説明

湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法

【課題】起動時の乾燥機内の状況、乾燥させる湿潤粉体の含水率及び湿潤粉体乾燥特性が大きく変動しても、目標の範囲内の含水率まで乾燥することができる湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法を提供する。
【解決手段】湿潤粉体を通過させながら加熱する加熱部と、前記加熱部に加熱ガスを送風する送風部とを備え、前記加熱部の湿潤粉体に前記加熱ガスを直接送風して加熱乾燥する湿潤粉体の乾燥機において、前記加熱部に供給される前の湿潤粉体の含水率を計測する第1の水分計測手段と、前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を計測する第2の水分計測手段と、を備え、前記第1の水分計測手段の計測値と、前記第2の水分計測手段の計測値と、に基づいて前記加熱ガスの送風量を調整する制御装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法に関するものであり、特に脱水汚泥や焼却炉から排出された灰を乾燥するために好適な湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば湿潤粉体である脱水汚泥を通過させながら加熱する加熱部と、前記加熱部に加熱ガスを送風する送風部とを備え、前記加熱部の脱水汚泥に前記加熱ガスを直接送風して加熱乾燥する乾燥機においては、該乾燥機稼動時に乾燥機から排出される乾燥後の乾燥汚泥の性状は、起動時の乾燥機内の状況、乾燥させる脱水汚泥の含水率及び汚泥乾燥特性によって大きく変動する。
【0003】
前記起動時の乾燥機内の状況は、定期検査後の起動時には、定期検査時に内部掃除を行うため乾燥機内には残汚泥は存在しないが、非常停止後の起動時には、乾燥機の稼働率の観点から早急な再起動が要求されるため停止時に内部掃除を行うことはできず乾燥機内に汚泥が残存している。このような違いは、乾燥機の稼働率の観点から避けることができない。
また、前記供給される汚泥の含水率違いについても、近年多種多様な含水率の脱水汚泥の処理が求められておりそれに対応するためには避けることはできない。
【0004】
前記起動時の乾燥機内の状況、乾燥させる脱水汚泥の含水率及び汚泥乾燥特性によって、乾燥機出口の含水率が変動し、含水率が40%を超えるような高含水率の乾燥汚泥が排出されると、該乾燥汚泥の付着性が大きくなり、これにより乾燥汚泥を後流機器に搬送するためのコンベアなどのハンドリング機器がトリップする可能性がある。
【0005】
図4は従来の乾燥機における乾燥機供給前の脱水汚泥と乾燥機排出後の乾燥汚泥の含水率の時間変化を表したグラフである。縦左軸は乾燥汚泥の含水率(wt%)、縦右軸は脱水汚泥の含水率(wt%)、横軸は日を表している。図4に示したように脱水汚泥の含水率が73〜79%程度で変動すると、乾燥汚泥の含水率はそれよりも大きな0〜25%程度の範囲で変動することが分かる。このように、脱水汚泥の含水率小さな変動に対して、乾燥汚泥の含水率が大きな変動を示すことに加え、前記乾燥機内の状況や汚泥乾燥特性の要因もあるため、乾燥汚泥の含水率を目標値に調整することは困難であり、調整には熟練の技術を要していた。
【0006】
そこで、湿潤媒体の乾燥に関する技術として、例えば特許文献1、2、3に開示された技術を挙げることができる。
特許文献1に開示された技術は、乾燥汚泥の含水率の測定に関する技術であって、
容器内において汚泥を乾燥させ、乾燥過程にある汚泥の水分率を測定する方法において、容器内の空気を排出する排気口を具備するとともに、ほぼ密閉自在の容器とし、該容器に汚泥を投入した後、該容器をほぼ密閉状態に保持し、該容器の周囲に汚泥を加熱する蒸気を供給し、該容器を介して熱交換されることにより、該容器内の汚泥が乾燥されるとともに、蒸気の一部がドレンに凝縮され、該容器を介して凝縮されたドレン発生量を測定するとともに、測定されたドレン発生量に基づいて乾燥により蒸発した汚泥の水分量を算出し、容器内の汚泥の水分率を求めるものである。
【0007】
また、特許文献2に開示された技術は、乾燥汚泥の含水率の測定に関する技術であって、
乾燥機の後段に乾燥汚泥の造粒機を設け、乾燥汚泥の含水率が低いと前記造粒機の駆動電流値が大きくなることから、駆動電流値と含水率の関係の較正曲線を作成しておき、前記造粒機の駆動電流値から乾燥汚泥の含水率を推定するものである。
