説明

渦巻きばね成形方法及び成形装置

【課題】 アウターフックが渦巻きばねの外周から離れてしまうことを防止できる渦巻きばね成形方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】 マンドレル8の先端にその軸心から偏心した位置に偏心係止溝15を設けて、この偏心係止溝15にばね材料1aの先端を挿入して係止させた状態で前記マンドレル8をその軸心を中心に回転させて、前記偏心係止溝15によりインナーフックを成形すると共に前記ばね材料1aを渦巻状に前記マンドレル8の外周に巻き付け、前記マンドレル8の外周へのばね材料1aの巻き付け終了後、前記マンドレル8の反回転方向側に配置された一方の切断刃11と一方のアウターフック成形押型9および前記マンドレル8の回転方向側に配置された他方の切断刃12と他方のアウターフック成形押型9とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレル8に巻き付けられた前記ばね材料1aの近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフックを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーフックとアウターフックとを有する渦巻きばねを成形する渦巻きばね成形方法及び成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、渦巻きばねが多方面で使用されており、かかる渦巻きばねとして、他の部材に引っ掛ける必要から、内終端にインナーフックが、そして外終端にアウターフックが形成されたものが知られている。
【0003】
この種の渦巻きばねを成形する装置として、特許文献1には、つぎのような渦巻きばね成形装置が開示されている。すなわち、この特許文献1に開示された渦巻きばね成形装置は、モータにより回転する円柱状のマンドレルを備えており、このマンドレルの先端には、このマンドレルの軸心を横切って係止溝が設けられている。そして、この係止溝が水平向きの際に、一方側から帯状或いは線状のばね材料を水平向きで供給し、その先端を前記係止溝に挿入して前記マンドレルをその軸心を中心に回転して、前記係止溝により前記ばね材料の先端にインナーフックを成形すると共に前記ばね材料を渦巻き状に前記マンドレルの外周に巻き付けるようになっている。更に、前記マンドレルの近傍には、前記マンドレルに送り出されるばね材料を、前記マンドレルの回転方向側と反回転方向側から挟むように対向して一対の切断刃と一対のアウターフック成形押型が配置されており、前記マンドレルの反回転方向側であって、なおかつ前記マンドレルの軸心から水平方向の位置付近に配置された一方の切断刃と一方のアウターフック成形押型へ向かって、前記マンドレルの回転方向側に配置された他方の切断刃と他方のアウターフック成形押型を前進させて、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、アウターフックを成形するように構成されている。
【特許文献1】実公昭56−10422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように構成された渦巻きばね成形装置によって成形された渦巻きばねは、その中心を横切るようにして前記インナーフックが形成されている。ところが、近年、渦巻きばねの中心部分に、部品を配置することなどを目的とした空間部を形成するため、前記インナーフックの位置を、前記渦巻きばねの中心から偏心させた渦巻きばねが必要とされている。このような渦巻きばねは、前記特許文献1に記載の渦巻きばね成形装置において、前記マンドレルの係止溝を、軸心から偏心した位置に設け、このような位置に設けた係止溝にばね材料の先端を挿入して前記マンドレルをその軸心を中心にして回転させることにより、成形することができる。
【0005】
ところで、ばね中心を横切るようにして形成された前記インナーフックを有する渦巻きばねを成形する前記渦巻きばね成形装置においては、前記マンドレルの軸心から水平方向となる位置付近、すなわち前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近に配置された前記一方の切断刃と前記一方のアウターフック成形押型へ向かって前記他方の切断刃と前記他方のアウターフック成形押型を前進させることにより、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記アウターフックを成形することができる。一方で、前記インナーフックの位置を、前記渦巻きばねの中心から偏心させた渦巻きばねを成形する前記渦巻きばね成形装置においては、前記係止溝が前記マンドレルの軸心から偏心した位置となるため、前記ばね材料の供給位置が、前記マンドレルの軸心から離れた位置となる。