説明

測距システム、画像処理装置、コンピュータプログラム及び測距方法

【課題】撮影部と表示部とを有する携帯端末で、それらの端末間の距離を計測する測距システムを提供する。
【解決手段】 測距システム(100)は、所定の時系列で所定の図形を表示する表示部(51B)を有する計測対象物(50B)と、所定の図形を撮影する撮影部(53A)と、撮影部(53A)により撮影された所定の図形と予め記憶された所定の図形の設計値とに基づいて、計測対象物から撮影部までの距離を計測する距離計測部(576)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部で表示された図形を撮影して計測対象物までの距離を計測する測距システム、画像処理装置である。また、図形を撮影して計測対象物までの距離を計測するためのコンピュータプログラム及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、計測対象物までの距離を測りたいときには、超音波又は赤外線を射出して、 その超音波又は赤外線が戻ってくる反射量又は時間などを計測する計測センサーがある。また撮影した画像を利用して計測対象物までの距離を測りたいときには、ステレオカメラ(2点測距)などがある。例えば特許文献1は移動している1つの単眼カメラで、2度撮影することでステレオカメラの役割を担い、計測対象物までの距離を計測する技術が開示されている。
【0003】
さて、近年、携帯電話、携帯情報端末又はスマートフォンが広く用いられている。このような携帯端末を用いたビジネスが提案されている。例えば特許文献2では、携帯型端末を用いたコミュニティ形成システムが提案されている。特許文献2に開示されたコミュニティ形成システムでは、複数の携帯端末を用いて電子情報をやり取りしているにすぎない。例えば複数の携帯端末間で、近距離にいる携帯端末がどれくらい近い距離にいるのか知ることができれば、さらに携帯端末が新しいコミュニティを作るきっかけとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−064639
【特許文献2】特許第3758618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯端末に計測センサーを追加することは携帯端末の価格上昇につながってしまう。また、すでに市場に出回っている携帯端末であっても携帯端末間で互いの距離を計測できることが好ましい。また、特許文献1では移動している自動車などに取り付けられたカメラでは距離が測れるが、携帯端末を持った人物が立ち止った状態では、距離を計測できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みて、撮影部と表示部とを有する携帯端末などの画像処理装置で、それらの装置間の距離を計測する測距システム及び画像処理装置を提供する。また、計測対象物までの距離を計測するためのコンピュータプログラム及び測距方法を提供する。
【0007】
第1の観点の測距システムは、所定の時系列で所定の図形を表示する表示部を有する計測対象物と、所定の図形を撮影する撮影部と、撮影部により撮影された所定の図形と予め記憶された所定の図形の設計値とに基づいて、計測対象物から撮影部までの距離を計測する距離計測部と、を備える。
【0008】
また、第2の観点の画像処理装置は、個体情報を記憶する情報記憶部と、情報記憶部に記憶された個体情報を所定の時系列で且つ所定の図形に変換する識別情報変換部と、識別情報変換部で変換された所定の時系列で所定の図形を表示する表示部と、所定の図形を撮影する撮影部と、撮影部により撮影された所定の図形と予め記憶された所定の図形の設計値とに基づいて、計測対象物から撮影部までの距離を計測する距離計測部と、を備える。
【0009】
第3の観点の測距方法は、計測対象物の表示部で表示された所定の図形を撮影部で撮影して、撮影部から計測対象物までの距離を計測する測距方法において、所定の図形が表示される所定の時系列に基づいて、撮影部により撮影された画像の中から所定の図形を選択する選択工程と、撮影部により撮影された所定の図形と予め記憶された所定の図形の設計値とに基づいて、計測対象物から撮影部までの距離を計測する計測工程と、を備える。
【0010】
第4の観点のコンピュータプログラムは、所定の時系列で所定の図形を表示する表示部と表示部で表示された所定の図形を撮影する撮影部とを備えた測距システムにインストールされ、撮影部から計測対象物までの距離を計測するプログラムであって、測距システム内の演算手段は、所定の図形が表示される所定の時系列に基づいて、撮影部により撮影された画像の中から所定の図形を選択する選択工程と、撮影部により撮影された所定の図形と予め記憶された所定の図形の設計値とに基づいて、計測対象物から撮影部までの距離を計測する計測工程と、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の測距システムは、図形を撮影することにより距離を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】タブレット型端末機50を使って互いの距離を計測する測距システム100を示した図である。
