説明

測定装置および方法

【課題】近距離対象物の距離測定の精度を維持しつつ高速応答を図る。
【解決手段】演算実施判定部52は、A/D変換部23から提供される2周波のドップラ信号の信号強度や、演算結果選択部54から通知される過去の算出距離等に基づいて、対象物が所定範囲内に存在するか否かを判定する。対象物が所定範囲外の場合、FFT方式演算部51による算出距離が、演算結果選択部54を介して演算結果出力部55から出力される。対象物が所定範囲内の場合、タイムインターバル方式演算部53による算出距離と、FFT方式演算部51による算出距離とのうちの、演算結果選択部54により選択された方が、演算結果出力部55から出力される。本発明は、プリクラッシュシステム等の高応答システムに適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物との距離または相対速度を測定する測定装置および方法に関する。特に、対象物が近距離に近づいてきたときでも、高速応答の距離測定または/および相対速度の測定ができるようになった測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、CW(Continuous Wave)方式のレーダ、FMCW方式のレーダ、2周波CW(Continuous Wave)方式のレーダ(以下、2周波CWレーダと称する)等が知られている(例えば特許文献1,2参照)。例えばこれらのうちの2周波CWレーダは、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、その検出結果を用いて他車の相対速度や距離を測定する。
【0003】
自動車(自車)には、このような2周波CWレーダ等のセンサを用いて先行車(他車)との車間距離を所定に保ちながら自動追従できるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)システムが搭載されている。また、近年では、このような2周波CWレーダ等のセンサを用いて自車と他車に衝突しそうであること(プリクラッシュ)を検知して衝突時に衝撃を軽減するためのプリクラッシュシステムが搭載されてきた。
【0004】
このように、自動車にはセンサからの信号を利用した用途の異なるシステムが複数搭載されるようになってきている。
【0005】
このようなシステムでは、その性質上、他車が近距離に近づいてきたときの距離測定については、その精度を維持しつつも高速応答であることが要求される。
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の2周波CWレーダのようにFFT(Fast Fourier Transform)解析処理を用いたセンサでは、解析処理には時間がかかるため応答性が悪いという問題がある。このため、他車(対象物)が所定以上の近距離に近づいてきた場合には、上述した要望に十分に応えられない状況である。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高速応答の距離測定あるいは/および相対速度の測定ができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の測定装置は、所定周波数の連続波である送信信号と、対象物からの反射波とを混合することによって生成された混合信号を用いて前記対象物との相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する測定装置であって、前記対象物が所定範囲内に存在するか否かを判定する判定部と、タイムインターバル方式を用いて前記相対速度および距離のうち少なくとも一つを算出する第1の演算部と、前記タイムインターバル方式とは異なる別方式を用いて前記相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する第2の演算部とを備える。
【0009】
これにより、対象物が近距離に近づいてきたときでも、高速応答の距離測定や相対速度測定ができるようになる。
【0010】
例えば、測定装置は、CW(Continuous Wave)方式のレーダ、FMCW方式のレーダ、2周波CW(Continuous Wave)レーダ等により構成される。
【0011】
判定部、第1の演算部、および第2の演算部は、例えば、マイクロコンピュータにより、或いは、演算制御回路により、またはそれらの組合せにより構成される。この場合、各部は、必ずしも別々の単位(例えば回路基板等の単位)として構成する必要は無く、幾つかの手段を所定の1単位にまとめて構成するようにしてもよい。逆に、1つの手段は、1単位で構成する必要もなく、幾つかの単位に分割し構成するようにしてもよい。
【0012】
前記混合信号はドップラ信号であり、前記判定部により前記対象物が所定範囲内に存在すると判定された場合には、前記第1の演算部は、前記ドップラ信号の周波数を検出して、その周波数を利用して前記対象物との相対速度を算出する。
【0013】
前記送信信号は第1の周波数を有する第1の送信信号と第2の周波数を有する第2の送信信号を含み、前記混合信号は前記第1の送信信号を基に作成された第1のドップラ信号と前記第2の送信信号を基に生成された第2のドップラ信号を含み、前記判定部により前記対象物が所定範囲内に存在すると判定した場合には、前記第1の演算部は、前記第1のドップラ信号と前記第2のドップラ信号の位相差を検出して、その位相差を利用して前記対象物との距離を算出する。
【0014】
これにより、測定装置として、2周波CW(Continuous Wave)レーダを採用することが容易にできるようになる。
【0015】
前記判定部は、前記第1のドップラ信号または前記第2のドップラ信号の信号強度が所定強度以上になった場合、前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定する。
【0016】
これにより、かかる判定処理に伴う演算制御手段の負荷を低減させ、ひいては、演算制御手段の構成の簡素化やコスト削減ができるようになる。
【0017】
前記判定部は、前記第1のドップラ信号または前記第2のドップラ信号の波形が飽和している場合、前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定する。
【0018】
これにより、対象物が近距離に近づいたことをトリガとして従来行われていたアンプのゲイン調整が不要になる。
【0019】
前記判定部は、前記第2の演算部が演算した前記対象物との距離が所定距離以下の場合、前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定する。
【0020】
これにより、かかる判定処理に伴う演算制御手段の負荷を低減させ、ひいては、演算制御手段の構成の簡素化やコスト削減ができるようになる。
【0021】
前記別方式は、前記第1のドップラ信号と前記第2のドップラ信号とに対してFFT(Fast Fourier Transform)解析処理を施すことで、前記位相差を検出するFFT方式である。
【0022】
これにより、遠距離に複数の対象物が存在する場合でも、複数の対象物のそれぞれの距離を測定できるようになる。
【0023】
前記判定部が前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定した場合、さらに、前記第2の演算部は、前記対象物ととの距離を算出し、前記第1の演算部による算出結果と前記第2の演算部による算出結果とのうちの何れか一方を、前記対象物との距離として出力する第3の演算部をさらに備える。
【0024】
これにより、距離の算出の精度がより一段とよくなる。
【0025】
前記第1の演算部または前記第2の演算部は、前記第1のドップラ信号のドップラ周波数と、前記第2のドップラ信号のドップラ周波数とのうちの少なくとも一方を検出し、検出したドップラ周波数を利用して、前記対象物の相対速度を算出する。
【0026】
これにより、測定装置は、対象物の距離のみならず相対速度も出力できるようになる。
【0027】
本発明の第2の側面の測定方法は、上述した本発明の一側面の測定装置に対応する方法である。
【発明の効果】
