渦流探傷方法及びそれに用いられる隙間形成部材
【課題】JISやEN、ASTM等の所定の工業規格にしたがった人工きずを利用しなくても、鋼管のきずを検出できる渦流探傷方法を提供する。
【解決手段】本発明による渦流探傷方法では、初めに、互いに同じ公称外径を有する複数の鋼管の中から、2つの鋼管100F及び100Rを選択する。次に、2つの鋼管100F及び100Rを一列に並べる。次に、一列に並べられた2つの鋼管100F及び100Rの間に剛体の隙間形成部材10を挟み、鋼管100Fと100Rとの間に、公称外径に対応した大きさの隙間を形成する。次に、隙間形成部材10を挟んだ鋼管100F及び100Rを貫通コイルに通し、隙間を探傷する。そして、隙間を探傷して生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置の感度を設定する。
【解決手段】本発明による渦流探傷方法では、初めに、互いに同じ公称外径を有する複数の鋼管の中から、2つの鋼管100F及び100Rを選択する。次に、2つの鋼管100F及び100Rを一列に並べる。次に、一列に並べられた2つの鋼管100F及び100Rの間に剛体の隙間形成部材10を挟み、鋼管100Fと100Rとの間に、公称外径に対応した大きさの隙間を形成する。次に、隙間形成部材10を挟んだ鋼管100F及び100Rを貫通コイルに通し、隙間を探傷する。そして、隙間を探傷して生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置の感度を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流探傷方法及びそれに用いられる隙間形成部材に関し、さらに詳しくは、金属管の渦流探傷方法及びそれに用いられる隙間形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2−66447号公報(特許文献1)、特公平6−87051号公報(特許文献2)、特開平2−208552号公報(特許文献3)及び特開平2−173561号公報(特許文献4)は、鋼管を探傷する渦流探傷装置及び渦流探傷方法を開示する。これらの文献で開示された渦流探傷装置は、貫通コイルを備える。検査対象である鋼管は、貫通コイルを通過するとき、貫通コイルから磁束を受ける。磁束により、鋼管には渦電流が発生する。鋼管にきずがあると、渦電流は乱れる。渦流探傷装置は、渦電流の乱れを検知して、鋼管に形成されたきずを検出する。
【0003】
渦流探傷方法では、探傷を開始する前に、人工貫通孔に代表される人工きずを用いて渦流探傷装置の感度が設定される。具体的には、検査対象である鋼管と同じ公称外径の鋼管(以下、対比試験片という)を準備する。準備された対比試験片に人工きずを作製する。JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)やEN(European Norm:欧州規格)、ASTM(American Society for Testing and Materials:米国材料試験境界)規格といった工業規格は、人工きずの寸法形状を、鋼管の公称外径に対応して定義する。つまり、これらの工業規格には、鋼管の複数の公称外径に対応した複数の人工きずの寸法形状が定義されている。
【0004】
渦流探傷装置の感度設定は以下のように行われる。初めに、所定の工業規格に基づいて、鋼管の公称外径に対応した寸法形状の人工きずが特定される。特定された人工きずを対比試験片に作製する。人工きずが作製された対比試験片を貫通コイルに通す。このとき、渦流探傷装置は、人工きずを探傷し、探傷信号を生成する。生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置の感度が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−66447号公報
【特許文献2】特公平6−87051号公報
【特許文献3】特開平2−208552号公報
【特許文献4】特開平2−173561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼管の通常の製造工程は、製管工程、熱処理工程、矯正工程及び渦流探傷工程を含む。製管工程では、ビレットやスラブを鋼管にする。熱処理工程では、サイジングされた鋼管を熱処理する。矯正工程では、熱処理された鋼管の曲がりを矯正する。渦流探傷工程は、矯正後の鋼管に対して実施される。渦流探傷工程では、人工きずの探傷信号を基準信号とし、基準信号に基づいて、鋼管のきずを検出する。
【0007】
上述の製造工程は、1つの渦流探傷工程を含む。しかしながら、鋼管の製造工程は、複数の渦流探傷工程を含んでもよい。たとえば、製管工程と熱処理工程との間に、1回目の渦流探傷工程を実施し、矯正工程後に2回目の渦流探傷工程を実施する。この場合、1回目の渦流探傷工程できずが検出された鋼管は、製品対象から除外され、熱処理工程や矯正工程を受けない。そのため、1回のみ渦流探傷工程を実施する場合と比較して、製品対象外となる鋼管に対する余分な工数を削減できる。
【0008】
しかしながら、各渦流探傷工程ごとに、上述の所定の工業規格にしたがった人工きずを有する対比試験片を準備すれば、作業効率が低下する。そもそも、工業規格にしたがった人工きずを用いた感度設定は、製造工程中の最後の渦流探傷工程で実施すれば足りる。したがって、最後の渦流探傷工程以外の他の渦流探傷工程では、工業規格にしたがった人工きずを用いて感度設定する必要はない。しかしながら、最後の渦流探傷工程よりも前に実行される渦流探傷工程においても、人工きずに基づく感度と同等又は近い感度に設定しておかなければ、きず検出の精度が低下する。
【0009】
本発明の目的は、JISやEN、ASTM規格等の所定の工業規格にしたがった人工きずを利用しなくても、鋼管のきずを検出できる渦流探傷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明による渦流探傷方法は、貫通コイルを有する渦流探傷装置を用いて複数の金属管を探傷する。本発明による渦流探傷方法は、同じ公称外径を有する複数の金属管の中から、2つの金属管を選択する工程と、2つの金属管を一列に並べる工程と、一列に並べられた2つの金属管の間に剛体の隙間形成部材を挟み、2つの金属管の間に、公称外径に対応した大きさの隙間を形成する工程と、隙間形成部材を挟んだ2つの金属管を貫通コイルに通し、隙間を探傷する工程と、隙間を探傷して生成されたきず信号に基づいて、渦流探傷装置の感度を設定する工程とを備える。ここでいう「剛体の」は、金属管に挟まれたまま搬送されるときに、金属管から受ける力による変形が無視できる程度の剛性を有するという意味である。
【0011】
本発明による渦流探傷方法では、2つの金属管の間に形成される隙間が人工きずを代替する。そのため、工業規格にしたがった人工きずを用いなくても、感度設定を行うことができ、鋼管のきずを検出できる。
【0012】
