在し、フレーム部材21の下部及び高くなった後部に嵌合することが好ましい。
【0116】
一体且つ本質的に変形しないクッション・フレーム部材21がシートクッション下方だけでなく着座者の腰部下方の領域にも延在することにより、当該領域では、シート・フレーム構造の各部品の「運動(motion)」が生じないという効果が得られる。これにより、当該領域で着座者の身体が「締め付けられる(pinching)」ことが回避され、その結果、衝突時に当該領域で身体にかかる荷重が軽減される。また、上記は設計上実用的であり、シート質量の低減が可能であることが発見された。
【0117】
図面から分かるように、このフレーム部材21にはシートベルト・ロック部材43が取り付けられることが好ましい。
【0118】
クッション・フレーム部材21は、比較的高い位置(30)で背もたれフレーム・アセンブリ25に接続される。このように枢動接続の位置を高く、好ましくはシートクッションの上面より高くすることは、シートベルトの荷重がかけられたときの背もたれフレーム部材の安定性が高まることで背もたれフレーム部材の軽量化が可能となること等、正の影響をもたらす。
【0119】
図面から分かるように、本例のシートベルト・リトラクタ41は、背もたれフレーム・アセンブリ部材上に取り付けられる。
【0120】
本例の枢動コネクタ3は、背もたれフレームの後方に位置することが理解されるだろう。このような枢動点の配置は有利である可能性があるが、このフレームの下部を後方に延長することに支障が生じると考えられる場合もある(例えば、より後方の列のシートに乗客が座るバス等)。コネクタ自体はシートの垂直方向の突出範囲内に位置するが、他の枢動コネクタ、例えばマルチ・リンク・コネクタによって背もたれフレームの後方に位置する仮想的な枢動点を模擬することができることが、当業者には理解されるだろう。
【0121】
図9では、シートクッション・フレーム・アセンブリのフレーム部材23は、シートの通常位置で床上又は床に取り付けられた迫台部材又はストップ4上に載置される支持部材23aを装備する。これにより、通常の走行中に安定したシート位置が生み出される。
【0122】
図9は、他のオプション、即ち背もたれフレームと背もたれクッションの間にシートベルト40を通すオプションも示す。このオプションは、着座者がシートに着座したときにシートベルトがある程度締め付けられ、したがって、着座者がシートベルト・リトラクタを望ましい形で緩めることなくシートベルトを前記望ましい形で構成することが可能になるという効果を有する。この締め付け効果は、着座者が前かがみになる(又は慣性によって前方に移動される)と同時に解除され、シートベルト・リトラクタは活動状態になる。この効果は、より多くの人々が各自のシートベルトを実際に使用するように仕向けることが可能であると考えられる。
【0123】
図10にも同じシートクッション・フレーム部材21が示されている。本例では、背もたれフレーム・アセンブリ25は、本質的に直線設計の1つの一体式構造で形成される。枢動コネクタ3は、前記アセンブリ25の下端に枢動点を効果的に設ける。シートベルト40は、背もたれフレーム・アセンブリ上又はそれに隣接するシートベルト・リトラクタ41から前記フレーム・アセンブリに沿って上行し、ガイド42へと通される。
【0124】
このシートベルトは、上述したようなシートベルトの経路が効果的に短縮されるように、中間ガイド部材45、48、49間を通ることが好ましい。
【0125】
本発明のシートを用いると、車の設計者は多くの追加的な利点を実現することが可能となる。かかる利点の1つは、側面衝撃衝突にある。好ましくはシートベルトがシートと完全に一体化されている(したがって、リトラクタ、ロック、係止ポイント等すべてのアイテムがシート構造上に取り付けられている)場合、シート全体の横方向変位が乗客にかかるシートベルトの荷重にもたらす負の影響は、シートベルトのショルダー・ガイド及びロック部材が車両本体上に取り付けられる通常の状況よりも小さくなる。
【0126】
本発明のシートは、必要に応じて背もたれ又は背もたれの一部のリクライニング機構を含むことができる。
【0127】
ショルダー・ガイドをシート構造上に配置することにより、設計者は、車両の前側ドアと後側ドアとの間の車両中央ピラーを省略又は「スリム化(slim down)」することも可能となる。既知の車では、このようなピラーは、前記ピラー上に取り付けられたショルダー・ガイドにかかるシートベルトの力を吸収するように設計する必要があり、このことが設計自体の大きな制約となっている。
【0128】
本明細書では3点シートベルト・システムを好ましいシステムとして説明しているが、言うまでもなく、3点シートベルト・システムと同様の着座者保護効果をもたらす4点シートベルト・システム又は他のシートベルト・システム、あるいはより優れたシートベルト・システムも本願の範囲に含まれることに留意されたい。
【0129】
上述のとおり、本シートは、先に説明したブロック手段を用いない場合も同様に、常に可動性をもたらすように設計することができる。かかる非ブロック設計、又はブロック・モードである限られた範囲の可動性をもたらす設計(又は着座者/車両運転者がブロック手段を解除することが許される場合)は、(例えば子供の)車酔い効果の解消に寄与し得ることが予想される。
【0130】
本発明に係るシートは、車両の荷物室の直前に配置することができ、それによって前記荷物室の境界を効果的に定めることができる。これは、衝突時にシートが前方に移動し、荷物がそれに追従できるようになるので、非常に有利である可能性がある。これにより、多くの従来技術のシートで観察されるような荷物の慣性力によるシートの過荷重が回避される。この点で、荷物カバー又は荷物ネット(例えば布製又は固体カバー)を前記シートの後部に直接接続し、その結果衝突時に当該カバー又はネットがシートの前進運動に追従し、荷物がシートの背後に逃げる隙間をなくすようにすることが有利である可能性がある。
【0131】
一変形形態では、シートは、通常水平位置にある荷物室カバーと組み合わせられる。シートの衝突誘起運動時に、カバーを例えば本質的に垂直位置に上方枢動運動させるように適合された、シートとカバーの間の機械的連結が想定される。前記手法では、カバーは、シートを越えて前方に投げ出される荷物に対する保護具を形成する。
【0132】
図11は、一例として本発明の第2の態様を示す。なお、この第2の態様は有利なことに、本発明に係るシートと一体化することが可能である。一方、この第2の態様は、固定背もたれフレームのような従来技術設計を用いた(又は単に所望の傾斜設定を可能にする傾斜システムを用いた)車両用シートと一体化され得ることにも留意されたい。図11は、3点シートベルト・システムの一部として車両用シートの背もたれの上部ならびにシートベルトを示す。図示のとおり、ショルダー・ガイド42は、背もたれフレーム25の一部であり、特に水平面に対してある角度で配置される。また、やはり背もたれフレーム25の一部となる対応する「内側シートベルト・ガイド60が、ショルダー・ガイド42に隣接して設けられている。単純な設計では、ガイド42とガイド60は共に、背もたれフレームの管状要素によって形成される。また、ガイド60は、ガイド42との間の90度未満の角度の傾斜向きに配置される。
【0133】
シートベルト40は、ガイド60の下方からガイド60に到達し、次に前記ガイド60の前側から(前記ガイド60を越えて)前記ガイド60の裏側に通され、その後ガイド42の裏側に向けて通される。本例では、シートベルトは、ガイド42を越えて背もたれフレームの前側に通され、その後着座者の胴体(図示せず)を横切るように通される。
【0134】
ガイド42の効果的な幅は、シートベルト40の幅の少なくとも2倍であることに留意されたい。
【0135】
ガイド42の傾斜向きは、シートベルトの位置が着座者の高さ(特に着座者の肩の位置)に自動的に調整されるという効果を有する。この効果は、現時点でショルダー・ガイドの調整設備が存在しないバス等において非常に有利である。また、ショルダー・ガイドが可動部分を含まないので、その設計は安価であり、背もたれへの組み込みも単純である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート(vehicle seat)の分野に関する。本分野では、衝突発生時及び急発進状況でのシートの着座者(occupant)の安全確保が主な課題である。
【背景技術】
【0002】
一般的な設計では、車両用シートは、しばしばリクライニング角が調整可能な背もたれを有し、シートクッション上に通常の端座姿勢で座る着座者の胴体を背後から背もたれクッションで支持しながら、該着座者の体重を吸収するように適合された固定フレーム構造を有する。
【0003】
本明細書では、着座者は着座時に前方を向くものとされ、衝突は前面衝突と見なされる。当業者なら、本シートが後面衝突の場合にも有利であり得ることを理解するであろう。また、当業者なら、本シートは前向き配置が好ましいが、後向き配置も可能であることを理解するであろう。
【0004】
「車両(vehicle)」という用語は、少なくとも自動車、バン、(公共輸送)バス、ミニ・バス、長距離バス(coach)、トラック、ローリー、レーシングカー、列車、航空機を含む。
【0005】
大部分の自動車では、衝突時に着座者をシート内に保持するものとして3点シートベルトが一般に用いられている。一般に、3点シートベルト・システムは、車体のピラーに組み込まれたシートベルト用ショルダー・ガイド部材を有する。
【0006】
3点安全ベルト・システムは着座者の安全に大きく貢献するが、バン、バス(ミニ・バスを含む)、及び長距離バスでは一般にラップ・ベルト式シートベルト・システムが提供される。一方、現在知られている大部分のシート設計、特にバン、(ミニ)バス、及び長距離バスの乗客シートは、3点安全ベルト・システムの組み込みには不向きである。特に、それらの車両内の背もたれ、及び乗客シートのフレーム構造下部への背もたれの取り付けでは一般に、ショルダー・シートベルト・ガイドの領域において衝突時に背もたれに作用する力に耐えることができない。StyleRide Pty社の豪州特許出願第AU2007200954号に開示されるように、オーストラリアの法規制による3点安全ベルト・システムが組み込まれた長距離バス・シートが開発されている。
【0007】
バス及びトラック運転者にとって複雑で重く非常に高額な3点安全ベルト・システムが組み込まれたシートが開発されていることに留意されたい。一例には、「Profi Class Sigus」の商品名で販売されるRecaro社の商用車運転シートがある。上記の既知のシートでは、背もたれ上部にシートベルト・リトラクタが取り付けられる。
【0008】
シートベルト・システムが組み込まれるこれらのシートは、衝突発生時に着座者を可能な限り各自の通常位置に維持するように設計され、シートクッション及び背もたれは一般に、それぞれの当初位置を維持するように設計される。衝突が発生するとシートベルトは背もたれ上部に大きな荷重をかけるため、この既知のシートでは、背もたれ及びシート構造下部への背もたれの取り付けは、背もたれ及びその取り付け部にかかる大きい運動量を吸収するように高い頑健性をもって設計されることが理解されるだろう。
【0009】
このようなシートベルト一体型シートに課される要件、主として衝突中のG力要件に応じて、シートの固定フレーム構造は、衝突時のシートベルトの力を吸収するために非常に頑健に設計する必要がある。その結果、現在使用されている乗客シートと比較してシート重量が大幅に増加する可能性が高くなる。例えば、約50席のバスでは、そのような重量増加は非常に大きな問題となる。また、シートが取り付けられる床及び/又は他の車両本体要素(例えば長距離バス内の側壁等)は、シートを支持するためならびに衝突時及び/又は急発進時の力を吸収するために、より高い強度で設計する必要があり、その結果車両の総重量はさらに増加する。航空機の場合では、この問題はさらに悪化する。
【0010】
3点シートベルト・システムに関連する別の問題は、「シートベルト・スラック(seat belt slack)」の問題である。シートベルト・スラックは、シートに対する着座者の望ましくない変位をもたらす。衝突の際、着座者は前方に加速された後、シートベルトによって突然停止されるため、望ましくない荷重が身体にかかることになる。言うまでもなく、着座者はシートベルトを自らきつく締めることによってそのような作用を低減することができるが、大半の着座者は自動車内でもベルトをきつく締めないことが分かっており、公共輸送車両にあってはそうする着座者はもっと少なくなることが予想される。
【0011】
シートベルト・スラックを少なくするために、しばしばシートベルト係止部材又はシートベルト・ロック部材と一体化される「プリ・テンショナ(pre‐tensioner)」が開発されている。多くのプリ・テンショナは、実際の衝突時に適切なセンサから指令を受けてトリガされ、その後シートベルトを緊張させる火工装置である。また、例えば運転者による車両のブレーキングによって生じる減速に基づいて、やはり適切なセンサによって統制されるプリ・テンション式シートベルト・リトラクタも知られている。座席数の多いバス等で応用する場合、このようなプリ・テンショナは、調達と保守の両面からコストが高くなりすぎる可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】豪州特許出願第AU2007200954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一目的は、改良型車両用シートを提供することである。
