説明

渦電流探傷方法と渦電流探傷装置

【課題】励磁コイル内に検出コイルを配置した回転可能な渦電流探傷プローブ用いた渦電流探傷方法において、検出コイルの回転位置によって変化する検出感度の変化(検出感度偏差)を小さくすること。
【解決手段】ディスクDSには、励磁コイルEC1、検出コイルDC1及び励磁コイルEC2、検出コイルDC2からなる渦電流探傷プローブを取付けてある。円筒状の被検査体Tの周面に渦電流探傷プローブを設置し、ディスクDSを回転すると、検出コイルDC1,DC2と検査面の距離(リフトオフ)が変化するため、キズ信号の検出感度も変化する。検出感度の変化を小さくするため、検出コイルDC1,DC2の回転位置(回転角度)を検出して検出感度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、渦電流探傷方法と渦電流探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置し、検出コイルを回転しながら探傷する渦電流探傷プローブが提案されている(例えば特許文献1参照)。
図6により従来の渦電流探傷プローブを説明する。
渦電流探傷プローブは、図6(a)のように、パンケーキ状の励磁コイルEC、四角形(ロ字型)の検出コイルDCからなり、両コイルは、コイル面が直交するように配置してある。検出コイルDCは、モータ(図示せず)により、図6(b)の励磁コイルECの中心軸Pを中心に矢印方向へ回転する。また励磁コイルECは、コイル面が検査体Tの検査面に対向するように配置してある。
【0003】
図6(b)の被検査体TのキズF1〜F4を検出する場合、渦電流探傷プローブをそれらのキズの近傍に設置して、検出コイルDCを回転すると全方向のキズを検出することができる。しかし渦電流探傷プローブが検出できる範囲は、検出コイルDCが回転する範囲に限られるから、例えば図6(c)のように線Lに沿って探傷する場合、渦電流探傷プローブを位置Z1、Z2、Z3へ間歇的に移動して、その都度検出コイルDCを回転して探傷しなければならない。したがって探傷時間が長くなる。
【0004】
そこで連続的に広範囲の探傷を可能にするため、検出コイルを回転させながら所定の速度で移動する渦電流探傷プローブが提案されている(特許文献2参照)。
図7により従来の検出コイルを回転させながら移動する渦電流探傷プローブについて説明する。
渦電流探傷プローブは、図7(a)のように励磁コイルEC1、検出コイルDC1なる渦電流探傷プローブと励磁コイルEC2、検出コイルDC2からなる渦電流探傷プローブを、2個ディスク(図示せず)に並置し取付けてある。ディスクは、中心軸P1を中心に回転しながらY方向へ移動する。
渦電流探傷プローブがY方向へ移動したときの検出コイルDC1,DC2の軌跡は、図7(c−1)〜(c−4)のようになり、検出コイルが一回転する間にY方向へ移動する距離をSとすると、図7(c−1)は、S=0.75W2、図7(c−2)は、S=1.0W2、図7(c−3)は、S=1.5W2、図7(c−4)は、S=2.0W2のときの軌跡を示す。図において、実線は、検出コイルDC1の軌跡を示し、破線は、検出コイルDC2の軌跡を示す。またW1は、図7(b)のように検出コイルDC1,DC2の幅に相当し、W2は、その2倍の幅に相当する。
【0005】
図7(c−1)〜(c−3)の場合、即ち移動距離S=0.75W2〜1.5W2の間では、検出コイルの通過しない領域は生じないから、各検出コイルの幅の2倍に相当するW2の範囲について、漏れなくキズを検出することができる。
図7(c−4)の場合、即ち移動距離S=2.0W2の場合、領域E2は、検出コイルの軌跡が粗になり、軌跡が密の領域よりもキズの検出精度は低くなるから、領域E2を含まない上半分の領域を探傷に利用するのが望ましい。なお領域E1は、検出コイルが表記されていないが、検出コイルの回転開始時期に相当する領域であるため、検出コイルは通過しないが、半回転以降は、領域E2のようになる。また図7(c−4)において、領域E3は、検出コイルDC2が通る領域であり、領域E4は、検出コイルDC1が通る領域である。また領域E3と領域E4は、位置がY方へ2分の1回転分(180度)ずれている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−214202号公報
