説明

温度センサ及びこの温度センサを有する発振回路

【課題】電源電圧を低電圧とした場合でも、雑音を低減させることが可能な温度センサ及びこの温度センサを有する発振回路を提供することを目的とする。
【解決手段】電源電圧が供給される定電流源とアノードが接続されており、接地にカソードが接続された温度検出素子と、前記温度検出素子のアノードの電圧のレベルをシフトする温度特性を有したレベルシフト回路と、前記レベルシフト回路の出力が非反転入力端子と接続された非反転増幅回路と、を有する構成により実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度特性を有する温度検出素子を用いて温度を検出する温度センサ及びこの温度センサを有する発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、水晶振動子を用いた発振回路で生成される発振周波数を用いて通信を行う携帯機器等がある。通信を行う携帯機器等に内蔵される発振回路では、発振周波数に精度が要求されるが、水晶振動子の発振周波数は温度によって変化する。このため発振回路には温度センサが内蔵されており、温度と水晶振動子の特性とに基づき発振周波数を補正するのが一般的である。以下に従来の発振回路に内蔵される温度センサについて説明する。
【0003】
図6は、従来の温度センサの一例を説明するための図である。
【0004】
温度センサ10は、定電流源I1、ダイオードD1、ダイオードD2、非反転増幅回路11を有する。定電流源I1は、電源電圧Vccが供給されて定電流を生成する。ダイオードD1のアノードは定電流源I1と接続されており、ダイオードD1のカソードがダイオードD2のアノードと接続されている。ダイオードD2のカソードは接地されている。
【0005】
非反転増幅回路11は、アンプ12と、抵抗R1と、抵抗R2と、センター調整用電圧発生部13とを有する。アンプ12の非反転入力端子T1は、ダイオードD1のアノードと定電流源I1との接続点aと接続されている。アンプ12の反転入力端子T2の一端には抵抗R1の一端と抵抗R2の一端とが接続されている。抵抗R1の他端はアンプ12の出力端子Toと接続されている。抵抗R2の他端は、センター調整用電圧発生部13と接続されている。
【0006】
温度センサ10では、ダイオードD1、ダイオードD2は、Si(シリコン)ダイオードであり、−2mV/℃の温度特性を有する。温度センサ10は、ダイオードD1、ダイオードD2によりセンサ部を構成し、点aの電圧を非反転増幅回路11で目的の電圧へ増幅して所定の温度勾配を得る。
【0007】
例えば温度センサ10から出力される電圧(点bの電圧)の温度勾配を10mV/℃とする場合について説明する。温度センサ10では、ダイオードD1、ダイオードD2を有するため、接続点aの電位は常温時に約1.4Vであり、−4mV/℃の温度特性を有する。点bの電圧の温度勾配を10mV/℃とするためには、アンプ12の増幅率を2.5倍とすれば良い。
【0008】
図6に示すようにダイオードの温度特性を用いて温度を検出する技術は、例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−124632号公報
【特許文献2】特開2007−318028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電池駆動の携帯機器等では低消費電力化が求められおり、電源電圧を低電圧とする傾向にある。例えば図6に示す温度センサ10の電源電圧Vccを低電圧化して1.7Vとした場合について説明する。
【0011】
図6の温度センサ10において−30℃〜85℃の温度変動を考えた場合、接続点aの電位は1.62〜1.16Vの範囲で変化する。この場合接続点aの電圧が電源電圧Vccと近くなるため、センター調整用電圧発生部13により接続点aの電圧レベルをシフトするためのレベルシフト電圧を与える必要がある。
【0012】
例えば出力の常温時最適動作点として点bの電圧を0.85Vに設定した場合、抵抗R1で0.55Vのレベルシフトを行うことになるため、センター調整用電圧発生部13において1.4+0.37=1.73[V]のセンター調整用電圧Voを発生させる必要がある。この電圧は、電源電圧Vccを超えるため、温度センサ10は電源電圧Vccを低電圧化した場合には動作しない。
