説明

湯水混合装置

【課題】原点決め動作の初期に付勢手段の受け部を大きなモータトルクで反対方向に移動し、その後、小さなモータトルクで受け部を最大進出位置又は最大後退位置へ移動させることにより、ねじ部の破損を未然に防止しつつ、ねじ部の固着障害を正確迅速に解消することができる湯水混合装置を提供すること。
【解決手段】制御部7により所要時期に受け部33が最大進出位置又は最大後退位置となるようにモータ5によりねじ部32を回転させる原点決め動作を行う際に、この原点決め動作の初期に第1駆動トルクP1にてモータ5を駆動して受け部33を最大進出位置又は最大後退位置とは反対方向に移動し、その後、第1駆動トルクP1よりも小さな第2駆動トルクP2でモータ5を駆動して受け部33を最大進出位置又は最大後退位置へ移動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作開始の原点決め動作が円滑に、且つ、安全に行える湯水混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湯水混合装置として、給湯器に接続した給湯管及び上水に接続した給水管をそれぞれ連通した混合弁装置と、この混合弁装置の下手側に設けた流量調整弁装置と、更にその下手側に設けた水栓本体とより構成し、しかも、給湯管の中途部と、水栓本体手前の湯水管とは、温度検出器を介設し検出温度のデータと設定温度とを制御部において、比較演算処理して混合弁装置をフィードバック制御して設定温度の混合湯を水栓本体から吐出することができるように構成されたものがある。
【0003】
そして、混合弁装置の一形態として、湯流入口、水流入口及び混合水流出口を有するケーシングと、各流入口からの湯と水との混合比率を変更すべく、ケーシング内を進退駆動可能な混合弁体と、この混合弁体の両側に配設し混合弁体を互いに逆方向に付勢するコイルバネからなる第1付勢手段及び第2付勢手段とモータの出力部に連設した螺杆と螺合し、この螺杆の正逆回転により進退するバネ受け部とより構成されたものがあり、制御部からの制御指令によりモータを制御することにより混合弁体の位置を変えて湯温の調整をするようにしていた。
【0004】
具体的には、モータの出力部からの制御された螺杆の回転により螺合したバネ受け部が進退作動し、バネ受け部と当接したコイルバネ等から第2の付勢手段を介して混合弁体の位置を変えるのである。
【0005】
一方、モータによるバネ受け部の進退位置を正確に制御するためには、所要時期におけるバネ受け部の位置を所定位置として、その時期及び位置状態におけるモータの回転位置を初期位置とするような原点決め動作が必要となる。
【0006】
そして、かかる原点決め動作としてはバネ受け部を最大進出位置又は最大後退位置まで駆動した位置が選定されることになる。
【0007】
特許文献1には、湯水混合装置の基本構造とともに、その原点決め動作について開示されている。また、特許文献2には、原点決め動作時に一旦原点方向と逆方向に駆動することにより原点決め動作時のモータ駆動とバネ受け部の摺動が円滑に行われる技術が開示されている。さらに、特許文献3には、モータ駆動トルクを最初は大きく、後に小さくすることにより、バネ受け部の固着障害を可及的に回避しながら円滑に、且つ、正確な原点決め動作が行えるようにした技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特許第3750185号公報
【特許文献2】特許第2671801号公報
【特許文献3】特許第2707731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した構成からなる湯水混合装置の原点決めを行う場合、モータ出力部に連設した螺杆と螺合したバネ受け部の螺合部分がグリスの劣化や微塵の介入や潤滑剤の粘調化等の各種の原因により固着障害を生起する場合があるため、かかる固着障害を予測して、モータの回転トルクを大きくして固着障害を解消することが考えられる。
【0010】
しかし、そのトルク状態でバネ受け部が最大進出位置又は最大後退位置において移動停止した後も、モータが大きなトルクで駆動すると螺杆とバネ受け部の終端螺合部分が大きなトルクに耐え切れず損傷する虞がある。
【0011】
他方、特許文献1では、モータの駆動トルクに関する記載はないため、駆動トルクを大とすることにより生起するオーバーラン現象を阻止することはできず上記欠点の解消にはならず、また、特許文献2では、原点決め動作時に一旦、原点方向とは逆に駆動することが開示されてはいるが、モータの駆動トルクについては何ら開示されておらず強い固着障害の螺合部分の固着解消を完全に行うことができない。さらに、特許文献3では、モータの駆動トルクを最初は大きく、後は小さくすることが開示されているが、一方向のみの駆動トルクが大であるため、バネ受け部が極限位置となって移動停止した後に不用意に大きなトルクで駆動した場合はやはり螺合部分が破損する危険を回避することができない虞がある。
