説明

温水洗浄便座

【課題】便座暖房を温水で行い、連続する温水使用でも快適な温水洗浄便座の提供。
【解決手段】温水タンク21と、局部洗浄手段31と、便座筐体11とを有し、温水タンク21は下方から加圧用タンク22にて加圧されることで、概ね隙間なく温水が充填され且つ便座筐体11の着座面側に内側から接することができる。つまり、便座本体の空洞内に温水タンク11を着座面側に接するように配設しており、常に着座面側に押しつけているので、温水の使用によっても常に温水タンク11は隙間なく充填されることになり、着座面側に接する部分にも温水が充填されて着座面に温水の熱を伝熱可能な状態に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄便座に関し、特に便座の着座面を快適な温度で保つことができる温水洗浄便座に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄機能を有する便座は洗浄水を洗浄ノズルから噴射して局部などを洗浄するものである。洗浄水は直接人体に接触するので必要に応じて温水を用いている。温水の供給方法としては予め温水を温水タンク内に貯留する貯湯タンク式と、温水が必要なときに洗浄水を加熱して温水にする瞬間湯沸式とがある。
【0003】
ここで、貯湯タンク式の温水洗浄便座では温水タンクの大きさがある程度必要なので温水タンクを配置する位置が問題になる。従来技術としては便座本体内に温水タンクを配置して温水タンクからの熱にて便座暖房手段を兼ねる形態が開示されている(特許文献1)。
【0004】
本願出願人も便座本体と温水タンクとを一体化した温水洗浄便座を開示しているが、温水タンクによって便座の暖房を行うものではない(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−190042号公報
【特許文献2】特開2005−213875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示された温水洗浄便座は給水側から冷たい水が温水タンク内に常時供給されており、温水の使用量によっては加熱が間に合わずに便座表面が冷たくなるおそれがある。洗浄水として温水を用いるときには温水タンク内への給水を停止することで、この問題を解決することができるが、給水無しに連続して温水を用いることで温水タンク内の水位が低下して便座の着座面側に接しなくなって効果的な暖房を行うことができない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑み完成されたものであり、便座本体の内部に貯留した温水を用いて便座暖房を行う場合に、連続して温水を使用しても便座の着座面の暖房を効果的に継続できる温水洗浄便座を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の温水洗浄便座は、内部に温水を貯留する貯湯手段と、前記貯湯手段から供給される温水で局部を洗浄する局部洗浄手段と、内部に空洞をもつ便座本体と、を有する温水洗浄便座であって、
前記貯湯手段は、概ね隙間なく前記温水が充填されるように内容物の体積に応じて容積が変化でき且つ着座面側に内側から接するように前記便座本体の前記空洞内に配設された温水タンクをもつことを特徴とする。
【0008】
つまり、便座本体の空洞内で温水を貯留する温水タンクとして、着座面側に接するように配設されており、貯留する温水の量に応じて内部の容積を変化可能な温水タンクを採用することで、温水の使用によっても常に温水タンクは隙間なく充填されることになり、着座面側に接する部分にも温水が充填されて着座面に温水の熱を伝熱可能な状態に保つことができる。
【0009】
ここで、前記温水タンクは内部の温水の圧力により伸長可能な弾性体から構成される弾性壁体をもつことが望ましい。また、前記温水タンクは内部への温水の出入りにより変形可能な可変壁体をもつことが望ましい。両者共に内部の温水が使用によって減少したときに温水タンクが小さくなって常に隙間の無い状態を保つことができる。特に、温水が空の時の容積が小さく常に温水に対して加圧した状態になる弾性体壁体を採用すると、ポンプなどを採用しなくても温水タンク内の温水を簡単に外部に供給することができる。
【0010】
そして、前記貯湯手段は前記便座本体の前記空洞内に配設され且つ前記温水タンクを下方より上方に向けて付勢する付勢手段をもつことが望ましい。常に温水に対して加圧した状態にすることで、ポンプなどを採用しなくても温水タンク内の温水を簡単に外部に供給することができる。