【特許文献2】特開2007−248169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6、図7の渦電流探傷プローブは、検出コイルが回転するため、被検査体の検査面が平面でない場合、例えば被検査体が円筒状、円柱状等の場合には、検出コイルの位置により検出コイルの底部と検査面との距離(リフトオフ)が変わるため、検出コイルの位置によってキズ信号の検出感度が相違する。
図8によりその検出感度の相違を説明する。
図8(a)は、円筒状の被検査体Tの周面に渦電流探傷プローブを設置した状態の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のX1部分の矢印方向の断面図であり、図8(c)は、図8(a)のX2部分の矢印方向の断面図である。
【0008】
図8(a)において、イの検出コイルDC1,DC2は、コイル軸が被検査体Tの管軸L1方向と直交する方向に停止し、ロの検出コイルDC1,DC2は、コイル軸が管軸L1方向と平行する方向に停止している。
図8(b)の検出コイルDC1,DC2の底面と被検査体Tの検査面の距離(リフトオフ)は、HX1であり、図8(c)の検出コイルDC1,DC2の底面中央部と被検査体Tの検査面の距離(リフトオフ)は、HX2であるとすると、HX1<HX2となる。即ち検出コイルDC1,DC2が、図8(a)のイの状態にあるとき、リフトオフは一番小さく、図8(a)のロの状態にあるとき、リフトオフは一番大きくなる。リフトオフが小さいと検出コイルDC1,DC2のキズ信号の検出感度は高くなるから、検出されるキズ信号の振幅は大きくなる。一方リフトオフが大きいと検出コイルDC1,DC2のキズ信号の検出感度は低くなるから、検出されるキズ信号の振幅は小さくなる。
【0009】
したがって被検査体が円筒状等のように検査面が平面でない場合、検出コイルの回転位置によってキズ信号の振幅が異なるから、振幅の小さいキズ信号は誤認することがあり、またキズ信号の振幅が大小異なると信号処理の支障になることがある。
本願発明は、検出コイルを回転させながら探傷する渦電流探傷プローブの前記問題点に鑑み、検出コイルのリフトオフによるキズ信号の検出感度偏差の小さい渦電流探傷方法及び渦電流探傷装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の渦電流探傷方法は、励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した渦電流探傷プローブを回転して、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷方法において、検出コイルの回転位置に応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整することを特徴とする。
請求項2に記載の渦電流探傷方法は、励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した渦電流探傷プローブを回転して、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷方法において、検出コイルの回転位置におけるリフトオフに応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整することを特徴とする。
請求項3に記載の渦電流探傷方法は、請求項1又は請求項2に記載の渦電流探傷方法において、前記被検査体は、円筒体又は円柱体であることを特徴とする。
請求項4に記載の渦電流探傷装置は、励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した回転可能な渦電流探傷プローブを備え、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷装置において、検出コイルの回転位置検出部、検出した回転位置に応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整する検出感度調整部を備えていることを特徴とする。
