説明

湯水混合弁

【課題】混合水の温度を高精度で目的とする温度に制御することのできる湯水混合弁を提供する。
【解決手段】水側主弁16をダイヤフラム弁となすとともに、湯側主弁24を円筒形状の筒形弁となして、それらを固定して一体化する。そして水側主弁16の背後に背圧室34を形成して、温調軸40の移動によりパイロット弁42を進退させて背圧室34の圧力を変化させ、これにより水側主弁16及び湯側主弁24を一体に移動させるようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合弁に関し、詳しくはパイロット弁によって主弁の開度の制御を行うパイロット式の湯水混合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水流入通路及び湯流入通路と、それら水流入通路及び湯流入通路上にそれぞれ設けられた水側主弁及び湯側主弁とを有し、それら水側主弁及び湯側主弁の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させて、湯水の混合比率を変化させるようになした湯水混合弁が広く用いられている。
図15はこの種湯水混合弁の具体例を示している。
同図において200,202はケーシング204内部に形成された水流入通路,湯流入通路で、206は流入した水と湯とを混合し流出させる混合室である。
208,210は軸方向に離隔して温調軸(温度調節軸)212に設けられた水側主弁,湯側主弁であり、また214,216はそれら水側主弁208,湯側主弁210に対応して設けられた水側主弁座,湯側主弁座である。
【0003】
この湯水混合弁では、温調軸212を図中左向きに一杯まで移動させると、(A)に示しているように湯側主弁210が湯側主弁座216に着座して水側主弁208が一杯まで開かれ、水流入通路200からの水が混合室206へと流入して吐水部に向け流出する。
また逆に温調軸212を図中右向きに一杯まで移動させると、(B)に示しているように水側主弁208が水側主弁座214に着座して湯側主弁210が一杯まで開かれ、湯流入通路202からの湯が混合室206へと流入して吐水部に向け流出する。
【0004】
またその中間の位置、即ち水側主弁208と湯側主弁210とが水側主弁座214,湯側主弁座216から離間してそれぞれ開いた状態の下では、水流入通路200からの水と湯流入通路202からの湯とが混合室206に流入して混合され、吐水部に向けて流出する。
更に温調軸212を図中左右方向に移動させて水側主弁208,湯側主弁210の開度をそれぞれ変化させることで、それぞれの開度に応じた流量で水,湯が混合室206に流入して混合水の温度が調節され、混合水が吐水部に向けて流出する。
【0005】
この湯水混合弁は、温調軸212の図中左右方向の操作量、即ちこれに連結したハンドルの操作量に応じて水側主弁208,湯側主弁210の位置が定まり、その位置に応じて水と湯とを混合して流出する、いわゆるミキシングタイプの湯水混合弁であるが、この湯水混合弁の場合、給水圧,給湯圧に抗して水側主弁208,湯側主弁210を移動させなければならず、特に給水圧が高い場合等において操作抵抗が大きく、操作が重いといった問題があった。
また操作抵抗が大きいことから小型アクチュエータにて水側主弁208,湯側主弁210を駆動するといったことが難しい問題があった。
【0006】
湯水混合弁には、このようなミキシングタイプの湯水混合弁のほか、自動温度調節機能付きの湯水混合弁、詳しくは混合水温度の上昇に感応して水側主弁を開く方向に温調軸を移動させる感温体を混合室に備える一方、その温調軸を水側主弁が閉じる方向に付勢するバイアスばねを備え、その感温体による混合水の温度感知に基づいて水側主弁,湯側主弁を微動させて、それぞれ水側主弁,湯側主弁の開度を自動的に調節し、混合水の温度を設定温度に自動的に調節する機能を備えた自動温度調節機能付きの湯水混合弁がある。
例えば下記特許文献1に、この種の自動温度調節機能付きの湯水混合弁が開示されている。
【0007】
この自動温度調節機能付(サーモスタット式)の湯水混合弁にあっても、上記ミキシングタイプの湯水混合弁と同様に操作抵抗が重いといった問題が内在している。
そこで本出願人は、先の特許願(下記特許文献2)において、(a)水流入通路及び湯流入通路と、(b)水流入通路,湯流入通路上にそれぞれ設けられた水側主弁及び湯側主弁と、(c)それら水側主弁,湯側主弁の各背後に且つ導入小孔を通じて水流入通路,湯流入通路にそれぞれ連通して形成され、内部の圧力で水側主弁,湯側主弁をそれぞれ閉弁方向に押圧する水側背圧室及び湯側背圧室と、(d)水側背圧室,湯側背圧室の水,湯を各下流側の混合室側に抜く水側パイロット通路及び湯側パイロット通路と、(e)共通の温調軸の各端部に設けられ、軸方向の移動により水側パイロット通路,湯側パイロット通路の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させる水側パイロット弁及び湯側パイロット弁と、を有し、温調軸の軸方向の移動に伴う水側パイロット弁,湯側パイロット弁の位置移動に追従して水側主弁,湯側主弁を変位させてそれぞれの開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させ、湯水の混合比率を変化させるようになした湯水混合弁を提案している。
【0008】
図16はその具体例を示している(この例はミキシングタイプの湯水混合弁の例)。
同図において200,202は水流入通路,湯流入通路で、それら水流入通路200,湯流入通路202を通じて流入してきた水と湯とが混合室206で混合され、そして混合水が流出口207から吐水部に向けて流出する。
【0009】
水流入通路200上,湯流入通路202上には、互いに独立したピストン弁からなる水側主弁208,湯側主弁210がそれぞれ図中左右方向の軸方向に移動可能に設けられており、そして水側主弁208,湯側主弁210がそれぞれ対応する水側主弁座214,湯側主弁座216に対し軸方向に当接し又は離間することによって水流入通路200,湯流入通路202が開閉され、またそれぞれの開度に応じた量で水と湯とが水流入口200,湯流入口202から混合室206へと流入する。
尚、205は弁ケースを表わしている。
【0010】
水側主弁208,湯側主弁210のそれぞれの背後には、水側背圧室217,湯側背圧室218が形成されている。
これら水側背圧室217,湯側背圧室218は、それぞれ水側主弁208,湯側主弁210を貫通して形成された導入小孔220,222を通じて水流入通路200,湯流入通路202と連通しており、水流入通路200,湯流入通路202からの水,湯が、それぞれ導入小孔220,222を通じて水側背圧室217,湯側背圧室218に流入せしめられる。
【0011】
これら水側背圧室217,湯側背圧室218は、導入小孔220,222を通じて流入した水,湯によって圧力を増大せしめる。