【0013】
この場合、センサ部を構成するダイオードを1つとする構成とすることが考えられる。しかしながらセンサ部を構成するダイオードを減らすと温度に対する感度が低下するため、後段のアンプ12のゲインを上げなくてはならず、出力の雑音が増大する。出力の雑音Vntは、接続点aの雑音をVnl、センター調整用電圧発生部13で発生される電圧の雑音をVn2、アンプ12自体の雑音をVn3、アンプ12のゲインをAとしたとき、以下の式(1)で示される。
【0014】
Vnt=√[(A×Vnl)+{(A−1)×Vn2}+Vn3] 式(1)
温度センサ10の出力の雑音が増大すると、温度センサ10が内蔵さたれ発振回路等では温度に基づく発振周波数の補正を正確に行えない。このため温度センサ10が内蔵された発振回路を用いた携帯機器等では、発振周波数による正常な通信が行えなくなる。
【0015】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべく成されたものであり、電源電圧を低電圧とした場合でも、雑音を低減させることが可能な温度センサ及びこの温度センサを有する発振回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成すべく、以下の如き構成を採用した。
【0017】
本発明の温度センサは、電源電圧(Vcc)が供給される第一の定電流源(I10)とアノードが接続され、カソードが接地された温度検出素子(D10、D20)と、
前記温度検出素子(D10、D20)のアノードの電圧のレベルをシフトする温度特性を有したレベルシフト回路(211)と、
前記レベルシフト回路(211)の出力電圧を増幅する非反転増幅回路(220)と、を有する温度センサ(200)であって、
前記レベルシフト回路(211)は、
コレクタとベースとの接続点が、前記電源電圧(Vcc)が供給される第二の定電流源(I20)と接続されておりエミッタが接地されている第一のトランジスタ(M1)と、
前記第一のトランジスタ(M1)のベースとベースが接続された第二のトランジスタ(M2)とからなるカレントミラー回路と、
前記第二のトランジスタ(M2)のコレクタと前記温度検出素子(D10、D20)のアノードとの間に接続された第一の抵抗(R30)と、
前記第二のトランジスタ(M2)のエミッタと接地との間に接続された第二の抵抗(R40)と、を有し、
前記第一の抵抗(R30)と前記第二のトランジスタ(M2)のコレクタとの接続点が前記非反転増幅回路(220)の非反転入力端子(T10)と接続されている構成とした。
【0018】
また本発明の温度センサにおいて、前記温度検出素子(D10、D20)は、
第一のダイオード(D10)と第二のダイオード(D20)とが接続されて構成されており、
前記第一のダイオード(D10)のアノードが前記第一の定電流源(I10)に接続されており、前記第二のダイオード(D20)のカソードが接地に接続されている構成とした。
【0019】
また本発明の温度センサは、前記電源電圧(Vcc)と接地との間に接続されており、第一の分圧抵抗(R50)と第二の分圧抵抗(R60)とが直列接続された分圧回路(250)を有し、
前記第一の定電流源(I10)は、
ソースが前記電源電圧(Vcc)に接続されており、ゲートとドレインとが接続された第三のトランジスタ(M11)と、
前記第三のトランジスタ(M11)のゲートとゲートが接続されており、ドレインが前記温度検出素子(D10)のアノードと接続された第四のトランジスタ(M12)とを含むカレントミラー回路で構成されており、
前記第四のトランジスタ(M12)のソースは、前記第一の分圧抵抗(R50)と前記第二の分圧抵抗(R60)との接続点に接続されている構成とした。
【0020】
また本発明の温度センサは、前記第二のトランジスタ(M4)を温度検出素子として用い、
前記電源電圧(Vcc)と接地との間に接続されており、前記電源電圧(Vcc)を分圧する第三の分圧抵抗(R51)と第四の分圧抵抗(R52)とが直列接続された分圧回路と、
前記第二のトランジスタ(M4)のベースにエミッタが接続されており、前記第三の分圧抵抗(R51)と前記第四の分圧抵抗(R52)との接続点にベースが接続された第五のトランジスタ(M3)と、を有する構成としても良い。
【0021】