【0008】
また、特許文献3に開示された技術は、水分を含有した汚染物の過熱処理に関する技術であって、
水分を含有した汚染物を加熱処理する加熱処理工程と、該加熱処理工程より生じた排ガスを浄化処理する排ガス処理工程とを備え、前記加熱処理工程から前記排ガス処理工程へと吸引する排ガスの吸引送風量を、前記加熱処理工程に供給される前の汚染物の含水率測定値と、前記加熱処理工程において測定された圧力測定値とに基づいて制御するものである。
【0009】
【特許文献1】特開2001−50950号公報
【特許文献2】特開2006−263662号公報
【特許文献3】特開2006−314887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、ドレンを回収することで蒸発した水の量が分かり汚泥に加わった熱量は分かるものの、前記容器に供給される汚泥の含水率を測定していないため、前記容器に供給される汚泥の含水率が変化した場合には乾燥汚泥の含水率を推定することができない。
【0011】
また、特許文献2に開示された技術においては、乾燥後に造粒を行わない場合には適用することができない。
【0012】
また、特許文献1及び2に開示された技術の何れも乾燥汚泥の含水率を求めるための技術であって、得られた含水率を用いて乾燥機の運転制御などは行っていないため、乾燥汚泥を目標値に調整するためには、開示された技術の他に乾燥汚泥の含水率の調整手段が必要となる。
【0013】
また、特許文献3に開示された技術においては、加熱処理工程に供給される前の汚染物の含水率測定値と加熱処理工程において測定された圧力測定値とに基づいて加熱処理工程から排ガス処理工程へと吸引する排ガス吸引量を制御することで、加熱処理工程における圧力を調整することは可能であるものの、加熱処理された汚染物の含水率は調整しておらず、加熱処理工程後の汚染物の含水率を調整するためには、開示された技術の他に乾燥汚泥の含水率の調整手段が必要となる。
【0014】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、起動時の乾燥機内の状況、乾燥させる湿潤粉体の含水率及び湿潤粉体乾燥特性が大きく変動しても、目標の範囲内の含水率まで乾燥することができる湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明においては、
湿潤粉体を通過させながら加熱する加熱部と、前記加熱部に加熱ガスを送風する送風部とを備え、前記加熱部の湿潤粉体に前記加熱ガスを直接送風して加熱乾燥する湿潤粉体の乾燥機において、前記加熱部に供給される前の湿潤粉体の含水率を計測する第1の水分計測手段と、前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を計測する第2の水分計測手段と、を備え、前記第1の水分計測手段の計測値と、前記第2の水分計測手段の計測値と、に基づいて前記加熱ガスの送風量を調整する制御装置を設けたことを特徴とする。
前記湿潤粉体として、例えば脱水汚泥や灰などが挙げられる。
【0016】
前記第1の水分計測手段の計測値と、前記第2の水分計測手段の計測値と、に基づいて前記加熱ガスの送風量を調整は、まず第1の水分計測手段の計測値に基づいて前記加熱ガスの送風量の概略値を設定し、前記第2の水分計測手段の計測値に基づいて前記概略値を微調整する。
【0017】
図4に示したように、湿潤媒体は乾燥機に供給される前の含水率が変動すると、乾燥後の湿潤媒体の含水率は大きく変動する。そのため、まず湿潤媒体は乾燥機に供給される前の含水率、即ち第1の水分計測手段の計測値に基づいて前記加熱ガスの送風量の概略値を設定する。
さらに前述のように乾燥後の湿潤媒体の含水率は起動時の乾燥機内の状況や汚泥乾燥特性など他の要因によっても変動するため、前記第2の水分計測手段の計測値に基づいて前記概略値を微調整することで、乾燥後の湿潤媒体の含水率の目標水分内への調整を容易に安定して行うことが可能となる。
これにより、乾燥後の湿潤媒体の含水率が目標から外れることに起因する乾燥後の湿潤媒体の性能の低下、後流機器トラブルなどを防止することが可能となる。
【0018】
また、前記第1の水分計測手段が、誘電率を用いた手法で前記加熱部に供給される前の湿潤粉体の含水率を測定する水分計であることを特徴とする。
また、前記第2の水分計測手段が、誘電率を用いた手法で前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を測定する水分計であることを特徴とする。