【0014】
前記シートは、3点シートベルト・システムを装備することが好ましい。
【0015】
本発明の別の目的は、衝突前及び/又は衝突の初期段階中に一般に発生する減速時に着座者が衝突位置(crash position)に向かって移動するような、着座者の減速応答性可動支持(deceleration responsive mobile support)を実現するフレーム構造を含む車両用シートを提供することである。
【0016】
本発明のまた別の目的は、シートベルト・スラックに対処する車両用シートを提供することである。
【0017】
本発明のまた別の目的は、むち打ちの発生及び/又は重症度を軽減する車両用シートを提供することである。
【0018】
本発明のまた別の目的は、比較的低重量のシート設計で着座者の安全性を高めることが可能な車両用シートを提供することである。
【0019】
本発明のまた別の目的は、バス、ミニバン、又は長距離バスの場合と同様に、シートが縦並び及び/又は横一列に配置された車両内の乗客の安全性を高める車両用シートを提供することである。
【0020】
本発明のまた別の目的は、車両の床上、例えばバス又は長距離バスの床上に配置され、当該床上に作用する力が低減されるように相互連結することが可能な車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的の1つ又は複数は、請求項1に記載の減速応答性車両用シートによって達成される。
【0022】
大部分の衝突は、ごく短い期間であっても運転者が力強くブレーキをかけ、車両速度の減少を試みた後に発生することが知られている。一般的なシート設計では、着座者は、車両を減速した時点で既に、静止しているシートクッション及び背もたれに対して前方に移動していることになる。既知のプリ・テンショナは一般に、余分のシートベルト・スラックの低減にしか有効でない。
【0023】
本発明では、関連する減速条件下でシートクッションと背もたれが共に有利な衝突位置に移動することが想定される。例えば、このことは、着座者にとって自身が前進運動するとき、例えば有利には初期段階で自身の背中が背もたれによって「受け止められる(caught)」と同時に着座者が「反発(rebound)」したときに、背もたれクッション(又は少なくともその上部)が自身の胴体に追従することを意味する。
【0024】
背もたれフレーム・アセンブリは、着座者の頭部の後側に延在するヘッド・レストを含むことが好ましい。これは、むち打ちの(影響の)軽減に有利であることが想定される。
【0025】
以下で詳述するように、シートクッション及び背もたれクッションを支持するフレーム構造の各部の「可動性(mobility)」は、潜在的な魅力を有する多数の選択肢を提供する。
【0026】
例えば、前記可動性を利用して前進運動中のシートベルト・スラックの低減を実現することができる。
【0027】
また、この可動性を利用することにより、主として衝突時の着座者の安全性を高める目的で、フレーム構造の各部を所望の衝突位置まで持っていくこと、あるいは少なくとも該位置に向かわせることが可能となる。一般に、この「可動性」は、衝突状態において着座者の身体をより有利な位置に持っていくことが可能となる時間と着座者身体の運動経路の両方を提供するだけでなく、エネルギーをより漸次的に吸収する機会も提供する。
【0028】
シートは、関連する減速時に着座者の臀部領域又は着座者の胴体下部がシートクッションに沿って前方に移動するように、好ましくはシートクッション上で着座者が滑らないように又は着座者の滑りを最小限に抑えるように設計されることが好ましく、この効果は減速と同時に発生する後述の傾斜効果によって高められ得る。このような胴体下部の前進運動は、通常のシートでの衝突と比較して、胴体、特に頭部の前傾運動が低減される有利な効果を有する。シートベルトを有する前記シートでは、衝突時に頭部が激しく前傾することになり、その結果、同等の激しさで頭部が後方に反発するとともに、頸部が急激に屈曲されることになる。胴体の重い部分が前方移動可能となった時点から、胴体及び頭部の前傾運動の激しさが緩和され、その結果、シートベルトに対する荷重(したがって胴体ならびにシート構造に対する荷重)が軽減され、着座者の頸部に対する荷重も軽減される。
【0029】
好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速(collision induced deceleration)時に、背もたれクッション(又は少なくともその上部)がシートクッションよりも長い距離にわたって前方移動するような構造となる。これにより、車両の激しいブレーキング又は衝突時に着座者の胴体が前傾する可能性が高くなるので、「背もたれを着座者の背中に追従」させることが可能となる。この効果は、着座者の頭部に追従するヘッド・レストの存在下で高められる。
【0030】
さらに好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、主として背もたれ(の上部)が前傾していく着座者の背中に追従するような形で、背もたれクッション(又は少なくともその上部)が前傾されるような構造となる。この効果は、着座者の頭部に追従するヘッド・レストの存在下で高められる。
【0031】
さらに好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、シートクッション・フレームがそれ自体の前進運動に加えて、シートクッション・フレームの前部がシートクッション・フレームの後部に対して相対的に高くなるように傾斜がつけられるような構造となる。この特徴により、着座者をさらに有利な衝突位置に持っていくことが可能となる。一般には、これによって着座者の大腿部は通常の運転位置よりも「傾いた」シートクッション上に置かれることになり、シートクッションに対する身体の前方滑動も打ち消され、着座者の慣性力の大部分はシートクッション・フレーム・アセンブリによって吸収されることになる。フレーム構造の寸法によっては、この「傾き効果(inclination effect)」によって着座者の潜り込み現象を完全に解消することができ、したがって、着座者がシートクッション上で滑動しなくなるとともに、着座者にかかるシートベルトの荷重が大幅に軽減される。身体にかかるシートベルトの荷重が着座者の重傷の原因となることが多いので、後者の効果は非常に重要である。
【0032】
シートの可能な一実施形態では、この「傾き効果」は、(部分的には)シートクッション・フレームの後部を低くすることによってもたらされる。好ましいことに、シートベルトは、着座者の骨盤領域が上記シートクッション・フレームの低くなった後部と共に効果的に引き下げられるようにシートクッション・フレームに効果的に取り付けられ、好ましくはその後部に効果的に取り付けられる。これにより、着座者の頭部は「より低い軌道」で運ばれ、したがって車両のステアリング・ホイール、フロントガラス、及び/又はフロントガラスのヘッダー・バーから効果的に遠ざけられる。背の高い着座者の場合、このことは、衝突中に生じ得る頭部損傷に対して非常に有益な効果を有する。
【0033】
スポーツ・カーのような一部の車両では、車両本体床上のシートクッションの高さが低い故に、このように後部を低くすることは現実的でない可能性がある。そのような状況では、シートクッション・フレームの傾き効果は、シートクッション・フレームの前部だけを持ち上げることによって生み出すことができる。なお、従来技術では、衝突前減速又は衝突時にシートクッション・フレームの前部の傾斜をもたらすセンサ制御アクチュエータが開示されている。
【0034】
この前部に特化した(front portion only)本発明の好ましい実施形態は、フレーム構造自体の適切な機械設計によって傾き効果がもたらされ、また、上記のアクチュエータは(特にバスや長距離バスでは)コストが高く、保守/管理も必要となるので、そのようなアクチュエータなしに傾き効果が発揮されることに基づいている。
【0035】
多くのバス及び長距離バスの場合と同様にシートが縦並びとなる一構成では、本発明は、着座者と一緒に目の前のシートの背もたれも前方に移動することから(空席の場合も同様)、着座者が前記背もたれにぶつかる可能性が低減される能力を提供する。着座者がいないシートも衝突位置に向けて推進されるように、このタイプのシート同士を機械的に連結することが想定され得る。この措置は、シートが横並びに配置される状況でも適用することができる。
【0036】
本発明に係るシートの特に好ましい一実施形態では、フレーム構造は、衝突位置への前記前進運動が専ら着座者の質量及びシートの関連部品の質量の慣性によって誘起されるような構造となることが想定される。これにより、衝突前減速時にシートクッション及び背もたれ(少なくともその上部)の所望の運動をもたらすために通常設けられるアクチュエータを省略することが可能となる。フレーム構造の関連部品は基本的に、シートクッション上に着座するとともに安全ベルトで「シートに取り付けられ(attached to the seat)」、所望の衝突位置に到達する着座者に「追従(follow)」する。
【0037】
実際の一実施形態では、本フレーム構造によってもたらされる可動性は、運転者が衝突を想定しないブレーキング状況であってもその時点で既に衝突位置に向かう前記運動が開始されているように、関連部品が小さい減速に対しても応答するような可動性である。ブレーキング・アクションが終了すると、フレーム構造は、例えば重力に基づいてシートをそれ自体の通常位置に復帰させる。
【0038】
別の実際の実施形態では、シートはさらに、ブロック手段であって、前記シートをそれ自体の通常位置にブロックし、「1つ又は複数の条件が存在」するとき、例えば、前記ブロック手段にかかる荷重が慣性誘起により所定の荷重レベルを超えたとき、所定の減速率を上回る減速が感知されたとき、(レーダ又は他の遠隔感知デバイスによって)他の任意の衝突リスク、急激な車両動作(ステアリング)等が感知されたときに、前記シートの衝突位置に向かう運動を可能にするように企図(construe)及び構成されたブロック手段を含む。また、車両が斜面上を走行しているときにシートをそれ自体の通常位置にブロックすることも想定され得る。
【0039】
例えば、前記ブロック手段は、前記フレーム構造の一部と係合し、前記フレーム構造が通常位置にあるときに動かないように保持し、例えばそれ自体の閾値荷重を超過したとき、又はそれ自体に関連するセンサが所定の減速を感知したときに前記フレーム構造を解放する、(例えばシートベルト・リトラクタのブロックに使用される)ばね付き戻り止め(spring loaded detent)とすることもできる。
【0040】
好ましくはないが、本発明では、前記シートが、例えば減速の感知に基づいてそれ自体に指令が送られたときに、前記シートをそれ自体の衝突位置に押し出す(force)ように適合されたアクチュエータを含むことも想定される。
【0041】
上述のとおり、本発明では、関連するシート部品が前記衝突位置へと前方移動するだけでなく、前記フレーム構造を用いることにより、減速の緩和又は終了に応答して前記シートクッション及び背もたれクッションをそれぞれの通常位置に復帰させ得ることが想定される。
【0042】
特に、急ブレーキの多くの場面では衝突は発生せず、ブレーキング・アクションが運転者によって終了されることが想定される。その後、前記シートはそれ自体の通常位置に復帰する。
【0043】
好ましい一実施形態では、前記フレーム構造は、前記「復帰運動」が主として重力に基づいて実現されるようなフレーム構造となる。これは、前記衝突位置に向けた前進運動中に前記関連するシート部品及び着座者の重心が前記フレーム構造によって高められ、その後減速が終了又は緩和されたときに当該重心がより低い位置に復帰しようとするときに可能となる。
【0044】
また、「それ自体の通常位置に復帰」する能力は、衝突による前記シート及び着座者の反発を吸収する観点から非常に有利である。この反発によって前記着座者の背中が背もたれに押し付けられ、その後前記背もたれが着座者と「一緒に移動(move along)」して当該反発を吸収することが可能となる。
【0045】
「復帰方向」に作用し、前記復帰方向における(したがって衝突による反発時の)前記シート(及び着座者)の速度を減少させる働きをする、遅延又はエネルギー吸収手段を前記シートに含めることが想定され得る。かかる遅延又はエネルギー吸収手段は、例えばオイル・ダンパ又は(好ましくは反発方向にのみ作用する)他のダンパ(例えば摩擦ベース・ダンパ)、前記シートの復帰運動時等に塑性変形される犠牲部材を前記シート構造に含めることができる。前記遅延又はエネルギー吸収手段は、例えば犠牲ベース(車両の床)上に取り付けられるある種のシートベルト・リトラクタを有する他のベルトを含むこともできる。衝突が発生すると、前記リトラクタは、前記シートの前進運動時に前記ベルトを短縮し、突然の(衝突誘起による)復帰運動時にランド・ロックされる。前記リトラクタは、前記犠牲ベースが退くとともに前記ベルトと一緒に移動され、したがって前記シートを遅延させる。衝突が発生しない場合は、突然の復帰運動も発生せず、前記リトラクタは、前記ベルトの再延長を可能にする。