好ましくは、本発明による渦流探傷方法であってさらに、複数の公称外径に対応した複数の隙間形成部材を準備する工程を備える。隙間形成部材は、第1表面及び第2表面を有する。第1表面は、2つの金属管のうちの一方の金属管の端面と接触する。第2表面は、第1表面と反対側に配置され、2つの金属管のうちの他方の金属管の端面と接触する。各隙間形成部材はさらに、厚さを有する。厚さは、第1表面と第2表面との間の距離であって、所定の公称外径に対応する。渦流探傷方法はさらに、複数の隙間形成部材の中から、金属管の公称外径に対応した厚さを有する隙間形成部材を選択する工程を備える。隙間を形成する工程では、選択された隙間形成部材を2つの金属管の間に挟んで前記隙間を形成する。
【0013】
この場合、公称外径に応じて隙間の大きさを変えることができる。したがって、公称外径に応じて、感度を設定できる。
【0014】
好ましくは、隙間の大きさは、渦流探傷試験に関する所定の規格により定義され複数の公称外径に対応した複数の人工貫通孔のうち、金属管の公称外径に対応した人工貫通孔の体積に基づいて決定される。
【0015】
この場合、形成さえる隙間が、所定の工業規格により定義される人工貫通孔をより正確に代替できる。
【0016】
本発明による隙間形成部材は、上述の渦流探傷方法に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による渦流探傷装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1中の探傷器の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示す渦流探傷装置で生成される探傷信号のベクトル表示を示す図である。
【図4】図1中の鋼管及び隙間形成部材の斜視図である。
【図5】図4中の2つの鋼管及び2つの鋼管に挟まれた隙間形成部材の斜視図である。
【図6】図5中の隙間形成部材の役割を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施の形態による渦流探傷方法のフロー図である。
【図8】2つの鋼管の間に形成される隙間の体積と人工貫通孔の体積との関係を説明するための模式図である。
【図9】図4と異なる他の隙間形成部材の斜視図である。
【図10】図4及び図9と異なる他の隙間形成部材の斜視図である。
【図11】図4,図9及び図10と異なる他の隙間形成部材の斜視図である。
【図12】図11に示す隙間形成部材の使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
[渦流探傷装置の全体構成]
本実施の形態による渦流探傷方法は、図1に示す渦流探傷装置を用いる。図1を参照して、渦流探傷装置1は、貫通コイル2と、探傷器3と、送り装置4とを備える。
【0020】
貫通コイル2は、自己誘導自己比較方式の試験コイルである。貫通コイル2は、コイル21及び22を備える。コイル21は、コイル22と同軸に配置される。貫通コイル2は、自己誘導型であるため、励磁と検出とを兼ねる。貫通コイル2の下方には、図示しないコイル架台が配置される。コイル架台は貫通コイル2を昇降し、コイル21及び22の中心軸を検査対象である鋼管100F及び100Rの中心軸に合わせる。貫通コイル2及び探傷器3は、探傷信号を生成する。
【0021】
送り装置4は、鋼管100F及び100Rを搬送して貫通コイル2に通す。送り装置4は、複数の搬送ロール5及び6と、一対のガイドロール7A及び7Bと、複数のピンチロール8とを備える。
【0022】
複数の搬送ロール5は貫通コイル2の前方に配置され、複数の搬送ロール6は貫通コイル2の後方に配置される。複数の搬送ロール5及び6は一列に配置される。複数の搬送ロール5及び6は、図示しない駆動源と接続され、駆動源により回転する。そして、搬送ロール5及び6は、鋼管100F及び100Rを貫通コイル2の前方から後方に搬送する。各搬送ロール5及び6は、中央部がV字状にくぼむ、いわゆるVローラである。
【0023】
一対のガイドロール7Aは、貫通コイル2の前方の左右に配置される。同様に、一対のガイドロール7Bは、貫通コイル2の後方の左右に配置される。搬送ロール5により搬送される鋼管100F及び100Rは、一対のガイドロール7A及び一対のガイドロール7Bの間を通過する。ガイドロール7A及び7Bは、搬送中の鋼管100F及び100Rが左右に振動するのを抑制する。
【0024】
複数のピンチロール8は貫通コイル2の前方と後方とにそれぞれ配置される。貫通コイル2の複数のピンチロール8は、搬送ロール5の上方に配置される。貫通コイル2の後方の複数のピンチロール8は、搬送ロール6の上方に配置される。各ピンチロール8は、図示しない昇降装置により昇降可能に支持される。鋼管100F及び100Rが搬送されるとき、各ピンチロール8は下降して、鋼管100F及び100Rと接触する。ピンチロール8は、搬送中の鋼管100F及び100Rが上下に振動するのを抑制する。
【0025】
[探傷器3の構成]
図2は、図1中の探傷器3の構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して、探傷器3は、発信器301と、電力増幅器302と、ブリッジ回路303と、増幅器304と、移相器305と、同期検波器306及び307と、フィルタ308及び309と、ディスプレイ310とを備える。
【0026】
発信器301は、正弦波の交流電流を出力する。電力増幅器302は、発信器301の出力を増幅し、ブリッジ回路303を介して貫通コイル2に供給する。貫通コイル2を通過する鋼管にきずがあると、貫通コイル2のインピーダンスが変化する。ブリッジ回路303はインピーダンスの変化に応じて探傷信号を出力する。
【0027】
増幅器304は、探傷信号を増幅する。増幅器304の増幅度は、通常、渦流探傷を開始する前に、上述の工業規格により定められた人工きずを用いて調整される。増幅器304の増幅度の調整は、感度の設定と呼ばれる。本例では、人工きずとして人工貫通孔(いわゆるドリル穴)を利用すると仮定して、説明を進める。
【0028】
増幅された探傷信号は、2つの同期検波器306及び307に入力される。同期検波器306及び307は、移相器305から出力される制御信号を受け、探傷信号から、インピーダンス平面上のX軸に対応した成分(以下、X信号という)とY軸に対応した成分(以下、Y信号という)とを抽出する。移相器305は、発信器301から出力された交流信号の位相を適宜シフトして、第1制御信号と、第1制御信号と位相が90度異なる第2制御信号とを出力する。同期検波器306は、第1制御信号で探傷信号を同期検波してX信号を出力する。同期検波器307は、第2制御信号で探傷信号を同期検波してY信号を出力する。
【0029】
X信号及びY信号は、それぞれ電気ノイズや鋼管100F及び100Rの搬送時の振動等に基づくノイズを含んでいる。フィルタ308及び309はそれぞれ、対応する信号(X信号、Y信号)からノイズを除去し、ディスプレイ310に出力する。
【0030】
ディスプレイ310は、探傷信号をベクトル表示する。具体的には、ディスプレイ310は、X信号及びY信号をインピーダンス平面上に表示する。これにより、探傷信号は二次元的に表示される。図3に、ベクトル表示された探傷信号を示す。このような信号波形はリサージュ波形と呼ばれる。図3を参照して、探傷信号ETの振幅A1は、きずの体積に比例する。振幅A1が小さければ、きずの体積も小さい。振幅A1が大きければ、きずの体積も大きい。
【0031】
