説明

測光装置及び撮像装置

【課題】 ローリングシャッタによる駆動方式を用いた場合であっても、適切な調光動作を行う。
【解決手段】 電荷を蓄積する複数の画素を備えた測光センサと、測光センサから出力される信号に対して実行される処理の内容に基づいて、複数の画素に蓄積された電荷を読み出す際の読み出し時間を設定する設定部と、設定部により設定される読み出し時間を用いて、複数の画素に蓄積された電荷を読み出すセンサ駆動部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測光センサの出力信号を用いて被写体の輝度を演算し、撮影時の露出を制御することや、撮影シーンの解析を行って被写体の判別や認識を行うなどの測光装置を備えた撮像装置が知られている。このような撮像装置に用いられる測光装置は、閃光発光に併せて電荷を蓄積する必要性を考慮して、光電変換素子であるCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサが一般に用いられる。また、最近では、光電変換素子として、上述したCCDイメージセンサの他に、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが普及してきている。このCMOSイメージセンサは、蓄積した電荷を保持しておくことが困難であることから、CCDイメージセンサにて一般的な駆動方式である同時露光一括読み出し方式であるグローバルシャッタではなく、ライン露光順次読み出し方式であるローリングシャッタにより駆動制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−2688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このローリングシャッタによる駆動制御の場合、画素信号に対するA/D変換、又はA/D変換後の画素信号の転送を考慮した時間分ずらしながら、各水平ラインに配列される画素の露光が開始される。例えばCMOSイメージセンサを用いた測光装置において、TTL(Through The Lens)調光を実行する場合には、全ての画素において電荷の蓄積が開始されるまでは閃光発光を実行することができない。このため、ローリングシャッタによる駆動制御を行う場合には、グローバルシャッタによる駆動制御を行う場合に比べ、調光開始から閃光発光が行われるまでの間にタイムラグが生じてしまう。また、ローリングシャッタによる駆動制御を行う場合、電荷蓄積時間が終了しても、画素信号の読み出しが行われていない水平ラインに配列される画素においては電荷の蓄積が継続して行われている。このように画素信号が読み出されない水平ラインにおいては、電荷の蓄積が継続して実行されることで、例えば日中シンクロ撮影でTTL調光を行う場合には、読み出しを行っていない水平ラインにおいて蓄積される電荷が飽和することもあり、適切に調光処理を行うことができない。
【0005】
本発明は、ローリングシャッタによる駆動制御を用いた場合であっても、調光処理を適切に行うことができるようにした測光装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の測光装置は、電荷を蓄積する複数の画素を備えた測光センサと、前記測光センサから出力される信号に対して実行される処理の内容に基づいて、前記複数の画素に蓄積された電荷を読み出す際の読み出し時間を設定する設定部と、前記設定部により設定される前記読み出し時間を用いて、前記複数の画素に蓄積された電荷を読み出すセンサ駆動部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、閃光撮影時に被写界に向けて発光される閃光の発光量を調光する第1の処理と、前記被写界の測光又は前記被写界のシーンの解析のいずれか一方を行う第2の処理とを行う処理部を備え、前記設定部は、前記第1の処理を実行する場合に設定される前記読み出し時間を、前記第2の処理を実行する場合に設定される前記読み出し時間よりも短く設定することを特徴とする。
【0008】
また、前記測光センサは、二次元状に配列された複数の画素を備え、前記センサ駆動部は、前記測光センサの前記複数の画素のうち、同一のラインに配列される画素に蓄積される電荷をライン毎に順次読み出すローリングシャッタにより前記測光センサを駆動制御することを特徴とする。
【0009】
この場合、前記センサ駆動部は、前記処理部により前記第1の処理を実行する場合に、前記測光センサの前記複数の画素のうち、読み出す対象となるライン上に配列される画素の電荷をライン単位で間引きながら、前記ローリングシャッタにより前記測光センサを駆動制御することを特徴とする。