【0028】
以上のごとく、本発明によれば、距離測定および/または相対速度の測定が実行できる。特に、対象物が近距離に近づいてきたときでも、高速応答の距離測定ができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明を適用した測定装置の一実施の形態の構成例を示している。
【0030】
図1の例の測定装置は、2周波CWレーダ1として構成されている。
【0031】
2周波CWレーダ1は、その名称の如く、2周波CW方式による測定を行うことができる。
【0032】
ここで、2周波CW方式による測定の概略について説明する。
【0033】
2周波CWレーダ1は、周波数f1のCW(Continuous Wave)と、周波数f2のCWとを時分割で切り替えた結果得られる信号(以下、2周波CWと称する)を生成し、その2周波CWを送信信号Ssとして出力する。
【0034】
この送信信号Ssは測定対象物2において反射し、その反射信号が受信信号Srとして2周波CWレーダ1に受信される。
【0035】
このとき、2周波CWレーダ1と測定対象物2との間に相対速度vが存在すれば、送信信号Ssの周波数f1,f2のそれぞれに対してドップラ周波数△f1,△f2のそれぞれが発生し、その結果、受信信号Srの周波数は、周波数f1+△f1,f2+△f2となる。換言すると、2つの周波数f1+△f1,f2+△f2を有する2周波CWが、受信信号Srと等価な信号となる。
【0036】
そこで、2周波CWレーダ1は、この受信信号Srからドップラ周波数△f1または△f2を検出して、次の式(1)または式(2)の演算を行うことで、2周波CWレーダ1に対する測定対象物2の相対速度vを求めることができる。
【0037】
v = c * △f1 / (2*f1) ・・・(1)
v = c * △f2 / (2*f2) ・・・(2)
なお、cは光速を表している。
【0038】
また、2周波CWレーダ1は、ドップラ周波数△f1であるドップラ信号の位相φ1と、ドップラ周波数△f2であるドップラ信号の位相φ2とを、受信信号Srから検出して、次の式(3)の演算を行うことで、2周波CWレーダ1と測定対象物2との間の距離Lを求めることができる。
【0039】
L = c * (φ1 − φ2) / 4π * (f1 − f2) ・・・(3)
【0040】
このような一連の処理により行われる測定が、2周波CW方式による測定である。
【0041】
図1の例の2周波CWレーダ1は、このような2周波CW方式による測定を行うべく、
発振部11乃至演算制御部24を含むように構成されている。
【0042】
発振部11は、演算制御部24の制御に基づいて、周波数f1のCWと周波数f2のCWとを交互に切り替えて発振する。即ち、周波数f1,f2を有する2周波CWが発振部11から出力され、増幅部12に提供される。
【0043】
増幅部12は、この2周波CWに対して増幅処理等の各種処理を適宜施して、分岐部13に提供する。
【0044】
分岐部13は、増幅部12からの2周波CW、即ち、周波数f1,f2を有する2周波CWを、増幅部14と混合部18とのそれぞれに提供する。
【0045】
増幅部14は、分岐部13からの2周波CW、即ち、周波数f1,f2を有する2周波CWを、増幅処理等の各種処理を適宜施し、その結果得られる信号を出力信号としてアンテナ部15に提供する。この増幅部14の出力信号が送信信号Ssとして、電波の形態でアンテナ部15から出力される。
【0046】
なお、2周波CWは、必要に応じて、所定の変調方式により変調された上で、送信信号Ssとして、アンテナ部15から出力される。この変調処理は、例えば増幅部14において実行されるとする。
【0047】
送信信号Ssは測定対象物2で反射し、その反射信号が受信信号Srとしてアンテナ部16に受信される。
【0048】
なお、図1の例では、送信用のアンテナ部15と受信用のアンテナ部16とが別個に設けられているが、送信用と受信用とを併用する1つのアンテナ部を設けるようにしてもよい。
【0049】
増幅部17は、アンテナ部16に受信された受信信号Srに対して、増幅処理等の各種処理を適宜施し、その結果得られる2周波CWを出力信号として混合部18に提供する。なお、増幅部14が変調処理を実行している場合には、増幅部17は、さらに、上述した2周波CWを得るために、その変調処理に対応する復調処理を実行する。
【0050】
この増幅部17から出力される2周波CW、即ち、受信信号Srから得られた2周波CWは、上述したように、周波数f1+△f1と、周波数f2+△f2とを有する。即ち、増幅部17からは、あたかも、周波数f1+△f1のCWと、周波数f2+△f2のCWとが時分割で交互に切り替えられて順次出力されることになる。
【0051】
混合部18は、この増幅部17から出力される2周波CW(周波数f1+△f1,f2+△f2を有する2周波CW)と、分岐部13から出力される2周波CW(周波数f1,f2を有する2周波CW)とを混合し、その結果得られる混合信号Smix、具体的には例えば図2に示される波形を有する混合信号Smixを、スイッチ部20に出力する。
【0052】
スイッチ部20は、切り替えタイミング部19の制御に基づいて、その出力先を、増幅部21−1と増幅部21−2とのうちの一方から他方へ切り替える。即ち、切り替えタイミング部19は、演算制御部24による発振部11の発振周波数f1,f2の切り替えタイミングを監視し、周波数がf2からf1に切り替えられるタイミングで、スイッチ部20の出力先を増幅部21−1側に切り替え、また、周波数がf1からf2に切り替えられるタイミングで、スイッチ部20の出力先を増幅部21−2側に切り替える。
【0053】
即ち、混合信号Smixのうちの、発振部11が周波数f1のCWを発振している間に混合部18から出力された信号は、スイッチ部20を介して増幅部21−1に提供されて増幅処理等の各種処理が適宜施され、さらに、ローパスフィルタ部22−1により高域成分(ノイズ等)が除去された上で、信号S△f1としてA/D変換部23に提供される。この信号S△f1が、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号である。
【0054】
一方、混合信号Smixのうちの、発振部11が周波数f2のCWを発振している間に混合部18から出力された信号は、スイッチ部20を介して増幅部21−2に提供されて増幅処理等の各種処理が適宜施され、さらに、ローパスフィルタ部22−2により高域成分(ノイズ等)が除去された上で、信号S△f2としてA/D変換部23に提供される。この信号S△f2が、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号である。
【0055】
即ち、図2に示されるように、混合部18から出力された混合信号Smixは、切り替えタイミング部19乃至ローパスフィルタ部22−2により、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれに分離されて、A/D変換部23にそれぞれ提供される。
【0056】
A/D変換部23は、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれに対して、A/D変換(Analog to Digital変換)処理を施し、その結果得られるデジタルのドップラ信号S△f1とドップラ信号S△f2とのそれぞれを演算制御部24に提供する。
【0057】
演算制御部24は、2周波CWレーダ1全体の制御、例えば上述したように、発振部11が発振するCWの周波数をf1とf2のうちの一方から他方へ切り替える制御等を行う。
【0058】
また、演算制御部24は、A/D変換部23からデジタルデータの形態で順次提供されてくるドップラ信号S△f1,S△f2とから、ドップラ周波数△f1,△f2の検出や、それらの位相差φ1−φ2の検出を行う。そして、演算制御部24は、それらの検出結果を上述した式(1)乃至(3)に代入して演算することで、測定対象物2の相対速度vや、2周波CWレーダ1と測定対象物2との間の距離Lを求めて、外部に出力する。
【0059】
なお、演算制御部24の詳細な構成例については、図11を参照して後述する。