[本実施の形態による渦流探傷方法の概要]
上述のとおり、渦流探傷により検出されたきずの大きさ(体積)は、ベクトル表示された探傷信号の振幅A1により評価される。振幅A1によりきずの大きさを判断するためには、基準となるきずに対する振幅A1を予め知っておく必要がある。そこで、通常、検査対象である複数の鋼管に対して渦流探傷を行う前に、人工貫通孔を用いて渦流探傷装置1の感度、より具体的には、増幅器304の増幅度が設定される。
【0032】
感度の設定は、一般的に、以下のとおりに実行される。初めに、検査対象である複数の鋼管から任意の鋼管を選択する。選択された鋼管を対比試験片とする。次に、対比試験片に人工貫通孔を作製する。鋼管の渦流探傷における人工貫通孔の寸法形状は、JISやEN、ASTM規格等の工業規格により定義されている。たとえば、JISでは、JIS G0583で規定されている。これらの工業規格では、複数の公称外径に対応した複数の寸法形状の人工貫通孔が定義されている。所定の工業規格に基づいて、検査対象の鋼管の公称外径に対応する形状寸法の人工貫通孔を特定する。そして、特定された人工貫通孔を対比試験片に作製する。作製後、人工貫通孔が形成された対比試験片を探傷し、感度を設定する。
【0033】
上述のとおり、製造工程中に複数の渦流探傷工程が含まれる場合、人工貫通孔が形成された対比試験片を渦流探傷工程ごとに準備するのは煩雑であり、作業性に劣る。また、製造工程中に複数の渦流探傷工程が含まれる場合、各渦流探傷工程の実施場所が離れている場合もあり、同じ対比試験片を複数の渦流探傷工程で共有することも困難な場合がある。
【0034】
そこで、本実施の形態では、人工貫通孔に代えて、図4に示す隙間形成部材10を用いて、感度の設定を行う。要するに、隙間形成部材10が人工貫通孔を代替する。
【0035】
図4を参照して、隙間形成部材10は、円板状の本体11と、円環状の挿入部材12及び13とを備える。本体11は、表面11Fと、表面11Fと反対側に配置された表面11Rとを有する。円環状の挿入部材12は表面11Fに取り付けられ、本体11と同軸に配置される。円環状の挿入部材13は表面11Rに取り付けられ、本体11と同軸に配置される。挿入部材12及び13の外径は、鋼管100F及び100Rの内径よりも若干小さい。挿入部材12及び13は、鋼管100F及び100Rに挿入される。
【0036】
隙間形成部材10は、図5に示すように、一列に並べられた鋼管100Fと鋼管100Rとの間に挟まれる。つまり、隙間形成部材10は、鋼管100Fと鋼管100Rとの間に隙間S10を形成する。隙間形成部材10は剛体であり、鋼管100F及び100Rから受ける力により変形しない程度の剛性を有する。隙間形成部材10はさらに絶縁体からなる。絶縁体はたとえば、樹脂やセラミックス、木材等である。絶縁体からなる隙間形成部材10には渦電流が発生しない。そのため、隙間形成部材10が貫通コイル2を通過するとき、渦流探傷装置1は、隙間形成部材10をきずとして認識する。つまり、図6に示すように、隙間形成部材10により形成される隙間S10は、鋼管100Fと鋼管100Rとを1つの鋼管120と仮定したとき、鋼管120の中央全周にわたって形成された、仮想的な円環状の貫通孔T10に相当する。以下、隙間形成部材10により形成される仮想的な円環状の貫通孔T10を、「仮想貫通孔」と称する。
【0037】
このように、隙間形成部材10を用いて鋼管100Fと100Rとの間に隙間S10を形成すれば、仮想貫通孔T10が形成される。仮想貫通孔T10を利用すれば、対比試験片に人工貫通孔を作製することなく、探傷器3の感度を設定できる。以下、本実施の形態による渦流探傷方法の詳細を説明する。
【0038】
[渦流探傷方法の詳細]
図7に本実施の形態による渦流探傷方法のフロー図を示す。図7を参照して、初めに、検査対象である鋼管の公称外径が特定される(S1)。次に、特定された公称外径に対応する隙間形成部材10が選択される(S2)。
【0039】
上述のとおり、JIS等の工業規格では、複数の公称外径に対応した複数の形状寸法の人工貫通孔が定義されている。同様に、本実施の形態においては、公称外径に対応した複数の隙間形成部材10が準備されている。以下、工業規格をJISとして説明を進めるが、EN及びASTM規格でも同じである。
【0040】
各隙間形成部材10が形成する仮想貫通孔T10の体積は、対応する公称外径用の人工貫通孔の体積と同じである。図8を参照して、公称外径D100を有する鋼管100において、公称外径D100に対応するJIS規格上の人工貫通孔200の体積V200は、以下の式(1)で定義される。
【0041】
V200=π×(D200/2)2×W100 (1)
ここで、D200は人工貫通孔の直径であり、W100は、鋼管100の肉厚(Wall Thickness)である。
【0042】
上述のとおり、ベクトル表示された探傷信号ETの振幅A1はきずの体積に比例する。したがって、隙間形成部材10により形成された仮想貫通孔T10の体積V100が、上述の体積V200と同じであれば、隙間S10による探傷信号の振幅が、人工貫通孔200の探傷信号の振幅と同じになる。
【0043】
仮想貫通孔T10の体積V100は、鋼管100F及び100Rの横断面における面積(つまり、外径がD100、内径がD100−2W100の円環部分の面積)に隙間S10の大きさを乗じて求められる。具体的には、体積V100は、以下の式(2)で示される。
【0044】
体積V100=π×{(D100/2)2−(D100/2−W100)2}×L (2)
ここで、Lは、隙間S10の大きさであり、鋼管100Fと鋼管100Rとの間の距離に相当し、隙間形成部材10の本体11の厚さに相当する。
【0045】
各公称外径の隙間形成部材10において、仮想貫通孔T10の体積V100が人工貫通孔200の体積V200と同じになるように、本体11の厚さLが決定される。具体的には、式(1)及び式(2)から、本体11の厚さLは以下の式(3)で示される。
【0046】
L=D2002/{4×(D100×W100−W1002)} (3)
上述のとおり、隙間形成部材10の本体11の厚さLは、隙間S10の大きさに相当する。そのため、各公称外径に対応する隙間形成部材10の本体11は、式(3)を満たす厚さLを有する。
【0047】
検査対象である鋼管の公称外径に対応する隙間形成部材10が選択されたのち、検査対象である複数の鋼管の中から、2つの鋼管100F及び100Rを選択する。そして、選択された鋼管100F及び100Rを一列に並べる(S3)。具体的には、2つの鋼管100F及び100Rを複数の搬送ロール5上で一列に配置する。
【0048】
続いて、図5に示すように、2つの鋼管100F及び100Rに、ステップS2で選択された隙間形成部材10を挟む(S4)。隙間形成部材10の挿入部材12及び13が鋼管100F及び100Rに挿入され、隙間形成部材10が2つの鋼管100F及び100Rに挟まれる。好ましくは、挿入部材12及び13の外周面に接着剤が塗布される。この場合、隙間形成部材10が2つの鋼管100F及び100Rの間に固定される。隙間形成部材10が鋼管100F及び100Rに挟まれると、鋼管100F及び100Rの公称外径に対応した大きさの隙間S10が形成される。
【0049】