誘電率を用いた手法によって測定する水分計は、リアルタイムで連続計測可能であるため、測定値を素早く前記加熱ガスの風量調整に反映することができ、乾燥後の湿潤媒体の含水率がより安定化する。
さらに、誘電率を用いた手法によって測定する水分計は雰囲気温度の影響や水分以外の成分(例えば灰分)の性状変化の影響を受けにくいため、乾燥機に供給される湿潤媒体は含水率や温度が異なっても特に問題とならない。
誘電率以外の手段を用いた手法によって測定する水分計として、例えば対象物を乾燥させてその前後の重量さによって水分を求める重量測定法、マイクロ波を用いるマイクロ波法、赤外線を用いる赤外法などが挙げられる。しかし、重量測定法はサンプルを取り出しさらに乾燥させて重量測定を行う必要があるため、測定がバッチ処理となることに加え測定に長時間を有し、リアルタイムに水分を測定することが困難である。またマイクロ波法は水分率の大きい範囲では粒度の違いによるばらつきが生じることに加えて、測定に精密機器を必要とするために乾燥機周囲に配置することは難しい。また赤外法は、湿潤媒体の通路に窓を設け、該窓に水分計を取り付けて測定するが、前記窓が汚れると正確に測定することができず、さらに前記窓は湿潤媒体によって汚れる可能性が非常に高い。誘電率法は、電極の先端を湿潤媒体に接触させるため窓が不要で、しかも簡単な装置でリアルタイムに水分率を測定することができるため、前記重量測定法、マイクロ波法、赤外法に生じる問題は発生せず、本発明において使用するには非常に優れた測定法であるといえる。
【0019】
また、前記第2の水分計測手段が、前記湿潤粉体に送風された後の排ガスの風量、温度及び含水率を測定する手段と、該測定結果から前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を求める演算装置とからなることを特徴とする。
これにより、乾燥後の湿潤粉体と前記第2の水分計測手段又はその付属部品が接触しないため、第2の水分計測手段による乾燥後の湿潤粉体の流れの阻害を防止することができる。
含水率が低い乾燥後の湿潤媒体は流動性が低いためこの効果は大きい。
【0020】
また、前記乾燥機の湿潤粉体入口部に前記湿潤粉体が通過するホッパーを設け、前記水分計を、前記水分計の電極の先端部が、前記ホッパーの湿潤粉体の流下部に位置するように配置したことを特徴とする。
前記流下部は乾燥機稼動中は常に湿潤粉体の流れがある位置であり、該位置に電極の先端部を位置させることで連続的に導入される湿潤媒体の含水率を確実にリアルタイムで計測することができる。
【0021】
また、前記湿潤粉体が脱水汚泥であって、前記制御装置により、前記第2の水分計測手段による計測値が重量%で10〜30%の範囲になるように制御を行うことを特徴とする。
前記湿潤粉体の1つとして脱水汚泥を挙げることができる。前記湿潤媒体が脱水汚泥である場合には、乾燥後の湿潤粉体、即ち乾燥汚泥の含水率が10%より低いと自然発火の可能性があり、40%より高いと乾燥汚泥の付着性が高くコンベアなどの乾燥汚泥のハンドリング機器をトリップさせる可能性がある。そのため、前記第2の水分計測手段による計測値が重量%で10〜30%の範囲になるように制御することで、自然発火やハンドリング機器のトリップといったトラブルを防止することができる。
【0022】
また、課題を解決するための方法の発明として、
湿潤粉体を乾燥機内を通過させながら、該湿潤粉体に加熱ガスを直接送風して加熱乾燥する湿潤粉体の乾燥方法において、前記乾燥機に供給される前の湿潤粉体の含水率を計測するとともに、前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を計測し、前記2つの含水率の計測値に基づいて前記加熱ガスの送風量を調整することを特徴とする。
【0023】
また、前記湿潤粉体が脱水汚泥であって、前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率が重量%で10〜30%の範囲になるように前記加熱ガスの送風量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上記載のごとく本発明によれば、起動時の乾燥機内の状況、乾燥させる湿潤粉体の含水率及び湿潤粉体乾燥特性が大きく変動しても、目標の範囲内の含水率まで乾燥することができる湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0026】