ここで水側背圧室217,湯側背圧室218は、内部の圧力を水側主弁208,湯側主弁210に対しそれぞれ閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0012】
水側主弁208,湯側主弁210のそれぞれには、中心部に水側パイロット通路224,湯側パイロット通路226が各主弁を貫通して設けられている。
228は温調軸で、各端部が水側主弁208,湯側主弁210の中心部を貫通して水側背圧室217,湯側背圧室218内に入り込んでおり、それら水側背圧室217,湯側背圧室218内部において各端部に水側パイロット弁230,湯側パイロット弁232が温調軸228に一体に設けられている。
【0013】
このミキシングタイプの湯水混合弁では、温調ハンドル234を回転操作し、ねじ部236のねじ送りで温調軸228を例えば図中右方向に移動させると、水側パイロット弁230が水側主弁208から離れてパイロット通路224の開度が大となり、これにより水側背圧室217内の水が水側パイロット通路224を通じて混合室206側へと流れ、水側背圧室217の圧力が減少する。
【0014】
すると水側主弁208が、水流入通路200の給水圧により図中右方向に押されて移動し、水側背圧室217の圧力と水流入通路200からの給水圧とが釣り合う位置で停止する。
即ち水側パイロット弁230の移動に追従して水側主弁208が移動し、その開度を大として混合室206への水の流入量を増大させる。
【0015】
このとき、湯側パイロット弁232が図中右方向に移動することによって、湯側パイロット通路226の開度が小となり、これに応じて湯側背圧室218の圧力が高くなって、湯流入通路202からの給湯圧と湯側背圧室218の圧力が釣り合う位置まで湯側主弁210が図中右方向に移動し、湯流入通路202の開度を小とする。即ち混合室206への湯の流入量を減少させる。
【0016】
また一方、温調ハンドル234を上記と逆方向に回転操作すると、温調軸228が図中左方向に移動して水側主弁208の開度を小さく、湯側主弁210の開度を大きく変化させ、混合室206への水流入量を少なく、湯流入量を多くする。
【0017】
特許文献2ではまた、このようなミキシングタイプの湯水混合弁とともに自動温度調節機能付の湯水混合弁、即ち混合水温度の上昇に反応して軸方向に伸び、水側主弁を開く方向に温調軸を移動させる感温体を混合室に設けるとともに、水側主弁が閉じる方向に温調軸を付勢するバイアスばねを設けて成る自動温度調節機能付の湯水混合弁の例も示されている。
【0018】
この自動温度調節機能付の湯水混合弁は、水側パイロット弁230,湯側パイロット弁232の移動によって水側背圧室217,湯側背圧室218の圧力を変化させ、これにより水側主弁208,湯側主弁210の開度を制御するもので、水,湯の流動圧に抗して直接水側主弁208,湯側主弁210を開閉動作させなくても良く、そのため操作抵抗が小さく軽い操作が可能である利点も有する。
【0019】
しかしながらこれらの湯水混合弁にあっては、水側主弁208,湯側主弁210が互いに独立していて、それぞれが水側背圧室217,湯側背圧室218の各背圧室の圧力制御にて開閉動作するものであるため、給水圧,給湯圧の圧力変動が生じたときに水側主弁208,湯側主弁210をそれぞれ狙いとする位置に持ち来すことが難しく、水側主弁208,湯側主弁210の位置の正確な制御が難しいといった問題が内在している。
【0020】
水側主弁208,湯側主弁210はそれぞれ給水圧,給湯圧によって独立に移動可能であるため、給水圧や給湯圧が変動することによってその位置が微妙にずれる問題があり、給水圧や給湯圧の変動に拘らず混合水温度を狙いとする温度に精度高く調節することが難しいのである。
【0021】
また図16に示す湯水混合弁の場合、水側主弁208,湯側主弁210による水流入通路200,湯流入通路202の開閉部分の流路面積を大きくとることが難しいため、特に給水圧に比べて圧力の低い給湯圧にて動作する湯側主弁210の側において、湯の流入量を多く確保すること、即ち混合水の吐出量を多く確保することが難しいといった問題も内在している。
【0022】
【特許文献1】特開2001−4050号公報
【特許文献2】特開2006−57761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は以上のような事情を背景とし、混合水の温度を高精度で目的とする温度に制御することのできる湯水混合弁を提供することを目的としてなされたものである。
また本発明の他の目的は、湯の流入量を多く確保して混合水の吐出量を多くすることのできる湯水混合弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
而して請求項1のものは、(a)水流入通路及び湯流入通路と、(b)該水流入通路,湯流入通路上にそれぞれ設けられた水側主弁,湯側主弁とを有し、それら水側主弁,湯側主弁の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させて湯水の混合比率を変化させる湯水混合弁において、前記水側主弁,湯側主弁の何れか一方の主弁を、軸方向の移動により対応する主弁座に対し軸方向に当接し又は離間するダイヤフラム弁又はピストン弁となすとともに、他方の主弁を、弁ケースの内面に沿って軸方向に且つ該他方の主弁に対応した湯流入通路又は水流入通路を形成する弁ケース貫通の開口を横切る方向に移動する筒形弁となして、該他方の主弁を前記一方の主弁に固定状態に一体化して軸方向に同時移動するようになし、前記一方の主弁の背後には、導入小孔を通じて前記水流入通路又は湯流入通路の何れか対応する側の通路に連通し、内部の圧力を該一方の主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室を形成して、該背圧室の圧力変化により該一方の主弁及び前記他方の主弁を一体に移動させるようになすとともに、該背圧室の水又は湯を下流側の混合室に抜くパイロット通路と、進退移動によって該パイロット通路の開度を制御するパイロット弁と、加えられた操作力により該パイロット弁を進退移動させる温調軸とを設けたことを特徴とする。
【0025】
請求項2のものは、請求項1において、前記パイロット弁が前記一方の主弁の進退移動方向と同じ方向に進退移動するものとされているとともに、前記パイロット通路が該一方の主弁を貫通して設けられており、該一方の主弁が該パイロット弁の進退移動に追従して移動するものとなしてあることを特徴とする。
【0026】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記一方の主弁が水側主弁であり、前記背圧室が前記水流入通路の水を前記導入小孔を通じて導入し、内部の圧力を該水側主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させるものであることを特徴とする。