続いて、隙間形成部材10を挟んだまま、鋼管100F及び100Rを搬送し、貫通コイル2内に通す(S5)。たとえば、搬送ロール5の回転速度を、搬送ロール6の回転速度よりも速くすれば、隙間形成部材10を挟んだまま、鋼管100F及び100Rが一列に並んで搬送される。この場合、上述の接着剤が塗布されてなくても、隙間形成部材10は2つの鋼管100F及び100Rに挟まれたまま搬送される。搬送時、剛体である隙間形成部材10は、鋼管100F及び100Rから力を受けても変形しない。そのため、隙間S10の大きさは一定に保たれる。
【0050】
隙間形成部材10を挟んだ2つの鋼管100F及び100Rは渦流探傷される。このとき、渦流探傷装置1は、隙間形成部材10により形成された隙間S10、つまり、仮想貫通孔T10を検出して探傷信号を生成する。生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置1の感度が設定される(S5)。具体的には、渦流探傷装置1は、図3に示すように、ディスプレイ310に探傷信号をベクトル表示する。作業者は、ベクトル表示された探傷信号の振幅A1を調整して、感度を設定する。ここで、仮想貫通孔T10の体積V100は、対応する人工貫通孔200の体積V200と同じである。したがって、ステップS5で生成された探傷信号の振幅A1は、対応する人工貫通孔200を探傷した場合に生成される探傷信号の振幅と同じ大きさである。そのため、人工貫通孔200を利用した場合と同等の感度設定を行うことができる。感度が設定された後、検査対象である複数の鋼管に対して渦流探傷を実施する(S6)。
【0051】
本実施の形態による渦流探傷方法は、人工貫通孔200を利用する代わりに、隙間S10(仮想貫通孔T10)を利用して、感度を設定する。そのため、人工貫通孔200を作製する手間を省くことができる。仮想貫通孔T10の体積V100は、人工貫通孔200の体積V200と同じである。そのため、隙間S10が探傷されれば、対応する人工貫通孔200と同じ振幅の探傷信号が生成される。そのため、規格で定められた人工貫通孔200を用いなくても、その人工貫通孔200に相当する探傷信号を基準として、渦流探傷を行うことができる。
【0052】
[隙間形成部材の構成例]
隙間形成部材10の形状は、図4の形状に限定されない。鋼管100Fと鋼管100Rとの間に隙間S10を形成できる形状であればよい。たとえば、隙間形成部材10は、図9に示すような円板であってもよいし、図10に示すような円環であってもよい。これらの形状の隙間形成部材10も、鋼管100Fの端面と接触する表面と、鋼管100Rと接触する表面とを有し、これら2つの表面間の距離に相当する厚さLを有する。これらの隙間形成部材10は、たとえば、鋼管100Fの前端面又は鋼管100Rの後端面に接着剤を用いて接着される。
【0053】
また、図11に示すように、板状であってもよい。この場合、図12に示すように、隙間形成部材10の両端部が鋼管100F及び100Rの間に挟まり、隙間S10を形成する。
【0054】
好ましくは、隙間形成部材10が2つの鋼管100F及び100Rに挟まれたとき、隙間形成部材10の端部は鋼管100F及び100Rの外周面よりも外側にはみ出ない。隙間形成部材10の端部がはみ出れば、貫通コイル2と接触する場合が生じるためである。
【0055】
[隙間体積の設定例]
上述の実施の形態では、人工貫通孔200の体積V200と仮想貫通孔T10の体積V100とが同じになるように、隙間S10の大きさL(厚さL)を設定する。しかしながら、体積V100が体積V200と以下の式(4)を満たすように、公称外径ごとに隙間S10の大きさLを設定してもよい。
【0056】
V100=n×V200 (4)
ここで、nは自然数である。上述のとおり、渦流探傷装置1で生成される探傷信号の振幅A1は、人工貫通孔200の体積に比例する。隙間S10により形成される仮想貫通孔T10の体積V100が人工貫通孔200の体積V200のn倍であれば、隙間S10により生成される探傷信号の振幅は、対応する人工貫通孔200の探傷信号の振幅のn倍となる。そのため、隙間S10により生成された探傷信号の振幅を1/n倍すれば、対応する人工貫通孔200の探傷信号と同じ振幅にすることができ、人工貫通孔200を基準とした感度に設定できる。
【0057】
さらに、nは自然数でなくてもよい。要するに、隙間S10による体積V100と人工貫通孔200による体積V200の比率が分かっていれば、隙間S10を利用して、対応する人工貫通孔200を基準とした感度に設定できる。換言すれば、所定の規格で定義された所定の公称外径に対応する人工貫通孔200の体積に基づいて、隙間S10の大きさLが決定されればよい。
【0058】
上述の実施の形態では、貫通コイル2を自己誘導自己比較方式とする。しかしながら、他の方式の貫通コイルが適用されてもよい。たとえば、貫通コイル2は相互誘導型であってもよいし、単一方式や、標準比較方式であってもよい。
【0059】
また、図10及び図11に示す隙間形成部材10は、図4に示すような挿入部材12及び13を備えてもよい。この場合、隙間形成部材10が鋼管100F及び100Rから外れにくい。
【0060】
上述の実施の形態では、鋼管を探傷したが、検査対象は鋼管に限られず、鋼材以外の他の金属からなる金属管でもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明による渦流探傷方法は、鋼管の渦流探傷工程に広く利用可能である。特に、製造工程中に複数の渦流探傷工程を含める場合において、最終の渦流探傷工程よりも前に実施される渦流探傷工程に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 渦流探傷装置
2 貫通コイル
3 探傷器
11 本体
11F 前端面
11R 後端面
100F,100R 鋼管
200 人工貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流探傷方法及びそれに用いられる隙間形成部材に関し、さらに詳しくは、金属管の渦流探傷方法及びそれに用いられる隙間形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2−66447号公報(特許文献1)、特公平6−87051号公報(特許文献2)、特開平2−208552号公報(特許文献3)及び特開平2−173561号公報(特許文献4)は、鋼管を探傷する渦流探傷装置及び渦流探傷方法を開示する。これらの文献で開示された渦流探傷装置は、貫通コイルを備える。検査対象である鋼管は、貫通コイルを通過するとき、貫通コイルから磁束を受ける。磁束により、鋼管には渦電流が発生する。鋼管にきずがあると、渦電流は乱れる。渦流探傷装置は、渦電流の乱れを検知して、鋼管に形成されたきずを検出する。
【0003】
渦流探傷方法では、探傷を開始する前に、人工貫通孔に代表される人工きずを用いて渦流探傷装置の感度が設定される。具体的には、検査対象である鋼管と同じ公称外径の鋼管(以下、対比試験片という)を準備する。準備された対比試験片に人工きずを作製する。JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)やEN(European Norm:欧州規格)、ASTM(American Society for Testing and Materials:米国材料試験境界)規格といった工業規格は、人工きずの寸法形状を、鋼管の公称外径に対応して定義する。つまり、これらの工業規格には、鋼管の複数の公称外径に対応した複数の人工きずの寸法形状が定義されている。
