説明

測光装置、撮像装置および測光方法

【課題】適切な蓄積条件の第2制御によって適切な測光センサ出力を得ること。
【解決手段】測光装置は、蓄積型の測光センサ13と、測光センサ13で得られる出力の最大値に基づいて測光センサ13の蓄積を制御する第1制御と、測光センサ13で得られる出力において、測光領域での輝度差が閾値以上であり、かつ、暗部領域の大きさが所定範囲にある場合に、該暗部領域における出力値に基づいて測光センサ13の蓄積を制御する第2制御とを行う蓄積制御手段52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置、撮像装置、測光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄積型の測光センサを用い、該測光センサで得られる出力の最大値に基づいて該測光センサを蓄積制御する第1制御と、該測光センサによる平均的な出力値に基づいて該測光センサを蓄積制御する第2制御を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−185821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、第2制御における蓄積条件が不適切な場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による測光装置は、蓄積型の測光センサと、測光センサで得られる出力の最大値に基づいて測光センサの蓄積を制御する第1制御と、測光センサで得られる出力において、測光領域での輝度差が閾値以上であり、かつ、暗部領域の大きさが所定範囲にある場合に、該暗部領域における出力値に基づいて測光センサの蓄積を制御する第2制御とを行う蓄積制御手段と、を備えることを特徴とする。
本発明による撮像装置は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の測光装置を備えることを特徴とする。
本発明による測光方法は、蓄積型の測光センサで得られる出力の最大値に基づいて測光センサの蓄積を制御する第1制御と、測光センサで得られる出力において、測光領域での輝度差が閾値以上であり、かつ、暗部領域の大きさが所定範囲にある場合に、該暗部領域における出力値に基づいて測光センサの蓄積を制御する第2制御と、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、適切な蓄積条件の第2制御によって適切な測光センサ出力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による測光装置を搭載した電子カメラの要部構成を説明する図である。
【図2】電子カメラの測光部を説明するブロック図である。
【図3】撮影処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】測光処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】領域分割を例示する図である。
【図6】暗部の大小および面積比を説明する図である。
【図7】測光センサから得られる画像を例示する図である。
【図8】測光センサから得られる画像を例示する図である。
【図9】測光センサから得られる画像を例示する図である。
【図10】測光センサから得られる画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による測光装置を搭載した電子カメラの要部構成を説明する図である。図1において、カメラ本体100に対して着脱可能に構成される撮影レンズ鏡筒200が装着されている。
【0009】
被写体からの光は、撮影レンズ鏡筒200のレンズ光学系1および絞り2を介してカメラ本体100へ入射される。カメラ本体100に入射した被写体光は、レリーズ前は破線で示すように位置するクイックリターンミラー(以下メインミラーと呼ぶ)3で上方のファインダ部へ導かれて拡散スクリーン6に結像する。また、カメラ本体100に入射した被写体光の一部はサブミラー4で下方へ反射され、測距素子5にも入射する。測距素子5は、撮影レンズ鏡筒200による焦点調節状態を検出する焦点検出処理(公知の瞳分割方式のAF処理)において用いられるのものである。
【0010】
拡散スクリーン6に結像した被写体光はさらに、コンデンサレンズ7を介してペンタプリズム8へ入射する。ペンタプリズム8は、入射された被写体光を接眼レンズ9へ導く一方、その一部を測光用光学系へも導く。測光用光学系は、三角プリズム10、回折光学素子11、および測光レンズ12によって構成される。
【0011】
