説明

湿度センサおよびそれを有する半導体装置

【課題】 感湿膜と電極との密着性を向上した信頼性の高い湿度センサを提供する。
【解決手段】 湿度センサの電極の形状を、アイランド状として、感湿膜で電極を囲む形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容量式湿度センサとしては、図5に示されるような回路が知られていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
基板上に電極が櫛歯状に形成されている。その上に、湿度によって比誘電率が変化する感湿膜を塗布する。これによって、櫛歯状の電極間に感湿膜が入り込む。21及び22の電極間の容量値は、電極の間隔をdH、電極の対向する面積をS、電極間の感湿膜の比誘電率をεH、真空の誘電率をε0とすれば、およそ(1)式で与えられる。
【0004】
【数1】

湿度によって、上記電極間の感湿膜の比誘電率εHが変化するので、21及び22の電極間の容量値Cが変化し、容量値Cを測定することで、湿度を測定することが可能である。
【0005】
また、図5と同様な回路で、抵抗式湿度センサが知られていた(例えば、特許文献2参照。)。抵抗式湿度センサは、前述の湿度によって比誘電率が変化する感湿膜の換わりに、湿度によって抵抗率が変化する感湿膜を電極21及び22の上(電極21及び22の間)に塗布する。その場合、湿度によって、電極21と22の間の抵抗値が変化するため、抵抗値を測定することで、湿度を測定することが可能である。
【特許文献1】特開2003-156464号公報(第1図)
【特許文献2】特開平8-145932号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の湿度センサでは、感湿膜と電極及び基板との密着性が悪く、感湿膜が剥がれやすいという課題があった。また、微小領域の湿度の分布を測定することができないという課題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は従来のこのような課題を解決するために、感湿膜と電極及び基板との密着性に優れ、また、微小領域の湿度の分布を正確に測定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明にかかる湿度センサは、電極構造をアイランド状の単位セルを複数格子状に配列した。
【発明の効果】
【0009】
本願発明にかかる湿度センサは、感湿膜の密着性に優れ、信頼性を向上させることが出来るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明では湿度センサの電極構造を新規な構成とした。以下実施例で具体的に詳述する。
【実施例1】
【0011】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第一の実施例を示す湿度センサの電極である。複数の独立したアイランド状の電極11を囲う構造となっている。図1の電極は、基本となる単位セルを、5×5個格子状に配置している。
【0012】
図2の(A)に電極の単位セルを(B)にその断面図(図2(A)のA−B間)を示す。図2(A)において、第一の電極11と、電極11を囲うように形成された第二の電極12があり、前記第一の電極11と第二の電極12の間には、感湿膜があり、電極11と12の間の静電容量値または抵抗値を測定することで、湿度を測定することができる。図2(B)の断面図において、基板16(例えば半導体)の上に、絶縁膜14Aがあり、その上に、第一の金属配線層10があり、その上に絶縁膜14Bがあり、その上に、第二の金属配線層で形成された電極11と12があり、その電極の表面には電極を保護するための保護膜13(例えば、窒化膜)があり、その上に、感湿膜15がある。第二の金属配線層で形成された第一の電極11は、絶縁膜14Bに形成された貫通孔によって、第一の金属配線層に接続されている。
【0013】
図1の全ての単位セルの電極11を同一の第一の金属配線層に接続すれば、その第一の金属配線層と第二の金属配線層で形成された電極12との静電容量値または抵抗値を測定することで、湿度を測定することが可能である。
【0014】
さて、本発明の湿度センサでは、電極構造を図1に示す形状としたため、感湿膜と電極との密着性が従来に比較して、大きく向上させることができた。従来の図5に示す構造では、横方向に櫛歯電極が形成されており、その櫛歯の方向に対して、感湿膜が剥がれやすかったが、本発明では、単位ユニットが、図2に示すように、アイランド状の電極11と、それを囲むように形成された電極12とからなり、アイランド状の電極11を4方向囲むように感湿膜15が入り込むため、櫛歯電極における櫛歯の方向のように、ある方向に対する密着性が悪くなるということなく、信頼性の高い湿度センサを得ることができる。
【0015】
また単位セルの形状として、図2では、四角形の電極11と、電極11を囲む四角形の電極12を示したが、図3(A)または(B)に示すような凹凸のある多角形の電極31とそれを囲む凹凸のある多角形の電極32としても、図2の場合と同様に電極と感湿膜との密着性を向上させることが可能である。
【実施例2】
【0016】
実施例1では、単位セルの電極11を同一の第一の金属配線層に接続することを例としたが、図1のように、単位セルを複数個配置した場合、その単位セル毎の静電容量値または抵抗値を測定することで、その単位セルが存在する領域の局所的な微小領域の湿度を測定することができる。このようにすることで、湿度センサ上の湿度の分布を測定することができる。
【0017】
単位セルの大きさ(面積)は、半導体プロセスによるフォトリソ工程を使用すれば、数μm□〜数10μm□程度まで、小型化することが可能である。逆に、大きい単位セルの面積としては半導体のウエハー面積で制限されるため、6inchのウエハー径であれば、25mm□程度まで可能である。
【実施例3】
【0018】
半導体基板上に湿度センサを形成すると同時に、信号処理回路を集積化することで、湿度センサが1チップに組み込まれた半導体集積回路を作製することが可能である。
【0019】
半導体基板上の集積回路には一般に、保護膜として厚い1μm 程度の窒化膜がつけられる。その窒化膜はCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって、半導体基板一面につけられる。集積回路と湿度センサの電極を集積化した場合、保護膜としての厚い1μm 程度の窒化膜が、湿度センサの電極の上にもつくことになる。しかしながら、厚い窒化膜をつけた場合、図2における、電極11と電極12の間の容量値Cは、感湿膜の容量値をCH、窒化膜の容量値をCNとすると、CHとCNの直列接続容量の値となり(2)式となる。
【0020】
【数2】