図1は、実施例1に係る乾燥機が用いられる下水汚泥の炭化処理装置の系統図である。
まず図1に基づき実施例1に係る乾燥機が用いられる下水汚泥の炭化処理装置の構成について説明する。
炭化処理装置は、主に下水汚泥を脱水する脱水機(不図示)と、脱水した下水汚泥(以下、脱水汚泥と称する)に熱風を接触させて乾燥する乾燥機4と、乾燥させた脱水汚泥(以下、乾燥汚泥と称する)を炭化処理する炭化炉12と、該炭化炉12で生成した熱分解ガスを燃焼する熱分解ガス燃焼炉22とから構成されている。なお前記炭化炉12は、間接加熱式ロータリーキルン型が好適であるが、特にこれに限定されるものではなく他の形態の炭化炉とすることもできる。
【0027】
前記乾燥機4と炭化炉12とはライン6及び10で接続されており、前記炭化炉12と前記熱分解ガス燃焼炉22とは、該炭化炉12内で発生した熱分解ガスの配管である熱分解ガスライン19で接続されており、該ガスライン19上にはサイクロン18及びブロア20が設けられている。また、前記炭化炉12の炭化物出口にはライン15が設けられており、該ライン15は貯留タンク16に接続されている。また前記ライン15上には炭化物コンベア14が設けられている。
【0028】
前記熱分解ガス燃焼炉22出口に接続される燃焼排ガスライン24は、炭化炉用の加熱炉32への燃焼排ガスライン28 と、前記乾燥機4への燃焼排ガスライン30と、後述する循環ガス予熱器36への燃焼排ガスライン26とに分岐されている。
前記加熱炉32は、前記熱分解ガス燃焼炉22からの燃焼排ガスを、補助燃料によって加熱して昇温し炭化炉12に導入するために設けられている。
【0029】
また、45は前記熱分解ガス燃焼炉22に一次空気、二次空気を送り込むラインであり、さらに前記熱分解ガス燃焼炉22内に補助燃料を導入するための助燃料導入ラインも設けられている。
【0030】
また、34は前記乾燥機4で脱水汚泥を乾燥させ約200℃まで降温された後の乾燥機排ガスを、循環ガス予熱器36に送給する乾燥炉排ガスラインである。前記循環ガス予熱器36には、前記熱分解ガス燃焼炉22出口の燃焼排ガスライン24から分岐した燃焼排ガスライン26を通して、約950℃の高温ガスが導入されて前記乾燥機排ガスを加熱し、該加熱された乾燥機排ガスは乾燥機排ガスライン44及び該乾燥機排ガスライン44から分岐された2つの乾燥炉排ガスライン44a、44bを通じて前記熱分解ガス燃焼炉22に導入されるように構成されている。
【0031】
また、40は排煙処理塔で、前記循環ガス予熱器36で前記熱分解ガス燃焼炉22に導入される乾燥機排ガスを加熱したライン26からの燃焼排ガス及び炭化炉12の排ガスを処理する。該排煙処理塔40で処理されたガスはブロワ42によって煙突に送られて大気放出される。
【0032】
次に、図1に示した下水汚泥の炭化処理装置を用いて、下水汚泥を炭化処理する方法及び熱分解ガスの処理方法について説明する。
まず脱水機(不図示)に下水汚泥を導入し、下水汚泥の水分が約70〜80%程度になるまで脱水する。次いで、脱水した脱水汚泥を搬送装置2によって乾燥機4に送り、脱水汚泥の水分が10〜30%になるまで乾燥して乾燥汚泥とする。該乾燥機4での乾燥は、前記熱分解ガス燃焼炉22からの燃焼排ガスライン24から分岐されたライン30を通して導入される燃焼排ガスを、脱水汚泥に直接接触させることにより行う。
【0033】
前記乾燥機4で発生した乾燥機排ガスはライン7を通じてサイクロン8に送られ、該サイクロン8でガス中に混合した汚泥成分を分離し、さらにライン34を通じて循環ガス予熱器36に送られ、前記熱分解ガス燃焼炉22からの燃焼排ガスライン24から分岐されたライン26を通じて導入される燃焼排ガスと熱交換されて加温され、熱分解ガス燃焼炉22へ導入される。
【0034】
一方、前記乾燥機4で乾燥させた乾燥汚泥は、ライン6及び10を通して、前記サイクロン8で分離された汚泥成分と合流してから炭化炉12に導入される。炭化炉12では、乾燥汚泥を酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物とを生成する。該炭化物は前記コンベア14を経て貯留タンク16に貯蔵される。
【0035】
前記炭化炉12で乾燥汚泥の炭化処理を行った後の炭化炉排ガスは、ライン38を通り、前記排煙処理塔40で処理された後、ブロワ42によって煙突に送られて大気放出される。
