説明

溶接のためのシステム及びその使用方法

プラズマ溶接とMIG(Metal−Inert−Gas)溶接を組み合わせた溶接のための方法が提供される。該システムはプラズマトーチを備える。該プラズマトーチは一定電流の電源装置(49)を備え、非消費プラズマ電極(38)がワークピースに対して負の電位を帯びるようにする。該システムはまた、MIGアークトーチを備える。該ミグアークトーチは、一定電圧の電源装置(48)を備え、溶加ワイヤ(39)がワークピースに対して正の電位を帯びるようにする。プラズマ電極と溶加の間のワイヤ分離体は、好ましくはプラズマ電極(38)をほぼ取り囲むノズル(33)の形をとる。該分離体はガス流を、該プラズマ電極を通して案内する。もしくは補助電源装置がアークを非消費電極(38)と分離体の間に支持する。これにより、主要アークの開始を容易にし、主要アークの開始時の該プラズマトーチへの熱衝撃を防止する。該溶接装置はワークピース(32)に対して移動され、該プラズマアークが該MIGアーク(40)に先行するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接のためのシステム及び該システムの使用方法に関する。また本発明は特に、マイクロイナートガス(Metal−Inert−Gas,MIG)溶接とプラズマアーク溶接を組み合わせたものに関する。
【背景技術】
【0002】
MIG溶接技術は以前より広く知られており、工業的に広く用いられている。
【0003】
MIG工程は、ガスメタルアーク(Gas Metal Arc Welding,GMAW)溶接としても知られている。MIG工程は、連続的消費電極を供給する自動供給装置を備える。消費電極は、外部から供給されるガスによって大気から保護される。該消費電極からワークピースへの金属の移行が特に重要である。該移行は、以下の3つの基本的な形態のいずれかで起こる。
(a)短絡移行
(b)グロビュール移行及び
(c)スプレー移行
【0004】
形態(a)の短絡移行の特徴は、溶接電流が低いこと及び電極径が小さいことにある。金属は電極が溶融池に接する時のみ移行する。アークギャップを超えて金属が移行することはない。この形態は、薄板の接合及び大きなルート間隔の架橋に適する。加工速度及び結果的な工程全体の生産性は大変低く、溶け込みは浅い。
【0005】
形態(b)のグロビュール移行の特徴は、金属溶滴の径が、電極の径よりも大きいことにある。このような大きな溶滴には、重力が重大な影響を与える。すなわち、重力のために、ワークピースが溶接アークの下にほぼ水平に置かれている場合にしか成功裏に溶接できない。加えて、電圧が短絡移行の電圧に近い場合などのように、アーク長が短すぎると、大きな溶滴が電極とワークピースとの間でショートを引き起こしかねない。すると結果として相当量のスパッタが生まれる。したがって、アークはこのようなショートを防げるだけ長くなければならない。しかしながら、より高い電圧を用いた溶接は、金属の溶融が不十分であり、ワークピースへの溶け込みが不十分で、不必要な金属が過剰に溶着するため、しばしば不適格である。これらの特徴ために、工業生産におけるグロビュール移行形態の使用は、かなり制限される。
【0006】
形態(c)のスプレー移行は、アルゴンに富むシールドガス中で可能である。スプレーは個々の溶滴からなる、方向性の高い流れである。ここでは溶滴はアークの力により加速され、重力の影響により左右されない。スプレー移行形態は、アーク電流がいわゆる遷移電流より高い場合に可能となる。遷移電流値は、ワイヤの径及び材料の種類によって異なる。スプレー移行形態での操作が大変好ましい。
【0007】
しかしながらスプレー移行形態では通常、溶着速度が高いため、溶融池が大きくなり、垂直位置または吊り下げ位置において、表面張力によって支持され得なくなる。図1のグラフに示すごとく、溶着速度は溶接電流が上がるにつれて上がり、上昇率は溶接電流が上がるにつれて上がる。これは過度の電極の溶融及び、過度の溶加金属の消費を招く。
【0008】
上記を考慮すると、3つのいずれの形態で操作を行うにしても、溶接速度と1パスで溶接可能な材料の厚さは限定される。よって、開先の種類の異なる複数パスの溶接を行う必要がある。加えて、溶融池が大きいと、重度の溶接ひずみを招く。
【0009】
ワークピースへの熱伝導率が、溶加金属の溶着速度を上昇させることなく向上可能である場合、溶け込みの深さ及び溶接速度は劇的に向上する。
【0010】
一般的に用いられているMIG溶接をプラズマ溶接と組み合わせることで、溶接溶融及び生産性を向上可能である。
【0011】
米国特許第3,612,807号(A.J.LifkensとW.G.Essers)は溶加ワイヤの回転供給を行うプラズマ溶接のための方法及び器具を提案している。この発明が更に発展されたものが、米国特許第4,016,397号、第4,039,800号、第4,220,844号、第4,205,215号、第4,234,778号、第4,142,090号である。図2は上記の米国特許第3,612,807号において提案される器具の典型的な実施形態を示す。第一アーク(プラズマアーク)21は非消費電極20とワークピース12の間であってガス供給口9からのガス流内に保たれる。プラズマ流15はノズル6により収束される。プラズマ流15は収束ノズル6を通り、流れ22内をワークピース12まで進む。消費電極3は、流れ22内に流れ22と共軸となるよう案内され、第二アーク(MIGアーク)が消費電極3の先端とワークピース12の間に保たれる。消費電極3の先端とMIGアークはともにプラズマ流22内に浸される。
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,612,807号
【特許文献2】米国特許第4,016,397号
【特許文献3】米国特許第4,039,800号
【特許文献4】米国特許第4,220,844号
【特許文献5】米国特許第4,205,215号
【特許文献6】米国特許第4,234,778号
【特許文献7】米国特許第4,142,090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この先行技術による方法を、その物理的な仕組みに加えて考慮すると、本発明の目的を達するため、また溶接ヘッドを操作可能にするためには、電極3及び電極20は正負を問わず、共に同じ極性を持たなければならない。
【0014】
実際、もし電極3及び20の極性が異なると、電極3及び20間で直ちに放電が起こる。すると、電流はワークピース12を通らず、アークによるワークピース12の溶融は起こらない。更に、溶加ワイヤ3を回転供給するために、溶加ワイヤ3はプラズマアークと長い領域で接し、更に結果溶加ワイヤ3は過熱される。このことは、きわめて高い溶着速度をもたらす一方で、ワークピース12の実際の溶け込みは起こらない。
【0015】