【0027】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記湯水混合弁が、混合水温度の上昇に感応して軸方向に伸び、前記水側主弁を開く方向に前記パイロット弁を移動させる感温体が混合室に設けられる一方、該水側主弁が閉じる方向に該パイロット弁を付勢するバイアスばねが設けられて成る自動温度調節機能付のものであることを特徴とする。
【0028】
請求項5のものは、請求項4において、前記パイロット弁が前記温調軸に対して別体に構成されていて、該パイロット弁が該温調軸に対して相対移動可能な状態で該温調軸により共に移動可能に保持されているとともに、該温調軸には更に、該パイロット弁に対して軸方向の両側に前記感温体としての形状記憶合金製の感温ばねと前記バイアスばねとが、該パイロット弁に対して互いに軸方向の逆向きに付勢力を及ぼす状態に組付け保持されており、それら感温ばね及びバイアスばねが該パイロット弁とともに該温調軸の移動につれて共に移動可能なパイロット弁ユニットを成していることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0029】
以上のように本発明の湯水混合弁は、水側主弁,湯側主弁の何れか一方の主弁をダイヤフラム弁又はピストン弁となして、その一方の主弁に対し、パイロット弁の移動により増減する背圧室の圧力を作用させ、これにより筒形弁となした他方の主弁を一方の主弁と一体に移動させて、湯水の混合比率を変化するようになしたものである。
【0030】
本発明によれば、パイロット弁の移動による背圧室の圧力増減にて水側主弁,湯側主弁の何れをも開閉動作させることができるため、僅かな操作力で軽く温度調節の操作を行うことができるとともに、本発明では水側主弁,湯側主弁が一体をなしていて、一方の主弁に対する背圧室の圧力で他方の主弁が一体に移動するため、給水圧,給湯圧のそれぞれの変動により各主弁の位置が互いに独立して位置ずれを生ずるといったことが無く、混合水の温度を目的とする温度に精度高く調整することが可能となる。
【0031】
本発明ではまた、背圧室の圧力にて直接押動されない側の他方の主弁が筒形弁とされているため、湯流入通路,水流入通路の対応する側の通路の、他方の主弁にて開閉される部分の流路面積を大きくとることができる利点を有する。
【0032】
本発明では、パイロット弁を一方の主弁の進退移動方向と同じ方向に進退移動するものとなすとともに、パイロット通路を一方の主弁を貫通して設け、その一方の主弁をパイロット弁の進退移動に追従して移動するものとなしておくことができる(請求項2)。
【0033】
本発明ではまた、水側主弁を上記一方の主弁となして、その水側主弁に対し背圧室の圧力を作用させ、水側主弁を介して湯側主弁を一体に移動させるようになしておくことができる(請求項3)。
【0034】
一般には給湯圧に比べて給水圧が高く、従って水側主弁を背圧室の圧力の増減によって移動させ易いダイヤフラム弁又はピストン弁となして、これを水側主弁座に対し軸方向に当接させるようにしても、即ち開閉部分の流路面積をある程度小さくしても水の流量を十分に確保することができる。
一方で他方の主弁は、開閉部分の流路面積を大きくとることのできる筒形弁となしてあるため、給湯圧が給水圧に比べて低い場合であっても効果的に湯の流量を多く確保することができる。
【0035】
また湯側主弁もダイヤフラム弁又はピストン弁となして、この湯側主弁の側にも導入小孔を設け、またこれを押圧する背圧室を設けて、圧力の増減で湯側主弁の動作を制御するようになした場合には、その導入小孔に異物が詰まると湯側主弁に閉弁方向の圧力が作用しなくなり、一旦開弁状態となった湯側主弁が閉じられなくなってしまうが、請求項3によればこのような危険を回避することができる。
【0036】
本発明では湯水混合弁を、混合水温度の上昇に感応して軸方向に伸び、水側主弁を開く方向にパイロット弁を移動させる感温体と、水側主弁が閉じる方向にパイロット弁を付勢するバイアスばねを備えてなる自動温度調節機能付のものとなしておくことができる(請求項4)。
【0037】
次に請求項5は、パイロット弁を温調軸と別体に構成して、そのパイロット弁を温調軸に対し相対移動可能な状態で温調軸により共に移動する状態に保持させるとともに、その温調軸には更にパイロット弁に対して軸方向の両側に、感温体としての形状記憶合金製の感温ばねとバイアスばねとをパイロット弁に対し互いに逆向きの付勢力を及ぼす状態に組付け保持し、それら感温ばね及びバイアスばねがパイロット弁及び温調軸とともに全体に共に移動可能なパイロット弁ユニットを構成するようになしたものである。
【0038】
感温ばねとバイアスばねとを備えた従来の湯水混合弁では、それらばねを撓ませながら温調軸を軸方向に移動操作しなければならず、その際にばねによる抵抗によって操作が重くなる問題がある。
しかるに請求項5の湯水混合弁では、感温ばね,バイアスばねが温調軸により保持された状態で、そのまま移動可能となしてあるため、温調軸の移動操作の際にそれらばねによる抵抗力が働かず、軽い操作で温調軸を移動操作し、温度調節を行うことができる特長を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2は第1実施形態のミキシングタイプの湯水混合弁を概念的に表したもので、図1中10は弁ケースであり、この弁ケース10を径方向に貫通して水流入通路12,湯流入通路14が形成されている。
【0040】
水流入通路12上にはダイヤフラム弁(ピストン弁であっても良い)からなる水側主弁16が設けられている。
水側主弁16は、硬質の主弁本体18と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜20とを有している。ここで主弁本体18及びダイヤフラム膜20は、それぞれ平面形状が円形状をなしており、そしてダイヤフラム膜20の外周端部が弁ケース10に固定されている。
【0041】
このダイヤフラム弁からなる水側主弁16は、図中右方向に円筒状に突出した水側主弁座22に対して軸方向に当接して水流入通路12を遮断し、またこれから軸方向且つ図中右方向に離間して水流入通路12を開放する。
そして水側主弁16はその開度に応じて、水流入通路12を通じて混合室15に流入する水の流入量を変化させる。
【0042】
上記湯流入通路14上には、円筒形状の筒形弁からなる湯側主弁24が、弁ケース10の内面に沿って軸方向(図中左右方向)、即ち湯流入通路14の一部を形成する、弁ケース10を径方向に貫通した開口14aを横切る方向に移動(摺動)可能に設けられている。
【0043】
この湯側主弁24は、図中右方向の移動により湯側主弁座26に当接することで湯流入通路14を遮断し、また図中左方向に湯側主弁座26から離れることで湯流入通路14を開放する。