【0060】
このように、演算制御部24は、ドップラ周波数△f1,△f2の検出や、それらに対応する位相差φ1−φ2の検出を行う必要がある。
【0061】
この検出方式としては、ドップラ信号S△f1,S△f2に対して周波数解析処理、例えばFFT(Fast Fourier Transform)解析処理(以下、単にFFTと称する)を施すことで、ドップラ周波数△f1,△f2の検出や、それらに対応する位相差φ1−φ2の検出を行う方式が広く利用されている。以下、かかる方式を、FFT方式と称する。
【0062】
即ち、演算制御部24は、FFT方式を利用する場合には、図3に示されるような一連の処理を実行することで、測定対象物2の相対速度vや、2周波CWレーダ1と測定対象物2との間の距離Lを求めて、外部に出力することができる。
【0063】
詳細には、ステップSaにおいて、演算制御部24は、A/D変換部23から提供されるドップラ信号S△f1,S△f2の波形を取得する。
【0064】
ステップSbにおいて、演算制御部24は、ステップSaの処理で取得した各波形を利用して、FFT方式によるドップラ周波数△f1,△f2や、それらに対応する位相差φ1−φ2の検出を行う。
【0065】
ステップScにおいて、演算制御部24は、ステップSbの検出結果を上述した式(1)乃至(3)に代入して演算することで、距離Lや相対速度vを算出する。
【0066】
ここで、2周波CWレーダ1をACCシステムやプリクラッシュシステムに搭載させる場合等について考える。この場合、上述したように、その性質上、他車が近距離に近づいてきたときの距離測定については、その精度を維持しつつも高速応答であることが要求される。
【0067】
しかしながら、上述したように、従来の2周波CWレーダでは、他車(対象物)が所定以上の近距離に近づいてきた場合には、応答速度が十分でないという問題点がある。これらの問題点のため、上述した要望に十分に応えられない状況である。
【0068】
これに対して、本発明が適用される2周波CWレーダ1は、この問題点を解決できる構成とされている。従って、2周波CWレーダ1をACCシステムやプリクラッシュシステムに搭載させることで、上述した要望に十分に応えることできるようになる。
【0069】
以下、本発明が適用される2周波CWレーダ1が上述した問題点を解決可能である理由について説明していく。
【0070】
一般的に、受信信号Srの強度のダイナミックレンジは検知距離のダイナミックレンジの4乗に比例する。このことは、例えば、測定対象物2の最大検知距離Lmaxを15mとしたときに最小検知距離Lminを1m、50cm、10cmとそれぞれ設定したときの受信信号Srの強度のダイナミックレンジがそれぞれ、50,625倍、810,000倍、506,250,000倍と増加することを意味する。2周波CWレーダ1等の実際の回路によって、これらの広いダイナミックレンジを有する受信信号Srを処理することを考えると、受信アンプ(図1の例では増幅部21−1や21−2等)によるゲイン調整やADコンバータ(図1の例ではA/D変換部23)の量子化分解能だけでは、信号処理を精度良く実行することは難しい。
【0071】
即ち、近距離の測定対象物2についての受信信号Srは、歪んだり飽和する場合がある。このような場合、その受信信号Srから抽出されるドップラ信号S△f1,S△f2も、例えば図4に示されるように、歪んだり飽和することになる。このような歪んだり飽和しているドップラ信号S△f1,S△f2を利用して、FFT方式により距離Lや相対速度vを算出したとしても、その算出結果は正確ではない、という第1の問題が生ずる。
【0072】
また、2周波CWレーダ1を自車に搭載し、衝突防止用途に用いることを考える。このとき、他車等の測定対象物2と自車との距離Lが短縮されればその分だけ衝突の可能性が高くなることは自明である。よって、測定対象物2が近距離に存在するようになるほど、2周波CWレーダ1の応答時間を短縮させ、より精度よく衝突判定を行わせたい、という要望が存在する。しかしながら、従来の様にFFT方式だけを利用した場合には、かかる要望に応えることは困難である、という第2の問題が生ずる。
【0073】
即ち、FFT方式では、一般的に演算対象となる信号の最大周波数(ここではドップラ周波数△f1,△f2)の波が、10波分に相当する時間の信号サンプリングが少なくとも必要であるといわれており、これ以下の時間では演算精度の低下が生じる。すなわち、FFT方式の応答速度は、このサンプリング時間と、ドップラ周波数△f1,△f2や位相差φ1−φ2の検出に要する時間(いわゆる演算時間)との加算時間であることを考慮すると、サンプリング時間によって制約を受けることが容易にわかる。このような制約を受けるFFT方式では、測定対象物2が近距離に存在する場合には、必要な距離精度を維持しつつ応答速度を上げることは困難であるという問題、すなわち、上述した第2の問題が生ずることになる。
【0074】
このように、従来の2周波CWレーダでは、測定対象物2が近距離に存在する場合でもFFT方式を利用していたため、上述した第1の問題や第2の問題が生じていた。
【0075】
そこで、本発明人は、かかる第1の問題や第2の問題を解決すべく、次のような手法を発明した。即ち、以下に述べる手法が適用された測定装置の一実施の形態が、図1の2周波CWレーダ1である。
【0076】
2周波CWレーダ1が、測定対象物2を追跡する最中(距離Lを逐次算出している最中)、測定対象物2の距離Lが所定距離を超えていると判定している場合、FFT方式を利用して距離Lや相対速度vを算出して、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定した場合、いわゆるタイムインターバル方式を利用して距離Lや相対速度vを算出する、という手法を本発明人は発明した。以下、かかる手法を、距離切替手法と称する。なお、距離切替手法では、その呼称からわかるように、相対速度vの算出自体は必須とはされていない。
【0077】
ここで、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたか否かの判定手法については、特に限定されない。
【0078】
例えば、上述したように、受信信号Srの強度(電力)は、測定対象物2の距離Lが短くなるほど大きくなっていくという性質がある。そこで、この性質を利用して、受信信号Srまたはそれに基づく信号(例えばドップラ信号S△f1,S△f2)の強度(電力)が所定以上である場合には、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定する手法を採用することができる。以下、かかる手法を、受信強度判定手法と称する。
【0079】
なお、増幅部21−1,21−2のゲイン調整にも限界があるので、ある所定以上の受信強度の受信信号Srが受信されている場合には、図4を用いて上述したように、その信号波形は飽和することになる。従って、受信信号Srまたはそれに基づく信号(例えばドップラ信号S△f1,S△f2)が飽和している場合には、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定するといった手法も採用できる。かかる手法も、結局のところ、受信強度判定手法の一実施の形態であるといえる。
【0080】
また例えば、2周波CWレーダ1は、距離Lを逐次算出しているので、その算出距離Lが閾値以下となった場合、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定する手法を採用することができる。以下、かかる手法を、算出距離判定手法と称する。
【0081】
また例えば、図1には図示はしないが、2周波CWレーダ1とは別の測定装置(別の距離センサ等)の検出結果を用いて、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定する手法を採用することができる。以下、かかる手法を、別センサ判定手法と称する。
【0082】
さらに例えば、上述した各種手法を組み合わせてもよい。例えば、受信強度判定手法と算出距離判定手法とを組み合わせた場合の処理例について、図10を用いて後述することにする。
【0083】