電極3及び20が共に正の極性を有する場合、プラズマアーク電流の操作範囲は、最大約100アンペアに制限される。これは、非消費電極20が過熱する危険性のためである。上記の現象は、プラズマ電極20が正極である場合の通常のプラズマアーク溶接について広く知られているものである。これにより、溶け込みは浅くなり、比較的低い溶接速度しか可能でなくなる。溶着速度を、MIG電流を上昇させるだけで向上可能であるが、溶け込みの深い溶接部は得られない。
【0016】
プラズマアーク溶接に通常用いられるのは負極であるから、プラズマアーク電極20は負の極性を有することが格段に望ましい。例えば、「American Welding Society Welding Handbook」(第八版、アメリカ溶接協会、1991年、第10章、プラズマアーク溶接)を参照されたい。この出版物は、参照する形であらゆる目的でここにおいて参考にされる。しかしながら負の極性のMIGアークは大変不安定である傾向がある。この不安定性は、MIG溶接工程についての、広く知られているとともに、よく研究されている問題である。例えば、「American Welding Society Welding Handbook」(第八版、アメリカ溶接協会、1991年、 第2巻、特に9頁)を参照されたい。この出版物は、この出版物は、参照する形であらゆる目的でここにおいて参考にされる。更に負の極性のために、MIG消費電極3は、MIG電極3が正の極性を有するときに比べて、高速で溶融する。よって、電極3及び20が共に正の極性を有する場合のごとく、電極3及び20が共に負の極性である場合には、結果として、溶け込み速度及び溶接速度が向上するというよりは、溶着速度が向上する。
【0017】
以上をまとめると、上記の米国特許第3,612,807号によるデザインでは、溶け込みの深さと溶接速度の両方或いはいずれかを向上することはできない。したがって、薄板或いは厚い断面を開先なしで高速で溶接することは不可能である。このことは、主なMIG或いはプラズマアーク溶接固有の短所である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によると、ワークピースを溶接するためのシステムであって、前記システムが、(a)第一電極と、(b)第二電極と、(c)前記第一電極と前記第二電極とのほぼ中間に配される分離体からなり、前記分離体がガス流を前記第一電極に沿って案内するように操作可能であることを特徴とするシステムが提供される。
好ましくは該システムは、(d)電源を更に備え、前記電源が、前記ワークピースに係る第一電位を前記第一電極にかけるように操作可能であり、前記電源がまた、前記第二電極に前記ワークピースに係る第二電位をかけるように操作可能であり、前記第二電位が前記第一電位と反対の極性を持つことを特徴とするシステムとする。
好ましくはシステム内で前記電源が第一直流電源装置を備え、前記第一直流電源装置が正極を有し、前記第一直流電源装置がまた負極を有し、前記第一電源装置の前記正極がワークピースと接続するためのものであり、前記第一電源装置の前記負極が前記第一電極と接続する。
好ましくは該システムでは、前記第一直流電源装置が、ほぼ一定電流の電源装置を備える。
好ましくは該システムでは、前記第一直流電源装置が、パルス型直流電源装置を備える。
好ましくは該システムでは、前記電源が第二直流電源装置を備え、記第二直流電源装置が正極を有し、前記第二直流電源装置がまた負極を有し、前記第二電源の前記正極が前記第二電極に接続され、前記第二電源の前記負極がワークピースに接続するためのものである。
好ましくは該システムでは、前記第二直流電源装置が、ほぼ一定電圧の電源装置を備える。
好ましくは該システムでは、前記第二直流電源装置が、パルス型直流電源装置を備える。
もしくは、前記電源が(i)第一電極および第二電極を備え、前記第一電極及び前記第二電極が位相変化する交流電源装置と、(ii)アノード及びカソードを備える第一ダイオードと、(iii)アノード及びカソードを備える第二ダイオードを備え、
前記交流電源装置の前記第一電極が、ワークピースに接続するためのものであり、前記交流電源装置の前記第二電極が前記第一ダイオードの前記カソードに接続し、前記第一ダイオードの前記アノードが前記第一電極に接続し、前記交流電源装置の前記第二電極がまた、前記第二ダイオードの前記アノードに接続し、前記第二ダイオードの前記カソードが前記第二電極に接続する。
好ましくは該システムでは、前記第一電極の軸と前記第二電極の軸の間の角度が最大約45度とする。
好ましくは該システムが(d)供給機構を更に備え、前記供給機構が前記第二電極を推進する。
好ましくは該システムが(d)電極支持部を更に備え、前記電極支持部が、前記第一電極を支持し、前記第一電極と電気的に接続される。
好ましくは該システムが(e)熱伝導性でかつ電気絶縁体である素材からなるフィルムを更に備え、前記フィルムが前記電極支持部と前記分離体の間に配される。
好ましくは該システムでは、前記フィルムが、ポリイミドフィルム及びポリアミドフィルムからなるグループから選択されるフィルムを備える。
好ましくは該システムが(d)正極及び負極を備える補助直流電源装置を更に備え、前記補助電源装置の前記負極が前記第一電極に電気的に接続され、前記補助電源の前記正極が前記分離体に接続される。
好ましくは該システムでは、前記第一電極が冷却液を輸送するチャネルを備える。
好ましくは該システムが(d)前記チャネルを通して前記液を移動するように操作可能な機構を更に備える。
好ましくは該システムでは、前記分離体が冷却液を輸送するためのチャネルを備える。
好ましくは該システムが(d)前記チャネルを通して前記液を移動するように操作可能な機構を更に備える。
好ましくは該システムでは、前記分離体がチューブを備え、前記第一電極がほぼ前記チューブ内に配される。
好ましくは該システムでは、前記チューブが狭窄した端部を備える
好ましくは該システムが(d)低反応性ガスを提供する機構を更に備え、前記ガスが前記第一電極の先端をほぼ包み込む。
好ましくは該システムが(e)前記ガスに回転運動を起こす機構を更に備える。
好ましくは該システムでは、前記ガスが窒素、水素、希ガス、及びこれらの混合物からなるグループから選択される。
好ましくは該システムが(d)低反応性ガスを提供する機構を更に備え、前記ガスがワークピースの一部及び前記第二電極の一部をほぼ包み込む。
好ましくは該システムが(e)前記シールドガスに回転運動を起こす機構を更に備える。
好ましくは該システムでは、前記シールドガスが窒素、水素、二酸化炭素、希ガス、及びこれらの混合物からなるグループ選択される。
好ましくは該システムでは、前記第一電極がタングステン、タングステン合金、モリブデン、及びモリブデン合金からなるグループから選択される材料を含む。
好ましくは該システムでは、前記第二電極が軟鋼、鉄、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、アルミニウム、アルミ合金、銅、銅合金、チタン、及びチタン合金からなるグループから選択される材料を含む。
好ましくは該システムが(d)前記第一電極及び前記第二電極の間に配される磁気シールドを更に備える。