一方、前記炭化炉12で生成された熱分解ガスは、熱分解ガスライン19を通して熱分解ガスバーナ(不図示)より前記分解ガス燃焼炉22に導入されて炉内を流動する。また、前記熱分解ガス燃焼炉22には燃焼空気ライン45を経て1次空気、2次空気が導入され、さらに必要に応じて補助燃料が導入される。
【0036】
このような下水汚泥の炭化処理装置における乾燥機及びその周辺機器についてさらに詳細に説明する。
図2は、実施例1に係る乾燥機周辺の系統図であり、図3は、図2におけるA部拡大図である。
まず図2及び図3に基づき実施例1に乾燥機周辺の構成について説明する。
乾燥機4の上流側には、脱水汚泥を搬送するための搬送装置2が設けられており、該搬送装置2はホッパー2Aとスクリューコンベア2Bから構成されている。またホッパー2Aにはモニタリング装置52が設けられており、該モニタリング装置52は、センサ52Aとその指針52D、演算器52B、及びセンサ52Aと演算器52Bを接続するケーブル52Cから構成されており、指針52Dが前記ホッパー2Aの内部で流下する脱水汚泥と接触するように配置され、指針52D以外のモニタリング装置52を構成する部品はホッパー2A外部に位置するように配置されている。なお、モニタリング装置52は誘電率を用いた手法で前記指針52Dと接触した脱水汚泥の含水率を連続的に測定する水分計である。
前記モニタリング装置52は誘電率を用いた手法で水分測定を行う水分計であればよく、前記手法には例えば一般的に使用されるTDR(Time Domain Reflectometry)法、FDR(Frequency Domain Reflectometry)法、ADR(Amplitude Domain Reflectometry)法などが挙げられる。
【0037】
また、乾燥機4の下流側のライン6上には搬送装置9が設けられており、該搬送装置9は直管状の乾燥汚泥落下部9Aと、乾定フィーダ9Bから構成されている。また乾燥汚泥落下部9Aにはモニタリング装置59が設けられており、該モニタリング装置59は、センサ59Aとその指針59D、演算器59B、及びセンサ59Aと演算器59Bを接続するケーブル59Cから構成されており、指針59Dが前記乾燥汚泥落下部9Aの内部で流下する脱水汚泥と接触するように配置され、指針59D以外のモニタリング装置59を構成する部品は乾燥汚泥落下部9A外部に位置するように配置されている。なお、モニタリング装置59は誘電率を用いた手法で前記指針59Dと接触した脱水汚泥の含水率を連続的に測定する水分計である。
【0038】
さらに、前記モニタリング装置52及びモニタリング装置59は制御装置54に接続されており、該制御装置54は、前記燃焼排ガスライン30から乾燥機4に供給される燃焼排ガス量を調整するコントロールバルブ56の開度を制御することができる。該制御については後述する。
【0039】
図2及び図3に示した乾燥機及びその周辺機器を用いて、脱水汚泥を乾燥する方法について説明する。
脱水機(不図示)で水分が70〜80%程度になるまで脱水された脱水汚泥は搬送装置2を構成するホッパー2Aに供給される。ホッパー2Aに供給された脱水汚泥は、ホッパー2Aの傾斜部上を流下しながらスクリューコンベア2Bに送られ、スクリューコンベア2Bに送られた脱水汚泥は乾燥機4内に供給される。
このとき、前記ホッパー2Aの傾斜部上を流下している脱水汚泥の含水率はモニタリング装置52によって連続的に計測される。該計測は前記センサ52Aにより前記脱水汚泥の誘電率を測定して該測定値をケーブル52Cを介して演算器52Bに送り、演算器52Bでは予め決められた較正曲線を用いて前記誘電率の測定値から含水率を求める。図5は誘電率と含水率の関係を表すグラフの一例であり、縦軸は誘電率、横軸は脱水汚泥中の含水率を表す。このようにして誘電率と含水率の間には相関関係があるため、予めこのような相関関係を示すグラフを作成し、該グラフを較正曲線として演算器52Dに入力しておくことで、誘電率から含水率を求めることができる。水分以外の含有物の誘電率が変わると図5の相関関係が変化するので対象毎に相関グラフを作成することが好ましい。対象物の性状が変化している可能性がある場合も同様に相関グラフを作成し直す。
【0040】
前記スクリューコンベア2Bによって乾燥機4に供給された脱水汚泥は、乾燥機4中を通過しながら燃焼排ガスライン30から供給される高温の燃焼排ガスと接触して乾燥され乾燥汚泥となる。
【0041】
前記乾燥汚泥は、乾燥機4の端部まで移動すると乾燥汚泥落下部9A内を落下し、乾定フィーダ9B内によって後流機器へと送られる。