請求項5に記載の渦電流探傷装置は、励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した回転可能な渦電流探傷プローブを備え、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷装置において、検出コイルの回転位置におけるリフトオフを検出するリフトオフ検出部、検出したリフトに応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整する検出感度調整部を備えていることを特徴とする。
請求項6に記載の渦電流探傷装置は、請求項4又は請求項5に記載の渦電流探傷装置において、前記被検査体は、円筒体又は円柱体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した渦電流探傷プローブを回転して探傷するから、一個の渦電流探傷プローブにより全方向のキズを探傷することができ、かつ渦電流探傷プローブを移動することにより広範囲のキズを連続して探傷できる。
本願発明は、検出コイルの回転位置又はその回転位置のリフトオフを検出してキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整できるから、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を、略一定の検出感度で探傷できる。したがって探傷の際、キズ信号を誤認することがなく、またキズ信号の処理もし易くなる。
本願発明は、検出コイルの回転位置によってリフトオフを検出或いは推定できるから、リフトオフの検出が容易で、その検出装置が簡単になる。
本願発明は、検出コイルの回転位置におけるリフトオフを検出或いは計測し、そのリフトオフに応じて検出感度を調整するから、検出感度を精密に調整できる。
本願発明は、被検査体が円筒体であっても、略一定の検出感度で探傷できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図5により本願発明の実施例に係る渦電流探傷装置を説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例】
【0013】
図1は、本願発明の実施例に係る渦電流探傷プローブの構成を示す。
図1(a)は、渦電流探傷プローブの平面図、図1(b)は、図1(a)のX4部分の矢印方向の断面図、図1(c)は、図1(a)のX3部分の矢印方向の断面図である。なお励磁コイルと検出コイルの構成、配置は、図6、図7、図8の渦電流探傷プローブと同じである。
図1の渦電流探傷プローブは、励磁コイルEC1、検出コイルDC1からなる渦電流探傷プローブと励磁コイルEC2、検出コイルDC2からなる渦電流探傷プローブを、2個ディスクDSに取付けて1個の渦電流探傷プローブを構成している。励磁コイルEC1,EC2の形状は、パンケーキ状(円形)であり、検出コイルDC1,DC2の形状は、開口を有する四角形(ロ字状)である。励磁コイルEC1と検出コイルDC1は、両コイルのコイル面が直交するように(コイル軸も直交するように)配置し、励磁コイルEC1内に検出コイルDC1を配置してある。同様に励磁コイルEC2と検出コイルDC2は、両コイル面が直交するように(コイル軸も直交するように)配置し、励磁コイルEC2内に検出コイルDC2を配置してある。
【0014】
また励磁コイルEC1,EC2は、両コイルのコイル面がディスクDSの平面に対向するように配置し、検出コイルDC1,DC2は、コイル軸が平行でコイル面が管軸L1方向の同一平面に並ぶように配置してある。そしてディスクDSは、図1(c)のように、円筒状の被検査体Tの直径L2方向と直交するように設置してある。ディスクDSは、その中心軸P1を中心にモータ(図示せず)によって回転する。
なお励磁コイルEC1,EC2の形状は、パンケーキ状に限らず、楕円形、四角形であってもよい。また検出コイルDC1,DC2の形状は、四角形に限らず三角形、楕円形、円形であってもよい。また励磁コイルEC1,EC2は、楕円形や長方形の励磁コイル1個で形成し、その1個の励磁コイル内に検出コイルDC1,DC2を配置してもよい。その場合には、渦電流探傷プローブは、構成が簡単になる。また検出コイルDC1,DC2は、両コイルのコイル軸が交差するように配置してもよい。
【0015】
次に図2により、図1の渦電流探傷プローブの検出コイルの回転位置、リフトオフ及び検出感度の関係について説明する。
