説明

湿的物乾燥機とその乾燥方法

【課題】 湿的物の乾燥を効率よく行う乾燥機とその乾燥方法の提供。
【解決手段】胴体3内に供給された湿的物を熱媒体13とともに回転しながら乾燥させ供給側から排出側へ移送させる。熱媒体13は表面積の大きい金属製のものである。湿的物を供給する湿的物供給装置12と、所定温度に調整された熱風を供給する熱風供給装置14とを胴体3の供給側近傍に設ける。湿的物と熱媒体13は熱風を受け胴体3内を攪拌し、3つに仕切られた乾燥室を案内板と送り出し部材18により順次排出側に移送され湿的物の乾燥を行う。更に乾燥された湿的物と熱媒体13とは分離され、熱媒体13は逆流移送装置7により供給側に逆送移送される。乾燥した湿的物は、胴体3内から排出され、回収装置15により回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を多く含む被乾燥対象物である湿的物の乾燥機とその乾燥方法に関する。更に詳しくは、水処理汚泥物、生ごみ、おから、コーヒーや茶葉等飲料の抽出残渣物(粕)、あるいは農産品の粕等の湿的物を再利用または廃棄させるため乾燥させる湿的物乾燥機とその乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から汚泥、生ごみ等は乾燥させ小容積化して廃棄することが行なわれている。産業廃水等を活性汚泥法などにより処理した際に生じる汚泥、特に水分を多く含むものは、再利用のためには乾燥させる必要があるが、残渣物は乾燥し難く、乾燥に時間を要することから、一般に焼却処理又は埋め立て処理されることが多い。
【0003】
焼却処理の場合は灰の扱いが問題となるが、通常はそのまま廃棄処分される。このような処理は資源の有効利用の観点から好ましくなく、そのためなるべく再利用できる方法が模索されている。乾燥し難いもの(例えば、おから)等であっても例外ではなく、短時間で乾燥させて処理させることが求められ、これに応じた湿的物乾燥機及び湿的物乾燥方法が同一出願人において既に開発され提案されている。
【0004】
この乾燥機は、回転胴を有するもので、内部を円板により複数の乾燥室に仕切り、供給された汚泥物等を回転、移送させる過程で熱風により乾燥させるものである。汚泥物等は熱交換部材と混在され内部の円板を乗り越え送り出される流れの過程で乾燥を促進させるようにしている。従来熱風は例えば蒸気等によっていたが、本出願人はガスバーナー等による熱風を利用し熱交換部材を塊状体にして従来の問題点を克服していた(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、汚泥物、飲料の粕、農産品の粕等の処理において、昨今の環境対策の厳格化、法律上の規制、施行等もあり、有効活用の観点においてますますその関連技術の必要性が高まり、更に効率を上げる乾燥技術、特に短時間で低コストで処理ができる技術、有害物質を発生させない乾燥技術等の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平11−23151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、汚泥物、飲料の粕、農産品の粕等の水分を多く含む湿的物の乾燥においては、従来の技術もそれなりの効果があり実施されていることは知られている。しかしながら、前述のように完成された技術ではなく、その後の社会的要請もあり、更に問題点を解決し改良されることが要望されている。特に、年間1200万tonを越し、産業廃棄物の約70%を占めるといわれている水処理汚泥物に対して安定して低コストで乾燥ができる乾燥技術の開発が切望されている。
【0007】
本発明は前述のような従来の問題点を解決するために開発されたものであり、下記目的を達成する。
【0008】
本発明の目的は、有害物質を発生させるおそれがなく、安定して低コストで湿的物の乾燥ができる湿的物乾燥機とその乾燥方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、熱交換をよくして湿的物の移送をスムースにして乾燥効率を高めた湿的物乾燥機とその乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するため次の手段を採る。
本発明1の湿的物乾燥機は、