本発明は、振動子を振動させて所定の発振周波数を出力する発振器(120)と、前記発振器(120)の使用温度を検出する温度センサ(200)と、を有する発振回路(100)であって、
前記温度センサ(200)は、
電源電圧(Vcc)が供給される第一の定電流源(I10)とアノードが接続され、接地にカソードが接続された温度検出素子(D10、D20)と、
前記温度検出素子(D10、D20)のアノードの電圧のレベルをシフトする温度特性を有したレベルシフト回路(211)と、
前記レベルシフト回路(211)の出力電圧を増幅する非反転増幅回路(220)と、を有し、
前記レベルシフト回路(211)は、
コレクタとベースとの接続点が、前記電源電圧(Vcc)が供給される第二の電流源(I20)と接続されておりエミッタが接地されている第一のトランジスタ(M1)と、
前記第一のトランジスタ(M1)のベースとベースが接続された第二のトランジスタ(M2)とからなるカレントミラー回路と、
前記第二のトランジスタ(M2)のコレクタと前記温度検出素子(D10、D20)のアノードとの間に接続された第一の抵抗(R30)と、
前記第二のトランジスタ(M2)のエミッタと接地との間に接続された第二の抵抗(R40)と、を有し、
前記第一の抵抗(R30)と前記第二のトランジスタ(M2)のコレクタとの接続点が前記非反転増幅回路(220)の非反転入力端子(T10)と接続されている構成とした。
【0022】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電源電圧を低電圧とした場合でも、雑音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第一の実施形態の発振回路100を説明するための図である。
【図2】第一の実施形態の温度センサ200を説明する図である。
【図3】第二の実施形態の温度センサ200Aを説明する図である。
【図4】第一の実施形態の温度センサ200を詳細に説明するための図である。
【図5】第三の実施形態の温度センサ200Bを説明するための図である。
【図6】従来の温度センサの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図1は、第一の実施形態の発振回路100を説明するための図である。
【0026】
本実施形態の発振回路100は、レギュレータ110、発振器120、バッファ140、温度センサ200を有する。また発振回路100は、端子Tv、端子XT1、端子XT2、端子Tosc、端子Ttemを有する。端子Tvは、発振回路100に電源電圧Vccを供給するための端子である。端子XT1、端子XT2は、水晶振動子を接続するための端子である。端子Toscは、発振周波数が出力される端子である。端子Ttemは、温度センサ200の出力を発振回路100の外部へ出力するための端子である。
【0027】
本実施形態の発振回路100は、温度センサ200を用いて発振回路100の温度を検出する。検出された温度は端子Toscから出力される発振周波数の補正に用いられる。発振周波数の補正は、発振回路100の外部で行っても良いし内部で行っても良い。以下に説明する本実施形態では、発振周波数の補正を発振回路100の外部で行うものとして説明する。尚、発振回路100の内部で発振周波数の補正を行う場合には、温度補正手段が設けられていることが前提となる。
【0028】
本実施形態の発振回路100において、レギュレータ110は、端子Tvから供給される電源電圧Vccから基準電圧Vrefを生成して出力する。基準電圧Vrefとは、例えば1.6Vである。尚図示していないが、レギュレータ110で生成された電圧は、発振回路100の有する各回路へ供給される。
【0029】
発振器120は、端子XT1と端子XT2とにより図示しない水晶振動子と接続されている。発振器120から出力される周波数は、バッファ140を介して端子Toscから出力される。
【0030】
温度センサ200は、センサ部210、アンプ220、センター調整用電圧発生部230、抵抗R10、抵抗R20を有する。センサ部210は、発振回路100内の温度に対応した電圧を出力する。アンプ220は、センサ部210から出力された電圧信号を増幅する。センター調整用電圧発生部230は、アンプ220から出力される電圧信号のセンターを調整するための電圧を発生させる。