したがって、前記ばね材料の供給の妨げとならないよう、前記一方の切断刃と前記一方のアウターフック成形押型を、前記マンドレルの軸心から水平方向となる位置から離れた位置に配置しなければならず、従来の成形方法では、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で前記アウターフックを成形することができない。このため、渦巻きばねの外周からアウターフックまでの長さが長くなり、従来よりも渦巻きばねの外周から離れた位置に前記アウターフックが形成されることになる。このように、前記アウターフックが前記渦巻きばねの外周から離れた渦巻きばねでは、所定のスペースに収まらなくなるおそれがあり、また他の部材に引っ掛けることが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、アウターフックが渦巻きばねの外周から離れてしまうことを防止できる渦巻きばね成形方法及び成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、マンドレルの先端にその軸心から偏心した位置に偏心係止溝を設けて、この偏心係止溝に帯状あるいは線状のばね材料の先端を挿入し、前記マンドレルをその軸心を中心に回転させて、前記マンドレルの前記偏心係止溝により前記ばね材料の先端にインナーフックを成形すると共に、前記ばね材料を渦巻状に前記マンドレルの外周に巻き付け、所要の回転数で前記マンドレルの回転を止めてこのマンドレルへのばね材料の巻き付けを終了し、つぎに、前記マンドレルの回転方向側と反回転方向側から前記マンドレルに送り出されるばね材料を挟むように対向して配置された一対の切断刃と一対のアウターフック成形押型により、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共にアウターフックを成形する渦巻きばね成形方法であって、前記マンドレルの外周へのばね材料の巻き付け終了後、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型のうち、前記マンドレルの反回転方向側に配置された一方の切断刃と一方のアウターフック成形押型を、前記マンドレルの回転方向側に配置された他方の切断刃と他方のアウターフック成形押型側へ向かって前進させ、または前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフックを成形することを特徴とする。
【0008】
このような請求項1に記載の発明では、前記偏心係止溝に前記ばね材料の先端を挿入して係止させた状態で前記マンドレルをその軸心を中心に回転させることで、前記インナーフックが渦巻きばねの中心から偏心した位置となるように形成される。そして、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型のうち、前記マンドレルの反回転方向側に配置された一方の切断刃と一方のアウターフック成形押型を、前記マンドレルの回転方向側に配置された他方の切断刃と他方のアウターフック成形押型側へ前進させ、または前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型とを相互に対向方向側へ向かって前進させ、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、アウターフックを成形するので、前記アウターフックが、渦巻きばねの外周から離れてしまうことはない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、マンドレルの先端にその軸心から偏心した位置に偏心係止溝が設けられ、この偏心係止溝に帯状あるいは線状のばね材料の先端を挿入し、前記マンドレルをその軸心を中心に回転させて、前記マンドレルの前記偏心係止溝により前記ばね材料の先端にインナーフックを成形すると共に、前記ばね材料を渦巻状に前記マンドレルの外周に巻き付け、このマンドレルの回転方向側と反回転方向側から前記マンドレルに送り出されるばね材料を挟むように対向して配置された一対の切断刃と一対のアウターフック成形押型により、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共にアウターフックを成形する渦巻きばね成形装置であって、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型は、前記マンドレルの反回転方向側の一方の切断刃と一方のアウターフック成形押型が、作動手段により前記マンドレルの回転方向側の他方の切断刃と他方のアウターフック成形押型へ向かって前進後退可能に支持されており、または前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型が、それぞれ作動手段により相互に対向方向に前進後退可能に支持されており、前記マンドレルの外周へのばね材料の巻き付け終了後、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型のうち、前記一方の切断刃と前記一方のアウターフック成形押型を、前記作動手段により、前記他方の切断刃と前記他方のアウターフック成形押型側へ向かって前進させ、または前記作動手段により、前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフックを成形するように構成したことを特徴とする。