【0004】
渦流探傷装置の感度設定は以下のように行われる。初めに、所定の工業規格に基づいて、鋼管の公称外径に対応した寸法形状の人工きずが特定される。特定された人工きずを対比試験片に作製する。人工きずが作製された対比試験片を貫通コイルに通す。このとき、渦流探傷装置は、人工きずを探傷し、探傷信号を生成する。生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置の感度が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−66447号公報
【特許文献2】特公平6−87051号公報
【特許文献3】特開平2−208552号公報
【特許文献4】特開平2−173561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼管の通常の製造工程は、製管工程、熱処理工程、矯正工程及び渦流探傷工程を含む。製管工程では、ビレットやスラブを鋼管にする。熱処理工程では、サイジングされた鋼管を熱処理する。矯正工程では、熱処理された鋼管の曲がりを矯正する。渦流探傷工程は、矯正後の鋼管に対して実施される。渦流探傷工程では、人工きずの探傷信号を基準信号とし、基準信号に基づいて、鋼管のきずを検出する。
【0007】
上述の製造工程は、1つの渦流探傷工程を含む。しかしながら、鋼管の製造工程は、複数の渦流探傷工程を含んでもよい。たとえば、製管工程と熱処理工程との間に、1回目の渦流探傷工程を実施し、矯正工程後に2回目の渦流探傷工程を実施する。この場合、1回目の渦流探傷工程できずが検出された鋼管は、製品対象から除外され、熱処理工程や矯正工程を受けない。そのため、1回のみ渦流探傷工程を実施する場合と比較して、製品対象外となる鋼管に対する余分な工数を削減できる。
【0008】
しかしながら、各渦流探傷工程ごとに、上述の所定の工業規格にしたがった人工きずを有する対比試験片を準備すれば、作業効率が低下する。そもそも、工業規格にしたがった人工きずを用いた感度設定は、製造工程中の最後の渦流探傷工程で実施すれば足りる。したがって、最後の渦流探傷工程以外の他の渦流探傷工程では、工業規格にしたがった人工きずを用いて感度設定する必要はない。しかしながら、最後の渦流探傷工程よりも前に実行される渦流探傷工程においても、人工きずに基づく感度と同等又は近い感度に設定しておかなければ、きず検出の精度が低下する。
【0009】
本発明の目的は、JISやEN、ASTM規格等の所定の工業規格にしたがった人工きずを利用しなくても、鋼管のきずを検出できる渦流探傷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明による渦流探傷方法は、貫通コイルを有する渦流探傷装置を用いて複数の金属管を探傷する。本発明による渦流探傷方法は、同じ公称外径を有する複数の金属管の中から、2つの金属管を選択する工程と、2つの金属管を一列に並べる工程と、一列に並べられた2つの金属管の間に剛体の隙間形成部材を挟み、2つの金属管の間に、公称外径に対応した大きさの隙間を形成する工程と、隙間形成部材を挟んだ2つの金属管を貫通コイルに通し、隙間を探傷する工程と、隙間を探傷して生成されたきず信号に基づいて、渦流探傷装置の感度を設定する工程とを備える。ここでいう「剛体の」は、金属管に挟まれたまま搬送されるときに、金属管から受ける力による変形が無視できる程度の剛性を有するという意味である。
【0011】
本発明による渦流探傷方法では、2つの金属管の間に形成される隙間が人工きずを代替する。そのため、工業規格にしたがった人工きずを用いなくても、感度設定を行うことができ、鋼管のきずを検出できる。
【0012】
好ましくは、本発明による渦流探傷方法であってさらに、複数の公称外径に対応した複数の隙間形成部材を準備する工程を備える。隙間形成部材は、第1表面及び第2表面を有する。第1表面は、2つの金属管のうちの一方の金属管の端面と接触する。第2表面は、第1表面と反対側に配置され、2つの金属管のうちの他方の金属管の端面と接触する。各隙間形成部材はさらに、厚さを有する。厚さは、第1表面と第2表面との間の距離であって、所定の公称外径に対応する。渦流探傷方法はさらに、複数の隙間形成部材の中から、金属管の公称外径に対応した厚さを有する隙間形成部材を選択する工程を備える。隙間を形成する工程では、選択された隙間形成部材を2つの金属管の間に挟んで前記隙間を形成する。
【0013】
この場合、公称外径に応じて隙間の大きさを変えることができる。したがって、公称外径に応じて、感度を設定できる。
【0014】
好ましくは、隙間の大きさは、渦流探傷試験に関する所定の規格により定義され複数の公称外径に対応した複数の人工貫通孔のうち、金属管の公称外径に対応した人工貫通孔の体積に基づいて決定される。
【0015】
この場合、形成さえる隙間が、所定の工業規格により定義される人工貫通孔をより正確に代替できる。
【0016】
本発明による隙間形成部材は、上述の渦流探傷方法に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による渦流探傷装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1中の探傷器の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示す渦流探傷装置で生成される探傷信号のベクトル表示を示す図である。
【図4】図1中の鋼管及び隙間形成部材の斜視図である。
【図5】図4中の2つの鋼管及び2つの鋼管に挟まれた隙間形成部材の斜視図である。
【図6】図5中の隙間形成部材の役割を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施の形態による渦流探傷方法のフロー図である。
【図8】2つの鋼管の間に形成される隙間の体積と人工貫通孔の体積との関係を説明するための模式図である。
【図9】図4と異なる他の隙間形成部材の斜視図である。
【図10】図4及び図9と異なる他の隙間形成部材の斜視図である。
【図11】図4,図9及び図10と異なる他の隙間形成部材の斜視図である。
【図12】図11に示す隙間形成部材の使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
[渦流探傷装置の全体構成]
本実施の形態による渦流探傷方法は、図1に示す渦流探傷装置を用いる。図1を参照して、渦流探傷装置1は、貫通コイル2と、探傷器3と、送り装置4とを備える。
【0020】
貫通コイル2は、自己誘導自己比較方式の試験コイルである。貫通コイル2は、コイル21及び22を備える。コイル21は、コイル22と同軸に配置される。貫通コイル2は、自己誘導型であるため、励磁と検出とを兼ねる。貫通コイル2の下方には、図示しないコイル架台が配置される。コイル架台は貫通コイル2を昇降し、コイル21及び22の中心軸を検査対象である鋼管100F及び100Rの中心軸に合わせる。貫通コイル2及び探傷器3は、探傷信号を生成する。