好ましくは該システムが(d)前記第一電極及び前記第二電極を調整して操作することを可能とするように操作可能な制御機構を更に備える。
本発明によると、ワークピースを溶接するための方法であって、(a)第一電極を提供する段階と、(b)第二電極を提供する段階と、(c)ほぼ前記第一電極と前記第二電極の間に配される分離体を提供する段階と、(d)ワークピースに対して負の電位にある前記第一電極に電位を掛けて、前記第一電極及びワークピースの間にアークを維持する段階と、(e)ワークピースに対して負である前記第二電極に電位を掛けて、前記第二電極及びワークピースの間にアークを維持する段階からなることを特徴とする方法が提供される。
好ましくは該方法では、(f)前記第一電極が前記第二電極に先行するように前記第一電極及び前記第二電極をワークピースに対して移動する段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記第一電極の軸と前記第二電極の軸の間の角度が最大約45度である。
好ましくは該方法では、前記第一電極と前記ワークピースの間の前記アークが、パルス式に電圧を加えられる。
好ましくは該方法では、前記第二電極と前記ワークピースの間の前記アークが、パルス式に電圧を加えられる。
好ましくは該方法では、前記第一電極と前記ワークピースの間の前記アークと、前記第二電極とワークピースの間の前記アークが、交互に電圧を加えられる。
好ましくは該方法では、(f)前記第二電極を、前記第二電極の消費を補充するように推進する段階を更に備える。
好ましくは該方法では、(f)前記第一電極と前記分離体の間のアークを維持する段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記第一電極がチャネルを備え、(f)前記チャネルを通して冷却液を輸送する段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記分離体がチャネルを備え、(f)前記チャネルを通して冷却液を輸送する段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記第一電極の先端を低反応性ガスで包み込む段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記ガスに回転運動を与える段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記ガスが窒素、水素、希ガス、及びその混合物からなるグループから選択される。
好ましくは該方法では、(f)低反応性シールドガスでワークピースの一部及び前記第二電極の一部を包み込む段階を更に備える。
好ましくは該方法では、(g)前記ガスに回転運動を与える段階を更に備える。
好ましくは該方法では、前記シールドガスが、窒素、水素、二酸化炭素、希ガス、及びその混合物からなるグループから選択される。
好ましくは該方法では、前記第一電極と前記第二電極の間に磁気シールドを挿入する段階を更に備える。
【発明の効果】
【0019】
よって、プラズマ溶接及びMIG溶接の利点の両方を提供でき、MIGワイヤが必要以上にプラズマアークを妨害しないような溶接システムに対するニーズが広く認識されている。またこのシステムを得ることは大変有益である。尚、このようなシステムでは、プラズマアークが負の極性を有し、MIGアークが正の極性を有する。またこのようなシステムにより、ワークピースの溶け込みを最小限にとどめながら、溶け込みの深い溶接部を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明はここにおいて、付随する図面を参照して説明されるが、単に例示のみである。
【0021】
本発明はMIG溶接とプラズマアーク溶接を組み合わせて単一統合システムにしたものである。下記に示す考察は一例であり、本発明が、溶接のための施行システムおよびその溶接工程に如何にして応用できるかという点を示している。つまり、提案する発明の主要目的は、プラズマ工程とMIG工程を組み合わせたシステムの生産性を、その二つの工程の利点を高めることにより向上させることにある。
1. プラズマアーク溶接の高出力密度および溶込みの深さ
2. MIG(ガス金属アーク溶接−GMAW)のワークピース間で生じる大きな隔たりを埋める能力および高アーク性能
この発明の目的は、消費性および非消費性の電極を単一加工トーチに組み合わせることである。これにより、非消費プラズマアーク電極および消耗(MIG/GMAW)電極の軸が、そのワークピースに面して鋭角を成し、それらの電極の軸がほぼ溶接線で、そのワークピースと交差する平面上に存在することになる。本発明はプラズマアークの主な利点を利用する一方で、高性能アークおよびMIG/GMAWの急速な溶滴移行の利点を利用する。つまり、これはプラズマアークとMIGアークの相互作用によって達成できるものである。
【0022】
本発明による溶接システムの原理および操作は、図面と下記の記述を参照することにより理解を深めることができる。
図面について詳細に説明する。図3cは本発明によるプラズマとMIG溶接を組み合わせた溶接システムの好ましい実施様態を概略的に示したものである。プラズマアーク32は非消費電極38とワークピース31間で燃焼する。プラズマアーク32はノズル33により収束される。MIGアークは消費電極39とワークピース31間で形成される。電極39の先端56は、プラズマアーク32で生成されたプラズマ流41内に埋まっている。電極38と39、および関連部品を有する組み合わされた溶接トーチ58は、矢印46の方向に、ワークピース31の面にほぼ沿って動かされる。尚、矢印46の方向は溶接方向として知られている。
【0023】
より詳しい理論的および実践的研究によれば、プラズマとMIG/GMAW、または現存する従来技術のプラズマ−MIG拡張装置とを比較しても、溶込み深さと溶接速度は大幅に増加できると示した。つまり、これは、プラズマアーク電極38の軸35とMIG電極39の軸36から成る鋭角αを維持し、消費(MIG)電極39の軸36がワークピース31の表面を横断するポイントと非消費(プラズマ)電極38がワークピース31の表面を横断するポイントとで形成される間隔Dを維持することにより可能となる。また、それらの研究の結果によると、時として、少なくとも3倍の溶込み深さと加工速度を表すが、開先または如何なる鋭利な穿孔を行う技術も必要としていない。つまり、プラズマ溶接またはMIG/GMAW、さらに如何なる従来技術の拡散プラズマ−MIG技術とも対照的である。
【0024】
上述に示した、電極38と電極39の軸35と軸36から成る鋭角α、および軸35と軸36がワークピース31と交差する間隔Dは、先行技術に比べて新規性がある。更に、鋭角αと間隔Dの組み合わせは、本発明が示しているように、溶込み深さと加工速度を著しく改善する。また、本発明は、物理過程を理解することに基づいている。尚、プラズマ−MIG溶接で起こる物理過程の理解は、従来技術の基礎理解とはまったく異なる。