測光用光束は三角プリズム10で上方へ折り曲げられ、回折光学素子11および測光レンズ12を介して測光センサ13上に被写体像を結像する。測光センサ13は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCCDイメージセンサなどによって構成される。測光センサ13は、被写体像の明るさに応じた測光用およびシーン認識用の光電変換信号を出力する。測光センサ13の撮像面には、カラーフィルタ13aが設けられている。
【0012】
レリーズ後はメインミラー3が実線で示される位置へ回動し、被写体光はシャッタ14を介して撮像素子15へ導かれて撮像面上に被写体像を結像する。撮像素子15は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCCDイメージセンサなどによって構成される。撮像素子15は、撮像面上に結像されている被写体像を撮像し、被写体像の明るさに応じた撮影用の光電変換信号を出力する。
【0013】
<測光部の構成>
本実施形態は上記電子カメラの測光部に特徴を有するので、以下は測光部を中心に説明する。図2は、電子カメラの測光部を説明するブロック図である。測光部は、測光光学系10,11,12と、測光センサ13と、A/D変換回路51と、測光センサ制御部52と、測光演算処理部53と、人物領域抽出部54とを有し、測光センサ13の測光レンジを切替え制御する。測光レンジの切替は、電荷蓄積時間および増幅利得の少なくとも一方を変化させることによって行う。露出制御部21は、測光部からの情報に基づいて露出制御を行い、AF制御部22は測光部からの情報に基づいてオートフォーカス処理を制御し、AWB用パラメータ算出部23は、測光部からの情報に基づいてオートホワイトバランス処理を行う。
【0014】
測光光学系10,11,12を通過した測光用光束は、測光センサ13上に被写体像を結像する。測光センサ13は、カラーフィルタ13a(図1)を通して受光した光電変換信号を出力する。カラーフィルタ13aは、たとえば、測光センサ13の画素位置に配設されたR,G,B色のフィルタによって構成される。R色のフィルタを通して受光した画素からはR色成分の光に対応する光電変換信号が出力され、G色のフィルタを通して受光した画素からはG色成分の光に対応する光電変換信号が出力され、B色のフィルタを通して受光した画素からはB色成分の光に対応する光電変換信号が出力される。本実施形態では、撮像面上で近接してR,G,B色に対応する信号を出力する1組の画素群を「1画素」として扱う。
【0015】
測光センサ13には、測光センサ制御部52から駆動用クロック信号、電荷蓄積時間を制御する信号、および増幅利得を制御するゲイン制御信号がそれぞれ入力される。測光センサ13は、蓄積した電荷信号(測光信号Vout)をA/D変換回路51へ出力する。A/D変換回路51は、測光信号VoutをA/D変換(アナログ信号→ディジタル信号へ変換)することにより、画素ごとにディジタル出力値を得る。
【0016】
測光センサ制御部52は、測光センサ13に対する「測光用のセンサ制御」と「シーン認識用のセンサ制御」とを切替えて行う。「測光用のセンサ制御」を行う場合の測光センサ制御部52は、ディジタル変換後のディジタル出力値の最大値に基づいて、次回の電荷蓄積における最大のディジタル出力値を目標レベル1(たとえば、センサ最大出力レベルより低い所定レベル)に近づけるように測光センサ13の電荷蓄積時間および増幅利得を決定し、決定した電荷蓄積時間および増幅利得で次回の「測光用のセンサ制御」を行うように測光センサ13をフィードバック制御する。「測光用のセンサ制御」は最大出力値(ピーク)に基づいて目標レベル1を決めるので、ピークAGCとも呼ばれる。
【0017】
「測光用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値は測光演算処理部53へ送出され、測光演算処理部53において測光演算のために使用される。露出制御部21は、測光演算処理部53による測光演算結果に基づいて、撮影時にシャッタ14および絞り2を制御する。また、「測光用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値は、AWB用パラメータ算出部23においてオートホワイトバランス処理におけるパラメータ算出のためにも用いられる。
【0018】
さらにまた、「測光用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値は、人物領域抽出部54において人物領域の抽出のためにも用いられる。人物領域抽出部54は、測光センサ13から得られる画像(ディジタル出力値に基づく画像)の中で、人の肌色領域を抽出する。具体的には、上記「1画素」ごとにR/G色の出力比およびB/G色の出力比がそれぞれ所定範囲となる画素を抽出し、抽出した画素で構成される領域を肌色および肌類似色(以降肌類似色と呼ぶ)領域と推定する。
【0019】