但し、
【0021】
【数3】

である。ここで、ε0は真空の誘電率であり、εHは感湿膜の比誘電率であり、εNは窒化膜の比誘電率であり、Sは電極11と電極12の対向面積であり、dHは電極11と電極12間に存在する感湿膜の厚さであり、dNは電極11及び12の表面の窒化膜の厚さである。窒化膜の厚さdNが十分に薄ければ、CHォCNとなり(2)式は、(1)式とほぼ等しくなる。(2)式から明らかなように、窒化膜の厚さdNが薄いほうが、湿度に対する電極間の容量値の変化が大きくなる。
【0022】
従って、図2における保護膜は、薄いほうが望ましい。そのため、一度厚い窒化膜をつけてから、電極部分は、その厚い窒化膜を除去(エッチング)して、再度薄い窒化膜をつける必要がある。
【0023】
一方、実施例1の図2の断面図(B)では、金属配線層の下に、バリア層(以下バリア・メタルと記載する)を記載していないが、一般に半導体プロセスでは、金属配線層の下地の絶縁膜との密着性を向上させるために、バリア・メタルをつける。バリア・メタルとしては、窒化チタン(TiN)や窒化タンタル(TaN)が知られている。
【0024】
窒素の含有量が多い金属をバリア・メタルとした場合、厚い窒化膜を除去する際に、図4(A)に示すように、バリア・メタル17も同時にエッチングされ、金属配線層12と下地の絶縁膜14Bとの密着性が悪化して、金属配線層12が剥がれやすくなる。例えば、TiNでは、原子量でチタンと窒素の含有量が1:1であり、バリア・メタル17も、厚い窒化膜を除去する際に同時にエッチングされてしまう。一方、窒素の含有量が少ない(原子量で窒素の含有量が10%以下の)金属をバリア・メタルとした場合は、図4(B)に示すように、厚い窒化膜を除去する際に、バリア・メタル17はほとんどエッチングされず、金属配線層12と下地の絶縁膜14Bとの密着性は損なわれない。
【0025】
以上図1では、基本となる単位セルを、5×5個格子状に配置したが、本発明に、その数は関係なく、複数個の単位ユニットを並べることで、同様の効果が得られることは、明白である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施例における湿度センサの電極
【図2】本発明の第一の実施例における電極単位セル
【図3】本発明の別の実施例における電極単位セル
【図4】厚い窒化膜除去後の電極の断面図
【図5】従来の湿度センサの電極
【符号の説明】
【0027】
10 第一の金属配線層
11 第二の金属配線層で形成された第一の電極
12 第二の金属配線層で形成された第二の電極
13 保護膜
14A,B 絶縁膜
15 感湿膜
17 バリア・メタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属配線層と、
前記第一の金属配線層の上に、絶縁膜を介して形成された、第二の金属配線層からなるとともに前記第一の金属配線層に接続された第一の電極および、前記第一の電極を囲んで配置された、第二の金属配線層からなる第二の電極と、
前記第一および第二の電極の上に配置された感湿膜とからなる単位セルを複数並べた湿度センサ。
【請求項2】
前記単位セルが半導体基板上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の湿度センサ。
【請求項3】
前記単位セルは、保護膜として、シリコン窒化膜を有することを特徴とする請求項1または2記載の湿度センサ。
【請求項4】
前記第二の金属配線層からなる前記第一および第二の電極の下に窒素の含有量が原子量で10%未満であるバリア層(バリア・メタル)を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の湿度センサ。
【請求項5】
前記単位セルごとに容量を読み出すことができる請求項1記載の湿度センサ
【請求項6】
請求項1に記載された湿度センサと信号処理回路を含む集積回路とをおなじ半導体基板上に配置した半導体装置。
【請求項7】
さらに保護膜としてシリコン窒化膜を有することを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記シリコン窒化膜は集積回路上で厚く、湿度センサ上では薄い請求項7記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−192622(P2007−192622A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9908(P2006−9908)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】