図2(a)のイ〜ホは、検出コイルDC1,DC2の回転位置(回転角度)を示し、被検査体Tの管軸L1方向に対する検出コイルDC1,DC2のコイル面の角度θが、θ=0度、45度、90度、135度、180度のときの回転位置を示す。また図2(b)は、図2(a)のX5方向の回転位置イ〜ホにおける側面図とリフトオフHを示し、図2(c)は、それらの回転位置におけるリフトオフとキズ信号の検出感度の大きさを示す。
【0016】
回転位置イ〜ホのリフトオフHと検出感度についてみると、検出コイルDC1,DC2の底面(検査面側)の中央部と検査面との距離(リフトオフ)は、イ、ホが最も小さくハが最も大きくなり、検出感度は、イ、ホが最も高くハが最も低くなり、ロ、二のリフトオフと検出感度は、イとハの中間の大きさになる。即ち検出コイルDC1,DC2のコイル面が被検査体Tの管軸L1方向と平行になるとき、リフトオフは最も小さく検出感度は最も高くなり、検出コイルDC1,DC2のコイル面が被検査体Tの管軸L1方向と直交するとき、リフトオフは最も大きく検出感度は最も低くなる。
【0017】
検出感度は、リフトオフによって変化し、リフトオフは、検出コイルDC1,DC2の回転位置(回転角度)によって変化する。即ち検出感度の変化は、リフトオフの変化に依存し、リフトオフの変化は、回転位置の変化に依存するから、回転位置の検出は、リフトオフの検出に相当する。したがって検出コイルDC1,DC2の回転位置を検出することによって、その位置のリフトオフを検出或いは推定することができ、検出感度の変化は、検出した回転位置に応じて調整することができる。また検出感度の変化は、各回転位置におけるリフトオフを計測し、その計測したリフトオフに応じてより精密に調整することができる。
またリフトオフは、検出コイルDC1,DC2と被検査体Tの検査面の距離であるから、被検査体Tの曲率によって変わる。
なお角度θは、検出コイルDC1,DC2の回転角度であり、検出コイルDC1,DC2及び励磁コイルEC1,EC2からなる渦電流探傷プローブの回転角度であり、その渦電流探傷プローブを取付けたディスクDSの回転角度でもある。
【0018】
キズ信号の検出感度の試験結果によると、図2(a)の回転位置イ、ホの検出感度は、ハの検出感度の2〜3倍になることが分かった。
試験の各種条件は、次の通りである。
渦電流探傷プローブの励磁コイルは、線径0.16mm、巻数180ターン、内径2.5mmのパンケーキ状のコイルからなり、検出コイルは、線径0.05mm、巻数120ターン、幅(励磁コイルの直径方向の幅)1.5mmの四角形(ロ字状)のコイルからなるものを用いた。2個の検出コイルの間隔(底部中央部の距離)は、8.4mmと14mmに設定して試験した。被試験体Tは、直径73mmの鋼管に長さ25mm、幅0.3mm、深さ0.5mmのキズを図2(a)の回転位置イ〜ニの方向に形成したものを用いた。またディスクDSは、5000rpmで回転し、被試験体Tは、管軸L1を中心に30rpmで回転して、被試験体Tの表面を周方向に探傷した。
【0019】
以上の試験結果から、キズ信号の検出感度は、回転位置イ、ホ(検出コイルDC1,DC2のコイル面が被検査体Tの管軸L1方向と平行になるとき)の検出感度を基準値に設定したとき、回転位置ハ(検出コイルDC1,DC2のコイル面が被検査体Tの管軸L1方向と直交するとき)の検出感度を2〜3倍に調整するか、又は回転位置ハの検出感度を基準値に設定したとき、回転位置イ、ホの検出感度を1/2〜1/3に調整する。そして回転位置イ、ホとハの間の検出感度は、基準値とその2〜3倍の間において又は基準値とその1/2〜1/3の間において直線的比率で調整すれば、実用上支障のない程度に検出感度偏差を小さくすることができる。即ち検出感度が最も大きい回転位置と検出感度が最も小さい回転位置について、一方の回転位置の検出感度を基準値にして両回転位置の検出感度が略同じになるように検出感度を調整するとともに、両回転位置の間の検出感度は、両回転位置の検出感度に基づいて直線的比率で調整すればよい。
【0020】
なお検出コイルの回転位置に対する検出感度の偏差は、被検査体の曲率によって変わるから、検出感度をより精密に調整したい場合は、被検査体の曲率と検出コイルの回転位置に対する検出感度の偏差との関係を表す曲率検出感度偏差特性を、メモリー等に記憶しておき、探傷開始前に被検査体の曲率に対応する曲率検出感度偏差特性を選定して検出感度調整部にその曲率検出感度偏差特性を設定するように構成してもよい。