【0046】
好ましい一実施形態では、前記一体型シートベルト・システムはさらに、互いに離間し、前記ショルダー・ガイド部材及び前記リトラクタ又は前記シートベルトの他の終端部からも離間する、前記フレーム構造内の1つ又は複数の位置に設けられた1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材を含み、前記中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトを案内し、それによって前記リトラクタと前記シートベルト・ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの経路を定義することを可能にする。これにより、前記リトラクタは、上述の従来技術によるRecaro社のシートのように背もたれ内ではなく、例えば前記フレーム構造上の前記シートクッションの下の領域に設けることが可能となる。
【0047】
特に有利な一実施形態では、前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記リトラクタ、前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド、及び前記ショルダー・シートベルト・ガイドの空間方向が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによって前記リトラクタと前記ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの前記経路が、前記シートが衝突位置にある場合、好ましくは少なくとも10cm、好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長されるような構造となる。この概念は、前記フレーム構造によってもたらされる「可動支持(mobile support)」を利用してシートベルト・スラックの問題に対処することができるという洞察に基づく。衝突位置への所望の可動性をもたらすフレーム構造では、当業者なら所望の伸長が実現されるように各部品を配置することができるはずである。これにより、例えば前記シートにおいて好ましいことに前記リトラクタ以外の追加的なシートベルト緊張装置を省略することが可能となり、前記シートは、減速又は衝突センサによって制御されるプリ・テンショニング装置なしに実施される。
【0048】
好ましい一実施形態では、前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる。前記シートベルト・ガイド部材は、例えば前記シートベルトがそれに沿って滑動可能なフレーム部材と一体化される金属棒又は金属管とすることができる。
【0049】
実際の一実施形態では、前記フレーム構造は、それぞれ少なくとも1つの中間シートベルト・ガイド部材を備える第1及び第2のフレーム部材を含み、前記第1及び第2のフレーム部材は、前記シートの前記通常位置から前記衝突位置への運動中に互いの空間方向が変更され、それによって前記シートベルトの前記経路が伸長される。
【0050】
実際の有利な一実施形態では、前記第1の部材は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリと関連付けられ、前記第2の部材は、前記背もたれフレーム・アセンブリと関連付けられる。これは、例えば前記背もたれ(の上部)が前記シートクッションよりも前方に移動するように設計され、したがって各アセンブリ内のフレーム部材が前記前進運動中に必然的に異なる「軌道」をとることになる場合に実現される。
【0051】
前記シートベルトの経路の大きな伸長が得られる実際の一実施形態では、前記シートベルト内の前記中間ガイド部材の周囲に開ループが形成されるように、前記第1及び第2のフレーム部材の一方のフレーム部材上に1対の中間シートベルト・ガイド部材が配置され、前記第1及び第2のフレーム部材の他方のフレーム部材上に別の中央中間シートベルト・ガイド部材(central intermediate seat belt guide member)が配置され、前記各フレーム部材は、前記衝突位置への運動時に前記中央中間ガイド部材を前記1対から離れるように移動させ、それによって前記シートベルトの前記経路を伸長するように企図及び構成される。
【0052】
前記フレーム構造内の1つ又は複数の中間ガイド部材に沿った前記シートベルトの案内により、設計者は、衝突中に前記フレーム構造に高い力がかかるときに「前記フレーム構造内の力を吸収」することも可能となる。その後、前記シートベルトは、前記フレーム構造内の「張力伝達要素」として働く。
【0053】
上述した前記シートベルトの前記経路の伸長により、前記シートベルトが前記シートによる衝突位置への前進運動を「遅延」させる効果を生むことも可能となる。このことは特に、好ましくは前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材がそれぞれ、前記シートベルトと接触したときに前記シートベルトがその面に沿って摩擦案内されるような前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる場合に実現される。
【0054】
「摩擦係合」は、前記着座者が前記シートベルトをかけ、前記ベルトのロックが前記着座者によって解除された際の前記シートベルトの引き込みの容易さの観点から望ましくない可能性がある。上記及び他の目的で、前記フレーム構造及び前記フレーム構造内の前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイドは、前記シートの通常位置では、前記中間シートベルト・ガイドのいくつかが前記シートベルトから離間され、前記衝突位置への運動時は、前記1つ又は複数の「通常離間された(normally spaced)」中間シートベルト・ガイドが前記シートベルトに接触するようなフレーム構造及び中間シートベルト・ガイドとされることが想定され得る。
【0055】
本発明は、他のクレーム/サブクレーム及び/又は明細書に記載される追加的な特徴を有し得る請求項33及び35に記載のシートにも関係する。
【0056】
本発明の他の態様は、請求項39に記載の車両用シートに関するものである。本シートは、背もたれフレーム及び3点シートベルト・システムを有し、前記シートベルト用の前記ショルダー・ガイドは、前記背もたれフレームの一部であり、水平面に対してある角度で配置され、前記背もたれフレームは、前記ショルダー・ガイドに隣接する内側シートベルト・ガイドをさらに含み、前記内側シートベルト・ガイドは、やはり前記背もたれフレームの一部であり、隣接の前記ショルダー・ガイドとの間の90度未満の角度の傾斜向きに配置され、前記シートベルトは、前記内側シートベルト・ガイドの下方から前記内側シートベルト・ガイドに到達し、次に前記内側シートベルト・ガイドの前側から前記ガイドを越えて裏側に通され、その後前記ショルダー・ガイドの裏側に向けて通され、そこから前記ショルダー・ガイドを越えて前記背もたれフレームの前側に通され、その結果、前記着座者の胴体を横切るように通すことが可能となり、前記ショルダー・ガイドの効果的な幅は、好ましくは前記シートベルトの幅の少なくとも2倍である。
【0057】
前記ショルダー・ガイドの前記傾斜向きは、前記シートベルトの位置が前記着座者の高さ(特に前記着座者の肩の位置)に自動的に調整されるという効果を有する。この効果は、現時点でショルダー・ガイドの調整設備が存在しないバス等において非常に有利である。また、ショルダー・ガイドが可動部分を含まないので、その設計は安価であり、背もたれへの組み込みも単純である。
【0058】
本発明の他の好ましい実施形態は添付の特許請求の範囲の各請求項に記載されており、以下では、添付の図面を参照してこれらの実施形態についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第1の実施例を示す概略図である。
【図2】衝突位置にある図1のシートを示す図である。
【図3】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第2の実施例を示す概略図である。
【図4】衝突位置にある図3のシートを示す図である。
【図5】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第3の実施例を示す概略図である。
【図6】衝突位置にある図5のシートを示す図である。
【図7】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第4の実施例を示す概略図である。
【図8】衝突位置にある図7のシートを示す図である。
【図9】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第5の実施例を示す概略図である。
【図10】それ自体の通常位置にある本発明に係るシートの第6の実施例を示す概略図である。
【図11】請求項33に記載のシートにおける背もたれの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1乃至図10は、本発明のシートが固定される車両の床1、例えばバン、(ミニ)バス、又は長距離バスの床の一部を示す。本明細書から分かるように、前記シートは、かかる車両内、特に1つ又は複数のシートから成る複数のシート列が縦並びに置かれる車両内の乗客シートとして有利である。本発明のシートは、例えば車内及び/又は運転席としての応用例あるいは航空機内での応用等、他の応用例も企図される。本シートは、スポーツ・カーに設置することもできる。
【0061】
床1上では、前方及び後方枢動コネクタ(pivotal connector)2、3が図示のシートと一体に(belonging to)締結される。1つ又は複数のシートから成る複数のシート列が縦並びに配置される車両では、1つのシートの前方枢動コネクタは、例えば前後のシートに共通する枢動軸(pivot shaft)2a及び3aを有することにより、前記1つのシートの前のシートにおける後方枢動コネクタとしても機能し得ることが想定される。
【0062】
図1乃至図10には、頭部10、肩12を含む胴体11、背中13、膝14、及び脚15を有する着座者9が概略的に示される。各シートは大人の着座者を収容するように設計されるが、一定の目的で特定の子供用シートも企図され得ることが想定される。
【0063】
以下では、図1及び図2に示されるシート20について、車両の衝突前減速中のそれ自体の挙動と共に詳細に論じる。上記の説明に基づけば、他の図面に示される各シートも当業者には容易に理解されるはずであり、そのため、図3乃至図10については簡単な説明のみとする。
【0064】
シート20は、車両の着座者9用の減速応答性車両用シートである。一般に、シート20は、以下で詳述するように、着座者9の体重及び前記着座者によってシート20にかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有する。
【0065】
本明細書に記載のフレーム構造は一般に、相互連結される2つのアセンブリ、即ち、シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリから構成される。
【0066】
一般に、本フレーム構造の各フレーム要素は鋼製とすることができるが、他の材料、例えば適切なプラスチック材料も想定される。
【0067】
シートクッション・フレーム・アセンブリは、シートクッション・フレーム21を含み、シートクッション22は、前記シートクッション・フレーム21上に支持される。シートクッション・フレーム21は、クッション22の少なくとも大部分の下方に延在することが好ましい。
【0068】
本明細書に記載のシートクッション・フレーム・アセンブリはさらに、それ自体の下端が枢動コネクタ2と接続され、それ自体の上端が枢動コネクタ24によってシートクッション22を上部に支持するシートクッション・フレーム部材21と枢動接続された、枢動フレーム部材23を含む。
【0069】
本明細書に記載の背もたれフレーム・アセンブリは、背もたれクッションの上部26を支持する上部背もたれフレーム部材25と、背もたれクッションの下部28を支持する下部背もたれフレーム部材27とを含む。
【0070】
シートクッション及び/又は背もたれクッション及び/又はヘッド・レスト・クッションは、多数の異なる設計を有することができ、着座者にとっての弾性特性を伴う場合も伴わない場合もあることに留意されたい。例えば、クッションは、比較的厚い弾性製品(現行の自動車で一般に見られるような製品)、比較的薄く非常に硬い薄型クッション(しばしば公共輸送車両で見受けられるクッション、例えば破損防止クッション)、薄い網目状クッション(例えば、プラスチック・メッシュ)、有孔金属板要素等である可能性がある。