【0010】
このような請求項2に記載の発明では、前記偏心係止溝に前記ばね材料の先端を挿入して係止させた状態で前記マンドレルをその軸心を中心に回転させることで、前記インナーフックが渦巻きばねの中心から偏心した位置となるように形成される。そして、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型のうち、前記一方の切断刃と前記一方のアウターフック成形押型を、前記作動手段により、前記他方の切断刃と前記他方のアウターフック成形押型側へ向かって前進させ、または前記作動手段により、前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、アウターフックを成形するので、前記アウターフックが、渦巻きばねの外周から離れてしまうことはない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で前記アウターフックを成形することができるので、前記アウターフックが渦巻きばねの外周から離れてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の渦巻きばね成形方法および成形装置を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法および成形装置によって成形された渦巻きばねを示す図、図2から図5は、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形装置の概略構成を示し、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法の一工程を示す図である。
【0013】
図1に示す渦巻きばね1は、帯状あるいは線状のばね材料1aが渦巻き状に巻かれ、中心部には、部品などを配置するための空間部2が形成されている。そして、前記渦巻きばね1は、内終端にインナーフック3が形成され、外終端にアウターフック4が形成されている。本発明の渦巻きばね成形方法および成形装置によれば、前記アウターフック4が、前記渦巻きばね1の外周5から離れてしまうことを防止できるようになっている。
【0014】
前記渦巻きばね1を成形するための、図2から図5に示す本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形装置6は、材料供給部7からばね材料1aが供給されて前記渦巻きばね1を成形するもので、マンドレル8,一対のアウターフック成形押型9,10,一対の切断刃11,12,ガイドローラー13および材料送りローラー14を備えて構成され、さらに、前記材料供給部7と前記材料送りローラー14の間に、図示しない加熱コイルを備えている。
【0015】
前記マンドレル8は、円柱状に形成され、たとえばモーターなどの図示しない回転動力源により回転と停止を繰り返して動作し、その外周に前記ばね材料1aを渦巻状に巻き付けて前記渦巻きばね1を成形するようになっている。このマンドレル8の動作をもう少し詳しく説明すると、前記マンドレル8は、図3に示す矢印方向へ所定回転数まで回転して、その外周に前記ばね材料1aを渦巻状に巻き付けた後、いわゆるスプリングバックを除去するため、前記矢印方向とは逆方向へ若干回転させた状態で停止するようになっている。
【0016】
前記マンドレル8には、先端から軸方向に所定の深さを有して形成され、かつ幅方向に所定の深さを有して形成された偏心係止溝15が形成されている。この偏心係止溝15は、前記マンドレル8の軸心から偏心した位置に形成されており、前記材料供給部7から供給された前記ばね材料1aの先端を係止するようになっている。
【0017】
前記一対のアウターフック成形押型9,10のうち、一方のアウターフック成形押型9はダイで構成されており、他方のアウターフック成形押型10はパンチで構成されている。これらダイとパンチとで構成される前記一対のアウターフック成形押型9,10は、前記マンドレル8よりも前記材料供給部7側に配置され、なおかつ前記マンドレル8の回転方向側と反回転方向側から、前記偏心係止溝15に前記材料供給部7から供給されて係止された前記ばね材料1aを挟むように対向して配置されている。本例では、前記一方のアウターフック成形押型9が、前記マンドレル8の反回転方向側に配置され、前記他方のアウターフック成形押型10が、前記マンドレル8の回転方向側に配置されている。
【0018】
前記一方のアウターフック成形押型9は、水平向きの前記偏心係止溝15に水平向きで供給された前記ばね材料1aの供給位置(図2参照)よりも前記マンドレル8の反回転方向側に配置され、水平向きの前記偏心係止溝15に、前記ばね材料1aを水平向きで供給する際の妨げとならないようになっている。