上記例は、検出感度の基準値が最大検出感度又は最小検出感度の場合について説明したが、それら以外の検出感度基準値、例えば回転位置ロ(θ=45度)の検出感度を基準値としてもよい。その場合には、回転位置イ(θ=0度)の検出感度は、低くなるように調整し、回転位置ハ(θ=90度)の検出感度は、高くなるように調整する。
【0021】
図3は、検出コイルの回転位置及びリフトオフを検出する装置の構成を示す。
図3(a−1),(b−1)は、平面図、図3(a−2),(b−2)は、図3(a−1),(b−1)のX6方向の側面図である。
まず図3(a−1),(a−2)について説明する。
図3(a−1),(a−2)は、検出コイルの回転位置(回転角度)を検出する装置例を示す。なお図3(a−1)は、光検出器MD1〜MD4を省略してある。
ディスクDSには、検出コイルDC1,DC2のコイル面の並びの延長に反射鏡M1を取付けてあり、ディスクDSは、中心軸P1を中心に回転する。ディスクDSが回転すると、反射鏡M1もディスクDSとともに回転する。またディスクDSと別体の取付部材(図示しせず)には、4個の光検出器MD1〜MD4(MD4は図示せず)を、反射鏡M1の軌跡に沿って90度間隔で配置してある。光検出器MD1〜MD4の位置は、図2のθが0度、90度、180度、270度の位置に相当する。光検出器MD1〜MD4は、反射鏡M1が通過する度に位置信号を発生する。光検出器MD1〜MD4の位置信号により、例えば被検査体Tの管軸方向(図2のθ=0度)の基準位置からの検出コイルDC1,DC2の回転位置或いは回転角度を検出することができる。
【0022】
反射鏡M1の取付け位置は、図の位置に限らず、例えば反射鏡M1と45度離れたM2の位置に取付けてもよい。その場合ディスクDSが時計方向へ回転するときは、光検出器MD1〜MD4の位置信号を45度遅延させると、反射鏡M1に対する位置信号と同じになる。
図3(a−1),(a−2)の装置の場合、反射鏡M1の代わりに発光ダイオード等の光源を用いてもよい。
図3(a−1),(a−2)の装置の光検出器MD1〜MD4は、4個に限らず、例えば45度間隔で配置して個数を多くすることもできる。その場合には、検出コイルコイルDC1,DC2の回転位置をより精密に検出することができる。また検出コイルコイルDC1,DC2の回転位置をさらに精密に検出したい場合は、ディスクDSの回転軸に回転角センサ(ロータリーエンコーダ)を取付けてもよい。
図3(a−1),(a−2)の装置は、ディスクDSに取付けた反射鏡、光源等がそれらの検出器を通過するときの位置信号を検出するのみで検出コイルの回転位置(回転角度)を検出できるから、装置が簡単になる。
【0023】
次に図3(b−1),(b−2)について説明する。なお励磁コイル、検出コイルの符号は省略してある(図3(a−1),(a−2)と同じである)。また図3(b−1)は、送受光器LD11〜LD22を省略してある。
図3(b−1),(b−2)は、検出コイルDC1,DC2の底面の中央部と被検査体Tの検査面との距離(リフトオフ)Hを計測(検出)して検出する装置例を示す。
ディスクDSには、検出コイルDC1のコイル軸方向で励磁コイルEC1の外側に透光部LH11,LH12を形成し、検出コイルDC2のコイル軸方向で励磁コイルEC2の外側に透光部LH21,LH22を形成してある。ディスクDSは、中心軸P1を中心に回転する。透光部LH11,LH12には、送受光器LD11,LD12(LD12のみ図示)が対向し、透光部LH21,LH22には、送受光器LD21,LD22(LD22のみ図示)が対向している。4個の送受光器LD11〜LD22は、透光部LH11〜LH22に対向した状態でディスクDSとともに回転する。
【0024】
送受光器LD11〜LD22は、透光部LH11〜LH22から被検査体Tの検査面へ光を放射してその検査面からの反射波を受光して、検出コイルDC1,DC2の回転位置(回転角度)におけるリフトオフを計測する。検出コイルDC1のリフトオフは、送受光器LD11,LD12によって計測したリフトオフを平均して求め、検出コイルDC2のリフトオフは、送受光器LD21,LD22によって計測したリフトオフを平均して求める。
【0025】
図3(b−1),(b−2)の場合、ディスクDSと被検査体Tとの間に余裕があるときは、送受光器LD11,LD12を送光器にし、LD21,LD22を受光器にして、送光器から放射した光が検出コイルDC1,DC2の真下で反射するように構成してもよい。またリフトオフをさらに精密に検出或いは計測したい場合は、距離センサを用いてもよい。