【0031】
以下に本実施形態の温度センサ200について説明する。図2は、第一の実施形態の温度センサ200を説明する図である。
【0032】
本実施形態の温度センサ200のセンサ部210は、ダイオードD10、ダイオードD20、定電流源I10、レベルシフト回路211を有する。レベルシフト回路211は、定電流源I20、トランジスタM1、トランジスタM2、抵抗R30、抵抗R40を有する。トランジスタM1、トランジスタM2は、npn型バイポーラトランジスタである。
【0033】
定電流源I10は、電源電圧Vccが供給されており、定電流をダイオードD10、ダイオードD20へ供給する。ダイオードD10のアノードは定電流源I10と接続されている。ダイオードD10のカソードは、ダイオードD20のアノードに接続されている。ダイオードD20のカソードは接地(グランドGND)されている。
【0034】
レベルシフト回路211は、トランジスタM1とトランジスタM2とにより構成されたカレントミラー回路を含む。トランジスタM1は、コレクタとベースとが接続されている。トランジスタM1のコレクタとベースとの接続点は、定電流源I20へ接続されている。トランジスタM1のエミッタは接地されている。トランジスタM1のベースは、トランジスタM2のベースと接続されている。
【0035】
トランジスタM2のコレクタには抵抗R30の一端が接続されている。抵抗R30の一端とトランジスタM2のコレクタとの接続点を点Aと呼ぶ。抵抗R30の他端はダイオードD10のアノードと接続されている。抵抗R30の他端とダイオードD10のアノードとの接続点を点Bと呼ぶ。トランジスタM2のエミッタには抵抗R40の一端が接続されている。抵抗R40の他端は接地されている。
【0036】
点Aは、アンプ220の非反転入力端子T10と接続されている。アンプ220の反転入力端子T20は、抵抗R10の一端と抵抗R20の一端とに接続されている。抵抗R10の他端は、アンプ220の出力端子T30と接続されている。出力端子T30は、発振回路100の有する端子Ttemと接続されており、アンプ220の出力を発振回路100の外部へ出力する。
【0037】
抵抗R20の他端は、センター調整用電圧発生部230と接続されている。本実施形態では、センター調整用電圧発生部230は、電源電圧Vccが供給されており、電源電圧Vccから点Aのレベルシフト用電圧を生成する。本実施形態のセンター調整用電圧発生部230は、例えばDAC(Digital to Analog Converter)等により実現される。
【0038】
本実施形態では、ダイオードD10のアノードの電圧である点Bの電圧を、トランジスタM1及びトランジスタM2のカレントミラー比で生成される電流と抵抗R30との積によって、点Bの電圧のレベルをシフトする。レベルシフトされた電圧である点Aの電圧は、アンプ220の非反転入力端子T10へ供給される。
【0039】
トランジスタM1のベース-エミッタ間電圧をVBE1、トランジスタM2のベース-エミッタ間電圧をVBE2、トランジスタM1に流れる電流をI1、トランジスタM2に流れる電流をI2とすると、抵抗R40の両端にはVBE1とVBE2の差電圧が発生する。
【0040】
(R40)=ΔVBE=VBE1−VBE2=Vln(I1/I2) 式(2)
この式(2)を温度Tで微分したものが抵抗R40の両端電圧温特であるので、
∂(ΔVBE)/∂T=V/T×ln(I1/I2) 式(3)
となり、正の温度特性を有する。抵抗R30の電圧降下は、
R30=(R30/R40)ΔVBE 式(4)
であるから、抵抗R30によるレベルシフト量は正の温度特性を有することになる。
【0041】
これに対し本実施形態のダイオードD10及びダイオードD20の温度特性はそれぞれ−2mV/℃であるから、点Bの温度傾斜は−4mV/℃の負の温度特性を有する。これに対し、抵抗R30の電圧降下は前述の通り正の温度特性を有する。よって本実施形態は点Aの電圧の温度傾斜は、−4mV/℃よりも大きくなり、温度に対する感度が向上する。
【0042】
このように本実施形態の温度センサ200では、アンプ220の非反転入力端子T10に入力される電圧を点Aの電圧とした。この構成により、点Aの温度感度が点Bの温度感度より高くなるため、アンプ220の増幅率を低下させることができる。
【0043】