【0010】
また、前記センサ駆動部は、前記処理部により前記第2の処理を実行する場合に、前記ローリングシャッタにより前記測光センサを駆動制御することで、前記測光センサの前記複数の画素の全ての画素の電荷を前記ライン毎に読み出すことを特徴とする。
【0011】
これら場合には、前記設定部は、前記第1の処理を実行する場合に、前記ライン毎に電荷の蓄積を開始する際のライン毎の遅延時間を、前記第2の処理を実行する場合のライン毎の遅延時間よりも小さく設定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の撮像装置は、上述した測光装置と、被写界を撮像する撮像素子と、前記測光装置による測光結果に基づいて決定された撮像時の撮像条件に基づいて前記撮像素子を駆動制御する撮像素子制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ローリングシャッタによる駆動制御を用いた場合であっても、調光処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】デジタルカメラの構成を示す図である。
【図2】測光センサ、ボディ駆動制御回路及び画像処理装置の構成を示す図である。
【図3】測光センサの構成を示す図である。
【図4】測光センサに配置される画素の構成を示す図である。
【図5】被写界の測光及びシーン解析を行う際に実行されるローリングシャッタのタイミングチャートである。
【図6】1H期間の構成について説明した図である。
【図7】TTL調光を行う際に実行されるローリングシャッタのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態の撮影装置の一例としてのデジタルカメラ10の概略を示す。デジタルカメラ10は、カメラボディ11と、該カメラボディ11に着脱可能なレンズユニット12とから構成される。カメラボディ11とレンズユニット12とには、雄雌の関係をなす一対のマウント13,14がそれぞれ設けられている。カメラボディ11にレンズユニット12を装着する際には、レンズユニット12に設けられたマウント14をバヨネット機構等でカメラボディ11のマウント13に結合する。また、これらマウント13,14にはそれぞれ電気接点が設けられている。レンズユニット12をカメラボディ11に装着したときには、それぞれのマウント13,14に設けられた電気接点が接触し、両者の電気的な接続が確立される。
【0016】
次に、レンズユニット12の構成を説明する。レンズユニット12は、撮像光学系21、レンズ駆動機構22、絞り23、絞り駆動機構24およびレンズ駆動制御回路25等を有している。なお、レンズ駆動機構22及び絞り駆動機構24は、それぞれレンズ駆動制御回路25に接続されている。
【0017】
撮像光学系21は、ズームレンズやフォーカスレンズ等の複数のレンズから構成される。撮像光学系21を構成するレンズは、レンズ駆動機構22によって光軸(L1)方向に移動可能となる。撮像光学系21の各レンズの位置は不図示のエンコーダによって検出される。検出される各レンズの位置を示す検出信号は、レンズ駆動制御回路25に出力される。レンズ駆動制御回路25は、入力される検出信号を受けて、撮影時の撮影距離や焦点距離を算出する。これら算出された値は、カメラボディ11に出力される。
【0018】
絞り23は、カメラボディ11への入射光量を絞り羽根の開閉で調整する。絞り駆動機構24は、絞り23の開口度を制御する。レンズ駆動制御回路25は、マウント13,14の電気接点を介してカメラボディ11との通信を行うとともに、レンズユニット12での各種制御を実行する。また、レンズ駆動制御回路25は、ROM(図示省略)に記録されたレンズデータなどをカメラボディ11に送信する。
【0019】
ところで、図1においては、レンズユニット12がカメラボディ11に着脱自在な、所謂一眼レフタイプのデジタルカメラ10の例を取り上げているが、これに限定する必要はなく、レンズユニット12がカメラボディ11に固定される、所謂コンパクトタイプのデジタルカメラであってもよい。
【0020】
次に、カメラボディ11の構成を説明する。カメラボディ11は、クイックリターンミラー31、メカニカルシャッタ32、撮像素子33、サブミラー34、焦点検出部35、ファインダ光学系及び測光センサ37等を備えている。
【0021】
