説明

湿式画像形成装置

【課題】再利用のキャリア液を用いても、画像の質が低下しない湿式画像形成装置を提供すること。新規のキャリア液の使用量をできるだけ抑えることができる湿式画像形成装置を提供すること。
【解決手段】各感光体ドラム10M,10C,10Y,10BKから回収装置15M,15C,15Y,15BKから回収され抽出されたキャリア液は、各回収キャリア液槽25M,25C,25Y,25BKに付与される。イエロー用の回収キャリア液槽25Yからは、イエロー用の調整槽22Yに対してだけでなく、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mに対してもキャリア液が供給されるようになっている。廃液槽38は、ブラック用の回収キャリア液槽25BKだけに接続されており、他の色用の回収キャリア液槽25M〜25BKには接続されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体現像剤を用いて静電潜像を可視化するようにした湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、粉体の現像剤を用いて感光体ドラムの静電潜像の転写を行うことが主流であるが、トナー粒子をキャリア液に分散した液体現像剤で現像し、画像を形成する湿式画像形成装置が提案されている。このような湿式画像形成装置として、複数の感光体ドラムにそれぞれ異なる色の液体現像剤(たとえばブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)を用いてカラー画像を形成し、このカラー画像を順次転写することによりフルカラー画像を形成するものが知られている。
【0003】
このようなフルカラーの湿式画像形成装置では、感光体ドラムの表面の液体現像剤が全て転写されるのではなく、幾らかの液体現像剤は感光体ドラムの表面に残留してしまう。この残留する液体現像剤は再利用することが望ましい。すなわち、感光体ドラムの表面に残留した液体現像剤を回収してキャリア液成分だけを抽出し、このキャリア液成分を、新規のキャリア液の代わりに液体現像剤の調整に用いることが望ましい。このような湿式画像形成装置として、たとえばイエロー用の感光体ドラムから回収され抽出されたキャリア液はイエロー用の液体現像剤の調整に用いられ、たとえばブラック用の感光体ドラムから回収され抽出されたキャリア液はブラック用の液体現像剤の調整に用いられるというように、各色の画像形成機構単位でキャリア液の回収・再利用を行うことが考えられる。
【0004】
ところが、作成画像によっては、ある色の液体現像剤の消費量が他の色の液体現像剤の消費量と比較して極端に多くなる場合がある。この場合、その色の画像形成機構の液体現像剤の調整のために新規のキャリア液を供給する必要があるのであるが、その一方で、他の画像形成機構で再利用のキャリア液が余っており、この再利用のキャリア液が廃棄されていることがある。すなわち、再利用のキャリア液を十分に活用しきれていなかった。
【0005】
そこで、特許文献1では、各色の感光体から回収したキャリア液成分すべてを1つのキャリアタンクに集め、このキャリアタンクに集められたキャリア液成分を、各色(4色)の液体現像剤の調整に再利用することが提案されている。
【特許文献1】特開2000−214687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感光体ドラムに残留している液体現像剤からキャリア液成分を抽出する際に、トナー粒子を完全に除去することは困難な場合があり、再利用のキャリア液にトナー粒子が微量ながら存在することがある。そのため、各感光体ドラムから回収されたキャリア液を1箇所のキャリアタンクに集めるとすると、これらのキャリア液が混ぜ合わされて、再利用のキャリア液には各色(4色)のトナー粒子が存在する。このキャリア液を、たとえばイエローの液体現像剤の調整に用いると、他の色のトナー粒子が目立ってしまい、画像形成時に色の再現性が不安定になり、その結果、画像の質が低下する問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、再利用のキャリア液を用いても、画像の質が低下しない湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