【0025】
当業者には良く知られているが、プラズマアーク溶接速度が大きくなりすぎるとき、プラズマアーク32より形成された溶融池34は、溶接方向46に対して、プラズマ電極38の軸35がワークピース31の表面との交差部分より後方に保たれる。このことは、図3bで概略的に示しているように、溶込み不良とアンダカットを引き起こす。図3aで概略的に示しているように、先行技術のプラズマ溶接は優れた溶接結果をもたらすが、これは溶接する原料およびその厚さ次第であり、溶接速度も大抵分速1メートル以下に制限される。プラズマアーク電極38がマイナスであるとき、つまり、最大速度および最大溶込みを実現するために、プラズマアーク溶接の運転モードが好ましい状態にあるとき(「Plasma Arc Metalworking Processes」Robert L. O’Brien著、アメリカ溶接協会、1967年6月。これは、本明細書において参考のために示したものである)、そして、MIG電極39がプラスであるとき、つまり、最大加工速度を実現し、スパッタを最小化し、スプレー移行形態で操作するためにMIG溶接の運転モードが好ましい状態にあるとき、図3cで概略的に示しているように、電流42および43とアーク32および40間での相互作用の結果として、磁気力Fが生じる。また、異なる方向で電流が流れているため、これらの磁気力Fは、プラズマアークのたわみを前方方向(溶融池34の溶接方向46に対して)生じさせる。つまり、これは、高速溶接中にプラズマアークがプラズマアーク軸35に対して後方に流れるプラズマアークの自然な傾向を相殺するものである。したがって、このことは、プラズマアーク32の剛性と安定性を大幅に増加するという結果を示す。つまり、溶接方向46に対して、高速で溶接中に、プラズマアーク32がプラズマ電極38の軸35に過度に後方に流れず増加するということである。これは、溶込み深さと溶接速度の大幅な増加をもたらす。つまり、先行技術のMIG溶接では必要であった、開先加工または開先の必要性が本発明ではなくなる。磁気力Fは、電極軸35と36間の鋭角αと、電極軸35と36がワークピース31の表面と交差する点の間隔Dに左右される。
【0026】
また、金属が消費電極39から移行される方法に対して、プラズマアーク32は多大な影響力をもつ。本発明では、プラズマアーク32のみが、消費電極39の先端56に影響を及ぼす。図2中で示されている現存の先行技術の配列では、消費電極3がプラズマアーク21の全体を通過して、消費電極39が相当過熱する結果となる。したがって、上述で記載したように、高い溶着ワイヤ消費速度を必要とし、溶接金属のスパッタおよび過度の溶着をもたらす。アノード点は、陽極のMIG電極39にある範囲であり、MIGアーク40の電流が陽極のMIG電極39からMIGアーク40に流れる範囲である。
【0027】
本発明では、プラズマが消費MIG電極39の先端56のみに影響を及ぼすため、MIGアーク40のアノード点は固定位置にとどまる。このことは、アノード点の拡張を防ぐ。さらに、アノード点を固定位置におくことにより、コンタクトチューブ60の末端の後退距離をかなり減少させることができる。これは、コンタクトチューブ60が過熱することなしに、供給チューブを通して、消費電極39の末端から消費電極39は供給されるということである。これには、かなりの実際的な利点を表す。なぜならば、短い後退距離を越えて、電極39を正確な溶融池34へと容易に供給することができるからである。消費電極39がプラズマアークノズル33と同心でないとき、更に集中したMIGアーク40は、回転効果なしで形成される。図2で示されているように、従来システムではこの回転効果が発生し、陽極もつMIG電極3はプラズマ流15とほぼ同じ同心となる。
【0028】
本発明の構造では、プラズマ電極38とMIG電極39が、鋭角αにあり、プラズマ電極軸35とワークピース31の表面の交点と、MIG電極36とワークピース31の交点間の間隔Dにある。このことは、プラズマ溶接とMIG溶接との最良の相乗効果を得るにあたり、重要かつ革新的なものである。つまり、先行技術と比較すると、この組合せシステムは非常に有効である。また、この有効性を向上することにより、加工速度と溶込みを大幅に増加させ、開先加工や開先なしで金属溶接を可能にする。更に、本発明の配列において、プラズマシステムはワークピース31の表面近くに配することが可能で、熱流測の高い集中により操作の効率性を高め、その結果深い溶込みを生じさせる。つまり、マルチ・パス溶接の代わりにワン・パス溶接を用いることが可能である。このことは、溶接品質、溶接工程の生産性、そして経済的効率を大幅に向上させる。加えて、スパッタおよび余計な金属がない溶接が可能である。
【0029】
本発明の一側面は、プラズマアーク溶接とMIGアーク溶接を組合せた方法を提供するものである。この方法は、プラズマアーク32が不活性ガス中において、ワークピース31と非消費電極38の末端部の間で維持される。プラズマアーク32は、収束ノズル33によって収束されており、このアークがプラズマ流を生じさせる。このプラズマ流は、収束ノズル33の開口部64から流出したものである。消費電極39は、収束ノズル33の外側に位置するプラズマ流の領域に導かれる。MIGアーク40は消費電極39の先端56とワークピース31間で維持される。これは、米国特許文献第3,612,807号で記述されていることと対照的である。この先行技術は、図2で概略的に示されている。消費電極3は、プラズマ流15のより長い部分を通って延びている。本発明では、非消費電極38は負の極性をもち、これは、プラズマアーク溶接に有利である。また、消費電極39は正極性をもち、これはMIG溶接に有利である。アーク32と40は各々のタイプに対して好都合な条件で作動するため、かなり広範囲のアーク電流が可能であり、安定した組合せ工程を生じさせる。つまり、本発明により非常に生産性の高い溶接工程を提供することができる。
【0030】
本発明の別の面では、図5で示しているように、単一工程トーチ100が提供される。このトーチには、カバー102を有するハウジング101が含まれる。カバー102は、ハウジング101の上端部に位置する。尚、このハウジング101は、ハウジング101の下端部に位置するシールドノズル116も具備する。カバー102は第一空隙部134と第二空隙部138を備える。空隙部134と138は、互いに平行に設けられてはいない。第一空隙部134は、中空の内部体104を有し、この内部体の下部に位置する収束ノズル105も具備する。非消費電極107はその内部体104内に設けられる。ポート140は、低反応性のガスを内部体104に通して送給するために設けられる。ここで使用できる適切なガスは、窒素、水素、希ガス、そしてそれらの混合物であるが、これらに限定はされない。元素周期表の8列で表されるように、不活性気体と呼ばれる要素を希ガスは含む。水素は、本来非常に反応性があるとみなされているが、タングステンに対しては低い反応性をもつ。状況に応じて、ベーン142のような構造により、回転運動をガス中に導入する。