【0019】
前記一対の切断刃11,12は、下刃と上刃とで構成されている。ここで、一方の切断刃11が下刃、他方の切断刃12が上刃である。そして、これら一対の切断刃11,12は、前記一対のアウターフック成形押型9,10よりも前記材料供給部7側に配置され、なおかつ前記マンドレル8の回転方向側と反回転方向側から、前記偏心係止溝15に前記材料供給部7から供給されて係止された前記ばね材料1aを挟むように対向して配置されている。本例では、前記一方の切断刃11が、前記マンドレル8の反回転方向側に配置され、前記他方の切断刃12が、前記マンドレル8の回転方向側に配置されている。
【0020】
前記一方の切断刃11は、水平向きの前記偏心係止溝15に水平向きで供給された前記ばね材料1aの供給位置(図2参照)よりも前記マンドレル8の反回転方向側に配置され、水平向きの前記偏心係止溝15に、前記ばね材料1aを水平向きで供給する際の妨げとならないようになっている。
【0021】
ここで、本例において、前記マンドレル8の回転方向側とは、図において上方向側を意味し、前記マンドレル8の反回転方向側とは、図において下方向側を意味する。
【0022】
前記一方のアウターフック成形押型9と前記一方の切断刃11は、油圧シリンダー16を備えた作動装置17によって、前記他方のアウターフック成形押型10と前記他方の切断刃12へ向かって同時に前進後退するよう構成されている。また、前記他方のアウターフック成形押型10と前記他方の切断刃12は、油圧シリンダー(図示省略)を備えた作動装置(図示省略)により、前記一方のアウターフック成形押型9および前記一方の切断刃11へ向かってそれぞれ別々に前進後退するよう構成されている。すなわち、前記一対のアウターフック成形押型9,10と前記一対の切断刃11,12は、相互に対向方向に前進後退可能に支持されている。そして、前記一対のアウターフック成形押型9,10と前記一対の切断刃11,12は、前記マンドレル8に巻き付けられた前記ばね材料1aの近接位置付近,すなわち前記マンドレル8の軸心から水平方向となる位置付近まで、相互に対向方向に前進して、前記ばね材料1aの巻き終わり部位を切断すると共に、前記アウターフック4を成形するようになっている。
【0023】
前記ばね材料1aの切断と前記アウターフック4の成形についてもう少し説明すると、前記切断位置において、前記切断刃11と前記切断刃12の対向側面同士が摺接し合うことにより、前記ばね材料1aが切断され、前記アウターフック成形位置において、前記アウターフック成形押型10の成形凸部10aと、このアウターフック成形押型10に対向する前記アウターフック成形押型9の成形凹部9aとで、前記アウターフック4が成形されるようになっている。
【0024】
前記ガイドローラー13は、前記ばね材料1aよりも前記マンドレル8の回転方向側に配置され、また前記切断刃12よりも前記材料供給部7側に配置されている。このような位置に配置された前記ガイドローラー13は、前記切断刃11の上面11aとの間に前記ばね材料1aを通して、前記マンドレル8の外周に巻付けたばね材料1aをガイドする部材であり、前記アウターフック成形押型9および前記切断刃11と同時に昇降するよう組み付けられている。
【0025】
また、前記材料送りローラー14は、一対のローラー14a,14bにより構成され、これら一対のローラー14a,14bで、前記マンドレル8へ向かって前記ばね材料1aを送り出すようになっている。
【0026】
前記材料供給部7と前記材料送りローラー14の間に備えられている前記加熱コイルは、高周波により、コイル中空部に挿通された前記ばね材料1aを加熱する部材であり、1つの渦巻きばね1を成形するのに要する長さ毎に前記ばね材料1aを加熱する。すなわち、前記加熱コイルにより、前記ばね材料1aの、前記インナーフック3が成形される部分であるばね内終端となる部分と、前記アウターフック4が成形される部分であるばね外終端となる部分とが焼きなまされる。
【0027】
つぎに、このような構成の渦巻きばね成形装置による渦巻きばね成形方法について説明する。まず、図2に示すように、前記材料送りローラー14により、前記ばね材料1aを水平に送って、その先端部を前記マンドレル8の水平向きにした前記偏心係止溝15へ挿入してここに係止する。ここで、前記マンドレル8へ移送されるばね材料1aは、前記加熱コイルにより、1つの渦巻きばね1を成形するのに要する長さ毎に焼きなまされる。
【0028】
焼きなまされた前記ばね材料1aの先端を、前記偏心係止溝15に係止すると、前記マンドレル8をその軸心を中心に回転させて(回転方向は、図3に図示の矢印方向)、図3に示すように、前記偏心係止溝15により前記ばね材料1aの先端に前記インナーフック3を成形するとともに、前記ばね材料1aを前記マンドレル8の外周に巻き付ける。
【0029】