ここで、タイムインターバル方式について、説明する。
【0084】
タイムインターバル方式とは、ドップラ信号S△f1,S△f2の立ち上がり時間と立ち下がり時間を観察することで、ドップラ周波数△f1,△f2の検出や、それらに対応する位相差φ1−φ2の検出を行う方式をいう。
【0085】
なお、ここでいう立ち上がり時間や立ち下り時間とは、信号電圧が変化するのに要する時間を意味するのではない。即ち、ドップラ信号S△f1,S△f2の波形が所定電圧値(例えば0V)を横切るタイミング(時刻)のうち、波形の変化状態が所定電圧値を境に上昇している状態のタイミングを、立ち上がり時間と称し、所定電圧値(例えば0V)を横切るタイミング(時刻)のうち、波形の変化状態が所定電圧値を境に下降している状態のタイミングを、立ち下り時間と称している。
【0086】
また、立ち上がり時間や立ち下り時間(位置)を正確に観察するため、ドップラ信号S△f1,S△f2自体を利用するのではなく、それをさらに増幅させた信号、例えば、図5のステップSB内に描画されているように、パルス信号SD△f1,SD△f2等を利用すると好適である。
【0087】
図5の例では、パルス信号SD△f1,SD△f2の立ち上がりの時間差から位相差φ1−φ2が検出され、パルス信号SD△f1,SD△f2の各立ち上がりの繰り返し時間からドップラ周波数△f1,△f2が検出される。
【0088】
なお、ドップラ周波数△f1,△f2は、図5の例では説明を容易なものとするため、パルス信号SD△f1,SD△f2の各立ち上がりの繰り返し時間から検出されるとしたが、パルス信号SD△f1,SD△f2の各立ち上がりと次の各立ち下がりとの間の時間、または、パルス信号SD△f1,SD△f2の各立ち下がりと次の各立ち上がりとの間の時間から検出されるようにしてもよい。
【0089】
また、図5の例では、タイムインターバル方式の理解を容易なものとするため、ドップラ信号S△f1,S△f2の増幅信号の一例として、パルス信号SD△f1,SD△f2が利用されているが、上述したように、増幅の趣旨は、各立ち上がり時間や立ち下り時間の計測の精度向上のためであり、タイムインターバル方式にパルス信号を利用することは必須ではない。
【0090】
例えば、図6に示されるように、ドップラ信号S△f1,S△f2それ自体またはその増幅信号が利用されてもよい。
【0091】
この場合、図6に示されるように、ドップラ信号S△f1,S△f2(増幅後の信号含む)の両信号が所定電圧値を横切る時間差、即ち、立ち上がりの時間差から位相差φ1−φ2が検出される。また、ドップラ信号S△f1,S△f2(増幅後の信号含む)のそれぞれが所定電圧値を横切る各時間間隔、即ち、各立ち上がりの繰り返し時間からドップラ周波数△f1,△f2が検出される。
【0092】
このように、タイムインターバル方式は、検出対象のドップラ信号S△f1,S△f2(増幅後の信号含む)が所定電圧値を横切る時間さえ正確に測定できればよいため、測定対象物2が近距離に存在することに起因する受信信号Srの飽和の影響は受けない。従って、受信信号Srが飽和しないように受信アンプ(例えば図1の例では増幅部21−1,21−2等)の増幅率を調整する制御が容易あるいは不要とすることが可能である。
【0093】
また、図3と図5とを比較するに、両方式の相違点は基本的に、図3のステップSbと図5のステップSBにおける位相差φ1−φ2等の検出処理が異なる点だけである。ところが、図3のステップSbでは、上述したように、この検出処理のためには、FFTを行うためのデータの採取時間、即ち、サンプリング時間が必要になり、その分だけ処理時間が必要となる。これに対して、図5のステップSBでは、検出対象のドップラ信号S△f1,S△f2(増幅後の信号含む)が所定電圧値を横切る時間さえ正確に測定できればよいため、データの採取時間、即ち、サンプリング時間は不要であり、その分だけ、図3のステップSbよりも短時間で処理が終了する。その結果、距離算出までの全体の応答速度としては、タイムインターバル方式の方が、FFT方式よりも高速であることがわかる。
【0094】
従って、測定対象物が近距離に存在する場合には、タイムインターバル方式を効果的に利用することで、即ち、本発明の距離切替手法を適用することで、上述した第1の問題や第2の問題を解決できるようになる。
【0095】
以下、図1の演算制御部24の処理の観点から、距離切替手法についてさらに説明する。
【0096】
演算制御部24は、測定対象物2の距離Lが所定距離を超えていると判定している場合、FFT方式を利用して距離Lや相対速度vを算出する。即ち、上述した図3のステップSSa乃至Scの処理が実行される。
【0097】
これに対して、演算制御部24は、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定した場合、タイムインターバル方式を利用して距離Lや相対速度vを算出する。
【0098】
詳細には、図5のステップSAにおいて、演算制御部24は、A/D変換部23から提供されるドップラ信号S△f1,S△f2の波形を取得する。なお、このとき、演算制御部24が、ドップラ信号S△f1,S△f2の増幅信号(図5のパルス信号SD△f1,SD△f2含む)を生成してもよい。或いは、A/D変換部23も含めた演算制御部24の前段側において、ドップラ信号S△f1,S△f2の増幅信号(図5のパルス信号SD△f1,SD△f2含む)が予め生成されてもよい。
【0099】
図5や図6のステップSBにおいて、演算制御部24は、ステップSAの処理で取得した各波形を利用して、タイムインターバル方式によるドップラ周波数△f1,△f2や、それらに対応する位相差φ1−φ2の検出を行う。
【0100】
図5のステップSCにおいて、演算制御部24は、ステップSBの検出結果を上述した式(1)乃至(3)に代入して演算することで、距離Lや相対速度vを算出する。
【0101】
なお、詳細については図10を用いて後述するが、演算制御部24は、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定した場合、タイムインターバル方式と並行してFFT方式も利用して、距離Lや相対速度vを算出してもよい(図10のステップS5参照)。ただし、この場合には、演算制御部24は、何れか一方の方式の算出結果を選択して、或いは両方式の算出結果を統合した結果を、外部に出力する(図10のステップS6,S7参照)。
【0102】
また、本発明の距離切替手法の適用先は、2周波CWレーダ1に限定されないが、その他の適用先については後述する。また、その他の適用先を説明する際にあわせて、より一般化したタイムインターバル方式の定義について説明する。
【0103】
このように、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定した場合、タイムインターバル方式に切り替えることによって、受信信号Srの歪みの影響を回避できる。また、同時に2周波CWレーダ1の応答速度を向上させることもできる。
【0104】
ただし、タイムインターバル方式は、単一周波数が支配的な信号にしか用いることができないため、2周波CWレーダ1に適用する場合には、それぞれ相対速度vが異なる測定対象物2が複数存在するときには原則として用いることができない。
【0105】
例えば、図7に示されるように、自車31の前方に2周波CWレーダ1が搭載されており、その自車31の前方には、他車としての測定対象物2a,2bが存在したとする。この場合には、受信信号Srは、測定対象物2aでの反射信号Sraと、測定対象物2bでの反射信号Srbとの合成信号となる。
【0106】
ここで例えば、測定対象物2aの相対速度vaが,測定対象物2bの相対速度vbよりも低速であるする。この場合には、図8の左方に示されるように、測定対象物2aでの反射信号Sraについてのドップラ信号S△faのドップラ周波数△fa(実際には2周波のドップラ周波数△fa1,△fa2が存在するが、説明の簡略上1つにまとめて表現する)は、測定対象物2bでの反射信号Srbについてのドップラ信号S△fbのドップラ周波数△fb(実際には2周波のドップラ周波数△fb1,△fb2が存在するが、説明の簡略上1つにまとめて表現する)と比較して低周波となる。
【0107】