一方、「シーン認識用のセンサ制御」を行う場合の測光センサ制御部52は、肌類似色領域など所定の領域におけるディジタル出力値の平均値に基づいて、該平均値を目標レベル2(たとえば、目標レベル1より小さいのが好ましく、センサ最大出力レベルの0.2〜0.4倍)に近づけるように、測光センサ13の電荷蓄積時間および増幅利得を決定し、決定した電荷蓄積時間および増幅利得で次回の「シーン認識用のセンサ制御」を行うように測光センサ13をフィードバック制御する。「シーン認識用のセンサ制御」は所定の領域の平均値に基づいて被写体の色情報が得られるように暗部の目標レベル2を決めるので、被写体重視AGCとも呼ばれる。なお、「シーン認識用のセンサ制御」のフィードバック制御の目標レベル設定に用いられる所定の領域のディジタル出力値については後述する。
【0020】
「シーン認識用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値は人物領域抽出部54へ送出され、人物領域抽出部54において人物領域抽出処理のために使用される。人物領域抽出部54は、たとえば、パターンマッチング方式、または輝度・色情報や距離情報から人物の位置を推定する方式など、公知の検出手法を用いる。
【0021】
AF制御部22は、人物領域抽出部54によって抽出された「顔」の領域を対象に焦点調節状態を検出するAF処理を行う。これにより、人物の「顔」にピントを合わせるようにデフォーカス量が算出され、このデフォーカス量に応じて撮影光学系1が駆動制御される。
【0022】
<撮影処理>
図3は、電子カメラの撮影制御回路(不図示)が行う撮影処理の流れを説明するフローチャートである。上記測光部は、撮影処理のうち測光処理(S12)において制御される。図3のステップS11において、撮影制御回路は、不図示のレリーズボタンが半押し操作されたか否かを判定する。撮影制御回路は、半押し操作された場合にはステップS11を肯定判定してステップS12へ進み、半押し操作されない場合にはステップS11を否定判定してステップS21へ進む。
【0023】
ステップS12において、撮影制御回路は測光センサ制御部52へ指示を送り、測光処理を行わせてステップS13へ進む。測光処理の詳細については後述する。ステップS13において、撮影制御回路は、測距素子5による検出信号を用いてAF処理を行い、ステップS14へ進む。ステップS14において、撮影制御回路は、レリーズボタン(不図示)が全押し操作されたか否かを判定する。撮影制御回路は、全押し操作された場合にはステップS14を肯定判定してステップS15へ進み、全押し操作されない場合にはステップS14を否定判定してステップS11へ戻る。
【0024】
ステップS15において、撮影制御回路は不図示のシーケンス制御装置へ指示を送り、メインミラー3のアップ駆動を開始させてステップS16へ進む。ステップS16において、撮影制御回路は、撮像素子15の初期化を行ってステップS17へ進む。ステップS17において、撮影制御回路は撮像素子15に撮影用の電荷蓄積を所定時間行わせる。なお、測光処理結果を用いた露出演算で算出された制御露出とするように、絞り2の駆動およびシャッタ14の走行幕駆動がシーケンス制御装置(不図示)によって行われる。撮影制御回路は、撮像素子15に蓄積された電荷の掃き出しを指示してステップS18へ進む。
【0025】
ステップS18において、撮影制御回路はシーケンス制御装置(不図示)へ指示を送り、メインミラー3のダウン駆動を開始させてステップS19へ進む。ステップS19において、撮影制御回路は、画像を構成する電荷信号(光電変換信号)に対して所定の画像処理を行ってステップS20へ進む。ステップS20において、撮影制御回路は、画像処理後のデータを記録媒体(不図示)に記録して図3による撮影処理を終了する。
【0026】
ステップS11を否定判定して進むステップS21において、撮影制御回路はタイムアップか否かを判定する。撮影制御回路は、無操作状態で所定時間が経過するとステップS21を肯定判定し、図3による処理を終了する。一方、撮影制御回路は、所定時間が経過していない場合にはステップS21を否定判定し、ステップS11へ戻る。
【0027】
<測光処理>
図4は、測光センサ制御部52が行う測光処理の流れを説明するフローチャートである。図4による測光処理は、図3のステップS12に対応する。図4のステップS101において、測光センサ制御部52は、測光センサ13に「測光用のセンサ制御」による電荷蓄積を行わせてステップS102へ進む。
【0028】
ステップS102において、測光センサ制御部52は、測光センサ13から読み出した測光信号VoutがA/D変換されたデータを測光センサ制御部52内のメモリ(不図示)に格納してステップS103へ進む。
【0029】