【図2】タブレット型端末機50を示した図である。
【図3】測距システム100の概略ブロック図である。
【図4】(a)は、個体情報変換部572が個体情報を点滅シーケンスに変換した例である。 (b)は、個体情報変換部572が個体情報を色彩シーケンスに変換した例である。
【図5】(a)は表示部51Bに表示された図形GPが点灯している状態である。 (b)は表示部51Bに表示された図形GPが消灯している状態である。
【図6】時刻t31から時刻t36までの画像フレームを描いた図である。
【図7】(a)は、タブレット型端末機50Bの表示部51Bに表示される図形GPを示した例である。 (b)は、タブレット型端末機50Aの表示部51Aに、撮影された図形GPが表示されている例である。
【図8】表示端末機60と撮影端末機70とを使った測距システム110である。
【図9】図形GPを表示する際のフローチャートと図形GPを撮影する際のフローチャートである。
【図10】複数のロボットの協調行動への応用例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において特に本実施形態を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
<全体構成>
図1は、二人の人物HM(HMA、HMB)がカメラ付き携帯タブレット型端末機(以降、タブレット型端末機と称する)50を使って互いの距離を計測する測距システム100を示している。図2は、一般的なタブレット型端末機50を示した図である。
【0015】
図2に示されるように、タブレット型端末機50は液晶などの表示部51、撮影するカメラ部53及び演算部57を有している。カメラ部53は表示部51と同じ側の面又は反対側の面の少なくとも一面に配置されている。カメラ部53は計測対象物などを撮影する際に使用される。タブレット型端末機50は複数のアプリケーション・プログラムがインストール可能になっている。アプリケーション・プログラムはタブレット型端末機50の演算部57で作動し数々の演算処理することができる。
【0016】
図2は一般的なタブレット型端末機50を示したのであって、一つのカメラ部と2つの表示部を有する携帯電話であっても、第1実施形態の測距システム100を構築することができる。また、表示部を備え且つアプリケーション・プログラムがインストール可能な一眼レフカメラであってもよい。つまり、基本的にカメラ部と表示部と演算部とを有している装置であったら測距システム100を構築できる。携帯電話、タブレット型端末機、音楽プレーヤ、一眼レフカメラ等を総称して画像処理装置と呼ぶ。
【0017】
図1に戻り、第1人物HMAはタブレット型端末機50Aを手に保持しており、タブレット型端末機50Aのカメラ部53Aを第2人物HMBの方向に向けている。また第1人物HMAはカメラ部53Aで撮影され表示部51Aに表示された画像を観察している。一方、第2人物HMBはタブレット型端末機50Bを手に保持し、表示部51Bを第1人物HMAの方向に向けている。
【0018】
第2人物HMBは表示部51Bに、四角形などの多角形、星形など特徴ある図形を表示させている。そして図形を所定の時系列で点滅させて表示している。第1人物はカメラ部53Aを介してその図形を撮影し、その所定の時系列の点滅シーケンスとその図形から計測対象物を特定している。例えば星形など特徴ある図形であっても、街中には同じような星形をしたポスターが貼られていたりする。第1人物HMAのタブレット型端末機50Aは、誤ってその保持型をしたポスターが計測対象物と認識してしまうかもしれない。そこで、タブレット型端末機50Bの表示部51Bは図形を所定の時系列で点滅させている。なお、図1では二人の人物HM(HMA、HMB)だけが描かれているが、測距システム100は3人以上がそれぞれタブレット型端末機50を有している場合でも適用できる。
【0019】
<端末機内のブロック>
図3は、測距システム100の概略ブロック図である。図3では2つのタブレット型端末機50(50A、50B)が示されている。いずれのタブレット型端末機50も同じ構成であるため、一方のタブレット型端末機50Aのみを説明する。
【0020】