また、この発明は、新規のキャリア液の使用量をできるだけ抑えることができる湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、互いに異なる色の画像を形成するための複数の感光体(10M,10C,10Y,10BK)と、前記複数の感光体にそれぞれ対応して設けられ、前記感光体に対し、互いに異なる色の液体現像剤をそれぞれ供給する複数の現像部材(20M,20C,20Y,20BK)と、前記各感光体に残留する液体現像剤からキャリア液を回収する回収手段(15M,15C,15Y,15BK)と、前記各回収手段から回収されたキャリア液を、回収元の感光体に対応する現像部材、または、その回収元の感光体よりも形成画像の色の明度が低い感光体に対応する現像部材に対して供給する再利用手段(28M,28C,28Y,28BK,31,32,33:41)と、前記複数の色のうち最も明度の低い色から回収されたキャリア液は廃棄可能とされていて、その他の色から回収されたキャリア液は廃棄することができないようにされていることを特徴とする湿式画像形成装置(1)である。
【0009】
また、前記の目的を達成するための請求項2記載の発明は、互いに異なる色の画像を形成するための複数の感光体(10M,10C,10Y,10BK)と、前記複数の感光体にそれぞれ対応して設けられ、前記感光体に対し、互いに異なる色の液体現像剤をそれぞれ供給する複数の現像部材(20M,20C,20Y,20BK)と、前記各現像部材に残留する液体現像剤からキャリア液を回収する回収手段(15M,15C,15Y,15BK)と、前記各回収手段から回収されたキャリア液を、その回収元の現像部材よりも供給液体現像剤の色の明度が低い現像部材に対して供給する再利用手段(28M,28C,28Y,28BK,31,32,33)と、前記複数の色のうち最も明度の低い色から回収されたキャリア液は廃棄可能とされていて、その他の色から回収されたキャリア液は廃棄することができないようにされていることを特徴とする湿式画像形成装置(1)である。
【0010】
なお、括弧内の数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
請求項1または2記載の発明によれば、再利用のキャリア液は、回収元と同色用の現像部材だけでなく、その回収元よりも明度が低い色用の現像部材に供給される。そのため、再利用の液体現像剤を有効活用することができ、これにより、廃棄するキャリア液の量を低減することができ、新規のキャリア液の消費量を抑制することができる。また、現像部材に与えられる液体現像剤には、色の異なるトナー粒子が少量だけ混じっていることがあるが、そのトナー粒子の色が当該液体現像剤の色よりも明度が高い場合には、画像の質にほとんど影響を与えない。このため、再利用のキャリア液を用いても、画像の質への影響がほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る湿式画像形成装置の構成を示す概略図である。湿式画像形成装置1はフルカラー画像を形成するものであり、図1において右側から順にマゼンタ(M)用の画像形成機構2、シアン(C)用の画像形成機構3、イエロー(Y)用の画像形成機構4およびブラック(BK)用の画像形成機構5を備えている。各画像形成機構2〜5は、円筒状の感光体としての感光体ドラム10M,10C,10Y,10BKと、感光体ドラム10M〜10BKの表面を帯電させるための帯電器11M,11C,11Y,11BKと、帯電器11M〜11BKにより帯電された感光体ドラム10M〜10BKの表面を、作成する画像に対応して露光するための露光器12M,12C,12Y,12BKと、感光体ドラム10M〜10BKの表面に各色(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)の液体現像剤を供給して、露光により形成された静電潜像を現像する液体現像装置13M,13C,13Y,13BKと、トナー画像が転写ベルト14に転写された後の感光体ドラム10M〜10BKの表面に残留する液体現像剤を除去し回収するための回収装置15M,15C,15Y,15BKと、トナー画像が転写された後の感光体ドラム10M〜10BKの表面を除電するための除電器16M,16C,16Y,16BKとを備えている。回収装置15M〜15BKに回収された液体現像剤は、後述するように、そのキャリア液成分が再利用されるようになっている。
【0012】
感光体ドラム10M〜10BKの表面に現像された各色のトナー画像は、各感光体ドラム10M〜10BKに対応するように設けられた一次転写ローラ17によって、無端状の転写ベルト14に一時的に転写される。この転写ベルト14は、駆動ローラ18とテンションローラ19との働きにより、所定の張力を付与された状態で回転されている。転写ベルト14に一時的に転写された各色のトナー画像は、二次転写ローラ(図示しない。)によって用紙に転写される。トナー画像が転写された用紙は、定着装置(図示しない。)によって加熱および加圧され、これによって、フルカラーのトナー画像が用紙上に定着される。