クイックリターンミラー31、メカニカルシャッタ32及び撮像素子33は、撮像光学系21の光軸L1に沿って配置される。クイックリターンミラー31の後方にはサブミラー34が配置される。また、カメラボディ11の上部にはファインダ光学系、測光センサ37が配置される。さらに、カメラボディ11の下部領域には焦点検出部35が配置される。
【0022】
クイックリターンミラー31は、回動軸31aを中心にして回動可能に軸支されており、実線に示す観察状態と、光軸L1から退避した退避状態との間で切り替え可能となっている。観察状態のクイックリターンミラー31は、メカニカルシャッタ32及び撮像素子33の前方で傾斜配置される。この観察状態にあるクイックリターンミラー31は、撮像光学系21を通過した光束を上方へ(光軸L2方向に)反射してファインダ光学系に導く。このクイックリターンミラー31の中央部はハーフミラーとなっており、このクイックリターンミラー31を透過した一部の光束は、サブミラー34によって下方に(光軸L3方向に)反射し、焦点検出部35に導かれる。なお、焦点検出部35は、不図示のセパレータレンズで分割された被写体像の像ズレ量を各々のAFエリア毎に検出する、いわゆる位相差検出式の焦点検出を行う。この焦点検出部35からの焦点検出信号は、ボディ駆動制御回路51に出力される。
【0023】
一方、退避状態のクイックリターンミラー31は、サブミラー34とともに上方に跳ね上げられて撮影光路から外れた位置まで回動する。クイックリターンミラー31が退避状態にあるときは、撮像光学系21を通過した光束がメカニカルシャッタ32及び撮像素子33に導かれる。
【0024】
ファインダ光学系は、ファインダスクリーン(焦点板)41、コンデンサレンズ42、ペンタプリズム43及び接眼レンズ44を備えている。なお、符号45は接眼窓である。ファインダスクリーン41はクイックリターンミラー31の上方に位置する。このファインダスクリーン41には観察状態のクイックリターンミラー31で反射された光束が結像される。ファインダスクリーン41にて結像した光束はコンデンサレンズ42及びペンタプリズム43を通過し、ペンタプリズム43の入射面に対して90°の角度を有する射出面に導かれる。そして、ペンタプリズム43の射出面からの光束は、接眼レンズ44を透過した後、接眼窓45を介してユーザの目に到達する。
【0025】
ファインダスクリーン41にて結像した光束の一部は、ペンタプリズム43を通過した後、三角プリズム46を介して、測光レンズ47を介して測光センサ37に入射される。この測光センサ37は、受光した光束に基づく信号(以下、測光信号)を画像処理回路55に出力する。この測光センサ37としては、例えばCMOSイメージセンサが用いられる。
【0026】
ボディ駆動制御回路51は、不図示のマイクロコンピュータ、ROM、RAMなどから構成される。ボディ駆動制御回路51は、撮像素子33、測光センサ37、閃光装置52、シャッタ駆動機構53などの駆動制御を行う。このボディ駆動制御回路51は、画像処理回路55からの測光演算結果や調光結果に基づいた露出制御を行う他、焦点検出部35からの焦点検出信号に基づく焦点検出演算に基づく焦点調節制御を行う。また、ボディ駆動制御回路51は、マウント13,14を介してレンズ駆動制御回路25との間で通信を行い、レンズ情報とカメラ情報との送受信を行う。
【0027】
画像処理回路55は、撮像素子33から出力される画像信号に対して、ホワイトバランス処理、階調変換処理などの画像処理を実行する。この画像処理回路55により画像処理が施された画像信号は表示制御回路56に出力される。表示制御回路56は、入力される画像信号に基づく画像を表示部57に表示する。
【0028】
また、画像処理回路55は、測光センサ37から出力される測光信号を用いて、後述するTTL調光や、被写体の測光、被写体の追尾や被写体の判別、撮影シーンの認識に係る処理を実行し、各処理の結果をボディ駆動制御回路51に出力する。
【0029】
図2に示すように、ボディ駆動制御回路51は、センサ駆動部61、露出制御部62、撮像処理部63、焦点制御部64を備えている。なお、図2においては、露出制御及び焦点調節制御に関わる箇所のみを記載している。センサ駆動部61は、後述する制御演算部67により設定された電荷蓄積時間とアンプゲインに基づいて、測光センサ37を駆動制御する。なお、測光センサ37としてCMOSイメージセンサを用いることから、測光センサ37を駆動制御する場合、電子シャッタとしてライン露光順次読み出し方式であるローリングシャッタが用いられる。
【0030】