このとき、前記乾燥汚泥落下部9A内を落下している脱水汚泥の含水率はモニタリング装置59によって連続的に計測される。なおモニタリング装置59はモニタリング装置52と同等のものであるから詳細な説明は省略する。
【0042】
このとき、前記モニタリング装置52で測定される脱水汚泥の含水率と、モニタリング装置59で測定される乾燥汚泥の含水率は、リアルタイムで制御装置54に送られる。
制御装置54では、まずモニタリング装置52で測定される脱水汚泥の含水率に基づいて、乾燥機4に供給する燃焼排ガス送風量の概略値を設定する。該概略値の設定は、予め脱水汚泥含水率と、乾燥機4で目標含水率まで乾燥するために必要な燃焼排ガス送風量との関係の較正曲線を作成しておき、該較正曲線に基づいて前記概略値を設定し、該設定値の風量となるように弁56の開度を調整する。
さらに、前記モニタリング装置59で測定される乾燥汚泥の含水率に基づき、乾燥汚泥の含水率が目標含水率よりも高い場合には前記燃焼ガス送風量を増加、乾燥汚泥の含水率が目標含水率よりも低い場合には前記燃焼ガス送風量を減少させる微調整を行い、乾燥汚泥が目標含水率となるように弁56の開度を調整する。
なお、前記目標含水率は10〜30%の範囲で設定する。乾燥汚泥の含水率が10%より低いと自然発火の可能性があり、30%より高いと乾燥汚泥の付着性が高く乾定フィーダ9Bやその後段に設けるコンベア(不図示)などの乾燥汚泥のハンドリング機器をトリップさせる可能性があり、このような自然発火やハンドリング機器のトリップといったトラブルを防止するためである。
【0043】
本実施例1によれば、脱水汚泥の含水率に基づいて前記燃焼ガス送風量の概略値を設定することで、乾燥汚泥の含水率の大きな変動を防止し、さらに乾燥汚泥の含水率に基づいて乾燥汚泥の含水率の小さな変動を防止することができるため、乾燥汚泥の含水率の調整を容易に安定して行うことが可能となる。
これにより、乾燥汚泥の含水率が目標から外れることに起因する乾燥汚泥の性能の低下、後流機器トラブルなどを防止することが可能となる。また、含水率の異なる脱水汚泥を混合して処理することもでき、乾燥機の稼動効率の向上に繋がる。
【0044】
また、誘電率を用いた手法によって測定する水分計(モニタリング装置52、モニタリング装置59)を用いることで、含水率をリアルタイムで連続計測可能であり、測定値を素早く前記加熱ガスの風量調整に反映することができるため、乾燥汚泥の含水率がより安定化する。
さらに、誘電率を用いた手法によって測定する水分計は雰囲気温度の影響を受けないため、乾燥機に供給される脱水汚泥の含水率や温度が異なっても特に問題とならない。
【0045】
さらに、前記モニタリング装置59に代えて、ライン7中に乾燥機4で発生した乾燥機排ガスの風量、温度及び含水率を測定し、該測定結果から前記乾燥汚泥の含水率を求める装置を設けることもできる。
乾燥機に導入される燃焼ガスの含水率が0であり、ライン7中の乾燥機排ガスの流量がG(m/h)、温度がT(℃)、含水率がx(vol%)であり、
乾燥機に導入される脱水汚泥の供給量がM(kg/h)、含水率がp(wt%)
乾燥機から排出される乾燥汚泥の排出量がm(kg/h)、含水率がq(wt%)
であるとすると、下記の(1)(2)式が成り立ち、(1)(2)式から乾燥汚泥の含水率qを求めることができる。
G×T/(273+T)×x/100×ρ=W ・・・(1)
M×(p/100)=W+m×(q/100) ・・・(2)
これにより、乾燥後の湿潤粉体と前記第2の水分計測手段又はその付属部品が接触しないため、第2の水分計測手段による乾燥後の湿潤粉体の流れの阻害を防止することができる。
【実施例2】
【0046】
図6は、実施例2に係る乾燥機が用いられる灰乾燥設備の系統図である。
このような灰乾燥設備は、複数の焼却炉で発生した灰を、混合して乾燥してから、灰溶融炉で溶融する広域溶融炉に送るために使用される。
まず図6に基づき実施例2に係る灰乾燥設備の構成及び灰の乾燥方法について説明する。
灰乾燥設備は、主に灰を混合するバンカ160と、バンカ160で混合した灰に熱風を接触させて乾燥する乾燥機104とから構成されている。
【0047】
例えば焼却炉を有する異なる3つの工場(A工場、B工場、C工場)で発生した灰は、それぞれトラック162A、162B、162Cによってバンカ160を構成する受け入れバンカ164に搬入される。受け入れバンカ164に搬入された灰は、バンカ160の上方に設けられたクレーン168によって混合バンカ166に移送れ、該混合バンカ166で異なる工場から搬送された灰が混合される。