タブレット型端末機50Aは、表示部51A、カメラ部53A及び演算部57を有している。表示部51A、カメラ部53A及び演算部57は例えばバスラインBUSで互いにデータを送受信できる。表示部51Aは液晶もしくは有機EL素子からなる。表示部51Aにタッチパネルが組み合わされていてもよい。カメラ部53Aは撮影レンズとCCDもしくはCMOS等からなる受光素子と受光素子で撮影された画像(画像フレーム)を一時的に記憶するバッファとから構成される。これによりカメラ部53Aは動画撮影を行うことができる。演算部57は例えばプログラムを演算するCPUとメモリーとからなる。演算部57は個体情報記憶部571、個体情報変換部572、復号化部573、図形選択部574、パターン記憶部575及び距離計測部576を有している。
【0021】
個体情報(ID:identity)記憶部571は、そのタブレット型端末機50Aの機種によって異なる種別コード又はタブレット型端末機50Aの所有者の識別情報などが記憶されている。すなわちタブレット型端末機毎にその個体情報が記録されている。但し、必ずしも所有者の識別情報まで記憶されていなくてもよい。個体情報(ID:identity)変換部572は、個体情報記憶部571に記憶された個体情報を例えば時系列の点滅シーケンスに変換する。点滅シーケンスに変換された個体情報は、所定の図形形状で表示部51Aに表示される。復号化部573は、カメラ部53Aが撮影した図形の例えば点滅シーケンスを、符号に復号化する。
【0022】
図形選択部574は、撮影された画像の中から、タブレット型端末機が表示した図形を選択する。例えばタブレット型端末機が表示した図形が正方形である場合、市街では同じ正方形の形状の建物、看板等が多くある。また、他人のタブレット型端末機がたまたま正方形を表示していることもある。また台形形状が表示されている場合であっても、カメラ部53Aの撮影角度によっては正方形に見えることもある。このような状況の中から、距離を計測する計測対象物を特定しなければならない。このため図形選択部574はカメラ部53Aによって撮影された画像の中、具体的にはバッファに記憶された1又は複数の画像フレーム中に、点滅シーケンスがあればそれが計測対象物の図形であるとして選択する。
【0023】
パターン記憶部575は、複数の個別情報を記憶している。例えば“ANA”という個体情報はどのようなタブレット型端末機の機種であるがが記憶されている。また、タブレット型端末機は表示部にどのような図形でどのような大きさで図形を表示するかが記憶されている。
【0024】
距離計測部576は、撮影された図形の形状から計測対象物からの距離を計測する。例えば計測対象のタブレット端末と距離計測する側のタブレット端末が5mの距離で正対しているとする。カメラの焦点距離を38.5mmと仮定し、計測対象側のディスプレイに正方形の図形を30mm×30mmで表示すると、計測側の撮像素子には、正方形の一辺は38.5×30/5000= 0.23mm の長さで映る。2つの端末が正対しているという条件は理想条件であるが、この様な場合には、撮像素子に映った大きさと、焦点距離から、対象までの距離を逆算することができる。なお、2つの端末が正対しない一般的なケースについては、以下で説明する。
【0025】
<時系列で表示される図形>
次に個体情報変換部572が個体情報を変換する点滅シーケンスについて説明する。表示部51は、個体情報変換部572が変換した点滅シーケンスを図形GPとして表示する。図形GPは、四角形などの多角形であっても多角形の枠形状であってもよい。但し、真円形などは後述する座標位置を特定し難いため好ましくない。
【0026】
個体情報変換部572は、例えば“ANA”という個体情報であった場合にモールス符号のように、「・− −・ ・−」と変換する。ここで「・」又は「−」の際に点灯することを示し、それ以外は消灯することを示している。復号化部573は、カメラ部53Aが撮影した図形の点滅シーケンス「・− −・ ・−」を“ANA”に符号化する。ここでは点滅シーケンスの変換例をモールス符号で示したが、個体情報がそもそも「01100001」などの二値化信号でお記憶しておいてもよい。個体情報記憶部571がこのような二値化信号を記憶している場合には、個体情報変換部572は、情報の値が変化したときのみ、パルスをONまたはOFFさせるNRZI(Non Return to Zero Inverted)変調するよう変換を行ってもよい。
【0027】
図4は、個体情報変換部572は、個体情報を時系列のシーケンスに変換した例である。図4(a)は、個体情報変換部572が個体情報を点滅シーケンスに変換した例であり、図4(b)は、個体情報変換部572が個体情報を色彩シーケンスに変換した例である。
【0028】