従って、図7と図8の状態の場合には、測定対象物2aでの反射信号Sraと、測定対象物2bでの反射信号Srbとの合成信号である受信信号Srが2周波CWレーダ1で受信され、その受信信号Srから抽出されるドップラ信号S△f(実際には2周波のドップラ周波数△f1,△f2が存在するが、説明の簡略上1つにまとめて表現する)は、図8の右方に示されるような波形の信号となってしまう。即ち、図8の左方に示されるドップラ信号S△fa,S△fbの合成信号が、図8の右方に示されるドップラ信号S△fとなっている。
【0108】
このような波形のドップラ信号S△fが、上述した図5のステップSAで取得された場合には、図5または図6のステップSBの検出結果、即ち、タイムインターバル方式によるドップラ周波数△f1,△f2と位相差φ1−φ2は、測定対象物2a,2bのいずれについてのものではなく全く関係の無い値となってしまう。即ち、そのようなドップラ周波数△f1,△f2や位相差φ1−φ2から算出される相対速度vや距離Lは、測定対象物2a,2bの何れのものでもない。
【0109】
このように、タイムインターバル方式は、2周波CWレーダ1に適用する場合には、それぞれ相対速度vが異なる測定対象物2が複数存在するときには原則として用いることができない。
【0110】
ところが、本発明の距離切替手法では、タイムインターバル方式が用いられるのは、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきた場合である。このような場合には、例えば図9に示されるように測定対象物2aが所定距離以下まで接近してきた場合には、送信信号Ssのほぼ全てが測定対象物2aで反射し、それより遠方の測定対象物2bまでほとんど到達しない。従って、このような場合の受信信号Srは、測定対象物2aでの反射信号Sraであるとみなすことができる。
【0111】
また、測定対象物2bは、測定対象物2aの遠方に存在するので、たとえ測定対象物2bでの反射信号Srbが受信信号に含まれていたとしても、上述したダイナミックレンジの距離の関係から、その反射信号Srbの受信強度は、反射信号Sraの受信強度よりは遥かに低く、受信号Srは反射信号Sraが支配的な信号となっている。
【0112】
以上のことから、1つの測定対象物2(図9の例では測定対象物2a)の距離Lが所定距離以下まで接近してきた場合には、受信信号Srは、その接近してきた1つの測定対象物2(図9の例では測定対象物2a)での反射信号、即ち、単一周波数が支配的な信号のみであるとみなすことができる。従って、1つの測定対象物2(図9の例では測定対象物2a)の距離Lが所定距離以下まで接近してきた場合には、タイムインターバル方式を用いることができるのである。
【0113】
ただし、より一段と精度を向上させたい場合等には、受信信号Srに単一周波数しか含まれていないか否かを判定し、単一周波数しか含まれていないと判定した場合にのみ、タイムインターバル方式を用い、それ以外の場合には、FFT方式を用いるようにしてもよい。ただし、単一周波数であるかの判定には、FFT方式による演算結果が必要となる。FFT方式は、上述したように、応答速度の遅い方式であるため、判定の回数やタイミング等を考慮する必要がある。
【0114】
次に、図1の2周波CWレーダ1の動作例について説明する。
【0115】
ただし、発振部11乃至A/D変換部23までが実行する動作については、従来の動作と基本的に同様であり、また、上述した発振部11乃至A/D変換部23の構成の説明を参照することで容易に理解可能であるため、ここではその説明については省略する。
【0116】
そこで、以下、図10のフローチャートを参照して、2周波CWレーダ1のうちの演算制御部24の動作(処理)例について説明する。
【0117】
なお、図10のフローチャートは、演算制御部24の処理のうちの、距離Lの算出処理についてのみ記述している。ただし、演算制御部24は、上述したように、距離Lに加えて或いはそれに代えて相対速度vの算出処理も実行できる。
【0118】
ステップS1において、演算制御部24は、A/D変換部23からの信号波形を取得する。
【0119】
ステップS2において、演算制御部24は、ステップS1の処理で取得された信号波形は、所定以上の電力を有しているか否かを判定する。
【0120】
なお、上述したように、かかる判定は、増幅部21−1,21−2のゲイン調整をしない場合やゲイン調整自体が限界になっている場合であって、測定対象物2の距離Lが所定距離以下に接近している場合には、ステップS1の処理で取得された信号波形は飽和している(図4参照)。従って、ステップS2の判定処理として、演算制御部24は、信号波形は飽和しているか否かを判定するようにしてもいい。
【0121】
ステップS1の処理で取得された信号波形が所定以上の電力を有していない(飽和していない)場合には、ステップS2の処理でNOであると判定されて、処理はステップS3に進む。
【0122】
ステップS3において、演算制御部24は、算出距離Lが閾値以下となったか否かを判定する。ここでいう算出距離Lとは、演算制御部24自身が過去に算出してきた距離Lの履歴(後述するステップS7の出力結果であって、過去の出力結果)のうちの少なくとも1つ、例えば直前の演算結果等をいう。
【0123】
算出距離Lが閾値を越えている場合、ステップS3の処理でNOであると判定されて、処理はステップS4に進む。
【0124】
ステップS4において、演算制御部24は、FFT方式により距離Lを算出する。換言すると、演算制御部24は、タイムインターバル方式の距離算出動作を禁止する。即ち、ステップS4の処理として、上述した図3のステップSa乃至Scの処理が実行される。ただし、ステップSaの処理については、ステップS1の処理であるとみなしてもよい。
【0125】
そして、ステップS7において、演算制御部24は、ステップS4の処理の結果、即ち、算出距離L(ここではさらに相対速度v)を出力する。ステップS8において、演算制御部24は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。処理の終了がまだ指示されていない場合、ステップS8の処理でNOであると判定されて、処理はステップS1に戻され、それ以降の処理が繰り返される。これに対して、処理の終了が指示された場合、ステップS8の処理でYESであると判定されて、演算制御部24の処理は終了となる。
【0126】
即ち、ステップS2とS3の判定処理とは、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたか否かの判定処理の一例である。具体的には、ステップS2の判定処理が、上述した受信強度判定手法に対応する処理であり、ステップS3の判定処理が算出距離判定手法に対応する処理である。
【0127】
従って、ステップS2,S3の判定処理でNOであると判定された場合とは、測定対象物2の距離Lが所定距離を超えていると判定された場合を意味するので、ステップS4において、FFT方式を利用した距離Lや相対速度vの算出が行われるのである。
【0128】
これに対して、ステップS2またはS3の判定処理でYESであると判定された場合とは、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたと判定された場合を意味するので、タイムインターバル方式を利用した距離Lや相対速度vの算出が行われるのである。
【0129】
ステップS5において、演算制御部24は、FFT方式とタイムインターバル方式との両方式により距離を算出する。即ち、ステップS5の処理として、上述した図3のステップSa乃至Scの処理とともに、図5や図6のステップSA乃至SCが実行される。ただし、ステップSa,SAの処理については、ステップS1の処理であるとみなしてもよい。
【0130】
ステップS6において、演算制御部24は、FFT方式とタイムインターバル方式とのうち一方を、出力対象の算出距離Lとして選択する。
【0131】
例えば上述したように、演算制御部24は、ステップS1の処理で取得された波形が単一周波数しか含まれていないと判定した場合には、タイムインターバル方式の演算結果を出力対象の算出距離Lとして選択する一方、複数周波数が含まれていると判定した場合には、FFT方式の演算結果を出力対象の算出距離Lとして選択するようにしてもよい。