【0013】
液体現像装置13M〜13BKは、感光体ドラム10M〜10BKの表面に接触して、各色の液体現像剤を感光体ドラム10M〜10BKの表面に供給する現像ローラ20M,20C,20Y,20BKを備えている。各現像ローラ20M〜20BKには、液体現像装置13M〜13BKにそれぞれ設けられた供給槽(図示しない。)から各色の液体現像剤が与えられるようになっている。各現像ローラ20M〜20BKには、感光体ドラム10M〜10BKの表面にトナー画像を形成した後、現像ローラ20M〜20BKの表面に残留する液体現像剤を除去し回収するための現像ローラ用クリーニング装置21Y(図1では、イエロー用の現像ローラ用クリーニング装置21Yのみ図示。他の画像形成機構2,3,5においては図示を省略。)が配置されている。
【0014】
各画像形成機構2〜5は、さらに、液体現像装置13M〜13BKに供給するために液体現像剤を適正範囲のトナー粒子濃度に調整する調整槽22M,22C,22Y,22BKと、各色の新規の液体現像剤を溜めておく液体現像剤タンク23Y(図1では、イエロー用の液体現像剤タンク23Yのみ図示。他の画像形成機構2,3,5においては図示を省略。)と、現像ローラ用クリーニング装置21Yによって現像ローラ20M〜20BKの表面から回収された液体現像剤が溜められる回収トナー槽24Y(図1では、イエロー用の回収トナー槽24Yのみ図示。他の画像形成機構2,3,5においては図示を省略。)と、感光体ドラム10M〜10BKから回収装置15M〜15BKによって回収し抽出したキャリア液を溜めておくための回収キャリア液槽25M,25C,25Y,25BKとを備えている。各現像ローラ20M〜20BKに残留する液体現像剤は、主としてトナー粒子からなるものであり、各現像ローラ用クリーニング装置21Yに回収された液体現像剤は、回収液体現像剤搬送路39Y(図1では、イエロー用の回収液体現像剤搬送路39Yのみ図示。他の画像形成機構2,3,5においては図示を省略。)を介して、回収トナー槽24Yに与えられるようになっている。
【0015】
一方、感光体ドラム10M〜10BKから回収される液体現像剤は混色状態になっていることがあり、そのため、感光体ドラム10M〜10BKから回収された液体現像剤のうち、そのトナー粒子は使用されず、そのキャリア液成分だけが再利用される。具体的には、感光体ドラム10M〜10BKから回収された液体現像剤は回収装置15M〜15BKでキャリア液成分が抽出される。各回収キャリア液槽25M〜25BKは回収キャリア液搬送路26M,26C,26Y,26BKを介して各回収装置15M〜15BKに接続されており、回収装置15M〜15BKで抽出されたキャリア液成分は、再利用のキャリア液として、回収キャリア液槽25M〜25BKへと送られる。
【0016】
図2は、回収装置の構成を示す概略図である。
各回収装置15M,15C,15Y,15BKは、感光体ドラム10M,10C,10Y,10BKの表面に残留する液体現像剤を掻き取るためのクリーニングブレード150と、クリーニングブレード150によって掻き取られた液体現像剤からキャリア液成分だけを抽出する抽出装置151とを備えている。
【0017】
抽出装置151は、クリーニングブレード150によって掻き取られた液体現像剤を溜めておくための収容容器152と、収容容器152から液体現像剤を汲み上げる下ローラ153と、下ローラ153の上方に下ローラ153の周面と接触するように配置され、液体現像剤をトナー粒子とキャリア液成分とに分離するための上ローラ154とを備えている。
【0018】
下ローラ153および上ローラ154には、ローラ153,154を支持するための金属製の回転軸155,156がそれぞれ取り付けられており、各ローラ153、154は回転軸155,156周りに互いに逆方向に回転するようになっている。上ローラ154および下ローラ153は導電性のある材質で構成されており、上ローラ154の回転軸156にはたとえば200Vの正電荷のバイアスが印加されているとともに、下ローラ153の回転軸155は接地されている。
【0019】
下ローラ153は、下側半分が収容容器152内に入り込んで、液体現像剤に浸されている。液体現像剤は濡れ性が大きく、そのため、液体現像剤は下ローラ153の周面に付着し汲み取られる。下ローラ153に付着した液体現像剤は、下ローラ153と上ローラ154との接触辺で上ローラ154の周面に付与される。両ローラ153,154の接触辺は両芯155,156を結ぶ面上にあるため、この接触辺には上ローラ154から正電荷のバイアスが加わっている。液体現像剤のうちトナー粒子は正帯電している。下ローラ153に付着した液体現像剤のうちトナー粒子は、正電荷に反発し、上ローラ154には付着せず、上ローラ154には液体現像剤のうちキャリア液成分だけが付着し、上ローラ154の周面にはキャリア液の薄い膜が形成される。