図4(a)では、モールス符号のように、個体情報を時系列に点滅する点滅シーケンスに変換している。時間間隔が長い点灯と時間間隔が短い点灯とを組み合わせて、個体情報を表現している。この個体情報の点滅シーケンスの先頭には個体情報の点滅シーケンスが始まることを示す開始の点滅シーケンスが付される。また、個体情報の点滅シーケンスの後尾には個体情報の点滅シーケンスが終わることを示す終了の点滅シーケンスが付される。開始の点滅シーケンス及び終了の点滅シーケンスが付されることで、個体情報の点滅シーケンスの開始と終了とが特定される。
【0029】
さて、短い点灯時間であっても、例えば2〜6ミリ秒以上の時間点灯する。カメラ部53の受光素子が画像フレームを読み出し時間は年々早くなっているが、1画像フレーム分の画像読み出し時間より長い時間点灯していないと、消灯していると誤って画像処理されるおそれがあるからである。
【0030】
個体情報は、モールス符号のように、時系列に点滅する点滅シーケンスで説明してきた。しかし、これに限られるものではない。個体情報変換部572は、図4(b)に示されるように、時系列的に色彩を変えている。色彩が一定時間ごとに切り替わることにより、個体情報のシーケンスを作り出している。例えば、400nmの色彩が点灯し次ぎに500nmの色彩が点灯し、次に600nmの色彩が点灯するなどして個体情報のシーケンスを表現している。色彩シーケンスは色彩が次々と変わればよいため、消灯する時間が少なくて済む。このため個体情報のシーケンスを短時間で表示することができる。また点滅シーケンスと同様に、個体情報の色彩シーケンスの先頭には個体情報の色彩シーケンスが始まることを示す開始の色彩シーケンスが付され、また、個体情報の色彩シーケンスの後尾には個体情報の点滅シーケンスが終わることを示す終了の色彩シーケンスが付される。
【0031】
点滅シーケンス及び色彩シーケンスは、カメラ部53で所定時間撮影されるように、図4(a)又は(b)に示したシーケンスを表示部51に複数回表示させる。これにより、図形選択部574は、撮影された画像の中に似た図形があっても、タブレット型端末機50が表示した図形であることを認識することができる。またその認識した図形の個体情報をパターン記憶部575に記憶された個体情報と比較して、個体情報を特定することができる。なお、以下の実施形態では個体情報変換部572が点滅シーケンスを表示部51に表示させる例で説明する。
【0032】
<点滅の判断>
図形選択部574はカメラ部53Aが撮影した画像の中から点滅する図形を探す必要がある。図形選択部574は参照輝度(閾値)より明るくなったり暗くなったりする点滅シーケンスの図形を複数の画像フレームの中から探し出す。このときカメラ部53Aが撮影する背景などの明るさによっては、図形の点滅シーケンスを判断し難い場合もある。
【0033】
図5は、第1人物HMAが保持しているタブレット型端末機50Aの表示部51Aに、第2人物HMBが保持しているタブレット型端末機50Bが表示されている例である。図5(a)は表示部51Bに表示された図形GPが点灯している状態である(図4(a)の時刻t11)。図5(b)は表示部51Bに表示された図形GPが消灯している状態である(図4(b)の時刻t12)。
【0034】
点滅シーケンスの図形を画像フレームの中から探し出す際には、図形選択部574は表示部51Aを複数の分割領域RGに分割する。ここでは説明のため、表示部51Aを複数の分割領域RG(領域RG1〜領域RG9)まで分割しているが、実際にはカメラ部53Aのバッファに記憶された画像フレームを領域ごとに分割すればよい。図5(a)においては、タブレット型端末機50Bの表示部51Bが領域RG1及び領域RG4に存在する。このため、図形選択部574は領域RG1及び領域RG4のそれぞれで平均輝度を求める。そして図形選択部574はその平均輝度から参照輝度(閾値)を求める。図形GPが点灯している状態と(図4(a)の時刻t11)図形GPが消灯している状態(図4(b)の時刻t12)とが画像バッファに複数の画像フレームに記憶されていることで、図形選択部574は表示部51Aの画面から点滅している図形を特定するこことができる。
【0035】
カメラ部53Aの撮影範囲内の領域RG9に、正方形形状をした図形ER(例えば箱やポスター)が存在していたとする。しかし、図形選択部574は複数の画像フレームにわたって図形ERを記憶しても輝度が一定のままで変化していないと判断する。そのため図形選択部574は図形ERが計測対象物でないと判断することができる。
【0036】
なお、図5では図形選択部574は表示部51Aを複数の領域RGに分割する例を示したが、必ずしも表示部51Aを複数に分割させる必要はない。例えば、タブレット型端末機50Bの表示部51Bが近い場合にはカメラ部53Aは受光素子いっぱいに表示部51Bを撮影することができる。またカメラ部53Aの撮影レンズにズーム機能がついている場合でも、受光素子いっぱいに表示部51Bを撮影することができる。このような場合には表示部51B全体の平均輝度を参照輝度(閾値)にすることができる。