図3(b−1),(b−2)の装置は、検出コイルの各回転位置におけるリフトオフを計測するから、各回転位置における検出感度を精密に調整することができる。
なおリフトオフの計測は、励磁コイルのインピーダンスの変化に基づいて計測することもできる。
【0026】
図4は、図1の渦電流探傷プローブを用いて円筒状の被検査体を探傷する場合の渦電流探傷プローブの移動と被検査体の回転を説明する図である。
図4(a)は、ディスクDSを中心軸P1を中心に矢印方向(時計方向)へ回転しながら、渦電流探傷プローブをY1方向へ移動して探傷する例である。図4(b)は、ディスクDSを時計方向へ回転しながら、渦電流探傷プローブをY1方向へ移動し、被検査体Tをその管軸を中心にY2方向へ回転させて探傷する例である。その場合被検査体Tを回転する代わりに渦電流探傷プローブを回転してもよい。
【0027】
図5は、図1の渦電流探傷プローブを用いた渦電流探傷装置のブロック図を示す。
図5(a)は、被検査体Tに設置した渦電流探傷プローブの平面図(図5(b)のX7部分の矢印方向の平面図(一部断面図))と渦電流探傷装置のブロック図を示し、図5(b)は、渦電流探傷プローブの側面図を示す。
ディスクDSには、直列接続した励磁コイルEC1,EC2、直列接続した検出コイルDC1,DC2,反射鏡M1を取付けてあり、ディスクDSは、回転軸21に取付けてある。回転軸21は、モータ23によって回転する。光検出器MD1,MD2,MD3,MD4は、取付部材22に取付けてあり、90度間隔で配置してある。光検出器の配置間隔は、90度に限らず、45度或いはさらに小さい角度に設定すれば回転位置をより精密に検出できる。
【0028】
励磁コイルEC1,EC2は、励磁電源部11から供給される励磁電流によって被検査体Tの検査面に渦電流を発生する。被検査体Tの検査面にキズがあると、渦電流に乱れが生じ、その渦電流の乱れによって検出コイルDC1,DC2に電圧が誘起する。検出コイルDC1,DC2の誘起電圧は、キズ信号発生部12へ供給される。キズ信号発生部12は、その誘起電圧に基づいてキズ信号を発生して振幅調整部(利得調整部)13へ供給する。
【0029】
光検出器MD1,MD2,MD3,MD4は、ディスクDSの反射鏡M1が通過する度に位置信号を発生して回転位置検出部(回転角度検出部)14へ供給する。回転位置検出部14は、位置信号に基づいて検出コイルDC1,DC2の回転位置(回転角度)を検出する。検出感度調整部15は、検出感度基準値(例えば最高検出感度)に対応する回転位置(例えば図2のθ=0度)と回転位置検出部14が検出した回転位置とに基づいて検出感度の調整量を求め、その検出感度調整量に相当する検出感度調整信号を発生する。振幅調整部13は、検出感度調整信号によってキズ信号の振幅を調整する。振幅調整部13のキズ信号の振幅は、検出コイルDC1,DC2の回転位置に関係なく略一定になる。
振幅調整部13のキズ信号は、キズ信号表示記憶部16に表示される。また必要に応じてキズ信号をメモリー等に記憶して保存する。
【0030】
なお検出コイルの回転位置に対する検出感度の偏差は、被検査体の曲率によって変わるから、被検査体の曲率と検出コイルの回転位置における検出感度偏差との関係を表す曲率検出感度偏差特性を、曲率検出感度記憶部17のメモリー等に記憶しておき、探傷開始前に被検査体の曲率に対応する曲率検出感度偏差特性を選定して検出感度調整部15に設定するように構成してもよい。その場合、被検査体の曲率を曲率検出感度記憶部17に入力すると、自動的に曲率検出感度偏差特性が選定されるように構成することもできる。
図5の渦電流探傷装置は、反射鏡と光検出器に代えて検出コイルの各回転位置におけるリフトオフを計測する装置(例えば図3(b−1),(b−2))を用いることもできる。その場合は、計測したリフトオフを回転位置検出部14に取込むように構成すればよい。
【0031】
前記実施例は、被検査体の形状が円筒状のものについて説明したが、円筒状体に限らず、楕円筒状体、円柱状体、楕円柱状体等の被検査体等、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面の距離(リフトオフ)が変わる被検査体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の実施例に係る渦電流探傷プローブの構成を示す。