【0021】
送り装置4は、鋼管100F及び100Rを搬送して貫通コイル2に通す。送り装置4は、複数の搬送ロール5及び6と、一対のガイドロール7A及び7Bと、複数のピンチロール8とを備える。
【0022】
複数の搬送ロール5は貫通コイル2の前方に配置され、複数の搬送ロール6は貫通コイル2の後方に配置される。複数の搬送ロール5及び6は一列に配置される。複数の搬送ロール5及び6は、図示しない駆動源と接続され、駆動源により回転する。そして、搬送ロール5及び6は、鋼管100F及び100Rを貫通コイル2の前方から後方に搬送する。各搬送ロール5及び6は、中央部がV字状にくぼむ、いわゆるVローラである。
【0023】
一対のガイドロール7Aは、貫通コイル2の前方の左右に配置される。同様に、一対のガイドロール7Bは、貫通コイル2の後方の左右に配置される。搬送ロール5により搬送される鋼管100F及び100Rは、一対のガイドロール7A及び一対のガイドロール7Bの間を通過する。ガイドロール7A及び7Bは、搬送中の鋼管100F及び100Rが左右に振動するのを抑制する。
【0024】
複数のピンチロール8は貫通コイル2の前方と後方とにそれぞれ配置される。貫通コイル2の複数のピンチロール8は、搬送ロール5の上方に配置される。貫通コイル2の後方の複数のピンチロール8は、搬送ロール6の上方に配置される。各ピンチロール8は、図示しない昇降装置により昇降可能に支持される。鋼管100F及び100Rが搬送されるとき、各ピンチロール8は下降して、鋼管100F及び100Rと接触する。ピンチロール8は、搬送中の鋼管100F及び100Rが上下に振動するのを抑制する。
【0025】
[探傷器3の構成]
図2は、図1中の探傷器3の構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して、探傷器3は、発信器301と、電力増幅器302と、ブリッジ回路303と、増幅器304と、移相器305と、同期検波器306及び307と、フィルタ308及び309と、ディスプレイ310とを備える。
【0026】
発信器301は、正弦波の交流電流を出力する。電力増幅器302は、発信器301の出力を増幅し、ブリッジ回路303を介して貫通コイル2に供給する。貫通コイル2を通過する鋼管にきずがあると、貫通コイル2のインピーダンスが変化する。ブリッジ回路303はインピーダンスの変化に応じて探傷信号を出力する。
【0027】
増幅器304は、探傷信号を増幅する。増幅器304の増幅度は、通常、渦流探傷を開始する前に、上述の工業規格により定められた人工きずを用いて調整される。増幅器304の増幅度の調整は、感度の設定と呼ばれる。本例では、人工きずとして人工貫通孔(いわゆるドリル穴)を利用すると仮定して、説明を進める。
【0028】
増幅された探傷信号は、2つの同期検波器306及び307に入力される。同期検波器306及び307は、移相器305から出力される制御信号を受け、探傷信号から、インピーダンス平面上のX軸に対応した成分(以下、X信号という)とY軸に対応した成分(以下、Y信号という)とを抽出する。移相器305は、発信器301から出力された交流信号の位相を適宜シフトして、第1制御信号と、第1制御信号と位相が90度異なる第2制御信号とを出力する。同期検波器306は、第1制御信号で探傷信号を同期検波してX信号を出力する。同期検波器307は、第2制御信号で探傷信号を同期検波してY信号を出力する。
【0029】
X信号及びY信号は、それぞれ電気ノイズや鋼管100F及び100Rの搬送時の振動等に基づくノイズを含んでいる。フィルタ308及び309はそれぞれ、対応する信号(X信号、Y信号)からノイズを除去し、ディスプレイ310に出力する。
【0030】
ディスプレイ310は、探傷信号をベクトル表示する。具体的には、ディスプレイ310は、X信号及びY信号をインピーダンス平面上に表示する。これにより、探傷信号は二次元的に表示される。図3に、ベクトル表示された探傷信号を示す。このような信号波形はリサージュ波形と呼ばれる。図3を参照して、探傷信号ETの振幅A1は、きずの体積に比例する。振幅A1が小さければ、きずの体積も小さい。振幅A1が大きければ、きずの体積も大きい。
【0031】
[本実施の形態による渦流探傷方法の概要]
上述のとおり、渦流探傷により検出されたきずの大きさ(体積)は、ベクトル表示された探傷信号の振幅A1により評価される。振幅A1によりきずの大きさを判断するためには、基準となるきずに対する振幅A1を予め知っておく必要がある。そこで、通常、検査対象である複数の鋼管に対して渦流探傷を行う前に、人工貫通孔を用いて渦流探傷装置1の感度、より具体的には、増幅器304の増幅度が設定される。
【0032】
感度の設定は、一般的に、以下のとおりに実行される。初めに、検査対象である複数の鋼管から任意の鋼管を選択する。選択された鋼管を対比試験片とする。次に、対比試験片に人工貫通孔を作製する。鋼管の渦流探傷における人工貫通孔の寸法形状は、JISやEN、ASTM規格等の工業規格により定義されている。たとえば、JISでは、JIS G0583で規定されている。これらの工業規格では、複数の公称外径に対応した複数の寸法形状の人工貫通孔が定義されている。所定の工業規格に基づいて、検査対象の鋼管の公称外径に対応する形状寸法の人工貫通孔を特定する。そして、特定された人工貫通孔を対比試験片に作製する。作製後、人工貫通孔が形成された対比試験片を探傷し、感度を設定する。
【0033】
上述のとおり、製造工程中に複数の渦流探傷工程が含まれる場合、人工貫通孔が形成された対比試験片を渦流探傷工程ごとに準備するのは煩雑であり、作業性に劣る。また、製造工程中に複数の渦流探傷工程が含まれる場合、各渦流探傷工程の実施場所が離れている場合もあり、同じ対比試験片を複数の渦流探傷工程で共有することも困難な場合がある。
【0034】
そこで、本実施の形態では、人工貫通孔に代えて、図4に示す隙間形成部材10を用いて、感度の設定を行う。要するに、隙間形成部材10が人工貫通孔を代替する。
【0035】
図4を参照して、隙間形成部材10は、円板状の本体11と、円環状の挿入部材12及び13とを備える。本体11は、表面11Fと、表面11Fと反対側に配置された表面11Rとを有する。円環状の挿入部材12は表面11Fに取り付けられ、本体11と同軸に配置される。円環状の挿入部材13は表面11Rに取り付けられ、本体11と同軸に配置される。挿入部材12及び13の外径は、鋼管100F及び100Rの内径よりも若干小さい。挿入部材12及び13は、鋼管100F及び100Rに挿入される。
【0036】
隙間形成部材10は、図5に示すように、一列に並べられた鋼管100Fと鋼管100Rとの間に挟まれる。つまり、隙間形成部材10は、鋼管100Fと鋼管100Rとの間に隙間S10を形成する。隙間形成部材10は剛体であり、鋼管100F及び100Rから受ける力により変形しない程度の剛性を有する。隙間形成部材10はさらに絶縁体からなる。絶縁体はたとえば、樹脂やセラミックス、木材等である。絶縁体からなる隙間形成部材10には渦電流が発生しない。そのため、隙間形成部材10が貫通コイル2を通過するとき、渦流探傷装置1は、隙間形成部材10をきずとして認識する。つまり、図6に示すように、隙間形成部材10により形成される隙間S10は、鋼管100Fと鋼管100Rとを1つの鋼管120と仮定したとき、鋼管120の中央全周にわたって形成された、仮想的な円環状の貫通孔T10に相当する。以下、隙間形成部材10により形成される仮想的な円環状の貫通孔T10を、「仮想貫通孔」と称する。