露出制御部62は、画像処理回路55から出力される測光演算結果や調光結果に基づいて撮像時の露出演算を行い、撮像時のシャッタ速度、絞り値を決定する。撮像処理部63は、露出制御部62において決定されたシャッタ速度、絞り値の他、後述するTTL調光部により設定された閃光の発光量を用いて撮像処理を実行する。
【0031】
焦点制御部64は、画像処理回路55から出力される被写体の位置情報、動き情報の他、焦点検出部35から得られた焦点検出エリアのデフォーカス量から主要被写体に焦点が合うようにレンズ駆動制御回路25を制御し、レンズ駆動制御回路25により撮像光学系21のフォーカスレンズを光軸(L1)方向に移動して焦点調節を行う。
【0032】
画像処理回路55は、データ処理部66、制御演算部67、測光演算部68、TTL調光部69、被写体判別部70及び被写体追尾部71を備えている。データ処理部66は、測光センサ37からの測光信号(測光データ)が入力されると、測光データに対して画素欠陥補正などの処理や、ブロック化処理などを実行する。なお、データ処理部66により処理された測光データは不図示のバッファメモリに一時記憶される。
【0033】
制御演算部67は、測光データに基づいて測光演算が可能か否かを判断する有効性判定を実行する。また、制御演算部67は、測光データに基づいて次回の測光における測光センサ37の電荷蓄積時間とアンプゲインとを設定する。例えば被写界の測光を行う場合、制御演算部67は、被写界の最大輝度値が目標輝度値となるように、測光センサ37の電荷蓄積時間とアンプゲインを設定する。また、シーン認識を行う場合、制御演算部67は、被写界の平均輝度値が目標測光値となるように、測光センサ37の電荷蓄積時間とアンプゲインを設定する。この制御演算部67により設定された測光センサ37の電荷蓄積時間とアンプゲインの情報は、センサ駆動部61に出力される。
【0034】
測光演算部68は、制御演算部67により測光演算が可能であると判定された場合に、測光データを用いた測光演算を行う。
【0035】
TTL調光部69は、閃光装置52による予備発光(モニタ発光)時に測光センサ37から出力される測光データと、閃光装置52の非発光時に測光センサ37から出力される測光データとに基づいて、モニタ発光時の反射光成分を抽出し、閃光撮影に最適となる閃光の発光量を求める。
【0036】
被写体判別部70は、測光データを用いた被写体判別処理を実行する。詳細には、被写体判別部70は測光データにおける色情報や輝度情報に基づいて画像中の主要な被写体(例えば、人物の顔の領域)を判別し、判別された被写体の位置情報を取得する。なお、人物の顔の領域の判別を行う場合には、例えば人物の顔の特徴量を抽出する、又は肌色の領域を特定するなどの顔検出用のシーケンスを用いればよい。この被写体判別部70における判別結果(被写体の位置情報)は、測光演算部68、TTL調光部69の他、ボディ駆動制御回路51に出力される。
【0037】
被写体追尾部71は、ユーザが選択した焦点検出領域を用いて、例えばテンプレートマッチングの手法により被写体追尾処理を実行する。この被写体追尾部71による被写体追尾処理を実行することで、被写体の動き情報が取得される。この被写体追尾部71により取得される被写体の動き情報は、ボディ駆動制御回路51に出力される。
【0038】
次に、測光センサ37について説明する。この測光センサ37は、前面に不図示の原色透過フィルタが設けられたCMOSイメージセンサから構成される。この原色透過フィルタは、測光センサ37の総画素数Nに対して、例えば、G(緑色)の解像度がN/2、R(赤色)及びB(青色)の解像度がN/4となる原色ベイヤー配列(図示省略)になっている。
【0039】
図3及び図4に示すように、CMOSイメージセンサは、二次元状に配列された複数の画素P(i,j)、タイミングジェネレータ(TG)75、リセット回路76、垂直走査回路77、水平走査回路78、CDS回路79、ADコンバータ(ADC)80などを備えている。なお、図3及び図4は、CMOSイメージセンサの構成の一例を示すものであり、必ずしも図3及び図4の構成とする必要はない。
【0040】
複数の画素P(i,j)は、フォトダイオード(PD)81、フローティングディフュージョン(FD)82、増幅トランジスタ83、行選択トランジスタ84、リセットトランジスタ85を備えている。
【0041】
PD81は、増幅トランジスタ83のゲートに接続されており、増幅トランジスタ83はFD82に蓄積された電荷の量に応じた信号(画素信号)を発生する。また、FD82は、リセットトランジスタ85を介し、電源電圧Vddに接続されている。
【0042】