【0071】
各図から分かるように、上部背もたれフレーム部材25は、後方枢動コネクタ3にそれ自体の下端が接続された枢動フレーム部材29と一体化されている。
【0072】
詳細には、一体に構築された上部背もたれ部材25及び枢動フレーム部材29は、後方枢動コネクタ3から順に、前向きセクション(forwardly directed section)29a(床1に対して上方に傾斜する向きが好ましい)と、その後に続く部材25の下端とそれ自体の上端が一体化された後方上向きの傾斜セクション(angled section)29bとを含む。
【0073】
図2から分かるように、セクション29aと床1との間の自由角度によって部材29の前方枢動が可能となる。
【0074】
図1及び図2は、下部背もたれフレーム部材27の上端が、本例では枢動コネクタ30によって(本例では着座者の背中の約半分の高さで)上部背もたれ部材25と枢動接続されることも示す。また、下部背もたれフレーム部材27の下端は、枢動コネクタ31においてシートクッション・フレーム部材21の後部と枢動接続されることが分かるだろう。
【0075】
本例において、シートクッション22は下部背もたれクッション28と一体化されているが、下部背もたれクッション28は別個の部品であることが図示される。他の設計も理解されるはずであり、例えば、シートクッションと下部及び上部背もたれクッションとを1つの一体型クッションとして形成することも可能であり、また、クッションを別々の部品に細分化することも可能である。
【0076】
本実施例では、シートクッション・フレーム部材21は、それ自体の後端に一体型後方延長部(integral rearward extension)33を含む。
【0077】
図1に示されるシート20の通常位置において、下部背もたれフレーム部材27は、セクション29bによって背面が支持され(bear against)、それにより、通常端座位置(upright sitting normal position)に着座した着座者の体重を受けてフレーム構造が前記位置に維持されることになる。
【0078】
シート20はさらに、着座者9用の一体型3点シートベルト・システムを含む。本シートでは、シートベルト・システムによってシート内の着座者の安全性をさらに高めるために、4点シートベルト・システムあるいは5点システムも採用され得ることに留意されたい。好ましさが劣る一設計で述べたように、本シートは、単純なラップ・ベルト・シート・システムを含むこともできるが、その場合もなお、ラップ・ベルト・システムを有する従来技術のシートと比較して、衝突時の重要な改善点及び有益な効果をもたらす。
【0079】
本例のシートベルト・システムは、シートベルト40と、本例ではシートクッション22下方の枢動フレーム部材23上に取り付けられたシートベルト・リトラクタ41とを含む。
【0080】
このシステムはさらに、着座者9の肩を覆う前記位置にシートベルトを案内するように上部背もたれフレーム部材25上に取り付けられたシートベルト・ショルダー・ガイド部材42を含む。
【0081】
この3点シートベルト・システムはさらに、シートクッション22の両側でフレーム構造上に取り付けられたシートベルト係止部材(図面では見えない)及びシートベルト・ロック部材43を含む。したがって、シートベルトの膝部分は、着座者の膝又は骨盤領域14全体に延在し、肩部分は、ショルダー・ガイド42から胴体11の前部をやや斜めに横切ってロック部材43まで延在する。
【0082】
シート20は、ヘッド・レスト・フレーム及びヘッド・レスト・クッションを有するヘッド・レスト35も含む。本例のヘッド・レスト35は、頭部10の後側に延在するように一体化フレーム部材29、25の上端に取り付けられる。
【0083】
シートベルト40は、互いに離間し、ショルダー・ガイド部材42及びリトラクタ41からも離間する、フレーム構造内の多数の位置に設けられたいくつかの中間シートベルト・ガイド部材、本例では44、45、46、47によって定義されるリトラクタ41とガイド部材42との間の経路を通る。
【0084】
ガイド部材45は、本例では枢動フレーム部材29上の角部付近に配置され、ガイド部材46は、シートクッション・フレーム部材21の延長部33上に配置される。
【0085】
したがって、図1及び図2から分かるように、本例のフレーム構造は本質的に、クッション部品を支持するとともに車両の床1(及び/又は車両設計によっては車両の他の部品)とも枢動接続される、相互に枢動接続されたフレーム部材から構成される。
【0086】
図2は、着座者9が衝突位置にあるときのシート20を示す。この位置は、衝突を予見した運転者が車両の急ブレーキをかけることによって通常発生する、車両の衝突前減速の結果到達する位置である。実際には、そのようなブレーキングは実際の衝突が発生する前の非常に短い時間だけ行われる可能性があるが、(図2に示される)適切な設計では、その時点で既にシートが前記減速に応答していることになる。説明するまでもないが、衝撃時はずっと大きな減速が経験され、シートは衝突前ブレーキングが行われなかった場合も応答することになる。とはいえ、多くの衝突では事前に急ブレーキがかけられるため、本発明のシートは、着座者にとって(後のシートに着座者がいる場合はその着座者にとっても)有利な衝突位置にシート及び着座者を持っていくことによって前記減速を「利用(profit)」しようと試みる。本明細書を読めば分かるように、各自の元の通常着座位置から衝突位置に向かう着座者の運動も(それが当てはまる場合は反発運動も)また、主に衝突状態で身体にかかる力と、着座者の身体の各部分の空間運動との観点から、着座者にとって非常に有益であることに留意されたい。
【0087】
図2は、背もたれフレーム・アセンブリのフレーム部材25/29と、シートクッション・フレーム・アセンブリの枢動フレーム部材23が共に前方枢動された状態を示す。本例では、床係合部材29上の迫台(abutment)4が部材29の端位置を定義する。
【0088】
これらのフレーム部材25/29及び23の枢動運動は、様々な効果をもたらす。
【0089】
シートクッション22及び背もたれクッション部品26、28は、図1の通常位置と比較して、衝突位置に対してほぼ順方向に移動していることが分かるだろう。したがって、これらの部品は、シートクッション上で身体が前方滑動し、(例えばシートベルト・スラックによって)胴体11が背もたれから前方に傾斜し始めた着座者の動きに追従している。このように、本フレーム構造は、主に着座者及び関連するシート部品の慣性によって誘起される車両の衝突前ブレーキングに応答して作動する(バス等の空席も同様に作動することが想定され得る)。
【0090】
図1と図2を比較すると、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、背もたれクッション、特に上部26は、上部26が着座者の背中の「背後に近付く(closer behind)」ことが可能となるように、シートクッション22よりも長い距離にわたって前方移動することが観察できるだろう。
【0091】
本例のシート20は、前記衝突位置への運動時に、上部背もたれフレーム部材が床上の枢動コネクタ3の周りを枢動し、したがって前傾していく着座者の胴体11の角運動に「追従」するようなシートである。
【0092】
全体として、シート20は、上部背もたれクッション26が(本例ではヘッド・レスト35と共に)着座者の胴体(及び頭部)の動きに追従するという効果を有する。上述のとおり、これによって衝撃時の着座者の有利な衝突位置が保証され、一般に衝撃後間もなく経験される反発に起因するむち打ちの観点からも有利である。頭部はなお胴体に対して前傾するが、反発時点で上部背もたれクッション及びヘッド・レストがそれらの身体部分の「背後に近付いている(close behind)」ため、反発の悪影響は小さくなる。
【0093】
図1及び図2は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、シートクッション22が、本例では好ましくはそれ自体の前進運動に加えて、シートクッション・フレーム部材21の前部がシートクッション・フレーム部材21の後部に対して高くなるように傾斜がつけられるフレーム構造も示す。上述のとおり、これによって着座者がシートクッション上で滑動することがなくなり、即ち、当技術分野で知られるような「潜り込み効果」が解消される。また、部材21の前部が上向きに傾斜することにより、着座者の「前向き荷重」の大部分が部材23に伝達され、それによってシートベルト40にかかる荷重を軽減することが可能となる。
【0094】
さらに、衝突位置に向かって運動するシート20の特に有利な効果は、センサ制御プリ・テンショナ、あるいは衝突/危険感知システムと結合されたアクティブ制御を有するシートベルト・テンショナ等の他のアクティブ・デバイスを用いることなく、シートベルト・スラックが低減されることにある。無論、本発明のシートは、そのようなプリ・テンショナ又はシステムと組み合わせることもできる。
【0095】
図2と図1を比較すれば分かるように、リトラクタ41とショルダー・ガイド42との間のシートベルト40の経路は、図1よりも図2の方がずっと長くなっている。前記経路は、フレーム構造が衝突位置に向かう前記運動の結果として、前記運動中に徐々に伸長することが理解されるだろう。
【0096】
実際には、中間シートベルト・ガイドのフレーム構造及び配置は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記リトラクタ41、中間シートベルト・ガイド44〜47、及び前記ショルダー・シートベルト・ガイド42の空間方向(spatial orientation)が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによってリトラクタ41とショルダー・ガイド部材42との間のシートベルトの経路が伸長されるようなフレーム構造及び配置である。前記経路は、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長される。
【0097】
望ましさは劣るがコストが低い変形形態(図示せず)では、リトラクタ41は、シートベルトの端部がそこに固定されるような引き込み能力のない終端部に置き換えられる。これは、例えばシートベルト内に他の長さ調整機構(例えばシートベルト・リトラクタの開発以前から一般に用いられてきた長さ調整機構等)を設ける場合に可能となる。
【0098】
本例では、ガイド42〜47はすべてシートベルト用の湾曲案内面を含み、前記ガイド42〜47は、フレーム構造上に動かないように取り付けられる。
【0099】
シートベルト・ガイド46に関しては、図1から、シートの通常位置では、このガイドはシートベルト40から離間されており、衝突位置への運動時は、「通常離間された(normally spaced)」前記中間シートベルト・ガイド46が前記シートベルトに接触することが観察できるだろう。
【0100】
本例のシートベルト40は、フレーム構造がそれ自体の前方衝突位置に移動するときに当該フレーム構造を「遅延(retard)」させる又は「ブレーキング(brake)」する働きもする。また、本例のシートベルトの伸縮はフレーム構造内の内部張力伝達部材の働きをし、このことは、他のフレーム部材によって荷重を吸収するのに有利である可能性があり、場合によってはそれらの部材の頑健性を低減することが可能となり、したがって軽量化を図ることが可能となる。
【0101】
シートベルト・ガイドは、シートベルトの経路を伸長するだけでなく、前記シートベルトと接触したときに前記シートベルトと摩擦係合することが望ましい可能性もある。一方、シートベルトにかかる荷重を許容可能な荷重に保つため、また、局所的な過荷重を回避するために、関連するシートベルト・ガイドは、低摩擦設計とすることもでき、且つ/又はシートベルトが通過するローラーを含むこともできる。
【0102】
図1及び図2を見ると、前記通常位置から前記衝突位置に向かうシートの運動時に、上部背もたれフレーム部材25と下部背もたれフレーム部材27との間の角度が徐々に減少していき、その結果、背もたれがすぼめた手(cupped hand)に少し似た外観を呈するようになることが観察できるだろう。このことは、衝突の衝撃による着座者の反発時に着座者を受けるのにも有利である。
【0103】
衝突時は一般に反発が観察され、そのような反発は、むち打ち及び同様の損傷を引き起こす又は増加させるものと考えられる。
【0104】
シート20は、衝突によるシート及び着座者の反発に応答して、シートクッション22及び背もたれクッション26、28(及び関連するフレーム構造)がそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるように設計されることが好ましい。
【0105】
実際には、反発した着座者は、(上述のようにすぼめることが可能な)背もたれによって「受け止め」られ、背もたれ及びシートクッションは、後方に振られる着座者と一緒に移動することができる。したがって、反発した着座者は、反発変位期間の大部分シートによって支持され、その結果損傷及び/又はその重症度が軽減されることになる。
【0106】