基台上に設けられ空洞内部に供給された水分を多く含む被乾燥対象物である湿的物を回転させながら供給側から排出側へ移送させる胴体と、前記胴体を回転駆動させる回転駆動体と、前記胴体の前記供給側近傍に設けられ、前記胴体に前記湿的物を供給する湿的物供給装置と、前記湿的物供給装置に隣接して設けられ、前記胴体内の前記湿的物を乾燥させるため所定温度を維持した熱風を供給する熱風供給装置と、前記湿的物と混在して前記胴体内を攪拌されながら移送され、前記湿的物を付着させて熱交換を行なう熱媒体と、前記供給側から前記排出側へ移送された前記熱媒体を前記排出側から前記供給側へ逆流移送させる逆流移送装置と、前記胴体内に設けられ前記逆流移送装置を支持し前記湿的物を滞留させて乾燥室を構成する仕切り板と、前記胴体の前記排出側に設けられ、乾燥された前記湿的物を前記胴体から排出回収する回収装置とからなっている。
【0011】
熱交換は、熱風と熱媒体、熱風と湿的物及び湿的物と熱媒体との間で行われ、湿的物から水分を蒸発させ湿的物の水分含有率を下げるためのものである。その水分含有率は50%以下にするのが好ましい。又、熱媒体は、熱伝導性がよく湿的物をより多く付着させるものがよい。例えば、パイプ状のもの、コイルばね状のもの等である。又、胴体内に仕切り板を設け分割乾燥室にしたことは、逆流移送装置を回転中心部で支持するとともに、湿的物と熱媒体を一時的に滞留させ乾燥を促進させ、乾燥効率を高めるのに効果的である。
【0012】
本発明2の湿的物乾燥機は、本発明1において、
前記逆流移送装置は、前記胴体内の回転中心軸に沿って胴体内中央部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明3の湿的物乾燥機は、本発明1又は2において、
前記胴体は、外壁全面に亘って耐熱充填剤を充填していることを特徴とする。この構成は、回転胴側から大気側に熱が逃げることを減少させ、効率よく乾燥できるとともに、回転胴内部の音が回転胴の外部にもれることも減少させ、騒音問題の発生を防止することができる一助をなす。
【0014】
本発明4の湿的物乾燥機は、本発明1又は2において、
前記胴体の内壁面に前記湿的物を移送させるため移送方向に沿って案内可能な複数の移送案内手段を設けたことを特徴とする。例えば、胴体の内部の壁面に螺旋状の板部材を溶接する。別な表現をすれば羽根状の板部材を設けた構成にする。この板部材は例えば傾斜面を有する板構成にすると、胴体の回転に伴ない湿的物を強制的にこの傾斜面に当接し方向を変え移送方向に案内することになる。
【0015】
本発明5の湿的物乾燥機は、本発明1又は2において、
前記胴体内に、滞留する前記湿的物と前記熱媒体を保持し前記胴体の回転により前記仕切り板を越えて移送方向へ送り出す送り出し部材を設けたことを特徴とする。この送り出し部材は最適の形態のものが固定的に設けられ、胴体の回転動作で仕切り板を乗り越え湿的物の付着した熱媒体を移送方向に送り出す。
このことにより、湿的物の胴体内滞留時間を制御することができる。
【0016】
本発明6の湿的物乾燥機は、本発明1又は2において、
前記熱風供給装置は、熱風源からの熱風を所定温度に調整するための熱風調整室を設けていることを特徴とする。熱風調整室は、空洞室になっていて温度調整機能を有している。熱風源からの熱風をこの熱風調整室で、例えば350℃以下に保持して胴体内に送り出すのが好ましい。
【0017】
本発明7の湿的物乾燥機は、本発明1又は2において、
前記湿的物供給装置は、前記湿的物を前記胴体に供給する通路部材が前記熱風調整室を通過するように設置されていることを特徴とする。湿的物を熱風調整室を通過させ供給することで、湿的物が前記胴体に供給される前に加熱されることになり、乾燥効率を高めるのに寄与している。
【0018】
本発明8の湿的物乾燥機は、本発明1又は2において、
前記熱媒体は、熱伝導がよく表面積の大きい金属製熱媒体であることを特徴とする。
【0019】
本発明9の湿的物乾燥機は、本発明5において、
前記送り出し部材は、箱形で傾斜面を有し、前記胴体の回転で上部に位置したとき前記熱媒体が前記傾斜面の案内で自重落下して仕切り板を越えて前記移送方向に送り出される構成になっていることを特徴とする。傾斜面を設けたことは、強制的に熱媒体を送り出すのに効果的である。
【0020】
本発明10の湿的物乾燥機は、本発明8において、
前記金属製熱媒体は、コイルばね形状、丸棒形状、パイプ形状及び球形状から選択される一種以上の形状のものであることを特徴とする。
【0021】
本発明11の湿的物乾燥方法は、