【0132】
また、例えば、応答速度と精度とのバランスを図りたいような場合等には、所定間隔でタイムインターバル方式による演算結果を出力し、FFT方式による演算結果が算出されるたびに補正目的としてそれを出力するする、といった用途で2周波CWレーダ1を使用することも可能である。かかる用途を実現すべく、演算制御部24は、このステップS6の処理を実行するようにしてもよい。
【0133】
なお、図10の例では、タイムインターバル方式と同時にFFT方式も利用されて、両方式でそれぞれ距離Lが個々に算出されているが、FFT方式による並行算出は必須で無い。即ち、ステップS5の処理では、タイムインターバル方式のみを利用した距離Lの算出が行われてもよい。この場合、ステップS6の処理は不要となる。
【0134】
ステップS7において、演算制御部24は、ステップS6の処理の選択結果、即ち、タイムインターバル方式とFFT方式とのうちの選択された方式の算出距離Lを出力する。ステップS8において、演算制御部24は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。処理の終了がまだ指示されていない場合、ステップS8の処理でNOであると判定されて、処理はステップS1に戻され、それ以降の処理が繰り返される。これに対して、処理の終了が指示された場合、ステップS8の処理でYESであると判定されて、演算制御部24の処理は終了となる。
【0135】
このような図10のフローチャートに従った処理を実行可能な演算制御部24の詳細な機能的構成例が、図11に示されている。即ち、図11における各機能ブロックは、演算制御部24が有する機能のうちの、図10のフローチャートに従った処理を実現するための所定機能を有する機能ブロックである。換言すると、演算制御部24が有するその他の機能、例えば、発振部11が発振するCWの周波数をf1とf2のうちの一方から他方へ切り替える制御を行う機能ブロックについては、図11には描画されていない。
【0136】
図11における各機能ブロックは、ハードウエア単体で構成してもよいし、ソフトウエア単体で構成してもよいし、或いはそれらの組合せで構成してもよい。また、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックにまとめても構わないし、或いは、1つの機能ブロックをさらに小単位の機能ブロックに分割してもよい。換言すると、図11における各機能ブロックは、必ずしも演算制御部24内に設ける必要は無く、2周波CWレーダ1内であれば、演算制御部24の外部に設けるようにしてもよい。
【0137】
図11の例では、演算制御部24は、FFT方式演算部51乃至演算結果出力部55を含むように構成されている。
【0138】
FFT方式演算部51は、A/D変換部23から提供された信号波形を用いて、FFT方式による距離Lおよび相対速度vの算出を行い、その算出結果を演算結果選択部54に提供する。即ち、FFT方式演算部51は、図10のステップS1,S4,S5の処理実行時に動作する。
【0139】
演算実施判定部52は、A/D変換部23から提供された信号波形や、演算結果選択部54から提供された情報(過去の距離Lの出力結果等)に基づいて、タイムインターバル方式の演算を行うか否かを判定し、その判定結果をタイムインターバル方式演算部53と演算結果選択部54に通知する。換言すると、演算実施判定部52は、測定対象物2の距離Lが所定距離以下まで接近してきたか否かの判定を行う。即ち、演算実施判定部52は、図10のステップS1乃至S3の処理実行時に動作する。
【0140】
タイムインターバル方式演算部53は、演算実施判定部52から演算実施の許可が通知された場合、演算実施判定部52を介してA/D変換部23から提供された信号波形を用いて、タイムインターバル方式による距離Lおよび相対速度vの算出を行い、その算出結果を演算結果選択部54に提供する。即ち、タイムインターバル方式演算部53は、図10のステップS1,S5の処理実行時に動作する。
【0141】
これに対して、タイムインターバル方式演算部53は、演算実施判定部52から演算実施の禁止が通知された場合、その動作を停止する。即ち、この場合、タイムインターバル方式による距離Lおよび相対速度vの算出は行われない。換言すると、タイムインターバル方式演算部53は、図10のステップS4の処理実行時には、その動作が停止する。
【0142】
演算結果選択部54は、FFT方式演算部51による演算結果(距離Lおよび相対速度v)と、タイムインターバル方式演算部53による演算結果(距離Lおよび相対速度v)とのうちの何れか一方を選択して、演算結果出力部55に提供する。即ち、演算結果選択部54は、図10のステップS6の処理実行時に動作する。
【0143】
なお、タイムインターバル方式演算部53の動作が停止しているとき、即ち、タイムインターバル方式演算部53による演算結果が提供されてこないときには、演算結果選択部54は、選択の判断をすることなく、FFT方式演算部51による演算結果をそのまま、演算結果出力部55に提供するとする。
【0144】
また、演算結果選択部54は、FFT方式演算部51による演算結果(距離Lおよび相対速度v)と、タイムインターバル方式演算部53による演算結果(距離Lおよび相対速度v)とを統合した結果を、演算結果出力部55に提供するようにしてもよい。
【0145】
演算結果出力部55は、FFT方式演算部51による演算結果(距離Lおよび相対速度v)と、タイムインターバル方式演算部53による演算結果(距離Lおよび相対速度v)とのうちの、演算結果選択部54によって選択された演算結果を出力する。即ち、演算結果出力部55は、図10のステップS7の処理実行時に動作する。
【0146】
以上、本発明の距離切替手法が適用された測定装置の一例として、2周波CWレーダ1について説明した。ただし、本発明の距離切替手法は、図1の構成の2周波CWレーダ1のみならず、様々な構成の装置やシステムに適用可能である。なお、ここに、システムとは、複数の処理装置や処理部により構成される装置全体を表すものである。
【0147】
例えば、図12は、本発明の距離切替手法が適用された測定装置の一例であって、図1の2周波CWレーダ1とは異なる構成の測定装置の構成例を示している。即ち、図12の例の測定装置は、2周波CWレーダ100として構成されている。
【0148】
なお、図12の2周波CWレーダ100において、図1の2周波CWレーダ1と対応する箇所には対応する符号を付しており、これらの箇所の説明については適宜省略する。
【0149】
図12の2周波CWレーダ100のうちの、発振部11乃至A/D変換部23までの構成については、図1の2周波CWレーダ1と同様である。
【0150】
図12の2周波CWレーダ100の演算制御部124は、図1の演算制御部24と基本的に同様の機能を有している。即ち、演算制御部124は、2周波CWレーダ100全体の制御、例えば、発振部11が発振するCWの周波数をf1とf2のうちの一方から他方へ切り替える制御等を行う。
【0151】
ただし、図12の例では、図11の例との比較を容易にすべく、図10のフローチャートに従った処理を実現するために必要な機能ブロックのみが図示されている。即ち、図12における各機能ブロックは、演算制御部124が有する機能のうちの、図10のフローチャートに従った処理を実現するための所定機能を有する機能ブロックである。
【0152】
図12における各機能ブロックも、図11におけるものと同様に、ハードウエア単体で構成してもよいし、ソフトウエア単体で構成してもよいし、或いはそれらの組合せで構成してもよい。また、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックにまとめても構わないし、或いは、1つの機能ブロックをさらに小単位の機能ブロックに分割してもよい。換言すると、図12における各機能ブロックは、必ずしも演算制御部124内に設ける必要は無く、2周波CWレーダ100内であれば、演算制御部124の外部に設けるようにしてもよい。例えば、演算制御部124をマイクロコンピュータ等で構成するような場合には、後述する増幅部131,132等についてはマイクロコンピュータ等とは別に、即ち、演算制御部124の外部に設けるようにしてもよい。