混合バンカ166で混合された灰は、クレーン168によって灰ホッパー102内に移送され、一時貯留される。灰ホッパー102内に一時貯留された灰は、コンベア103によって乾燥機104に送られ、灰の水分が約2〜10%になるまで乾燥する。乾燥機104での乾燥は、熱風炉131からの熱風を、灰に直接接触させることにより行う。
前記乾燥機104で発生した乾燥機排ガスは排ガス処理装置(不図示)で処理される。
【0048】
一方、前記乾燥機104で乾燥させた灰(以下、乾燥灰と称する)は、ホッパー109に一時貯留され、コンベア110A、ホッパー111、コンベア110Bを通して、後流機器である溶融炉に送られる。
【0049】
また、乾燥機104の上流側に設けられた灰ホッパー102には水分計測計152が設けられている。なお、水分計測計152は実施例1で用いたモニタリング装置52及びモニタリング装置59と同等の誘電率を用いた手法で灰の含水率を連続的に測定する水分計であるため、その説明は省略する。
さらに、乾燥機104の下流に設けられたホッパー109には水分計測計159が設けられている。なお、水分計測計159は実施例1で用いたモニタリング装置52及びモニタリング装置59と同等の誘電率を用いた手法で灰の含水率を連続的に測定する水分計であるため、その説明は省略する。
【0050】
さらに、前記水分計測計152及び水分計測計159は制御装置154に接続されており、該制御装置154は、前記熱風炉131から乾燥機104に供給される熱風量を制御することができるように構成されている。
【0051】
前記乾燥機4の稼動中には、前記灰ホッパー102内の灰の含水率は水分計測計152によって連続的に計測される。また、前記ホッパー109内の乾燥灰の含水率は水分計測計159によって連続的に計測される。
【0052】
このとき、前記水分計測計152で測定される灰の含水率と、水分計測計159で測定される乾燥灰の含水率は、リアルタイムで制御装置154に送られる。
制御装置154では、まず水分計測計152で測定される灰の含水率に基づいて、乾燥機104に供給する熱風量の概略値を設定する。該概略値の設定は、予め灰含水率と、乾燥機104で目標含水率まで乾燥するために必要な熱風量との関係の較正曲線を予め作成しておき、該較正曲線に基づいて前記概略値を設定し、該設定値の風量となるように熱風炉131からの熱風量を調整する。
さらに、前記水分計測計159で測定される乾燥灰の含水率に基づき、乾燥灰の含水率が目標含水率よりも高い場合には前記熱風量を増加、乾燥灰の含水率が目標含水率よりも低い場合には前記熱風量を減少させる微調整を行い、乾燥灰が目標含水率となるように調整を行う。
なお、前記目標含水率は2〜10%の範囲で設定する。乾燥灰の含水率が2%より低いと乾燥灰がフラッシング(流動化)してしまい、110A、110Bなどのコンベアで後流機器へ乾燥灰を定量供給できなくなり、10%より高いとホッパー109で灰がアーチングして閉塞してしまうためである。
【0053】
本実施例2によれば、灰の含水率に基づいて前記熱風量の概略値を設定することで、乾燥灰の含水率の大きな変動を防止し、さらに乾燥灰の含水率に基づいて熱風量を微調整することで乾燥灰の含水率の小さな変動を防止することができるため、乾燥灰の含水率の調整を容易に安定して行うことが可能となる。
これにより、乾燥汚泥の含水率が目標から外れることに起因する乾燥灰の性能の低下、後流機器トラブルなどを防止することが可能となる。また、含水率の異なる灰を混合する混合比率が変化して、混合灰の含水率が変動しても、乾燥灰の含水率を目標値に調整することが可能であるため多種多様の種類の灰の受け容れが可能となり、乾燥機の稼動効率の向上が見込める。
【0054】
また、誘電率を用いた手法によって測定する水分計(水分計測計152、水分計測計159)を用いることで、含水率のリアルタイムで連続計測可能であり、測定値を素早く前記熱風量調整に反映することができるため、乾燥灰の含水率がより安定化する。
さらに、誘電率を用いた手法によって測定する水分計は雰囲気温度の影響を受けないため、乾燥機に供給される灰の含水率や温度が異なっても特に問題とならない。
【0055】
さらに、前記水分計測計159に代えて、乾燥機104で発生した乾燥機排ガスの風量、温度及び含水率を測定し、該測定結果から前記乾燥汚泥の含水率を求める装置を使用することができる。
これにより、乾燥灰と水分計測計159が接触しないため、水分計測計159による乾燥後の湿潤粉体の流れの阻害を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