【0011】
また、前記貯湯手段は、内容物の体積に応じて容積が変化でき且つ前記便座本体の前記空洞内における前記温水タンクの下方に配設され、前記温水タンクと組み合わさって前記便座本体の前記空洞を概ね隙間なく充填できるように内部に水を貯留する加圧用タンクと、
前記温水タンクからの温水の流出に応じて前記加圧用タンクの内部に水を供給し、必要に応じて該加圧用タンク内の水を該温水タンクに移すタンク制御手段と、をもつものが望ましい。また、本構成を採用する場合には、加圧用タンクへの水の充填を制御することで常に温水タンクを着座面側に接することができるので、温水タンクとして空洞の内側から常に着座面側に接するように固定・配設されていないものを採用することも可能である。
【0012】
更に、前記便座本体の前記空洞内に外気を導入するファンを有し、前記便座本体はその外部と前記空洞の内部とを連通する連通口をもつ構成を採用することができる。温水タンクは着座面側に接しているので、外気を導入して温風を生成しても、着座面の温度低下は極力避けることが可能になる。
【0013】
特に、便座本体に使用者が着座したときに使用者の大腿部や局部に向けて空気が流出するような場所、方向に連通口を形成することが望ましい。大腿部に向けて温風を吹き出すことで大腿部を温めることができる。局部に向けて温風を吹き出すことで局部洗浄後の乾燥を行うことができる。更に、ファンによる外気導入の量を制御することで温風に代えて室温に近い温度の風を連通口から噴射することができ、夏場などの暑い時期に大腿部に涼しい風を供給することができる。
【0014】
また、前記便座本体を前記着座面側から隙間なく覆うことができる断熱性の高い材料から構成される便座蓋体断熱部材と該便座蓋体断熱部材の周囲を囲み前記便座本体の着座面との間で隙間なく密着するパッキングとをもつ便座蓋体を有し、
前記便座本体の前記空洞は前記着座面側以外の壁体を断熱部材にて形成される形態を採用することが望ましい。
【0015】
断熱部材にて温水タンクを囲むことで温水タンクからの望まない放熱を抑制できるので消費電力を低減することができると共に、保温に要する熱量が少なくてすむのでヒータなどの加熱手段として簡易な手段が採用できる。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成を有することから本発明の温水洗浄便座は便座本体の着座面が温水タンクによって内部から常に暖められることになるので何時でも快適に使用することができる。また、温水が無くなる最後まで快適な温度の温水を供給することができる。そして、便座暖房のための部品を別に設ける必要が少なくなってコスト低減ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の温水洗浄便座について実施形態に基づき詳細に説明する。本実施形態の温水洗浄便座は貯湯手段と局部洗浄手段と便座本体とその他必要な部材とを有する。
【0018】
貯湯手段は外部からの給水を加熱して温水として貯留する手段である。貯湯手段は便座本体の内部に形成された空洞内に配設された温水タンクをもつ。温水タンクは空洞内にて便座本体の着座面側に接している。温水タンク内の温水は温水タンクの内部(又は外部)に設けたヒータにより加熱したものでもよいし、外部の湯沸手段から導入してもよいが、特に温水タンク内にヒータを設けた形態を採用することで温水タンク内の温水を保温することも可能になる。
【0019】
温水タンクは概ね隙間なく温水が充填されるように内容物の体積に応じて容積が変化できる構成をもつ。つまり、温水を大量に貯留する場合にはその温水の量に応じて容積が大きくなり、温水の量が少なくなった場合にはその量に応じて容積が小さくなる部材である。そして、温水タンクの着座面側を空洞内部の着座面に着設するなどして常に空洞内部の着座面側に接するように配置している。
【0020】
具体的には弾性体から構成された弾性壁体をもつ温水タンクが挙げられる。温水タンクの全体を弾性壁体にて形成することで内部の温水の量に応じて温水タンクが伸び縮みして、常に温水タンクの内部は概ね隙間なく温水にて充填することができる。特に、内部の温水を常に加圧するように構成することで、温水タンクから外部への温水の供給をその圧力を利用して簡単に行うことができる。
【0021】
温水タンクの他の形態としては内部への温水の出入りにより変形可能な可変壁体をもつものが挙げられる。例えば、可撓性をもつ材料(樹脂など)から形成された薄膜を壁体とした袋状部材を採用することで、内部の温水の量に合わせてその形状が変化可能になって内部に温水が充填されることになる。