また、車両運転者の多くの急ブレーキ・アクションは、衝突時ではなく後に運転者がブレーキを放したときに終了することも理解されるだろう。
【0107】
シート20は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるフレーム構造を有する。特に、当業者なら図面を見れば分かるように、本フレーム構造は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがシート及び着座者に作用する重力に基づいて衝突位置からそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるように適合されている。
【0108】
図示しない一代替形態では、シート20は、ブロック手段であって、前記シート20をそれ自体の通常位置にブロックし、1つ又は複数の条件が検出されたとき、例えば前記ブロック手段にかかる荷重が慣性誘起により所定の荷重レベルを超えたとき、又は所定の減速を上回る減速が感知されたときに、前記シート20の衝突位置への運動を可能にするように企図及び構成されたブロック手段を含むこともできる。
【0109】
図3乃至図10では、同様の部品が同様の参照符号で示される。
【0110】
図3及び図4では、シート80は、枢動コネクタ31の下方に下部延長部27aを含む下部背もたれフレーム部材27を有する。前記延長部上にはさらに、中間中央シートベルト・ガイド部材48が配置されている。フレーム部材29上には、部材45と対をなすように別のシートベルト・ガイド部材49が配置されている。図面から分かるように、このシートベルトは、前記部材45、48、及び49に沿って吊架(slung along)されて開ループを形成する。フレーム部材27a、29は、衝突位置への運動時に前記中央中間ガイド部材を前記1対から離れるように移動させるように企図及び構成されているので、シートベルトの経路が効果的に伸長される。また、この開ループ構成によって大きな遅延効果が生み出される。
【0111】
図3及び図4の設計では、延長部27aの下端が連結アーム36を介してフレーム部材23に連結され、当該アーム36は、両端に枢動コネクタを有する。
【0112】
図5及び図6では、シート100も既に詳細に論じた多数の部品を含む。図面から分かるように、本例のフレーム部材23は、上部背もたれフレーム部材25まで延在し、それ自体の上端101において当該上部背もたれフレーム部材25と滑動可能に係合するように設計される。
【0113】
また、本例のシートクッション・フレーム部材21は、衝突位置への運動時に、それ自体を支持するフレーム部材23に対して前方滑動するように構成される。
【0114】
図7及び図8は、下部及び上部背もたれクッションがそれぞれ部材29/25上に配置されたシート120を示す。
【0115】
図9では、シートクッション・フレーム部材21は、シートクッション22下方に延在する下部21bと、着座者の腰部後方に延在する高くなった(raised)後部21aとを有する一体式構造(monolithic structure)となっている。フレーム部材21の側面フレーム部材21bは、安定性を高めるために(また、側面衝撃耐性ももたらすために)シートクッションの両側に延在し、フレーム部材21の下部及び高くなった後部に嵌合することが好ましい。
【0116】
一体且つ本質的に変形しないクッション・フレーム部材21がシートクッション下方だけでなく着座者の腰部下方の領域にも延在することにより、当該領域では、シート・フレーム構造の各部品の「運動(motion)」が生じないという効果が得られる。これにより、当該領域で着座者の身体が「締め付けられる(pinching)」ことが回避され、その結果、衝突時に当該領域で身体にかかる荷重が軽減される。また、上記は設計上実用的であり、シート質量の低減が可能であることが発見された。
【0117】
図面から分かるように、このフレーム部材21にはシートベルト・ロック部材43が取り付けられることが好ましい。
【0118】
クッション・フレーム部材21は、比較的高い位置(30)で背もたれフレーム・アセンブリ25に接続される。このように枢動接続の位置を高く、好ましくはシートクッションの上面より高くすることは、シートベルトの荷重がかけられたときの背もたれフレーム部材の安定性が高まることで背もたれフレーム部材の軽量化が可能となること等、正の影響をもたらす。
【0119】
図面から分かるように、本例のシートベルト・リトラクタ41は、背もたれフレーム・アセンブリ部材上に取り付けられる。
【0120】
本例の枢動コネクタ3は、背もたれフレームの後方に位置することが理解されるだろう。このような枢動点の配置は有利である可能性があるが、このフレームの下部を後方に延長することに支障が生じると考えられる場合もある(例えば、より後方の列のシートに乗客が座るバス等)。コネクタ自体はシートの垂直方向の突出範囲内に位置するが、他の枢動コネクタ、例えばマルチ・リンク・コネクタによって背もたれフレームの後方に位置する仮想的な枢動点を模擬することができることが、当業者には理解されるだろう。
【0121】
図9では、シートクッション・フレーム・アセンブリのフレーム部材23は、シートの通常位置で床上又は床に取り付けられた迫台部材又はストップ4上に載置される支持部材23aを装備する。これにより、通常の走行中に安定したシート位置が生み出される。
【0122】
図9は、他のオプション、即ち背もたれフレームと背もたれクッションの間にシートベルト40を通すオプションも示す。このオプションは、着座者がシートに着座したときにシートベルトがある程度締め付けられ、したがって、着座者がシートベルト・リトラクタを望ましい形で緩めることなくシートベルトを前記望ましい形で構成することが可能になるという効果を有する。この締め付け効果は、着座者が前かがみになる(又は慣性によって前方に移動される)と同時に解除され、シートベルト・リトラクタは活動状態になる。この効果は、より多くの人々が各自のシートベルトを実際に使用するように仕向けることが可能であると考えられる。
【0123】
図10にも同じシートクッション・フレーム部材21が示されている。本例では、背もたれフレーム・アセンブリ25は、本質的に直線設計の1つの一体式構造で形成される。枢動コネクタ3は、前記アセンブリ25の下端に枢動点を効果的に設ける。シートベルト40は、背もたれフレーム・アセンブリ上又はそれに隣接するシートベルト・リトラクタ41から前記フレーム・アセンブリに沿って上行し、ガイド42へと通される。
【0124】
このシートベルトは、上述したようなシートベルトの経路が効果的に短縮されるように、中間ガイド部材45、48、49間を通ることが好ましい。
【0125】
本発明のシートを用いると、車の設計者は多くの追加的な利点を実現することが可能となる。かかる利点の1つは、側面衝撃衝突にある。好ましくはシートベルトがシートと完全に一体化されている(したがって、リトラクタ、ロック、係止ポイント等すべてのアイテムがシート構造上に取り付けられている)場合、シート全体の横方向変位が乗客にかかるシートベルトの荷重にもたらす負の影響は、シートベルトのショルダー・ガイド及びロック部材が車両本体上に取り付けられる通常の状況よりも小さくなる。
【0126】
本発明のシートは、必要に応じて背もたれ又は背もたれの一部のリクライニング機構を含むことができる。
【0127】
ショルダー・ガイドをシート構造上に配置することにより、設計者は、車両の前側ドアと後側ドアとの間の車両中央ピラーを省略又は「スリム化(slim down)」することも可能となる。既知の車では、このようなピラーは、前記ピラー上に取り付けられたショルダー・ガイドにかかるシートベルトの力を吸収するように設計する必要があり、このことが設計自体の大きな制約となっている。
【0128】
本明細書では3点シートベルト・システムを好ましいシステムとして説明しているが、言うまでもなく、3点シートベルト・システムと同様の着座者保護効果をもたらす4点シートベルト・システム又は他のシートベルト・システム、あるいはより優れたシートベルト・システムも本願の範囲に含まれることに留意されたい。
【0129】
上述のとおり、本シートは、先に説明したブロック手段を用いない場合も同様に、常に可動性をもたらすように設計することができる。かかる非ブロック設計、又はブロック・モードである限られた範囲の可動性をもたらす設計(又は着座者/車両運転者がブロック手段を解除することが許される場合)は、(例えば子供の)車酔い効果の解消に寄与し得ることが予想される。
【0130】
本発明に係るシートは、車両の荷物室の直前に配置することができ、それによって前記荷物室の境界を効果的に定めることができる。これは、衝突時にシートが前方に移動し、荷物がそれに追従できるようになるので、非常に有利である可能性がある。これにより、多くの従来技術のシートで観察されるような荷物の慣性力によるシートの過荷重が回避される。この点で、荷物カバー又は荷物ネット(例えば布製又は固体カバー)を前記シートの後部に直接接続し、その結果衝突時に当該カバー又はネットがシートの前進運動に追従し、荷物がシートの背後に逃げる隙間をなくすようにすることが有利である可能性がある。
【0131】
一変形形態では、シートは、通常水平位置にある荷物室カバーと組み合わせられる。シートの衝突誘起運動時に、カバーを例えば本質的に垂直位置に上方枢動運動させるように適合された、シートとカバーの間の機械的連結が想定される。前記手法では、カバーは、シートを越えて前方に投げ出される荷物に対する保護具を形成する。
【0132】
図11は、一例として本発明の第2の態様を示す。なお、この第2の態様は有利なことに、本発明に係るシートと一体化することが可能である。一方、この第2の態様は、固定背もたれフレームのような従来技術設計を用いた(又は単に所望の傾斜設定を可能にする傾斜システムを用いた)車両用シートと一体化され得ることにも留意されたい。図11は、3点シートベルト・システムの一部として車両用シートの背もたれの上部ならびにシートベルトを示す。図示のとおり、ショルダー・ガイド42は、背もたれフレーム25の一部であり、特に水平面に対してある角度で配置される。また、やはり背もたれフレーム25の一部となる対応する「内側シートベルト・ガイド60が、ショルダー・ガイド42に隣接して設けられている。単純な設計では、ガイド42とガイド60は共に、背もたれフレームの管状要素によって形成される。また、ガイド60は、ガイド42との間の90度未満の角度の傾斜向きに配置される。
【0133】
シートベルト40は、ガイド60の下方からガイド60に到達し、次に前記ガイド60の前側から(前記ガイド60を越えて)前記ガイド60の裏側に通され、その後ガイド42の裏側に向けて通される。本例では、シートベルトは、ガイド42を越えて背もたれフレームの前側に通され、その後着座者の胴体(図示せず)を横切るように通される。
【0134】
ガイド42の効果的な幅は、シートベルト40の幅の少なくとも2倍であることに留意されたい。
【0135】
ガイド42の傾斜向きは、シートベルトの位置が着座者の高さ(特に着座者の肩の位置)に自動的に調整されるという効果を有する。この効果は、現時点でショルダー・ガイドの調整設備が存在しないバス等において非常に有利である。また、ショルダー・ガイドが可動部分を含まないので、その設計は安価であり、背もたれへの組み込みも単純である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の着座者用の減速応答性車両用シートであって、
前記着座者を支持し、前記着座者の体重及び前記着座者によって前記シートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有し、
前記フレーム構造は、シートクッションを支持するシートクッション・フレームを備えたシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、
前記フレーム構造は、背もたれクッションを支持する背もたれフレームを備えた背もたれフレーム・アセンブリをさらに含み、
前記シートは、前記着座者を通常端座位置に支持することを可能にし、
前記シートは、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段をさらに含み、
前記シートは、前記着座者用のシートベルトを有するシートベルト・システムをさらに含み、
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記シートクッション及び背もたれクッションの前記固定手段に対する減速応答性可動支持を実現する、
シート。
【請求項2】
前記フレーム構造固定手段は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの前記車両本体に対する可動取り付け、好ましくは枢動取り付けを実現し、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリが移動するように、好ましくは1つ又は複数の枢動コネクタによって互いに可動的に連結される、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記シートクッション・フレーム、背もたれフレーム、及び前記シートの着座者の衝突位置に向けた前進運動を可能にするように適合される、請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、少なくとも胴体上部の領域の前記背もたれクッションが前記シートクッションよりも長い距離にわたって前方移動するような構造である、請求項3に記載のシート。