例えばリセット回路73から出力される制御信号ΦRによりリセットトランジスタ85がONとなると、PD81及びFD82に溜まった電荷がクリアされる。PD81及びFD82に溜まった電荷がクリアされた後、受光される光束がPD81により電荷に変換され、PD81からFD82に転送される。そして、電荷蓄積時間が経過したときに出力される垂直同期信号を受けて、制御信号ΦSが出力されると、行選択トランジスタ84がONとなる。
【0043】
行選択トランジスタ84がONとなると、増幅トランジスタ83から、蓄積された電荷の量に応じた画素信号が垂直信号線86に出力される。垂直信号線86に出力される画素信号は、それぞれCDS回路79に入力される。
【0044】
タイミングジェネレータ75は、ボディ駆動制御回路51から出力される蓄積信号を受けてリセット回路76にリセット信号を出力する。また、ボディ駆動制御回路51から出力される蓄積信号の終了を受けて、垂直走査回路77に垂直同期信号を、水平走査回路78に水平同期信号をそれぞれ出力する。
【0045】
リセット回路76は、タイミングジェネレータ75から出力されるリセット信号を受けて、各水平ラインに対して制御信号ΦR〜ΦRを所定時間おきに順次出力する。なお、所定時間とは、同一の水平ラインに配列される全画素の画素信号が各画素から出力されてから、ADC80にてA/D変換されるまでの時間である。
【0046】
垂直走査回路77は、タイミングジェネレータ75から出力される垂直同期信号を受けて、水平ラインのそれぞれに制御信号ΦS〜ΦSを順次出力する。
【0047】
水平走査回路78は、タイミングジェネレータ76から出力される水平同期信号を受けて、制御信号ΦV〜ΦVを順次出力する。
【0048】
CDS回路79は、入力される画素信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、画素信号に重畳されるノイズ成分を除去する。その後、水平走査回路78から制御信号ΦV〜ΦVが出力されると、ノイズ成分が除去された画素信号が各CDS回路79からADC80に順次転送される。そして、ADC80に順次転送されるアナログの画素信号が、ADC80によりデジタルの画素信号に変換され、測光データとして出力される。
【0049】
上述したように、測光センサ37としてCMOSイメージセンサを用いる場合、測光センサ37の電子シャッタとして、ライン露光順次読み出し方式であるローリングシャッタが用いられる。このローリングシャッタは、測光センサ37における各画素の駆動読み出し、詳細には、リセット、露光、画素信号の出力及び次の電荷蓄積が行(水平ライン)毎に順次実行される。
【0050】
図5に示すように、ボディ駆動制御回路51から測光センサ37に蓄積信号が出力されると、タイミングジェネレータ75からリセット回路73に向けてリセット信号を出力する。これを受けて、リセット回路73は1行目の水平ラインに配列された画素に対して制御信号ΦRを出力する。制御信号ΦRが出力されることで、1行目の水平ラインに配列された画素がリセットされ、制御信号ΦRの立ち下がりで1行目の水平ラインに配列された各画素の電荷蓄積が開始される。
【0051】
そして、電荷蓄積時間が経過すると、ボディ駆動制御回路51から測光センサ37への蓄積信号が停止される。このタイミングで、ボディ駆動制御回路51から測光センサ37に読出信号が出力される。この読出信号を受けて、タイミングジェネレータ75は垂直走査回路77に対して垂直同期信号を出力する。これを受けて、垂直走査回路77は1行目の水平ラインに配列された画素に対して制御信号ΦSを出力する。制御信号ΦSが出力されると、1行目の水平ラインに配列された画素から画素信号が垂直信号線86に出力される。垂直信号線86に出力される画素信号は、CDS回路79にそれぞれ入力される。これらCDS回路79に入力された画素信号は、ノイズ成分が除去される。
【0052】
ボディ駆動制御回路51から測光センサ37への蓄積信号の出力が停止されると、タイミングジェネレータ75は、垂直走査回路77に対して垂直同期信号を出力すると同時に、タイミングジェネレータ75は、水平走査回路78に向けて水平同期信号を出力している。この水平同期信号を受けて、水平走査回路78は制御信号ΦV〜ΦVを順次出力する。この制御信号ΦV〜ΦVが出力されることで、1列目のCDS回路79から順にノイズ除去された画素信号がADC80に向けて出力される。そして、ADC80により、アナログの画素信号がデジタルの画素信号に変換される。
【0053】