【0037】
これまでは、第1人物HMAが保持しているタブレット型端末機50Aの表示部51Aに、1つの図形GPが表示される例を示した。しかし、2以上の図形GPがカメラ部53Aで撮影され、表示部51Aに2以上の図形GPが表示されてもよい。このような場合には図形選択部574は2つの図形GPを選択することができる。図6は時刻t31から時刻t36までカメラ部53のバッファに記憶された画像フレームを描いた図である。図6には、タブレット型端末機50Bの表示部51Bで表示された図形GPBと、タブレット型端末機50Cの表示部51Cで表示された図形GPCとがタブレット型端末機50Aのカメラ部53Aで撮影された結果である。なお図6では表示部51B,51C及び図形GPB、GPCのみしか描いておらずタブレット型端末機50B、50Cは描かれていない。
【0038】
タブレット型端末機50B、50Cは、それぞれの個体情報記憶部571から、その個体情報に応じた点滅シーケンスの図形を表示部51B、51Cに表示する。それが図6に示された図形GPB及び図形GPCである。ともにそれぞれに表示部51に同じ大きさの正方形の図形GPB及び図形GPCが表示されているが、タブレット型端末機50Aの表示部51Aに表示された大きさ及び形は異なる。タブレット型端末機50Aからタブレット型端末機50B、50Cが異なり、またタブレット型端末機50B、50Cの保持されている角度が異なるからである。
【0039】
時刻t31の画像フレームでは、図形GPCが表示されているが図形GPBは表示されていない。時刻t32の画像フレームでは、図形GPB及び図形GPCが表示されている。時刻t33の画像フレームでは、図形GPB及び図形GPCが表示されていない。時刻t34の画像フレームでは、図形GPB及び図形GPCが表示されている。時刻t35の画像フレームでは、図形GPCが表示されているが図形GPBは表示されていない。時刻t36の画像フレームでは、図形GPB及び図形GPCが表示されていない。
【0040】
このように複数の画像フレームに基づいて、図形選択部574はカメラ部53Aが撮影した複数の画像フレームの中から点滅する図形GPB及び図形GPCを選択することができる。そして、図形選択部574は図形GPBの点滅シーケンスと図形GPCの点滅シーケンスとをそれぞれ把握することができる。復号化部573は、点滅シーケンスを符号(個体情報)に復号化する。パターン記憶部575は複数の個体情報が記憶されているため、復号化された個体情報をパターン記憶部575に記憶されている個体情報と比較することにより、タブレット型端末機50B、50Cをそれぞれ特定することができる。
【0041】
<距離の計測>
図7(a)は、第2人物HMBが保持しているタブレット型端末機50Bの表示部51Bに表示される図形GPを示した例である。図7(b)は、第1人物HMAが保持しているタブレット型端末機50Aの表示部51Aに、撮影された図形GPが表示されている例である。
【0042】
図7(a)では多角形の図形の一つである正方形の図形GPが表示部51Bに表示されている。例えば、正方形の図形GPは一辺が30mmで表示されている。距離を測定するために、図形GPは例えば9点の座標位置(X1、Y1)〜(X9、Y9)を有している。座標位置(X1、Y1)、(X3、Y3)、(X7、Y7)及び(X9、Y9)は、正方形の角部である。座標位置(X2、Y2)、(X4、Y4)、(X6、Y6)及び(X8、Y8)は正方形の4辺の中間点である。また座標位置(X5、Y5)は正方形の中心位置である。
【0043】
表示部51Bで表示されている正方形の図形GPBを、第1人物HMAが保持しているタブレット型端末機50Aのカメラ部53Aで撮影する。第1人物HMAが保持しているタブレット型端末機50Aの傾き具合、第2人物HMBが保持しているタブレット型端末機50Bの傾き具合によって、図7(b)に示されるような図形GPBが撮影される。なお、図7(b)ではタブレット型端末機50B自体は省略して描かれている。タブレット型端末機50Aのカメラ部53Aで撮影された画像では、図形GPBは例えば9点の座標位置(x1、y1)〜(x9、y9)に移動している。
【0044】
距離計測部576は、この撮影された9点の座標位置(xn、yn)と、表示部51Bに表示された(設計値である)図形GPBの9点の座標位置(Xn、Yn)とを以下の数式1で対応させる。
【数1】

…数式1
【0045】