【0012】
この発明は、原点決め動作の初期に付勢手段の受け部を大きなモータトルクで反対方向に移動し、その後、小さなモータトルクで受け部を最大進出位置又は最大後退位置へ移動させることにより、ねじ部の固着障害を正確迅速に、且つ、ねじ部の破損をすることなしに解消することができる湯水混合装置を解決せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、湯流入口と水流入口と混合水流出口とが形成されたケーシングと、前記ケーシング内を直線方向に移動し、前記湯流入口と前記水流入口とから供給された湯と水との混合比率を変更する混合弁体と、この混合弁体を互いに逆方向に付勢する第1及び第2の付勢手段と、モータにより回転するねじ部と、このねじ部の回転により進退する前記第2の付勢手段の受け部と、使用者によって設定された設定温度に応じて前記モータを駆動して前記受け部の位置を変更することにより前記混合弁体の混合比率を調整する制御部と、を備える湯水混合装置であって、前記制御部は、所要時期に前記受け部の移動が機械的に規制された最大進出位置又は最大後退位置となるように前記モータにより前記ねじ部を回転させる原点決め動作を行うものであり、この原点決め動作の初期に第1駆動トルクにて前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置とは反対方向に移動し、その後、前記第1駆動トルクよりも小さな第2駆動トルクで前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置へ移動させることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2の付勢手段の受け部は、前記ねじ部の外周に螺合して移動可能であり、前記制御部は、前記受け部を最大後退位置に移動して前記原点決め動作を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記モータは、DCブラシレスモータであり、前記制御部は、デューティ比100%で前記第1駆動トルクを発生させ、100%未満の所定デューティ比にて第2駆動トルクを発生させることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記制御部は、前記第1駆動トルクの発生時には、前記第2駆動トルクの発生時よりも通電電流を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、前記制御部は、所要時期に前記受け部の移動が機械的に規制された最大進出位置又は最大後退位置となるように前記モータにより前記ねじ部を回転させる原点決め動作を行うものであり、この原点決め動作の初期に第1駆動トルクにて前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置とは反対方向に移動し、その後、前記第1駆動トルクよりも小さな第2駆動トルクで前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置へ移動させるので、受け部を最大進出又は最大後退位置とする原点決め動作の初期に、最大進出又は最大後退位置とは反対方向に大きな第1駆動トルクでモータを駆動するため、ねじ部が受け部と固着していたとしても、その固着状態を解消してねじ部を回転することが可能となる効果がある。さらに、受け部を最大進出位置又は最大後退位置まで移動させる際には小さな第2駆動トルクでモータを駆動するため、ねじ部と受け部の両係合部を破損することを防止する効果がある。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、前記第2の付勢手段の受け部は、前記ねじ部の外周に螺合して移動可能であり、前記制御部は、前記受け部を最大後退位置に移動して前記原点決め動作を行うので、ケーシング内の混合弁体の進退方向の長さを短くすることができ、同装置をコンパクト化することができる。また、原点決め位置である最大後退位置へ受け部を後退方向に移動する際に、第1駆動トルクよりも小さな第2駆動トルクで受け部を最大後退位置へ移動させることにより、ねじ部が受け部をロックすることが無くなる効果がある。