ステップS103において、測光センサ制御部52は、データの有効性を判定してステップS104へ進む。測光センサ制御部52は、(1)データが測光センサ13の異常による出力飽和を示す場合、(2)データが測光センサ13のリニアリティ(線形性)を確保できないほど出力値が大きい場合(オーバーフロー)、(3)データが測光センサ13のリニアリティを確保できないほど出力値が小さい場合、または、データがノイズの影響を容認できないほど出力値が小さい場合(アンダーフロー)のいずれかに該当する場合に「データ有効性なし」を判定する。一方、測光センサ制御部52は、上記(1)〜(3)のいずれにも該当しなければ「データ有効性あり」を判定する。
【0030】
ステップS104において、測光センサ制御部52は、次回の「測光用のセンサ制御」による電荷蓄積時間および次回の増幅利得を次式(1)により算出し、ステップS105へ進む。
次回蓄積時間(int)=目標レベル1/(今回の最大出力値)×(今回の電荷蓄積時間) (1)
ただし、目標レベル1は(センサ最大出力)×(所定係数(たとえば0.9))である。
【0031】
ステップS105において、測光センサ制御部52は有効判定を行ってステップS106へ進む。測光センサ制御部52は、ステップS103で「データ有効性なし」が判定されている場合にステップS105を否定判定してステップS101へ戻る。この場合、「測光用のセンサ制御」による電荷蓄積を繰り返す。測光センサ制御部52は、ステップS103で「データ有効性あり」が判定されている場合にはステップS105を肯定判定し、ステップS106へ進む。
【0032】
ステップS106において、測光センサ制御部52は、被写体重視AGC、すなわち「シーン認識用のセンサ制御」を行うか否かの判定処理を行う。具体的には、測光センサ13の有効画素部を図5に例示するように所定数(図5の場合は15ブロック)の領域に分割し、分割後のブロック単位で輝度を表すディジタル出力値(又はG色画素によるディジタル出力値)の平均値Vave[1]〜Vave[15]をそれぞれ算出する。そして、これらの最大値Vavemax、最小値Vaveminを求めてステップS107へ進む。
【0033】
ステップS107において、測光センサ制御部52は輝度差が所定の判定閾値より大きいか否かを判定する。測光センサ制御部52は、たとえば次式(2)により判定を行う。
Log(Vavemax/Vavemin)>TrVave (2)
ただし、TrVaveは判定閾値であり、たとえば3段とする。
【0034】
測光センサ制御部52は、上式(2)が成立する場合にステップS107を肯定判定してステップS108へ進む。測光センサ制御部52は、上式(2)が成立しない場合にはステップS107を否定判定してステップS117へ進む。ステップS117へ進む場合は、輝度差が小さいので「シーン認識用のセンサ制御」を行わなくても「測光用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値から人物領域(顔)の抽出が可能であることが多いためである。
【0035】
ステップS108において、測光センサ制御部52は、「測光用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値を用いて暗部の面積比算出を行う。具体的には、出力値が所定値以下(たとえば、50LSB以下)の画素数をカウントすることにより、暗部に相当する画素数と測光センサ13の有効画素数との比をDark Ratioとして算出してステップS109へ進む。なお、上記面積比の算出とともに、暗部に相当する領域で得られる出力値の平均値(上記50LSB以下の出力値の平均値)も算出しておく。
【0036】
ステップS109において、測光センサ制御部52は人物領域抽出部54へ指示を送り、「測光用のセンサ制御」によって得られたディジタル出力値を用いて肌類似色領域を抽出させる。これにより人物領域抽出部54は、たとえば、各画素によるディジタル出力値をR色、G色、B色ごとに求め、これら出力値によるR/G色の出力比、および出力値によるB/G色の出力比がそれぞれ所定範囲(肌類似色と推定される)内の画素を抽出する。
【0037】
測光センサ制御部52はさらに、人物領域抽出部54へ指示を送り、肌類似色領域に相当する領域で得られるディジタル出力値の平均値を算出させてステップS110へ進む。これにより人物領域抽出部54は、肌類似色領域に含まれる画素におけるG色の出力値の加算と、加算した画素数(肌類似色と推定される領域を構成する画素数)のカウントとを行う。肌類似色の平均値=(G色出力値の加算値)/(肌類似色領域のカウント値)である。この平均値算出は、たとえば超順光状態(輝度差が大きく、かつ人物の「顔」領域の輝度が高く、背景輝度が低い状態)の場合に行うものであり、算出した平均値は、後述するステップS111において肌類似色領域に相当する出力値の平均値を目標レベルとして蓄積制御する際に用いる。超順光状態では、「顔」領域の輝度が高いため、「測光用のセンサ制御」で得られるディジタル出力値から肌類似色領域での平均値を目標レベルとしてフィードバック制御すれば、次回の「シーン認識用のセンサ制御」で適正に「顔」領域を検出できるためである。