そして湯側主弁24は、湯側主弁座26からの離間量即ちその開度に応じて、湯流入通路14における湯の流入量を変化させる。
尚、湯側主弁24にはシール部材としてのOリング28が保持されており、このOリング28によって湯側主弁24の外周面と弁ケース10の内周面との間が水密にシールされている。
【0044】
この湯側主弁24と水側主弁16とは、軸方向の大部分が円筒形状をなす連結部30にて互いに連結され、それら水側主弁16,湯側主弁24及び連結部30の全体が、一体の制御弁体32を構成している。
尚、湯側主弁24と連結部30とは径方向に伸びるアーム31によって互いに結合されている。
【0045】
水側主弁16の図中右側の背後には、背圧室34が形成されている。
この背圧室34は、水側主弁16に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる。
背圧室34は、水側主弁16を貫通して形成された導入小孔36を通じて水流入通路12と連通しており、水流入通路12からの水がこの導入小孔36を通じて背圧室34内部に流入する。
背圧室34は、導入小孔36を通じて水流入通路12の水が流入することで圧力を増大させる。
【0046】
水側主弁16にはまた、その中心部に背圧室34内の水を混合室15側に抜く水抜通路としてのパイロット通路38が、水側主弁16を貫通して設けられている。
【0047】
弁ケース10の中心部には、温調軸(温度調節軸)40が図中左右方向の軸方向に移動可能に設けられている。
この温調軸40は、図中左側から順に細径部40a,中径部40b及び大径部40cを有しており、その中径部40bの図中左端にパイロット弁42が一体に構成されている。
【0048】
ここでパイロット弁42は、図中左方向の前進移動によってパイロット通路38の開度を小とし、背圧室34からパイロット通路38を通じて混合室15側に抜ける水の量を少なくする。
このとき背圧室34の圧力は増大し、水側主弁16に対する閉弁方向の押圧力を増大させる。
【0049】
これによりダイヤフラム弁からなる水側主弁16は閉弁方向(図中左側)に移動して水の流入量を減少させ、更には水側主弁座22に当接し、全閉状態となる。
一方、水側主弁16と一体をなした湯側主弁24は、水側主弁16の移動と同時に開弁方向(図中左側)に移動し、湯の流入量を増大させる。
そして水側主弁16の全閉時に全開状態となる。
【0050】
一方パイロット弁42が図中右方向に移動すると、パイロット通路38の開度が大となって、背圧室34からパイロット通路38を通じて抜ける水の量が大となり、背圧室34の圧力が減少する。この結果水側主弁16に対する閉弁方向の押圧力が低下する。
【0051】
これによりダイヤフラム弁からなる水側主弁16が給水圧により開弁方向(図中右側)に移動して水の流入量を増大させ、最終的に全開状態となる。
一方水側主弁16と一体をなした湯側主弁24は、水側主弁16の移動と同時に閉弁方向(図中右側)に移動して湯の流入量を減少させ、そして水側主弁16の全開時に湯側主弁座26に当接して全閉状態となり、その後も給水圧の作用によって全閉状態に維持される。
【0052】
温調軸40の細径部40aは、制御弁体32を貫通しており、その図中左端部には大径の当接部44が設けられている。
この当接部44は、温調軸40の図中右方向の移動によって制御弁体32における連結部30の左端に当接して、制御弁体32を強制的に図中右方向に、即ちダイヤフラム弁からなる水側主弁16を強制的に開く方向に移動させる働きをなす。
【0053】
例えば給水圧の低い現場では、パイロット弁42を図中右方向に移動させてパイロット通路38を開いても、水流入通路12からの水の圧力が低いために、水側主弁16を開く方向の力が十分に働かず、水側主弁16が良好に開かない場合が生じ得る。
この場合において温調軸40を右方向に大きく移動させることで、当接部44を連結部30に当てて制御弁体32を強制的に右方向に移動させ、水側主弁16を強制的に開いて水流入通路12からの水の流入を確保することができる。
【0054】
温調軸40における中径部40bには、径方向外向きに突出する係合突部46が設けられており、この係合突部46が、弁ケース10に設けられた、対応する係合溝47に軸方向に摺動可能に係合させられている。
温調軸40は、これら係合突部46と係合溝47との係合作用によって回転規制されている。
一方大径部40cには、その外周面に雄ねじ48が形成されている。
【0055】
50は操作軸(操作部材)で、弁ケース10の内部に底付且つ大径の円筒部52を有し、弁ケース10に対し回転可能に設けられている。
この操作軸50には、弁ケース10から図中右向きに突出した部分の外周面にセレーション部66が設けられており、このセレーション部66において、図示を省略するハンドルに一体回転状態に連結されるようになっている。
【0056】
円筒部52の内側には、操作軸50からの操作力を温調軸40に伝達する円筒形状の伝達部材54が挿入されている。
この伝達部材54の内周面には雌ねじ56が形成されていて、この雌ねじ56が、温調軸40の雄ねじ48に螺合されている。
温調軸40は、この伝達部材54の回転によりねじ送りで図中左右方向に進退移動させられる。
【0057】
この伝達部材54には、径方向外向きの係合突部58が一体に設けられており、この係合突部58が、円筒部52の内周面の係合溝59に軸方向に摺動可能に嵌合され、それら係合突部58と係合溝59との係合作用により、伝達部材54が操作軸50の円筒部52と一体に回転するようになっている。
【0058】
伝達部材54は、前端部と後端部とに大径部54a,54bを有しており、それらの間にコイルばねからなる緩衝ばね60が一対のワッシャ62を介して介在させられている。
ここで各ワッシャ62は、内周側が伝達部材54の大径部54a,54bに嵌り込んでおり、また外周側の部分が弁ケース10の段付部64a,64bに軸方向に当接状態に嵌り込んでいる。
【0059】
緩衝ばね60は、その付勢力を段付部64a,64bに対し互いに逆方向にワッシャ62を介して及ぼしている。
尚この緩衝ばね60は、操作軸50を回転操作したとき、通常は軸方向に撓むことなく、即ち伝達部材54を軸方向に移動させることなく、回転力を温調軸40に及ぼしてねじ送りでこれを進退移動させる。
【0060】
図3〜図5は、この実施形態の湯水混合弁の作用を表している。
図2は水側主弁16,湯側主弁24が共に開弁した状態を表しており、このときパイロット弁42はパイロット通路38を開いた状態に保持されている。
この状態で操作軸50を低温側に回転させ、伝達部材54を一体に回転させると、図3(I)に示すように伝達部材54の雌ねじ56と温調軸40の雄ねじ48とのねじ送り作用で温調軸40が図中右方向に移動し、パイロット弁42の開度が大となる。
【0061】