なお、1行目の水平ラインに配列された画素に対して制御信号ΦRを出力してから所定時間経過すると、リセット回路73は2行目の水平ラインに対する制御信号ΦRを出力する。以降、リセット回路73は、所定時間経過する毎に3行目以降の水平ラインに対する制御信号ΦRを出力する。例えば、図5に示すように、1行目の水平ラインに配列される画素における電荷蓄積が実行されてから、最終行となるn行目の水平ラインに配列される画素における電荷蓄積が実行されるまでの期間は、電子シャッタが全開になるまでの遅延期間(図6中シャッタ全開遅延時間)となる。なお、最終行となるn行目の水平ラインに配列される画素における電荷蓄積が実行されることで、電子シャッタが全開の状態となる。
【0054】
ところで、1行目の水平ラインの画素における電荷蓄積が開始されてから予め設定された電荷蓄積時間経過すると、ボディ駆動制御回路51からの蓄積信号の出力が停止され、読出し信号が出力される。これを受けて、タイミングジェネレータ75は、垂直走査回路77に対して垂直同期信号を出力する。これを受けて、垂直走査回路77は、1行目の水平ラインに対して、制御信号ΦSを出力する。これにより、1行目の水平ラインに配列される画素から画素信号の読み出しが実行される。
【0055】
図5においては、符号で示す領域90が1行目の水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出す期間(1H期間)となる。なお、1行目の水平ラインに配列された画素の画素信号を読み出した後、2行目の水平ラインに配列された画素の画素信号の読み出しが行われる。同様にして、3行目以降の水平ラインに配列された画素の画素信号の読み出しが、前行の水平ラインに配列された画素の画素信号の読み出しが終了した後に順次実行される。このとき、1行目の水平ラインの画素の画素信号の読み出しが開始されてから、最終行の水平ラインの画素の画像信号の読み出しが終了するまでの期間が、電子シャッタが全閉されるまでの遅延時間(図5中シャッタ全閉遅延時間)となる。
【0056】
ここで、図6に示すように、1H期間は、画素信号及び制御信号を出力する期間と、ブランクデータを出力する期間とから構成される。なお、制御信号としては、例えば読み出す水平ラインの位置、又はどのタイミングで読み出されたかを示す同期コードを示す信号である。この1H期間のうち、画素信号及び制御信号を読み出す期間は、同一の水平ラインに配列される全画素の画素信号が各画素から出力されてから、ADC80にてA/D変換されるまでの時間及び制御信号を出力する時間を考慮して設定される期間である。また、ブランク信号(0信号)を読み出す期間は、画像処理回路55のデータ処理部66における処理に係る時間を考慮して設定される期間である。なお、1H期間は、画素信号を読み出す期間とブランクデータを読み出す期間とから構成してもよい。
【0057】
上述したように、測光センサ37は、ボディ駆動制御回路51によって駆動制御される。ここで、ボディ駆動制御回路51は、被写界の測光やシーン解析時に実行される測光センサ37の駆動制御の内容と、閃光撮影のTTL調光時に実行される測光センサ37の駆動制御の内容とを異なる駆動制御の内容にて実行する。
【0058】
まず、被写界の測光やシーン解析時に実行される測光センサ37の駆動制御の内容について説明する。デジタルカメラ10においては、測光センサ37を用いた被写界の測光やシーン解析を一定間隔で繰り返し実行している。これら被写界の測光やシーン解析を行う場合には、ボディ駆動制御回路51は、上述したローリングシャッタにより測光センサ37を駆動制御して、測光センサ37の全水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出す。
【0059】
測光センサ37をローリングシャッタにて駆動制御する際に、ボディ駆動制御回路51は、ブランク信号の読み出し時間を第1期間とした1H期間を設定する。上述したように、第1期間は、画像処理回路55のデータ処理部66における処理時間を考慮して設定される期間である。つまり、被写界の測光やシーン解析を行う場合には、画像処理回路55のデータ処理部66における処理時間を考慮した1H時間を設定することで、被写界の測光やシーン解析を適切に実行することが可能となる。
【0060】