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、前記モータは、DCブラシレスモータであり、前記制御部は、デューティ比100%で前記第1駆動トルクを発生させ、100%未満の所定デューティ比にて第2駆動トルクを発生させるので、モータの発生トルクを容易に切替えることができ、原点決め動作の制御が簡単に行える効果がある。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、前記制御部は、前記第1駆動トルクの発生時には、前記第2駆動トルクの発生時よりも通電電流を大きくするので、第1駆動トルクを通常モータを駆動して発生するトルクより大きくすることができ、モータの駆動初期における受け部とねじ部の固着を確実に解消することが可能となる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最良の実施形態に係る湯水混合装置は、湯流入口と水流入口と混合水流出口とが形成されたケーシングと、前記ケーシング内を直線方向に移動し、前記湯流入口と前記水流入口とから供給された湯と水との混合比率を変更する混合弁体と、この混合弁体を互いに逆方向に付勢する第1及び第2の付勢手段と、モータにより回転するねじ部と、このねじ部の回転により進退する前記第2の付勢手段の受け部と、使用者によって設定された設定温度に応じて前記モータを駆動して前記受け部の位置を変更することにより前記混合弁体の混合比率を調整する制御部とを備え、前記制御部は、所要時期に前記受け部が最大進出位置又は最大後退位置となるように前記モータにより前記ねじ部を回転させる原点決め動作を行うものであり、この原点決め動作の初期に第1駆動トルクにて前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置とは反対方向に移動し、その後、前記第1駆動トルクよりも小さな第2駆動トルクで前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置へ移動させるようにしている。
【0022】
したがって、たとえねじ部が受け部と固着していたとしても、受け部を最大進出位置又は最大後退位置とした原点決め動作の初期に、最大進出又は最大後退位置とは反対方向に大きな第1駆動トルクでモータを駆動するため、受け部がねじ部を乗り越えて移動して強く噛み込んで、その後の駆動に不具合を生じさせるおそれなく、固着状態を解消し、そのあとのねじ部の回転を円滑に行える。
【0023】
さらに、第1駆動トルクでモータを駆動した後に、受け部を最大進出位置又は最大後退位置まで移動させる際には小さな第2駆動トルクでモータを駆動するため、ねじ部と受け部の両係合部を破損することを防止することができる。
【0024】
また、前記第2の付勢手段の受け部は、前記ねじ部の外周に螺合して移動可能であり、前記制御部は、前記受け部を最大後退位置に移動して前記原点決め動作を行うように構成することができる。
【0025】
すなわち、一般的に、原点決め動作位置は、通常の温度調節範囲の動作領域外に設定されているが、本実施形態によれば、その位置をねじ部と受け部とが重合した位置とすることができるため、ケーシングにおける混合弁体の移動方向の長さを可及的に短くすることができ、その結果、湯水混合装置のコンパクト化を図ることができる。しかも、原点決め位置への受け部の移動は小さなトルクで行われるため、ねじ部が受け部をロックすることもない。
【0026】
また、前記モータは、DCブラシレスモータであり、前記制御部は、デューティ比100%で前記第1駆動トルクを発生させ、100%未満の所定デューティ比にて第2駆動トルクを発生させることができる。つまり、デューティ制御によりモータの発生トルクを切り替えることができ、制御をより簡単に行える。
【0027】
また、前記制御部は、前記第1駆動トルクの発生時には、前記第2駆動トルクの発生時よりも通電電流を大きくすることもできる。
【0028】
すなわち、同じデューティ比、すなわち暗示期間通電したとしても、通電波形の高さで表わされる通電電流は、それが高いほど駆動トルクを大きくすることができるため、第1駆動トルクの発生時には、前記第2駆動トルクの発生時よりも通電電流を大きくすれば、原点決め動作の初期にねじ部が受け部と固着していたとしても、より確実に固着障害を解消することができる。
【0029】
以下、この発明の一実施形態を、図面に基づきより具体的に説明する。図1は本実施形態に係る湯水混合装置を備えた水栓装置を示す全体の説明図、図2は本実施形態に係る湯水混合装置を示すブロック図、図3は本実施形態における混合弁装置を示す断面図である。
【0030】