【0153】
演算制御部124のうちの、FFT方式演算部51乃至演算結果出力部55は、図1の2周波CWレーダ1の演算制御部24についての図11に示される各構成要素と基本的に同様である。
【0154】
ただし、図11のタイムインターバル方式演算部53で用いる信号波形は、A/D変換部23からのデジタル信号波形とされていた。
【0155】
これに対して、図12の例のタイムインターバル方式演算部53は、A/D変換部23からのデジタル信号波形を用いずに、増幅部21−1,21−2からのアナログのドップラ信号S△f1,S△f2が信号増幅されてパルス化され、そのパルス信号から測定された立ち上がり時間や立ち下がり時間を用いて、ドップラ周波数△f1,△f2やそれらの位相差φ1−φ2を検出するものである。
【0156】
このため、図12の演算制御部124には、アナログ回路としての増幅部131,132、およびデジタル入力部133が設けられている。
【0157】
増幅部131,132のそれぞれは、増幅部21−1,21−2からのアナログのドップラ信号S△f1,S△f2を大きな増幅率で増幅させ、飽和させることで、それぞれパルス信号(例えば図5のパルス信号SD△f1,SD△f2)を生成して、デジタル入力部133を介して、タイムインターバル方式演算部53に入力させる。
【0158】
なお、図1の例と対応させるため、デジタル入力部133からタイムインターバル方式演算部53に対して提供される情報は、パルス信号(例えば図5のパルス信号SD△f1,SD△f2)そのものであると説明した。即ち、この説明の場合、タイムインターバル方式演算部53が、このパルス信号から立ち上がり時間や立ち下り時間を計測することになる。ただし、デジタル入力部133が、このパルス信号から立ち上がり時間や立ち下り時間を計測し、その計測結果をタイムインターバル方式演算部53に提供するようにしてもよい。
【0159】
また、ドップラ信号S△f1,S△f2については、その立ち上がり時間や立ち下り時間を明確にするために、即ち、図6でいう所定電圧値であって、例えば0Vを横切る時間を明確にすることを目的として、増幅されてパルス信号化される。従って、この目的を達成できるのであれば、図1や図12の構成例に特に限定されず、例えば、増幅部131,132の代わりにコンパレータ等を採用して、パルス信号化させるようにしてもよい。
【0160】
さらにまた、本発明の距離切替手法は、2周波CW方式のみならず、その他の方式、例えばCW方式や、FMCW方式の測定装置にも採用可能である。
【0161】
より一般的にいえば例えば、本発明の距離切替手法は、所定周波数の連続波である送信信号と、対象物からの反射波とを混合することによって生成された混合信号を用いて対象物との相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する測定装置に適用可能である。
【0162】
例えば、そのような測定装置のうちの、第1の周波数の送信信号の測定対象物での反射信号についての第1のドップラ信号と、第2の周波数の送信信号の測定対象物での反射信号についての第2のドップラ信号との位相差を利用して、対象物との間の距離を測定する測定装置にも本発明の距離切替手法は適用可能である。
【0163】
そして、かかる測定装置は、その距離測定に必要な位相差を検出する方式として、タイムインターバル方式と、それとは異なる別方式とを少なくとも利用できるとする。ここでいう「別方式」とは、当然ながら上述したFFT方式も含むが、FFT方式に限定されないことを意味する。
【0164】
この場合、距離切替手法とは次のような手法となる。即ち、上述した測定装置が、対象物を追跡する最中(距離を逐次算出している最中)、対象物の所定範囲外に存在する(所定距離を越えた位置に存在する)と判定している場合、「別方式」を利用して位相差を検出して、その位相差を用いて距離を算出して、測定対象物が所定範囲内に存在する(所定距離以下の位置に存在する)と判定した場合、タイムインターバル方式を利用して位相差を検出して、その位相差を用いて距離を算出する、という手法が、一般化された距離切替手法である。
【0165】
ここで、一般化された距離切替手法に適するように、タイムインターバル方式を表現しなおすと、次のようになる。即ち、第1のドップラ信号に基づく第1の信号と、第2のドップラ信号に基づく第2の信号との両信号が所定電圧値を横切る時間差、即ち、上述した立ち上がりの時間差に基づいて、第1のドップラ信号と第2のドップラ信号との位相差を検出し、また、第1の信号と第2の信号のそれぞれが所定電圧値を横切る各時間間隔、即ち、上述した各立ち上がりの繰り返し時間に基づいて、第1のドップラ信号と第2のドップラ信号とのそれぞれのドップラ周波数を検出する、という方式がタイムインターバル方式である。
【0166】
さらに、測定装置は、「別方式」またはタイムインターバル方式を利用して、第1のドップラ信号のドップラ周波数と、第2のドップラ信号のドップラ周波数とのうちの少なくとも一方を検出し、検出したドップラ周波数を用いて、対象物の相対速度を算出するようにしてもよい。
【0167】
以上説明したように、本発明の距離切替手法を適用することで、所定距離以下に接近した検出対象物については、少なくともタイムインターバル方式を利用して距離が算出されるので、受信信号に歪みがあっても正確な距離算出が可能となり、さらに、その距離算出の応答速度も高速になる。よって、近距離であっても必要な距離精度を維持しつつ応答速度を上げることが可能になる。
【0168】
また、応答速度が高速になるということは、平均化の回数を増やすことができることも意味し、その結果、距離の算出結果の精度を向上させることにもつなげられる。
【0169】
さらにまた、測定対象物が近距離に近づいてきたことに起因するアンプ(図1の例では、増幅部21−1,21−2)のゲイン調整も不要になる。
【0170】
なお、距離切替方式では、測定対象物が複数存在する場合も考慮して、1つの測定対象物が近距離に存在する場合にのみ(それゆえ、受信信号が、その1つの測定対象物での反射信号とみなすことができる場合にのみ)、タイムインターバル方式が用いられている。
【0171】
ただし、例えば、送信アンテナを狭い指向性をもつものに切替える等の措置を施すことで、単一の測定対象物からのみの反射信号を受信号として受信できる状況に限定できるならば、測定装置は、タイムインターバル方式と別方式(FFT方式含む)の並行処理を行うことで、応答速度向上の効果が期待できる。
【0172】
ところで、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)は、ハードウエアにより実行させることもできるが、ソフトウエアにより実行させることもできる。
【0173】
この場合、その一連の処理を実行する装置(上述した定義のシステム)またはその一部分は、例えば、図13に示されるようなコンピュータで構成することができる。
【0174】
図13において、CPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202に記録されているプログラム、または記憶部208からRAM(Random Access Memory)203にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0175】
CPU201、ROM202、およびRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インタフェース205も接続されている。
【0176】
入出力インタフェース205には、キーボード、マウスなどよりなる入力部206、ディスプレイなどよりなる出力部207、ハードディスクなどより構成される記憶部208、および、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部209が接続されている。通信部209は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置との通信処理を行う。さらにまた、通信部209は、必要に応じて、図1等でいう測定対象物2を測定するための送信信号Ssや受信信号Srの送受信処理も行う。