次に、閃光撮影時における測光センサ37の駆動制御の内容について説明する。閃光撮影時には、閃光装置52によるモニタ発光を行ったときの測光データ及び定常光のときの測光データに基づいて、本発光を行うときの閃光の発光量を調光する。この閃光の発光量の調光としては、TTL調光が挙げられる。このTTL調光において、ボディ駆動制御回路51は、上述したローリングシャッタにより測光センサ37を駆動制御する。TTL調光時のローリングシャッタによる測光センサ37の駆動制御を行う場合、ボディ駆動制御回路51は、測光センサ37に設けられる水平ラインのうち、隣り合う2本の水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出した後、例えば12本の水平ラインを空けて隣り合う2本の水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出す、間引き読み出しにて、測光センサ37の一部の画素の画素信号を読み出す(図7参照)。
【0061】
なお、隣り合う2本の水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出した後、12本の水平ラインを空けて隣り合う2本の水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出しているが、これに限定される必要はなく、間引く水平ラインの数は、これに限定されるものではない。
【0062】
図7に示すように、TTL調光においては、ボディ駆動制御回路51は、調光が開始されてから一定時間T1を経過したときに閃光装置52を駆動している。このため、ボディ駆動制御回路51は、測光センサ37の水平ラインのうち、対象となる水平ラインに配列される画素に対する制御信号ΦR(n=1,2,13,14,・・・1+12x,2+12x)の出力を時間T1が経過するまでに実行する必要がある。そこで、ボディ駆動制御回路51は、対象となる水平ラインに配列される画素に対して制御信号ΦRを出力する出力間隔を、被写界の測光及びシーン解析時に比べて短く設定し、タイミングジェネレータ75に、出力間隔を変更する信号を出力する。
【0063】
言い換えれば、TTL調光における1H期間(図7中符号91)を、被写界の測光やシーン解析における1H期間よりも短く設定する。ここで、画素信号及び制御信号を出力する期間は一定である。つまり、TTL調光における1H期間を短く設定する場合には、ブランクデータを出力する期間を短く設定する。ここでは、被写界の測光やシーン解析時のブランク信号を読み出す期間を、第1期間よりも短い第2期間に設定する(図6参照)。つまり、TTL調光時における1H期間は、画像処理回路55における処理に係る時間を考慮せずに、画素信号を読み出す速度が早くなるように設定される。
【0064】
このように、TTL調光における1H期間を被写界の測光やシーン解析における1H期間よりも短く設定することで、電子シャッタの全開遅延時間や全閉遅延時間が短縮される。上述したように、電子シャッタが全開の状態となった後でモニタ発光が開始されるので、調光開始からモニタ発光までのタイムラグを少なくした調光処理を開始することが可能である。なお、本実施形態では、調光を開始してから、時間T1経過後にモニタ発光を行うようにしているが、これに限定される必要はなく、読み出し対象となる全水平ラインに対して制御信号ΦRを出力したことを受けて、モニタ発光を行うようにしてもよい。
【0065】
ボディ制御回路51は、対象となる水平ラインに配列される画素の画素信号を読み出す1H期間を次のように設定する。測光センサ37に設けられる複数の画素P(i,j)のうち、水平ラインに配列される画素の数は一定であることから、画素信号及び制御信号を読み出す期間は、被写界の測光やシーン解析時と同一の期間となる。一方、ブランク信号を読み出す期間については、被写界の測光やシーン解析時で用いる第1期間よりも短い第2期間に設定される。したがって、TTL調光時において設定される1H期間は、被写界の測光やシーン解析時に設定される1H期間よりも短く設定される。このため、TTL調光時には、電子シャッタが全開の状態から全閉の状態になるまでの遅延時間が短くなる。
【0066】
ところで、対象となる水平ラインのいずれかに配列された画素の画素信号を読み出している際にも、未だ読み出していない水平ラインに配列される画素においては、電荷の蓄積が実行されている。このため、TTL調光時に設定される1H期間を、被写界の測光やシーン解析時で用いる1H期間よりも短く設定することで、未だ読み出していない水平ラインに配列される画素における電荷の蓄積を不要に継続させる必要がなくなり、蓄積される電荷を飽和させることが抑止される。この結果、TTL調光を適切に実行することが可能となる。
【0067】