図1において、Aは本実施形態に係る水栓装置が設けられた洗面台であり、この洗面台Aには洗面ボールBが設けられており、この洗面ボールBの奥縁部に、当該洗面ボールBに向かって開口した吐水口21aを有するスパウトからなる水栓本体21が立設されている。洗面ボールBの上部鍔部22の一側端部には、温度設定や開閉弁の開閉設定の調整をそれぞれ設けることのできる操作部23が設けられている。そして、洗面台下方で水栓本体21の基部には、湯水混合装置1が水栓ケーシング24によりケーシングされて配設されている。
【0031】
操作部23は、押し操作及び回動操作可能な操作ハンドルからなり、吐水の開閉と、混合湯温の調整と、三段階の湯量調整とを行うことができるように構成されている。
【0032】
湯水混合装置1は、図2に示すように、給湯器25に連通した給湯管2と、上水に連通した給水管3とを有し、各管2,3先端は混合弁装置4に連通されている。混合弁装置4は、内部に混合弁体34及び弁駆動機構36を収納したケーシング30と前記混合弁体34をスライド駆動させるモータ5とを備えている(図3参照)。
【0033】
図2に示すように、混合弁装置4の下手側には流量調整装置6が連通連設され、更にその下手側に前記水栓本体21が連通連設されている。操作部23は制御部7に接続し、制御部7の出力部は混合弁装置4に付設したモータ5及び流量調整装置6に設けた開閉弁駆動装置8にそれぞれ接続している。
【0034】
更に、給湯管2の中途部には供給湯温検出器9を介設し、また、流量調整装置6と水栓本体21との間の吐水管13の中途部にはサーミスタからなる混合湯温検出器10を介設しており、供給湯温検出器9と混合湯温検出器10はそれぞれ制御部7の入力部に接続されている。
【0035】
なお、流量調整装置6は、上手側に3個の開閉弁11a,11b,11c及び開閉弁駆動機構8a,8b,8cよりなる開閉弁駆動装置8と、その下手側に設けられた3個の定流量弁14a,14b,14cよりなる定流量弁装置15とから構成されており、3個の各開閉弁11a,11b,11cと各定流量弁14a,14b,14cとは、それぞれ1対1で対応して連設されている。すなわち、3個の開閉弁11a,11b,11cのうち小流量の開閉弁11aの1個のみ開弁しておく場合が最も流量が少ない場合であり、3個開閉弁11a,11b,11cを設定流量に応じて適宜選択して開閉弁操作すれば、流量の3段階調整が可能となる。
【0036】
本発明の湯水混合装置1を使用する場合、水栓本体21から所望する湯温と湯量による吐水を行なうには、操作部23による操作で行われ、吐水目的が終了して吐水を中止する場合も操作部23を操作することにより、制御部7を介して流量調整装置6の開閉弁11a,11b,11cを閉弁して水栓本体21からの吐水を中止することができる。
【0037】
かかる湯水混合装置1において、本発明は特に混合弁装置4における原点決め動作の制御技術に関するものであり、この混合弁装置4は、次のように構成されている。
【0038】
すなわち、図3に示すように、筒状のケーシング30の内部に、雄螺子が形成されたねじ部32を回転可能に収納し、ねじ部32基端はケーシング30の外部に設けたDCブラシレスモータよりなるDCブラシレスモータ5の連結ロッド31に連結している。ねじ部32の外周は、ケーシング30内で受け部33と螺合しており、ねじ部32の正逆回転により、受け部33がケーシング30内を左右に移動するように構成している。
【0039】
更にケーシング30内において受け部33の先方には、混合弁体34が左右摺動自在に収納されており、混合弁体34と受け部33との間には巻きバネからなる第2の付勢手段35が、更に、混合弁体34とケーシング30内終端部30aとの間には形状記憶合金性の巻きバネからなる第1の付勢手段37がそれぞれ介在されている。従って、ねじ部32の正回転によりねじ部32に螺合した受け部33は進出(図3における右方向であって第2の付勢手段を押し縮める方向に移動)し、第2の付勢手段35の付勢力が第1の付勢手段37の付勢力に勝るため混合弁体34を進出方向に変位させ、逆回転によりねじ部32に螺合した受け部33は後退(図3における左方向であって第2の付勢手段を伸張する方向に移動)し、第1の付勢手段37の付勢力が第2の付勢手段35の付勢力に勝っているため混合弁体34を後退方向に変位させる。
【0040】
このように混合弁装置4は、DCブラシレスモータ5の作動によりねじ部32、受け部33、第2の付勢手段35、第1の付勢手段37などを介して混合弁体34をケーシング30内において進退摺動させることができる。
【0041】
他方、ケーシング30の周壁には湯流入口38と水流入口39とが穿設され、給湯器からの給湯管2と上水からの給水管3がそれぞれ連通連結されており、湯流入口38及び水流入口39は、混合弁体34の周面によって開閉自在となるようにレイアウトされている。
【0042】