【0177】
入出力インタフェース205にはまた、必要に応じてドライブ210が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア211が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部208にインストールされる。
【0178】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0179】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図13に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア(パッケージメディア)211により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM202や、記憶部208に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0180】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明が適用される測定装置としての2周波CWレーダの構成例を示すブロック図である。
【図2】2つのドップラ周波数△f1,△f2を有するドップラ信号の分離手法の一例を説明する図である。
【図3】FFT方式を説明する図である。
【図4】近距離の測定対象物での反射信号が受信信号として受信された結果、飽和している様子を示す図である。
【図5】タイムインターバル方式を説明する図である。
【図6】タイムインターバル方式を説明する図である。
【図7】タイムインターバル方式の特徴を説明する図である。
【図8】タイムインターバル方式の特徴を説明する図である。
【図9】タイムインターバル方式の特徴を説明する図である。
【図10】図1の演算制御部の処理例を説明するフローチャートである。
【図11】図1の演算制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明が適用される測定装置としての2周波CWレーダの構成例であって、図1とは異なる例を示すブロック図である。
【図13】本発明が適用される測定装置の全部または一部分の構成の別の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0182】
1 2周波CWレーダ
2,2a,2b 測定対象物
11 発振部
12 増幅部
13 分岐部
14 増幅部
15 アンテナ部
16 アンテナ部
17 増幅部
18 混合部
19 切り替えタイミング
20 スイッチ部
21−1,21−2 増幅部
22−1,22−2 ローパスフィルタ
23 A/D変換部
24 演算制御部
31 自車
51 FFT方式演算部
52 演算実施判定部
53 タイムインターバル方式演算部
54 演算結果選択部
55 演算結果出力部
100 2周波CWレーダ
124 演算制御部
131 増幅部
132 増幅部
133 デジタル入力部
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 バス
205 入出力インタフェース
206 入力部
207 出力部
208 記憶部
209 通信部
210 ドライブ
211 リムーバブルメディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の連続波である送信信号と、対象物からの反射波とを混合することによって生成された混合信号を用いて前記対象物との相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する測定装置において、
前記対象物が所定範囲内に存在するか否かを判定する判定部と、
タイムインターバル方式を用いて前記相対速度および距離のうち少なくとも一つを算出する第1の演算部と、
前記タイムインターバル方式とは異なる別方式を用いて前記相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する第2の演算部と
を備える測定装置。
【請求項2】
前記混合信号はドップラ信号であり、
前記判定部により前記対象物が所定範囲内に存在すると判定された場合には、前記第1の演算部は、前記ドップラ信号の周波数を検出して、その周波数を利用して前記対象物との相対速度を算出する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記送信信号は第1の周波数を有する第1の送信信号と第2の周波数を有する第2の送信信号を含み、
前記混合信号は前記第1の送信信号を基に作成された第1のドップラ信号と前記第2の送信信号を基に生成された第2のドップラ信号を含み、
前記判定部により前記対象物が所定範囲内に存在すると判定した場合には、前記第1の演算部は、前記第1のドップラ信号と前記第2のドップラ信号の位相差を検出して、その位相差を利用して前記対象物との距離を算出する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1のドップラ信号または前記第2のドップラ信号の信号強度が所定強度以上になった場合、前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定する
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1のドップラ信号または前記第2のドップラ信号の波形が飽和している場合、前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定する
請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記第2の演算部が演算した前記対象物との距離が所定距離以下の場合、前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定する
請求項1乃至3に記載の測定装置。
【請求項7】
前記別方式は、前記第1のドップラ信号と前記第2のドップラ信号とに対してFFT(Fast Fourier Transform)解析処理を施すことで、前記位相差を検出するFFT方式である
請求項3に記載の測定装置。
【請求項8】
前記判定部が前記対象物が前記所定範囲内に存在すると判定した場合、
さらに、前記第2の演算部は、前記対象物ととの距離を算出し、
前記第1の演算部による算出結果と前記第2の演算部による算出結果とのうちの何れか一方を、前記対象物との距離として出力する第3の演算部をさらに備える
請求項3に記載の測定装置。
【請求項9】
前記第1の演算部または前記第2の演算部は、前記第1のドップラ信号のドップラ周波数と、前記第2のドップラ信号のドップラ周波数とのうちの少なくとも一方を検出し、検出したドップラ周波数を利用して、前記対象物の相対速度を算出する
請求項3に記載の測定装置。
【請求項10】
所定周波数の連続波である送信信号と、対象物からの反射波とを混合することによって生成された混合信号を用いて前記対象物との相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する測定装置の測定方法において、
前記対象物が所定範囲内に存在するか否かを判定する判定ステップと、
タイムインターバル方式を用いて前記相対速度および距離のうち少なくとも一つを算出する第1の演算ステップと、
前記タイムインターバル方式とは異なる別方式を用いて前記相対速度および距離のうち少なくとも1つを測定する第2の算出ステップと
を含む測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−190964(P2008−190964A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24667(P2007−24667)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】