【請求項5】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、好ましくは前記背もたれフレームが関連する後部枢動フレーム構造固定手段によって前記車両本体に接続されるため、前記背もたれクッションが前傾するような構造である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項6】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記シートクッション・フレームが、好ましくはそれ自体の前進運動に加えて、前記シートクッション・フレームの前部が前記シートクッション・フレーム後部に対して高くなるように傾斜がつけられるような構造である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項7】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、専ら着座者の質量及び前記シートの関連部品の質量の慣性によって前記シート構造の移動が誘起されるような構造である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項8】
ブロック手段であって、前記シートをそれ自体の通常位置にブロックし、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、1つ又は複数の条件が満足されたとき、例えば、前記ブロック手段にかかる荷重が慣性誘起により所定の荷重レベルを超えたとき、所定の減速を上回る減速が感知されたとき、衝突リスク、急激な車両動作又はステアリング・アクション等が感知されたときに、前記シートの運動を可能にするように企図及び構成されたブロック手段をさらに含む、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項9】
例えば減速の感知に基づいてそれ自体に指令が送られたときに、前記シートを衝突位置に押し出すように適合されたアクチュエータを含む、請求項1及び場合によっては請求項8に記載のシート。
【請求項10】
前記フレーム構造は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがそれぞれの通常位置に復帰することを可能にする、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項11】
前記フレーム構造は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションが、前記シート及び着座者に作用する重力に基づいて前方衝突位置からそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるように適合される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項12】
前記フレーム構造は、衝突による前記シート及び着座者の反発に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがそれぞれの通常位置に復帰することを可能にする、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項13】
前記シートベルト・システムは少なくとも、
前記フレーム構造上に取り付けられ、又は前記車両本体上に取り付けられるシートベルト終端部、好ましくはリトラクタと、
前記背もたれフレーム・アセンブリ上に取り付けられるシート・ベルト・ショルダー・ガイド部材と、
前記シートクッションの両側で前記フレーム構造上に取り付けられる追加的なシートベルト部材、例えば係止部材及びシートベルト・ロック部材と、
をさらに含む、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項14】
前記シートベルト・システムは、互いに離間し、前記ショルダー・ガイド部材及び前記終端部からも離間する、前記フレーム構造内の1つ又は複数の位置に設けられた1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材をさらに含み、前記中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトを案内し、それによって前記終端部と前記シートベルト・ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの経路を定義するように適合される、請求項13に記載のシート。
【請求項15】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記終端部、1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド、及び前記ショルダー・シートベルト・ガイドの空間方向が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによって前記終端部と前記ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの前記経路が、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長されるような構造である、請求項14に記載のシート。
【請求項16】
前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる、請求項14又は15に記載のシート。
【請求項17】
前記フレーム構造は、それぞれ少なくとも1つの中間シートベルト・ガイド部材を備える第1及び第2のフレーム部材を含み、前記第1及び第2のフレーム部材は、前記通常位置から前記衝突位置への運動中に互いの空間方向が変更され、それによって前記シートベルトの前記経路が伸長される、前記請求項のいずれか、好ましくは請求項14乃至16のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項18】
前記第1の部材は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリと関連付けられ、前記第2の部材は、前記背もたれフレーム・アセンブリと関連付けられる、請求項17に記載のシート。
【請求項19】
前記シートベルト内の前記中間ガイド部材の周囲に開ループが形成されるように、前記第1及び第2のフレーム部材の一方のフレーム部材上に1対の中間シートベルト・ガイド部材が配置され、前記第1及び第2のフレーム部材の他方のフレーム部材上に別の中央中間シートベルト・ガイド部材が配置され、前記各フレーム部材は、前記衝突位置への運動時に前記中央中間ガイド部材を前記1対から離れるように移動させ、それによって前記シートベルトの前記経路を伸長するように企図及び構成される、請求項17及び18のいずれかに記載のシート。
【請求項20】
前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトと接触したときに前記シートベルトがその面に沿って摩擦案内されるような前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる、請求項15乃至19のいずれかに記載のシート。
【請求項21】
前記フレーム構造及び前記フレーム構造内の前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイドは、通常位置では、前記中間シートベルト・ガイドのいくつかが前記シートベルトから離間され、前記衝突位置への運動時は、前記1つ又は複数の「通常離間された」中間シートベルト・ガイドが前記シートベルトに接触するような構成である、請求項15乃至20のいずれか一項に記載のシート。
【請求項22】
前記リトラクタは、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ上に取り付けられる、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項23】
前記固定手段は、本質的に前記シートクッション・フレーム・アセンブリを前記車両本体に固定する前方固定部材と、本質的に前記背もたれフレーム・アセンブリを前記車両本体、例えば前記車両の床に固定する後方固定部材とを備える、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項24】
前記前方及び後方固定部材は、枢動コネクタであり、前記背もたれフレーム・アセンブリ及び前記シートクッション・フレーム・アセンブリはそれぞれ、前記各枢動コネクタに接続される枢動フレーム部材を含む、請求項23に記載のシート。
【請求項25】
前記シートベルト・システムは、シートクッション・フレーム・アセンブリに取り付けられる係止部材及びロック部材を含む、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項26】
前記シートクッション・アセンブリの枢動フレーム部材上にベルト・リトラクタが取り付けられる、前記請求項のいずれか一項又は複数項、好ましくは請求項23に記載のシート。
【請求項27】
前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、枢動接続を利用して相互接続される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項28】
前記シートクッション・アセンブリの枢動フレーム部材は、それ自体の上端が前記シートクッションを上部に支持する前記シートクッション・フレーム部材と枢動接続される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項29】
前記背もたれフレーム・アセンブリは、前記背もたれの上部を支持する上部背もたれフレーム部材と、前記背もたれの下部を支持する下部背もたれフレーム部材とを含み、前記上部及び下部背もたれ部材は、好ましくは衝突又は衝突前ブレーキングによって誘起される前記シートの前記通常位置からの運動時に、前記各背もたれ部材間の角度が徐々に減少するように相互に枢動接続される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項30】
前記後方枢動コネクタに接続された前記枢動フレーム部材は、前記衝突位置への運動時に前記上部背もたれフレーム部材が前記枢動コネクタの周りを枢動するように前記上部背もたれフレーム部材と一体化される、請求項24及び29に記載のシート。
【請求項31】
前記下部背もたれフレーム部材は、それ自体の下端が前記シートクッション・フレーム材の後部と枢動接続される、請求項30に記載のシート。
【請求項32】
前記フレーム構造固定手段は、それぞれ前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの離間した前方及び後方車両床枢動コネクタ部材である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項33】
車両の着座者用の減速応答性車両用シートであって、
前記着座者を支持し、前記着座者の体重及び前記着座者によって前記シートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有し、
前記フレーム構造は、シートクッションを支持するシートクッション・フレームを備えたシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、
前記フレーム構造は、背もたれクッションを支持する背もたれフレームを備えた背もたれフレーム・アセンブリをさらに含み、
前記シートは、前記着座者を通常端座位置に支持することを可能にし、
前記シートは、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段をさらに含み、
前記フレーム構造固定手段は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの前記車両本体に対する可動取り付け、好ましくは枢動取り付けを実現し、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、互いに可動的に連結され、
前記シートは、前記着座者用のシートベルトを有するシートベルト・システムをさらに含み、
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、慣性力により、前記シートクッション・フレーム・アセンブリが、前記シートクッションを前方に移動させると同時に前記背もたれクッションを前傾させるように動き、好ましくは前記シートクッション・フレームの前部が前記シートクッション・フレームの後部に対して高くなるような前記シートクッション・フレームの相対傾斜も生じさせるような構造である、