基台に設けられ回転しながら乾燥機能を有する胴体に、水分を多く含む被乾燥対象物である湿的物と前記湿的物を付着させて熱交換を行う熱媒体を供給する工程と、供給された前記湿的物と前記熱媒体を混在させ、前記胴体の回転により攪拌しながら前記胴体内の仕切られた乾燥室を順次供給側から排出側へ移送させる工程と、熱風源の熱風を所定温度に調整して前記胴体内に供給し前記湿的物を乾燥させる工程と、前記排出側に移送された前記熱媒体を前記排出側から前記供給側に逆流移送させる工程と、前記湿的物と前記熱媒体を前記胴体の回転動作と送り出し部材の捕捉により取込み傾斜面を介して自重落下させて前記供給側から前記排出側に仕切り板を越えて順次送り出す工程と、前記胴体内を移送して乾燥された前記湿的物と前記熱媒体とを分離し、前記熱媒体を回収し、乾燥された前記湿的物を前記排出側に排出する工程とからなっている。
【0022】
本発明12の湿的物乾燥方法は、本発明11において、前記湿的物の供給工程は、前記湿的物を前記胴体内に供給する前に所定温度に調整された熱風空間を通過させ加熱する工程を含む工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上、詳記したように、本発明は、湿的物乾燥機に熱風源から直接胴体へ熱風を供給せず熱風源の熱風を所定温度に調整してから胴体へ熱風を送り込むようにした。この結果、熱風源の熱風の温度は下げられることになり、必要以上の高温の熱風を発生させることなく安定して湿的物の乾燥ができるようになった。
回転する胴体を二重構造にしたことにより、胴体(回転胴)側から大気側に熱が逃げることが防止され、効率よく乾燥できるようになった。湿的物乾燥機の省エネ化を図ることができた。又、胴体内部の音が胴体の外部にもれることを防止でき、騒音問題の発生を防止することができた。
【0024】
熱効率のよい熱媒体の使用により、又、湿的物と熱媒体をスムースに送り込む構成にしたことで、熱交換がよくなり、湿的物の移送がスムースになって乾燥度が高まり、効率よく乾燥できるようになった。さらに、これらの機能向上に加え、本発明は特別の高価な設備を要することなく、低コストで湿的物の乾燥を実現できることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の湿的物乾燥機及びその乾燥方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す湿的物乾燥機の正面断面図で、図2はその側面図である。本実施の形態における被乾燥対象物は、水処理汚泥物(廃水生物汚泥)、茶葉、コーヒーガラ等の抽出残渣物、農産品の粕等の水分を多く含む被乾燥対象物である湿的物(以下、「湿的物」という。)である。基台1上に複数の従動ローラ2が対構成をなして回転自在に設けられている。
【0026】
この複数の従動ローラ2に跨って、胴体である回転胴3が回転自在に支持されている。従動ローラ2は、回転胴3の両端側を各々一対で支持している構成になっている。基台1に対する回転胴3の回転軸心線の位置は、回転胴3の回転径の大きさ、従動ローラ2の径、従動ローラ2間隔等により定められている。これらの条件に後述する熱媒体の条件を加味し、乾燥させるための最適な湿的物の移動速度(回転胴の回転速度)等が決められる。
【0027】
基台1上には、回転胴3を回転駆動させるための駆動モータ4が設けられている。この駆動モータ4の出力軸と回転胴3にはスプロケット5a,5bが各々取り付けられていて、この各々のスプロケット5a,5bにチェーン6が巻き掛けられている。回転胴3は駆動モータ4により、これらスプロケット5a,5b及びチェーン6を介して駆動される。回転胴3が大型の場合には、スプロケット・チェーン伝達機構の代わりに歯車伝達機構を使用してもよい。
【0028】
又、回転胴3には従動ローラ2と接触する部分に所定厚さのリング3aが、所定の間隔を有して固定(例えば、溶接)されている。このリング3aは、従動ローラ2で支持する回転胴3の支持部材で支持部分の強化を図っている。又、リング3aは、回転胴3の回転案内部であり駆動部や基台1等への熱伝達の遮断を行い、回転胴3を安定にスムースに回転させる機能をも有している。回転胴3は内部が空洞になっていて、中央部の回転軸線に沿って筒状の逆流移送部材7が設けられている。
【0029】