【0022】
更に、貯湯手段は温水タンクを下方から上方(着座面側)に向けて付勢する付勢手段をもつことが望ましい。付勢手段としてはバネや発泡ゴムなどの変形量が大きい弾性体が望ましい。そして、弾性体によって温水タンクを均一に加圧できるように、弾性体と温水タンクとの間には板状部材を介設することが望ましい。
【0023】
また、便座本体の空洞内の温水タンクの下方に加圧用タンクを設けることができる。加圧用タンクは温水タンクと合わせて空洞内を概ね隙間なく充填できる大きさ・形態をもつ。ここで「概ね隙間なく」とは温水タンクが空洞内の着座面側から離れることが無い程度に着座面側に押しつけることができる程度である。温水タンクは加圧用タンクにより押しつけられているので、空洞内の着座面側に温水タンクが常に接しているように固定した構成を採用することは必須ではない。この場合、温水タンクが確実に着座面側に押しつけられるようにする目的で温水タンクと空洞内の着座面側との間の圧力を測定する圧力センサを採用することが望ましい。この圧力センサの検出圧力が所定値以下になったときに、温水タンクと着座面側との密着が低下して効果的な伝熱が達成できないとして、加圧用タンクに更に給水して密着性を上げる。
【0024】
加圧用タンクを設けた場合は、温水タンクからの温水の流出に応じて加圧用タンクの内部に水を供給し、必要に応じて加圧用タンク内の水を温水タンクに移すタンク制御手段を採用する。具体的なタンク制御手段としては、加圧用タンクに給水する給水源と、加圧用タンク及び温水タンクの間を接続する弁付の連結管との組み合わせが例示できる。この場合に、温水タンク又は加圧用タンクには水を温水に加熱できるヒータを配設することが望ましい。特に加圧用タンクにて温水に加熱すると温水タンク内の温水温度を安定化できるので望ましい。
【0025】
ここで、温水タンクとしては前述の弾性壁体を採用せずに、加圧用タンクのみに弾性壁体を採用するなど、加圧用タンクから外部に吐出される圧力の方が温水タンクから外部に吐出される圧力よりも大きくなるように調節して、温水タンクと加圧用タンクとを直接連結したときに加圧用タンクから温水タンクへの水の流れが生じたり、加圧用タンクよりも温水タンクの方が給水しやすいようにすることができる。また、加圧用タンクの圧力が大きくなるように加圧用タンクの下側から付勢手段にて付勢する構成を採用することもできる。その他、連結管にポンプを介在させて加圧用タンクから温水タンクへの流れを形成してもよい。
【0026】
連結管の弁を閉じた状態で加圧用タンクに給水すると、給水が加圧用タンク内に入って加圧用タンクが膨張して温水タンクを加圧する。その結果、温水タンクは着座面に押しつけられて効率的に温水から着座面に伝熱する。連結管の弁を開けると、加圧用タンクの圧力の方が高いので温水タンクに向けて水が移動することになる。
【0027】
加圧用タンク内に冷水を貯留し、温水タンク内にて加熱する構成を採用する場合には、温水タンク内の温水温度の低下が許容できる程度に水を温水タンクに移動させた後に、ヒータを作動させて温水温度を上昇させることを繰り返すことで温水タンク内の温水温度の低下が問題にならずに温水タンク内に給水できる。
【0028】
加圧用タンク内にて温水にしている場合には、加圧用タンク内の温水温度の低下が許容できる程度に加圧タンク内に水を供給した後に、ヒータを作動させて温水温度を上昇させることを繰り返すことで加圧タンク及び温水タンク内の温水温度の低下が問題になり難い。
【0029】
局部洗浄手段は特に限定されず通常の形態が採用できる。洗浄水としては温水タンク内の温水をそのまま、又は、温度調節のために水と混合したものを採用することができる。水との混合は通常の混合バルブにて可能である。
【0030】
具体的な局部洗浄手段としては、使用時に突出し、先端に噴射口が開口する洗浄ノズルを採用することができる。また、洗浄ノズルからの噴射圧力を調節するために吐出能力が調節可能なポンプを採用することもできる。
【0031】
便座本体についても内部に空洞が形成されていることの他は特に限定されず通常の構成が採用できる。便座本体は内部に温水を貯留する温水を内設するので、温水タンクを囲むように断熱部材を配設することが望ましい。その場合に着座面側には断熱部材を配設しないことで温水タンクからの熱が効果的に着座面に伝達し暖房を行うことができる。温水によって着座面を暖房する場合には後述する断熱部材をもつ便座蓋体を採用することが望ましい。
【0032】