本実施形態では、被写界の測光及びシーン解析時とTTL調光時との間で、ブランク信号を読み出す期間を変えているが、これに限定される必要はなく、画素信号を読み出す期間を切り替えることも可能である。上述したように画素信号を読み出す期間は、A/D変換の処理精度に起因しているので、被写界の測光及びシーン解析時にはA/D変換の処理精度を高く、TTL調光時にはA/D変換の処理精度を低く設定することで、画素信号を読み出す期間を被写界の測光及びシーン解析時とTTL調光時との間で切り替えることができる。また、この他に、ブランク信号を読み出す期間と、画素信号を読み出す期間との双方を変更してもよい。
【0068】
本実施形態では、デジタルカメラの例を取り上げているが、これに限定される必要はなく、図2に示す各部を備えた測光装置であってもよい。
【0069】
本実施形態では、デジタルカメラに設けられる閃光装置を用いたTTL調光について説明しているが、これに限定される必要はなく、デジタルカメラに着脱される閃光装置を用いてTTL調光を行う場合であっても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…デジタルカメラ、37…測光センサ、51…ボディ駆動制御回路、52…閃光装置、55…画像処理回路、61…センサ駆動部、66…データ処理部、67…制御演算部、68…測光演算部、69…TTL調光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷を蓄積する複数の画素を備えた測光センサと、
前記測光センサから出力される信号に対して実行される処理の内容に基づいて、前記複数の画素に蓄積された電荷を読み出す際の読み出し時間を設定する設定部と、
前記設定部により設定される前記読み出し時間を用いて、前記複数の画素に蓄積された電荷を読み出すセンサ駆動部と、
を備えたことを特徴とする測光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測光装置において、
閃光撮影時に被写界に向けて発光される閃光の発光量を調光する第1の処理と、前記被写界の測光又は前記被写界のシーンの解析のいずれか一方を行う第2の処理とを行う処理部を備え、
前記設定部は、前記第1の処理を実行する場合に設定される前記読み出し時間を、前記第2の処理を実行する場合に設定される前記読み出し時間よりも短く設定することを特徴とする測光装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の測光装置において、
前記測光センサは、二次元状に配列された複数の画素を備え、
前記センサ駆動部は、前記測光センサの前記複数の画素のうち、同一のラインに配列される画素に蓄積される電荷をライン毎に順次読み出すローリングシャッタにより前記測光センサを駆動制御することを特徴とする測光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測光装置において、
前記センサ駆動部は、前記処理部により前記第1の処理を実行する場合に、前記測光センサの前記複数の画素のうち、読み出す対象となるライン上に配列される画素の電荷をライン単位で間引きながら、前記ローリングシャッタにより前記測光センサを駆動制御することを特徴とする測光装置。
【請求項5】
請求項3に記載の測光装置において、
前記センサ駆動部は、前記処理部により前記第2の処理を実行する場合に、前記ローリングシャッタにより前記測光センサを駆動制御することで、前記測光センサの前記複数の画素の全ての画素の電荷を前記ライン毎に読み出すことを特徴とする測光装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の測光装置において、
前記設定部は、前記第1の処理を実行する場合に、前記ライン毎に電荷の蓄積を開始する際のライン毎の遅延時間を、前記第2の処理を実行する場合のライン毎の遅延時間よりも小さく設定することを特徴とする測光装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の測光装置と、
被写界を撮像する撮像素子と、
前記測光装置による測光結果に基づいて決定された撮像時の撮像条件に基づいて前記撮像素子を駆動制御する撮像素子制御部と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40984(P2013−40984A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175904(P2011−175904)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】