そして、前記マンドレル8が、所定の回転数まで回転したらその回転を停止し、いわゆるスプリングバックを防止するために、反対方向に若干回転させる。このとき、前記ばね材料1aの焼きなました部分が、前記ばね材料1aの巻き終わり部位となる。そして、図4および図5に示すように、前記一対の切断刃11,12および前記一対のアウターフック成形押型9,10で、前記巻き終わり部位を切断すると共に前記アウターフック4を成形する。すなわち、前記作動装置17により、前記一方のアウターフック成形押型9と前記一方の切断刃11を、前記他方のアウターフック成形押型10と前記他方の切断刃12へ向かって同時に前進させると共に、前記作動装置(図示省略)により、前記他方のアウターフック成形押型10と前記他方の切断刃12を前記一方のアウターフック成形押型9と前記一方の切断刃11へ向かってそれぞれ前進させて、前記マンドレル8の外周に巻き付けられた前記ばね材料1aの近接位置付近,すなわち前記マンドレル8の軸心方向から水平方向となる位置付近で、前記ばね材料1aの巻き終わり部位を切断すると共に、前記アウターフック4を成形する。前記ばね材料1aの切断と前記アウターフック4の成形についてもう少し詳しく説明すると、前記一方のアウターフック成形押型9と前記一方の切断刃11を、前記作動装置17により、前記他方のアウターフック成形押型10と前記他方の切断刃12へ向かって同時に前進させて、前記一方の切断刃11を前記マンドレル8の軸心方向から水平方向となる位置付近の切断位置まで前進させ、また前記他方の切断刃12を前記一方の切断刃11へ向かって前記切断位置まで前進させて、これら一対の切断刃11,12により、まず図4に示すように前記ばね材料1aの焼きなました部分を切断する。このとき、前記一方のアウターフック成形押型9は、前記マンドレル8の軸心から水平方向となる位置付近のアウターフック成形位置にある。そして、図5に示すように、このアウターフック成形位置にある前記一方のアウターフック成形押型9へ向かって、前記他方のアウターフック成形押型10を前進させて、前記一方のアウターフック成形押型9の成形凹部9aと前記他方のアウターフック成形押型10の成形凸部10aにより、前記アウターフック4を成形する。前記成形凹部9aと前記成形凸部10aで前記アウターフック4を成形するときには、前記切断刃12を後退させる。
【0030】
このようにして前記アウターフック4が成形されると、内終端に中心から偏心した前記インナーフック3が成形されるとともに、外終端に前記アウターフック4が成形された前記渦巻きばね1が得られ、最後に、前記偏心係止溝15に前記インナーフック3が係止している前記渦巻ばね1を取り外して、1つの渦巻きばね1の成形工程が終了となる。
【0031】
以上により、前記一方の切断刃11および前記一方のアウターフック成形押型9と前記他方の切断刃12および前記他方のアウターフック成形押型10とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレル8に巻き付けられた前記ばね材料1aの近接位置付近である前記マンドレル8の軸心から水平方向となる位置付近で、前記ばね材料1aの巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフック4を成形するので、前記アウターフック4が、渦巻きばねの外周から離れてしまうことを防止できる。
【0032】
ここで、この実施形態では、前記一方の切断刃11および前記一方のアウターフック成形押型9と前記他方の切断刃12および前記他方のアウターフック成形押型10とを相互に対向方向側へ前進させ、前記ばね材料1aの巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフック4を成形しているが、前記他方の切断刃12と前記他方のアウターフック成形押型10を、それぞれ前記切断位置と前記アウターフック成形位置に固定し、前記一方の切断刃11と前記一方のアウターフック成形押型9を、前記他方の切断刃12と前記他方のアウターフック成形押型10側へ向かって前進させ、前記マンドレル8の軸心から水平方向となる位置付近で、前記ばね材料1aの巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフック4を成形するようにしてもよい。
【0033】
その他、この発明は、その主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法および成形装置によって成形された渦巻きばねを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形装置の概略構成を示し、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法の一工程を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形装置の概略構成を示し、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法の一工程を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形装置の概略構成を示し、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法の一工程を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形装置の概略構成を示し、本発明の実施形態に係る渦巻きばね成形方法の一工程を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 渦巻きばね