すると背圧室34からパイロット通路38を通じて抜け出る水の量が多くなって背圧室34の圧力が低下し、相対的に水流入通路12からの水の圧力が大となって、水側主弁16が図中右方向に押されて移動する。
その結果パイロット通路38の開度が再び小となる。そして水側主弁16は、図3(II)に示しているように背圧室34の圧力と水流入通路12の圧力とがバランスする位置で停止する。
これにより水側主弁16の開度が大となって、水流入通路12を通じて混合室15に流入する水の量が増大する。
【0062】
一方このとき、湯側主弁24もまた水側主弁16と一体に図中右方向に移動して湯流入通路14の開度を小となし、混合室15に流入する湯の流量を減少させる。その結果混合水の温度が低下する。
【0063】
この状態から更に操作軸50を低温側に回転させると、図3(III)に示しているようにパイロット弁42の図中右方向の移動により、水側主弁16が更に開度を大とし、一方湯側主弁24はその開度を小とする。
これにより混合水の温度は更に低下せしめられる。
【0064】
一方、上記とは逆方向(高温側)に操作軸50を回転させると、図4(I)に示すように温調軸40が図中左方向に前進する。即ちパイロット弁42が図中左方向に前進し、その開度を小とする。
この結果水側主弁16は、背圧室34内の圧力の増大変化によりパイロット弁42の左向きの移動に追従して図4(II)に示すように同方向に移動し、その開度を小とするとともに、これとは逆に湯側主弁24が図中左方向への後退移動によってその開度を大となし、混合室15への湯の流入量を増大させる。この結果混合水の温度が高められる。
【0065】
図5は上記緩衝ばね60の作用を表している。
この実施形態の湯水混合弁にあっては、操作軸50を大きく高温側に回転させると温調軸40が図中左方向に大きく前進して、パイロット弁42が水側主弁16に、また水側主弁16が水側主弁座22に当って、それ以上温調軸40が図中左方向に移動できなくなる。
また一方、操作軸50を低温側に大きく回転させると、当接部44の当接作用によって制御弁体32が図中右方向に大きく移動して、湯側主弁24が湯側主弁座26に当接した状態となり、それ以上温調軸40が図中右方向に移動できなくなる。
【0066】
本実施形態の湯水混合弁にあっては、水側主弁16が水側主弁座22に当接し、それ以上温調軸40が図中左方向に移動できなくなった状態で操作軸50が更に高温側に回転させられた場合であっても、或いはまた湯側主弁24が湯側主弁座26に当接して温調軸42がそれ以上図中右方向に移動できなくなった状態で操作軸50が低温側に更に回転させられた場合であっても、緩衝ばね60が収縮方向に撓むことによってその過大な操作力を吸収し、水側主弁16或いは湯側主弁24に対し過大な力が働くのを防止する。
【0067】
具体的には、図5(I)に示しているように湯側主弁24が湯側主弁座26に当接した状態で、操作軸50が低温側に更に回転させられたとき、図5(II)に示しているように伝達部材54が緩衝ばね60を収縮方向に撓ませながら温調軸40に対しねじ送りで図中左方向に相対的に前進移動し、加えられた過大な操作力を吸収する。
【0068】
また逆に水側主弁16が水側主弁座22に当接した状態で、更に操作軸50に高温側の回転操作力が加えられたとき、緩衝ばね60を収縮方向に撓ませながら、伝達部材54が図5(I),(II)に示すのとは逆方向に相対移動して過大な操作力を吸収する。
【0069】
以上のような本実施形態によれば、パイロット弁42の移動による背圧室34の圧力増減にて水側主弁16,湯側主弁18の何れをも開閉動作させることができるため、僅かな操作力で軽く温度調節の操作を行うことができるとともに、本実施形態では水側主弁16,湯側主弁18が一体をなしていて、背圧室34の圧力でそれらが一体に移動するため、給水圧,給湯圧のそれぞれの変動により各主弁の位置が互いに独立して位置ずれを生ずるといったことが無く、混合水の温度を目的とする温度に精度高く調整することが可能となる。
【0070】
本実施形態ではまた、直接に背圧室34の圧力を受けない側の湯側主弁24が円筒形状の筒形弁とされ、開口14aを横切るように弁ケース10の内面に沿って摺動するようになしてあるため、湯流入通路14の湯側主弁24にて開閉される部分の流路面積を大きくとることができる。
【0071】
一般には給湯圧に比べて給水圧が高く、従って水側主弁16を背圧室34の圧力の増減によって移動するダイヤフラム弁(又はピストン弁)となして、これを主弁座22に対し軸方向に当接させるようにしても、即ち水側主弁16による水流入通路の開閉部分の流路面積をある程度小さくしても水の流量を十分に確保することができる。
一方で他方の湯側主弁24は、開閉部分の流路面積を大きくとることのできる筒形弁となしてあるため、給湯圧が給水圧に比べて低くても効果的に湯の流量を多く確保することができる。
【0072】
図6は本発明の他の実施形態として、自動温度調節機能付(サーモスタット式)の湯水混合弁を示している。
図において68は、混合室15内に配設された形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねで、その一端(図中右端)をばね受を兼ねた温調軸40の当接部44に当接させ、温調軸40に対して図中右方向の付勢力を及ぼしている。詳しくは水側主弁16が開く方向に感温ばね68がパイロット弁42に対し付勢力を及ぼしている。
【0073】
温調軸40は、ここでは第1実施形態の中径部40bが軸方向に短い長さで構成され、その中径部40bの一端部がパイロット弁42と構成されている。
またこの中径部40bの図中右側の部分は第2の細径部40dとされていて、そこに円筒形状を成す第2の伝達部材としての進退部材70が、温調軸40に対し軸方向に相対移動可能に外嵌されている。
【0074】
この進退部材70の外周面には雄ねじ72が形成されていて、この雄ねじ72が、伝達部材54の雌ねじ56に螺合されている。
この進退部材70は、伝達部材54が操作軸50により回転させられると、ねじ送りで図中左右方向に進退移動させられる。
この進退部材70と中径部40bとの間にはコイルばねから成るバイアスばね74が介装されており、パイロット弁42に対し図中左向きの付勢力、つまり感温ばね68による付勢力とは逆向きの付勢力を及ぼしている。
即ちバイアスばね74は、水側主弁16を閉じる方向にパイロット弁42に対し付勢力を及ぼしている。
【0075】
温調軸40には、図中右端に引掛部76が設けられている。
この引掛部76は、進退部材70の図中右方向の後退移動により温調軸40を介して制御弁体32の水側主弁16を強制的に開かせるためのものである。
詳しくは、進退部材70が引掛部76に当ってなお図中右向きに後退移動すると、温調軸40が図中右向きに強制移動させられ、これにより当接部44が制御弁体32の連結部30に当接して、制御弁体32を強制的に図中右向きに移動させる。即ち水側主弁16が強制的に開かれる。