【0020】
上ローラ154の周面に付着したキャリア液は、キャリア液回収ブレード157によって掻き取られ、キャリア液ボックス158に回収される。キャリア液ボックス158のキャリア液は、回収キャリア液搬送路26M〜26BKを介して各回収キャリア液槽25M〜25BKに与えられる。
再び図1を参照して、各調整槽22M〜22BKには、回収液体現像剤供給路27Y(図1では、イエロー用の回収液体現像剤供給路27Yのみ図示。他の画像形成機構2,3,5においては図示を省略。)を介して各回収トナー槽24Yが接続されており、各回収トナー槽24Yに溜められている再利用の液体現像剤は、各調整槽22M〜22BKに付与されるようになっている。また、各調整槽22M〜22BKには、回収キャリア液供給路28M,28C,28Y,28BKを介して回収キャリア液槽25M〜25BKが接続されており、回収キャリア液槽23M〜23BKに溜められている再利用のキャリア液が各調整槽22M〜22BKに対して付与されるようになっている。
【0021】
各調整槽22M〜22BKには、再利用の液体現像剤を攪拌する攪拌羽根が設置されており、各調整槽22M〜22BKに溜められた液体現像剤は、攪拌羽根で攪拌されつつ、フィードバック制御によりそのトナー粒子濃度が適正に保たれている。
各調整槽22M〜22BKは、液体現像剤供給路29M,29C,29Y,29BKを介して液体現像装置13M〜13BKに接続されている。また、液体現像剤供給路29M,29C,29Y,29BKの途中部には、一端が液体現像剤タンク23Yと接続された新規液体現像剤供給路30Y(図1では、イエロー用の回収液体現像剤供給路27Yのみ図示。他の画像形成機構2,3,5においては図示を省略。)の他端が接続されている。液体現像装置13M〜13BKには、再利用の液体現像剤および新規の液体現像剤が選択的に与えられるようになっている。
【0022】
この実施形態の特徴の1つは、再利用のキャリア液を、その回収元の感光体ドラム10Y,10M,10Cからと同色用の液体現像装置13Y,13M,13Cだけでなく、その回収元とは異なる色の液体現像装置13M,13C,13BKにも供給する点にある。以下、具体的に説明する。
イエロー用の回収キャリア液槽25Yには、回収キャリア液供給路31を介してマゼンタ用の回収キャリア液槽25Mが接続されており、イエロー用の回収キャリア液槽25Yからは、イエロー用の調整槽22Yに対してだけでなく、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mに対してもキャリア液が供給されるようになっている。
【0023】
マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mには、回収キャリア液供給路32を介してシアン用の回収キャリア液槽25Cが接続されており、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mからは、マゼンタ用の調整槽22Mに対してだけでなく、シアン用の回収キャリア液槽25Cに対してもキャリア液が供給されるようになっている。
また、シアン用の回収キャリア液槽25Cには、回収キャリア液供給路33を介してブラック用の回収キャリア液槽25BKが接続されており、シアン用の回収キャリア液槽25BKからは、シアン用の調整槽22Cに対してだけでなく、ブラック用の回収キャリア液槽25BKに対してもキャリア液が供給されるようになっている。
【0024】
また、イエロー用の回収キャリア液槽25Yには、新規のキャリア液を溜めた新規キャリア液槽34が新規キャリア液供給路35を介して接続されており、この新規キャリア液槽34からイエロー用の回収キャリア液槽25Yに対して新規のキャリア液が供給されるようになっている。この新規キャリア液槽34は、イエロー用の回収キャリア液槽25Yだけに接続されており、他の色用の回収キャリア液槽25M,25C,25BKには接続されていない。
【0025】
さらにまた、ブラック用の回収キャリア液槽23BKには、廃棄路37を介して廃液槽38が接続されており、ブラック用の回収キャリア液槽25Kから廃棄すべきキャリア液が廃液槽38に送られるようになっている。この廃液槽38は、ブラック用の回収キャリア液槽25BKだけに接続されており、他の色用の回収キャリア液槽25M〜25BKには接続されていない。
【0026】