【図2】図1の渦電流探傷プローブの検出コイルの回転位置、リフトオフ及び検出感度の関係を示す。
【図3】図1の渦電流探傷プローブの検出コイルの回転位置及びリフトオフを検出する装置の構成を示す。
【図4】図1の渦電流探傷プローブを用いて円筒状の被検査体を探傷する場合の渦電流探傷プローブの移動と被検査体の回転を説明する図である。
【図5】図1の渦電流探傷プローブを用いた渦電流探傷装置の構成を示す。
【図6】従来の検出コイルを回転して探傷する渦電流探傷プローブの構成を示す。
【図7】従来の検出コイルを回転させながら移動する渦電流探傷プローブの構成を示す。
【図8】図7の渦電流探傷プローブを用いて円筒状の被検査体を探傷するときのリフトオフを説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
EC1,EC2 励磁コイル
DC1,DC2 検出コイル
LH11〜LH22 透光部
LD11〜LD22 送受光器
H リフトオフ
M1 反射鏡
MD1〜MD4 光検出器
P1 中心軸
T 被検査体
11 励磁電源
12 キズ信号発生部
13 振幅調整部
14 回転位置検出部
15 検出感度調整部
16 キズ信号表示記憶部
17 曲率検出感度記憶部
21 回転軸
22 取付部材
23 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した渦電流探傷プローブを回転して、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷方法において、検出コイルの回転位置に応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項2】
励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した渦電流探傷プローブを回転して、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷方法において、検出コイルの回転位置におけるリフトオフに応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の渦電流探傷方法において、前記被検査体は、円筒体又は円柱体であることを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項4】
励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した回転可能な渦電流探傷プローブを備え、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷装置において、検出コイルの回転位置検出部、検出した回転位置に応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整する検出感度調整部を備えていることを特徴とする渦電流探傷装置。
【請求項5】
励磁コイル内に検出コイルを両コイルのコイル面が直交するように配置した回転可能な渦電流探傷プローブを備え、検出コイルの回転位置により検出コイルと検査面のリフトオフが変化する被検査体を探傷する渦電流探傷装置において、検出コイルの回転位置におけるリフトオフを検出するリフトオフ検出部、検出したリフトに応じてキズ信号の検出感度を検出感度基準値に調整する検出感度調整部を備えていることを特徴とする渦電流探傷装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の渦電流探傷装置において、前記被検査体は、円筒体又は円柱体であることを特徴とする渦電流探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−151555(P2010−151555A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328867(P2008−328867)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390002808)マークテック株式会社 (42)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】