よって本実施形態では、例えばアンプ220の出力の常温時最適動作点として、アンプ220の出力電圧である点Cの電圧を0.85Vとしたとき、センター調整用電圧発生部230により発生させる電圧V0は1.73[V]よりも低くて良く、電源電圧Vccを低電圧の1.7Vとした場合にも動作可能となる。また本実施形態では、センター調整用電圧発生部230で発生させるセンター調整用電圧Voが低くて良いため、センター調整用電圧発生部230において発生する雑音を低減させることができる。この結果、式(1)で示される第2項のノイズが低減され、且つアンプ220の増幅率が低減出来る事から、C点のノイズ量をさらに低減する事ができる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態によれば、電源電圧を低電圧とした場合でも、雑音を低減させることができる。
【0045】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態では、トランジスタの温度特性を用いて温度検出を行う点が第一の実施形態と相違する。よって以下の説明では第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0046】
図3は、第二の実施形態の温度センサ200Aを説明する図である。本実施形態の温度センサ200Aのセンサ部210Aでは、トランジスタM3のベース−エミッタ間電圧VBE3及びトランジスタM4のベース−エミッタ間電圧VBE4の有する温度特性に基づき温度検出を行う。また本実施形態のセンサ部210Aにおいて、トランジスタM4は増幅段としても機能する。
【0047】
本実施形態のセンサ部210Aは、抵抗R51〜抵抗R54、トランジスタM3、トランジスタM4を有する。トランジスタM3とトランジスタM4は、npn型バイポーラトランジスタである。
【0048】
抵抗R51の一端には電源電圧Vccが印加されている。抵抗R51の他端は抵抗R52の一端と接続されている。抵抗R52の他端は接地されている。以下の説明では、抵抗R51と抵抗R52との接続点を点Dと呼ぶ。トランジスタM3のベースは、点Dと接続されている。トランジスタM3のコレクタには電源電圧Vccが印加されている。トランジスタM3のエミッタは、電流源I30を介して接地されている。
【0049】
抵抗R53の一端には電源電圧Vccが印加されている。抵抗R53の他端は、トランジスタM4のコレクタと接続されている。トランジスタM4のベースは、トランジスタM3のエミッタと接続されている。トランジスタM4のエミッタは、抵抗R54の一端と接続されている。抵抗R54の他端は接地されている。以下の説明では、トランジスタM4のコレクタと抵抗R53の他端との接続点を点Eと呼ぶ。点Eは、アンプ220の非反転入力端子T10と接続されている。
【0050】
本実施形態では、電流源I30によりトランジスタM3のコレクタ電流が決定され、トランジスタM3のベース−エミッタ間電圧VBE3が決まる。点Dの抵抗分割電位からVBE3低下した電圧が、トランジスタM4のベース−エミッタ間電圧VBE4と抵抗R54とに印加される事で、トランジスタM4のコレクタ電流が決定される。ここで決まったトランジスタM4のコレクタ電流により抵抗R54の電圧降下が発生し、点Eの電圧が決定される。
【0051】
ここでベース−エミッタ間電圧VBE3及びベース−エミッタ間電圧VBE4とは第一の実施形態で接続したダイオードD10及びダイオードD20と同様の温度特性を有する。このとき、トランジスタM3及びトランジスタM4のベースーエミッタ間電圧が負の温特を持つため、抵抗R54とトランジスタM4の接続点では、正の温特を持つ電圧を生じる。またトランジスタM4は反転増幅器として働く為、エミッタの電圧はコレクタに反転増幅される。よって点Eの電圧は、第一の実施形態の点Aと同様の温度特性を有することになる。
【0052】