ここで、Sは係数であり、x及びyは、図7(b)で描かれた撮影された座標位置(xn、yn)である。fはカメラ部53の焦点距離であり既知である。cx及びcyは既知のカメラ部53の光軸中心座標である。r11からr33は回転量であり、t1からt3はシフト量である。X及びYは世界座標であり、図7(a)に描かれた設計座標位置(Xn,Yn)である。図形GPはここを原点として距離を考えるためにZ=0とする。9点の設計座標位置(Xn,Yn)は既知であり、9点の座標位置(xn、yn)は図7(b)の撮影された画像から求められる。このため、未知の係数は、回転量rr及びシフト量tとなる。Z=0であるため、未知の回転量rr及びシフト量tは合計8となる。そのため、少なくとも8点を測定すれば連立方程式を解くことができる。
【0046】
距離計測部576が、数式1で、t1、t2及びt3を求めれば、次の数式2で、第2人物HMBが保持しているタブレット型端末機50Bの表示部51Bから、第1人物HMAが保持しているタブレット型端末機50Aのカメラ部53Aまでの距離を求めることができる。
【数2】

…数式2
【0047】
距離Lを計測後に、図7(b)の右上に示されているように、タブレット型端末機50Aの表示部51Aに距離L=2.5mを表示してもよい。
【0048】
なお、数式1または数式2以外にも、カメラキャリブレーションの計算に広く用いられているZhangの式などを使用してもよいことは言うまでもない。Zhangの式を使用するとディストーションを考慮するため、より高精度な結果が得られる。さて、図7(a)では、正方形の図形GPの一辺が30mmと説明した。しかし、タブレット型端末機などの画像処理装置の種類によっては小さな表示部しかなく、一辺が20mmの正方形しか表示できない場合がある。このような場合には画像処理装置は一辺が20mmの正方形を表示すればよい。パターン記憶部575が、複数の個別情報を記憶しているため、ある画像処理装置はその表示部に20mmの正方形を表示すると記憶されてあれば、その値を使って距離計測部576は数式1を計算すればよい。
【0049】
また、カメラ部53で撮影された画像フレームは複数ある。例えばタブレット型端末機を保持している人物が移動している際には、9点の座標位置(x1、y1)〜(x9、y9)を最後の画像フレームから求めてもよい。仮に人物が移動していないなら、複数の画像フレームの各座標位置(x1、y1)〜(x9、y9)の平均値を使用してもよい。
【0050】
(第2実施形態)
図8は、表示端末機60と撮影端末機70とを使って表示端末機までの距離を計測する測距システム110を示している。第1実施形態では、2以上のタブレット型端末機50を使って相互に距離を計測する例が示された。第2実施形態では、表示端末機60から撮影端末機70までの距離を測定する例を示す。
【0051】
図8は、測距システム110の概略ブロック図であり、表示端末機60と撮影端末機70とが示されている。表示端末機60は、表示部51、個体情報記憶部571及び個体情報変換部572を有している。これらはバスラインBUSで互いにデータを送受信できる。撮影端末機70は、カメラ部53、復号化部573、図形選択部574、パターン記憶部575及び距離計測部576を有している。これらはバスラインBUSで互いにデータを送受信できる。表示端末機60及び撮影端末機70は、第1実施形態のタブレット型端末機50が有していた各ブロックと同じ構成であるため、同じ番号を付している。
【0052】
表示端末機60は、所定の点滅シーケンスの図形GPを表示部51に表示し、撮影端末機70はカメラ部53で撮影した複数の画像フレームに基づいて、表示端末機60から撮影端末機70までの距離を計測する。
【0053】
<測距システム110の動作>
図9は、図形GPを表示する際のフローチャート(左側)と図形GPを撮影する際のフローチャート(右側)である。
【0054】
表示端末機60では、まず個体情報記憶部571に記憶された種別コード及び所有者の識別情報などの個体情報を個体情報変換部572が取得する(ステップS21)。そして、個体情報変換部572は、個体情報を時系列の点滅シーケンスの図形に変換する(ステップS22)。さらに点滅シーケンスに変換された個体情報は、所定の図形形状で表示部51に表示される(ステップS23)。
【0055】
撮影端末機70では、まずカメラ部53が表示端末機60の表示部51を撮影し、その撮影された複数の画像フレームがバッファに記憶される(ステップS41)。図形選択部574はバッファに蓄えられた画像フレームから点滅シーケンスの図形を特定し、画像フレームから図形GPを選択する(ステップS42)。図形を選択できない場合には、ステップS41及びS42を繰り返す(ステップS43)。
【0056】
復号化部573は点滅シーケンスを復号化して、その点滅シーケンスを復号化する。復号化された結果はパターン記憶部575に記憶されている個体情報の種別コード及び所有者の識別情報などの個体情報を特定する(ステップS44)。距離計測部576はバッファに記憶された画像フレームの例えば最後の一枚又は複数枚の平均に基づいて、図形GPの座標位置を検出する(ステップS45)。そして距離計測部576は、前述した数式1及び数式2を使って表示端末機60から撮影端末機70までの距離を計測する(ステップS46)。