便座本体は内部の空洞に外気を導入するファンを備えることができる。この場合、外部と空洞の内部とを連通する連通口をもつ。ファンにより外気を導入する部分から連通口に向けて外気が流通するようにする。特に、途中で温水タンクの傍らを流れて外気が加温させるようにすることが望ましい。
【0033】
その他必要な部材としては便座蓋体が挙げられる。便座蓋体は便座本体を着座面側から隙間なく覆うことができる断熱性の高い材料から構成される便座蓋体断熱部材と、その便座蓋体断熱部材の周囲を囲み便座本体の着座面との間で隙間なく密着するパッキングとをもつものを採用すると便座本体の着座面からの放熱が抑制できるので望ましい。便座蓋体断熱部材としては発泡した樹脂部材などが例示される。パッキングはゴムなどの弾性体からなる通常の構成が採用できる。
【0034】
・作用効果
本実施形態の温水洗浄便座は上記構成を有することから以下の作用効果を発揮する。すなわち、便座本体内に温水タンクが配設されているので、便座本体の着座面は温水タンク内の温水によって暖房される。ここで、温水タンクは内部の温水の量にかかわらずに便座本体の空洞内において着座面側に接するように構成されているので、温水の使用にかかわらず常に快適な便座温度が保持できる。
【実施例1】
【0035】
(構成)
本実施例の温水洗浄便座は、図1及び2に示すように、便座本体と貯湯手段と局部洗浄手段31とを有する。
【0036】
便座本体は内部に空洞を形成する便座筐体11とその空洞内の着座面(図2の図面上方側)以外の面を囲むように配設された断熱部材12、13及び14とをもつ。
【0037】
貯湯手段は温水タンク21と加圧用タンク22と温水タンク21及び加圧用タンク22の間に介装される仕切板23と連結管24とその連結管24の流れを制御する弁25と外部給水源に接続される外部給水管26とその外部給水管26からの流れを制御する弁27と便座筐体11の空洞の内側の着座面側及び仕切板23の加圧用タンク22側にそれぞれ着設されている圧力センサ28と加熱ヒータ29とそれぞれのタンク21及び22内の温水温度を測定する温度センサ(図略)と制御回路(図略)とを有する。
【0038】
温水タンク21は樹脂製の袋状部材であり加圧されない状態で便座筐体11の空洞のおよそ半分の体積を占める大きさである。加圧用タンク22は弾性体から形成される袋状部材であり、加圧されない状態で便座筐体11の空洞の半分よりもかなり小さい体積を占める大きさである。加圧用タンク22は内部に給水することで空洞全体を占める大きさにまで伸長可能である。
【0039】
仕切板23は空洞内の着座面側に配設される温水タンク21とその下方側に配設される加圧用タンク22との間に介装された板状部材であり、両者の間で圧力の伝達が円滑に行うことができるように空洞内で移動自在に配設されている。
【0040】
局部洗浄手段31は先端に噴射口(図略)が形成された洗浄ノズルと局部洗浄手段本体とから構成される。洗浄ノズルと温水タンクとの間は弁を備えた連結管(図略)にて連結されており噴射口から噴射される洗浄水は温水タンク21から供給される温水である。
【0041】
(作用効果)
温水タンク21及び加圧用タンク22は給水されておらず空の状態においては、図2に示すように、温水タンク21と便座筐体11の空洞の着座面側との間は離れている。
【0042】
温水タンク21及び加圧用タンク22の間を開閉する弁25を開いた状態で弁27を開いて加圧用タンク22に給水することで、図3に示すように、温水タンク21及び加圧用タンク22は水で充填され、温水タンク21は着座面側に密着する。加熱ヒータ29により加圧用タンク22側から加熱することで加圧用タンク22内の水が加熱されると共に、仕切板23を介して温水タンク21内の水も温水になる。
【0043】
仕切板23を介しての加熱は効率的でないので、本温水洗浄便座の使用開始直後などのように温水タンク21内が空である場合には弁25を閉じた状態で加圧用タンク22にのみ給水し、加圧用タンク22内で温水にした後に弁25を開けて温水を温水タンク21内に給水することが望ましい。
【0044】
温水タンク21及び加圧用タンク22内が温水により完全に充填されたか否かは圧力センサ28により検知する。
【0045】
まず、仕切板23に着設した圧力センサ28が検知する圧力が上昇することから温水タンク21内に温水が充填されつつあることが検知でき、その後、空洞の着座面側に着設した圧力センサ28が急激に高い圧力を示すことをもって温水タンク21及び加圧用タンク22が完全に充填されていると判断し、弁27を閉じる。温水が充填されている温水タンク21が着座面側に密着しているので便座筐体11の着座面は常に暖かさを維持することができる。