1a ばね材料
2 空間部
3 インナーフック
4 アウターフック
5 外周
6 渦巻きばね成形装置
7 材料供給部
8 マンドレル
9,10 一対のアウターフック成形押型
9a 成形凹部
10a 成形凸部
11,12 一対の切断刃
11a 上面
13 ガイドローラー
14 材料送りローラー
14a,14b 一対のローラー
15 偏心係止溝
16 油圧シリンダー
17 作動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルの先端にその軸心から偏心した位置に偏心係止溝を設けて、この偏心係止溝に帯状あるいは線状のばね材料の先端を挿入し、前記マンドレルをその軸心を中心に回転させて、前記マンドレルの前記偏心係止溝により前記ばね材料の先端にインナーフックを成形すると共に、前記ばね材料を渦巻状に前記マンドレルの外周に巻き付け、所要の回転数で前記マンドレルの回転を止めてこのマンドレルへのばね材料の巻き付けを終了し、つぎに、前記マンドレルの回転方向側と反回転方向側から前記マンドレルに送り出されるばね材料を挟むように対向して配置された一対の切断刃と一対のアウターフック成形押型により、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共にアウターフックを成形する渦巻きばね成形方法であって、
前記マンドレルの外周へのばね材料の巻き付け終了後、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型のうち、前記マンドレルの反回転方向側に配置された一方の切断刃と一方のアウターフック成形押型を、前記マンドレルの回転方向側に配置された他方の切断刃と他方のアウターフック成形押型側へ向かって前進させ、または前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフックを成形することを特徴とする渦巻きばね成形方法。
【請求項2】
マンドレルの先端にその軸心から偏心した位置に偏心係止溝が設けられ、この偏心係止溝に帯状あるいは線状のばね材料の先端を挿入し、前記マンドレルをその軸心を中心に回転させて、前記マンドレルの前記偏心係止溝により前記ばね材料の先端にインナーフックを成形すると共に、前記ばね材料を渦巻状に前記マンドレルの外周に巻き付け、このマンドレルの回転方向側と反回転方向側から前記マンドレルに送り出されるばね材料を挟むように対向して配置された一対の切断刃と一対のアウターフック成形押型により、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共にアウターフックを成形する渦巻きばね成形装置であって、
前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型は、前記マンドレルの反回転方向側の一方の切断刃と一方のアウターフック成形押型が、作動手段により前記マンドレルの回転方向側の他方の切断刃と他方のアウターフック成形押型へ向かって前進後退可能に支持されており、または前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型が、それぞれ作動手段により相互に対向方向に前進後退可能に支持されており、前記マンドレルの外周へのばね材料の巻き付け終了後、前記一対の切断刃と前記一対のアウターフック成形押型のうち、前記一方の切断刃と前記一方のアウターフック成形押型を、前記作動手段により、前記他方の切断刃と前記他方のアウターフック成形押型側へ向かって前進させ、または前記作動手段により、前記一方の切断刃および前記一方のアウターフック成形押型と前記他方の切断刃および前記他方のアウターフック成形押型とを相互に対向方向側へ前進させ、前記マンドレルに巻き付けられた前記ばね材料の近接位置付近で、前記ばね材料の巻終わり部位を切断すると共に、前記アウターフックを成形するように構成したことを特徴とする渦巻きばね成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−26737(P2006−26737A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2005−137454(P2005−137454)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(505170093)株式会社 木村機械製作所 (1)
【Fターム(参考)】