【0031】
第二空隙部138は、中空のチューブ103が含まれている。このチューブは、消費電極112をプラズマ流の外縁部に導く働きをする。そうすることにより、消費電極112の先端が、溶接方向148に対して、ノズル105の後方に位置付けられる。つまり、これは、ハウジング101の下流にあるシールドノズル116内に位置付けられることであり、このシールドノズル116が消費電極112の先端と内部体104の収束ノズル105を囲む。つまり、消費電極112と非消費電極107は溶接方向148に沿って設置される。また、溶接方向148に対して、非消費電極107は消費電極112の若干前方に位置する。
【0032】
図4について詳細に説明する。不活性気体流154中で、プラズマアーク32はワークピース31と非消費電極38の間で維持される。ノズル33の開口部64(図中に「4」または「5」はない)は、プラズマアーク32を収束し、プラズマアーク32をワークピースの方向に向ける。消費電極39はプラズマアーク32の外縁部へと導かれる。MIGアーク40は消費電極39とワークピース31の間で維持される。第一直流電源装置の陰端子は、非消費電極38に接続されており、第一直流電源装置の正端子は、ワークピース31に接続されている。第二電源装置48の正端子は消費電極39に接続されており、第二電源装置48の陰端子はワークピース31に接続されている。シールドガス51(例えば、アルゴンと二酸化炭素の混合物)は、シールドノズル52を通して流出する。尚、シールドガス51に適したガスの選択は、窒素、水素、二酸化炭素、希ガス、そしてそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。また、水素は通常、非常に反応性があるとされているが、いくつかの金属に対しては、低い反応性をもつ。
【0033】
プラズマアーク電極38は軸35を具備する。消費電極38は軸36を具備する。プラズマ電極軸35と消費電極軸36は共通の平面上にほぼ存在する。この平面は、ワークピース31の表面に対してほぼ垂直に位置し、プラズマ電極軸35と36が互いに鋭角αを形成する。更に、プラズマアーク32は、溶接方向46に対して、溶融池34の前方部分に位置する。
【0034】
開口部64から放出されるプラズマ流41は、溶接方向46に対して、溶融池の前側方向に向けられる。つまり、このプラズマ流41は、溶融池34の凹面に沿って導かれ、溶接方向46に対し、溶融池の後方に向かって屈折する。つまり、ここでは、消費電極39の先端により融解した金属が溶着している。尚、MIGアーク40は、ほぼプラズマ流41内で燃焼する。
【0035】
先行技術のプラズマアーク溶接における欠点は、溶接速度が遅いということである。これは、そのプラズマアークが高速溶接により屈折するからである。その結果、プラズマ流の速度ベクトルは、ワークピースの表面に対して直角ではなくなるように屈折を生じる。つまり、これにより高速溶接での溶込み深さが減少する。また、特定速度の制限を超過することは、溶融池34を破壊することである。しかし、本発明においての利点は、MIGアーク電流42とプラズマ電流43による電磁相互作用である。アークは異極性をもつので、溶接方向46に対して、溶融池34の前方に向かって、プラズマアーク32は屈折する。また、プラズマアーク32は、溶接方向46に対して、溶融池34の後方に向かって屈折する。この屈折は、プラズマアーク32の溶接方向46に沿った動きにより生じる。尚、該前方への屈折は、該後方への屈折を相殺する。つまり、ある条件下では、プラズマアークの速度ベクトルは、ワークピース31の表面に対してほぼ垂直である。そして、そのプラズマアークの溶込みが最大となり、かなりの剛性(安定性)を示す。これにより、溶接速度と溶込みが大幅に向上する。これは、磁気力がアーク電流、電極軸間の間隔、そして電極間の角度に左右されるので、正しく電極を配置し、その電極からの電流を適切に調節することは、非常に重要である。
【0036】
プラズマの存在は、MIGアークのアノード点における工程を変化させる。ゆえに、金属が消費電極から移行する方法も変化する。その結果、溶滴がより簡単にワイヤエンドから取り除かれる。つまり、従来のMIG溶接技術と比較すると、スプレー移行形態を構築するための遷移電流は、大幅に低減される。本発明では、ワークピースに対して移行する溶滴の軸流速度は、従来のMIG溶接で達される速度よりも早くなる。速度ベクトルは、溶接方向46に対して、溶融池34の後方部に向かって屈折する。また、このような状況では、溶融した金属の溶滴は、溶接方向46に対して、溶融池34の後方端部に達する。これは、「バックハンド」技術で見られるように、電極が溶接方向と逆に向けられ、溶込みを増加させる。
【0037】
溶滴の平均容量は、従来のMIG溶接でのスプレー移行で達成できる容量よりも大きい。しかし、本発明のシステムでは、重力に対し、如何なる位置での溶接を可能にする。これは、ワークピースに対して、プラズマ流が溶滴の速度を上げるからである。さらに、溶滴が大きいと、アークギャップを通過する際、溶滴自身の過熱を防ぐ。つまり、溶滴の過熱を防止または低減することは、スパッタのない溶接を実現したり、溶接の品質と金属結合性を向上させるために、極めて重要な要因となる。
【0038】
高速溶接における、従来のMIG溶接と比較すると、本発明は、一溶接の長さごとの消費電極(溶加ワイヤ)の消費を低減し、溶込みの深さを向上させることを可能にする。
【0039】
鋭角α、間隔Dおよびアーク電流の関係は下記の方程式(数1)より大まかに表すことができる:
【0040】
【数1】

【0041】
図5は本発明による装置の実施形態を示す。この実施形態は、本発明の単一工程トーチ100を含む。この工程トーチ内には、ハウジング101と、二つの空隙部を有し、電気絶縁材からなるカバー102を具備する。カバー102に適した材質は、耐熱プラスチックや酸化アルミニウムのようなセラミックが含まれるが、これらに限定はされない。ロッド・ガイド103は、カバー102にある第1空隙部に位置する。内部体104には、その内部体の下流側に収束ノズル105が設けられており、内部体自身は、カバー102にある第2空隙部に位置する。カソードホルダー106は、タングステン等の導線で作られたカソード107を保持する働きをする。このカソード107は、高融点をもつ。また、カソードホルダー106は内部体104内に設置されている。カソード107に適した材質は、タングステン合金、モリブデン、およびモリブデン合金が含まれるが、これらに限定はされない。収束ノズル105は、プラズマアークを収束するために開口部108を有し、内部体104の下部に位置する。また、チャネル110は、ポンプ136から投入された冷却液を輸送する働きをし、内部体104中に設置されている。カソード107は先端134を有する。このカソードは、ほぼ先端134で、プラズマアークと接する。ロッド・ガイド103は、消費電極ワイヤ112を、収束ノズル105を超えてワークピース115に向ける。消費電極ワイヤ112に適した材質は、軟鋼、鉄、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、アルミニウム、アルミ合金、銅、銅合金、チタニウム、チタン合金が含まれるが、これらに限定はされない。ワイヤ112は、ロッド・ガイド103を通り、ワイヤ供給機構130によって供給される。ハウジング101の下流側にあるシールドノズル116は、ワイヤ112の末端部と収束ノズル105を取り囲む。内部体104にあるチャネル132はチャネル110と接触しており、このチャネル132は、冷却液を冷却内部体104、カソードホルダー106、そしてノズル115に輸送する働きがある。