起動時の乾燥機内の状況、乾燥させる湿潤粉体の含水率及び湿潤粉体乾燥特性が大きく変動しても、目標の範囲内の含水率まで乾燥することができる湿潤粉体の乾燥装置及び乾燥方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1に係る乾燥機が用いられる下水汚泥の炭化処理装置の系統図である。
【図2】実施例1に係る乾燥機周辺の系統図である。
【図3】図2におけるA部拡大図である。
【図4】従来の乾燥機における乾燥機供給前の脱水汚泥と乾燥機排出後の乾燥汚泥の含水率の時間変化を表したグラフである。
【図5】誘電率と含水率の関係を表すグラフの一例である。
【図6】実施例2に係る乾燥機が用いられる灰乾燥設備の系統図である。
【符号の説明】
【0058】
2A ホッパー
4 乾燥機
52 モニタリング装置(第1の水分計測手段)
54 制御手段
59 モニタリング装置(第2の水分計測手段)
102 灰ホッパー
104 乾燥機
152 水分計測計(第1の水分計測手段)
154 制御手段
159 水分計測計(第2の水分計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤粉体を通過させながら加熱する加熱部と、前記加熱部に加熱ガスを送風する送風部とを備え、前記加熱部の湿潤粉体に前記加熱ガスを直接送風して加熱乾燥する湿潤粉体の乾燥機において、
前記加熱部に供給される前の湿潤粉体の含水率を計測する第1の水分計測手段と、
前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を計測する第2の水分計測手段と、を備え、
前記第1の水分計測手段の計測値と、前記第2の水分計測手段の計測値と、に基づいて前記加熱ガスの送風量を調整する制御装置を設けたことを特徴とする湿潤粉体の乾燥機。
【請求項2】
前記第1の水分計測手段が、誘電率を用いた手法で前記加熱部に供給される前の湿潤粉体の含水率を測定する水分計であることを特徴とする請求項1記載の湿潤粉体の乾燥機。
【請求項3】
前記第2の水分計測手段が、誘電率を用いた手法で前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を測定する水分計であることを特徴とする請求項1又は2記載の湿潤粉体の乾燥機。
【請求項4】
前記第2の水分計測手段が、前記湿潤粉体に送風された後の排ガスの風量、温度及び含水率を測定する手段と、該測定の結果から前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を求める演算装置とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の湿潤粉体の乾燥機。
【請求項5】
前記乾燥機の湿潤粉体入口部に前記湿潤粉体が通過するホッパーを設け、
前記水分計を、前記水分計の電極の先端部が、前記ホッパーの湿潤粉体の流下部に位置するように配置したことを特徴とする請求項2記載の湿潤粉体の乾燥機。
【請求項6】
前記湿潤粉体が脱水汚泥であって、
前記制御装置により、前記第2の水分計測手段による計測値が重量%で10〜30%の範囲になるように制御を行うことを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の湿潤粉体の乾燥機。
【請求項7】
湿潤粉体を乾燥機内を通過させながら、該湿潤粉体に加熱ガスを直接送風して加熱乾燥する湿潤粉体の乾燥方法において、
前記乾燥機に供給される前の湿潤粉体の含水率を計測するとともに、前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率を計測し、
前記2つの含水率の計測値に基づいて前記加熱ガスの送風量を調整することを特徴とする湿潤粉体の乾燥方法。
【請求項8】
前記湿潤粉体が脱水汚泥であって、
前記乾燥機で乾燥された後の湿潤粉体の含水率が重量%で10〜30%の範囲になるように前記加熱ガスの送風量を調整することを特徴とする請求項7記載の湿潤粉体の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84976(P2010−84976A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252773(P2008−252773)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】