混合弁体34は、両側を開口の筒状に形成されており、湯水流入口38,39からの湯水が両端開口部34a,34bを流通するように構成されている。また、混合弁体34は、長さを少なくとも湯流入口38と水流入口39との最大間隔よりも短く形成し、しかも、各流入口38,39の一方を閉塞した場合は、他方を開口する長さとし、さらに、混合弁体34の左右端周面は、各流入口38,39に当接自在として各流入口38,39の開口比率を変更しうる長さに形成している。
【0043】
また、ケーシング30の終端面には、混合水流出口40が形成されており、ケーシング30内で混合された混合湯水を外部に吐出するように構成されている。
【0044】
また、DCブラシレスモータ5は制御部7と接続しており、制御部7では操作部23により設定された設定温度のデータにより駆動制御されるように構成されている(図3参照)。例えば、設定温度が高い設定温度である場合には、DCブラシレスモータ5を制御してねじ部32を正転することにより、混合弁体34を前進させて湯流入口38を略開放状態とする一方、水流入口39を略閉塞状態とすれば湯の流入比率が高まり混合湯水の温度が上昇する。他方、設定温度が低い場合には、ねじ部32を逆転制御することにより、混合弁体34を後退させて湯流入口38と水流入口39との開放比率を水の流入比率が高くなるように調整し、混合湯水の温度を下げることができる。
【0045】
こうして、本実施形態に係る湯水混合装置1は、使用者によって設定された設定温度に応じて、制御部7からDCブラシレスモータ5に制御指令を出力すると、モータ5が駆動して連結ロッド31先端部のねじ部32の回転作部を介して受け部33を進退作動させて受け部33の位置を変更し、第1の付勢手段37或は第2の付勢手段35を介して混合弁体34を進退作動して変位し、湯と水との混合比率を調整することができる。
【0046】
この設定温度とモータ5の駆動量との関係は予め決めておくことが可能である。即ち、設定湯温の混合水と接触した場合の形状記憶合金性である第1の付勢手段37が発生する付勢力はその形状記憶合金の特性として決まっており、その第1の付勢手段37が設定温度で発生する付勢力と釣り合って混合弁体34が所定の混合比率となるように第2の付勢手段が混合弁体34を付勢するようにモータ5を駆動すれば良い。
【0047】
すなわち、湯水混合装置1の混合弁装置4は、制御部7からの設定温度に基く制御指令によりDCブラシレスモータ5が駆動して受け部33の位置を変更することによって混合弁体34の混合比率調整の作動を行うように構成されている。
【0048】
かかる混合弁装置4において、制御部7は所要時期に受け部33がケーシング30等に当接して機械的に進退位置が規制された最大進出位置又は最大後退位置となるようにDCブラシレスモータ5により、ねじ部32を回転させる原点決め動作を行わせるものである。
【0049】
すなわち、混合弁体34の混合比率を正確に調整するためには、第2の付勢手段の付勢力を正確に調整する必要があり、そのためには、このDCブラシレスモータ5による受け部33の進退位置を正確に制御することが必要であり、そして、受け部33の進退位置を正確に調整するためには、所要時期に受け部33の位置をケーシング30自体、若しくは、ケーシング30に固定された部材に当接してその移動が規制された所定位置として、その状態におけるDCブラシレスモータ5の回転位置を初期位置とする原点決め動作が必要となる。
【0050】
この原点決め動作としては、受け部33を進出又は進退方向に移動させてケーシング30自体、若しくは、ケーシング30に固定された部材に当接させた最大進出位置又は最大後退位置まで駆動した位置を初期位置として設定することになる。
【0051】
従って、受け部33をDCブラシレスモータ5により最大進出位置又は最大後退位置まで駆動するようにDCブラシレスモータ5の回転作動を行う必要がある。なお、原点位置となる最大進出位置又は最大後退位置を検出するには、受け部33が移動して最大進出位置又は最大後退位置に到達してケーシング30自体、若しくは、ケーシング30に固定された部材に当接してその移動が規制されて停止したときのDCブラシレスモータ5の負荷を制御部7が検出するようにしている(モータロック検知)。すなわち、制御部7は、モータロック検知したことを条件に、受け部33が最大進出位置又は最大後退位置にあると判断し、DCブラシレスモータ5の回転駆動を停止するのである。
【0052】
しかし、DCブラシレスモータ5の回転作動を行う際に、ねじ部32がグリス劣化、微塵侵入、潤滑油の粘化等の原因により固着障害を生起している場合があるので、原点決め動作の初期には、DCブラシレスモータ5をある程度大きなトルクである第1駆動トルクで駆動するようにしている。しかも、本実施形態では、受け部33を最大進出位置又は最大後退位置とは反対方向に移動させるようにしている。なお、本実施形態では、DCブラシレスモータ5を正回転すると受け部33は進出位置方向へ移動し、一方、DCブラシレスモータ5を逆回転すると受け部33は後退位置方向へ移動するものとしている。