シート。
【請求項34】
前記フレーム構造は、前記相対傾斜の実行過程で前記シートクッションの前記後部を前記車両の床に向けて低くする、請求項33に記載のシート。
【請求項35】
車両の着座者用の減速応答性車両用シートであって、
前記着座者を支持し、前記着座者の体重及び前記着座者によって前記シートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有し、
前記フレーム構造は、シートクッションを支持するシートクッション・フレームを備えたシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、
前記フレーム構造は、背もたれクッションを支持する背もたれフレームを備えた背もたれフレーム・アセンブリをさらに含み、
前記シートは、前記着座者を通常端座位置に支持することを可能にし、
前記シートは、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段をさらに含み、
前記フレーム構造固定手段は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの前記車両本体に対して移動可能なように取り付け、好ましくは枢動可能なように取り付けを実現し、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、互いに可動的に連結され、
前記シートは、前記着座者用のシートベルトを有するシートベルト・システムをさらに含み、前記シートベルト・システムは少なくとも、
前記フレーム構造上に取り付けられ、又は前記車両本体上に取り付けられるシートベルト終端部、好ましくはリトラクタと、
前記背もたれフレーム・アセンブリ上に取り付けられるシート・ベルト・ショルダー・ガイド部材と、
前記シートクッションの両側で前記フレーム構造上に取り付けられる追加的なシートベルト部材、例えば係止部材及びシートベルト・ロック部材と、
をさらに含み、
前記シートベルト・システムは、互いに離間し、前記ショルダー・ガイド部材及び前記終端部からも離間する、前記フレーム構造内の1つ又は複数の位置に設けられた1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材をさらに含み、前記中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトを案内し、それによって前記終端部と前記シート・ベルト・ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの経路を定義するように適合され、
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記終端部、1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド、及び前記ショルダー・シート・ベルト・ガイドの空間方向が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによって前記終端部と前記ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの前記経路が、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長されるような構造である、
シート。
【請求項36】
前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載の1つ又は複数のシートを備える車両。
【請求項37】
1つ又は複数のシートから成る複数のシート列が縦並びに配置される車両であって、前記シートは、少なくとも請求項32に記載のシートであり、前記前方枢動コネクタは、前列のシート(1つ又は複数)の前記後方枢動コネクタと一体化される、車両。
【請求項38】
前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載の複数のシートが縦並び及び/又は横並びに配置される車両であって、前記シートは、前記シート上の着座者の存在と無関係に、各シートの衝突位置への運動をもたらすように機械的に相互接続される、車両。
【請求項39】
背もたれフレーム及び3点シートベルト・システムを有する車両用シートであって、前記シートベルト用の前記ショルダー・ガイドは、前記背もたれフレームの一部であり、水平面に対してある角度で配置され、前記背もたれフレームは、前記ショルダー・ガイドに隣接する内側シートベルト・ガイドをさらに含み、前記内側シートベルト・ガイドは、やはり前記背もたれフレームの一部であり、隣接の前記ショルダー・ガイドとの間の90度未満の角度の傾斜向きに配置され、前記シートベルトは、前記内側シートベルト・ガイドの下方から前記内側シートベルト・ガイドに到達し、次に前記内側シートベルト・ガイドの前側から前記ガイドを越えて裏側に通され、その後前記ショルダー・ガイドの裏側に向けて通され、そこから前記ショルダー・ガイドを越えて前記背もたれフレームの前側に通され、その結果、前記着座者の胴体を横切るように通すことが可能となり、前記ショルダー・ガイドの効果的な幅は、好ましくは前記シートベルトの幅の少なくとも2倍である、車両用シート。
【請求項1】
車両の着座者用の減速応答性車両用シートであって、
前記着座者を支持し、前記着座者の体重及び前記着座者によって前記シートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有し、
前記フレーム構造は、シートクッションを支持するシートクッション・フレームを備えたシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、
前記フレーム構造は、背もたれクッションを支持する背もたれフレームを備えた背もたれフレーム・アセンブリをさらに含み、
前記シートは、前記着座者を通常端座位置に支持することを可能にし、
前記シートは、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段をさらに含み、
前記シートは、前記着座者用のシートベルトを有するシートベルト・システムをさらに含み、
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記シートクッション及び背もたれクッションの前記固定手段に対する減速応答性可動支持を実現する、
シート。
【請求項2】
前記フレーム構造固定手段は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの前記車両本体に対する可動取り付け、好ましくは枢動取り付けを実現し、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリが移動するように、好ましくは1つ又は複数の枢動コネクタによって互いに可動的に連結される、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記シートクッション・フレーム、背もたれフレーム、及び前記シートの着座者の衝突位置に向けた前進運動を可能にするように適合される、請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、少なくとも胴体上部の領域の前記背もたれクッションが前記シートクッションよりも長い距離にわたって前方移動するような構造である、請求項3に記載のシート。
【請求項5】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、好ましくは前記背もたれフレームが関連する後部枢動フレーム構造固定手段によって前記車両本体に接続されるため、前記背もたれクッションが前傾するような構造である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項6】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記シートクッション・フレームが、好ましくはそれ自体の前進運動に加えて、前記シートクッション・フレームの前部が前記シートクッション・フレーム後部に対して高くなるように傾斜がつけられるような構造である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項7】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、専ら着座者の質量及び前記シートの関連部品の質量の慣性によって前記シート構造の移動が誘起されるような構造である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項8】
ブロック手段であって、前記シートをそれ自体の通常位置にブロックし、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、1つ又は複数の条件が満足されたとき、例えば、前記ブロック手段にかかる荷重が慣性誘起により所定の荷重レベルを超えたとき、所定の減速を上回る減速が感知されたとき、衝突リスク、急激な車両動作又はステアリング・アクション等が感知されたときに、前記シートの運動を可能にするように企図及び構成されたブロック手段をさらに含む、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項9】
例えば減速の感知に基づいてそれ自体に指令が送られたときに、前記シートを衝突位置に押し出すように適合されたアクチュエータを含む、請求項1及び場合によっては請求項8に記載のシート。
【請求項10】
前記フレーム構造は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがそれぞれの通常位置に復帰することを可能にする、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項11】
前記フレーム構造は、減速の緩和又は終了に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションが、前記シート及び着座者に作用する重力に基づいて前方衝突位置からそれぞれの通常位置に復帰することが可能となるように適合される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項12】
前記フレーム構造は、衝突による前記シート及び着座者の反発に応答して、前記シートクッション及び背もたれクッションがそれぞれの通常位置に復帰することを可能にする、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項13】
前記シートベルト・システムは少なくとも、
前記フレーム構造上に取り付けられ、又は前記車両本体上に取り付けられるシートベルト終端部、好ましくはリトラクタと、
前記背もたれフレーム・アセンブリ上に取り付けられるシート・ベルト・ショルダー・ガイド部材と、
前記シートクッションの両側で前記フレーム構造上に取り付けられる追加的なシートベルト部材、例えば係止部材及びシートベルト・ロック部材と、
をさらに含む、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項14】
前記シートベルト・システムは、互いに離間し、前記ショルダー・ガイド部材及び前記終端部からも離間する、前記フレーム構造内の1つ又は複数の位置に設けられた1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材をさらに含み、前記中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトを案内し、それによって前記終端部と前記シートベルト・ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの経路を定義するように適合される、請求項13に記載のシート。
【請求項15】
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記終端部、1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド、及び前記ショルダー・シートベルト・ガイドの空間方向が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによって前記終端部と前記ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの前記経路が、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長されるような構造である、請求項14に記載のシート。
【請求項16】
前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる、請求項14又は15に記載のシート。
【請求項17】