カソードホルダー106は、円錐形であり、内部体104の穴に位置する。カソード106は、内部体104から分離している。これは、高熱伝導性をもつ材質からつくられた電気絶縁膜109によるものである。また、カソードホルダー106は、約200℃の温度に耐えることができる。この絶縁膜109に適した材質は、デュポン社のカプトン(登録商標)のようなポリイミドフィルムや、ポリアミドフィルムが含まれるが、これらに限定はされない。つまり、カソードホルダー106は、高熱伝導性と膜厚が小さい絶縁膜109をもつため、内部体104に良く熱を伝導する。つまり、本発明により、カソード107を特別冷却せずに装置を作動させることができ、装置の簡素化は可能となる。
【0042】
タングステンカソード107は、カソードホルダー106を通して、第一直流(DC)電源装置120の負端子に接続している。尚、この第一直流電源装置は、プラズマ電源装置と呼ばれる。ワイヤ112は、ロッド・ガイド103を通して、第二DC電源装置121の正端子に接続しており、この第二DC電源装置は、MIG電源装置と呼ばれる。第一電源装置120の正端子と第二電源装置の負端子は、共にワークピース115に接続する。好ましくは、第一電源装置120は、定電流を出力する特徴を有することである。つまり、第一電源装置120は、安定したプラズマアークを提供する。また、第二電源装置121が定電圧を出力する特徴を有することにより、MIGアークの長さは自動的に安定する。すなわち、これらの特徴を有することにより、ワイヤ溶接の工程は安定する。補助装置としての、三つ目のDC電源装置122は、カソード107と収束ノズル105を渡り接続する。仮に、この補助電源装置122が使用されたなら、収束ノズル105は、導電材料で形成されてなくてはならない。そして、この補助電源装置122は、カソード107とノズル105の間で低電流アークを維持する。
この低電流アークにおける一般的な電流は、2アンペアから20アンペアの間である。この低電流アークは、溶接が開始する前に燃焼し、カソード107の予備加熱を生じさせる。これは、主要プラズマが開始するとき、カソード107への熱衝撃による損傷を防ぐ。また、この低電流アークにより、プラズマはワークピース115側に向かって流出する。これは、主要アークの始動を容易にする。もし、補助電源装置122が使用されなければ、図には示されていないが、主要アークの始動を容易にするために高周波発振器が用いられることがある。このような発振器を使用することで、電磁気インターフェースの問題が生じるが、カソード107に対する熱衝撃を防ぐことはできない。
【0043】
第一電源装置120と第二電源装置121からの電圧操作が、カソード107と消費電極112に適用されるとき、この電圧は、カソード107とワイヤ112の間でのアークを発生させるに十分でない。しかし、カソード107とノズル105間の低電流アークは、カソード107とワークピース115間のアークの発火に役立つ。つまり、これは、ワークピース115とワイヤ112間のアークが発火するのに役立つ。一度、これらのアークが発火すると、磁気力とガス流はカソード107とワイヤ112間の直接的なアーク放電を妨げる。
【0044】
垂直または上向き溶接などの幾つかの適用例では、溶接金属への重力の影響を緩和するために、入熱を低減することが好ましい。また、その低入熱により、溶融池が急速に凝固する。この場合、MIG電源装置121がパルスモードで作動することが好ましい。好適なパルス幅とパルスピーク電流はワイヤ112の直径とワイヤの材質に左右される。
【0045】
本発明の他の実施形態は図6で概略的に説明する。この実施形態において、交流(AC)電源装置125は直流電流電源装置120と121の代わりに使用される。AC電源装置の一つの端子は、ワークピース115に接続され、AC電源装置のもう一つの端子は、第一ダイオード126とカソードホルダー106を通じてカソード107に、また、第二ダイオード127とロッド・ガイド103を通じて消費ワイヤ112に接続する。
第一ダイオード126のアノードは、カソードホルダー106に接続し、第一ダイオード126のカソードはAC電源装置125に接続する。第二ダイオード127のカソードは、ロッド・ガイド103に接続する。第二ダイオード127のアノードは、AC電源装置125に接続する。つまり、MIGアーク電流とプラズマアーク電流は、交流電流の周期中交互に流れる。このことは、二つのアーク間での磁気相互作用を低減する。また、プラズマアークとMIGアーク間にある間隔を減らすことにより、入熱を低減させ、溶融池の長さをも低減させる。
【0046】
本発明の他の実施形態において、磁気シールド150はノズル105と消費電極112間に位置する。300アンペア以上のMIGアーク電流は、プラズマアークを極端に屈折させる磁気力を生じさせる。その結果、プラズマアークがノズル105に影響を与え、ノズル105を過熱し、プラズマアークからワークピース115へのエネルギー移行効率を低減する。磁気シールド150は、プラズマアークの領域内にある磁場を低減させる。つまり、MIGアークがプラズマアークに及ぼす影響を低減する。
【0047】
本発明の他の実施形態において、プラズマアークに不活性ガスを供給する構造は、回転運動をその不活性ガスに加えるベーン142のような構造を含む。同様に、ベーン144のような構造は、MIGアークを取り囲むシールドガスに、回転運動を加えるために用いられることがある。
【0048】
本発明の実施形態は状況に応じて、図5で示されているように、制御装置146を含む。この制御装置146は、システムにおける様々な部分を操作するよう調整する。また、このような制御装置146は、一つ以上のパラメーターを制御する。パラメーターには、電源電圧、電源電流、ガス圧力、ガス流速、冷却液圧力、冷却液流速、冷却液温度、消費電極供給速度、そして溶接速度が含まれるが、これらに限定はされない。また、このような制御装置146は、一つ以上のパラメーターを検知する。パラメーターには、オペレーター入力、電源電圧、電源電流、アーク電圧、アーク電流、ガス圧力、ガス流速、冷却液圧力、冷却液流速、冷却液温度、消費電極供給速度、電極温度、そして溶接温度が含まれるが、これらに限定はされない。
【0049】