【0053】
こうして、大きなトルクでDCブラシレスモータ5を駆動することにより、受け部33とねじ部32とが固着障害を生じていても、強引に固着部分を剥離して、その後の円滑な螺合の動きを実現できる。
【0054】
次いで、前記の第1駆動トルクより小さな第2駆動トルクで前記DCブラシレスモータ5を駆動して受け部33をケーシング30自体、若しくは、ケーシング30に固定された部材に当接してその移動が規制された最大進出位置又は最大後退位置に移動させれば、ねじ部32は固着障害が解消しているので、受け部33の原点決め動作が円滑に、且つ、ねじ部32端縁への衝激も可及的に減殺して行うことができる。
【0055】
図4及び図5に基づき、湯水混合装置1における受け部の最大後退位置を原点決め位置とする一例について説明する。図4(a)は所定期間におけるモータの回転方向を示す波形図、図4(b)は所定期間における受け部の進退位置を示す説明図、図4(c)は所定期間におけるモータのデューティ比を示す説明図、図5は混合弁装置の受け部の進退位置を示す説明図、図6はモータのトルクと通電電流との関係を示す説明図である。
【0056】
図4において、湯水混合装置1を所定期間t0〜t1使用したタイミングで場合に原点決め動作(イニシャライズ)を開始することとする。そして、このタイミングにおける混合弁装置4の受け部33の進退位置は、例えば、図5(a)の端部位置Lである。なお、当然ではあるが、このときDCブラシレスモータ5は停止状態にある(図4(a))。
【0057】
原点決め動作における初期の期間t1〜t2(図4参照)において、制御部7は、DCブラシレスモータ5をPWM制御しつつ100%のデューティ比P1で駆動させ、大きなトルクである第1駆動トルクを生起させるとともに、モータ回転を所定の回転数だけ正回転(CW)させる。このとき、混合弁装置4の受け部33の進出位置は図5(b)に示すように端部位置L+Ltとなる。
【0058】
かかる大きなトルクの第1駆動トルクでDCブラシレスモータ5を駆動することにより、受け部33とねじ部32とが固着障害を生じていても、ねじ部32を強引に正回転方向に螺動することで解消し、ねじ部32と受け部33との円滑な螺合の動きを生起させることができる。
【0059】
また、このような動きの制御を、本実施形態では、デューティ比を変えてDCブラシレスモータ5への発生トルクを切替える、いわゆるデューティ制御で行っているため、極めて容易な制御が可能となっている。
【0060】
次に、原点決め動作における期間t2〜t3においては、制御部7は、DCブラシレスモータ5をPWM制御しつつデューティ比が35%となる程度のデューティ比P2で逆回転(CCW)するように駆動して、第1駆動トルクよりも小さなトルクである第2駆動トルクP2を発生させる(図4(a),図4(c))。こうして、混合弁装置4の受け部33が後退移動して、その位置は図5(c)に示すように、最大後退位置であるケーシング30の左側内壁面に当接してその移動が規制された端部位置L0となる。かかる小さなトルクである第2駆動トルクP2でDCブラシレスモータ5を駆動して受け部33を最大後退位置に後退移動させることにより、受け部33の原点決め動作を円滑に、且つ、ねじ部32端縁への衝激も可及的に減殺して行うことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、DCブラシレスモータ5による発生トルクを、デューティ制御で行うようにしており、図4で示した原点決め動作における初期の期間t1〜t2においても、その後の期間t2〜t3にしても、通電電流は同じであるが、デューティ比を変えて第1駆動トルク、第2駆動トルクを発生させるようにしている。
【0062】
しかし、同じデューティ比、すなわち同じ期間通電したとしても、通電波形の高さで表わされる通電電流を大きくすれば駆動トルクを大きくすることが可能である。すなわち、図6に示すように、同じデューティ比(100%)であっても、通電電流I1(図6(b))に対するトルクD1(図6(a))よりも、大きな通電電流I2(図6(b))に対するトルクD2(図6(a))の方が大きくなる。
【0063】
そこで、上述した原点決め動作における初期の期間t1〜t2(図4)においては、第1駆動トルクを生起するために100%のデューティ比P1であって、なおかつ第2駆動トルクを発生させるときよりも通電電流を大きくすることができる。
【0064】