【0076】
この実施形態においても、操作軸50が過剰に操作されたときに、その過剰な操作力を吸収するための緩衝ばね60が設けられている。
但しこの例では緩衝ばね60の後端(図中右端)側だけにワッシャ62が設けられ、このワッシャ62の内周側の部分が伝達部材54の後端部の大径部54b内部に嵌り込んでいる。
また外周側の部分が、操作軸50における円筒部52の段付部64bに嵌り込んでいる。
【0077】
この実施形態の場合、湯側主弁24が湯側主弁座26に当接した状態でなお温調軸40を図中右方向に後退させる方向に操作軸50が回転操作されたとき、つまり操作軸50が低温側に過剰に操作されたとき、伝達部材54が緩衝ばね60を収縮方向に撓ませながら図中左方向に前進移動して、その過剰な操作力を吸収する。
尚、水側主弁16が水側主弁座22に当接した状態でなお操作軸50が高温側に過剰に操作されたときには、バイアスばね74,感温ばね68が収縮方向に撓むことによって過剰な操作力を吸収する。
【0078】
この例の自動温度調節機能付の湯水混合弁では、操作軸50を高温側に回転操作すると、バイアスばね74及び感温ばね68を撓ませながら温調軸40が図中左方向にシフトする。即ちバイアスばね74の左向きの付勢力と、感温ばね68の右向きの付勢力との釣合い位置が図中左方向にシフトする。
【0079】
感温ばね68は、その状態で混合室15内の混合水の温度に応じて付勢力を増大又は減少させ、パイロット弁42の位置をこれに応じて図中左右方向に微動させる。
これにより混合室15への水の流入量と湯の流入量とを、設定された比率に自動的に調節して混合水温度を目的の温度に自動調節する。
【0080】
また一方、操作軸50を低温側に回転操作して温調軸40を図中右向きに移動させると、その位置において感温ばね68が混合水の温度に感応して付勢力を増減させ、これによりパイロット弁42の位置を左右方向に微動させて、混合水の温度を設定されたより低い温度に自動調節する。
【0081】
尚、この例では進退部材70に係合突部46が設けられていて、この係合突部46が、弁ケース10側に設けられた係合溝47に係入し、それら係合突部46と係合溝47との係合作用にて進退部材70が回転規制されている。
この実施形態では感温体として感温ばね68を用いているが、サーモワックス等の他の感温体を用いて温度調節を自動的に行うようになすことも可能である。
【0082】
図7は、本発明の更に他の実施形態として自動温度調節機能付の湯水混合弁を示したものである。
この実施形態では、(B)に示しているように温調軸40の細径部40aにスリーブ78を軸方向に相対移動可能に外嵌して、これを温調軸40により保持させ、そしてスリーブ78の軸方向一端側(図中右端側)にパイロット弁42を一体に構成している。
そしてこのパイロット弁42と温調軸40の中径部40bとの間にバイアスばね74を介装してスリーブ78に対し、即ちパイロット弁42に対し、バイアスばね74の付勢力を図中左向きに、つまり水側主弁16を閉じる方向に及ぼしている。
【0083】
スリーブ78の他端側(図中左端側)には、制御弁体32における連結部30への大径の当接部44が一体に構成され、そしてこれをばね受けとして、温調軸40の図中左端に設けられた大径の別のばね受け80との間に感温ばね68が介装され、かかる感温ばね68の付勢力がスリーブ78に対し、即ちパイロット弁42に対し図中右向き、つまり水側主弁16を開く方向に及ぼされている。
【0084】
つまりこの実施形態では、パイロット弁42に対し軸方向の両側に感温ばね68とバイアスばね74とが配置されて、それらがパイロット弁42とともに温調軸40により保持されており、その状態でバイアスばね74と感温ばね68とが合計の長さを一定に保ちつつパイロット弁42に対し、その付勢力を互いに逆向きに作用させている。
【0085】
この実施形態では温調軸40,これに嵌装されたパイロット弁42及び当接部44を有するスリーブ78,バイアスばね74,感温ばね68が全体として1つの組付体としてのパイロット弁ユニット82を構成している。
尚図7中110はシール材である。
【0086】
この例の自動温度調節機能付の湯水混合弁にあっては、操作軸50を回転操作すると、パイロット弁ユニット82がバイアスばね74,感温ばね68による変形抵抗を受けることなく、温調軸40によりそれらを保持したまま全体が一体となって左右方向に移動する。
そしてその移動先において、感温ばね68が混合水温度に感応して付勢力を増減させ、これによりパイロット弁42の位置を左右方向に微動させて、混合水温度を設定された温度に自動的に調節する。
【0087】
尚この例では、温調軸40にストッパ84,86が設けられおり、これらストッパ84,86がスリーブ78の図中右端と左端とにそれぞれ当接するようになっている。
ここでストッパ84は、温調軸40が図中左向きに大きく移動させられたときに、スリーブ78の右端に当接してパイロット弁42を水側主弁16に、また水側主弁16を水側主弁座22に強制的に押し付けるものであり、またストッパ86は、温調軸40が図中右方向に大きく移動したとき、スリーブ78の図中左端に当接して湯側主弁24を湯側主弁座26に強制的に押し付ける。
【0088】
そして水側主弁16が水側主弁座22に強制的に押し付けられた後において、或いはまた湯側主弁24が湯側主弁座26に強制的に押し付けられた後において、操作軸50に過剰な操作力が加えられたとき、その過剰な操作力を吸収するため、緩衝ばね60による緩衝機構が図1と同様の構造で構成されている。
【0089】
以上のように本実施形態では感温ばね68及びバイアスばね74が、パイロット弁42及び温調軸40とともに全体に共に移動可能なパイロット弁ユニット82を構成している。
【0090】
感温ばね68とバイアスばね74とを備えた従来の湯水混合弁では、それらばねを撓ませながら温調軸40を軸方向に移動操作しなければならず、その際にばねによる抵抗によって操作が重くなる問題がある。
しかるに本実施形態の湯水混合弁では、感温ばね68,バイアスばね74が、温調軸40により保持された状態でそのまま移動可能となしてあるため、温調軸40の移動操作の際に、それらのばねによる抵抗力が働かず、軽い操作で温調軸40を移動操作し、温度調節を行うことができる。
【0091】
図8は図1〜図5に示す第1の実施形態の湯水混合弁を具体的な形状,構造で表したものであって、基本的な構造及び機能については同第1の実施形態のものと同様であり、対応する部分に符号のみを付して詳しい説明は省略する。
【0092】
ここでは温調軸40が、外径の一様な中心軸体40-1と、これに外嵌された軸方向長の長い第1のスリーブ40-2と、軸方向長の短い第2のスリーブ40-3とで構成され、そしてそれらスリーブ40-2,40-3が、中心軸体40-1に嵌着された止め輪90にて軸方向に固定されている。