【0037】
このように、隙間形成部材10を用いて鋼管100Fと100Rとの間に隙間S10を形成すれば、仮想貫通孔T10が形成される。仮想貫通孔T10を利用すれば、対比試験片に人工貫通孔を作製することなく、探傷器3の感度を設定できる。以下、本実施の形態による渦流探傷方法の詳細を説明する。
【0038】
[渦流探傷方法の詳細]
図7に本実施の形態による渦流探傷方法のフロー図を示す。図7を参照して、初めに、検査対象である鋼管の公称外径が特定される(S1)。次に、特定された公称外径に対応する隙間形成部材10が選択される(S2)。
【0039】
上述のとおり、JIS等の工業規格では、複数の公称外径に対応した複数の形状寸法の人工貫通孔が定義されている。同様に、本実施の形態においては、公称外径に対応した複数の隙間形成部材10が準備されている。以下、工業規格をJISとして説明を進めるが、EN及びASTM規格でも同じである。
【0040】
各隙間形成部材10が形成する仮想貫通孔T10の体積は、対応する公称外径用の人工貫通孔の体積と同じである。図8を参照して、公称外径D100を有する鋼管100において、公称外径D100に対応するJIS規格上の人工貫通孔200の体積V200は、以下の式(1)で定義される。
【0041】
V200=π×(D200/2)2×W100 (1)
ここで、D200は人工貫通孔の直径であり、W100は、鋼管100の肉厚(Wall Thickness)である。
【0042】
上述のとおり、ベクトル表示された探傷信号ETの振幅A1はきずの体積に比例する。したがって、隙間形成部材10により形成された仮想貫通孔T10の体積V100が、上述の体積V200と同じであれば、隙間S10による探傷信号の振幅が、人工貫通孔200の探傷信号の振幅と同じになる。
【0043】
仮想貫通孔T10の体積V100は、鋼管100F及び100Rの横断面における面積(つまり、外径がD100、内径がD100−2W100の円環部分の面積)に隙間S10の大きさを乗じて求められる。具体的には、体積V100は、以下の式(2)で示される。
【0044】
体積V100=π×{(D100/2)2−(D100/2−W100)2}×L (2)
ここで、Lは、隙間S10の大きさであり、鋼管100Fと鋼管100Rとの間の距離に相当し、隙間形成部材10の本体11の厚さに相当する。
【0045】
各公称外径の隙間形成部材10において、仮想貫通孔T10の体積V100が人工貫通孔200の体積V200と同じになるように、本体11の厚さLが決定される。具体的には、式(1)及び式(2)から、本体11の厚さLは以下の式(3)で示される。
【0046】
L=D2002/{4×(D100×W100−W1002)} (3)
上述のとおり、隙間形成部材10の本体11の厚さLは、隙間S10の大きさに相当する。そのため、各公称外径に対応する隙間形成部材10の本体11は、式(3)を満たす厚さLを有する。
【0047】
検査対象である鋼管の公称外径に対応する隙間形成部材10が選択されたのち、検査対象である複数の鋼管の中から、2つの鋼管100F及び100Rを選択する。そして、選択された鋼管100F及び100Rを一列に並べる(S3)。具体的には、2つの鋼管100F及び100Rを複数の搬送ロール5上で一列に配置する。
【0048】
続いて、図5に示すように、2つの鋼管100F及び100Rに、ステップS2で選択された隙間形成部材10を挟む(S4)。隙間形成部材10の挿入部材12及び13が鋼管100F及び100Rに挿入され、隙間形成部材10が2つの鋼管100F及び100Rに挟まれる。好ましくは、挿入部材12及び13の外周面に接着剤が塗布される。この場合、隙間形成部材10が2つの鋼管100F及び100Rの間に固定される。隙間形成部材10が鋼管100F及び100Rに挟まれると、鋼管100F及び100Rの公称外径に対応した大きさの隙間S10が形成される。
【0049】
続いて、隙間形成部材10を挟んだまま、鋼管100F及び100Rを搬送し、貫通コイル2内に通す(S5)。たとえば、搬送ロール5の回転速度を、搬送ロール6の回転速度よりも速くすれば、隙間形成部材10を挟んだまま、鋼管100F及び100Rが一列に並んで搬送される。この場合、上述の接着剤が塗布されてなくても、隙間形成部材10は2つの鋼管100F及び100Rに挟まれたまま搬送される。搬送時、剛体である隙間形成部材10は、鋼管100F及び100Rから力を受けても変形しない。そのため、隙間S10の大きさは一定に保たれる。
【0050】
隙間形成部材10を挟んだ2つの鋼管100F及び100Rは渦流探傷される。このとき、渦流探傷装置1は、隙間形成部材10により形成された隙間S10、つまり、仮想貫通孔T10を検出して探傷信号を生成する。生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置1の感度が設定される(S5)。具体的には、渦流探傷装置1は、図3に示すように、ディスプレイ310に探傷信号をベクトル表示する。作業者は、ベクトル表示された探傷信号の振幅A1を調整して、感度を設定する。ここで、仮想貫通孔T10の体積V100は、対応する人工貫通孔200の体積V200と同じである。したがって、ステップS5で生成された探傷信号の振幅A1は、対応する人工貫通孔200を探傷した場合に生成される探傷信号の振幅と同じ大きさである。そのため、人工貫通孔200を利用した場合と同等の感度設定を行うことができる。感度が設定された後、検査対象である複数の鋼管に対して渦流探傷を実施する(S6)。
【0051】
本実施の形態による渦流探傷方法は、人工貫通孔200を利用する代わりに、隙間S10(仮想貫通孔T10)を利用して、感度を設定する。そのため、人工貫通孔200を作製する手間を省くことができる。仮想貫通孔T10の体積V100は、人工貫通孔200の体積V200と同じである。そのため、隙間S10が探傷されれば、対応する人工貫通孔200と同じ振幅の探傷信号が生成される。そのため、規格で定められた人工貫通孔200を用いなくても、その人工貫通孔200に相当する探傷信号を基準として、渦流探傷を行うことができる。
【0052】
[隙間形成部材の構成例]
隙間形成部材10の形状は、図4の形状に限定されない。鋼管100Fと鋼管100Rとの間に隙間S10を形成できる形状であればよい。たとえば、隙間形成部材10は、図9に示すような円板であってもよいし、図10に示すような円環であってもよい。これらの形状の隙間形成部材10も、鋼管100Fの端面と接触する表面と、鋼管100Rと接触する表面とを有し、これら2つの表面間の距離に相当する厚さLを有する。これらの隙間形成部材10は、たとえば、鋼管100Fの前端面又は鋼管100Rの後端面に接着剤を用いて接着される。
【0053】
また、図11に示すように、板状であってもよい。この場合、図12に示すように、隙間形成部材10の両端部が鋼管100F及び100Rの間に挟まり、隙間S10を形成する。
【0054】