この逆流移送部材7は外形部がパイプ状の筒体7aで構成され内部に螺旋体7bが挿入固定されている。筒体7aの筒部には、全面に亘って複数の穴7cが設けられている。螺旋体7bは、回転胴3の回転に伴ない、筒体7a内のものを排出側から供給側へ逆流方向に送られるように捩られ螺旋形状になっている。詳細は図示していないが、この螺旋は線状体を捩って螺旋形状にしている。従来螺旋体は、帯状の鉄板を捩ったものであったが、それに比して、線状体を捩ったものは、製造が容易でコスト低減となる。又、熱交換のための表面積を大きくすることができ乾燥効率を高めるのによい。なお、螺旋形態はどのようなものであってもよいことはいうまでもない。
【0030】
又、回転胴3は両端部が蓋部材3b、3cにより閉じられ、内部が閉塞された空洞をなす形態となっている。回転胴3の後述する主乾燥室9、従乾燥室10の外壁は内部に耐熱充填剤である耐熱コンクリート3dを充填した二重構造になっている。なお、耐熱充填剤は、耐熱性能を有し、主乾燥室9、従乾燥室10の断熱効果等を有するものであれば耐熱コンクリート以外のものであってもよい。又、回転胴3の回収室11の外周面は、穴11a等が設けられたもの又は網状のものなどであり、乾燥した湿的物と熱媒体とを分離して、各々、熱媒体の回収、乾燥した湿的物の排出が容易なものとなっている。すなわち、回収室11の外周面は、乾燥した湿的物と熱媒体とを分離し、乾燥した湿的物のみを回収室11の下部側に位置した穴11aから落下させて排出できるものである。回収室11の穴11aは目詰まりしにくいものであることが好ましい。例えば、薄板状のものであることが好ましい。この構造により、回転胴3の主乾燥室9、従乾燥室10は吸音(消音)効果と断熱効果を有するものとなっている。すなわち、回転胴3側から大気側に熱が放出されることが減少し、効率よく乾燥できるようになっている。又、回転胴3内部の音が回転胴3の外部にもれることも減少させることができ、騒音問題の発生を防止対策の一つとすることができる。
【0031】
逆流移送部材7の端部は排出側の蓋部材3cに固定され、中間部は回転胴3内の仕切り板である円板8で支持されている。この円板8はドーナツ状になっていて、回転胴3の内壁に固定され、支持部材8aを介して逆流移送部材7を支持している。
この円板8により回転胴3内を3つの室、即ち、主乾燥室9、従乾燥室10、回収室11に仕切っている。この円板8は、中心部が穴8bになっていて、熱風等が通過できるようになっている。前述のように、この円板8は、逆流移送部材7の筒体7aを細棒状の支持部材8aで支持して回転胴3の内壁に固定されている。この回転胴3の供給側の上方に水処理汚泥物、飲料の抽出残渣物、豆腐のおから等湿的物を供給するためのの湿的物供給装置12が設けられている。この湿的物供給装置12は、上部にホッパー12aが設けられ、湿的物は上方の投入口から投入される。
【0032】
下部には湿的物をホッパー12aから回転胴3へ供給するための湿的物供給部材が設けられている。この湿的物供給部材は、ホッパー12aから自然落下する湿的物を回転胴3側へ移動させるためのスクリューコンベア12bと、このスクリューコンベア12bで移動された湿的物を回転胴3へ導く通路部材12cとで構成されている。
スクリューコンベア12bは、基台1上に設けられたコンベアモータ12dによりスプロケット、チェーンを介して駆動される。湿的物はホッパー12aに貯留された後、スクリューコンベア12bに導かれスクリューの回転動作で回転胴3側に移動し通路部材12cを通って回転胴3に供給される。
なお、湿的物供給装置は、供給される湿的物の種類によって、適宜変更可能なことはいうまでもない。例えば、スクリューコンベアにくっつきやすい湿的物(例えば、じゃがいものようなもの)の場合には、流体圧シリンダのピストンで押し出すような湿的物供給装置であってもよい。
【0033】
この回転胴3には、予め熱交換機能を有する熱媒体13が挿入されている。
この熱媒体13は、熱伝導性の高い金属製の熱媒体で、熱風を受けて熱を保持し付着する湿的物との間で熱交換を行い、湿的物から水分を蒸発させ水分含有率を低下させながら乾燥させる機能を有する。この実施の形態では、熱媒体13は、表面積が大きい金属製のパイプ形状のものとなっている。なお、熱媒体13の形状は、表面積の大きく、熱伝導のよい金属製の熱媒体であれば、図6、図7に示すような形状であってもよい。図6はコイルばね形状の熱媒体で、図7は丸棒形状の熱媒体である。なお、熱媒体の形状はこれらに限定されるものではなく、例えば、球形状、波板形状などの金属製の熱媒体であってもよい。また、湿的物がだまができやすいものの場合には、丸棒形状の熱媒体(図7参照)を混入しておくと、破砕効果が高まり好ましい。さらに、コイルばね形状の熱媒体(図6参照)は、回転胴3の回転により、回転胴3上方からの下方側の面に落下した際撓むため騒音が低下する効果が生じる。