このように、第1駆動トルクの発生時には、第2駆動トルクの発生時よりも通電電流を大きくすることにより、より大きな第1駆動トルクを得ることによって、DCブラシレスモータ5の駆動初期における受け部33とねじ部32の固着障害を、より確実に解消することができるようになる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述してきた各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0066】
例えば、本実施形態では、原点位置を、受け部33の最大後退位置として説明したが、最大進出位置であっても同様な制御を行うことができる。なお、受け部33の最大進出位置は、図3においてケーシング30の内周面であって受け部33の右側端と混合弁体34の可動範囲の左側端との間にストッパーを凸設しておき、受け部33を進出させたときにこのストッパーに受け部33の右側端部が当接してその移動が規制された位置を最大螺動位置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る湯水混合装置を備えた水栓装置を示す全体の説明図である。
【図2】本発明に係る湯水混合装置を示すブロック図である。
【図3】本発明における混合弁装置を示す断面図である。
【図4】(a)は所定期間におけるモータの回転方向を示す波形図、(b)は所定期間における受け部の進退位置を示す説明図、(c)は所定期間におけるモータのデューティ比を示す説明図である。
【図5】混合弁装置の受け部の進退位置を示す説明図である。
【図6】モータのトルクと通電電流との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
A 洗面台
B 洗面ボール
1 湯水混合装置
2 給湯管
3 給水管
4 混合弁装置
5 混合弁駆動装置
6 流量調整装置
7 制御部
8 開閉弁駆動装置
9 供給湯温検出器
10 混合湯温検出器
21 水栓本体
23 操作部
25 給湯器
30 ケーシング
31 連結ロッド
32 ねじ部
33 受け部
34 混合弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯流入口と水流入口と混合水流出口とが形成されたケーシングと、
前記ケーシング内を直線方向に移動し、前記湯流入口と前記水流入口とから供給された湯と水との混合比率を変更する混合弁体と、
この混合弁体を互いに逆方向に付勢する第1及び第2の付勢手段と、
モータにより回転するねじ部と、
このねじ部の回転により進退する前記第2の付勢手段の受け部と、
使用者によって設定された設定温度に応じて前記モータを駆動して前記受け部の位置を変更することにより前記混合弁体の混合比率を調整する制御部と、
を備える湯水混合装置であって、
前記制御部は、
所要時期に前記受け部の移動が機械的に規制された最大進出位置又は最大後退位置となるように前記モータにより前記ねじ部を回転させる原点決め動作を行うものであり、
この原点決め動作の初期に第1駆動トルクにて前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置とは反対方向に移動し、その後、前記第1駆動トルクよりも小さな第2駆動トルクで前記モータを駆動して前記受け部を前記最大進出位置又は最大後退位置へ移動させる
ことを特徴とする湯水混合装置。
【請求項2】
前記第2の付勢手段の受け部は、前記ねじ部の外周に螺合して移動可能であり、
前記制御部は、
前記受け部を最大後退位置に移動して前記原点決め動作を行う
ことを特徴とする請求項1記載の湯水混合装置。
【請求項3】
前記モータは、DCブラシレスモータであり、
前記制御部は、
デューティ比100%で前記第1駆動トルクを発生させ、100%未満の所定デューティ比にて第2駆動トルクを発生させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の湯水混合装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1駆動トルクの発生時には、前記第2駆動トルクの発生時よりも通電電流を大きくする
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湯水混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84827(P2010−84827A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253062(P2008−253062)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】