中心軸体40-1の各端部は、弁ケース10及び操作軸50の支持孔92に回転可能に嵌め込まれて支持されている。
【0093】
ここで図8の部分拡大図に示すように、中心軸体40−1とスリーブ40−2,40−3の間にはクリアランス98があり、これにより混合室15とスリーブ40−2の図中右側の空間とが連通している。
尚、108はシールリングである。
また湯側主弁24は、連結部30と別部材で構成されていて、それらがねじ結合により結合され一体化されている。
【0094】
図9は、図6の実施形態の湯水混合弁を具体的な形状,構造で表したもので、基本的な構造,機能については図6に示したものと同様であり、対応する部分に符号のみを示して詳しい説明は省略する。
【0095】
尚、この実施形態においても温調軸40が中心軸体40-1と第1のスリーブ40-2,第2のスリーブ40-3とで構成されており、その軸方向の一端が止め輪90にて位置規制されている。
図中右側の他方の止め輪76は、図6における引掛部76として構成されている。
尚ここでも図8の実施形態と同様に、中心軸体40−1とスリーブ40−2,40−3との間にクリアランス98がある。
【0096】
図10は、図7に示す実施形態の湯水混合弁を、より具体的な形状,構造で表したもので、基本的な構造,機能は図7に示したものと同様であり、対応する部分に符号のみを示して詳しい説明は省略する。
【0097】
相違点として、図11にも示しているようにこの実施形態では、温調軸40が、中心軸体40-1と、これに外嵌されたスリーブ40-4,40-5にて構成されており、それらの軸端位置が中心軸体40-1に取り付けられた一対の止め輪90にて規定されている。
また、図7におけるスリーブ78が、軸方向長の長い第1スリーブ78-1と、軸方向長の短い第2スリーブ78-2とで構成され、そしてスリーブ78-1にパイロット弁42が一体に構成され、またスリーブ78-2に、ばね受けを兼ねた当接部44が一体に構成されている。
【0098】
一方、温調軸40を構成するスリーブ40-5には雄ねじ48が形成されていて、この雄ねじ48が、伝達部材54の雌ねじ56に螺合されている。
またスリーブ40-4にばね受け80が一体に構成されていて、このばね受け80と、スリーブ78-2のばね受けを兼ねた当接部44との間に、感温ばね68が介装されている。
一方スリーブ78-1とスリーブ40-5との間にはバイアスばね74が介装されている。
ここでも図8の実施形態と同様に、中心軸体40−1とスリーブ78−1,78−2との間にはクリアランス98がある。
【0099】
上記操作軸50を回転操作するにあたって、かかる回転操作軸50にハンドルを一体回転状態に連結しておいて、ハンドルに加えた操作力にて操作軸50を回転操作するようになすこともできるし、或いはまたモータを作動的に連結しておいて、そのモータにより操作軸50を回転操作するようになすことが可能である。
或いはまた、上記操作軸50又はこれとは異なった他の形態の操作部材を別の駆動装置にて操作するようになすこともできる。
【0100】
図12はその一例を示したもので、この実施形態では弁ケース10の図中右端が閉鎖構造とされていて、その内部に操作軸50が回転可能に収容されている。
尚この図12の実施形態は、図10に示す湯水混合弁の変形例に相当するものである。
【0101】
この例は、ステッピングモータにて操作軸50を回転操作するようになした例で、図中94はステータ側の電磁コイルで、弁ケース10の内部に回転可能に収容された操作軸50は、その円筒部52がマグネットロータとして構成されている。
この例では、電磁コイル94に対し電流パルスを通電することで、マグネットロータをなす円筒部52、即ち操作軸50が回転せしめられ、温調軸40を軸方向に進退移動させる。
【0102】
図10に示しているように、操作軸50が回転操作方式である場合、円滑な回転のために弁ケース10の嵌合孔に回転可能に嵌合する軸部51の径をある程度大径としておく必要がある。
ところがこの場合、湯水混合弁の下流側の流量調節弁が閉じられていたり流量が絞られていると、湯水混合弁の内部に圧力が籠った状態となって、場合によりその籠り圧が軸部51に対し図中右方向に押す大きな力となることがある。
その結果、操作軸50を回転操作する際の抵抗力が大きくなり、その分操作を重くしてしまう。
【0103】
しかるに図12の例では、弁ケース10の右端が閉鎖されていてその内部に操作軸50全体がすっぽりと回転可能に収まっているため、籠り圧によって操作軸50を回転させる際の抵抗が大きくなるといったことはなく、従ってステッピングモータを用いて操作軸50を軽やかに回転駆動することが可能となる。
【0104】
図13の例は(この例もまた図7に示す実施形態の変形例に相当する)、ワイヤーレリーズによる遠隔操作方式の例で、この例では操作力の伝達部材96が、弁ケース10の外側で温調軸40と一体に軸方向に非回転で移動する状態に温調軸40に固定されている。
そして操作部材91が伝達部材96に外嵌する円筒形状に構成され、かかる操作部材91がワイヤーレリーズ97を介して遠隔操作により軸方向に操作されるようになっている。
【0105】
これら伝達部材96と操作部材91との間には、緩衝ばね60及びワッシャ62を有する緩衝機構が介在せしめられており、操作部材91に対してこれを軸方向に移動させる向きに加えられた操作力が、これら緩衝ばね60,ワッシャ62を有する緩衝機構を介して伝達部材96に伝達され、更に伝達部材96を介して温調軸40に伝達されて、温調軸40が図中左右方向の軸方向に移動せしめられるようになっている。
【0106】
この図13の例では、温調軸40の軸端部が弁ケース10より外部に突出しているため、その突出部分詳しくは弁ケース10の嵌合孔に嵌り合っている軸端部分の断面積分だけ、籠り圧が温調軸40に対し図中右方向に押す力として働くこととなる。
但しこの例では温調軸40の軸端部が細く構成してあるため、籠り圧による図中右方向の圧力は小となり、従って温調軸40を軽やかに軸方向に移動操作することができる。
【0107】
このように温調軸40における弁ケース10への嵌合部分を細くし得るのは、この例では弁ケース10を突き抜ける部分、即ち弁ケース10に対する嵌合部分を回転操作せず、軸方向に平行移動させる方式としたことによる。
従ってこの例においても、温調軸40を軽やかに軸方向に移動操作することができる。
【0108】
尚、上記下流側の流量調整弁が完全に閉じられていると、温調軸40を図中左方向に押し込むことができなくなる。
この場合において本例では、緩衝ばね60を有する緩衝機構が弁ケース10の外側に設けられているため、支障無くその緩衝機構によって過剰な操作力を吸収することが可能となる。
【0109】