【0034】
供給された湿的物は回転胴3に供給されると同時にこの熱媒体13と混在し、回転胴3内を移送される。湿的物は、熱風、熱風の熱が熱伝導した熱媒体13を介して加熱され乾燥させられる。湿的物供給部材の下方向に、熱風供給装置14が基台1上に設けられている。この熱風供給装置14は、回転胴3に隣接する側に熱風調整室14aとこの熱風調整室14aに熱風を送り込む熱風源14bとを設けた構成となっている。
なお、熱風を供給する熱風源は、他の装置から排出される排熱を利用したものであってもよく、その場合、本実施の形態のような熱風源は不要となる。例えば、焼却炉からでる排熱路の一部を分岐して熱風源として利用し、その後、利用が終了した熱風を焼却炉の排熱路に戻すようにしたもの等であってもよい。要は、所定の温度の熱風が、回転胴3側に供給できるものであればよい。
【0035】
熱風源14bは熱風調整室14aを挟んで回転胴3と反対側に設けられている。熱風源14bは、ガス、石油等を燃焼させて熱風ガスを発生させるガスバーナーである。このガスバーナーから熱風供給管14cを介して熱風を熱風調整室14aに送り込む。この熱風調整室14aに送り込まれた熱風は、所定温度以下に調整され、回転胴3内の湿的物に向かって噴出するようになっている。
【0036】
供給される湿的物は自重で回転胴3の下方位置に留まっているので、熱風は回転胴3内の下方向に向けて噴出される。熱風の温度調整の形態は、本実施の形態においては、所定の温度以下に、熱風の温度を低下させるのに必要な空間を確保したことにある。空間によりガスは分散し温度低下する。即ち、空間を介することにより湿的物を効率よく乾燥させることができる所定の温度まで低下させることができる。従って、熱風を噴出することにより湿的物が炭化するようなことはない。この所定の温度は例えば350℃以下であることが好ましい。さらに、好適な温度としては例えば170℃〜200℃程度であることが好ましい。
【0037】
本実施の形態においては、熱風源14bをガスバーナーとしているが、熱風が排ガス等であり、前記した所定の温度又は好適な温度以下であれば、そのまま熱風としての使用が可能である。また、他の方法としてガスバーナーの場合、小さい空間の熱風調整室であっても、強制的に熱風と空気とを混合させるようにすれば、所定温度以下の熱風とする構成も可能である。湿的物供給装置12の通路部材12cは熱風調整室14aを通過して設置されている。
【0038】
このため、通路部材12cを通って回転胴3に供給される湿的物は、回転胴3に供給される前に加熱され乾燥しやすい状態となる。湿的物の供給を受ける回転胴3は湿的物乾燥機のメイン構成をなす部材である。回転胴3はドラム形状をなし、内部が空洞となっている。前述のように、本実施の形態においては、回転胴3内は円板(仕切り板)8により主乾燥室9と、従乾燥室10と、乾燥された湿的物(被乾燥対象物)を排出回収する回収室11の3つの室に区切られていて、供給される湿的物及び熱媒体13は供給側から回転胴3の回転軸線に沿って、この2つの円板(仕切り板)8を乗り越える状態で供給側から排出側に移送されるようになっている。
【0039】
主乾燥室9は、熱風を直接受けて乾燥させる第1段階のゾーンになるが、湿的物を所定の温度の熱風のよる高温の状態で乾燥させる。従乾燥室10は、主乾燥室9から移送されてきた未乾燥の湿的物を主に蒸発、蒸散により水分を除くゾーンである。排出端には乾燥された湿的物を回収する回収室11を構成し、この回収室11の下方に回収装置15が設けられ、回収室11から排出される乾燥した湿的物を回収する。主乾燥室9の内周面には、熱媒体13を回転軸線に沿って排出側に移送できるように、螺旋状の面あるいは傾斜面を有する第1案内板16が複数個取り付けられている。
【0040】
この第1案内板16は、回転胴3の回転に伴ない、回転方向に衝接する湿的物及び熱媒体13を排出側に強制的に向きを変え移送できるようにしたものである。又、湿的物の乾燥を早めるため、回転胴3の下方位置にある湿的物を上方へ掻き揚げるのみであれば、移送方向に平行な案内板でもよい。このように、湿的物が熱媒体13に付着し相互に擦りあいながら下方位置から上方位置へと攪拌されて熱風にさらされ、湿的物は熱媒体13とともに供給側から排出側に移送される。
【0041】