このとき新規キャリア液槽34から廃液槽38に至るキャリア液の流れは、イエロー用の回収キャリア液槽25Y、マゼンタ用の回収キャリア液槽25M、シアン用の回収キャリア液槽25Cおよびブラック用の回収キャリア液槽25BKの順である。そして、ブラック用の回収キャリア液槽23BKから廃液用のキャリア液が廃液槽38に送られる。各液体現像剤の明度は、「記録紙に対する256段階相対明度測定」という測定方法を用いた場合、イエローがたとえば131、マゼンタがたとえば101であり、シアンがたとえば62、ブラックがたとえば21である。言い換えれば、明度の高い色用の回収キャリア液槽から明度の低い色用の回収キャリア液槽に、順に、キャリア液は送られることとなる。
【0027】
このとき、イエロー用の調整槽22Yに溜められている液体現像剤、すなわち、イエロー用の液体現像装置13Yに供給される液体現像剤は、新規キャリア液槽34から供給された新規キャリア液、もしくは、イエロー用の回収キャリア液槽25Yから回収された再利用のキャリア液である。
また、マゼンタ用の調整槽22Mに溜められている液体現像剤、すなわち、マゼンタ用の液体現像装置13Mに供給される液体現像剤は、イエロー用の回収キャリア液槽25Yから回収された再利用のキャリア液、もしくは、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mから回収された再利用のキャリア液である。つまり、このマゼンタ用の回収キャリア液槽25Mでは、マゼンタの液体現像剤の中にマゼンタよりも明度の高いイエローのトナー粒子が少量混じっていることがある。
【0028】
さらに、シアン用の調整槽22Cに溜められている液体現像剤、すなわち、シアン用の液体現像装置13Mに供給される液体現像剤は、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mから回収された再利用のキャリア液、もしくは、シアン用の回収キャリア液槽25Cから回収された再利用のキャリア液である。つまり、このシアン用の回収キャリア液槽25Cでは、シアンの液体現像剤の中にシアンよりも明度の高いマゼンタのトナー粒子やイエローのトナー粒子が少量混じっていることがある。
【0029】
さらにまた、ブラック用の調整槽22BKに溜められている液体現像剤、すなわち、ブラック用の液体現像装置13BKに供給される液体現像剤は、シアン用の回収キャリア液槽25Cから回収された再利用のキャリア液、もしくは、ブラック用の回収キャリア液槽25BKから回収された再利用のキャリア液である。つまり、このブラック用の回収キャリア液槽25BKでは、ブラックの液体現像剤の中にブラックよりも明度の高いシアンのトナー粒子やマゼンタのトナー粒子、イエローのトナー粒子が少量混じっていることがある。
【0030】
そして、ブラック用の回収キャリア液槽25BKからのみ、キャリア液が廃液される。
以上により、この実施形態によれば、再利用の液体現像剤を、その回収元と同色用の液体現像装置13M,13C,13Y,13BKだけではなく、その回収元よりも明度が低い色用の液体現像装置13M,13C,13BKにも供給している。このため、再利用の液体現像剤を有効活用することができ、これにより、廃棄するキャリア液の量を低減することができ、新規のキャリア液の消費量を抑制することができる。
【0031】
また、液体現像装置13M,13C,13BKに供給される液体現像剤には、その液体現像剤とは異なる色のトナー粒子が少量だけ混じっていることがあるが、そのトナー粒子の色が液体現像剤の色よりも明度の高い場合には、画像の質にほとんど影響を与えない。これにより、再利用のキャリア液を用いても、画像の質への影響がほとんどない。
図3は、この発明の他の実施形態に係る湿式画像形成装置の構成を示す模式図である。この図3において、上述の図1と同等の構成については、図1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図3を参照して、この実施形態が図1の実施形態と主に相違するのは、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mに溜められているキャリア液が、シアン用の回収キャリア液槽25Cではなく、ブラック用の回収キャリア液槽25BKに付与されるようになっているとともに、シアン用の回収キャリア液槽25Cに新規キャリア液槽34から新規のキャリア液が供給されるようになっている点である。
【0033】
具体的には、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mは、ブラック用の回収キャリア液槽25BKと回収キャリア液供給路41を介して接続されており、マゼンタ用の回収キャリア液槽25Mに溜められているキャリア液は、ブラック用の回収キャリア液槽25BKに与えられるようになっている。また、新規キャリア液供給路35の途中部からは新規キャリア液供給路42が分岐しており、その新規キャリア液供給路42の他端は、シアン用の回収液キャリア槽25Cに接続されている。