【0046】
局部洗浄手段の使用により温水が必要になったときには温水タンク21及び洗浄ノズルの間を接続する弁を開いて洗浄ノズルに温水を供給する。このときに弁25を閉じ、弁27を開いた状態にする。そうすると、加圧用タンク22に対する給水により加圧用タンク22は膨張し温水タンク21を加圧することになり、洗浄ノズルに温水が供給される。ここでも圧力センサ28が検知する圧力を調べて所定の圧力範囲(温水タンク21が着座面側に密着する程度の圧力以上であって便座筐体11などの構成要素が破損する圧力未満の範囲)になるように弁25及び27を制御する。
【0047】
温水の使用に伴い、温水タンク21内の温水は減少し、加圧用タンク22内の水は多くなる(図4)。加圧用タンク22内は外部給水により温度が低下するので加熱ヒータ29により加熱を行う。加圧用タンク22内の温水温度が所定温度範囲になった場合は弁25を開けることで加圧用タンク22から温水タンク21内に温水が移動する。加圧用タンク22内の方が温水タンク21内よりも圧力が高いので内圧が平衡に達するまで温水は移動する。
【0048】
以上説明したように、適温の温水で満たされた温水タンク21が常に着座面側に接しているので便座筐体11の着座面は常に暖かいままである。また、温水タンク21内の温水が足りなくなったときでも加圧用タンク22内にて適温にまで加熱された温水を補充するので温水タンク21内の温度は適正なままである。
【実施例2】
【0049】
(構成)
本実施例の温水洗浄便座は、図5に示すように、貯湯手段における加圧用タンク22に代えてバネ41を設けていること、加熱ヒータ29が仕切板23の温水タンク21側に配設されていること、連結管24及び弁25がなく、外部給水管26が直接温水タンク21に接続されていること、圧力センサ28が省略されていること、以外については実施例1の構成が採用されている。バネ41は仕切板23を介して温水タンク21を加圧する手段である。
【0050】
(作用効果)
温水タンク21に給水する弁27を開いて加圧用タンク22に給水することで、図5に示すように、温水タンク21は水で充填される。温水タンク21はバネ41により付勢されて着座面側に密着する。加熱ヒータ29により加熱することで温水タンク21内の水が温水になる。
【0051】
局部洗浄手段の使用により温水が必要になったときには温水タンク21及び洗浄ノズルの間を接続する弁を開いて洗浄ノズルに温水を供給する。このときに弁27を閉じた状態にする。そうすると、加圧用タンク22に対するバネ41による付勢・加圧で、洗浄ノズルに温水が供給される。
【0052】
温水の使用に伴い、温水タンク21内の温水は減少しても、バネ41の付勢により温水タンク21は筐体11の着座面に密着した状態を維持できる(図6)。局部洗浄手段の使用が停止されたときや温水が不足した場合には弁27を開いて外部から給水する。温水タンク21内は外部給水により温度が低下するので加熱ヒータ29により加熱を行う。弁27は温水タンク21内の温度低下が許容範囲内に収まるように段階的に給水されるように制御される。
【0053】
以上説明したように、適温の温水で満たされた温水タンク21が常に着座面側に接しているので便座筐体11の着座面は常に暖かいままである。
【0054】
(変形態様1)
本変形態様の温水洗浄便座は便座筐体11の空洞に外気を導入することで温水タンク21に接触させて加温し、その加温した外気を噴出させて暖房機能や局部乾燥手段に応用するものである。
【0055】
具体的には便座筐体11内に外気を導入するファンを設け、便座筐体11の必要な部位(前面の大腿部近傍部位など)に連通口を設けている。
【0056】
ファンを作動すると、外気が便座筐体11内に導入され、温水タンク21に接することで暖かくなった外気が連通口から噴出することで暖房が実現できる。便座筐体11内に設けた連通口から噴出する暖かい外気を局部に導くダクトを配設することで局部乾燥手段として用いることができる。
【0057】
(変形態様2)
本変形態様の温水洗浄便座は、図7に示すような便座蓋体51を有する以外は実施例1、2又は変形態様1の温水洗浄便座うちのいずれかと同様の構成をもつ。
【0058】
本態様の温水洗浄便座が有する便座蓋体51は、図8に示すように、便座蓋体断熱材52とパッキング53とをもつ。便座蓋体断熱材52は便座筐体11の着座面側を完全に隙間なく覆うことができる大きさ(例えば図9に示す着座面Sを覆うことができる程度の大きさ)に形成された断熱材から構成されている。パッキング53は、便座蓋体断熱部材52と便座筐体11の着座面との間を隙間なく密閉状態にするように、便座蓋体断熱材52の周囲を囲むように配設されている。この密閉状態は空気の流通をある程度防ぐことができる程度でも充分である。以上の構成を採用することで、便座本体の着座面Sからの放熱が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1における温水洗浄便座の概略斜視透視図である。