これらの第1案内板16を適宜組み合わせて効率的に乾燥ができるように配置している。回転胴3の回転動作で主乾燥室9の内周面に自重で押し付けられた湿的物及び熱媒体13は、第1案内板16の螺旋傾斜面に衝接すると回転胴3の回転に伴ない回転軸線方向に向きを変え、排出側に強制的に移送する。
【0042】
又従乾燥室10においても主乾燥室9と同様の構成の第2案内板17を回転胴3の内周面に設け、従乾燥室10に移送された湿的物をこの第2案内板17により排出側に強制的に移送させる。この構成により、湿的物は熱媒体13に付着して、回転胴3の回転に伴ない常に上方へもたらされ落下する過程で、徐々に排出側に移送されながら乾燥が促進される。乾燥が促進されると、湿的物は乾燥した湿的物(被乾燥対象物)となって熱媒体13から離脱する。
【0043】
一方、回転胴3内を仕切っている円板8の各々の供給側には、送り出し部材18が設けられている。この送り出し部材18は、図4に示すように、各々の円板8の供給側壁面に1個それぞれ固定されている。この個数は特に限定されたものではなく複数個であってもよい。すなわち、回転胴の回転数、送り出し部材の個数、形状等を適切にすることにより、湿的物の胴体内滞留時間を制御することができ、従乾燥室10から回収室11に入る湿的物が乾燥した湿的物になっているように湿的物の胴体内滞留時間を制御すればよい。この送り出し部材18は箱形状をなし、湿的物及び熱媒体13の取り込み口18aと取り込んだ湿的物及び熱媒体13の送り出し口18bとを有している。箱形状内部には取り込み口18a側にあって回転方向に沿って取り込みを容易とする第1傾斜面18cと、この第1傾斜面18cを介して取り込まれた湿的物及び熱媒体13を回転軸線に沿って送り出し口18bへの送り出しを容易とする第2傾斜面18dとを有している。
【0044】
従って、取り込み口18aを経由して取り込まれた湿的物及び熱媒体13は第1傾斜面18c、第2傾斜面18dを経て誘導される状態で送り出し口18bへ矢印のように導かれ円板8を乗り越え次室へ移送される。即ち、湿的物及び熱媒体13は回転胴3の回転に伴ない、送り出し部材18が回転胴3の上方に達したとき自重で、湿的物及び熱媒体13は主乾燥室9から従乾燥室10へ、従乾燥室10から回収室11へと順次円板8を乗り越え移送されるのである。
【0045】
この送り出し部材18は供給される湿的物及び熱媒体13と乾燥条件等によって容積形状が決定され固定的に円板8に取り付けられる。又、この送り出し部材18の取り付けは、円板8以外に回転胴3の内壁に固定することも可能である。回収室11に移送された湿的物及び熱媒体13は回転中に回転胴3の上方から落下し、回収室11の外周面によって分離される。すなわち、熱媒体13は回収され、乾燥された湿的物は排出される。
【0046】
目的の乾燥度に乾燥された湿的物は回転胴3の回収室11の外周面に設けられた穴11aから排出され、回収装置15に回収される。この回収される乾燥した湿的物の乾燥度は50%以下が多い。外周の穴11aは全周に亘って設けられており、乾燥された湿的物は自重で常に下方に位置するので、回転胴3の回転に伴ない下方位置の穴11aから排出されることになる。
【0047】
熱媒体13は、回収室11の外周面の穴11aより充分大きいから排出されることはなく、回収室11の蓋部材3cの壁面に設けられた案内樋19に捕捉される。この案内樋19は一緒に回転する回転胴3の回転に伴ない、上方にもたらされる。案内樋19の根元は逆流移送装置7の筒体7aに固定されている。案内樋19は回転胴3の回転で熱媒体13等の一定量を掻き揚げて保持し上方側へ位置したとき、この熱媒体13を自重で案内樋19に沿って落下させる形状にしたものである。
【0048】
この案内樋19は、熱媒体13等を捕捉して掻き揚げる受け面を有していると同時に、回転胴3の上部側に達したとき掻き揚げたものが分散しないように側壁を設けた形状としている。本実施の形態においては、回収室11に1個の案内樋19を設けた構成にしている。このため回転胴3が1回転するごとに1回熱媒体13等を掻き揚げることになる。逆流移送装置7の筒体7aの蓋部材3c側の外壁には穴20が設けられており、熱媒体13等は直接この穴20に導かれ逆流移送装置7の筒体7a内に取り込まれる。
【0049】
この逆流移送装置7には、回転胴3の回転により排出側から供給側に向かって熱媒体13等を強制的に逆流移送させるように中心部に螺旋体7bが設けられている。
従って、穴20から逆流移送装置7内に取り込まれた熱媒体13等はこの螺旋体7bを介して回収室11側から主乾燥室9側に逆流移送され、筒体7aの供給側放出口7dから主乾燥室9に放出される。この主乾燥室9では供給される新しい湿的物と混在し、再び前述と同様の乾燥動作を繰り返し循環する。また、筒体7aには、埃状になった湿的物が残ることがあるが、穴7cから落下し回転胴3内に戻る。