【0038】
ステップS110において、測光センサ制御部52は、ステップS109で算出した肌類似色領域の平均値の有無を判定する。測光センサ制御部52は、算出した平均値が存在する場合にステップS110を肯定判定してステップS111へ進む。測光センサ制御部52は、算出した平均値が存在しない場合(肌類似色領域が抽出されていない場合)にステップS110を否定判定してステップS114へ進む。この場合、「測光用のセンサ制御」の出力値からは肌類似色領域が抽出されておらず、人物の「顔」領域が黒つぶれしている状態である。そこで、後述するがステップS114では黒つぶれしている領域の大きさ(暗部面積)を確認する。
【0039】
ステップS111において、測光センサ制御部52は、「シーン認識用のセンサ制御」用の電荷蓄積時間および増幅利得を次式(3)により算出し、ステップS112へ進む。
シーン認識用蓄積時間(intObj)=目標レベル2/(肌類似色の平均値)×(測光用のセンサ制御の電荷蓄積時間) (3)
ただし、目標レベル2は(センサ最大出力)×(所定係数(たとえば0.2〜0.4))である。
【0040】
ステップS110を否定判定して進むステップS114において、測光センサ制御部52は、暗部の面積が小か否かを判定する。測光センサ制御部52は、ステップS108で算出した面積比が所定値以下の場合にステップS114を肯定判定してステップS115へ進む。ステップS115へ進む場合は、図7、8に示すような、たとえば窓辺の逆光状態のように輝度差が大きく、かつ、黒つぶれしている面積が小さい場合に相当する。
【0041】
ステップS115において、測光センサ制御部52は、「シーン認識用のセンサ制御」用の電荷蓄積時間および増幅利得を次式(4)により算出し、ステップS112へ進む。
シーン認識用蓄積時間(intObj)=目標レベル2/(暗部の平均値)×(面積比)×(測光用のセンサ制御の電荷蓄積時間) (4)
ただし、目標レベル2は(センサ最大出力)×(所定係数(たとえば0.2〜0.4))である。面積比(DarkRatio)はステップS108で算出したものであり、図6に例示するように、暗部面積が小さいほど0に近づき、暗部面積が大きいほど1に近づく値となる。
【0042】
一方、測光センサ制御部52は、ステップS108で算出した面積比が所定値を超える場合にステップS114を否定判定してステップS116へ進む。ステップS116へ進む場合は、図9、10に示すような、たとえば逆光状態のように輝度差が大きく、かつ、黒つぶれしている面積が大きい場合に相当する。ステップS116において、測光センサ制御部52は、「シーン認識用のセンサ制御」用の電荷蓄積時間および増幅利得を次式(5)により算出し、ステップS112へ進む。
シーン認識用蓄積時間(intObj)=目標レベル2/(全画素のG成分の平均値)×(測光用のセンサ制御の電荷蓄積時間) (5)
ただし、目標レベル2は(センサ最大出力)×(所定係数(たとえば0.2〜0.4))である。
【0043】
ステップS112において、測光センサ制御部52は、測光センサ13に「シーン認識用のセンサ制御」による電荷蓄積を行わせてステップS113へ進む。ステップS113において、測光センサ制御部52は、測光センサ13から読み出した測光信号VoutがA/D変換されたデータを測光センサ制御部52内のメモリ(不図示)に格納してステップS117へ進む。
【0044】
ステップS117において、測光センサ制御部52は、人物領域抽出部54へ指示を送り、顔領域を検出させて図4による処理を終了する。人物領域抽出部54で検出された顔領域は、ステップS13(図3)におけるAF処理において焦点検出用の領域を決定する際に使用される他、ステップS19(図3)における画像処理において処理対象を決定する際にも使用される。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電子カメラの測光部に、蓄積型の測光センサ13と、測光センサ13で得られる出力の最大値に基づいて測光センサ13の蓄積を制御する第1制御(測光用のセンサ制御)と、測光センサ13で得られる出力において、測光領域での輝度差が閾値以上であり、かつ、暗部領域の大きさが所定範囲にある場合に、該暗部領域における出力値に基づいて測光センサ13の蓄積を制御する第2制御(シーン認識用のセンサ制御)とを行う測光センサ制御部52と、を備えたので、適切な測光センサ13の出力が得られる。
【0046】
(2)測光センサ制御部52は、第1制御と第2制御とを交互に行い、第1制御による測光センサ13の出力に基づいて、次の第2制御と次の第1制御とを行うので、「測光用のセンサ制御」で得た情報を次のセンサ制御に用いることができる。
【0047】