【図2】図1のA−A断面概略図である。
【図3】図1のA−A断面概略図である。
【図4】図1のA−A断面概略図である。
【図5】実施例2における温水洗浄便座の概略断面図である。
【図6】実施例2における温水洗浄便座の概略断面図である。
【図7】変形態様2における温水洗浄便座の便座蓋体の概略斜視透視図である。
【図8】図7のB−B断面概略図である。
【図9】変形態様2における温水洗浄便座の便座蓋体において便座蓋体断熱部材にて覆う部分を示す概略図である。
【符号の説明】
【0060】
11…便座筐体 12〜14…断熱部材
21…温水タンク 22…加圧用タンク 23…仕切板 25、27…弁 28…圧力センサ 29…加熱ヒータ
31…局部洗浄手段
41…バネ
51…便座蓋体 52…便座蓋体断熱部材 53…パッキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に温水を貯留する貯湯手段と、
前記貯湯手段から供給される温水で局部を洗浄する局部洗浄手段と、
内部に空洞をもつ便座本体と、を有する温水洗浄便座であって、
前記貯湯手段は、概ね隙間なく前記温水が充填されるように内容物の体積に応じて容積が変化でき且つ着座面側に内側から接するように前記便座本体の前記空洞内に配設された温水タンクをもつことを特徴とする温水洗浄便座。
【請求項2】
前記温水タンクは内部の温水の圧力により伸長可能な弾性体から構成される弾性壁体をもつ請求項1に記載の温水洗浄便座。
【請求項3】
前記温水タンクは内部への温水の出入りにより変形可能な可変壁体をもつ請求項1又は2に記載の温水洗浄便座。
【請求項4】
前記貯湯手段は前記便座本体の前記空洞内に配設され且つ前記温水タンクを下方より上方に向けて付勢する付勢手段をもつ請求項2又は3に記載の温水洗浄便座。
【請求項5】
前記貯湯手段は、
内容物の体積に応じて容積が変化でき且つ前記便座本体の前記空洞内における前記温水タンクの下方に配設され、前記温水タンクと組み合わさって前記便座本体の前記空洞を概ね隙間なく充填できるように内部に水を貯留する加圧用タンクと、
前記温水タンクからの温水の流出に応じて前記加圧用タンクの内部に水を供給し、必要に応じて該加圧用タンク内の水を該温水タンクに移すタンク制御手段と、をもつ請求項1〜4のいずれかに記載の温水洗浄便座。
【請求項6】
内部に温水を貯留する貯湯手段と、
前記貯湯手段から供給される温水で局部を洗浄する局部洗浄手段と、
内部に空洞をもつ便座本体と、を有する温水洗浄便座であって、
前記貯湯手段は、
概ね隙間なく前記温水が充填されるように内容物の体積に応じて容積が変化できるように前記便座本体の前記空洞内に配設された温水タンクと、
内容物の体積に応じて容積が変化でき且つ前記便座本体の前記空洞内における前記温水タンクの下方に配設され、前記温水タンクと組み合わさって前記便座本体の前記空洞を概ね隙間なく充填できるように内部に水を貯留する加圧用タンクと、
前記温水タンクからの温水の流出に応じて前記加圧用タンクの内部に水を供給し、必要に応じて該加圧用タンク内の水を該温水タンクに移すタンク制御手段と、をもつことを特徴とする温水洗浄便座。
【請求項7】
前記便座本体の前記空洞内に外気を導入するファンを有し、
前記便座本体はその外部と前記空洞の内部とを連通する連通口をもつ請求項1〜6のいずれかに記載の温水洗浄便座。
【請求項8】
前記便座本体を前記着座面側から隙間なく覆うことができる断熱性の高い材料から構成される便座蓋体断熱部材と該便座蓋体断熱部材の周囲を囲み前記便座本体の着座面との間で隙間なく密着するパッキングとをもつ便座蓋体を有し、
前記便座本体の前記空洞は前記着座面側以外の壁体を断熱部材にて形成される請求項1〜7のいずれかに記載の温水洗浄便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−86384(P2008−86384A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267811(P2006−267811)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】