好ましくは、隙間形成部材10が2つの鋼管100F及び100Rに挟まれたとき、隙間形成部材10の端部は鋼管100F及び100Rの外周面よりも外側にはみ出ない。隙間形成部材10の端部がはみ出れば、貫通コイル2と接触する場合が生じるためである。
【0055】
[隙間体積の設定例]
上述の実施の形態では、人工貫通孔200の体積V200と仮想貫通孔T10の体積V100とが同じになるように、隙間S10の大きさL(厚さL)を設定する。しかしながら、体積V100が体積V200と以下の式(4)を満たすように、公称外径ごとに隙間S10の大きさLを設定してもよい。
【0056】
V100=n×V200 (4)
ここで、nは自然数である。上述のとおり、渦流探傷装置1で生成される探傷信号の振幅A1は、人工貫通孔200の体積に比例する。隙間S10により形成される仮想貫通孔T10の体積V100が人工貫通孔200の体積V200のn倍であれば、隙間S10により生成される探傷信号の振幅は、対応する人工貫通孔200の探傷信号の振幅のn倍となる。そのため、隙間S10により生成された探傷信号の振幅を1/n倍すれば、対応する人工貫通孔200の探傷信号と同じ振幅にすることができ、人工貫通孔200を基準とした感度に設定できる。
【0057】
さらに、nは自然数でなくてもよい。要するに、隙間S10による体積V100と人工貫通孔200による体積V200の比率が分かっていれば、隙間S10を利用して、対応する人工貫通孔200を基準とした感度に設定できる。換言すれば、所定の規格で定義された所定の公称外径に対応する人工貫通孔200の体積に基づいて、隙間S10の大きさLが決定されればよい。
【0058】
上述の実施の形態では、貫通コイル2を自己誘導自己比較方式とする。しかしながら、他の方式の貫通コイルが適用されてもよい。たとえば、貫通コイル2は相互誘導型であってもよいし、単一方式や、標準比較方式であってもよい。
【0059】
また、図10及び図11に示す隙間形成部材10は、図4に示すような挿入部材12及び13を備えてもよい。この場合、隙間形成部材10が鋼管100F及び100Rから外れにくい。
【0060】
上述の実施の形態では、鋼管を探傷したが、検査対象は鋼管に限られず、鋼材以外の他の金属からなる金属管でもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明による渦流探傷方法は、鋼管の渦流探傷工程に広く利用可能である。特に、製造工程中に複数の渦流探傷工程を含める場合において、最終の渦流探傷工程よりも前に実施される渦流探傷工程に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 渦流探傷装置
2 貫通コイル
3 探傷器
11 本体
11F 前端面
11R 後端面
100F,100R 鋼管
200 人工貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通コイルを有する渦流探傷装置を用いて複数の金属管を探傷する渦流探傷方法であって、
同じ公称外径を有する前記複数の金属管の中から、2つの前記金属管を選択する工程と、
前記2つの金属管を一列に並べる工程と、
一列に並べられた前記2つの金属管の間に剛体の隙間形成部材を挟み、前記2つの金属管の間に、前記公称外径に対応した大きさの隙間を形成する工程と、
前記隙間形成部材を挟んだ前記2つの金属管を前記貫通コイルに通し、前記隙間を探傷する工程と、
前記隙間を探傷して生成された探傷信号に基づいて、前記渦流探傷装置の感度を設定する工程とを備える、渦流探傷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の渦流探傷方法であってさらに、
複数の前記公称外径に対応した複数の隙間形成部材を準備する工程を備え、
前記隙間形成部材は、
前記2つの金属管のうちの一方の金属管の端面と接触する第1表面と、
前記第1表面と反対側に配置され、前記2つの金属管のうちの他方の金属管の端面と接触する第2表面と、
前記第1表面と第2表面との間の距離であって、所定の前記公称外径に対応した厚さとを有し、
前記渦流探傷方法はさらに、
前記複数の隙間形成部材の中から、前記金属管の公称外径に対応した厚さを有する隙間形成部材を選択する工程を備え、
前記隙間を形成する工程では、選択された前記隙間形成部材を前記2つの金属管の間に挟む、渦流探傷方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の渦流探傷方法であって、
前記隙間の大きさは、渦流探傷試験に関する所定の規格により定義され複数の公称外径に対応した複数の人工貫通孔のうち、前記金属管の公称外径に対応した前記人工貫通孔の体積に基づいて決定される、渦流探傷方法。
【請求項4】
請求項2に記載の渦流探傷方法で利用される、隙間形成部材。
【請求項1】
貫通コイルを有する渦流探傷装置を用いて複数の金属管を探傷する渦流探傷方法であって、
同じ公称外径を有する前記複数の金属管の中から、2つの前記金属管を選択する工程と、
前記2つの金属管を一列に並べる工程と、
一列に並べられた前記2つの金属管の間に剛体の隙間形成部材を挟み、前記2つの金属管の間に、前記公称外径に対応した大きさの隙間を形成する工程と、
前記隙間形成部材を挟んだ前記2つの金属管を前記貫通コイルに通し、前記隙間を探傷する工程と、
前記隙間を探傷して生成された探傷信号に基づいて、前記渦流探傷装置の感度を設定する工程とを備える、渦流探傷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の渦流探傷方法であってさらに、
複数の前記公称外径に対応した複数の隙間形成部材を準備する工程を備え、
前記隙間形成部材は、
前記2つの金属管のうちの一方の金属管の端面と接触する第1表面と、
前記第1表面と反対側に配置され、前記2つの金属管のうちの他方の金属管の端面と接触する第2表面と、
前記第1表面と第2表面との間の距離であって、所定の前記公称外径に対応した厚さとを有し、
前記渦流探傷方法はさらに、
前記複数の隙間形成部材の中から、前記金属管の公称外径に対応した厚さを有する隙間形成部材を選択する工程を備え、
前記隙間を形成する工程では、選択された前記隙間形成部材を前記2つの金属管の間に挟む、渦流探傷方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の渦流探傷方法であって、
前記隙間の大きさは、渦流探傷試験に関する所定の規格により定義され複数の公称外径に対応した複数の人工貫通孔のうち、前記金属管の公称外径に対応した前記人工貫通孔の体積に基づいて決定される、渦流探傷方法。
【請求項4】
請求項2に記載の渦流探傷方法で利用される、隙間形成部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−127922(P2011−127922A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284243(P2009−284243)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
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