(3)測光センサ13は、測光領域を複数の領域に分割した分割領域ごとの測光結果を出力し、測光センサ制御部52は、最も明るい分割領域と最も暗い分割領域との輝度の差が閾値以上の場合に第2制御を行うようにしたので、第1制御後のディジタル出力値が適切な場合には第2制御を省略できる。
【0048】
(4)測光センサ13は、測光領域における1画素ごとの測光結果を画素出力として出力し、測光センサ制御部52は、全ての画素出力に対して所定値以下の輝度を示す画素出力が占める比率が所定範囲にある場合に、所定値以下の輝度を示す画素出力の平均値に基づいて、第2制御を行うようにした。これにより、暗部領域の抽出を容易かつ確実に行うことができる。
【0049】
(5)測光センサ制御部52は、暗部領域の大きさが所定範囲より大きい場合に、測光センサ13で得られる出力の平均値に基づいて測光センサ13の蓄積を制御する第3制御を、第2制御の代わりに行うようにした。暗部領域で得られる出力の平均値に基づく第2制御よりも第3制御の方が電荷蓄積時間を短くできるので、処理時間を短くできる。
【0050】
(6)測光センサ制御部52は、測光領域内で肌色領域が検出された場合、肌色領域における測光センサ13の出力の平均値に基づいて測光センサ13の蓄積を制御する第4制御を、第2制御の代わりに行うので、人物の「顔」などの肌色領域の測光センサ出力を適切レベルにするように制御できる。
【0051】
図7〜図10は、異なるセンサ制御が行われた測光センサ13から得られる画像を例示する図である。これらは、窓を背景に含めて人物を撮影した場合の画像である。図7は、「測光用のセンサ制御」によって測光センサ13で得られる画像である。背景の窓に対応するディジタル出力値の最大値を目標レベル1に近づけるように蓄積時間・増幅利得を決めるため、輝度が高い窓領域は飽和しないものの、輝度がい低い人物領域からのディジタル出力値は平均出力レベルより小さくなる(適正な明るさより暗く、黒つぶれする)。黒つぶれした領域からのディジタル出力値が小さいとノイズとの判別が困難になり、顔領域の抽出が困難である。ただし、「測光用のセンサ制御」で肌類似色領域が抽出できる場合、黒つぶれした領域の有無、輝度差の大小にかかわらず、肌類似色領域での出力の平均値を目標レベルとするのがよい。
【0052】
ここで、図7の画像が得られた場合にステップS116の「シーン認識用のセンサ制御」で電荷蓄積を行わせると、図8に例示する画像が得られる。図8によれば、画面内の平均的なディジタル出力値を目標レベル2に近づけるように測光レンジを決めるため、画面内に明るい領域が多い場合(すなわち、暗部の面積が小さい)には、人物領域のディジタル出力値は平均出力レベルより低くなって十分な出力値が得られていない。よって、本実施形態では、このような場合は、ステップS116よりステップS115の「シーン認識用のセンサ制御」を行うようにする。ステップS115の「シーン認識用のセンサ制御」では、暗部領域のディジタル信号値を目標レベルに近づけるので、暗部領域に含まれる人物領域でも十分な出力値が得られる。
【0053】
一方、図9は、「測光用のセンサ制御」によって測光センサ13で得られる画像であって、図7に比べて背景の窓が小さい場合を例示する。背景の窓に対応するディジタル出力値の最大値を目標レベル1に近づけるように蓄積時間・増幅利得を決めるため、輝度が高い窓領域は飽和しないものの、輝度が低い人物領域からのディジタル出力値は平均出力レベルより小さくなる(適正な明るさより暗く、人物領域が黒つぶれする)。
【0054】
図9の画像が得られた場合にステップS116の「シーン認識用のセンサ制御」で電荷蓄積を行わせると、図10に例示する画像が得られる。図10によれば、画面内の平均的なディジタル出力値を目標レベル2に近づけるように測光レンジを決めるため、画面内に明るい領域が少ない場合(すなわち暗部の面積が大きい)には、人物領域のディジタル出力値は平均出力レベル相当になって、人物の「顔」領域から色情報が取得できる適切な出力値が得られる。本実施形態では、ステップS115とS116の測光制御を切り替え可能に行い、「シーン認識用のセンサ制御」の蓄積時間はステップS115で算出される時間よりもステップS116で算出される時間の方が短くなる傾向にある。よって、ステップS115で算出される蓄積時間で大逆光シーンの暗部領域の測光を確実に行いつつ、かつ、ステップS116で算出される蓄積時間で測光に要する時間が長くなるのを防ぐことができる。
【0055】
(変形例1)
測光センサ13で取得した画像から肌類似色領域を抽出する手法として、R/G色の出力比およびB/G色の出力比がそれぞれ所定範囲となる領域を抽出するようにした。この代わりに、RGBの各出力値、色温度、色相などを用いる手法を採用してもよい。
【0056】
(変形例2)