よって本実施形態では、温度特性を有するベース−エミッタ間電圧VBE3+VBE4が−R53/R54倍された電圧を点Eの電圧として取り出すことができる。また本実施形態では、抵抗R51の値と抵抗R52の値とにより点Dの電圧を設定することができる。このため本実施形態では、点Dの電圧を調整することでアンプ220の入力のバイアス点を任意に設定することができる。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態のセンサ部210Aでは、温度特性を有する電圧を増幅させることができ、且つアンプ220の入力のバイアス点を調整できるため、レベルシフト回路が不要となり、レベルシフト回路に起因する雑音をなくすことができる。よって本実施形態の温度センサ200Aは、電源電圧を低電圧とした場合でも、雑音を低減させることができる。
【0054】
(第三の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第三の実施形態について説明する。本発明の第三の実施形態は、第一の実施形態を改良したものである。以下の本実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し説明を省略する。
【0055】
本実施形態の説明に先だち、図4を参照して第一の実施形態で説明した温度センサ200をさらに詳細に説明する。
【0056】
図4は、第一の実施形態の温度センサ200を詳細に説明するための図である。温度センサ200では、電流源I20、アンプ220にはレギュレータ110で生成された基準電圧Vrefが供給され、温度検出素子であるダイオードD10及びダイオードD20には電源電圧Vccが供給される。
【0057】
電源電圧VccがダイオードD10及びダイオードD20に供給される理由は、点Bの電圧変動範囲を例えば1.16V〜1.62Vである場合に、ダイオードD10及びダイオードD20に流す定電流を生成するために基準電圧Vref以上の電圧が必要となるからである。
【0058】
温度センサ200において、電流源I20は、抵抗R21で構成される。電流源I10は、トランジスタM11、トランジスタM12、トランジスタM13により構成される。ダイオードD10はトランジスタM14、ダイオードD20はトランジスタM15により構成される。アンプ220に電流を供給するための電流源I40は、トランジスタM16、トランジスタM17により構成される。アンプ220は、トランジスタM21〜トランジスタM27、コンデンサC1により構成される。
【0059】
温度センサ200において、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM13、トランジスタM14、トランジスタM15、トランジスタM17、トランジスタM25、トランジスタM26、トランジスタM27はnpn型バイポーラトランジスタである。トランジスタM11、トランジスタM12、トランジスタM16、トランジスタM21、トランジスタM22、トランジスタM23、トランジスタM24は、pチャンネルの電界効果型トランジスタである。
【0060】
電流源I20は、基準電圧Vrefから定電流を生成している。電流源I10は、電源電圧Vccから定電流を生成している。
【0061】
電流源I10において、トランジスタM11のゲートは、トランジスタM12のゲート及びトランジスタM11のドレインと接続されており、カレントミラー回路を構成している。トランジスタM11のソース及びトランジスタM12のソートには電源電圧Vccが印加されている。トランジスタM11のドレインは、トランジスタM13を介して接地されている。
【0062】
トランジスタM12のドレインは、ダイオードD10を構成するトランジスタM14のコレクタと接続されている。トランジスタM14のコレクタは、トランジスタM14のベースと接続されている。トランジスタM14のエミッタは、ダイオードD20を構成するトランジスタM15のコレクタに接続されている。トランジスタM15のコレクタはトランジスタM15のベースと接続されており、トランジスタM15のエミッタは接地されている。
【0063】
トランジスタM14のコレクタと抵抗R30の一端との接続点が、第一の実施形態で説明した点Bとなる。抵抗R30の他端はトランジスタM2のコレクタと接続されている。トランジスタM2のベースは、トランジスタM1のベースと接続されており、トランジスタM2のエミッタは、抵抗R40の一端と接続されている。抵抗R40の他端は接地されている。
【0064】
電流源I40では、トランジスタM16のソースに基準電圧Vrefが印加されている。またトランジスタM16のゲートとドレインは接続されており、トランジスタM16のドレインはトランジスタM17を介して接地している。