【0057】
なお、第1実施形態の測距システム100では、タブレット型端末機50は表示部51及びカメラ部53を有しているため、図9に示された図形GPを表示する際のフローチャートと図形GPを撮影する際のフローチャートとを両方とも実行する。
【0058】
第1実施形態のタブレット型端末機50並びに第2実施形態の表示端末機60及び撮影端末機70は、ハードディスク又はフラッシュメモリ等の記録媒体を有している。そこで、図9に示したフローチャートの処理は、プログラムとして記憶媒体に記憶させてもよい。そしてこの記憶媒体に記憶されているプログラムを演算部にインストールさせることで、この演算部に計算などを行わせることができる。
【0059】
(応用例)
第1実施形態及び第2実施形態では人物が画像処理装置を保持していることを前途に、実施形態が説明された。しかし、複数のロボットの相互の距離計測にも本実施形態は適用うできる。
【0060】
図10は、第1ロボット80Aと第2ロボット80Bとの協調行動への応用例を示す。第1ロボット80Aと第2ロボット80Bとが協調してある作業を実行する際に、それぞれまでの距離を計測することがある。従来はロボットが距離を計測するために超音波センサーを用いることが多かった。しかし、超音波センサーは壁などの障害物も含めて距離を計測することができるが、測定対象物を特定することができなかった。
【0061】
表示部に時系列で点滅する点滅シーケンスの図形を表示することで、互いに個体情報を得ることができるとともに互いの距離も同時に計測することができる。第1ロボット80Aは、2つの表示部81Aと1つのカメラ部83Aとを有している。またロボット内部には演算部87を有している。同様に第2ロボット80Bは、2つの表示部81Bと1つのカメラ部83Bと演算部87とを有している。
【0062】
第1ロボット80Aの2つの表示部81Aに、第1ロボット80Aの個体情報が図形GPAの点滅パターンとして表示される。2つの表示部81Aを対向する位置に配置することで、第2ロボット80Bが任意の方向から近づいてきても点滅パターンの図形GPAを第2ロボット80Bのカメラ部83Bが撮影することができる。また、第2ロボット80Bの2つの表示部81Bに、第2ロボット80Bの個体情報が図形GPBの点滅パターンとして表示される。そして、第1ロボット80Aのカメラ部83Aが図形GPBを撮影する。第1ロボット80A及び第2ロボット80Bのそれぞれの演算部57は、互いの個体情報と、図形GP(GPA、GPB)の座標情報から求まる距離を求めることができる。その個体情報と距離結果とに基づき、ある作業をすることができる。
【0063】
図10で示されたロボット80は、2つの表示部81と1つのカメラ部83とをそれぞれ有していた。またロボット80は1つの表示部81と2つのカメラ部83とをそれぞれ有していてもよい。さらにロボット80は複数の表示部81と複数のカメラ部83とをそれぞれ有していてもよい。ロボット80がどの方向から近づいてきても、複数の表示部81と複数のカメラ部83とを備えることで、個体情報と距離とを把握することができる。
【符号の説明】
【0064】
50(50A、50B) … タブレット型端末機
51(51A、51B)、81 … 表示部
53(53A、53B)、83 … カメラ部53
57、87 … 演算部
(571 … 個体情報記憶部、572 … 個体情報変換部、573 … 復号化部、574 … 図形選択部、575 … パターン記憶部、576 … 距離計測部)
80(80A、80B) … ロボット
100、110 … 測距システム
GP(GPA、GPB、GPC) … 図形
RG(RG1〜RG9) … 分割領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時系列で所定の図形を表示する表示部を有する計測対象物と、
前記所定の図形を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された前記所定の図形と予め記憶された前記所定の図形の設計値とに基づいて、前記計測対象物から前記撮影部までの距離を計測する距離計測部と、
を備える測距システム。
【請求項2】
前記所定の図形が表示される前記所定の時系列に基づいて、前記撮影部により撮影された画像の中から前記所定の図形を選択する図形選択部をさらに備える請求項1に記載の測距システム。
【請求項3】