上述した例では、輝度を表す出力平均値を算出する場合にG色の出力値を加算する例を説明したが、画素の出力値から得られるY(輝度)を加算するようにしてもよい。なお、G色の出力値を加算することにより、演算量を小さくすることができる。
【0057】
(変形例3)
測光センサ13で取得した画像から肌類似色領域を抽出する場合に、測光センサ13の有効画素部を所定数の領域に分割し、分割後のブロック単位で肌類似色領域を抽出するようにしてもよい。この場合は、各ブロック内に含まれる複数の画素によるディジタル出力値の平均値をR色、G色、B色ごとに求め、これら平均値によるR/G色の出力比、および平均値によるB/G色の出力比がそれぞれ所定範囲となる画素ブロックを抽出する。
【0058】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。たとえば、上述した測光装置を備えるカメラであれば電子カメラでもフィルムカメラでもよく、一眼レフタイプと異なるカメラに適用しても構わない。
【0059】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
10〜12…測光光学系
13…測光センサ
13a…カラーフィルタ
21…露出制御部
22…AF制御部
23…AWB用パラメータ算出部
51…A/D変換回路
52…測光センサ制御部
53…測光演算処理部
54…人物領域抽出部
100…カメラ本体
200…撮影レンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積型の測光センサと、
前記測光センサで得られる出力の最大値に基づいて前記測光センサの蓄積を制御する第1制御と、前記測光センサで得られる出力において、測光領域での輝度差が閾値以上であり、かつ、暗部領域の大きさが所定範囲にある場合に、該暗部領域における出力値に基づいて前記測光センサの蓄積を制御する第2制御とを行う蓄積制御手段と、
を備えることを特徴とする測光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記第1制御と前記第2制御とを交互に行い、前記第1制御による前記測光センサの出力に基づいて、次の前記第2制御と次の前記第1制御とを行うことを特徴とする測光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測光装置において、
前記測光センサは、前記測光領域を複数の領域に分割した分割領域ごとの測光結果を出力し、
前記蓄積制御手段は、最も明るい前記分割領域と最も暗い前記分割領域との輝度の差が前記閾値以上の場合に、前記第2制御を行うことを特徴とする測光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の測光装置において、
前記測光センサは、前記測光領域における1画素ごとの測光結果を画素出力として出力し、
前記蓄積制御手段は、全ての前記画素出力に対して所定値以下の輝度を示す前記画素出力が占める比率が前記所定範囲にある場合に、前記所定値以下の輝度を示す前記画素出力の平均値に基づいて、前記第2制御を行うことを特徴とする測光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記暗部領域の大きさが前記所定範囲より大きい場合に、前記測光センサで得られる出力の平均値に基づいて前記測光センサの蓄積を制御する第3制御を、前記第2制御の代わりに行うことを特徴とする測光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の測光装置において、
前記蓄積制御手段は、前記測光領域内で肌色領域が検出された場合、前記肌色領域における前記測光センサの出力の平均値に基づいて前記測光センサの蓄積を制御する第4制御を、前記第2制御の代わりに行うことを特徴とする測光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の測光装置を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
蓄積型の測光センサで得られる出力の最大値に基づいて前記測光センサの蓄積を制御する第1制御と、前記測光センサで得られる出力において、測光領域での輝度差が閾値以上であり、かつ、暗部領域の大きさが所定範囲にある場合に、該暗部領域における出力値に基づいて前記測光センサの蓄積を制御する第2制御と、を行うことを特徴とする測光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−48054(P2011−48054A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195242(P2009−195242)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】