【0050】
次に、模式的に回転胴3を示した図5に基づき、乾燥方法を説明する。図の矢印は、湿的物と熱媒体及び熱風の移動する方向を示している。湿的物は、湿的物供給装置12のホッパー12aから熱風調整室14aに設置されている湿的物供給部材の通路部材12cを通り回転胴3の主乾燥室9に供給される。熱媒体13が既に回転胴3に挿入されているので、湿的物は熱媒体13に付着し混在し回転胴3の回転により攪拌される。一方熱風は熱風源14bより熱風調整室14aを介して所定温度に下げられた状態で回転胴3に吹き込まれる。
【0051】
回転胴3の回転に伴ない、湿的物は、所定の温度の熱風を受けるとともに、熱風の熱が熱伝導された熱媒体13と熱交換しながら回転胴3の内壁に設けられた第1案内板16に衝接し持ち上げ落下を繰り返して乾燥され、円板8側に徐々に移送される。円板8側に達した熱媒体13等は送り出し部材18により掻き揚げられ、円板8を乗り越え従乾燥室10へ送り出される。従乾燥室10に送り出された熱媒体13等は主乾燥室9と同様の動作を繰り返し第2案内板17に衝接を繰り返しながら円板8に達する。
【0052】
円板8に達した熱媒体13等は前述同様構成の送り出し部材18により従乾燥室10から回収室11へ送り出される。回収室11へ送り出され乾燥した湿的物は、回収室11の外周面に設けられた穴11aから排出され回収装置15に回収される。
【0053】
回収される湿的物は乾燥過程で熱媒体13に付着して乾燥し攪拌過程で剃り落とされるので、ほぼ粉末状になっている。熱媒体は回収室11の蓋部材3c側に設けられた案内樋19により回転胴3の回転に伴ない筒体7a後端の穴20から回収され、螺旋体7bを経由して主乾燥室9に戻される。戻された熱媒体13等は新しく供給される湿的物と混在し回転胴3内を移送し前述の乾燥動作を繰り返す。本実施の形態においては、例えば回転胴3の回転数を10rpmとし、従来の技術では約1時間を要する乾燥時間を、約10分間に短縮することができた。乾燥の度合いは主に0〜50%の範囲である。
【0054】
熱媒体13は、表面積の広い金属製の熱媒体としている。このため、湿的物の付着面積が広くなり、薄く付着するので、乾燥を早めることができるようになった。更に、熱媒体13の移動速度を制御することで、湿的物の条件に合わせ最適な速度を選択できる。例えば、熱媒体の移動速度は、回転胴3の回転数と送り出し部材18の能力の選定などによって決定することができる。
又、図示していないが、回収装置に隣接してサイクロン装置を設けている。回収室に浮遊している粉塵等を回収室の上部から集塵状態で浮遊物として回収している。
【0055】
本発明は、このようにして湿的物を乾燥させるが、本発明は前述の実施の形態に限定されない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の湿的物乾燥機の正面断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は、図1のB−B断面図である。
【図4】図4は、送り出し部材の構成を示す説明図である。
【図5】図5は、回転胴を模式的に示す説明図である。
【図6】図6は、熱媒体の他の形態を示す外観図である。
【図7】図7は、熱媒体のさらに他の形態を示す外観図である。
【符号の説明】
【0057】
1…基台
2…従動ローラ
3…回転胴
7…逆流移送装置
8…円板(仕切り板)
9…主乾燥室
10…従乾燥室
11…回収室
12…湿的物供給装置
13…熱媒体
14…熱風供給装置
14a…熱風調整室
18…送り出し部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に設けられ空洞内部に供給された水分を多く含む被乾燥対象物である湿的物を回転させながら供給側から排出側へ移送させる胴体と、
前記胴体を回転駆動させる回転駆動体と、
前記胴体の前記供給側近傍に設けられ、前記胴体に前記湿的物を供給する湿的物供給装置と、
前記湿的物供給装置に隣接して設けられ、前記胴体内の前記湿的物を乾燥させるため所定温度を維持した熱風を供給する熱風供給装置と、
前記湿的物と混在して前記胴体内を攪拌されながら移送され、前記湿的物を付着させて熱交換を行なう熱媒体と、
前記供給側から前記排出側へ移送された前記熱媒体を前記排出側から前記供給側へ逆流移送させる逆流移送装置と、