前記所定の時系列は前記所定の図形が時間経過とともに点滅する時間間隔パターンを含み、この時間間隔パターンは、前記計測対象物の個体情報を示す識別パターンと、前記識別パターンの開始を示す開始パターンと、前記識別パターンの終了を示す終了パターンとを含む請求項1又は請求項2に記載の測距システム。
【請求項4】
前記所定の時系列は前記所定の図形が時間経過とともに色彩が変わる色彩パターンを含み、この色彩パターンは、前記計測対象物の個体情報を示す識別パターンと、前記識別パターンの開始を示す開始パターンと、前記識別パターンの終了を示す終了パターンとを含む請求項1又は請求項2に記載の測距システム。
【請求項5】
前記計測対象物は、
前記計測対象物の個体情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報記憶部に記憶された個体情報を前記表示部に表示する前記識別パターンに変換する識別情報変換部と、を有し、
前記撮影部で撮影された前記所定の時系列の所定の図形に基づいて、前記識別パターンを復号化して前記計測対象物の個体情報にする復号化部を備える請求項3又は請求項4に記載の測距システム。
【請求項6】
前記距離計測部は、前記撮影部により前記計測対象物を撮影して得られた画像データに基づき前記表示部上の位置を規定する画像座標と前記計測対象物が存在する実空間における位置を規定する世界座標との間において座標変換を行い、前記計測対象物から前記撮影部までの距離を計測する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の測距システム。
【請求項7】
個体情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報記憶部に記憶された個体情報を所定の時系列で且つ前記所定の図形に変換する識別情報変換部と、
前記識別情報変換部で変換された前記所定の時系列で前記所定の図形を表示する表示部と、
前記所定の図形を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された前記所定の図形と予め記憶された前記所定の図形の設計値とに基づいて、前記計測対象物から前記撮影部までの距離を計測する距離計測部と、
を備える画像処理装置。
【請求項8】
前記所定の図形が表示される前記所定の時系列に基づいて、前記撮影部により撮影された画像の中から前記所定の図形を選択する図形選択部をさらに備える請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記識別情報変換部は、前記所定の図形が時間経過とともに点滅する時間間隔パターン又は時間経過とともに色彩が変わる色彩パターンに変換し、この時間間隔パターン又は色彩パターンは、前記個体情報を示す識別パターンと、前記識別パターンの開始を示す開始パターンと、前記識別パターンの終了を示す終了パターンとを含む請求項7又は請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記撮影部で撮影された前記所定の時系列の所定の図形に基づいて、前記識別パターンを復号化して前記計測対象物の個体情報にする復号化部を備える請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
計測対象物の表示部で表示された所定の図形を撮影部で撮影して、前記撮影部から前記計測対象物までの距離を計測する測距方法において、
前記所定の図形が表示される所定の時系列に基づいて、前記撮影部により撮影された画像の中から前記所定の図形を選択する選択工程と、
前記撮影部により撮影された前記所定の図形と予め記憶された前記所定の図形の設計値とに基づいて、前記計測対象物から前記撮影部までの距離を計測する計測工程と、
を備える測距方法。
【請求項12】
所定の時系列で所定の図形を表示する表示部と前記表示部で表示された前記所定の図形を撮影する撮影部とを備えた測距システムにインストールされ、前記撮影部から前記計測対象物までの距離を計測するプログラムであって、
前記測距システム内の演算手段は、
前記所定の図形が表示される所定の時系列に基づいて、前記撮影部により撮影された画像の中から前記所定の図形を選択する選択工程と、
前記撮影部により撮影された前記所定の図形と予め記憶された前記所定の図形の設計値とに基づいて、前記計測対象物から前記撮影部までの距離を計測する計測工程と、
を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−32962(P2013−32962A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168984(P2011−168984)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】