【0065】
トランジスタM16のゲートは、アンプ220を構成するトランジスタM21及びトランジスタM22のゲートと接続されており、アンプ220へ定電流を供給する。
【0066】
アンプ220において、トランジスタM21のソースとトランジスタM22のソースには、基準電圧Vrefが供給されている。トランジスタM21のドレインは、トランジスタM23及びトランジスタM24のソースと接続されている。トランジスタM22のドレインは、アンプ220の出力端子T30と接続されており、抵抗R10の一端に接続されている。
【0067】
トランジスタM23のゲートは、アンプ220の非反転入力端子T10であり、点Aと接続されている。トランジスタM23のドレインは、トランジスタM25のコレクタと接続されている。またトランジスタM23のドレインとトランジスタM25のコレクタとの接続点は、トランジスタM27のベースと接続されている。
【0068】
トランジスタM25のベースは、トランジスタM26のベースとトランジスタM26のコレクタと接続されている。トランジスタM25のエミッとトランジスタM26のエミッタとは接地されている。トランジスタM26のコレクタは、トランジスタM24のドレインと接続されている。トランジスタM24のゲートは、アンプ220の反転入力端子T20であり、抵抗R10の他端と抵抗R20の一端とに接続されている。トランジスタM27のコレクタとトランジスタM27のベースとは、コンデンサC1を介して接続されており、トランジスタM27のエミッタは接地されている。
【0069】
ところで電源電圧Vccの電圧は、例えば発振回路100を用いる携帯機器等の電池電圧の変動等により変動する。温度センサ200では、定電流源I10を構成するトランジスタM12には電源電圧Vccが供給されている。このためダイオードD10及びダイオードD20に供給される電流は、電源電圧Vccの変動から生じるトランジスタM12のチャネル長変動効果の影響により変動する。よって点Bの電圧は、電源電圧Vccの変動に依存することになり、結果として温度センサ200の出力も電源電圧Vccの電圧変動に依存する。
【0070】
本実施形態では、電源電圧Vccの電圧変動の影響を軽減し、より高精度に温度検出を行うことができる。
【0071】
図5は、第三の実施形態の温度センサ200Bを説明するための図である。本実施形態の温度センサ200Bは、電源電圧Vccの電圧変動を補正するための分圧回路250を有する点のみ、図4で説明した温度センサ200と相違する。以下に分圧回路250について説明する。
【0072】
分圧回路250は、抵抗R50と抵抗R60とにより構成される。抵抗R50と抵抗R60は、電源電圧Vccと接地との間に直列に接続されており、電源電圧Vccを分圧する分圧抵抗である。抵抗R50と抵抗R60との接続点Fには、トランジスタM12のソースが接続されている。
【0073】
本実施形態では、分圧回路250を設けることにより、接続点Fの電圧を電源電圧Vccの電圧変動を相殺するように変動させ、電源電圧Vccの電圧変動による影響を補正することができる。
【0074】
本実施形態の分圧回路250では、抵抗R50の両端に数mVの電圧降下を持たせた。この電圧降下は、電源電圧Vccの電圧変動に対して正の傾斜を持つため、例えば電源電圧Vccが上昇した場合、トランジスタM11に流れる電流よりもトランジスタM12に流れる電流を減少させる効果を有する。よって例えば電源電圧Vccの電圧が上昇した場合には、トランジスタM14、トランジスタM15に流れる電流は若干減少し、温度センサ200Bの出力電圧が電源電圧Vccの電圧変動の影響で上昇することを抑制できる。
【0075】
さらに本実施形態の分圧回路250は、2つの抵抗を直列に接続しただけの簡易な構成であり、抵抗R50及び抵抗R60の抵抗値の設定は任意に行うことができる。したがって電源電圧Vccの電圧変動の大きさに合わせて、容易に抵抗値を設定することができる。
また本実施形態の分圧回路250は、温度特性を有していない抵抗により構成されるため、温度センサ200Bの出力電圧に影響を与えることはない。
【0076】
このように本実施形態では、電源電圧Vccの電圧変動を低減させることで高精度の温度検出を行うことができる。