次に図14の例は(この例もまた図7に示す実施形態の変形例に相当する)、操作軸50を回転操作方式となしたものであるが、この例では、操作軸50と温調軸40との間に非回転で軸方向に移動する第1の伝達部材54と、同じく非回転で軸方向に移動する第2の伝達部材100とを介在させ、その第2の伝達部材100を、弁ケース10から突出した温調軸40の端部に軸方向に一体移動する状態に連結したものである。
【0110】
ここで操作軸50の円筒部52には雌ねじ56が、また第1の伝達部材54には雄ねじ48が形成されていて、それらが螺合され、操作軸50の回転操作によって第1の伝達部材54がねじ送りで軸方向に移動するようになしてある。
そしてこの第1の伝達部材54の軸方向の移動が、緩衝ばね60を介して第2の伝達部材100に伝えられ、かかる第2の伝達部材100が、回転運動を伴わないで軸方向にスライド移動するようになっている。
そしてこの第2の伝達部材100が軸方向にスライド移動することによって、温調軸40がこれと一体に軸方向の左右方向に移動せしめられる。
【0111】
ここで第1の伝達部材54は、弁ケース10に設けた係合突部102と、これに摺動可能に嵌合した、第1の伝達部材54側の係合溝104とによって回転規制される。
尚、図中106は軸ケースを表している。
【0112】
この例でもまた、下流側の流量調節弁が完全に閉じられていると、湯水混合弁の内部に圧力が籠った状態となって温調軸40を図中左方向に押し込むことができなくなるが、緩衝機構が弁ケース10の外側に設けてあるため、かかる緩衝機構により過剰な操作力を良好に吸収することができる。
【0113】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、例えば上記緩衝機構或いは他の緩衝機構を操作力の伝達経路上において、隣接する2つの部材間に介在させることが可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態の湯水混合弁を示した図である。
【図2】同実施形態の湯水混合弁の要部を拡大して示した図である。
【図3】同実施形態の湯水混合弁の作用を示した作用説明図である。
【図4】図3に続く作用説明図である。
【図5】同実施形態の湯水混合弁の別の作用を示した作用説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示した図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図11】同実施例におけるパイロット弁ユニットを示した図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図14】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図15】従来の湯水混合弁の一例を示した図である。
【図16】従来の湯水混合弁の他の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0115】
10 弁ケース
12 水流入通路
14 湯流入通路
15 混合室
16 水側主弁
22 水側主弁座
24 湯側主弁
26 湯側主弁座
34 背圧室
36 導入小孔
38 パイロット通路
40 温調軸
42 パイロット弁
68 感温ばね
74 バイアスばね
82 パイロット弁ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水流入通路及び湯流入通路と、(b)該水流入通路,湯流入通路上にそれぞれ設けられた水側主弁,湯側主弁とを有し、それら水側主弁,湯側主弁の開度を互いに逆の関係で大きく又は小さく変化させて湯水の混合比率を変化させる湯水混合弁において、
前記水側主弁,湯側主弁の何れか一方の主弁を、軸方向の移動により対応する主弁座に対し軸方向に当接し又は離間するダイヤフラム弁又はピストン弁となすとともに、他方の主弁を、弁ケースの内面に沿って軸方向に且つ該他方の主弁に対応した湯流入通路又は水流入通路を形成する弁ケース貫通の開口を横切る方向に移動する筒形弁となして、該他方の主弁を前記一方の主弁に固定状態に一体化して軸方向に同時移動するようになし、
前記一方の主弁の背後には、導入小孔を通じて前記水流入通路又は湯流入通路の何れか対応する側の通路に連通し、内部の圧力を該一方の主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室を形成して、該背圧室の圧力変化により該一方の主弁及び前記他方の主弁を一体に移動させるようになすとともに、該背圧室の水又は湯を下流側の混合室に抜くパイロット通路と、進退移動によって該パイロット通路の開度を制御するパイロット弁と、加えられた操作力により該パイロット弁を進退移動させる温調軸とを設けたことを特徴とする湯水混合弁。
【請求項2】
請求項1において、前記パイロット弁が前記一方の主弁の進退移動方向と同じ方向に進退移動するものとされているとともに、前記パイロット通路が該一方の主弁を貫通して設けられており、該一方の主弁が該パイロット弁の進退移動に追従して移動するものとなしてあることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記一方の主弁が水側主弁であり、前記背圧室が前記水流入通路の水を前記導入小孔を通じて導入し、内部の圧力を該水側主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させるものであることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記湯水混合弁が、混合水温度の上昇に感応して軸方向に伸び、前記水側主弁を開く方向に前記パイロット弁を移動させる感温体が混合室に設けられる一方、該水側主弁が閉じる方向に該パイロット弁を付勢するバイアスばねが設けられて成る自動温度調節機能付のものであることを特徴とする湯水混合弁。
【請求項5】
請求項4において、前記パイロット弁が前記温調軸に対して別体に構成されていて、該パイロット弁が該温調軸に対して相対移動可能な状態で該温調軸により共に移動可能に保持されているとともに、該温調軸には更に、該パイロット弁に対して軸方向の両側に前記感温体としての形状記憶合金製の感温ばねと前記バイアスばねとが、該パイロット弁に対して互いに軸方向の逆向きに付勢力を及ぼす状態に組付け保持されており、それら感温ばね及びバイアスばねが該パイロット弁とともに該温調軸の移動につれて共に移動可能なパイロット弁ユニットを成していることを特徴とする湯水混合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−133860(P2008−133860A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318988(P2006−318988)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】