前記胴体内に設けられ前記逆流移送装置を支持し前記湿的物を滞留させて乾燥室を構成する仕切り板と、
前記胴体の前記排出側に設けられ、乾燥された前記湿的物を前記胴体から排出回収する回収装置と
からなる湿的物乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の湿的物乾燥機において、
前記逆流移送装置は、前記胴体内の回転中心軸に沿って胴体内中央部に設けられている
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の湿的物乾燥機において、
前記胴体は、外壁全面に亘って耐熱充填剤を充填しているものである
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の湿的物乾燥機において、
前記胴体の内壁面に前記湿的物を移送させるため移送方向に沿って案内可能な複数の移送案内手段を設けた
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の湿的物乾燥機において、
前記胴体内に、滞留する前記湿的物と前記熱媒体を保持し前記胴体の回転により前記仕切り板を越えて移送方向へ送り出す送り出し部材を設けた
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の湿的物乾燥機において、
前記熱風供給装置は、熱風源からの熱風を所定温度に調整するための熱風調整室を設けている
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の湿的物乾燥機において、
前記湿的物供給装置は、前記湿的物を前記胴体に供給する通路部材が前記熱風調整室を通過するように設置されている
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の湿的物乾燥機において、
前記熱媒体は、熱伝導がよく表面積の大きい金属製熱媒体である
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項9】
請求項5に記載の湿的物乾燥機において、
前記送り出し部材は、箱形状をなして傾斜面を有し、前記胴体の回転で上部に位置したとき、箱内に取り込まれた前記熱媒体が前記傾斜面の案内で自重落下して前記仕切り板を越えて前記移送方向に送り出される構成になっている
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項10】
請求項8に記載の湿的物乾燥機において、
前記金属製熱媒体は、コイルばね形状、丸棒形状、パイプ形状及び球形状から選択される一種以上の形状のものである
ことを特徴とする湿的物乾燥機。
【請求項11】
基台に設けられ回転しながら乾燥機能を有する胴体に、水分を多く含む被乾燥対象物である湿的物と、前記湿的物を付着させて熱交換を行う熱媒体を供給する工程と、
供給された前記湿的物と前記熱媒体を混在させ、前記胴体の回転により攪拌しながら前記胴体内の仕切られた乾燥室を順次供給側から排出側へ移送させる工程と、
熱風源の熱風を所定温度に調整して前記胴体内に供給し前記湿的物を乾燥させる工程と、
前記排出側に移送された前記熱媒体を前記排出側から前記供給側に逆流移送させる工程と、
前記湿的物と前記熱媒体を前記胴体の回転動作と送り出し部材の捕捉により取込み傾斜面を介して自重落下させて前記供給側から前記排出側に仕切り板を越えて順次送り出す工程と、
前記胴体内を移送して乾燥された前記湿的物と前記熱媒体とを分離し、前記熱媒体を回収し、乾燥された前記湿的物を前記排出側に排出する工程と
からなる湿的物乾燥方法。
【請求項12】
請求項11に記載の湿的物乾燥方法において、
前記湿的物の供給工程は、前記湿的物を前記胴体内に供給する前に所定温度に調整された熱風空間を通過させ加熱する工程を含む工程である
ことを特徴とする湿的物乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−51845(P2007−51845A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238605(P2005−238605)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(596091978)株式会社西村鐵工所 (9)
【Fターム(参考)】