パラメーターの検知は、制御パラメーターを調節する一つ以上のフィードバック・ループに組み込まれる。簡略化するために、ここでは、制御装置146は、電源装置120と電源装置122のみに接続されているように示してある。しかし、これ以外の接続も可能であり、これは、本発明の範囲内である。
【0050】
本発明は、限定した実施形態に関して詳細に説明してきたが、当然のことながら、この発明における、多様な変更、改変、および他の応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】炭素鋼電極を用いたMIG溶接における、ワイヤ供給速度を溶接電流に対する関数として示したグラフである。
【図2】米国特許第3,612,807号に従い、MIG溶接及びプラズマ溶接を組み合わせた先行技術による装置の概略図である。
【図3a】先行技術によるプラズマ溶接の概略図である。
【図3b】先行技術による高い溶接速度でのプラズマ溶接の概略図である。
【図3c】本発明によるMIG溶接及びプラズマ溶接を組み合わせた溶接の概略図である。
【図4】本発明によるMIG溶接及びプラズマ溶接を組み合わせた溶接の概略図であり、本発明の器具をより詳細に示す。
【図5】直流電源を用いた、本発明によるMIG溶接及びプラズマ溶接を組み合わせた溶接の概略図である。
【図6】交流電源を用いた、本発明によるMIG溶接及びプラズマ溶接を組み合わせた溶接の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを溶接するためのシステムであって、前記システムが、
(a)第一電極と、
(b)第二電極と、
(c)前記第一電極と前記第二電極とのほぼ中間に配される分離体からなり、
前記分離体がガス流を前記第一電極に沿って案内するように操作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
(d)電源を更に備え、
前記電源が、前記ワークピースに係る第一電位を前記第一電極にかけるように操作可能であり、前記電源がまた、前記第二電極に前記ワークピースに係る第二電位をかけるように操作可能であり、
前記第二電位が前記第一電位と反対の極性を持つことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記電源が第一直流電源装置を備え、
前記第一直流電源装置が正極を有し、前記第一直流電源装置がまた負極を有し、
前記第一電源装置の前記正極がワークピースと接続するためのものであり、
前記第一電源装置の前記負極が前記第一電極と接続することを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記第一直流電源装置が、略一定電流の電源装置を備えることを特徴とする請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記第一直流電源装置が、パルス型直流電源装置を備えることを特徴とする請求項3記載のシステム。
【請求項6】
前記電源が第二直流電源装置を備え、
前記第二直流電源装置が正極を有し、前記第二直流電源装置がまた負極を有し、
前記第二電源の前記正極が前記第二電極に接続され、
前記第二電源の前記負極がワークピースに接続するためのものであることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項7】
前記第二直流電源装置が、略一定電圧の電源装置を備えることを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記第二直流電源装置が、パルス型直流電源装置を備えることを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記電源が
(i)第一電極および第二電極を備え、前記第一電極及び前記第二電極が位相変化する交流電源装置と、
(ii)アノード及びカソードを備える第一ダイオードと、
(iii)アノード及びカソードを備える第二ダイオードを備え、
前記交流電源装置の前記第一電極が、ワークピースに接続するためのものであり、
前記交流電源装置の前記第二電極が前記第一ダイオードの前記カソードに接続し、
前記第一ダイオードの前記アノードが前記第一電極に接続し、前記交流電源装置の前記第二電極がまた、前記第二ダイオードの前記アノードに接続し、
前記第二ダイオードの前記カソードが前記第二電極に接続することを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項10】
前記第一電極の軸と前記第二電極の軸の間の角度が最大約45度であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項11】
(d)供給機構を更に備え、
前記供給機構が前記第二電極を前進させることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項12】
(d)電極支持部を更に備え、
前記電極支持部が、前記第一電極を支持し、前記第一電極と電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項13】
(e)熱伝導性でかつ電気絶縁体である素材からなるフィルムを更に備え、
前記フィルムが前記電極支持部と前記分離体の間に配されることを特徴とする請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記フィルムが、ポリイミドフィルム及びポリアミドフィルムからなるグループから選択されるフィルムを含むことを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項15】
(d)正極及び負極を備える補助直流電源装置を更に備え、
前記補助電源装置の前記負極が前記第一電極に電気的に接続され、
前記補助電源の前記正極が前記分離体に接続されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記第一電極が冷却液を輸送するチャネルを備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項17】
(d)前記チャネルを通して前記液を移動するように操作可能な機構を更に備えることを特徴とする請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記分離体が冷却液を輸送するためのチャネルを備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項19】
(d)前記チャネルを通して前記液を移動するように操作可能な機構を更に備えることを特徴とする請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記分離体がチューブを備え、
前記第一電極がほぼ前記チューブ内に配されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項21】