【0034】
以上説明した2つの実施形態では、再利用のキャリア液は、回収元と同じ色用の液体現像装置、または、回収元よりも明度の低い色用の液体現像装置に供給されるとして説明したが、明度の差がほとんどない場合(たとえば、上記の測定方法を用いた場合、一方の液体現像剤の明度が101であり他方が95である場合など)には、回収元よりも明度の高い色用の液体現像剤に供給されてもよい。
【0035】
また、前述の2つの実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4種類の液体現像剤を用いる場合を例にとって説明したが、たとえば6種類の液体現像剤を用いることもできる。この場合における液体現像剤の色は、たとえば、明度の高い順に、イエロー、ライトマゼンタ、ライトシアン、マゼンタ、シアンおよびブラックである。これに代えて、液体現像剤の色を、イエロー、オレンジ、マゼンタ、シアン、バイオレットおよびブラックの6色とすることもできる。
【0036】
また、前述の各実施形態では、新規のキャリア液は限られた回収キャリア液槽25Y,25Cだけにしか付与されない構成とされているが、全ての回収キャリア液槽25M〜25BKに新規のキャリア液が付与される構成であってもよい。
さらに、新規のキャリア液が、回収キャリア液槽25M〜25BKではなく、調整槽22M〜22BKに付与する構成とすることもできる。
【0037】
さらにまた、感光体ドラム10M〜10BKから回収したキャリア液を用いるものとして説明したが、現像ローラ用クリーニング装置21Yによって現像ローラ20M〜20BKから回収した液体現像剤からキャリア液成分を抽出したものを再利用のキャリア液として、各回収キャリア液槽25M〜25BKに与える構成でもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態に係る湿式画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】回収装置の構成を示す概略図である。
【図3】この発明の他の実施形態に係る湿式画像形成装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 湿式画像形成装置
10M,10C,10Y,10BK 感光体ドラム(感光体)
15M,15C,15Y,15BK 回収装置(回収手段)
20M,20C,20Y,20BK 現像ローラ(現像部材)
28M,28C,28Y,28BK,31,32,33,41 回収キャリア液供給路(再利用手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色の画像を形成するための複数の感光体と、
前記複数の感光体にそれぞれ対応して設けられ、前記感光体に対し、互いに異なる色の液体現像剤をそれぞれ供給する複数の現像部材と、
前記各感光体に残留する液体現像剤からキャリア液を回収する回収手段と、
前記各回収手段から回収されたキャリア液を、回収元の感光体に対応する現像部材、または、その回収元の感光体よりも形成画像の色の明度が低い感光体に対応する現像部材に対して供給する再利用手段と、
最も明度の低い色用の感光体から回収されたキャリア液は廃棄可能とされていて、その他の色用の感光体から回収されたキャリア液は廃棄することができないようにされていることを特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項2】
互いに異なる色の画像を形成するための複数の感光体と、
前記複数の感光体にそれぞれ対応して設けられ、前記感光体に対し、互いに異なる色の液体現像剤をそれぞれ供給する複数の現像部材と、
前記各現像部材に残留する液体現像剤からキャリア液を回収する回収手段と、
前記各回収手段から回収されたキャリア液を、その回収元の現像部材よりも供給液体現像剤の色の明度が低い現像部材に対して供給する再利用手段と、
最も明度の低い色用の感光体から回収されたキャリア液は廃棄可能とされていて、その他の色用の感光体から回収されたキャリア液は廃棄することができないようにされていることを特徴とする湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−134539(P2008−134539A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321807(P2006−321807)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】