【0077】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0078】
100 発振回路
110 レギュレータ
120 発振器
200、200A、200B 温度センサ
210、210A センサ部
220 アンプ
230 センター調整用電圧発生部
250 分圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が供給される第一の定電流源とアノードが接続され、カソードが接地された温度検出素子と、
前記温度検出素子のアノードの電圧のレベルをシフトする温度特性を有したレベルシフト回路と、
前記レベルシフト回路の出力電圧を増幅する非反転増幅回路と、を有する温度センサであって、
前記レベルシフト回路は、
コレクタとベースとの接続点が、前記電源電圧が供給される第二の電流源と接続されておりエミッタが接地されている第一のトランジスタと、
前記第一のトランジスタのベースとベースが接続された第二のトランジスタとからなるカレントミラー回路と、
前記第二のトランジスタのコレクタと前記温度検出素子のアノードとの間に接続された第一の抵抗と、
前記第二のトランジスタのエミッタと接地との間に接続された第二の抵抗と、を有し、
前記 第一の抵抗と前記第二のトランジスタのコレクタとの接続点が前記非反転増幅回路の非反転入力端子と接続されている温度センサ。
【請求項2】
前記温度検出素子は、
第一のダイオードと第二のダイオードとが接続されて構成されており、
前記第一のダイオードのアノードが前記第一の定電流源に接続されており、前記第二のダイオードのカソードが接地に接続されている請求項1記載の温度センサ。
【請求項3】
前記電源電圧と接地との間に接続されており、第一の分圧抵抗と第二の分圧抵抗とが直列接続された分圧回路を有し、
前記第一の定電流源は、
ソースが前記電源電圧に接続されており、ゲートとドレインとが接続された第三のトランジスタと、
前記第三のトランジスタのゲートとゲートが接続されており、ドレインが前記温度検出素子のアノードと接続された第四のトランジスタとを含むカレントミラー回路で構成されており、
前記第四のトランジスタのソースは、前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗との接続点に接続されている請求項1又は2記載の温度センサ。
【請求項4】
前記第二のトランジスタを温度検出素子として用い、
前記電源電圧と接地との間に接続されており、前記電源電圧を分圧する第三の分圧抵抗と第四の分圧抵抗とが直列接続された分圧回路と、
前記第二のトランジスタのベースにエミッタが接続されており、前記第三の分圧抵抗と前記第四の分圧抵抗との接続点にベースが接続された第五のトランジスタと、を有する請求項1記載の温度センサ。
【請求項5】
振動子を振動させて所定の発振周波数を出力する発振器と、前記発振器の使用温度を検出する温度センサと、を有する発振回路であって、
前記温度センサは、
電源電圧が供給される第一の定電流源とアノードが接続され、接地にカソードが接続された温度検出素子と、
前記温度検出素子のアノードの電圧のレベルをシフトする温度特性を有したレベルシフト回路と、
前記レベルシフト回路の出力電圧を増幅する非反転増幅回路と、を有し、
前記レベルシフト回路は、
コレクタとベースとの接続点が、前記電源電圧が供給される第二の電流源と接続されておりエミッタが接地されている第一のトランジスタと、
前記第一のトランジスタのベースとベースが接続された第二のトランジスタとからなるカレントミラー回路と、
前記第二のトランジスタのコレクタと前記温度検出素子のアノードとの間に接続された第一の抵抗と、
前記第二のトランジスタのエミッタと接地との間に接続された第二の抵抗と、を有し、
前記第一の抵抗と前記第二のトランジスタのコレクタとの接続点が前記非反転増幅回路の非反転入力端子と接続されている発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−203978(P2010−203978A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51182(P2009−51182)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】