前記チューブが狭窄した端部を備えることを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項22】
(d)低反応性ガスを提供する機構を更に備え、
前記ガスが前記第一電極の先端をほぼ包み込むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項23】
(e)前記ガスに回転運動を起こす機構を更に備えることを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記ガスが窒素、水素、希ガス、及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項25】
(d)低反応性ガスを提供する機構を更に備え、
前記ガスがワークピースの一部及び前記第二電極の一部をほぼ包み込むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項26】
(e)前記ガスに回転運動を起こす機構を更に備えることを特徴とする請求項25記載のシステム。
【請求項27】
前記ガスが窒素、水素、二酸化炭素、希ガス、及びこれらの混合物からなるグループ選択されることを特徴とする請求項25記載のシステム。
【請求項28】
前記第一電極がタングステン、タングステン合金、モリブデン、及びモリブデン合金からなるグループから選択される材料を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項29】
前記第二電極が軟鋼、鉄、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、アルミニウム、アルミ合金、銅、銅合金、チタン、及びチタン合金からなるグループから選択される材料を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項30】
(d)前記第一電極及び前記第二電極の間に配される磁気シールドを更に備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項31】
(d)前記第一電極及び前記第二電極を調整して操作することを可能とするように操作可能な制御機構を更に備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項32】
ワークピースを溶接するための方法であって、
(a)第一電極を提供する段階と、
(b)第二電極を提供する段階と、
(c)ほぼ前記第一電極と前記第二電極の間に配される分離体を提供する段階と、
(d)ワークピースに対して負の電位にある前記第一電極に電位を掛けて、前記第一電極及びワークピースの間にアークを維持する段階と、
(e)ワークピースに対して負である前記第二電極に電位を掛けて、前記第二電極及びワークピースの間にアークを維持する段階からなることを特徴とする方法。
【請求項33】
(f)前記第一電極が前記第二電極に先行するように前記第一電極及び前記第二電極をワークピースに対して移動する段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記第一電極の軸と前記第二電極の軸の間の角度が最大約45度であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記第一電極と前記ワークピースの間の前記アークが、パルス式に電圧を加えられることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記第二電極と前記ワークピースの間の前記アークが、パルス付与する方法で電圧を加えられることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記第一電極と前記ワークピースの間の前記アークと、前記第二電極とワークピースの間の前記アークが、交互に電圧を加えられることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項38】
(f)前記第二電極を、前記第二電極の消費を補充するように前進させる段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項39】
(f)前記第一電極と前記分離体の間のアークを維持する段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項40】
前記第一電極がチャネルを備え、
(f)前記チャネルを通して冷却液を輸送する段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項41】
前記分離体がチャネルを備え、
(f)前記チャネルを通して冷却液を輸送する段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項42】
前記第一電極の先端を低反応性ガスで包み込む段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項43】
前記ガスに回転運動を与える段階を更に備えることを特徴とする請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記ガスが窒素、水素、希ガス、及びその混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項42記載の方法。
【請求項45】
(f)低反応性ガスでワークピースの一部及び前記第二電極の一部を包み込む段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項46】
(g)前記ガスに回転運動を与える段階を更に備えることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記ガスが、窒素、水素、二酸化炭素、希ガス、及びその混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記第一電極と前記第二電極の間に磁気遮蔽を挿入する段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−519103(P2006−519103A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551135(P2004−551135)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000953
【国際公開番号】WO2004/043639
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505172835)プラズマ レーザー テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】