前記フレーム構造は、それぞれ少なくとも1つの中間シートベルト・ガイド部材を備える第1及び第2のフレーム部材を含み、前記第1及び第2のフレーム部材は、前記通常位置から前記衝突位置への運動中に互いの空間方向が変更され、それによって前記シートベルトの前記経路が伸長される、前記請求項のいずれか、好ましくは請求項14乃至16のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項18】
前記第1の部材は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリと関連付けられ、前記第2の部材は、前記背もたれフレーム・アセンブリと関連付けられる、請求項17に記載のシート。
【請求項19】
前記シートベルト内の前記中間ガイド部材の周囲に開ループが形成されるように、前記第1及び第2のフレーム部材の一方のフレーム部材上に1対の中間シートベルト・ガイド部材が配置され、前記第1及び第2のフレーム部材の他方のフレーム部材上に別の中央中間シートベルト・ガイド部材が配置され、前記各フレーム部材は、前記衝突位置への運動時に前記中央中間ガイド部材を前記1対から離れるように移動させ、それによって前記シートベルトの前記経路を伸長するように企図及び構成される、請求項17及び18のいずれかに記載のシート。
【請求項20】
前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトと接触したときに前記シートベルトがその面に沿って摩擦案内されるような前記シートベルト用の湾曲案内面を含み、前記フレーム構造上に動かないように取り付けられる、請求項15乃至19のいずれかに記載のシート。
【請求項21】
前記フレーム構造及び前記フレーム構造内の前記1つ又は複数の中間シートベルト・ガイドは、通常位置では、前記中間シートベルト・ガイドのいくつかが前記シートベルトから離間され、前記衝突位置への運動時は、前記1つ又は複数の「通常離間された」中間シートベルト・ガイドが前記シートベルトに接触するような構成である、請求項15乃至20のいずれか一項に記載のシート。
【請求項22】
前記リトラクタは、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ上に取り付けられる、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項23】
前記固定手段は、本質的に前記シートクッション・フレーム・アセンブリを前記車両本体に固定する前方固定部材と、本質的に前記背もたれフレーム・アセンブリを前記車両本体、例えば前記車両の床に固定する後方固定部材とを備える、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項24】
前記前方及び後方固定部材は、枢動コネクタであり、前記背もたれフレーム・アセンブリ及び前記シートクッション・フレーム・アセンブリはそれぞれ、前記各枢動コネクタに接続される枢動フレーム部材を含む、請求項23に記載のシート。
【請求項25】
前記シートベルト・システムは、シートクッション・フレーム・アセンブリに取り付けられる係止部材及びロック部材を含む、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項26】
前記シートクッション・アセンブリの枢動フレーム部材上にベルト・リトラクタが取り付けられる、前記請求項のいずれか一項又は複数項、好ましくは請求項23に記載のシート。
【請求項27】
前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、枢動接続を利用して相互接続される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項28】
前記シートクッション・アセンブリの枢動フレーム部材は、それ自体の上端が前記シートクッションを上部に支持する前記シートクッション・フレーム部材と枢動接続される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項29】
前記背もたれフレーム・アセンブリは、前記背もたれの上部を支持する上部背もたれフレーム部材と、前記背もたれの下部を支持する下部背もたれフレーム部材とを含み、前記上部及び下部背もたれ部材は、好ましくは衝突又は衝突前ブレーキングによって誘起される前記シートの前記通常位置からの運動時に、前記各背もたれ部材間の角度が徐々に減少するように相互に枢動接続される、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項30】
前記後方枢動コネクタに接続された前記枢動フレーム部材は、前記衝突位置への運動時に前記上部背もたれフレーム部材が前記枢動コネクタの周りを枢動するように前記上部背もたれフレーム部材と一体化される、請求項24及び29に記載のシート。
【請求項31】
前記下部背もたれフレーム部材は、それ自体の下端が前記シートクッション・フレーム材の後部と枢動接続される、請求項30に記載のシート。
【請求項32】
前記フレーム構造固定手段は、それぞれ前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの離間した前方及び後方車両床枢動コネクタ部材である、前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載のシート。
【請求項33】
車両の着座者用の減速応答性車両用シートであって、
前記着座者を支持し、前記着座者の体重及び前記着座者によって前記シートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有し、
前記フレーム構造は、シートクッションを支持するシートクッション・フレームを備えたシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、
前記フレーム構造は、背もたれクッションを支持する背もたれフレームを備えた背もたれフレーム・アセンブリをさらに含み、
前記シートは、前記着座者を通常端座位置に支持することを可能にし、
前記シートは、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段をさらに含み、
前記フレーム構造固定手段は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの前記車両本体に対する可動取り付け、好ましくは枢動取り付けを実現し、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、互いに可動的に連結され、
前記シートは、前記着座者用のシートベルトを有するシートベルト・システムをさらに含み、
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、慣性力により、前記シートクッション・フレーム・アセンブリが、前記シートクッションを前方に移動させると同時に前記背もたれクッションを前傾させるように動き、好ましくは前記シートクッション・フレームの前部が前記シートクッション・フレームの後部に対して高くなるような前記シートクッション・フレームの相対傾斜も生じさせるような構造である、
シート。
【請求項34】
前記フレーム構造は、前記相対傾斜の実行過程で前記シートクッションの前記後部を前記車両の床に向けて低くする、請求項33に記載のシート。
【請求項35】
車両の着座者用の減速応答性車両用シートであって、
前記着座者を支持し、前記着座者の体重及び前記着座者によって前記シートにかけられる他の力を吸収するように適合されたフレーム構造を有し、
前記フレーム構造は、シートクッションを支持するシートクッション・フレームを備えたシートクッション・フレーム・アセンブリを含み、
前記フレーム構造は、背もたれクッションを支持する背もたれフレームを備えた背もたれフレーム・アセンブリをさらに含み、
前記シートは、前記着座者を通常端座位置に支持することを可能にし、
前記シートは、前記フレーム構造を前記車両本体に固定するように適合及び構成されたフレーム構造固定手段をさらに含み、
前記フレーム構造固定手段は、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び前記背もたれフレーム・アセンブリの前記車両本体に対して移動可能なように取り付け、好ましくは枢動可能なように取り付けを実現し、前記シートクッション・フレーム・アセンブリ及び背もたれフレーム・アセンブリは、互いに可動的に連結され、
前記シートは、前記着座者用のシートベルトを有するシートベルト・システムをさらに含み、前記シートベルト・システムは少なくとも、
前記フレーム構造上に取り付けられ、又は前記車両本体上に取り付けられるシートベルト終端部、好ましくはリトラクタと、
前記背もたれフレーム・アセンブリ上に取り付けられるシート・ベルト・ショルダー・ガイド部材と、
前記シートクッションの両側で前記フレーム構造上に取り付けられる追加的なシートベルト部材、例えば係止部材及びシートベルト・ロック部材と、
をさらに含み、
前記シートベルト・システムは、互いに離間し、前記ショルダー・ガイド部材及び前記終端部からも離間する、前記フレーム構造内の1つ又は複数の位置に設けられた1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド部材をさらに含み、前記中間シートベルト・ガイド部材はそれぞれ、前記シートベルトを案内し、それによって前記終端部と前記シート・ベルト・ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの経路を定義するように適合され、
前記フレーム構造は、衝突前ブレーキング及び/又は衝突誘起減速時に、前記終端部、1つ又は複数の中間シートベルト・ガイド、及び前記ショルダー・シート・ベルト・ガイドの空間方向が、通常位置の前記空間方向に対して変化し、それによって前記終端部と前記ショルダー・ガイド部材との間の前記シートベルトの前記経路が、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは10〜50cmの範囲、最も好ましくは10〜30cmの範囲で伸長されるような構造である、
シート。
【請求項36】
前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載の1つ又は複数のシートを備える車両。
【請求項37】
1つ又は複数のシートから成る複数のシート列が縦並びに配置される車両であって、前記シートは、少なくとも請求項32に記載のシートであり、前記前方枢動コネクタは、前列のシート(1つ又は複数)の前記後方枢動コネクタと一体化される、車両。
【請求項38】
前記請求項のいずれか一項又は複数項に記載の複数のシートが縦並び及び/又は横並びに配置される車両であって、前記シートは、前記シート上の着座者の存在と無関係に、各シートの衝突位置への運動をもたらすように機械的に相互接続される、車両。
【請求項39】
背もたれフレーム及び3点シートベルト・システムを有する車両用シートであって、前記シートベルト用の前記ショルダー・ガイドは、前記背もたれフレームの一部であり、水平面に対してある角度で配置され、前記背もたれフレームは、前記ショルダー・ガイドに隣接する内側シートベルト・ガイドをさらに含み、前記内側シートベルト・ガイドは、やはり前記背もたれフレームの一部であり、隣接の前記ショルダー・ガイドとの間の90度未満の角度の傾斜向きに配置され、前記シートベルトは、前記内側シートベルト・ガイドの下方から前記内側シートベルト・ガイドに到達し、次に前記内側シートベルト・ガイドの前側から前記ガイドを越えて裏側に通され、その後前記ショルダー・ガイドの裏側に向けて通され、そこから前記ショルダー・ガイドを越えて前記背もたれフレームの前側に通され、その結果、前記着座者の胴体を横切るように通すことが可能となり、前記ショルダー・ガイドの効果的な幅は、好ましくは前記シートベルトの幅の少なくとも2倍である、車両用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−509135(P2010−509135A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537100(P2009−537100)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/NL2007/000284
【国際公開番号】WO2008/060144
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509133931)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/NL2007/000284
【国際公開番号】WO2008/060144
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509133931)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]